説明

光学式位置測定装置

【課題】測定目盛面に対して直角な軸を中心にして、測定目盛を備えた基準尺体に対して相対的な走査検知ユニットの傾斜に対して鈍感な高分解能の光学式位置測定装置を提供する。
【解決手段】光源21により発せられた光束が測定目盛11に当たり、そこで少なくとも二つの分光光束への分割が行われる。走査検知ユニット20の方向に進む分光光束が、第一走査検知目盛24を介してリフレクタ要素25に当たり、そして測定目盛11の方向への反射を受け、そのとき測定目盛11へ向かう経路で第一走査検知目盛24を通過する。再び測定目盛11に当たった後に、走査検知ユニット20の方向に進む分光光束が重ね合わされて、分光器要素22を介して検知ユニット26方向へ方向転換される。そこで位置に関係すると共に位相のずれた複数の走査検知信号を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の光学式位置測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
当該形式の光学式位置測定装置は、US6,831,267B2号公報で公知である;そこでは特に図11および50を参照されたい。この文献で提案されている位置測定装置は、走査検知ユニットおよび測定目盛を備えた基準尺体との相対的位置を高分解能で検出するために使用し、そこでは走査検知ユニットおよび基準尺体が、少なくとも測定方向に沿って互いの間で移動自在である。走査検知ユニットには、光源、第一円環状走査検知目盛、直接その後に配設されたリフレクタ要素、分光器要素、および検知ユニットを含んでいる。光源により発せられた光束が測定目盛に当たり、そこで少なくとも二つの分光光束への分割が起きる。走査検知ユニットに向けて逆反射された分光光束は、第一走査検知目盛とリフレクタ要素を介して、再び測定目盛の方向に反射され、そのとき分光光束は測定目盛に向かう経路で、再び第一走査検知目盛を通過する。第一走査検知目盛は、円環格子として構成されている。このような形式の円環格子は、ラジアル方向で等間隔に配設された同心の格子線で構成されている。測定目盛で再び反射された後に、走査検知ユニットの方向に進む分光光束は重ね合わされて、分光器要素を介して検知ユニット方向への方向転換を受け、そこで位置に関係する複数の走査検知信号を検出することができる。測定目盛ないし基準尺体と第一走査検知格子間の光路にある追加の偏光光学構成要素により、二つの分光光束が互いの間で直角偏光されるので、基準尺体と走査検知ユニットが相対的に移動するケースにおいて、公知の偏光光学的な方法を使うことにより検知ユニットでは、高分解能且つ位相がずれた走査検知信号を生成することができる。
【0003】
US6,831,267B2号公報において言及した二つの図で公知の光学式位置測定装置は、充分に円筒対称であることにより、基準尺体に対する走査検知ユニットの傾斜に関して非常に大きな誤差許容度を有していることになっている;そこでは特に所謂モアレ傾斜に対して現れる感度が、特に鈍いことになっている。ここで考えているのは、測定目盛面に対して直角方向に向いている回転軸を中心にした走査検知ユニットと基準尺体の傾きである。
【0004】
しかしながら、当該形式の光学式位置測定装置で実施したシミュレーションでは、提案された走査検知光学系で種々の弱点が生じている。そして測定目盛および第一走査検知目盛が、回折された分光光束の光波前面に非常に異なった影響を与えている。特に第一走査検知目盛の円環格子は、格子線が円形に曲がっているので光波前面を著しく歪ませる。このように構成された第一走査検知目盛は、直線目盛を走査検知するために適していない。結果として、分割された分光光束で光波前面歪みが生じ、それが走査検知信号で極度に低い変調度となる。光波前面歪みは光線方向に対して直角な方向で著しく大きくなるので、光源から入射する光束の光線断面を非常に小さく選ばねばならない。その結果として生じるのは、光学式位置測定装置で汚染や欠陥に対して敏感なことである。
【0005】
しかし更に重要なことは、提案された光学式位置測定装置では大きな光波前面歪みが、取付け、使用、製造時に極度に小さい誤差許容度になることである。そのような取付け、使用、製造時での誤差許容度では、二つの分光光束で小さい横方向ズレが発生する。光波前面歪みが大きい時には、これが著しい局所的位相ズレ、よって重ね合わされた分光光束で不十分な干渉に至る。このことは更に、走査検知信号強度の顕著な低下という結果になる。シミュレーションにより、取付けおよび製造時の誤差許容度は殊のほか小さいことが確認されたが、それを受忍できるのは僅かな用途ケースのみである。ここで対象となるケースは、一方で大きなモアレ傾斜許容度が要求されるが、他方で他の許容度全てが市場で一般的な光学式位置測定装置と較べて明らかに小さくなければならないケースである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高分解能の光学式位置測定装置を提供することであり、それは、測定目盛面に対して直角な軸を中心にして、測定目盛を備えた基準尺体に対して相対的な走査検知ユニットの傾斜に対して鈍感であり、そして同時に基準尺体でその他の傾斜およびズレに対して誤差許容度が大きいものである。
【0007】
本発明による光学式位置測定装置で利点のある実施方法は、従属請求項に記載の処置により得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光学式位置測定装置には、走査検知ユニットおよび測定目盛を備えた基準尺体を含んでおり、その走査検知ユニットおよび基準尺体は、少なくとも一つの測定方向(x)に沿って互いの間で移動自在である。走査検知ユニットは、光源、第一円環状走査検知目盛、リフレクタ要素、分光器要素、および検知ユニットを有している。光源により発せられた光束は測定目盛に当たり、そこで少なくとも二つの分光光束への分割が行われる。走査検知ユニットの方向に進む分光光束が、第一走査検知目盛を介してリフレクタ要素に当たる。その分光光束がリフレクタ要素で、測定目盛の方向への反射を受け、そして測定目盛へ向かう経路で第一走査検知目盛を通過する。再び測定目盛に当たった後に、走査検知ユニットの方向に進む分光光束は重ね合わされて、分光器要素を介して検知ユニット方向へ方向転換され、そこで位置に関係すると共に位相のずれた複数の走査検知信号を検出することができる。第一走査検知目盛は、それを介して、それに測定目盛から入射する分光光束をリフレクタ要素に集束するように構成されている。更に、第一走査検知目盛を介して分光光束の再平行光線化が行われ、それがリフレクタ要素での反射の後に、測定目盛の方向に進む。
【0009】
ここで更に、
− 少なくとも一つの偏光光学構成要素が、分割された分光光束の光路に配設されており、それを介して、測定目盛で分割された二つの分光光束が、直線または円の直角偏光を互いの間で受け、そして
− 検知ユニットにおいて複数の光電子式ディテクタ要素の前に、ポラライザが配設されている
ようにしていることがある。
【0010】
更に、少なくとも一つの偏光光学構成要素を介して、
− 分光光束の直角偏光が、直径方向に配設された二つの扇形で生じるか、又は
− 方位方向で位置に関係して180°の範囲に亘って回転する直線偏光を生じるか
のいずれかであることがある。
【0011】
偏光光学構成要素として例えば、少なくとも一つの高周波格子が、分光光束の走査検知光路に配設されていることがある。
更にリフレクタ要素が、偏光光学構成要素として構成されていることがある。
【0012】
別の実施形態では、位相差プレートとして構成された複数の偏光光学構成要素が、分光光束の走査検知光路において測定目盛と第一走査検知目盛の間、または第一走査検知目盛とリフレクタ要素の間に配設されているようにすることがある。
【0013】
二回目に測定目盛に当たった後に重ね合わせ分光光束が、光学軸に沿って進むと好ましい。
第一走査検知目盛が、
【0014】
【数1】

