説明

光学式タッチデバイス

【課題】外乱光を受光すると、障害物が光路を遮蔽していても、障害物の存在と、障害物の位置とを正しく認識することができない。
【解決手段】一実施形態によれば、開口3を有するハウジング4と、それぞれ赤外線を放射する複数の発光素子12と、これらの発光素子12を順次切替えて点灯駆動する駆動部9と、この駆動部9による切替えのタイミングと同期したタイミング信号を出力し、各発光素子12による走査光路が遮光されたことを検知して画面2上に存在する障害物の位置を検出する検出制御部11と、この検出制御部11が出力したタイミング信号によって選択され、複数の発光素子12のいずれかより放射された赤外線の受光結果を検出制御部11へ出力し、開口3の残りの2辺に設けられた複数の受光センサ13A、13Bとを備え、これらの受光センサ13A、13Bは、互いに異なる受光特性を有する光学式タッチデバイス1が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一実施形態は光学式タッチデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチディスプレイやタッチパネルなどのポインティングデバイスには光学式、圧電方式、静電容量方式などが用いられている。これらの方式はそれぞれメリット及びデメリットを有することから市場に合わせて使い分けられている。
【0003】
その中の一つである、光学式タッチデバイスは発光部からの光を受光センサ部が受信するシステムである。光学式タッチデバイスは、操作面上で、垂直方向と水平方向とにそれぞれ走査用の複数の光路を形成しておき、これらの光路群のうち、受光を遮断された光路の位置によって操作面上の障害物の接触位置を検出する。障害物により発光部からの光が遮蔽されると、受光センサ部が受光していないことを検出部は検出し、受光されない箇所にタッチポインタが存在することを認識するようになっている。
【0004】
従来、どのような場所や方向に設置されても正常にタッチパネルを動作させるようにした光学式タッチパネル装置が知られている(特許文献1参照)。また、検出ピッチが重要なタッチ操作のときには、既存の走査を行い、走査速度が重要なタッチ操作のときには、送光素子と受光センサを間引きして走査することで、違和感のない操作を可能とする光学式タッチパネルが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−099201号公報
【特許文献2】特開2006−11568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、受光センサ部は太陽光や蛍光灯等からの外乱光を受光すると、障害物が光路を遮蔽している状態であっても、受光センサ部はこの障害物を認識することができない。光学式タッチデバイス自体が、障害物の存在と、障害物の位置とを正しく区別して認識することができない。障害物が遮蔽する光路の延長線上に設けられた受光センサの受光面に、この受光センサが検出する波長帯域と重なる波長帯域を含む外乱光が入射する。光学式タッチデバイスが一時的に動作不可能になる。その為、屋外や窓の近くなどの外乱光の影響が強い場所では光学式タッチデバイスを使用することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、一実施形態によれば、矩形状の画面が露出する開口を有するハウジングと、このハウジングの前記開口の隣接する2辺に設けられ、それぞれ赤外線を放射する複数の発光素子と、これらの発光素子を順次切替えて点灯駆動する駆動部と、この駆動部による切替えのタイミングと同期したタイミング信号を出力し、各発光素子による走査光路が遮光されたことを検知して前記画面上に存在する障害物の位置を検出する検出制御部と、この検出制御部が出力した前記タイミング信号によって選択され、前記複数の発光素子のいずれかより放射された前記赤外線の受光結果を前記検出制御部へ出力し、前記開口の残りの2辺に設けられた複数の受光センサと、を備え、これらの受光センサは、互いに異なる受光特性を有する複数種類の受光センサを配置したことを特徴とする光学式タッチデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る光学式タッチデバイスの平面図である。
【図2】複数種類の受光センサの受光感度特性の一例を示す図である。
【図3】駆動部、選択部及び検出制御部のブロック図の一例を示す図である。
