説明

光学式ポテンショメータ及び操作装置

【課題】ワイヤ等の線状動力伝達部材の長手方向への変位を検出可能とすること。
【解決手段】マニピュレータの挿入部1は、先端に動作部12を有する。動作部12は、駆動部21が駆動するワイヤ13の変位によって作動する。ワイヤ13には、ポテンショメータ部33が設けられている。ワイヤ13のポテンショメータ部を貫通する部分にはワイヤ13の長手方向に連続的に光反射率が異なる反射面42が固定されている。光学部35が輻射する光はポテンショメータ部33にその一端が固定された光ファイバ31により導かれ反射面42に照射される。反射面42により反射される反射光強度は、ワイヤ13の変位により異なる。前記反射光は光ファイバ31により光学部35へ導かれ、光学部35に受光され信号処理部36で信号処理されて、ワイヤ13の変位が求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式ポテンショメータ及びそれを有する医療用マニピュレータ等の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡、医療用マニピュレータ、処置具等の操作装置には、患者の体内に挿入される挿入部に、屈曲する動作手段が備わっている。それら動作手段の多くでは、ワイヤ等の線状動力伝達部材の牽引により駆動される機構が採用されている。操作装置を正確に操作するためには、動作手段の屈曲角度を検出する手段を設ける必要がある。しかしながら操作装置の径は細いため、従来のポテンショメータやエンコーダを内蔵することは困難である。また、操作装置の自由度が高い場合、関節数の増加に伴いそれらの屈曲角度を検出する手段の数が多くなり、該検出手段の計測部への電気的な配線が多くなる。細い操作装置内の機械機構の合間を縫って多くの配線をするのは困難である。
【0003】
計測部に電気的配線を必要としない光学式ポテンショメータが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1は、可動的に支持された符号板の面上にその移動方向に沿って透過率が異なる読み取り用トラックを設け、当該読み取り用トラックを挟んで発光ヘッド及び受光ヘッドを対向して配置し、符号板の移動により発光ヘッドから輻射し読み取り用トラックを透過して受光ヘッドで受光される光量が変化することを利用し符号板の移動を計測する光学式ポテンショメータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−40312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1は回転体の回転情報を検出するものであり、内視鏡、医療用マニピュレータ、処置具等の操作装置の動作手段の様に、ワイヤ等の線状動力伝達部材の長手方向への変位を検出するものではない。
そこで本発明は、線状動力伝達部材の長手方向への変位を検出可能な小型の光学式ポテンショメータ及びそれを用いて動作手段の屈曲角度を検出可能な操作装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすため、本発明の光学式ポテンショメータの一態様は、長手方向に移動する線状動力伝達部材と、前記線状動力伝達部材を長手方向に移動可能に保持する保持部材と、前記線状動力伝達部材の移動方向に沿って連続的に異なる光学特性を有する光学素子と、光を発する光源と、入射される光の光学特性を電気信号に変換する受光手段と、前記光源からの光を導いて前記光学素子へ出射すると共に、前記光学素子から入射した光を前記受光手段へ導き、前記光源からの光の出射位置及び前記光学素子からの前記光の入射位置が前記光学素子に対して一定の距離を有して保持された線状光伝送手段と、前記受光手段が出力する電気信号に基づいて、前記線状動力伝達部材の移動方向における前記線状動力伝達部材と前記保持部材間の変位量を算出する算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の操作装置の一態様は、長尺で細径の管状部材と、前記管状部材を挿通される線状動力伝達部材と、前記管状部材の一端に配置され、前記線状動力伝達部材の一端が固定されるとともに、該線状動力伝達部材の長手方向への移動により屈曲動作する動作手段と、前記線状動力伝達部材の他端が固定されるとともに、該線状動力伝達部材を長手方向に移動させる駆動手段と、前記線状動力伝達部材の変位量を計測する光学式ポテンショメータと、前記光学式ポテンショメータによって計測した前記線状動力伝達部材の変位量に基づいて前記動作手段の屈曲角度を算出する演算部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学素子のみで構成され、線状動力伝達部材の長手方向への変位に伴い変化する光学特性を利用して線状動力伝達部材の変位量を検出するので、小型省スペースな光学式ポテンショメータを提供することができ、また、それを用いて動作手段の屈曲角度を検出可能な操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の操作装置の第1の実施形態としての医療用マニピュレータの概観図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータリンク部の構成の一例を示す図。
【図3】第1の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおける反射部の構成の一例を示す図。
【図4】第1の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図5】第1の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるワイヤの変位と反射光の強度との関係の一例を示す図。
【図6】ワイヤの変位と医療用マニピュレータの動作部の屈曲角度の関係を説明する図。
【図7】第1の実施形態の第1の変形例に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図8】第1の実施形態の第2の変形例に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図9】第1の実施形態の第3の変形例に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図10】第1の実施形態の第4の変形例に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおける透過板支持部の構成の一例を示す図。
【図12】第2の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図13】第2の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す断面図。
【図14】第2の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるワイヤの変位と透過光の強度との関係の一例を示す図。
