光学式位置検出器及び光学装置
【課題】簡易な構成で位置情報を適切に取得することができる光学式位置検出器及び光学装置を提供する。
【解決手段】被検出光y1を出射する発光部と、発光部に対して光軸方向に相対移動し、白領域、及び被検出光y1に対して白領域とは異なる反射率を有する黒領域が交互に配置された光学パターンを含む反射板83aと、反射板83aで反射される被検出光y1の光強度に基づいて出力信号を出力する受光部と、を備え、発光部が反射板83aへ出射する被検出光y1の照射幅HLは、白領域からなるパターン幅H1及び黒領域からなるパターン幅H2よりも大きくし、かつ、白領域からなるパターン幅H1と黒領域からなるパターン幅H2とを加算したパターン幅(H1+H2)よりも小さくすることで、適切に位置検出することが可能となる。
【解決手段】被検出光y1を出射する発光部と、発光部に対して光軸方向に相対移動し、白領域、及び被検出光y1に対して白領域とは異なる反射率を有する黒領域が交互に配置された光学パターンを含む反射板83aと、反射板83aで反射される被検出光y1の光強度に基づいて出力信号を出力する受光部と、を備え、発光部が反射板83aへ出射する被検出光y1の照射幅HLは、白領域からなるパターン幅H1及び黒領域からなるパターン幅H2よりも大きくし、かつ、白領域からなるパターン幅H1と黒領域からなるパターン幅H2とを加算したパターン幅(H1+H2)よりも小さくすることで、適切に位置検出することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式の位置検出器及びその位置検出器を備える光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光学式位置検出器として、光学エンコーダパターン、発光素子及び受光素子を有するものが知られている。例えば、特許文献1記載の光学式位置検出器は、明るい要素と暗い要素との交互パターンからなる光学エンコーダパターンと、光学エンコーダパターンへ出力する発光素子と、光学エンコーダパターンから受光する受光素子とを備えている。受光素子の受光部、あるいは、光学エンコーダパターンの明るい要素と暗い要素のうちの一方は、菱形の形状とされている。そして、光学エンコーダパターンの各要素のピッチは同一とされている。この構成により、受光素子の出力信号は略正弦波状とされ、位置情報を適切に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−147622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の光学式位置検出器にあっては、菱形等の複雑な形状を有する受光素子又は光学エンコーダパターンが必要となるため、製造工程が複雑化したり製造コストが増大したりするおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、簡易な構成で位置情報を取得することができる光学式位置検出器及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る光学式位置検出器は、被検出光を出射する発光部と、発光部に対して所定方向に沿って相対移動し、第1領域、及び被検出光に対して第1領域とは異なる透過率又は反射率を有する第2領域が交互に配置された光学パターンを含む光学スケールと、光学スケールを透過する被検出光の光強度又は光学スケールで反射される被検出光の光強度に基づいて出力信号を出力する受光部と、を備え、所定方向において、発光部が光学スケールへ出射する被検出光の照射幅は、第1領域からなるパターン幅及び第2領域からなるパターン幅よりも大きく、かつ、第1領域からなるパターン幅と第2領域からなるパターン幅とを加算したパターン幅よりも小さいことを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係る光学式位置検出器では、発光部が出射する光の幅を、光学スケールの第1領域の幅及び第2領域の幅よりも大きくし、かつ、第1領域と第2領域とを加算した幅よりも小さくしている。このように構成することで、2又は3つの領域に跨った位置に投光することができるので、光学スケールの全ての移動領域において受光部が受光する光強度の大きさを変化させることが可能となる。このように、照射領域を制御することにより移動位置に依存した出力信号を得ることができるので、簡易な構成で位置検出することが可能となる。
【0008】
ここで、光学式位置検出器は、光学スケールの所定の移動領域での出力信号に基づいて、光学スケールの他の移動領域での出力信号を補正する補正手段を備えることが好適である。
【0009】
このように構成することで、経時変化や環境変化によって出力信号が変化する場合であっても、所定の移動領域での出力信号を基準として他の移動領域での出力信号を補正することができるので、精度良く位置検出することができる。
【0010】
また、光学式位置検出器において、光学スケールは、第1領域及び第2領域が周期的に配置された反射板であり、発光部及び受光部は、それぞれ単一の発光素子又は受光素子からなることが好適である。このように構成することで、発光部及び受光部を隣接させることができるので、小型化を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る光学装置は、上述した光学式位置検出器を備えて構成される。この光学装置によれば、上述した光学式位置検出器を備えていることから、光学部材の位置を適切に取得し、かつ光学部材を適切に移動させることができる。
【0012】
また、上述した光学式位置検出器を備える光学装置において、光学部材はレンズであり、補正手段は、レンズの撮影領域外での出力信号を取得し、レンズの撮影領域での出力信号を補正することが好適である。このように構成することで、撮像領域での位置検出を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で位置情報を適切に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概要図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置を示す断面図である。
【図3】図2のIII−IIIにおける被駆動部材の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る撮像装置におけるアクチュエータ駆動回路図である。
【図5】図2の圧電素子に入力される駆動信号の波形図である。
【図6】本発明の実施形態に係る撮像装置の模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器の光学パターンと照射幅の関係を説明する概要図である。
【図8】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器のフォトリフレクタ駆動回路図である。
【図9】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器における出力信号の温度変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器における出力信号の温度変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を説明するための概要図である。
【図13】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を説明するための概要図である。
【図15】比較例における光学式位置検出器の光学パターン、照射幅、及び出力電圧の関係を説明する概要図である。
【図16】比較例における出力波形の振幅の減少を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係る光学式位置検出器は、例えば屈曲光学系を有する撮像装置に好適に採用されるものである。最初に、本実施形態に係る光学式位置検出器を備える撮像装置について概要を説明する。図1は、本実施形態に係る光学式位置検出器を備える撮像装置(光学装置)の撮像光学系を示す概要図である。
【0017】
図1に示す撮像装置は、光軸Oを屈曲させる屈曲光学系が適用されており、ズームレンズユニット部16、撮像素子82及び制御部81を備えている。ズームレンズユニット部16は、撮像装置の撮像光学系を有しており、固定レンズ105、プリズム104、移動レンズ90、102及び固定レンズ101を備えている。また、制御部81は、撮像装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)62、ISP(Image Signal Processing)60、素子駆動回路61、EEPROM(Electrically Erasable PROM)64及びドライバ65を備えている。
【0018】
移動レンズ90、102には、ズーム用のアクチュエータ10、オートフォーカス(AF)用のアクチュエータ15が駆動源としてそれぞれ接続されている。各アクチュエータ10、15が駆動することによって移動レンズ90、102が光軸Oに沿って移動し、ズーム機能及びオートフォーカス機能が実現される。各アクチュエータ10、15は、ドライバ65に接続されており、ドライバ65及びCPU62によって駆動制御が行われる。
【0019】
撮像素子82は、光軸O上に配設されており、ズームレンズユニット部16の撮影光学系により結像された画像を電気信号に変換する撮像手段である。撮像素子82は、例えばCCD(Charge Coupled Device image sensor)により構成され、ISP60に接続されている。
【0020】
ズームレンズユニット部16へ入射された被写体106の像は、固定レンズ105、プリズム104を介して屈曲され、移動レンズ90、移動レンズ102、固定レンズ101を介して撮像素子82に到達し、ISP60及びCUP62によって画像として処理される。
【0021】
ここで、移動レンズ90、102のレンズ位置は、ズームレンズユニット部16に備わる位置検出素子(光学式位置検出器)83、84により検出される。すなわち、各位置検出素子83、84は、レンズ位置検出手段として機能する。位置検出素子83、84は、素子駆動回路61に接続されており、素子駆動回路61によって駆動制御される。各位置検出素子83、84が検出した光強度は、素子駆動回路61を介して出力信号とされ、CPU62が有するA/D変換部63によりA/D変換される。
【0022】
CPU62及びドライバ65は、A/D変換された出力信号及びEEPROM64に格納された情報等に基づいて、フィードバック的に各アクチュエータ10、15の駆動制御を行う。なお、EEPROM64には、例えば調整時の測定によって得られたズーム位置、AF位置に対する出力信号が記憶されている。このように、撮像装置のレンズ駆動手段は、位置検出手段と連携して動作可能に構成されている。
【0023】
次に、上述した各構成の詳細について説明する。なお、以下では説明理解の容易性を考慮して、移動レンズ90を例に詳細を説明する。
【0024】
まず、撮像装置のレンズ駆動手段から詳細を説明する。図2は、移動レンズ90の駆動装置の断面図である。図2に示す駆動装置は、圧電素子1に駆動軸2を取り付けたアクチュエータ10を有し、圧電素子1の伸縮に応じて駆動軸2を往復移動させ、駆動軸2に摩擦係合される被駆動部材3を駆動軸2に沿って移動させる装置である。
【0025】
圧電素子1は、駆動信号の入力により伸縮可能な電気機械変換素子であり、所定の方向へ伸長及び収縮可能となっている。この圧電素子1は、制御部81に接続され、ドライバ65により電気信号を入力されることにより伸縮する。例えば、圧電素子1には、二つの入力端子11a、11bが設置される。この入力端子11a、11bに印加される電圧を繰り返して増減させることにより、圧電素子1が伸長及び収縮を繰り返すこととなる。なお、電気機械変換素子としては駆動信号の入力により伸縮するものであれば、導電性高分子からなる材料や形状記憶合金等、圧電素子1以外のものを用いてもよい。
【0026】
駆動軸2は、圧電素子1の伸縮方向に長手方向を向けて圧電素子1に取り付けられている。例えば、駆動軸2の一端が圧電素子1に当接され接着剤21を用いて接着されている。この駆動軸2は、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。駆動軸2は、固定枠4から内側へ延びる仕切り部4b、仕切り部4cにより長手方向に沿って移動可能に支持されている。仕切り部4b、仕切り部4cは、被駆動部材3の移動領域を仕切るための部材であり、駆動軸2の支持部材としても機能している。固定枠4は、圧電素子1、駆動軸2及び被駆動部材などを収容し組み付けるための筐体として機能する。
【0027】
駆動軸2の材質は、軽く高剛性のものが適している。なお、駆動軸2の形状は円柱状に限定されるものではなく、角柱状でもよい。
【0028】
仕切り部4b、仕切り部4cには、駆動軸2を貫通させる貫通孔4aがそれぞれ形成されている。仕切り部4bは、駆動軸2の圧電素子1取付部分の近傍箇所、すなわち駆動軸2の基端箇所を支持している。仕切り部4cは、駆動軸2の先端箇所を支持している。駆動軸2は、圧電素子1に取り付けられることにより、圧電素子1の伸長及び収縮の繰り返し動作に応じて、その長手方向に沿って往復移動する。
【0029】
なお、図2では、駆動軸2を仕切り部4b、4cによりその先端側と基端側の二箇所で支持する場合を示しているが、駆動軸2をその先端側又は基端側の一方で支持する場合もある。例えば、仕切り部4bの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4cにより先端箇所のみで支持されることとなる。また、仕切り部4cの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4bにより基端箇所のみで支持されることとなる。
【0030】