【図4】実施の形態に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射せず、障害物が存在しないときの光路マトリクスを示す図である。
【図5】実施の形態に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射せず、障害物が存在するときの光路マトリクスを示す図である。
【図6】実施の形態に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射し、障害物が存在するときの光路マトリクスを示す図である。
【図7】従来例に係る光学式タッチデバイスの構成要素の要部を示す図である。
【図8】従来例に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射し、障害物が存在するときの光路マトリクスを示す図である。
【図9】第1の変形例に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射し、障害物が存在するときの光路マトリクスを示す図である。
【図10】第2の変形例に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射し、障害物が存在するときの光路マトリクスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る光学式タッチデバイスについて、図1乃至図10を参照しながら説明する。尚、各図において同1箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0010】
実施の形態に係る光学式タッチデバイスはIR方式のタッチパネルである。
【0011】
図1はタッチパネルの平面図である。タッチパネル1は、表示用の画面2に取付けられ、この画面2が露出する四角形状の開口3を有するハウジング4と、この開口3の4辺のうちの右、下の隣接2辺に沿って設けられた発光部5、6と、発光部5、6に対向して残りの左、上の2辺に沿って設けられこれらの発光部5、6から送られた光を検出する受光部7、8とを備えている。更にタッチパネル1は、発光部5、6を駆動する駆動部9と、これらの発光部5、6内の発光素子12が光電変換を行って出力する電流のうちいずれかを選択的に出力する選択部10と、これらの駆動部9及び選択部10を用いて光路マトリクスを形成し、人の指先やタッチペンなどの障害物が画面2上に触れた位置の座標を検出する検出制御部11とを備えている。破線は光ビームの走査光路を表す。
【0012】
開口3は入力操作領域である。ハウジング4は厚みを有する。ハウジング4は、発光部5、6からの複数の光ビームが、開口3の開口端面の面上に平行に相手となる受光センサへ導かれるように、これらの発光部5、6及び受光部7、8をこのハウジング4内に固定している。発光部5、6はそれぞれ複数の赤外線の発光素子12を有する。発光素子12には例えばLEDが用いられる。これらの発光素子12は等間隔に配置され、赤外線の波長領域の光ビームを対向する受光側の素子へ発光する。
【0013】
受光部7は複数の受光センサ13A、13Bを有する。これらの受光センサ13A、13Bは赤外線の波長領域の光を受光する素子である。受光部8も複数の受光センサ13A、13Bを有する。受光センサ13A、13Bには例えばフォトトランジスタが用いられている。本実施形態では、受光部7は互いに検知波長帯域が異なる2種類の受光センサ13A、13Bを交互に配置して設けており、受光部8も2種類の受光センサ13A、13Bを交互に配置して設けている。受光部7、8は発光部5、6と開口3を挟んでそれぞれ相手となる発光素子12と対向して等間隔に配置されている。
【0014】
図2は2種類の受光センサ13A、13Bの受光感度特性の一例を示す図である。特性曲線14Aは受光センサ13Aの受光感度の波長特性を表し、約750ナノメートルの波長帯域に受光感度のピークを有する。特性曲線14Bは受光センサ13Bの受光感度の波長特性を表し、約1000ナノメートルの波長帯域に受光感度のピークを有する。これらの特性曲線14A、14Bはともに裾広がり状の波形形状を有する。図示しない発光素子12が発光する光は、一例として、750ナノメートル付近の波長帯域と、1000ナノメートル付近の波長帯域との双方に重なる広い範囲の発光帯域を持つ。
【0015】