【図15】第2の実施形態の第1の変形例に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図16】第2の実施形態の第2の変形例に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータ部の構成の一例を示す図。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおける偏光板支持部の構成の一例を示す図。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータリンク部の周辺部分の概観を示す図。
【図19】第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータリンク部のガイド孔の一例を示す図。
【図20】第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるガイド孔に沿ったポテンショメータリンク部の断面の一例を示す図。
【図21】第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるワイヤの径方向の断面の一例を示す斜視図。
【図22】第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるワイヤの軸方向の断面の一例を示す図。
【図23】第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータリンク部とワイヤの断面の一例を示す図。
【図24】第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるワイヤの変位と反射光の強度との関係の一例を示す図。
【図25】第4の実施形態に係る光学式ポテンショメータにおけるポテンショメータリンク部とワイヤの変形例の要部の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の説明では、操作装置として医療用マニピュレータを例に挙げる。勿論、本実施形態の構成は、内視鏡や処置具等他の操作装置に適用されても良い。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る操作装置としての医療用マニピュレータは、患者の体内に挿入される挿入部1と、該挿入部1を動作させる制御装置2と、本発明の第1の実施の形態に係る光学式ポテンショメータ3と、を備えている。挿入部1は、管状部11と、動作部12と、ワイヤ13と、を具備する。また、制御装置2は、駆動部21と、制御部22と、操作部23と、表示部24とを有する。そして、光学式ポテンショメータ3は、光ファイバ31と、ポテンショメータリンク部32と、ポテンショメータ部33と、ポテンショメータ信号処理部34と、を備え、ポテンショメータ信号処理部34は、光学部35と信号処理部36とを有している。
【0011】
管状部11は、例えば外径10mm、長さ1〜2mの細長い形状を有し、その一端には例えば長さ5,6cm程度の屈曲自在な動作部12を有する。この動作部12は、ワイヤ13の変位によって駆動される機構を有する。即ち、挿入部1はその内部に、長手方向にそれらの中心軸線と平行な孔を有する。ワイヤ13は、前記孔を挿入部1の長手方向に挿通している。挿入部1の長手方向中心軸と垂直な面(以下、「円周面」と称する)内の孔及びそれを挿通するワイヤ13の位置は、例えば2つの孔が挿入部1の円周面の中心に対して対称の位置であり、別の2つの孔が挿入部1の円周面の中心を対称軸として前記2つの孔と90度回転対称の位置であるとする。前記挿入部1の4つの孔をそれぞれ挿通する4本のワイヤ13の一端は、動作部12の管状部11と接続していない端(先端側)の近傍に固定され、他端は管状部11の動作部12が接続されている端と他端側(基端側)に設けられる駆動部21に接続される。駆動部21は、例えば回転型モータとプーリの組合せやリニア型のモータなどである。4本のワイヤ13は、それぞれモータに接続されるか、挿入部1の円周面の中心に対して対称な2本のワイヤ13がそれぞれ一体化され2組のワイヤ13を構成し、該2組のワイヤ13がそれぞれ別々のプーリに巻かれる構成を有する。この駆動部は、例えば、挿入部1と一体的に構成され、図示しないコネクタを介して、例えばコンピュータ等である制御部に接続される。
【0012】
制御部22は、図示しないカメラによって、該挿入部1の動作部と処置部位等とを同一視野に収めて撮影した画像の信号に基づき、ディスプレイ等から成る表示部24に該画像を表示させる。操作者は、そのカメラが撮影し、表示部24に表示された画像を見ながら、動作部12に意図した動作をさせるため、例えばジョイスティックやハンドル等である操作部23を操作する。操作部23は、操作者が入力する信号を制御部22に出力する。制御部22は、操作部23から入力されたこの信号に基づき、動作部12の作動に必要な駆動部21のモータを動作させるための信号を所定の計算方法で生成し、それを駆動部21に出力する。駆動部21は、制御部22から入力されたこの信号に基づき、モータを動作させ、それによって、ワイヤ13は、送出又は牽引され、挿入部1の長手方向に移動する。
【0013】
動作部12は、このワイヤ13の変位により屈曲する。例えば、1本のワイヤが牽引され、動作部12の円周面中心に対して該ワイヤと対称の位置にあるワイヤが送出される場合、動作部12は、その中心軸に対して牽引されたワイヤが位置する方向に屈曲する。動作部12は、その円周面中心に対して対称な2本のワイヤを当該中心に対して回転対称の位置に2組有するため、あらゆる向きに自在に屈曲できる。この様に、管状部11は、例えば、長尺で細径の管状部材として機能し、ワイヤ13は、例えば、線状動力伝達部材として機能し、駆動部21は、例えば、線状動力伝達部材を長手方向に移動させる駆動手段として機能し、動作部12は、例えば、線状動力伝達部材の長手方向への移動により屈曲動作する動作手段として機能する。
【0014】
図1に示す様に、挿入部1の管状部11の前記動作部12の近傍には、本実施形態の光学式ポテンショメータにおける計測部である円柱形状のポテンショメータリンク部32が配設されている。本実施形態では、ポテンショメータリンク部32は、管状部11に配設されているが、動作部12の一部として配設されても良い。
【0015】
図2に示すように、ポテンショメータリンク部32は、その長手方向に中心軸と平行に配置された円柱形状のポテンショメータ部33を有する。ポテンショメータ部33の数は、ワイヤ13の本数と同じであり、本実施形態では4つである。ポテンショメータ部33の円周面における位置は、挿入部1におけるワイヤ13の貫通位置に依存する。
【0016】