また、図2では、駆動軸2を支持する仕切り部4b、4cが固定枠4と一体になっている場合について示したが、これらの仕切り部4b、4cは固定枠4と別体のものを固定枠4に取り付けて設けてもよい。別体の場合であっても、一体となっている場合と同様な機能、効果が得られる。
【0031】
被駆動部材3は、駆動軸2に移動可能に取り付けられている。この被駆動部材3は、駆動軸2に対し摩擦係合されて取り付けられ、駆動軸2の長手方向に沿って移動可能となっている。例えば、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2に圧接されて所定の摩擦係数で係合しており、一定の押圧力で駆動軸2に押し付けられることによってその移動の際に一定の摩擦力が生ずるように取り付けられている。この摩擦力を超えるように駆動軸2が移動することにより、慣性により被駆動部材3がその位置を維持し、その被駆動部材3に対し相対的に駆動軸2が移動する。
【0032】
圧電素子1は、支持部材5により固定枠4に取り付けられている。支持部材5は、圧電素子1をその伸縮方向に対して側方から支持して取り付けるものであり、圧電素子1と固定枠4との間に配設されている。この場合、支持部材5により圧電素子1をその伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この支持部材5は、圧電素子1を側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0033】
このように支持部材5によりアクチュエータ10が圧電素子1の伸縮方向に対し側方側から支持されており、アクチュエータ10の両端は圧電素子1の伸縮方向へ移動可能な自由端となっている。このため、アクチュエータ10が駆動しても圧電素子1の伸縮による振動が固定枠4側へ伝達されにくい構造となっている。従って、アクチュエータ10の駆動信号をアクチュエータ10自体の共振周波数に関連づけて設定することが有効となっている。
【0034】
支持部材5は、所定以上の弾性特性を有する弾性体により形成され、例えばシリコーン樹脂により形成される。支持部材5は、圧電素子1を挿通させる挿通孔5aを形成して構成され、その挿通孔5aに圧電素子1を挿通させた状態で固定枠4に組み付けられている。支持部材5の固定枠4への固着は、接着剤22による接着により行われる。また、支持部材5と圧電素子1の間の固着も、接着剤による接着により行われる。この支持部材5を弾性体によって構成することにより、圧電素子1をその伸縮方向に移動可能に支持することができる。図2において、支持部材5が圧電素子1の両側に二つ図示されているが、この支持部材5、5は環状の支持部材5の断面をとることによって二つに図示されたものである。
【0035】
なお、支持部材5の固定枠4への固着及び圧電素子1への固着は、固定枠4と圧電素子1の間に支持部材5を圧入し、支持部材5の押圧によって行ってもよい。例えば、支持部材5を弾性体により構成し、かつ、固定枠4と圧電素子1の間より大きく形成して、その間に圧入して設置する。これにより、支持部材5は、固定枠4及び圧電素子1に密着して配設される。この場合、圧電素子1は、支持部材5により伸縮方向に直交する方向の両側から押圧される。これによって、圧電素子1が支持される。
【0036】
また、ここでは支持部材5をシリコーン樹脂で形成する場合について説明したが、支持部材5をバネ部材により構成してもよい。例えば、固定枠4と圧電素子1の間にバネ部材を配置し、このバネ部材によって圧電素子1を固定枠4に対し支持してもよい。
【0037】
被駆動部材3には、レンズ枠91を介して移動レンズ90が取り付けられている。移動レンズ90は、カメラの撮影光学系を構成するものであり、駆動装置の移動対象物となるものである。この移動レンズ90は、被駆動部材3と一体的に設けられ、被駆動部材3と共に移動するように設けられている。移動レンズ90の光軸O上には、図1を用いて説明したように固定レンズなどが配設され、カメラの撮影光学系を構成している。この移動レンズ90として、例えばズームレンズが用いられる。
【0038】
圧電素子1の端部には、錘部材6が取り付けられている。錘部材6は、圧電素子1の伸縮力を駆動軸2側へ伝達させるための部材であって、圧電素子1の駆動軸2が取り付けられる端部と反対側の端部に取り付けられている。
【0039】
この錘部材6は、アクチュエータ10の一部を構成する部品である。錘部材6としては、駆動軸2より重いものが用いられる。
【0040】
錘部材6の材質は、圧電素子1及び駆動軸2よりもヤング率の小さい材料のものが用いられる。なお、錘部材6と圧電素子1とを固着する接着剤としては、弾性接着剤を用いることが好ましい。
【0041】
また、錘部材6は、固定枠4に対し支持固定されない状態で設けられている。すなわち、錘部材6は、圧電素子1の自由端に取り付けられ、固定枠4に対し直接支持されたり固定されておらず、また接着剤や樹脂材を介して固定枠4に対し動きを拘束されるように支持されたり固定されていない状態で設けられている。
【0042】
図3は、図2のIII−IIIにおける被駆動部材3の摩擦係合部分の断面図である。図3に示すように、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2を押圧することにより、駆動軸2に取り付けられている。例えば、被駆動部材3には、駆動軸2を位置決めするためのV字状の溝3aが形成される。その溝3aには、断面V字状の摺動板3bが配置され、その摺動板3bを介して駆動軸2が被駆動部材3に押圧される。
【0043】
また、板バネ7と被駆動部材3との間には、断面V字状の摺動板3cが配設され、板バネ7は、この摺動板3cを介して被駆動部材3を押圧する。このため、摺動板3b、3cが互いに凹部側を向き合わせて配置され、駆動軸2を挟んで設けられている。V字状の溝3a内に駆動軸2を収容することにより、被駆動部材3を安定して駆動軸14に取り付けることができる。
【0044】
板バネ7としては、例えば、断面L字状の板バネ材が用いられる。板バネ7一辺を被駆動部材3に掛止させ、他の一辺を溝3aの対向位置に配することにより、他の一辺により溝3aに収容される駆動軸2を被駆動部材3との間に挟み込むことができる。
【0045】
このように、被駆動部材3は、板バネ7により被駆動部材3を駆動軸2側に一定の力で押圧して取り付けられることにより、駆動軸2に対し摩擦係合される。すなわち、被駆動部材3は、駆動軸2に対し被駆動部材3が一定の押圧力で押し付けられ、その移動に際し一定の摩擦力が生ずるように取り付けられる。
【0046】
また、断面V字状の摺動板3b、3cにより駆動軸2を挟み込むことにより、被駆動部材3が駆動軸2に複数箇所で線接触することになり、駆動軸2に対し安定して摩擦係合させることができる。また、複数箇所の線接触状態により被駆動部材3が駆動軸2に係合しているため、実質的に被駆動部材3が駆動軸2に面接触状態で係合していると同様な係合状態となり、安定した摩擦係合が実現できる。
【0047】
次に、上述したアクチュエータ10の動作制御を行うドライバ65の詳細について説明する。ドライバ65は、圧電素子1を作動させる駆動回路を有している。図4は、圧電素子1を作動させる駆動回路85の回路図である。この駆動回路85は、圧電素子1のドライブ回路として機能するものであり、圧電素子1に対し駆動用の電気信号を出力する。駆動回路85は、CPU62から制御信号を入力し、その制御信号を電圧増幅又は電流増幅して圧電素子1の駆動用電気信号を出力する。駆動回路85は、例えば入力段を論理回路U1〜U3により構成し、出力段に電界効果型のトランジスタ(FET)Q1、Q2を備えたものが用いられる。トランジスタQ1、Q2は、出力信号として、Hi出力(高電位出力)、Lo出力(低電位出力)及びOFF出力(オフ出力、オープン出力)を出力可能に構成されている。なお、図4に示す駆動回路は、圧電素子1を作動させるための回路の一例であり、これ以外の回路を用いて圧電素子1を作動させてもよい。
【0048】
図5に駆動回路85から出力される駆動信号の一例を示す。図5(a)は、被駆動部材3を圧電素子1に接近させる方向(図2において右方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号であり、図5(b)は、被駆動部材3を圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号である。
【0049】
図5(a)、(b)の駆動信号において、Aoutの信号が圧電素子1の一方の入力端子11aに入力され、Boutの信号が圧電素子1の他方の入力端子11bに入力される。このため、AoutとBoutとの電位差が圧電素子1の入力電圧となる。
【0050】
図5の駆動信号は矩形波であるが、実際に圧電素子1に入力される波形は、圧電素子1のキャパシタ成分により三角波状となる。このため、駆動信号のハイ、ローのデューティー比が50%でなければ、矩形状の駆動信号の入力によって圧電素子1の伸長速度と収縮速度を異ならせることができ、被駆動部材3を移動させることができる。
【0051】
これらの図5(a)、(b)の駆動信号は、パルス信号であり、アクチュエータ10の駆動時における信号である。1パルスごとの信号が連続してアクチュエータ10に入力されることにより、連続駆動が行われることとなる(駆動状態)。なお、アクチュエータ10に入力される信号は、図5に示すものに限られるものではなく、パルス信号でなく鋸歯波状の信号や三角波状の信号などであってもよい。
【0052】
一方、アクチュエータ10の休止時における信号は、図示していないが、圧電素子1の二つの端子に入力される電位差がゼロとなる信号である。また、電位差がゼロとなる休止時の入力信号は、図5(a)、(b)に示す駆動時の入力信号における1パルスの周期時間以上の長い時間で電位差がゼロとなる信号とすることが好ましい。このような信号がアクチュエータ10に入力されることにより、駆動が休止されることとなる(休止状態)。
【0053】
また、ドライバ65は、駆動回路85を制御してアクチュエータ10へ出力する駆動信号の波形を変更する機能を有している。例えば、ドライバ65は、単位時間あたりのパルス数を変更することによって駆動信号の波形の変更を行う。例えば、パルスを間引いたりパルス間隔を変更したりすることにより単位時間あたりのパルス数を変更する。さらに、被駆動部材3を移動させる際に、単位時間あたりのパルス数を変更する場合には、1パルスごとの信号が連続する期間の後に、AoutとBoutとの電位差がゼロ(又はAoutとBoutがオープン)となる期間を、1パルスの周期時間以上の長い時間設け、両期間が交互に繰り返されるように駆動信号の波形の変更を行う。すなわち、連続するパルス信号(駆動命令)と、電位差が0となる信号(休止命令)とが交互に繰り返し出力されるように駆動信号の波形を変更する。
【0054】
次に、撮像装置のレンズ位置検出手段の詳細を説明する。図2に示すように、撮像装置にはレンズ位置検出手段として光学式の位置検出器83が設けられている。位置検出器83は、反射板(光学スケール)83a及びフォトリフレクタ83bを備えている。反射板83aは、被駆動部材3と連動するレンズ枠91に取り付けられており、フォトリフレクタ83bに対して相対移動可能に構成されている。また、反射板83aは、移動レンズ90の移動領域内においてフォトリフレクタ83bと対向するように設けられている。
【0055】
反射板83a及びフォトリフレクタ83bの構成について、図6を用いてより詳細に説明する。図6は、位置検出器の構成及びレンズ位置に対応した出力電圧信号を模式的に示す図である。図6では、説明理解の容易性を考慮して反射板83aを大きく強調している。また、図6において、移動レンズ90は、駆動軸2の先端側における装置端X1近傍から圧電素子1側における装置端X2近傍までの領域L1〜L3を移動可能に構成されている。また、ワイド端は焦点距離を最も短く設定するレンズ位置であり、テレ端は焦点距離を最も長く設定するレンズ位置である。ワイド端からテレ端までの領域が、移動レンズ90が適切な結像を行える撮像領域L2である。撮像領域L2以外の領域L1、L3は、移動レンズ90が移動可能な領域であるが移動レンズ90がズームレンズとしての機能を十分発揮することができない領域である。
【0056】
図6に示すように、反射板83aのフォトリフレクタ83bに対向する面には、移動レンズ90の移動位置に対応した光学パターンが形成されている。この光学パターンは、フォトリフレクタ83bからの出射光y1に対する反射率が小さい領域(黒領域)と、フォトリフレクタ83bからの出射光y1に対する反射率が黒パターンよりも大きい領域(白領域)とからなり、移動レンズ90の移動方向に沿って白領域と黒領域が交互に配置された白黒パターンである。光学パターンの両端には、白領域あるいは黒領域が出射光y1の移動レンズ90移動方向における照射幅よりも大きな幅で形成されており、移動レンズ90の移動領域の終端を示すものとなる。なお、白領域及び黒領域の移動レンズ90移動方向のパターン幅は必ずしも同一でなくてもよい。また、パターン周期は、要求される検出領域に応じて設定される。
【0057】
フォトリフレクタ83bは、図1に示すズームレンズユニット部16側に反射板83aに対向して設けられており、反射板83aに対して相対的に固定されるように配置されている。また、フォトリフレクタ83bは、発光する発光素子(発光部)及び受光する受光素子(受光部)を備えている。発光部は、例えば図7(a)に示す光y1を反射板83aへ出射する機能を有している。図7(a)は、図6に示す移動領域L1〜L3のうち、装置端X1、X2近傍を除く領域内における、発光部が出力する光y1の照射幅HLと反射板83aのパターン幅との関係を説明するための概要図である。移動レンズ90移動方向における反射板83aの白領域の幅(反射変化幅)をH1、黒領域の幅(反射非変化幅)をH2とすると、図7(a)に示すように、フォトリフレクタ83bの発光部は、反射板83aでの移動レンズ90移動方向における照射幅HLが白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きい出射光y1を出射可能に構成されている。さらに、フォトリフレクタ83bの発光部は、反射板83aでの照射幅HLが白領域の幅H1と黒領域の幅H2との合計(H1+H2)よりも小さい出射光y1を出射可能に構成されている。なお、発光部の出射口は、例えば図6に示すように円形に形成されており、出射口の径の大きさを変更することにより、照射幅HLが設定される。また、照射幅HLの大きさは、上記条件を満たす大きさであって、A/D変換後に出力電圧信号の振幅が検出可能な範囲で設定される。この発光部が出射する光y1として、例えば赤外光が用いられる。また、受光部は、反射板83aにより反射された光を受光する機能を有している。受光部の受光口は、例えば矩形に形成される。