外乱光がタッチパネル1に入射しておらず且つ障害物が画面2に触れていないと、全ての受光センサ13A、13Bは反応しない。反応するとは電流の出力が停まることを指し、反応しないとは電流の出力が定常的に続くことを指す。外乱光がタッチパネル1に入射しておらず、障害物が画面2に存在すると、遮光が生じる。いずれかの箇所において隣接する1組又は複数組の受光センサ13A、13Bが反応する。
【0016】
本実施形態では、受光センサ13A、13Bの複数の対のうち一対以上が反応した際、これらの受光センサ13A、13Bの対が出力する信号の電力のレベルの差を検出制御部11が検出するようにしている。一例として、検出制御部11は、交互に配置された受光センサ13A、13Bの受光電力を検出制御部11は走査していき、隣接する受光センサ13A、13B間で受光レベルに差が存在するかどうかを感知するようにしている。受光レベルとは受光電力のレベルを指す。この計算は1走査期間の間に行われる。例えば差が予め決めた値よりも大きいことを検出制御部11が検出すると、障害物の存在を検知するようにしている。
【0017】
受光センサ13Aは概ね750ナノメートルを中心波長とする短波長側の赤外線領域の光を検出する。受光センサ13Bは概ね1000ナノメートルを中心波長とする長波長側の赤外線領域の光を検出する。短波長側の赤外線領域の帯域成分を長波長側のそれよりも多く含む外乱光に対して、受光センサ13Aの受光レベルは受光センサ13Bの受光レベルよりも大きい。長波長側の赤外線領域の帯域成分を短波側のそれよりも多く含む外乱光に対して、受光センサ13Aの受光レベルは受光センサ13Bの受光レベルよりも小さい。
【0018】
外乱光が受光センサ13A、13Bに入射すると、受光センサ13A、13Bは0よりも大きいレベルを持つ電流を出力する。外乱光がタッチパネル1に入射した状況では、受光部7、8のいずれの箇所においても受光センサ13A及び受光センサ13Bからそれぞれ0よりも大きく且つ互いに異なるレベルの電流を検出制御部11は入力されるようにされている。外乱光が入射し且つ障害物が画面2に触れている場合、隣接する1組又は複数組の受光センサ13A、13Bのうち一方が遮光によって反応状態が延々と続き、他方は0よりも大きいレベルを持つ電流を出力し続ける。隣接する受光センサ13A、13B間でのこの電力レベルの差を掃引により感知することによって、検出制御部11は外乱光が存在している状況であっても、障害物が触れていることを検知可能になっている。
【0019】
図3は駆動部9、選択部10及び検出制御部11のブロック図の一例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
【0020】
駆動部9はドライブ回路15に接続されている。このドライブ回路15は、複数のスイッチング素子16に接続されており、これらのスイッチング素子16のうち、垂直走査用、水平走査用の2つを選択する。全ての発光素子12のうち、画面2の右辺の周囲に上下に配列された発光素子12は発光部5を構成し、残りの画面2の下辺の周囲に左右に配列された発光素子12は発光部6を構成する。駆動部9は、垂直方向と水平方向とに順次発光素子12を掃引駆動する。駆動部9は発光部5のうちの1個の発光素子12と、発光部6のうちの1個の発光素子12とが点灯するようにして2つのスイッチング素子16を切替え選択し、これらの発光部5、6の点灯駆動を行う。
【0021】
選択部10はドライブ回路17に接続されている。このドライブ回路17は、複数のスイッチング素子18に接続されており、これらのスイッチング素子18のうちの垂直走査用、水平走査用2つを選択する。受光センサ13Aと受光センサ13Bとの総和をとった全てのうち、画面2の左辺の周囲に上下に配列された受光センサ13A、13Bは受光部7を構成する。残りの画面2の上辺の周囲に左右に配列された受光センサ13A、13Bは受光部8を構成する。選択部10は、駆動部9の切替えタイミングと同期したタイミングにより、垂直方向と水平方向とに順次受光センサ13A、13Bを選択する。選択部10は、受光部7のうちの1個の受光センサ13A(又は13B)と、受光部8のうちの1個の受光センサ13A(又は13B)とが動作するようにして2つのスイッチング素子18を切替え選択し、これらの受光部7、8を選択制御する。
【0022】
各スイッチング素子16と、バイアス用の抵抗器19と、電源供給ライン20とはドライブ回路15を構成する。各スイッチング素子18と、バイアス用の抵抗器21と、電源供給ライン20とはドライブ回路17を構成する。
【0023】