ワイヤ13はポテンショメータ部33を貫通しており、その貫通部に対応して、図3に示すように反射部41が設置されている。図3において、(a)は反射部41の斜視図、(b)は反射部41の円周面で切断した断面図、(c)は反射面42と対向する向きから反射部41を見た図をそれぞれ示している。反射部41は、細長い円筒形状をその中心軸と平行な面で切断し長手方向に平面を設けた形状をしている。前記平面は反射面42を構成している。反射面42は、その面内で長手方向の位置に応じて、光反射率を異にするものであり、本実施形態では、反射面42の光反射率は、反射面42の長手方向の一端から他端へ連続的に変化するものとしている。この反射面42は、例えばコーティングにより一定の反射率の部材を反射部41に形成した後、その上に透過率が連続的に変化するNDフィルタを載上することで形成している。なお、この反射率の違いは、アナログ的な連続変化に限定するものではなく、デジタル的に連続した変化であれば良く、つまり、必要とされる分解能を満たせば離散的に変化していても構わない。反射部41は、ワイヤ13が挿通した形態でワイヤに固定されている。また、反射部41(及び反射面)は、柔軟性があり、ワイヤ13の屈曲に応じて屈曲する部材で構成してもよい。この様に、反射部41は、例えば、その軸線を長手方向に移動する線状動力伝達部材の中心軸線と平行にし、かつ該軸線と平行な平面を有する柱状形状の光反射体支持部材として或いは線状動力伝達部材に対し一体に移動可能に設けられた光学素子支持部材として機能し、反射面42は、例えば、線状動力伝達部材の移動方向に沿って連続的に変化する光学特性を有する光学素子、或いは前記移動方向に沿って反射率が連続的に変化する光反射体として機能する。
【0017】
また、図4に示すように、ポテンショメータ部33には、光ファイバ31の一端が導入されている。なお、図4において、(a)はポテンショメータ部の斜視図、(b)は該ポテンショメータ部33の長手方向中心軸に沿った断面図、(c)は(b)中のc−c線矢視断面である。ワイヤ13に固定された反射部41は、ポテンショメータ部33を長手方向にその中心軸と平行に貫通する反射部用孔43(支持部材孔)を挿通し、反射部用孔43と反射部41で嵌合構造を形成している。反射部41は、反射部用孔43に沿って摺動自在である。更に、ポテンショメータ部33内には、反射部用孔43と平行に光ファイバ用孔44が設けられ、光ファイバ31は、該光ファイバ用孔44に挿入され固定されている。光ファイバ31の端部は該ポテンショメータ部33内にあり、そこには、プリズム46が配設されている。そして、ポテンショメータ部33内には、前記反射部用孔43とこのプリズム46との間に、前記反射部用孔43と垂直な孔である光路孔45を更に有している。このような構造により、光ファイバ31の端部と光路孔45の一端とは、プリズム46で光学的に接続されている。
【0018】
光ファイバ31は、管状部11内を通っており、そのポテンショメータ部33に接続している端(先端側)とは別の端(基端側)は、管状部11の動作部12が配設されている端(先端側)とは反対側の端(基端側)の外部に設置されているポテンショメータ信号処理部34に、図示しない光コネクタ等を介して接続している。ポテンショメータ信号処理部34は、前述したように、光学部35と信号処理部36とを有する。光学部35は、図示しない光源と、レンズと、受光素子とを有しており、前記光ファイバ31は、この光学部35に接続している。
【0019】
光学部35内の図示しない光源は、一定強度の光を輻射するよう構成されている。光学部35内のレンズ等の光学部材は、前記光源が輻射した光を光ファイバ31に導く。光ファイバ31は、前記光をポテンショメータ部33に伝搬する。そして、光ファイバ31の端部にあるプリズム46は、光ファイバ31により導かれた光の進行方向を90度変化させ、光路孔45を通して、反射部41の反射面42に光を照射する。ここで、光ファイバ31が反射面42の移動方向と平行即ちワイヤ13と平行に保持されていること、また、光ファイバ31が導いた光を反射面42に垂直に照射するための光路変換にプリズム46を用いることは、本実施形態の光学式ポテンショメータの小型化に効を奏している。この様に、光学部35内の光源は、例えば、光を発する光源として機能し、光ファイバ31は、例えば、光源からの光を導いて光学素子へ出射する線状光伝送手段として機能し、プリズム46は、例えば、線状光伝送手段の光路を光学素子へ向ける光路変換部材として機能する。
【0020】
前記反射面42は、入射された光を反射する。この時、挿入部1の動作部12を作動させるためにワイヤ13がその長手方向に移動すると、ワイヤ13に固定されている反射部41もワイヤ13の移動に伴って長手方向に移動する。反射部41に設けられた反射面42は、前述したように長手方向に光反射率が連続的に変化している。反射部41の移動に伴い反射面42も移動するのに対し、反射面42へ光を出射する光ファイバ31の端部並びにプリズム46、光路孔45は、ポテンショメータ部33に固定されている。すなわち、光源からの光の出射位置は、反射面42に対して一定の距離を有してポテンショメータ部33に保持されている。そのため、反射面42に向けて出射された光を、反射面42が反射する部分の反射率はワイヤ13の変位に応じて変化する。そして、反射面42に入射し反射される光の強度は、ワイヤ13の変位に応じて変化する。尚、前述したように反射部41はポテンショメータ部33の反射部用孔43と嵌合構造になっている。このため、反射部41は、ポテンショメータ部33内では変形しないので、前記光の光路長は変化しない。ワイヤ13の変位と反射光の強度との関係の一例を図5に示す。この様に、ポテンショメータ部33は、例えば、光学素子が設けられた部分の線状動力伝達部材を移動可能に保持すると共に、線状光伝送手段の光の出射位置及び入射位置を前記光学素子に対して一定の距離を有して保持する保持部材として機能する。
【0021】
本実施形態では、光学部35から反射面42へ出射する光を導く線状光伝送手段と反射面42から反射する光を光学部35へ導く線状光伝送手段とを兼用させるため、反射面42が反射する光は、反射面42への出射時と同じ光路を通り光学部35に導かれる。即ち、反射面42が反射する光は、光路孔45を通りプリズム46に入射する。プリズム46は、前記反射光の進行方向を90度変化させ、光ファイバ31に該反射光を導く。光ファイバ31は、前記反射光を光学部35に伝搬する。この様に、光ファイバ31は、例えば、光学素子から入射した光を受光手段へ導く線状光伝送手段として機能する。なお、以上の説明では、線状光伝送手段としての光ファイバ31、プリズム46及び光学部35内の光学部材が用いられているが、光ファイバ31の射出光をコリメート光にする凸レンズやボールレンズ等をさらに設置しても良い。
【0022】
光学部35内の図示しない受光素子は、前記反射面42によって反射され、光ファイバ31を介して伝搬された光を受光し、光強度に応じた電気信号を生成する。光学部35は、ここで生成した電気信号を、信号処理部36に出力する。信号処理部36は、この光学部35から入力された電気信号に対し、ポテンショメータで行われる一般的な信号処理である波形処理等の所定の処理を行う。信号処理部36は、こうして得た信号処理の結果の信号を、制御部22に出力する。制御部22は、この信号処理部36から入力された信号に基づき、既知である信号と変位の関係を用いてワイヤ13の変位量を算出する。
【0023】
なお、本実施形態では、光源からの光が光ファイバ31から出射する出射位置及び、反射面42から反射された光が光ファイバ31に入射する入射位置は、ポテンショメータ部33に固定されている。そのため、ワイヤ13の変位量とは、ワイヤ13とポテンショメータ部33の間の変位量となる。
【0024】