【0058】
また、図6に示すように、反射板83a及びフォトリフレクタ83bは、移動レンズ90が移動可能な領域L1〜L3内では、移動レンズ90がどの位置に移動してもフォトリフレクタ83bから出射される光y1が反射板83aの光学パターンに照射されるように配置されている。また、反射板83a及びフォトリフレクタ83bは、移動レンズ90が撮像領域L2の境界であるワイド端、テレ端(位置W、位置T7)に到達すると、反射板83aの白領域又は黒領域の中心が照射領域の中心に位置するように配置されている。さらに、反射板83a及びフォトリフレクタ83bは、移動レンズ90が移動終点(装置端X1近傍)に到達すると、フォトリフレクタ83bから出射される光y1が、光学パターンの両端の白領域B1あるいは黒領域B2のみに照射されるように配置されている。
【0059】
フォトリフレクタ83bは、図1に示す素子駆動回路61に接続されており、素子駆動回路61により反射板83aへ光y1を出射するとともに、反射板83aで反射される反射光の受光量(光強度)を検出する機能を有している。図8は、図1に示す素子駆動回路61の一例である。図8に示すように、光強度は電圧として検出された後、CPU62が有するA/D変換部63によりA/D変換され出力電圧信号(出力信号)として検出される。
【0060】
ここで、素子駆動回路61により出力される電圧信号について説明する。図7(b)は、図7(a)に示す反射板83aがフォトリフレクタ83bに対して相対移動した場合の出力電圧信号を示すものである。図7(b)に示すように、出力電圧値Y1は、照射領域における白領域の占める割合に応じて変化する。例えば、照射領域における白領域の占める割合が大きくなるほど照射領域における出射光y1に対する反射率が大きくなるので、出力電圧値Y1は大きくなる。すなわち、反射板83aの白領域の中心が照射領域の中心に位置した時に、移動領域の装置端近傍を除く領域内において、照射領域における出射光y1に対する反射率が最も高くなり、出力電圧信号Y1が最も大きくなる。反対に、反射板83aの黒領域の中心が照射領域の中心に位置した時に、移動領域の装置端近傍を除く領域内において、出力電圧値Y1が最も小さくなる。このため、周期的な光学パターンを有する反射板83aがフォトリフレクタ83bに対して相対的に移動すると、移動領域の装置端近傍を除く領域内において、出力電圧信号Y1は周期的に変化した信号となる。以下では、装置端近傍を除く移動領域に対応する出力電圧信号Y1(周期的波形部分)において、移動によって増加し減少する出力電圧値の変化点、及び、減少し増加する出力電圧値の変化点を極値という。
【0061】
また、上述したように、発光部から出射される出射光y1は、反射板83aでの照射幅HLが白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きくされている。このため、出射光y1は、白黒パターンにおいて白領域あるいは黒領域の何れか一方の領域のみに照射されることはなく、常に白領域及び黒領域の両方に照射される。例えば、図7(a)に示す出射光y0のように、照射幅が白領域の幅H1又は黒領域の幅H2よりも小さい場合には、白領域又は黒領域の中心付近では、白領域又は黒領域の何れか一方のみに出射される。この場合、図7(b)に示すように、白領域又は黒領域の中心付近に対応する出力電圧値Y0は、移動レンズ90の位置に関わらず一定値となる。反対に、図7(a)に示すように、フォトリフレクタ83bから出射される出射光y1は、どの移動位置においても白領域及び黒領域の両方に照射されるので、素子駆動回路61で検出する出力電圧値Y1は、移動レンズ90の位置が変化すると必ず変化することとなる。
【0062】
また、出射光y1は、反射板83aでの照射幅HLが白領域の幅H1と黒領域の幅H2との合計(H1+H2)よりも小さいため、例えば白領域、黒領域、白領域、黒領域、あるいは、黒領域、白領域、黒領域、白領域等、4以上の領域に跨って照射されることはなく、常に白領域及び黒領域からなる2又は3つの領域に照射される。このため、出力電圧信号の極値としては、白領域又は黒領域の中心位置で得られる出力電圧値のみが該当することとなり、かつ、波形歪みや振幅が小さくなりすぎることがない。例えば、図15に示す比較例のように、照射幅HLが白領域の幅H1と黒領域の幅H2との合計(H1+H2)よりも大きい場合、出力電圧信号の振幅VTが図7(b)に示す出力電圧信号Y1の振幅V0よりも小さくなる。以下では、図16を用いて、照射幅HLが白領域の幅H1もしくは黒領域の幅H2に対して大きな場合に生じる出力電圧信号の振幅の減少について説明する。図16は、比較例における出力電圧信号の振幅の減少を説明するための概要図である。図16(a)は、白黒パターンのうち、出射光y3により黒領域10%、白領域80%、黒領域10%が照射域HLとなる場合であり、図16(b)は、白黒パターンのうち、出射光y3により白領域10%、黒領域80%、白領域10%が照射域HLとなる場合を示している。また、図16(c)は、白黒パターンのうち、出射光y4により黒領域20%、白領域60%、黒領域20%が照射域HLとなる場合であり、図16(d)は、白黒パターンのうち、出射光y4により白領域20%、黒領域60%、白領域20%が照射域HLとなる場合を示している。なお、説明理解の容易性を考慮して、図16においては照射領域の形状を矩形としている。また、白領域の反射率を90%とし、黒領域の反射率を9%として説明する。出力電圧値は、照射領域と反射率との積を各領域において算出して総和したものであるので、図16(a)における出力電圧値は、0.09×0.1+0.9×0.8+0.09×0.1=0.738となる。同様に、図16(b)における出力電圧値は、0.9×0.1+0.09×0.8+0.9×0.1=0.252となる。このため、照射領域が黒領域20%、白領域80%の場合には、出力電圧信号の振幅V0EX1は、0.738−0.252=0.486となる。一方、同様の計算方法で、図16(c)における出力電圧値は、0.09×0.2+0.9×0.6+0.09×0.2=0.576となる。同様に、図16(d)における出力電圧値は、0.9×0.2+0.09×0.6+0.9×0.2=0.414となる。このため、照射領域が黒領域40%、白領域60%の場合には、出力電圧信号の振幅V0EX2は、0.576−0.414=0.162となる。上記計算によりV0EX1に比べ振幅V0EX2が小さいことから、照射幅HLが白領域の幅H1もしくは黒領域の幅H2のそれぞれよりも大きくなるほど振幅が減少することがわかる。また、照射領域が白領域25%、黒領域50%、白領域25%の場合には、出力電圧値は、0.09×0.25+0.9×0.5+0.09×0.25=0.495であり、照射領域が黒領域25%、白領域50%、黒領域25%の場合には、出力電圧値は、0.9×0.25+0.09×0.5+0.9×0.25=0.495であるので、振幅の差が0となるため、H1+H2よりも小さな発光にする必要がある。一方、照射領域が黒領域0%、白領域100%、黒領域0%の場合には、出力電圧値は、0.09となり、照射領域が白領域0%、黒領域100%、白領域0%の場合には、出力電圧値は、0.09となるので、振幅の差が最も大きくなる。
【0063】
次に、移動レンズ90の位置と出力電圧値との関係について説明する。図6に示すように、移動レンズ90が移動可能な領域L1〜L3内において、移動レンズ90がワイド端方向(図6左方向)あるいはテレ端方向(図6右方向)に移動すると、それに応じて反射板83aがフォトリフレクタ83bに対して相対移動し、フォトリフレクタ83bにより照射される反射板83aの領域が変化する。すなわち、照射領域(照射幅HL)に含まれる白領域及び黒領域の配分が、反射板83aの移動位置に応じて変化する。このため、フォトリフレクタ83bは、移動レンズ90の移動位置に応じて図6に示すように正弦波の電圧信号を出力する。
【0064】
一方、移動レンズ90が装置端X1近傍に移動すると、フォトリフレクタ83bから出射される光が白領域B1あるいは黒領域B2のみに照射されるので、図6に示すように、フォトリフレクタ83bは領域L4、L2、L5での正弦波の出力電圧信号の振幅における下限値V0MINよりも小さな電圧V1、上限値V0MAXよりも大きな電圧V2を出力する。
【0065】
次に、出力電圧信号Y1を用いて移動レンズ90の位置を検出する動作について説明する。移動レンズ90の位置検出は、CPU62及び素子駆動回路61により実行される。
【0066】
最初に、移動レンズ90を装置端X1近傍に到達させたことを検知する動作を説明する。素子駆動回路61は、移動レンズ90の駆動とともにフォトリフレクタ83bの発光部から出射光y1を出力させ、反射板83aからの反射光の強度を受光部で出力電圧信号Y1に変換する。そして、CPU62は、A/D変換された出力電圧信号Y1がしきい値V3よりも小さい場合には、移動レンズ90の位置は、装置端X1近傍であると検知する。このしきい値V3は、出力電圧信号Y1の振幅における下限値V0MINよりも小さく、電圧V1よりも大きい値が用いられる。
【0067】
次に、移動レンズ90をワイド端に到達させたことを検知する動作を説明する。移動レンズ90をワイド端(位置W)に到達させると、反射板83aの白領域の中心が照射領域の中心に位置するため、ワイド端での出力電圧値は出力電圧信号の極値となる。このため、ワイド端は、出力電圧値の大きさではなく、原点を基準とした極値の数によって特定することができる。ここで、制御部81のEEPROM64には、移動レンズ90移動位置に対する出力電圧信号が予め測定されて記録されている。すなわち、EEPROM64には、所定地点を基準位置とした周波数や波長数が出力電圧値と共に記録されている。基準位置(原点)として、例えばワイド端側の装置端X1近傍に設けられた位置P1が用いられる。予め記録された出力電圧信号を参照することにより、ワイド端での出力電圧値がワイド端側の位置P1から数えて何個目の極値に相当するのか認識することができる。このため、位置P1を基準として位置Wを一意に特定することができる。例えば、ワイド端側へ移動レンズ90を移動させて位置P1に到達した後に、テレ端側へ移動レンズ90を移動させ、記録された数の極値を検出した際に、移動レンズ90の位置はワイド端であると検知する。なお、図6に示すように、テレ端(位置T7)での出力電圧信号、位置T1〜T6での出力電圧信号は、出力電圧信号Y1の極値に相当するため、移動レンズ90がワイド端に到達したことを検知する動作と同様の動作で位置検出することができる。
【0068】
次に、上述した位置W、T1〜T7以外の位置検出動作を説明する。これらの位置での出力電圧値は、位置P1を基準位置とした出力電圧信号Y1の極値の数と、出力電圧値に基づいて一意に特定する。CPU62は、例えば、ワイド端側へ移動レンズ90を移動させて位置P1に到達した後に、テレ端側へ移動レンズ90を移動させて、極値の数及び出力電圧値を測定する。そして、測定地点での位置検出をする場合、ワイド端側の位置P1から当該測定地点までに存在した極値の数及び当該測定地点での出力電圧値を取得し、予め測定された移動レンズ90移動位置に対する出力電圧信号に基づいて、移動レンズ90の移動位置を一意に特定し検出する。
【0069】
上述したように、位置検出器83は、移動レンズ90が位置P1に位置することを出力電圧値の大きさに基づいて検出し、移動レンズ90がワイド端、テレ端等にあることを位置P1からの極値の数に基づいて検出し、それ以外の位置については、位置P1からの極値の数及び出力電圧値の大きさに基づいて検出する。このように、位置Wでの出力電圧値を出力電圧信号の極値とすることにより、例えば出力電圧が経時や温度により変化した場合であっても位置Wを特定することができる。以下、温度変化により出力電圧値が変化した場合を説明する。図9は、出力電圧の検出位置依存性を所定の温度ごとに示すグラフであり、図10は、出力電圧信号の移動レンズ90移動量依存性を所定の温度ごとに示すグラフである。図9、10に示すように、温度変化によって出力電圧信号の大きさが変化する場合であっても、極値の位置は変化しないので、位置P1を基準とした極値の数によってワイド端を特定することができる。同様に、極値に対応した位置T1〜T7を特定することができる。
【0070】
一方、極値以外の出力電圧値となる位置を検出する場合には、検出した出力電圧値の大きさをEEPROM64の出力電圧値と比較するため、温度変化に伴って出力電圧信号の変化が生じた場合には位置検出の精度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態の位置検出器83を備える撮像装置は、位置検出器83の出力電圧値を補正する機能を備えている。
【0071】
以下では、出力電圧値の補正動作について説明する。図11は、本実施形態に係る位置検出器を備える撮像装置の動作を示すフローチャートである。なお、説明理解の容易性を考慮して、通常使用時に比べて低温の環境で位置検出動作を行った場合を説明する(図9参照)。また、図12を参照して補正動作を説明する。図12は、補正前後の出力電圧値を示す概要図である。図12において、左方向をワイド端方向、右方向をテレ端方向として説明する。
【0072】
図11に示すフローチャートは、例えば撮像装置の電源がONされたタイミングで実行される。図11に示すように、撮像装置は、ワイド端側の装置端X1方向まで移動レンズ90を移動させる処理から開始する(S10、S12、S14)。
【0073】