また、検出制御部11は、増幅器22、A/D変換器23、CPU24、ROM25及びRAM26を備えている。n個の発光素子12の各一端はプルアップされており、これらの発光素子12の各他端にはスイッチング素子16が直列に接続されている。これらのスイッチング素子16は抵抗器19を介して接地されている。全部でn個の受光センサ13A、13Bの各一端もプルアップされており、これらの受光センサ13A、13Bの各他端にはスイッチング素子18が直列に接続されている。これらのスイッチング素子18は抵抗器21を介して接地されている。
【0024】
抵抗器21及びスイッチング素子18間の接続点には、増幅器22が接続されている。全ての受光センサ13A、13Bのうちの一つが選択的に増幅器22の入力ポートへ入力される。この増幅器22からの増幅出力はA/D変換器23を介してCPU24に入力される。CPU24は、増幅器22の出力ポートからAD変換された電流量のレベルを逐次RAM26に書込み、光路マトリクス情報をRAM26の記憶領域上で生成する。
【0025】
ROM25は障害物の座標を検出する実行プログラムを格納する。RAM26は、受光センサ13A又は13Bの1個の出力電流の電流量を記憶する。CPU24は駆動部9、選択部10へ制御信号を入力し、各スイッチング素子16、18を駆動する。CPU24は1回の走査期間内に垂直方向の一端及び水平方向の一端を開始位置とし、垂直方向の他端及び水平方向の他端を終了位置とする走査を実行する。CPU24はn回の走査を行ってn対の送受光センサの走査を完了させる。
【0026】
一例として、検出制御部11は垂直方向1組と、水平方向1組とを選択して駆動し、交差点情報と、受光センサ13A、13Bの受光レベルとをRAM26に書込みしていく。検出制御部11は発光素子12を掃引駆動する。検出制御部11は、発光部5、受光部7間の複数本の送受光の経路と、発光部6、受光部8間の複数本の送受光の経路との交差点を1個ずつシフトさせながら、反応箇所の有無を掃引していく。画面2上の任意の位置を障害物が存在すると、接触位置にて交差する縦横の光路が遮られる。1本又は複数本の光路上の受光センサ13A、13Bが受光できない状態となる。複数本の光路とは、受光部7、8の解像度、分解能に応じて複数の光路が遮られることを指す。CPU24は、遮光された受光センサ13A、13Bから、接触位置の座標位置を特定する。CPU24は、受光センサ13A、13B間の受光レベルの差が大きい点の座標を障害物の位置情報として記憶する等により検出を実行する。
【0027】
また、受光部7は受光センサ13A、13Bを交互に配置している。受光部7内では、受光センサ13Aの個数と、受光センサ13Bの個数とは同じであるか、あるいはいずれか一方が他方よりも1個多い。受光部8も、受光センサ13A、13Bを交互に配置している。受光部8内でも、受光センサ13Aの個数と、受光センサ13Bの個数とは同じか、あるいはいずれか一方が他方よりも1個多い。受光部7から1箇所、受光部8から1箇所の2箇所から出力される電気信号を選択部10は検出制御部11へ入力する。検出制御部11は、受光センサ13A、13Bの周密さの度合いに応じて決まる解像度あるいは分解能で障害物の位置の座標を検出するようにしている。
【0028】
上述の構成のタッチパネル1に外乱光が入射しない状況で、何も画面2上に障害物が存在しないときに、CPU24に走査開始の指令が加えられる。例えば画面2に表示させる情報を司る別の制御部が、ユーザに対し入力を促す画面を表示させるときに、この別の制御部は、検出制御部11へ指令を送る。CPU24は処理を開始する。タッチパネル1の動作原理について図4を参照して述べる。
【0029】
図4はタッチパネル1へ外乱光が入射せず、障害物が存在しないときの光路マトリクスを示す図である。Aは受光センサ13Aを表す。Bは受光センサ13Bを表す。実線矢印は発光素子12から受光センサ13Aへの光ビームの走査光路を表す。破線矢印は発光素子12から受光センサ13Bへの光ビームの走査光路を表す。受光センサ13Aへの走査光路と、受光センサ13Bへの走査光路とを区別するために実線、破線により区別して表すこととする。
【0030】
CPU24は、Y軸最下に位置する発光部5の発光素子12と、X軸最左に位置する発光部6の発光素子12とを選択し、走査駆動を開始する。CPU24はY軸プラス方向に沿って発光部5内の発光素子12を切替えるとともに、この発光素子12に対面する受光部7内の受光センサ13A又は13BをY軸プラス方向に沿って切替える。CPU24はX軸プラス方向に沿って発光部6内の発光素子12を切替えるとともに、この発光素子12に対面する受光部8内の受光センサ13A及び13BをX軸プラス方向に沿って切替える。CPU24は走査速度で発光素子12を順次切替えることにより、駆動走査する。左辺から上辺に亘ってn個の受光センサ13A、13Bの出力電流は増幅器22により増幅される。増幅器22からの出力電圧はA/D変換され、n個の受光センサ13A及び13Bの全ての受光量がRAM26に順次記憶される。