この様に、光学部35内の受光素子は、例えば、光学素子から伝搬した光の光学特性を電気信号に変換する受光手段として機能し、信号処理部36は、例えば、線状動力伝達部材と保持部材間の変位量を算出する算出手段として機能する。
制御部22は、この様にして算出されたワイヤ13の変位量から動作部12の屈曲角度を算出する。ワイヤ13の変位量から動作部12の屈曲角度を算出する方法は様々であるが、1つの方法は実際にワイヤ13の変位量を様々に変化させながら動作部12の屈曲角度を測定し、その関係式を導くものである。或いは、ワイヤ13の変位量と動作部12の屈曲角度との関係のテーブルを作成しておいて、それを読み出しても良い。この様に、制御部22は、例えば、線状動力伝達部材の変位量に基づいて前記動作手段の屈曲角度を算出する演算部として機能する。
【0025】
ワイヤ13の変位量から動作部12の屈曲角度を求める別の方法を、図6を用いて説明する。(a)に示すように、動作部12の先端付近には、ワイヤ13が取り付けられるワイヤ取付け位置P1がある。動作部12には、ワイヤ13を牽引した際に屈曲する部分の最も基端側である屈曲開始位置P2がある。ワイヤ取付け位置P1と屈曲開始位置P2の間の中心軸線C上の長さをLとする。また、中心軸線Cからワイヤ取付け位置P1までの径方向の長さをrとする。(b)に示すように、駆動部21が、一方のワイヤ13をΔxだけ牽引し、他方のワイヤ13をΔxだけ送出する時、P1からP2までの曲率がいずれの位置でも同じである場合、Lは変化しないので、屈曲開始位置P2とワイヤ取付け位置P1の間の角度θに対するワイヤ13の移動量Δxの関係は、θ=Δx/rと成る。尚、ここでは1組の動作部12の中心に対して対称な位置にあるワイヤ13について説明したが、複数組のワイヤ13が同時に牽引及び送出される場合にも上式は成り立つ。従って、ワイヤ13の変位が求まれば、動作部12の屈曲量も求まる。
【0026】
上述の通り、本実施形態の光学式ポテンショメータは、挿入部1内に光ファイバ31やプリズム46等の光学部材のみを用いて構成しており、かつ、動作部の関節数が増えてもポテンショメータリンク部32の数は増えないため、小型化することができ、直径が10mm以下の細径な医療用マニピュレータにも搭載できる。また、挿入部1内にポテンショメータ用には電気部品が用いられていないので、そのための電源線や信号線の配線が不要であり、省スペースである。本実施形態の操作装置は、光学式ポテンショメータのポテンショメータリンク部32を動作部12の近傍に設置することで、動作部12の実際の変位をより正確に求めることができる。これにより実際の変位と目標変位との差分を用いてフィードバック制御をしながら駆動部21のモータを動作させることができ、動作部12の位置決め精度を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、挿入部1内に何ら電気部品が用いられていないので、挿入部1に設けた光学式ポテンショメータの計測部であるポテンショメータリンク部32は使用時に電気的なノイズの影響を受けることがない。更に同理由で、挿入部1は滅菌や洗浄も容易となる。
【0028】
なお、挿入部1の先端にカメラを内蔵させれば、操作者は、挿入部1の先端が向いている方向の画像を表示部24で観察しながら、操作部を操作できるので、動作部12に意図した動作をさせることが容易となる。
次に本実施形態の変形例を図面を参照して説明する。尚、本実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0029】
まず、本実施形態における図4(c)に相当する図7を参照して、本実施形態の第1の変形例に係る光学式ポテンショメータを説明する。本変形例では、反射部41がポテンショメータ部33に対して円周方向に回転することを防止するため、ポテンショメータ部33と反射部41とに、それぞれ凹部と凸部を設け、それらが嵌合するよう構成したものである。勿論、図7に示す形状は一例であり、反射部41とポテンショメータ部33の断面形状が、互いに嵌合しかつ回転しない形状であれば、どのような形状であっても良い。
【0030】
次に、本実施形態における図3(a)に相当する図8(a)及び(b)を参照して、本実施形態の第2の変形例に係る光学式ポテンショメータを説明する。反射部41の形状は、図8(a)に示すようにワイヤ13を挿通する中空を有する四角柱であっても良いし、図8(b)に示すようにワイヤ13を挿通する中空を有する三角柱であっても良い。図8(c)及び(d)は、それぞれの場合の本実施形態における図4(c)に相当する断面図であり、これらの図に示す様に、前記反射部41は、ポテンショメータ部33と嵌合構造を形成する。本形状により、第1の変形例と同様に反射部41のポテンショメータ部33に対する円周方向の回転を防止することができる。その結果、反射部41への光の照射並びに反射部41からの反射光の受光を安定して行うことができる。
【0031】
なお、第1の実施形態及びその第1乃至2の変形例において、反射部41はワイヤ13が挿通する中空を有さず、反射部41の長手方向両端面にワイヤ13を固定する構造でも良い。
次に、本実施形態における図4(b)に相当する図9(a)及び(b)を参照して、本実施形態の第3の変形例に係る光学式ポテンショメータを説明する。図9(a)に示した変形例では、本実施形態におけるポテンショメータ部33のプリズム46を、ミラー47に置き換えている。即ち、光学部35の光源から出射した光は、光ファイバ31によってミラー47に導かれる。ミラー47は導かれた前記光の進行方向を90度変化させる。前記光は光路孔45を介して、反射部41に照射される。また、図9(b)に示した変形例では、光ファイバ31は、光ファイバ用孔44を挿通し、光ファイバ用孔44の端部で湾曲し、光路孔45を挿通する。図9(a)(b)いずれの構成でも、伝搬される光は、反射部41の反射面42に垂直に照射する。反射面42による反射光は、入射光と同光路を通り光ファイバ31によって光学部35に導かれる。この様に、ミラー47及び光ファイバ31の湾曲部は、例えば、線状光伝送手段の光路を光学素子へ向ける光路変換部材として機能する。
【0032】
次に、本実施形態における図4(c)に相当する図10を参照して、本実施形態の第4の変形例に係る光学式ポテンショメータを説明する。本変形例では、反射面42への入射光の光路と反射面42からの反射光の光路を別にしている。即ち、光学部35内の光源が輻射した光は光ファイバ31aに導かれる。光ファイバ31aは、前記光をポテンショメータ部に伝搬する。光ファイバ31aの端部にあるプリズム46aは、光ファイバ31aにより導かれた光の進行方向を変化させ、光路孔45aを通して、反射部41の反射面42に光を照射する。反射面42が反射する光は、光路孔45bを通りプリズム46bに入射する。プリズム46bは、前記反射光の進行方向を変化させ、光ファイバ31bに該光を導く。光ファイバ31bは、前記反射光を光学部35に伝搬する。この様に、光ファイバ31aは、例えば、光源から前記光学素子へ光を導く第1の線状光伝送体として機能し、光ファイバ31bは、例えば、光学素子から前記受光手段へ光を導く第2の線状光伝送体として機能する。
尚、第3の変形例、第4の変形例及び第1又は第2の変形例はそれぞれ組み合わせて用いても良い。