S10の処理は、位置検出器83により検出された出力電圧値に基づいて移動レンズ90をワイド端側の装置端X1近傍へ移動させたか否かを判定する処理である。例えば、図12に示すように、所定の位置からワイド端方向へ移動レンズ90を移動させるとともに、位置検出器83により出力電圧を検出し、検出された出力電圧値がしきい値V3以下である場合には、移動レンズ90をワイド端側の装置端X1近傍に移動させたと判定する。この場合、アクチュエータ10の駆動を停止する(S14)。これにより、移動レンズ90は図12の位置aで停止することとなる。なお、図12の装置端X1近傍の位置aを基準位置P1とする。
【0074】
一方、例えば、位置検出器83により検出された出力電圧値がしきい値V3以下でない場合には、移動レンズ90を装置端X1近傍まで移動させていないと判定する。この場合、アクチュエータ10の駆動を継続させて移動レンズ90をワイド端方向へさらに移動させる(S12)。例えば、所定の数の駆動パルスをアクチュエータ10へ出力する。その後、再度S10の処理を行う。このように、移動レンズ90を位置aに移動させるまでS10、S12の処理を繰り返し行う。
【0075】
移動レンズ90を装置端X1近傍に移動させて停止させると、次に、移動レンズ90をテレ端側に移動させる(S16)。例えば、所定の数の駆動パルスをアクチュエータ10へ出力する。その後、移動レンズ90を最初の上に凸の極値(図12の位置b)となる位置に到達させたか否かを判定する(S18)。S18の処理では、測定した出力電圧値が上に凸の極値となるか否かを判定する。S18の処理において、測定した出力電圧値が最初の上に凸の極値ではないと判定した場合には、再度S16の処理へ移行して移動レンズ90をテレ端側に移動させる。このように、移動レンズ90を位置bに移動させるまでS16、S18の処理を繰り返し行う。
【0076】
一方、S18の処理において、測定した出力電圧値が最初の上に凸の極値であると判定した場合、移動レンズ90を位置bに移動させたと判定し、出力電圧値の読込処理を行う(S20)。S20の処理が終了すると、さらにテレ端方向へ移動レンズ90を移動させる(S22)。
【0077】
S22の処理が終了すると、S22の処理を実行して1msが経過したか否かを判定する(S24)。S24の処理において1ms経過していないと判定した場合には、再度S22の処理へ移行し、テレ端方向へ移動レンズ90をさらに移動させる。このように、1ms経過するまで移動レンズ90をテレ端方向へ移動させる処理を繰り返し行う。一方、S24の処理において1ms経過したと判定した場合には、出力電圧の読込処理を行う(S26)。
【0078】
S26の処理が終了すると、測定した出力電圧値が上に凸の極値であるか否かを判定する(S28)。測定した出力電圧値が上に凸の極値であると判定した場合には、移動レンズ90を位置fに移動させたと判定する。一方、測定した出力電圧値が上に凸の極値でないと判定した場合には、再度S22の処理へ移行する。このように、測定した出力電圧値が上に凸の極値となるまで、すなわち、移動レンズ90を位置fに到達させるまでS22、S24、S26の処理を繰り返し実行する。S28の処理において、移動レンズ90を位置fに到達させたと判定した場合には、アクチュエータ10の駆動を停止し(S30)、図11に示す制御処理を終了する。
【0079】
以上で図11に示す制御処理を終了する。図11に示す制御処理を実行することにより、図12に示すように移動レンズ90を装置端X1近傍へ移動させた後にワイド端に移動させることができる。そして、移動レンズ90を装置端X1近傍からワイド端に移動させる際に、出力電圧値の極値(位置b)と極値(位置f)との間の実際の出力電圧値YRを1msごとに取得することができる。すなわち、移動領域L4における出力電圧値YRを取得することができる。
【0080】
図11に示す制御処理を実行し、移動領域L4における出力電圧値YRを取得した後に、出力電圧値YRに基づいて撮像領域L2の出力電圧信号YSを補正する処理を行う。例えば、EEPROM64に格納された調整時の出力電圧値YIと、実際得られた出力電圧値YRとを比較して差分を取得する。そして、撮像領域L2において出力電圧信号YSを取得した場合、算出した差分を取得した出力電圧信号YSに与えて補正する。このように補正することで、例えば図9に示すように温度変化によって出力電圧信号が変化した場合であっても、補正後の出力電圧値を用いて、調整時の出力電圧値YIと対応させて撮像領域L2内の移動位置を特定することができる。
【0081】
次に、位置検出結果を利用したアクチュエータ10の駆動制御手段の動作について説明する。図13は、本実施形態に係る位置検出器を備える撮像装置の動作を示すフローチャートである。なお、説明理解の容易性を考慮して、図14を参照して動作を説明する。図14は、補正前後における移動量の駆動時間依存性を示す概要図である。
【0082】
図13に示すフローチャートは、例えば撮像装置においてレンズ駆動を行うタイミングで繰り返し実行される。図13に示すように、撮像装置は、レンズ位置確認処理から開始する(S40)。S40では、位置検出器83及びCPU2が移動レンズ90の位置を検出する。CPU62は、例えば、出力電圧値を入力し、予め測定された移動レンズ90移動位置に対する出力電圧信号と比較して移動レンズ90の移動位置を検出する。S40の処理が終了すると、目標位置確認処理へ移行する(S42)。
【0083】
S42の処理では、例えば撮影者等から入力された情報等に基づいて、目標となるズーム量を入力する。S42の処理が終了すると、差分算出処理へ移行する(S44)。
【0084】
S44の処理では、所定時刻における目標ズーム量(制御目標M)と、所定時刻における実際の移動量S1とを比較して差分を出力する。S44の処理が終了すると、駆動制御へ移行する(S46)。
【0085】
S46の処理では、S44の処理で得られた差分に基づいてアクチュエータ10に出力する駆動信号を制御する。CPU62は、S44の処理で算出した差分に応じて、駆動信号を制御する。例えば、実際の移動量S1が目標ズーム量に比べて大きい場合には、図14(a)に示すように、アクチュエータ10の駆動と停止を繰り返す処理を行う。例えば、図5に示す駆動信号を変化させることによりアクチュエータ10の駆動と停止を繰り返す。S46の処理が終了すると、図13に示す制御処理を終了する。
【0086】
上述した図13に示す制御処理を、所定のタイミングで繰り返し実行することで、移動レンズ90の実際の移動量S1を、制御目標Mに近づくようにフィードバックさせることができる。ところで、位置検出によるフィードバックを行わない場合、例えばアクチュエータ10による移動レンズ90の移動速度を予め記録しておき、所定時刻における目標位置に対して移動速度に基づいて制御する場合には、経時や温度の変化により移動速度が変化するので、制御目標Mを実現しようとしても図14(b)に示すような移動量S2となる場合がある。これに対して、本実施形態の位置検出器83を用いてフィードバックしながら駆動制御することにより、制御目標Mに沿った移動量S1を得ることができる。また、本実施形態の位置検出器83を用いることにより、移動量に対する駆動時間を制御することができるので、一定速度でズーム駆動することが可能となる。
【0087】
以上、本実施形態に係る位置検出器83では、発光部が出射する光y1の照射幅HLを、反射板83aの白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きくし、かつ、白領域の幅H1と黒領域の幅H2とを加算した幅(H1+H2)よりも小さくしている。このため、2又は3つの領域に跨った位置に投光することができるので、反射板83aの全ての移動領域において受光部が受光する光強度の大きさを変化させることが可能となる。よって、移動位置に依存した略正弦波の出力電圧信号Y1を得ることができるので、適切に位置検出することが可能となる。このように、本実施形態に係る位置検出器83では、複雑な光学パターンを必要とせず、光の照射幅を適切な値に設定するという簡易な手法で適切な位置検出を行うことができる。
【0088】
また、本実施形態に係る位置検出器83によれば、経時変化や環境変化によって出力信号が変化する場合であっても、領域L1での出力信号を基準として撮像領域L2での出力信号を補正することができる。このため、経時変化や環境変化に関わらず正確に位置検出することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る位置検出器83によれば、発光部及び受光部を隣接させたフォトリフレクタ83bを用いているので、位置検出器83の小型化を図ることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る撮像装置によれば、移動レンズ90の位置を適切に取得し、かつ移動レンズ90を適切に移動させることができる。このため、ズーム動作の安定性を向上することができるとともに、移動レンズ90の停止精度を向上させることができる。
【0091】
さらに、本実施形態に係る撮像装置によれば、領域L4で取得した出力電圧信号に基づいて撮像領域L2での出力電圧値を補正することができる。このため、撮像領域L2を走査して実データを取得して補正する場合に比べて迅速に撮影可能状態とすることができる。
【0092】
なお、上述した実施形態は本発明に係る光学式位置検出器及び光学装置の一例を示すものである。本発明に係る光学式位置検出器及び光学装置は、上述した実施形態に係る光学式位置検出器及び光学装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る光学式位置検出器及び光学装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0093】
例えば、上述した実施形態では、移動レンズ90の位置検出に適用する場合を説明したが、オートフォーカス用のレンズ102や、ズームレンズユニット部16等の位置検出に適用してもよい。また、移動レンズ90以外の物(例えばステージやプローブ等)を移動させる際の位置検出に適用してもよい。さらに、手振れ補正機構のように、光軸に直交する方向に駆動させる際の位置検出に適用してもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、光学装置として撮像装置において好適に採用される例を説明したが、インクジェット式のプリントヘッドの位置検出に採用してもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、支持部材5を介し固定枠4に圧電素子1を取り付けて、圧電素子1の端部を自由端にした場合について説明したが、圧電素子1の端部を直接固定枠4に取り付けるものであってもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、位置検出器83として、反射板83aとフォトリフレクタ83bとを用いる例を説明したが、スリット部材のように透過率の異なる光学パターン幅を有するスケールと、フォトインタラプタとを採用する場合であっても良い。
【0097】
また、上述した実施形態では、投光する光y1の照射幅HLを制御する例を説明したが、反射板83aのパターン間隔を制御することによって、発光部が出射する光y1の照射幅HLを、反射板83aの白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きくし、かつ、白領域の幅H1と黒領域の幅H2とを加算した幅(H1+H2)よりも小さくする場合であっても良い。
【0098】
また、上述した実施形態では、白領域及び黒領域が周期的に配列する光学パターンの例を説明したが、例えば、白領域、黒領域、白領域の3つからなる光学パターンや、黒領域、白領域、黒領域の3つからなる光学パターンであってもよい。この場合、発光部が出射する光y1の照射幅HLを、反射板83aの白領域の幅H1又は黒領域の幅H2よりも大きくし、かつ、白領域の幅H1と黒領域の幅H2とを加算した幅(H1+H2)よりも小さくすればよい。
【0099】
さらに、上述した実施形態では、撮像装置のアクチュエータとして圧電素子を用いたものを採用しているが、モータ、高分子アクチュエータ、形状記憶合金などの他の駆動部品を採用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…圧電素子、2…駆動軸、3…被駆動部材、10…アクチュエータ、81…制御部、83a…反射板(スケール部材)、83b…フォトリフレクタ(発光部、受光部)、90…移動レンズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式の位置検出器及びその位置検出器を備える光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光学式位置検出器として、光学エンコーダパターン、発光素子及び受光素子を有するものが知られている。例えば、特許文献1記載の光学式位置検出器は、明るい要素と暗い要素との交互パターンからなる光学エンコーダパターンと、光学エンコーダパターンへ出力する発光素子と、光学エンコーダパターンから受光する受光素子とを備えている。受光素子の受光部、あるいは、光学エンコーダパターンの明るい要素と暗い要素のうちの一方は、菱形の形状とされている。そして、光学エンコーダパターンの各要素のピッチは同一とされている。この構成により、受光素子の出力信号は略正弦波状とされ、位置情報を適切に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−147622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の光学式位置検出器にあっては、菱形等の複雑な形状を有する受光素子又は光学エンコーダパターンが必要となるため、製造工程が複雑化したり製造コストが増大したりするおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、簡易な構成で位置情報を取得することができる光学式位置検出器及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る光学式位置検出器は、被検出光を出射する発光部と、発光部に対して所定方向に沿って相対移動し、第1領域、及び被検出光に対して第1領域とは異なる透過率又は反射率を有する第2領域が交互に配置された光学パターンを含む光学スケールと、光学スケールを透過する被検出光の光強度又は光学スケールで反射される被検出光の光強度に基づいて出力信号を出力する受光部と、を備え、所定方向において、発光部が光学スケールへ出射する被検出光の照射幅は、第1領域からなるパターン幅及び第2領域からなるパターン幅よりも大きく、かつ、第1領域からなるパターン幅と第2領域からなるパターン幅とを加算したパターン幅よりも小さいことを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係る光学式位置検出器では、発光部が出射する光の幅を、光学スケールの第1領域の幅及び第2領域の幅よりも大きくし、かつ、第1領域と第2領域とを加算した幅よりも小さくしている。このように構成することで、2又は3つの領域に跨った位置に投光することができるので、光学スケールの全ての移動領域において受光部が受光する光強度の大きさを変化させることが可能となる。このように、照射領域を制御することにより移動位置に依存した出力信号を得ることができるので、簡易な構成で位置検出することが可能となる。