【0031】
次に、外乱光が入射せず、障害物が存在するときに、CPU24は走査を指令される。図5はタッチパネル1へ外乱光が入射せず、障害物27が存在するときの光路マトリクスを示す図である。記号A、B等は図4の例と同じである。
【0032】
人の指やタッチペンなどの障害物27が開口3内の所定領域内の位置に接触し、その位置を通過する走査光路が遮断される。その走査光路上の受光センサ13A、13Bは、対となる発光素子12の発光タイミングで反応せず、これにより障害物27のX、Y座標が検出される。座標情報をCPU24はRAM26に記憶する。
【0033】
次に、タッチパネル1に外乱光が存在する状況で使用される例について比較例を参照しつつ述べる。外乱光は、蛍光灯や白熱灯、水銀灯などの人工光源や太陽光のような自然光を含む。発光ダイオードからの放出光など半導体のバンドギャップで決まるエネルギの波長光以外の略全ての光が外乱光に相当する。部屋内に置かれたタッチパネル1へ遠距離の太陽光や強力な照明灯などの外乱光が照射される。
【0034】
図6はタッチパネル1へ外乱光が入射し、障害物27が存在するときの光路マトリクスを示す図である。右側の外乱光照射領域28は外乱光により照射され続けている。図7は従来例に係る光学式タッチデバイスの構成要素の要部を示す図である。図8は従来例に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射し、障害物27が存在するときの光路マトリクスを示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
【0035】
図6に示す対31は、受光センサ13A、13Bの対を表す。対32〜38も同様である。外乱光が短波長側の赤外線領域の帯域成分を長波長側のそれよりも多く含む場合、受光センサ13Aの受光レベルは大きくなる。外乱光照射領域28では受光センサ13Aは無反応の状態が続き、対31〜38の各受光センサ13Aは検出に使用できない状態になる。
【0036】
検出制御部11は、交互に配置された対31〜38から出力される電流信号の電力を対31から対38へ向かって走査していく。対34、35では、各受光センサ13Bからの受光レベルが小さい。対31、32、33、36、37、38の各受光センサ13Bからは0よりも大きいレベルの電力を検出制御部11は検知する。検出制御部11は、各対31〜38内で受光センサ13A、13B間の差が大きい位置を求め、対34、35において差が大きいことを感知する。あるいは対33〜36で、受光センサ13Bの走査光路が遮光されることを検出制御部11は検知する。障害物の存在が検知される。隣接する受光センサ13A、13B間でのこの電力レベルの差を掃引することによって、検出制御部11は外乱光が存在している状況であっても、障害物27が触れていることが検知できる。
【0037】
一例として、ROM25は次の4つの受光レベルの閾値を保持しておく。外乱光が入射せず走査光路が遮光されない状態での受光レベル。外乱光が入射し走査光路が遮光されない状態での受光レベル。外乱光が入射し走査光路が遮光された状態での受光レベル。外乱光が入射せず走査光路が遮光された状態での受光レベル。検出制御部11は対31〜38の間で障害物の位置を求めるに当たり、これらの受光レベルを元に反応、無反応を検出する。
【0038】
従来例に係る光学式タッチパネル(又は光学式タッチデバイス)100は、図7に示すように、受光センサ90を垂直方向及び水平方向の検出素子として使用している。受光センサ90は短波長側の赤外線領域の光を検出するものである。ここでは受光センサ90を受光センサAと呼ぶ。垂直及び水平の各方向でタッチパネル100は全て同じ受光特性を有する。図8中のAは受光センサAを表す。
【0039】
図8からわかるように、光学的タッチパネル100は、障害物27(遮蔽物)により受光部への受光が遮られることでこの障害物27の座標を識別する仕組みにより検出している。しかし、日差しの方向が変わると、受光センサAに外乱光が入射し続けることがある。受光している状態が続くと、障害物27が存在する箇所はタッチデバイス等を触れたとしても受光センサAは無反応になる。受光センサAのみを使用して構成された従来例では、タッチデバイスを用いて検出することが一時的に不可能になることがある。