【0033】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点に限定して説明する。尚、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0034】
第1の実施形態では、ポテンショメータ部33内に長手方向の位置に応じて光反射率が変化する反射面42を設置し、光ファイバ31で導いた光を該反射面42に照射し、反射光を得て、反射光強度から反射面42の位置、即ち、ワイヤ13の変位を計測する光学式ポテンショメータを示した。本第2の実施形態では、ポテンショメータ部33内に、光反射率を異にする手段に替わり、光透過率を異にする手段を設置する。
【0035】
即ち、本第2実施形態に係る光学式ポテンショメータは、図11に示すように、前記第1実施形態における反射部の代わりに、透過板支持部51及び透過板52を有する。透過板支持部51は、例えばワイヤ13を挿通する細長い円筒形状をしており、円筒の外部に透過板52を支持する。透過板52は、例えば、細長い平板形状をしており、透過板支持部51の円周面と垂直かつ透過板支持部51の中心軸と透過板52の長手方向が平行になるように取り付けられている。透過板52は、その長手方向の位置に応じて、光透過率を異にする。本実施形態では、図11に示す様に、透過板52の光透過率は、長手方向の一端から他端へ連続的に変化するものとしている。勿論、この光透過率の違いは、アナログ的な連続変化ではなく、デジタル的な連続変化でも良い。透過板支持部51はワイヤ13が挿通された形態でワイヤに固定されている。さらに、透過板支持部51及び透過板52は、柔軟性がある部材で形成され、ワイヤの屈曲に応じて屈曲する。この様に、透過板支持部51は、例えば、線状動力伝達部材に対し一体に移動可能に設けられた光学素子支持部材として機能し、透過板52は、例えば、線状動力伝達部材の移動方向に沿って連続的に変化する光学特性を有する光学素子、或いは前記移動方向に沿って透過率が連続的に変化する光透過体として機能する。
【0036】
また、本実施形態においては、図12及び図13に示すように、ポテンショメータ部33には、光ファイバ31a及び光ファイバ31bが導入されている。ワイヤ13に固定された透過板支持部51は、ポテンショメータ部33を長手方向にその中心軸と平行に貫通し、透過板支持部51及び透過板52の形状に合わせた透過板支持部用孔53(支持部材孔)を挿通し、透過板支持部51及び透過板52と透過板支持部用孔53とで嵌合構造を形成している。これにより、透過板支持部51及び透過板52は、透過板支持部用孔53に沿って摺動自在である。ポテンショメータ部33は、透過板支持部用孔53と平行に光ファイバ用孔44a及び光ファイバ用孔44bを有する。光ファイバ用孔44a及び光ファイバ用孔44bは、例えば、透過板支持部用孔53を挿通する透過板52を対称軸とする対称の位置にある。光ファイバ31a及び光ファイバ31bは、該光ファイバ用孔44a及び光ファイバ用孔44bにそれぞれ挿入され固定される。また、ポテンショメータ部33はその内部に、光ファイバ用孔44a及び光ファイバ用孔44bの端部であり、透過板52を挟んで対峙する位置にプリズム46a及びプリズム46bを有する。また、ポテンショメータ部33は、プリズム46a及びプリズム46bを結ぶ位置には光路孔54a及び光路孔54bを有する。プリズム46a及びプリズム46bは、透過板52及び光路孔54a及び光路孔54bを挟んで、光ファイバ31aと光ファイバ31bとの光路を結ぶように光路を90度変化させる。
【0037】
第1の実施形態と同様に、光ファイバ31aは、光学部35内の光源が輻射する光をポテンショメータ部に伝搬する。光ファイバ31aの端部にあるプリズム46aは、光ファイバ31aにより導かれる光の進行方向を90度変化させ、光路孔54aを通して、透過板52に光を照射する。
【0038】
入射された光は、透過板52を透過する。この時、挿入部1の動作部12を作動させるためにワイヤ13がその長手方向に移動すると、ワイヤ13に固定される透過板支持部51もワイヤ13の移動に伴って長手方向に移動する。透過板支持部51に設けられた透過板52は、長手方向に光透過率が連続的に変化するため、透過板52に入射し透過する透過光の強度は、ワイヤ13の変位に応じて変化する。尚、透過板52はポテンショメータ部33の透過板支持部用孔53と嵌合構造になっており、ポテンショメータ部33内では変形しないため光路は変化しない。ワイヤ13の変位と透過光の強度との関係の一例を図14に示す。
【0039】
透過板52を透過した光は、光路孔54bを通り、プリズム46bに入射する。プリズム46bは、前記透過光の進行方向を90度変化させ、光ファイバ31bに該透過光を導く。光ファイバ31bは、前記透過光を光学部35に伝搬する。光学部35に伝搬された前記透過光は、第1の実施形態と同様に信号処理され、その結果、ワイヤ13の変位が求まる。この様に、光ファイバ31aは、例えば、光源からの光を導いて光透過体へ出射する第1の線状光伝送体として機能し、光ファイバ31bは、例えば、前記光透過体を透過してきた光を入射して受光手段へ導く第2の線状光伝送体として機能する。
【0040】
本実施形態の光学式ポテンショメータは、第1の実施形態と同様に、挿入部1内に光ファイバやプリズム等の光学部材のみを用い、電気部品が用いられておらず、電源線や信号線の配線が不要であるため、かつ、動作部の関節数が増えてもポテンショメータリンク部32の数は増えないため、小型省スペース化できる。また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、光学式ポテンショメータのポテンショメータリンク部を動作部12の近傍に設置することで、動作部12の実際の変位をより正確に求めることができ、挿入部1の位置決め精度を向上させることができる。
【0041】
さらに、挿入部1内に電気部品が用いられていないので、挿入部1に設けた光学式ポテンショメータの計測部であるポテンショメータリンク部は使用時に電気的なノイズの影響を受けることがなく、更に本挿入部1は滅菌や洗浄も容易となる。
次に、第2の実施形態の変形例を図面を参照して説明する。尚、本実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0042】
図15は、本実施形態における図13中のC−C線矢視断面図に相当する。この図15に示すように、本実施形態の第1の変形例に係る光学式ポテンショメータでは、透過板支持部を円柱形状ではなく三角柱や四角柱としたものである。また、第1の実施形態及びその変形例と同様に、透過板支持部51はワイヤ13が挿通する中空を有さず、透過板支持部51の長手方向両端面にワイヤ13を固定する構造でも良い。
【0043】
次に、本実施形態における図13中のB−B線矢視断面図に相当する図16を参照して、本実施形態の第2の変形例に係る光学式ポテンショメータを説明する。前記第1の実施形態の第2の変形例と同様に、本第2の実施形態でも、ポテンショメータ部33のプリズム46a及び46bを、それぞれミラー47a及び47bに置き換えても良いし、光ファイバ31a及び31bを湾曲させても良い。
【0044】