【0008】
ここで、光学式位置検出器は、光学スケールの所定の移動領域での出力信号に基づいて、光学スケールの他の移動領域での出力信号を補正する補正手段を備えることが好適である。
【0009】
このように構成することで、経時変化や環境変化によって出力信号が変化する場合であっても、所定の移動領域での出力信号を基準として他の移動領域での出力信号を補正することができるので、精度良く位置検出することができる。
【0010】
また、光学式位置検出器において、光学スケールは、第1領域及び第2領域が周期的に配置された反射板であり、発光部及び受光部は、それぞれ単一の発光素子又は受光素子からなることが好適である。このように構成することで、発光部及び受光部を隣接させることができるので、小型化を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る光学装置は、上述した光学式位置検出器を備えて構成される。この光学装置によれば、上述した光学式位置検出器を備えていることから、光学部材の位置を適切に取得し、かつ光学部材を適切に移動させることができる。
【0012】
また、上述した光学式位置検出器を備える光学装置において、光学部材はレンズであり、補正手段は、レンズの撮影領域外での出力信号を取得し、レンズの撮影領域での出力信号を補正することが好適である。このように構成することで、撮像領域での位置検出を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で位置情報を適切に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概要図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置を示す断面図である。
【図3】図2のIII−IIIにおける被駆動部材の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る撮像装置におけるアクチュエータ駆動回路図である。
【図5】図2の圧電素子に入力される駆動信号の波形図である。
【図6】本発明の実施形態に係る撮像装置の模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器の光学パターンと照射幅の関係を説明する概要図である。
【図8】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器のフォトリフレクタ駆動回路図である。
【図9】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器における出力信号の温度変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態に係る光学式位置検出器における出力信号の温度変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を説明するための概要図である。
【図13】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る撮像装置の動作を説明するための概要図である。
【図15】比較例における光学式位置検出器の光学パターン、照射幅、及び出力電圧の関係を説明する概要図である。
【図16】比較例における出力波形の振幅の減少を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係る光学式位置検出器は、例えば屈曲光学系を有する撮像装置に好適に採用されるものである。最初に、本実施形態に係る光学式位置検出器を備える撮像装置について概要を説明する。図1は、本実施形態に係る光学式位置検出器を備える撮像装置(光学装置)の撮像光学系を示す概要図である。
【0017】
図1に示す撮像装置は、光軸Oを屈曲させる屈曲光学系が適用されており、ズームレンズユニット部16、撮像素子82及び制御部81を備えている。ズームレンズユニット部16は、撮像装置の撮像光学系を有しており、固定レンズ105、プリズム104、移動レンズ90、102及び固定レンズ101を備えている。また、制御部81は、撮像装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)62、ISP(Image Signal Processing)60、素子駆動回路61、EEPROM(Electrically Erasable PROM)64及びドライバ65を備えている。
【0018】
移動レンズ90、102には、ズーム用のアクチュエータ10、オートフォーカス(AF)用のアクチュエータ15が駆動源としてそれぞれ接続されている。各アクチュエータ10、15が駆動することによって移動レンズ90、102が光軸Oに沿って移動し、ズーム機能及びオートフォーカス機能が実現される。各アクチュエータ10、15は、ドライバ65に接続されており、ドライバ65及びCPU62によって駆動制御が行われる。
【0019】
撮像素子82は、光軸O上に配設されており、ズームレンズユニット部16の撮影光学系により結像された画像を電気信号に変換する撮像手段である。撮像素子82は、例えばCCD(Charge Coupled Device image sensor)により構成され、ISP60に接続されている。
【0020】
ズームレンズユニット部16へ入射された被写体106の像は、固定レンズ105、プリズム104を介して屈曲され、移動レンズ90、移動レンズ102、固定レンズ101を介して撮像素子82に到達し、ISP60及びCUP62によって画像として処理される。
【0021】
ここで、移動レンズ90、102のレンズ位置は、ズームレンズユニット部16に備わる位置検出素子(光学式位置検出器)83、84により検出される。すなわち、各位置検出素子83、84は、レンズ位置検出手段として機能する。位置検出素子83、84は、素子駆動回路61に接続されており、素子駆動回路61によって駆動制御される。各位置検出素子83、84が検出した光強度は、素子駆動回路61を介して出力信号とされ、CPU62が有するA/D変換部63によりA/D変換される。
【0022】
CPU62及びドライバ65は、A/D変換された出力信号及びEEPROM64に格納された情報等に基づいて、フィードバック的に各アクチュエータ10、15の駆動制御を行う。なお、EEPROM64には、例えば調整時の測定によって得られたズーム位置、AF位置に対する出力信号が記憶されている。このように、撮像装置のレンズ駆動手段は、位置検出手段と連携して動作可能に構成されている。
【0023】
次に、上述した各構成の詳細について説明する。なお、以下では説明理解の容易性を考慮して、移動レンズ90を例に詳細を説明する。
【0024】
まず、撮像装置のレンズ駆動手段から詳細を説明する。図2は、移動レンズ90の駆動装置の断面図である。図2に示す駆動装置は、圧電素子1に駆動軸2を取り付けたアクチュエータ10を有し、圧電素子1の伸縮に応じて駆動軸2を往復移動させ、駆動軸2に摩擦係合される被駆動部材3を駆動軸2に沿って移動させる装置である。
【0025】
圧電素子1は、駆動信号の入力により伸縮可能な電気機械変換素子であり、所定の方向へ伸長及び収縮可能となっている。この圧電素子1は、制御部81に接続され、ドライバ65により電気信号を入力されることにより伸縮する。例えば、圧電素子1には、二つの入力端子11a、11bが設置される。この入力端子11a、11bに印加される電圧を繰り返して増減させることにより、圧電素子1が伸長及び収縮を繰り返すこととなる。なお、電気機械変換素子としては駆動信号の入力により伸縮するものであれば、導電性高分子からなる材料や形状記憶合金等、圧電素子1以外のものを用いてもよい。
【0026】
駆動軸2は、圧電素子1の伸縮方向に長手方向を向けて圧電素子1に取り付けられている。例えば、駆動軸2の一端が圧電素子1に当接され接着剤21を用いて接着されている。この駆動軸2は、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。駆動軸2は、固定枠4から内側へ延びる仕切り部4b、仕切り部4cにより長手方向に沿って移動可能に支持されている。仕切り部4b、仕切り部4cは、被駆動部材3の移動領域を仕切るための部材であり、駆動軸2の支持部材としても機能している。固定枠4は、圧電素子1、駆動軸2及び被駆動部材などを収容し組み付けるための筐体として機能する。
【0027】
駆動軸2の材質は、軽く高剛性のものが適している。なお、駆動軸2の形状は円柱状に限定されるものではなく、角柱状でもよい。
【0028】
仕切り部4b、仕切り部4cには、駆動軸2を貫通させる貫通孔4aがそれぞれ形成されている。仕切り部4bは、駆動軸2の圧電素子1取付部分の近傍箇所、すなわち駆動軸2の基端箇所を支持している。仕切り部4cは、駆動軸2の先端箇所を支持している。駆動軸2は、圧電素子1に取り付けられることにより、圧電素子1の伸長及び収縮の繰り返し動作に応じて、その長手方向に沿って往復移動する。
【0029】
なお、図2では、駆動軸2を仕切り部4b、4cによりその先端側と基端側の二箇所で支持する場合を示しているが、駆動軸2をその先端側又は基端側の一方で支持する場合もある。例えば、仕切り部4bの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4cにより先端箇所のみで支持されることとなる。また、仕切り部4cの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4bにより基端箇所のみで支持されることとなる。
【0030】
また、図2では、駆動軸2を支持する仕切り部4b、4cが固定枠4と一体になっている場合について示したが、これらの仕切り部4b、4cは固定枠4と別体のものを固定枠4に取り付けて設けてもよい。別体の場合であっても、一体となっている場合と同様な機能、効果が得られる。
【0031】
被駆動部材3は、駆動軸2に移動可能に取り付けられている。この被駆動部材3は、駆動軸2に対し摩擦係合されて取り付けられ、駆動軸2の長手方向に沿って移動可能となっている。例えば、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2に圧接されて所定の摩擦係数で係合しており、一定の押圧力で駆動軸2に押し付けられることによってその移動の際に一定の摩擦力が生ずるように取り付けられている。この摩擦力を超えるように駆動軸2が移動することにより、慣性により被駆動部材3がその位置を維持し、その被駆動部材3に対し相対的に駆動軸2が移動する。
【0032】
圧電素子1は、支持部材5により固定枠4に取り付けられている。支持部材5は、圧電素子1をその伸縮方向に対して側方から支持して取り付けるものであり、圧電素子1と固定枠4との間に配設されている。この場合、支持部材5により圧電素子1をその伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この支持部材5は、圧電素子1を側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0033】
このように支持部材5によりアクチュエータ10が圧電素子1の伸縮方向に対し側方側から支持されており、アクチュエータ10の両端は圧電素子1の伸縮方向へ移動可能な自由端となっている。このため、アクチュエータ10が駆動しても圧電素子1の伸縮による振動が固定枠4側へ伝達されにくい構造となっている。従って、アクチュエータ10の駆動信号をアクチュエータ10自体の共振周波数に関連づけて設定することが有効となっている。
【0034】
支持部材5は、所定以上の弾性特性を有する弾性体により形成され、例えばシリコーン樹脂により形成される。支持部材5は、圧電素子1を挿通させる挿通孔5aを形成して構成され、その挿通孔5aに圧電素子1を挿通させた状態で固定枠4に組み付けられている。支持部材5の固定枠4への固着は、接着剤22による接着により行われる。また、支持部材5と圧電素子1の間の固着も、接着剤による接着により行われる。この支持部材5を弾性体によって構成することにより、圧電素子1をその伸縮方向に移動可能に支持することができる。図2において、支持部材5が圧電素子1の両側に二つ図示されているが、この支持部材5、5は環状の支持部材5の断面をとることによって二つに図示されたものである。
【0035】