【0040】
これに対して、タッチパネル1は、図6に示すように、外乱光によって受光センサ13A(受光センサA)が使用不可能になっても、受光特性がこれと異なる受光センサ13B(受光センサB)によって障害物27を認識する事ができる。この場合、タッチパネル1が使用不可能に陥ることが回避されるようになる。
【0041】
かかる構成を講じた本実施形態によれば、受光特性の異なる受光センサ13A、13Bを用いるため、窓際などの強い日照光が放射されるような場所にタッチパネル1を設置する場合や、朝夕の時間経過に依存して変化する日照光や様々な照明光に対して、従来例の光学式タッチパネル100では操作不可能な状態に陥る可能性を持つ外乱光が発生したときも使用が可能になる。照明光とは屋内の電飾装置や広告、看板といったLED、ネオン菅といった照明等を含む。電飾装置等が夜間、点灯、点滅したとしてもタッチパネル1は誤動作なく使用することができる。
【0042】
これによって、外乱光により、タッチパネル1が受ける影響を低減させる方法が提供されるようになる。光学式を採用したタッチデバイスにおける、外乱光に対しての対策技術が実現される。
【0043】
(変形例)
図9、図10を参照して、2つの変形例について述べる。これらの変形例に係る光学式タッチデバイスは図1のタッチパネル1と略同様の構成を有する。
【0044】
図9に、第1の変形例に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射し、障害物27が存在するときの光路マトリクスを示す。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。同図中、"A"で表す受光センサ13Aは上側の一辺に配置されている。"B"で表す受光センサ13Bは、左側の一辺に配置されている。実線矢印は発光素子12から受光センサ13Aへの光ビームの走査光路を表す。破線矢印は発光素子12から受光センサ13Bへの光ビームの走査光路を表す。
【0045】
このような構成のタッチパネル1Aでは、検出制御部11は、交互に配置された対31〜38からの受光電力を対31から対38へ向かって走査していく。対34、35の受光レベルは、対31〜38の受光レベルよりも小さいことを検出制御部11は感知する。対34、35の2組の受光センサ13Aが反応していることを検出制御部11は検出できる。
【0046】
強い蛍光灯の下部にタッチパネル1Aが設置されると、このタッチパネル1Aには、受光センサ13Aの受光帯域成分を含み、一定の光強度を持つ照明光が常時照射され続けることが起こる。この第1の変形例では、蛍光灯から放射される照明光が有する支配的な波長帯域とは異なる波長帯域に受光感度を有する受光センサ13Bをタッチパネル1Aに設けておく。
【0047】
例えば室内で蛍光灯の下部に設置された状態で使用されるタッチパネル1Aは一定の光強度を持つ外乱光が常時入射され続ける。蛍光灯のような特定の外乱光に対して特化した構造をとることによって、タッチパネル1Aを恒常的に使用することが可能になる。
【0048】
また、図10は第2の変形例に係る光学式タッチデバイスへ外乱光が入射し、障害物27が存在するときの光路マトリクスを示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。実線矢印は発光素子12から受光センサ13Aへの光ビームの走査光路を表す。破線矢印は発光素子12から受光センサ13Bへの光ビームの走査光路を表す。
【0049】
同図では従来例で使用されていた受光センサ13Aと、この受光センサ13Aの受光特性と異なる受光特性を持つ受光センサ13Bとが、不定間隔に配置されている。例えば縦列では"B"、"A"、"A"が繰返され、受光センサ13Bの出現間隔が不定間隔である。
【0050】
このような構成のタッチパネル1Bでは、対31〜38の受光電力を検出制御部11は走査していく。対34、35、36では、各受光センサ13Bからの受光レベルが小さい。対33、37からは0よりも大きいレベルの電力が検知される。対34、35あるいは対34〜36で走査光路が遮光されることを検出制御部11は検知する。
【0051】
朝夕等の一定時間帯の外乱光に対して強い受光センサ13Bを少数配置しておくことによって、使用不可能な時間帯をなくす事が可能になる。少数とは、受光センサ13Bの数が受光センサ13A、13Bの総和に比べて少ない数であることを指す。