即ち、ミラー47a及び47bに置き換えた場合には、光学部35の光源から出射した光は、光ファイバ31aによってミラー47aに導かれる。ミラー47aは、導かれた前記光の進行方向を90度変化させる。前記光は、光路孔54aを通り、透過板52を透過し、光路孔54bを通りミラー47bに到る。ミラー47bは、前記光の進行方向を90度変化させ、光ファイバ31bに該光を導く。
【0045】
また、光ファイバ31a及び31bを湾曲させた場合には、光ファイバ31a及び31bは、光ファイバ用孔44a及び44bをそれぞれ挿通し、光ファイバ用孔44a及び44b端部で湾曲し、光路孔54a及び54bをそれぞれ挿通する。
いずれの構成でも、伝搬される光は、透過板52と垂直に透過板52を透過する。
尚、第2の変形例は、第1の変形例と組み合わせて用いても良い。
【0046】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、第2の実施形態との相違点に限定して説明する。尚、第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0047】
前記第2の実施形態では、ポテンショメータ部33内に長手方向の位置に応じて光透過率が変化する透過板52を設置し、光ファイバ31aで導いた光を当該透過板52に照射し、透過光を得て、透過光強度から透過板52の位置、即ち、ワイヤ13の変位を計測する光学式ポテンショメータを示した。本第3の実施形態では、ポテンショメータ部33内に、光透過率を異にする手段に替わり、偏光特性を異にする手段を設置する。
【0048】
即ち、本第3実施形態に係る光学式ポテンショメータは、図17に示すように、図11を参照して説明した第2の実施形態における透過板支持部51を偏光板支持部61に、透過板52を偏光板62に、それぞれ変更している。その他の構成は第2の実施形態と全く同じである。偏光板62は、その長手方向の位置に応じて、偏光特性を異にする。本実施形態では、図17に示す様に、偏光板62の長手方向の位置に応じて、偏光の角度が必要とされる分解能で離散的に異なっている。この様に、偏光板支持部61は、例えば、線状動力伝達部材に対し一体に移動可能に設けられた光学素子支持部材として機能し、偏光板62は、例えば、線状動力伝達部材の移動方向に沿って連続的に異なる光学特性を有する光学素子として機能する。
【0049】
本実施形態のポテンショメータ部33は、図12及び13を参照して説明する第2の実施例におけるポテンショメータ部33と同様であり、変更点は透過板支持部51を偏光板支持部61に、透過板52を偏光板62にそれぞれ変更している点のみである。
第2の実施形態と同様に、光ファイバ31aは、光学手段16内の光源が輻射する前記光をポテンショメータ部に伝搬する。光ファイバ31aの端部にあるプリズム46aは、全反射プリズムであり、光ファイバ31aにより導かれる光の進行方向を90度変化させ、光路孔54aを通して、偏光板62に光を照射する。偏光板62は、入射された光を透過させる際に偏光させる。この時、挿入部1の動作部12を作動させるために、ワイヤ13がその長手方向に移動すると、ワイヤ13に固定される偏光板支持部61もワイヤ13の移動に伴って長手方向に移動する。偏光板支持部61に設けられた偏光板62は、長手方向に偏光の角度が異なるため、偏光板62に入射し透過する透過光の偏光の角度は、ワイヤ13の変位に応じて変化する。偏光板62を透過する光は、光路孔54bを通り、プリズム46bに入射する。プリズム46bは、全反射プリズムであり、光の進行方向を90度変化させ、光ファイバ31bに光を導く。光ファイバ31bは、第2の実施形態と同様に、前記透過光を光学部35に伝搬する。光学部35は、回転する偏光板等、偏光の角度の情報を得ることができる手段を備えており、透過光の偏光の角度の変化を知ることができる。透過光の偏光の角度の変化を知ることで、ワイヤ13の相対的な変位情報を得る。この様に、光ファイバ31aは、例えば、光源からの光を導いて光透過体へ出射する第1の線状光伝送体として機能し、光ファイバ31bは、例えば、前記光透過体を透過してきた光を入射して受光手段へ導く第2の線状光伝送体として機能する。
【0050】
本実施形態の光学式ポテンショメータは、第1乃至2の実施形態と同様に、挿入部1内に光ファイバや全反射プリズム等の光学素子のみを用い、電気部品が用いられておらず、電源線や信号線の配線が不要であるため、かつ、動作部の関節数が増えても光学素子の数は増えないため、小型省スペース化できる。また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、光学式ポテンショメータのポテンショメータリンク部を動作部12の近傍に設置することで、動作部12の実際の変位をより正確に求めることができ、動作部の位置決め精度を向上させることができる。さらに、挿入部1内に電気部品が用いられていないので、挿入部1に設けた光学式ポテンショメータの計測部であるポテンショメータリンク部は使用時に電気的なノイズの影響を受けることがなく、更に本挿入部1は滅菌や洗浄も容易となる。
【0051】
第1乃至2の実施形態では反射部41の光反射率又は透過板52の光透過率がその位置に応じてアナログ的に連続的に異なっているのと違い、本実施形態の偏光板62はその位置に応じて偏光の角度が離散的に異なっている。しかしながら、必要とされる分解能で離散的に異なっているので、即ち、デジタル的には連続的に異なっているので、上記第1、第2実施形態と同様に変位量検出は可能である。さらに、本実施形態では、偏光特性を利用しているので、第1乃至2の実施形態では必要となる光源における輻射光の強度の変化や、光学部材における光強度の減衰等、光強度変化に応じた補正が、本実施形態では必要ない。
【0052】
本実施形態の変形例としては、第2の実施形態の変形例と同様である。即ち、第1の変形例では、図15を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、ポテンショメータ部33は、円柱形状に限らず、三角柱や四角柱の形状を用いても良い。また、第1の実施形態及びその変形例と同様に、偏光板支持部61はワイヤ13が挿通する中空を有さず、偏光板支持部61の長手方向両端面にワイヤ13を固定する構造でも良い。
【0053】
また、第2の変形例では、図16を参照して説明した第2の実施形態の第2の変形例と同様に、ポテンショメータ部33の全反射プリズム46a,46bを、ミラー47a及び47bに置き換えても良いし、光ファイバ31a及び31bが、光ファイバ用孔44a及び44bをそれぞれ挿通し、光ファイバ用孔44a及び44b端部で湾曲し、光路孔54a及び54bにそれぞれ挿通する構成でも良い。
また、第2の変形例は、第1の変形例と組み合わせて用いても良い。
【0054】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点に限定して説明する。尚、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0055】