なお、支持部材5の固定枠4への固着及び圧電素子1への固着は、固定枠4と圧電素子1の間に支持部材5を圧入し、支持部材5の押圧によって行ってもよい。例えば、支持部材5を弾性体により構成し、かつ、固定枠4と圧電素子1の間より大きく形成して、その間に圧入して設置する。これにより、支持部材5は、固定枠4及び圧電素子1に密着して配設される。この場合、圧電素子1は、支持部材5により伸縮方向に直交する方向の両側から押圧される。これによって、圧電素子1が支持される。
【0036】
また、ここでは支持部材5をシリコーン樹脂で形成する場合について説明したが、支持部材5をバネ部材により構成してもよい。例えば、固定枠4と圧電素子1の間にバネ部材を配置し、このバネ部材によって圧電素子1を固定枠4に対し支持してもよい。
【0037】
被駆動部材3には、レンズ枠91を介して移動レンズ90が取り付けられている。移動レンズ90は、カメラの撮影光学系を構成するものであり、駆動装置の移動対象物となるものである。この移動レンズ90は、被駆動部材3と一体的に設けられ、被駆動部材3と共に移動するように設けられている。移動レンズ90の光軸O上には、図1を用いて説明したように固定レンズなどが配設され、カメラの撮影光学系を構成している。この移動レンズ90として、例えばズームレンズが用いられる。
【0038】
圧電素子1の端部には、錘部材6が取り付けられている。錘部材6は、圧電素子1の伸縮力を駆動軸2側へ伝達させるための部材であって、圧電素子1の駆動軸2が取り付けられる端部と反対側の端部に取り付けられている。
【0039】
この錘部材6は、アクチュエータ10の一部を構成する部品である。錘部材6としては、駆動軸2より重いものが用いられる。
【0040】
錘部材6の材質は、圧電素子1及び駆動軸2よりもヤング率の小さい材料のものが用いられる。なお、錘部材6と圧電素子1とを固着する接着剤としては、弾性接着剤を用いることが好ましい。
【0041】
また、錘部材6は、固定枠4に対し支持固定されない状態で設けられている。すなわち、錘部材6は、圧電素子1の自由端に取り付けられ、固定枠4に対し直接支持されたり固定されておらず、また接着剤や樹脂材を介して固定枠4に対し動きを拘束されるように支持されたり固定されていない状態で設けられている。
【0042】
図3は、図2のIII−IIIにおける被駆動部材3の摩擦係合部分の断面図である。図3に示すように、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2を押圧することにより、駆動軸2に取り付けられている。例えば、被駆動部材3には、駆動軸2を位置決めするためのV字状の溝3aが形成される。その溝3aには、断面V字状の摺動板3bが配置され、その摺動板3bを介して駆動軸2が被駆動部材3に押圧される。
【0043】
また、板バネ7と被駆動部材3との間には、断面V字状の摺動板3cが配設され、板バネ7は、この摺動板3cを介して被駆動部材3を押圧する。このため、摺動板3b、3cが互いに凹部側を向き合わせて配置され、駆動軸2を挟んで設けられている。V字状の溝3a内に駆動軸2を収容することにより、被駆動部材3を安定して駆動軸14に取り付けることができる。
【0044】
板バネ7としては、例えば、断面L字状の板バネ材が用いられる。板バネ7一辺を被駆動部材3に掛止させ、他の一辺を溝3aの対向位置に配することにより、他の一辺により溝3aに収容される駆動軸2を被駆動部材3との間に挟み込むことができる。
【0045】
このように、被駆動部材3は、板バネ7により被駆動部材3を駆動軸2側に一定の力で押圧して取り付けられることにより、駆動軸2に対し摩擦係合される。すなわち、被駆動部材3は、駆動軸2に対し被駆動部材3が一定の押圧力で押し付けられ、その移動に際し一定の摩擦力が生ずるように取り付けられる。
【0046】
また、断面V字状の摺動板3b、3cにより駆動軸2を挟み込むことにより、被駆動部材3が駆動軸2に複数箇所で線接触することになり、駆動軸2に対し安定して摩擦係合させることができる。また、複数箇所の線接触状態により被駆動部材3が駆動軸2に係合しているため、実質的に被駆動部材3が駆動軸2に面接触状態で係合していると同様な係合状態となり、安定した摩擦係合が実現できる。
【0047】
次に、上述したアクチュエータ10の動作制御を行うドライバ65の詳細について説明する。ドライバ65は、圧電素子1を作動させる駆動回路を有している。図4は、圧電素子1を作動させる駆動回路85の回路図である。この駆動回路85は、圧電素子1のドライブ回路として機能するものであり、圧電素子1に対し駆動用の電気信号を出力する。駆動回路85は、CPU62から制御信号を入力し、その制御信号を電圧増幅又は電流増幅して圧電素子1の駆動用電気信号を出力する。駆動回路85は、例えば入力段を論理回路U1〜U3により構成し、出力段に電界効果型のトランジスタ(FET)Q1、Q2を備えたものが用いられる。トランジスタQ1、Q2は、出力信号として、Hi出力(高電位出力)、Lo出力(低電位出力)及びOFF出力(オフ出力、オープン出力)を出力可能に構成されている。なお、図4に示す駆動回路は、圧電素子1を作動させるための回路の一例であり、これ以外の回路を用いて圧電素子1を作動させてもよい。
【0048】
図5に駆動回路85から出力される駆動信号の一例を示す。図5(a)は、被駆動部材3を圧電素子1に接近させる方向(図2において右方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号であり、図5(b)は、被駆動部材3を圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号である。
【0049】
図5(a)、(b)の駆動信号において、Aoutの信号が圧電素子1の一方の入力端子11aに入力され、Boutの信号が圧電素子1の他方の入力端子11bに入力される。このため、AoutとBoutとの電位差が圧電素子1の入力電圧となる。
【0050】
図5の駆動信号は矩形波であるが、実際に圧電素子1に入力される波形は、圧電素子1のキャパシタ成分により三角波状となる。このため、駆動信号のハイ、ローのデューティー比が50%でなければ、矩形状の駆動信号の入力によって圧電素子1の伸長速度と収縮速度を異ならせることができ、被駆動部材3を移動させることができる。
【0051】
これらの図5(a)、(b)の駆動信号は、パルス信号であり、アクチュエータ10の駆動時における信号である。1パルスごとの信号が連続してアクチュエータ10に入力されることにより、連続駆動が行われることとなる(駆動状態)。なお、アクチュエータ10に入力される信号は、図5に示すものに限られるものではなく、パルス信号でなく鋸歯波状の信号や三角波状の信号などであってもよい。
【0052】
一方、アクチュエータ10の休止時における信号は、図示していないが、圧電素子1の二つの端子に入力される電位差がゼロとなる信号である。また、電位差がゼロとなる休止時の入力信号は、図5(a)、(b)に示す駆動時の入力信号における1パルスの周期時間以上の長い時間で電位差がゼロとなる信号とすることが好ましい。このような信号がアクチュエータ10に入力されることにより、駆動が休止されることとなる(休止状態)。
【0053】
また、ドライバ65は、駆動回路85を制御してアクチュエータ10へ出力する駆動信号の波形を変更する機能を有している。例えば、ドライバ65は、単位時間あたりのパルス数を変更することによって駆動信号の波形の変更を行う。例えば、パルスを間引いたりパルス間隔を変更したりすることにより単位時間あたりのパルス数を変更する。さらに、被駆動部材3を移動させる際に、単位時間あたりのパルス数を変更する場合には、1パルスごとの信号が連続する期間の後に、AoutとBoutとの電位差がゼロ(又はAoutとBoutがオープン)となる期間を、1パルスの周期時間以上の長い時間設け、両期間が交互に繰り返されるように駆動信号の波形の変更を行う。すなわち、連続するパルス信号(駆動命令)と、電位差が0となる信号(休止命令)とが交互に繰り返し出力されるように駆動信号の波形を変更する。
【0054】
次に、撮像装置のレンズ位置検出手段の詳細を説明する。図2に示すように、撮像装置にはレンズ位置検出手段として光学式の位置検出器83が設けられている。位置検出器83は、反射板(光学スケール)83a及びフォトリフレクタ83bを備えている。反射板83aは、被駆動部材3と連動するレンズ枠91に取り付けられており、フォトリフレクタ83bに対して相対移動可能に構成されている。また、反射板83aは、移動レンズ90の移動領域内においてフォトリフレクタ83bと対向するように設けられている。
【0055】
反射板83a及びフォトリフレクタ83bの構成について、図6を用いてより詳細に説明する。図6は、位置検出器の構成及びレンズ位置に対応した出力電圧信号を模式的に示す図である。図6では、説明理解の容易性を考慮して反射板83aを大きく強調している。また、図6において、移動レンズ90は、駆動軸2の先端側における装置端X1近傍から圧電素子1側における装置端X2近傍までの領域L1〜L3を移動可能に構成されている。また、ワイド端は焦点距離を最も短く設定するレンズ位置であり、テレ端は焦点距離を最も長く設定するレンズ位置である。ワイド端からテレ端までの領域が、移動レンズ90が適切な結像を行える撮像領域L2である。撮像領域L2以外の領域L1、L3は、移動レンズ90が移動可能な領域であるが移動レンズ90がズームレンズとしての機能を十分発揮することができない領域である。
【0056】
図6に示すように、反射板83aのフォトリフレクタ83bに対向する面には、移動レンズ90の移動位置に対応した光学パターンが形成されている。この光学パターンは、フォトリフレクタ83bからの出射光y1に対する反射率が小さい領域(黒領域)と、フォトリフレクタ83bからの出射光y1に対する反射率が黒パターンよりも大きい領域(白領域)とからなり、移動レンズ90の移動方向に沿って白領域と黒領域が交互に配置された白黒パターンである。光学パターンの両端には、白領域あるいは黒領域が出射光y1の移動レンズ90移動方向における照射幅よりも大きな幅で形成されており、移動レンズ90の移動領域の終端を示すものとなる。なお、白領域及び黒領域の移動レンズ90移動方向のパターン幅は必ずしも同一でなくてもよい。また、パターン周期は、要求される検出領域に応じて設定される。
【0057】
フォトリフレクタ83bは、図1に示すズームレンズユニット部16側に反射板83aに対向して設けられており、反射板83aに対して相対的に固定されるように配置されている。また、フォトリフレクタ83bは、発光する発光素子(発光部)及び受光する受光素子(受光部)を備えている。発光部は、例えば図7(a)に示す光y1を反射板83aへ出射する機能を有している。図7(a)は、図6に示す移動領域L1〜L3のうち、装置端X1、X2近傍を除く領域内における、発光部が出力する光y1の照射幅HLと反射板83aのパターン幅との関係を説明するための概要図である。移動レンズ90移動方向における反射板83aの白領域の幅(反射変化幅)をH1、黒領域の幅(反射非変化幅)をH2とすると、図7(a)に示すように、フォトリフレクタ83bの発光部は、反射板83aでの移動レンズ90移動方向における照射幅HLが白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きい出射光y1を出射可能に構成されている。さらに、フォトリフレクタ83bの発光部は、反射板83aでの照射幅HLが白領域の幅H1と黒領域の幅H2との合計(H1+H2)よりも小さい出射光y1を出射可能に構成されている。なお、発光部の出射口は、例えば図6に示すように円形に形成されており、出射口の径の大きさを変更することにより、照射幅HLが設定される。また、照射幅HLの大きさは、上記条件を満たす大きさであって、A/D変換後に出力電圧信号の振幅が検出可能な範囲で設定される。この発光部が出射する光y1として、例えば赤外光が用いられる。また、受光部は、反射板83aにより反射された光を受光する機能を有している。受光部の受光口は、例えば矩形に形成される。
【0058】
また、図6に示すように、反射板83a及びフォトリフレクタ83bは、移動レンズ90が移動可能な領域L1〜L3内では、移動レンズ90がどの位置に移動してもフォトリフレクタ83bから出射される光y1が反射板83aの光学パターンに照射されるように配置されている。また、反射板83a及びフォトリフレクタ83bは、移動レンズ90が撮像領域L2の境界であるワイド端、テレ端(位置W、位置T7)に到達すると、反射板83aの白領域又は黒領域の中心が照射領域の中心に位置するように配置されている。さらに、反射板83a及びフォトリフレクタ83bは、移動レンズ90が移動終点(装置端X1近傍)に到達すると、フォトリフレクタ83bから出射される光y1が、光学パターンの両端の白領域B1あるいは黒領域B2のみに照射されるように配置されている。
【0059】
フォトリフレクタ83bは、図1に示す素子駆動回路61に接続されており、素子駆動回路61により反射板83aへ光y1を出射するとともに、反射板83aで反射される反射光の受光量(光強度)を検出する機能を有している。図8は、図1に示す素子駆動回路61の一例である。図8に示すように、光強度は電圧として検出された後、CPU62が有するA/D変換部63によりA/D変換され出力電圧信号(出力信号)として検出される。
【0060】
ここで、素子駆動回路61により出力される電圧信号について説明する。図7(b)は、図7(a)に示す反射板83aがフォトリフレクタ83bに対して相対移動した場合の出力電圧信号を示すものである。図7(b)に示すように、出力電圧値Y1は、照射領域における白領域の占める割合に応じて変化する。例えば、照射領域における白領域の占める割合が大きくなるほど照射領域における出射光y1に対する反射率が大きくなるので、出力電圧値Y1は大きくなる。すなわち、反射板83aの白領域の中心が照射領域の中心に位置した時に、移動領域の装置端近傍を除く領域内において、照射領域における出射光y1に対する反射率が最も高くなり、出力電圧信号Y1が最も大きくなる。反対に、反射板83aの黒領域の中心が照射領域の中心に位置した時に、移動領域の装置端近傍を除く領域内において、出力電圧値Y1が最も小さくなる。このため、周期的な光学パターンを有する反射板83aがフォトリフレクタ83bに対して相対的に移動すると、移動領域の装置端近傍を除く領域内において、出力電圧信号Y1は周期的に変化した信号となる。以下では、装置端近傍を除く移動領域に対応する出力電圧信号Y1(周期的波形部分)において、移動によって増加し減少する出力電圧値の変化点、及び、減少し増加する出力電圧値の変化点を極値という。