【0052】
以上のように実施の形態に係る光学式タッチデバイスによれば、窓際などの強い日照光が放射されるような場所に設置する場合や、朝夕の時間経過に依存して変化する様々な日照光や照明光に対して、通常の光学式のタッチデバイスでは操作不可能状態に陥る外乱光が発生したときも使用が可能になる。
【0053】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態では、光学式タッチデバイスはタッチパネルであったが、POS端末装置、テレビ電話、ナビゲーション装置のタッチスクリーンや、ブラウン管、プラズマディスプレイのポインティングデバイスに用いることができる。
【0054】
上記実施形態では障害物の位置を検出するために、受光センサ13A、13Bの受光レベルを走査していき受光レベルの差が大きく観測された箇所を障害物の位置としていた。この障害物の位置を検出する方法はこの方法に限定されるものではなく、CPU24は種々のアルゴリズムを用いて障害物の位置を検出することが可能であることは言うまでもない。この検出態様の変形をして実施したに過ぎない発明に対しても本発明の優位性は何ら損なわれるものではない。これらの変形した発明の実施は特許請求の範囲に規定された発明の範囲及びその均等範囲内に入る。
【0055】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B…タッチパネル(光学式タッチデバイス)、2…画面、3,3A,3B…開口、4…ハウジング、5,6…発光部、7,8…受光部、9…駆動部、10…選択部、11…検出制御部、12…発光素子、13A,13B…受光センサ、14A,14B…特性曲線、15,17…ドライブ回路、16,18…スイッチング素子、19,21…抵抗器、20…電源供給ライン、22…増幅器、23…A/D変換器、24…CPU、25…ROM、26…RAM、27…障害物、28…外乱光照射領域、31,32,33,34,35,36,37,38…対。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の画面が露出する開口を有するハウジングと、
このハウジングの前記開口の隣接する2辺に設けられ、それぞれ赤外線を放射する複数の発光素子と、
これらの発光素子を順次切替えて点灯駆動する駆動部と、
この駆動部による切替えのタイミングと同期したタイミング信号を出力し、各発光素子による走査光路が遮光されたことを検知して前記画面上に存在する障害物の位置を検出する検出制御部と、
この検出制御部が出力した前記タイミング信号によって選択され、前記複数の発光素子のいずれかより放射された前記赤外線の受光結果を前記検出制御部へ出力し、前記開口の残りの2辺に設けられた複数の受光センサと、を備え、
これらの受光センサは、互いに異なる受光特性を有する複数種類の受光センサを配置したことを特徴とする光学式タッチデバイス。
【請求項2】
前記開口の一辺に設けられた複数個の前記受光センサのうち、少なくとも1箇所において隣接する一対の受光センサは互いに受光特性が異なることを特徴とする請求項1記載の光学式タッチデバイス。
【請求項3】
互いに隣接し受光特性が異なる一対の受光センサが前記一辺に沿って交互に設けられたことを特徴とする請求項2記載の光学式タッチデバイス。
【請求項4】
前記複数の受光センサの受光感度の波長特性は互いに異なる波長帯域で受光感度を有し、各受光センサは外乱光に対して互いに異なるレベルの受光電力を出力し、
前記検出制御部は、前記複数の受光センサの間で受光レベルを掃引し、前記受光レベルの差によって前記障害物の位置を検出することを特徴とする請求項1記載の光学式タッチデバイス。
【請求項5】
前記検出制御部による検出は、前記外乱光が入射せず前記走査光路が遮光されない状態での受光レベルと、前記外乱光が入射し前記走査光路が遮光されない状態での受光レベルと、前記外乱光が入射し前記走査光路が遮光された状態での受光レベルと、前記外乱光が入射せず前記走査光路が遮光された状態での受光レベルとを用いることを特徴とする請求項4記載の光学式タッチデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−53840(P2012−53840A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197898(P2010−197898)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】