第1の実施形態では、光学素子、或いは光反射体として機能する反射面42を、線状動力伝達部材として機能するワイヤ13に設け、線状光伝送手段として機能する光ファイバ31を、線状光伝送手段の光の出射位置及び入射位置を上記光学素子に対して一定の距離で保持する保持部材として機能するポテンショメータ部33に保持する光学式ポテンショメータを示した。本第4の実施形態では、上記線状光伝送手段として機能する光ファイバ31を、線状動力伝達部材として機能するワイヤ413に保持し、上記光学素子、或いは上記光反射体として機能する反射面442を、ワイヤ413を長手方向に移動可能に保持する保持部材として機能する光学式ポテンショメータ400に設けている。なお、本第4の実施形態では光学式ポテンショメータ400とポテンショメータリンク部432は一体で形成されている。光学式ポテンショメータ400とポテンショメータリンク部432が、別体となっており、ポテンショメータリンク部432に光学式ポテンショメータ400が組込まれていてもよい。
【0056】
ポテンショメータリンク部432の周辺部分の概観を図18に示す。図18に示すように、ポテンショメータリンク部432は4つのガイド孔433を有している。ガイド孔433は、ポテンショメータリンク部432を直線的に貫通している。4つのガイド孔433にそれぞれ4本のワイヤ413が通っている。ワイヤ413は、ポテンショメータリンク部432に対して長手方向に移動可能である。ワイヤ413は、少なくとも後述する反射面442が位置する範囲では直線的に移動する。
【0057】
ポテンショメータリンク部432のガイド孔433を図19に示す。また、ガイド孔433に沿ったポテンショメータリンク部432の断面を図20に示す。図19と図20に示すように、ガイド孔433の内面には全周に亘って反射面442が形成されている。反射面442は、上記第1の実施形態と同様に、その面内で長手方向の位置に応じて、光反射率を異にするものであり、反射面442の光反射率は、反射面442の長手方向の一端から他端へ連続的に変化するものとしている。
【0058】
図21と図22にワイヤ413を示す。図21は、ワイヤ413の径方向の断面を示した斜視図である。図22は、ワイヤ413の軸方向の断面図である。図21と図22に示すように、ワイヤ413は中空ワイヤで構成されており、その全長にわたって延びている中空部452を有している。ワイヤ413の中空部452内には、光ファイバ31の少なくとも一部が通されている。ワイヤ413の中空部452内には、光ファイバ31の先端側の位置に、光ファイバ31から射出される光の光路を曲げる働きを持つ光路変換部材としてプリズム46が設置されている。プリズム46は、例えば、光ファイバ31から射出される光を90°折り曲げる。ワイヤ413はまた、プリズム46とワイヤ413の外部空間との間の光の行き来を可能にする透光部である光路孔45を有している。ここで光路変換部材とは偏向により光路を曲げる素子や、反射により光路を曲げる素子も含まれており、プリズム46はミラーなどで代替されても良い。
【0059】
ポテンショメータリンク部432とワイヤ413の断面を図23に示す。図23に示すように、ワイヤ413に形成された光路孔45は、反射面442に対向している。尚、図23では、反射面442をわかり易くするために、ワイヤ413の外周面とガイド孔433の反射面442とは隙間を有しているが、実際はワイヤ413とガイド孔433とは長手方向に摺動可能となっている。
【0060】
図1に示す挿入部1の動作部12を作動(屈曲)させるためにワイヤ413がその長手方向に移動すると、光ファイバ31とプリズム46は、ワイヤ413とともに移動して、上記第1の実施形態で示したように光源から発せられた光を反射面442に照射するとともに反射面442で反射された光を受光手段に伝送する。このとき、ポテンショメータリンク部432とワイヤ413の相対的な位置が変化する。
【0061】
従って、ポテンショメータリンク部432のガイド孔433に設けられた反射面442は、上記したように長手方向に光反射率が連続的に変化しているため、反射面442に入射し反射される光の強度は、ワイヤ413の変位に応じて変化する。そのワイヤ413の変位と反射光の強度との関係の一例を図24に示す。
【0062】
前述した様に、ワイヤ413の中空部452内に光ファイバ31(及びプリズム46)が保持されている。そして、例えば、中空ワイヤであるワイヤ413の周壁413aを介して線状光伝送手段の光の出射位置及び入射位置が前記光学素子に対して一定の距離を有しており、ワイヤ413がポテンショメータリンク部432(光学式ポテンショメータ400)に摺動可能に保持されていることから、ポテンショメータリンク部432(光学式ポテンショメータ400)は保持部材として機能する。
【0063】
また、反射面442が設けられたポテンショメータリンク部432(光学式ポテンショメータ)は、例えば、線状動力伝達部材を長手方向に移動可能に保持する保持部材として機能する。
尚、ワイヤ413の変位量から動作部12の屈曲角度を算出する方法は、上記第1の実施形態で示した通りであるため、その説明は省略する。
【0064】
本第4の実施形態では、線状光伝送手段としての光ファイバ31がワイヤ413の中空部452を通っているため、線状光伝送手段を配置するためのスペースを新たに確保する必要がないので、容易に小型化・細径化を図ることができる。また、ポテンショメータリンク部432を直線的に貫通しているガイド孔433の内面に反射面442が形成されているので、ワイヤ413の直線的な移動量が検出できる。ワイヤ413を中空ワイヤで構成したことから、加工が容易で、コスト面でも良い。光ファイバ31は曲げても損失が小さいので、変位を確実に検出できる。また光ファイバ31は容易に極細化できるので、より小型化・より細径化が可能となる。
【0065】
ワイヤ413は、中空ワイヤで構成される代わりに、金属パイプやコイルパイプで構成されてもよい。またワイヤ413は、必ずしも全長にわたって中空部452を有している必要はなく、部分的に中空部452を有している構造であってもよい。さらには、ワイヤ413は中空部452を有しておらず、図25(a)に示すように光ファイバ31がワイヤ413bに沿って延びており、その一方の端面にプリズム46が設けられる構成であってもよい。この場合、ポテンショメータリンク部432のガイド孔433の断面形状は、図25(a)のような光ファイバ31とワイヤ413bの断面形状とほぼ同じで、反射面442aは、光ファイバ31側のガイド孔433aの内面に形成される。
【0066】
また、反射面442をガイド孔433の内面に直接設けているが、反射面442が形成された別部材又は光学素子を内面に取り付ける構成であっても良い。反射面442はガイド孔433の内面の全周にわたって設ける必要はなく、一部に設けてあっても良い。
【0067】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることは勿論である。例えば、上記実施形態では、医療用マニピュレータを例に説明したが、内視鏡や処置具等他の操作装置においても同様に適用できる。