【0061】
また、上述したように、発光部から出射される出射光y1は、反射板83aでの照射幅HLが白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きくされている。このため、出射光y1は、白黒パターンにおいて白領域あるいは黒領域の何れか一方の領域のみに照射されることはなく、常に白領域及び黒領域の両方に照射される。例えば、図7(a)に示す出射光y0のように、照射幅が白領域の幅H1又は黒領域の幅H2よりも小さい場合には、白領域又は黒領域の中心付近では、白領域又は黒領域の何れか一方のみに出射される。この場合、図7(b)に示すように、白領域又は黒領域の中心付近に対応する出力電圧値Y0は、移動レンズ90の位置に関わらず一定値となる。反対に、図7(a)に示すように、フォトリフレクタ83bから出射される出射光y1は、どの移動位置においても白領域及び黒領域の両方に照射されるので、素子駆動回路61で検出する出力電圧値Y1は、移動レンズ90の位置が変化すると必ず変化することとなる。
【0062】
また、出射光y1は、反射板83aでの照射幅HLが白領域の幅H1と黒領域の幅H2との合計(H1+H2)よりも小さいため、例えば白領域、黒領域、白領域、黒領域、あるいは、黒領域、白領域、黒領域、白領域等、4以上の領域に跨って照射されることはなく、常に白領域及び黒領域からなる2又は3つの領域に照射される。このため、出力電圧信号の極値としては、白領域又は黒領域の中心位置で得られる出力電圧値のみが該当することとなり、かつ、波形歪みや振幅が小さくなりすぎることがない。例えば、図15に示す比較例のように、照射幅HLが白領域の幅H1と黒領域の幅H2との合計(H1+H2)よりも大きい場合、出力電圧信号の振幅VTが図7(b)に示す出力電圧信号Y1の振幅V0よりも小さくなる。以下では、図16を用いて、照射幅HLが白領域の幅H1もしくは黒領域の幅H2に対して大きな場合に生じる出力電圧信号の振幅の減少について説明する。図16は、比較例における出力電圧信号の振幅の減少を説明するための概要図である。図16(a)は、白黒パターンのうち、出射光y3により黒領域10%、白領域80%、黒領域10%が照射域HLとなる場合であり、図16(b)は、白黒パターンのうち、出射光y3により白領域10%、黒領域80%、白領域10%が照射域HLとなる場合を示している。また、図16(c)は、白黒パターンのうち、出射光y4により黒領域20%、白領域60%、黒領域20%が照射域HLとなる場合であり、図16(d)は、白黒パターンのうち、出射光y4により白領域20%、黒領域60%、白領域20%が照射域HLとなる場合を示している。なお、説明理解の容易性を考慮して、図16においては照射領域の形状を矩形としている。また、白領域の反射率を90%とし、黒領域の反射率を9%として説明する。出力電圧値は、照射領域と反射率との積を各領域において算出して総和したものであるので、図16(a)における出力電圧値は、0.09×0.1+0.9×0.8+0.09×0.1=0.738となる。同様に、図16(b)における出力電圧値は、0.9×0.1+0.09×0.8+0.9×0.1=0.252となる。このため、照射領域が黒領域20%、白領域80%の場合には、出力電圧信号の振幅V0EX1は、0.738−0.252=0.486となる。一方、同様の計算方法で、図16(c)における出力電圧値は、0.09×0.2+0.9×0.6+0.09×0.2=0.576となる。同様に、図16(d)における出力電圧値は、0.9×0.2+0.09×0.6+0.9×0.2=0.414となる。このため、照射領域が黒領域40%、白領域60%の場合には、出力電圧信号の振幅V0EX2は、0.576−0.414=0.162となる。上記計算によりV0EX1に比べ振幅V0EX2が小さいことから、照射幅HLが白領域の幅H1もしくは黒領域の幅H2のそれぞれよりも大きくなるほど振幅が減少することがわかる。また、照射領域が白領域25%、黒領域50%、白領域25%の場合には、出力電圧値は、0.09×0.25+0.9×0.5+0.09×0.25=0.495であり、照射領域が黒領域25%、白領域50%、黒領域25%の場合には、出力電圧値は、0.9×0.25+0.09×0.5+0.9×0.25=0.495であるので、振幅の差が0となるため、H1+H2よりも小さな発光にする必要がある。一方、照射領域が黒領域0%、白領域100%、黒領域0%の場合には、出力電圧値は、0.09となり、照射領域が白領域0%、黒領域100%、白領域0%の場合には、出力電圧値は、0.09となるので、振幅の差が最も大きくなる。
【0063】
次に、移動レンズ90の位置と出力電圧値との関係について説明する。図6に示すように、移動レンズ90が移動可能な領域L1〜L3内において、移動レンズ90がワイド端方向(図6左方向)あるいはテレ端方向(図6右方向)に移動すると、それに応じて反射板83aがフォトリフレクタ83bに対して相対移動し、フォトリフレクタ83bにより照射される反射板83aの領域が変化する。すなわち、照射領域(照射幅HL)に含まれる白領域及び黒領域の配分が、反射板83aの移動位置に応じて変化する。このため、フォトリフレクタ83bは、移動レンズ90の移動位置に応じて図6に示すように正弦波の電圧信号を出力する。
【0064】
一方、移動レンズ90が装置端X1近傍に移動すると、フォトリフレクタ83bから出射される光が白領域B1あるいは黒領域B2のみに照射されるので、図6に示すように、フォトリフレクタ83bは領域L4、L2、L5での正弦波の出力電圧信号の振幅における下限値V0MINよりも小さな電圧V1、上限値V0MAXよりも大きな電圧V2を出力する。
【0065】
次に、出力電圧信号Y1を用いて移動レンズ90の位置を検出する動作について説明する。移動レンズ90の位置検出は、CPU62及び素子駆動回路61により実行される。
【0066】
最初に、移動レンズ90を装置端X1近傍に到達させたことを検知する動作を説明する。素子駆動回路61は、移動レンズ90の駆動とともにフォトリフレクタ83bの発光部から出射光y1を出力させ、反射板83aからの反射光の強度を受光部で出力電圧信号Y1に変換する。そして、CPU62は、A/D変換された出力電圧信号Y1がしきい値V3よりも小さい場合には、移動レンズ90の位置は、装置端X1近傍であると検知する。このしきい値V3は、出力電圧信号Y1の振幅における下限値V0MINよりも小さく、電圧V1よりも大きい値が用いられる。
【0067】
次に、移動レンズ90をワイド端に到達させたことを検知する動作を説明する。移動レンズ90をワイド端(位置W)に到達させると、反射板83aの白領域の中心が照射領域の中心に位置するため、ワイド端での出力電圧値は出力電圧信号の極値となる。このため、ワイド端は、出力電圧値の大きさではなく、原点を基準とした極値の数によって特定することができる。ここで、制御部81のEEPROM64には、移動レンズ90移動位置に対する出力電圧信号が予め測定されて記録されている。すなわち、EEPROM64には、所定地点を基準位置とした周波数や波長数が出力電圧値と共に記録されている。基準位置(原点)として、例えばワイド端側の装置端X1近傍に設けられた位置P1が用いられる。予め記録された出力電圧信号を参照することにより、ワイド端での出力電圧値がワイド端側の位置P1から数えて何個目の極値に相当するのか認識することができる。このため、位置P1を基準として位置Wを一意に特定することができる。例えば、ワイド端側へ移動レンズ90を移動させて位置P1に到達した後に、テレ端側へ移動レンズ90を移動させ、記録された数の極値を検出した際に、移動レンズ90の位置はワイド端であると検知する。なお、図6に示すように、テレ端(位置T7)での出力電圧信号、位置T1〜T6での出力電圧信号は、出力電圧信号Y1の極値に相当するため、移動レンズ90がワイド端に到達したことを検知する動作と同様の動作で位置検出することができる。
【0068】
次に、上述した位置W、T1〜T7以外の位置検出動作を説明する。これらの位置での出力電圧値は、位置P1を基準位置とした出力電圧信号Y1の極値の数と、出力電圧値に基づいて一意に特定する。CPU62は、例えば、ワイド端側へ移動レンズ90を移動させて位置P1に到達した後に、テレ端側へ移動レンズ90を移動させて、極値の数及び出力電圧値を測定する。そして、測定地点での位置検出をする場合、ワイド端側の位置P1から当該測定地点までに存在した極値の数及び当該測定地点での出力電圧値を取得し、予め測定された移動レンズ90移動位置に対する出力電圧信号に基づいて、移動レンズ90の移動位置を一意に特定し検出する。
【0069】
上述したように、位置検出器83は、移動レンズ90が位置P1に位置することを出力電圧値の大きさに基づいて検出し、移動レンズ90がワイド端、テレ端等にあることを位置P1からの極値の数に基づいて検出し、それ以外の位置については、位置P1からの極値の数及び出力電圧値の大きさに基づいて検出する。このように、位置Wでの出力電圧値を出力電圧信号の極値とすることにより、例えば出力電圧が経時や温度により変化した場合であっても位置Wを特定することができる。以下、温度変化により出力電圧値が変化した場合を説明する。図9は、出力電圧の検出位置依存性を所定の温度ごとに示すグラフであり、図10は、出力電圧信号の移動レンズ90移動量依存性を所定の温度ごとに示すグラフである。図9、10に示すように、温度変化によって出力電圧信号の大きさが変化する場合であっても、極値の位置は変化しないので、位置P1を基準とした極値の数によってワイド端を特定することができる。同様に、極値に対応した位置T1〜T7を特定することができる。
【0070】
一方、極値以外の出力電圧値となる位置を検出する場合には、検出した出力電圧値の大きさをEEPROM64の出力電圧値と比較するため、温度変化に伴って出力電圧信号の変化が生じた場合には位置検出の精度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態の位置検出器83を備える撮像装置は、位置検出器83の出力電圧値を補正する機能を備えている。
【0071】
以下では、出力電圧値の補正動作について説明する。図11は、本実施形態に係る位置検出器を備える撮像装置の動作を示すフローチャートである。なお、説明理解の容易性を考慮して、通常使用時に比べて低温の環境で位置検出動作を行った場合を説明する(図9参照)。また、図12を参照して補正動作を説明する。図12は、補正前後の出力電圧値を示す概要図である。図12において、左方向をワイド端方向、右方向をテレ端方向として説明する。
【0072】
図11に示すフローチャートは、例えば撮像装置の電源がONされたタイミングで実行される。図11に示すように、撮像装置は、ワイド端側の装置端X1方向まで移動レンズ90を移動させる処理から開始する(S10、S12、S14)。
【0073】
S10の処理は、位置検出器83により検出された出力電圧値に基づいて移動レンズ90をワイド端側の装置端X1近傍へ移動させたか否かを判定する処理である。例えば、図12に示すように、所定の位置からワイド端方向へ移動レンズ90を移動させるとともに、位置検出器83により出力電圧を検出し、検出された出力電圧値がしきい値V3以下である場合には、移動レンズ90をワイド端側の装置端X1近傍に移動させたと判定する。この場合、アクチュエータ10の駆動を停止する(S14)。これにより、移動レンズ90は図12の位置aで停止することとなる。なお、図12の装置端X1近傍の位置aを基準位置P1とする。
【0074】
一方、例えば、位置検出器83により検出された出力電圧値がしきい値V3以下でない場合には、移動レンズ90を装置端X1近傍まで移動させていないと判定する。この場合、アクチュエータ10の駆動を継続させて移動レンズ90をワイド端方向へさらに移動させる(S12)。例えば、所定の数の駆動パルスをアクチュエータ10へ出力する。その後、再度S10の処理を行う。このように、移動レンズ90を位置aに移動させるまでS10、S12の処理を繰り返し行う。
【0075】
移動レンズ90を装置端X1近傍に移動させて停止させると、次に、移動レンズ90をテレ端側に移動させる(S16)。例えば、所定の数の駆動パルスをアクチュエータ10へ出力する。その後、移動レンズ90を最初の上に凸の極値(図12の位置b)となる位置に到達させたか否かを判定する(S18)。S18の処理では、測定した出力電圧値が上に凸の極値となるか否かを判定する。S18の処理において、測定した出力電圧値が最初の上に凸の極値ではないと判定した場合には、再度S16の処理へ移行して移動レンズ90をテレ端側に移動させる。このように、移動レンズ90を位置bに移動させるまでS16、S18の処理を繰り返し行う。
【0076】
一方、S18の処理において、測定した出力電圧値が最初の上に凸の極値であると判定した場合、移動レンズ90を位置bに移動させたと判定し、出力電圧値の読込処理を行う(S20)。S20の処理が終了すると、さらにテレ端方向へ移動レンズ90を移動させる(S22)。
【0077】
S22の処理が終了すると、S22の処理を実行して1msが経過したか否かを判定する(S24)。S24の処理において1ms経過していないと判定した場合には、再度S22の処理へ移行し、テレ端方向へ移動レンズ90をさらに移動させる。このように、1ms経過するまで移動レンズ90をテレ端方向へ移動させる処理を繰り返し行う。一方、S24の処理において1ms経過したと判定した場合には、出力電圧の読込処理を行う(S26)。
【0078】