【0068】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…挿入部、2…制御装置、3,400…光学式ポテンショメータ、11…管状部、12…動作部、13,413…ワイヤ、21…駆動部、22…制御部、23…操作部、24…表示部、31…光ファイバ、32,432…ポテンショメータリンク部、33…ポテンショメータ部、34…ポテンショメータ信号処理部、35…光学部、36…信号処理部、41…反射部、42,442…反射面、43…反射部用孔、44…光ファイバ用孔、45…光路孔、46…プリズム、47…ミラー、51…透過板支持部、52…透過板、53…透過板支持部用孔、54a…光路孔、54b…光路孔、61…偏光板支持部、62…偏光板、413a…周壁、443…ガイド孔、452…中空部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に移動する線状動力伝達部材と、
前記線状動力伝達部材を長手方向に移動可能に保持する保持部材と、
前記線状動力伝達部材の移動方向に沿って連続的に変化する光学特性を有する光学素子と、
光を発する光源と、
入射される光の光学特性を電気信号に変換する受光手段と、
前記光源からの光を導いて前記光学素子へ出射すると共に、前記光学素子から入射した光を前記受光手段へと導き、前記光源からの光の出射位置及び前記光学素子からの前記光の入射位置が前記光学素子に対して一定の距離を有して保持された線状光伝送手段と、
前記受光手段が出力する電気信号に基づいて、前記線状動力伝達部材の移動方向における前記線状動力伝達部材と前記保持部材間の変位量を算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする光学式ポテンショメータ。
【請求項2】
前記光学素子は、前記線状動力伝達部材の一部に前記線状動力伝達部材と一体に移動可能に設けられ、
前記線状光伝送手段は、前記出射位置及び入射位置が前記保持部材に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項3】
前記光学素子は、前記移動方向に沿って反射率が連続的に変化する光反射体であることを特徴とする請求項2に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項4】
その軸線を前記長手方向に移動する線状動力伝達部材の中心軸線と平行にし、かつ該軸線と平行な平面を有する柱状形状の光学素子支持部材を備え、
前記光反射体は、前記光学素子支持部材の前記軸線と平行な平面に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項5】
前記光学素子は、前記移動方向に沿って透過率が連続的に変化する光透過体であることを特徴とする請求項2に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項6】
前記光学素子は、前記移動方向に沿って偏光特性が連続的に変化する偏光体であることを特徴とする請求項2に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項7】
前記線状光伝送手段は、前記光源からの光を導いて前記光学素子へ出射する第1の線状光伝送体と、前記光学素子から入射した光を前記受光手段へ導く第2の線状光伝送体とを含むことを特徴とする請求項2乃至6に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項8】
前記光学素子は、前記線状動力伝達部材に対し一体に移動可能に設けられた光学素子支持部材に支持され、
前記保持部材は、前記光学素子支持部材を摺動可能に保持する支持部材孔を有し、
前記支持部材孔と前記光学素子支持部材の形状は、該光学素子支持部材が設けられる前記線状動力伝達部材の長手方向にのみ互いに相対的に摺動し円周方向には回転しない嵌合形状であることを特徴とする請求項2乃至6に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項9】
前記保持部材は、前記線状光伝送手段を、前記光学素子の移動軸線と平行に保持することを特徴とする請求項2乃至6に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項10】
前記保持部材は、前記線状光伝送手段の端面に、前記線状光伝送手段の光路を前記光学素子へ向ける光路変換部材を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項11】
前記光学素子は、前記保持部材に設けられ、
前記線状光伝送手段は、前記出射位置及び入射位置が前記線状動力伝達部材に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項12】
前記光学素子は、前記保持部材の前記線状動力伝達部材が保持される部分に設けられ、
前記線状光伝送手段は、前記光学素子に対して前記一定の距離を有して、前記線状動力伝達部材と一体に移動可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項13】
前記光学素子は、前記移動方向に沿って反射率が連続的に変化する光反射体であることを特徴とする請求項11又は12に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項14】
前記線状動力伝達部材は、少なくとも部分的に中空部を有し、
前記線状光伝送手段は、少なくとも一部が前記中空部内に通され、前記中空部内に該線状光伝送手段の端面に配設された前記光の光路を前記光学素子へ向ける光路変換部材を備え、
前記線状動力伝達部材は、前記光路変換部材と前記線状動力伝達部材の外部空間との間の光の行き来を可能にする透光部を有しており、
前記透光部は前記光学素子に対向していることを特徴とする請求項11又は12に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項15】
前記線状動力伝達部材が中空ワイヤで構成され、
前記透光部が孔で構成されていることを特徴とする請求項14に記載の光学式ポテンショメータ。
【請求項16】
長尺で細径の管状部材と、
前記管状部材を挿通される線状動力伝達部材と、
前記管状部材の一端に配置され、前記線状動力伝達部材の一端が固定されるとともに、該線状動力伝達部材の長手方向への移動により屈曲動作する動作手段と、
前記線状動力伝達部材の他端が固定されるとともに、該線状動力伝達部材を長手方向に移動させる駆動手段と、
前記線状動力伝達部材の変位量を計測する請求項1に記載の光学式ポテンショメータと、
前記光学式ポテンショメータによって計測した前記線状動力伝達部材の変位量に基づいて前記動作手段の屈曲角度を算出する演算部と、
を具備することを特徴とする操作装置。
【請求項17】
前記光学式ポテンショメータの保持部材は、前記動作手段に近設する位置に配置されていることを特徴とする請求項16に記載の操作装置。
【請求項18】
前記光学式ポテンショメータの保持部材は、前記動作手段に組み込まれていることを特徴とする請求項16に記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−232311(P2011−232311A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105754(P2010−105754)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】