S26の処理が終了すると、測定した出力電圧値が上に凸の極値であるか否かを判定する(S28)。測定した出力電圧値が上に凸の極値であると判定した場合には、移動レンズ90を位置fに移動させたと判定する。一方、測定した出力電圧値が上に凸の極値でないと判定した場合には、再度S22の処理へ移行する。このように、測定した出力電圧値が上に凸の極値となるまで、すなわち、移動レンズ90を位置fに到達させるまでS22、S24、S26の処理を繰り返し実行する。S28の処理において、移動レンズ90を位置fに到達させたと判定した場合には、アクチュエータ10の駆動を停止し(S30)、図11に示す制御処理を終了する。
【0079】
以上で図11に示す制御処理を終了する。図11に示す制御処理を実行することにより、図12に示すように移動レンズ90を装置端X1近傍へ移動させた後にワイド端に移動させることができる。そして、移動レンズ90を装置端X1近傍からワイド端に移動させる際に、出力電圧値の極値(位置b)と極値(位置f)との間の実際の出力電圧値YRを1msごとに取得することができる。すなわち、移動領域L4における出力電圧値YRを取得することができる。
【0080】
図11に示す制御処理を実行し、移動領域L4における出力電圧値YRを取得した後に、出力電圧値YRに基づいて撮像領域L2の出力電圧信号YSを補正する処理を行う。例えば、EEPROM64に格納された調整時の出力電圧値YIと、実際得られた出力電圧値YRとを比較して差分を取得する。そして、撮像領域L2において出力電圧信号YSを取得した場合、算出した差分を取得した出力電圧信号YSに与えて補正する。このように補正することで、例えば図9に示すように温度変化によって出力電圧信号が変化した場合であっても、補正後の出力電圧値を用いて、調整時の出力電圧値YIと対応させて撮像領域L2内の移動位置を特定することができる。
【0081】
次に、位置検出結果を利用したアクチュエータ10の駆動制御手段の動作について説明する。図13は、本実施形態に係る位置検出器を備える撮像装置の動作を示すフローチャートである。なお、説明理解の容易性を考慮して、図14を参照して動作を説明する。図14は、補正前後における移動量の駆動時間依存性を示す概要図である。
【0082】
図13に示すフローチャートは、例えば撮像装置においてレンズ駆動を行うタイミングで繰り返し実行される。図13に示すように、撮像装置は、レンズ位置確認処理から開始する(S40)。S40では、位置検出器83及びCPU2が移動レンズ90の位置を検出する。CPU62は、例えば、出力電圧値を入力し、予め測定された移動レンズ90移動位置に対する出力電圧信号と比較して移動レンズ90の移動位置を検出する。S40の処理が終了すると、目標位置確認処理へ移行する(S42)。
【0083】
S42の処理では、例えば撮影者等から入力された情報等に基づいて、目標となるズーム量を入力する。S42の処理が終了すると、差分算出処理へ移行する(S44)。
【0084】
S44の処理では、所定時刻における目標ズーム量(制御目標M)と、所定時刻における実際の移動量S1とを比較して差分を出力する。S44の処理が終了すると、駆動制御へ移行する(S46)。
【0085】
S46の処理では、S44の処理で得られた差分に基づいてアクチュエータ10に出力する駆動信号を制御する。CPU62は、S44の処理で算出した差分に応じて、駆動信号を制御する。例えば、実際の移動量S1が目標ズーム量に比べて大きい場合には、図14(a)に示すように、アクチュエータ10の駆動と停止を繰り返す処理を行う。例えば、図5に示す駆動信号を変化させることによりアクチュエータ10の駆動と停止を繰り返す。S46の処理が終了すると、図13に示す制御処理を終了する。
【0086】
上述した図13に示す制御処理を、所定のタイミングで繰り返し実行することで、移動レンズ90の実際の移動量S1を、制御目標Mに近づくようにフィードバックさせることができる。ところで、位置検出によるフィードバックを行わない場合、例えばアクチュエータ10による移動レンズ90の移動速度を予め記録しておき、所定時刻における目標位置に対して移動速度に基づいて制御する場合には、経時や温度の変化により移動速度が変化するので、制御目標Mを実現しようとしても図14(b)に示すような移動量S2となる場合がある。これに対して、本実施形態の位置検出器83を用いてフィードバックしながら駆動制御することにより、制御目標Mに沿った移動量S1を得ることができる。また、本実施形態の位置検出器83を用いることにより、移動量に対する駆動時間を制御することができるので、一定速度でズーム駆動することが可能となる。
【0087】
以上、本実施形態に係る位置検出器83では、発光部が出射する光y1の照射幅HLを、反射板83aの白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きくし、かつ、白領域の幅H1と黒領域の幅H2とを加算した幅(H1+H2)よりも小さくしている。このため、2又は3つの領域に跨った位置に投光することができるので、反射板83aの全ての移動領域において受光部が受光する光強度の大きさを変化させることが可能となる。よって、移動位置に依存した略正弦波の出力電圧信号Y1を得ることができるので、適切に位置検出することが可能となる。このように、本実施形態に係る位置検出器83では、複雑な光学パターンを必要とせず、光の照射幅を適切な値に設定するという簡易な手法で適切な位置検出を行うことができる。
【0088】
また、本実施形態に係る位置検出器83によれば、経時変化や環境変化によって出力信号が変化する場合であっても、領域L1での出力信号を基準として撮像領域L2での出力信号を補正することができる。このため、経時変化や環境変化に関わらず正確に位置検出することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る位置検出器83によれば、発光部及び受光部を隣接させたフォトリフレクタ83bを用いているので、位置検出器83の小型化を図ることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る撮像装置によれば、移動レンズ90の位置を適切に取得し、かつ移動レンズ90を適切に移動させることができる。このため、ズーム動作の安定性を向上することができるとともに、移動レンズ90の停止精度を向上させることができる。
【0091】
さらに、本実施形態に係る撮像装置によれば、領域L4で取得した出力電圧信号に基づいて撮像領域L2での出力電圧値を補正することができる。このため、撮像領域L2を走査して実データを取得して補正する場合に比べて迅速に撮影可能状態とすることができる。
【0092】
なお、上述した実施形態は本発明に係る光学式位置検出器及び光学装置の一例を示すものである。本発明に係る光学式位置検出器及び光学装置は、上述した実施形態に係る光学式位置検出器及び光学装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る光学式位置検出器及び光学装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0093】
例えば、上述した実施形態では、移動レンズ90の位置検出に適用する場合を説明したが、オートフォーカス用のレンズ102や、ズームレンズユニット部16等の位置検出に適用してもよい。また、移動レンズ90以外の物(例えばステージやプローブ等)を移動させる際の位置検出に適用してもよい。さらに、手振れ補正機構のように、光軸に直交する方向に駆動させる際の位置検出に適用してもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、光学装置として撮像装置において好適に採用される例を説明したが、インクジェット式のプリントヘッドの位置検出に採用してもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、支持部材5を介し固定枠4に圧電素子1を取り付けて、圧電素子1の端部を自由端にした場合について説明したが、圧電素子1の端部を直接固定枠4に取り付けるものであってもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、位置検出器83として、反射板83aとフォトリフレクタ83bとを用いる例を説明したが、スリット部材のように透過率の異なる光学パターン幅を有するスケールと、フォトインタラプタとを採用する場合であっても良い。
【0097】
また、上述した実施形態では、投光する光y1の照射幅HLを制御する例を説明したが、反射板83aのパターン間隔を制御することによって、発光部が出射する光y1の照射幅HLを、反射板83aの白領域の幅H1及び黒領域の幅H2よりも大きくし、かつ、白領域の幅H1と黒領域の幅H2とを加算した幅(H1+H2)よりも小さくする場合であっても良い。
【0098】
また、上述した実施形態では、白領域及び黒領域が周期的に配列する光学パターンの例を説明したが、例えば、白領域、黒領域、白領域の3つからなる光学パターンや、黒領域、白領域、黒領域の3つからなる光学パターンであってもよい。この場合、発光部が出射する光y1の照射幅HLを、反射板83aの白領域の幅H1又は黒領域の幅H2よりも大きくし、かつ、白領域の幅H1と黒領域の幅H2とを加算した幅(H1+H2)よりも小さくすればよい。
【0099】
さらに、上述した実施形態では、撮像装置のアクチュエータとして圧電素子を用いたものを採用しているが、モータ、高分子アクチュエータ、形状記憶合金などの他の駆動部品を採用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…圧電素子、2…駆動軸、3…被駆動部材、10…アクチュエータ、81…制御部、83a…反射板(スケール部材)、83b…フォトリフレクタ(発光部、受光部)、90…移動レンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出光を出射する発光部と、
前記発光部に対して所定方向に沿って相対移動し、第1領域、及び前記被検出光に対して前記第1領域とは異なる透過率又は反射率を有する第2領域が交互に配置された光学パターンを含む光学スケールと、
前記光学スケールを透過する前記被検出光の光強度又は前記光学スケールで反射される前記被検出光の光強度に基づいて出力信号を出力する受光部と、
を備え、
前記所定方向において、前記発光部が前記光学スケールへ出射する被検出光の照射幅は、前記第1領域からなるパターン幅及び前記第2領域からなるパターン幅よりも大きく、かつ、前記第1領域からなるパターン幅と前記第2領域からなるパターン幅とを加算したパターン幅よりも小さいこと、
を特徴とする光学式位置検出器。
【請求項2】
前記光学スケールの所定の移動領域での出力信号に基づいて、前記光学スケールの他の移動領域での出力信号を補正する補正手段を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の光学式位置検出器。
【請求項3】
前記光学スケールは、第1領域及び第2領域が周期的に配置された反射板であり、
前記発光部及び前記受光部は、それぞれ単一の発光素子又は受光素子からなること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の光学式位置検出器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学式位置検出器と、
光学部材と、
前記光学部材を駆動させる駆動源と、
を備え、
前記光学部材と前記光学スケールとを連動させ、前記受光部の出力信号により前記光学部材の位置情報を取得すること、
を特徴とする光学装置。
【請求項5】
前記光学部材はレンズであり、
前記補正手段は、前記レンズの撮影領域外での出力信号を取得し、前記レンズの撮影領域での出力信号を補正すること、
を特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項1】
被検出光を出射する発光部と、
前記発光部に対して所定方向に沿って相対移動し、第1領域、及び前記被検出光に対して前記第1領域とは異なる透過率又は反射率を有する第2領域が交互に配置された光学パターンを含む光学スケールと、
前記光学スケールを透過する前記被検出光の光強度又は前記光学スケールで反射される前記被検出光の光強度に基づいて出力信号を出力する受光部と、
を備え、
前記所定方向において、前記発光部が前記光学スケールへ出射する被検出光の照射幅は、前記第1領域からなるパターン幅及び前記第2領域からなるパターン幅よりも大きく、かつ、前記第1領域からなるパターン幅と前記第2領域からなるパターン幅とを加算したパターン幅よりも小さいこと、
を特徴とする光学式位置検出器。
【請求項2】
前記光学スケールの所定の移動領域での出力信号に基づいて、前記光学スケールの他の移動領域での出力信号を補正する補正手段を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の光学式位置検出器。
【請求項3】
前記光学スケールは、第1領域及び第2領域が周期的に配置された反射板であり、
前記発光部及び前記受光部は、それぞれ単一の発光素子又は受光素子からなること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の光学式位置検出器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学式位置検出器と、
光学部材と、
前記光学部材を駆動させる駆動源と、
を備え、
前記光学部材と前記光学スケールとを連動させ、前記受光部の出力信号により前記光学部材の位置情報を取得すること、
を特徴とする光学装置。
【請求項5】
前記光学部材はレンズであり、
前記補正手段は、前記レンズの撮影領域外での出力信号を取得し、前記レンズの撮影領域での出力信号を補正すること、
を特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−237066(P2010−237066A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85982(P2009−85982)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]