【0015】
そこで、
ΦA1(r):=半径に関係する位相関数
r:=半径
:=測定目盛の目盛周期
:=回折性リングレンズに当たる主光線のラジアル方向間隔
による二次位相関数を有する回折性レンズとして構成されていると利点がある。
【0016】
更に分光光束が、最初に第一走査検知目盛に当たった後に、光学軸に対して平行に進むことがある。
最後に、第一走査検知目盛およびリフレクタ要素が、偏光光学構成要素を例外として、光学軸に対して円筒対象で構成されており、そして光源により発せられた光束が、光学軸に沿って進むことがある。
【0017】
測定目盛が、
− 一次元の直線目盛として、または
− 二次元の直線目盛として、または
− ラジアル目盛として、または
− 円環目盛として
構成されているようにしていることがある。
【0018】
更に、光源により発せられた光束の通過する回折性構造が、走査検知プレートの範囲に配設されていることがあり、そこでは回折性構造が、光源から入射する光束用の平行光線化レンズとして、および/または測定目盛から入射する重ね合わせ分光光束用の格子分光器としての役割を果たし、そして走査検知プレートの前側と後側に第一走査検知目盛およびリフレクタ要素が、またはその逆で配設されている。
【0019】
可能性ある実施形態では検知ユニットが、入射する重ね合わせ分光光束を空間的に分割する分光器を有していることがあり、そして分割された分光光束が、それぞれポラライザを通過した後に光電子式ディテクタ要素に当たる。
【0020】
更に、分光器が格子分光器として構成されていることがある。
本発明による光学式位置測定装置の別の変形例では、分光光束の光路において光学的位相差区間が配設されていることがある。
【0021】
本発明による光学式位置測定装置の重要な利点として、走査検知ユニットと基準尺体のモアレ傾斜に対して求める高い許容度が、その他の傾きや位置の誤差許容度が大きい時に同時に得られる。それにより本発明による光学式位置測定装置は、取付けおよび使用時での大きな誤差許容度を有している。このことは正に、最適化された位相変化および距離をおいて回折性レンズの焦点面にあるリフレクタを備えた回折性レンズとして、第一走査検知目盛を構成していることに帰するものである。それにより、走査検知光路において障害となる光波前面歪みを最小化できる。
【0022】
更に、基準尺体ないし測定目盛を走査検知する時に、充分に大きな光線断面を使って使用することが可能であり、それが同じく汚染に対する感度が鈍いという結果に至る。
本発明の別の利点および詳細は、複数の実施例について添付の図を使った以下の説明で分かる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による光学式位置測定装置の第一実施形態の概略図。
【図2】図1による光学式位置測定装置の構成要素の各外観図。
【図3】図1による光学式位置測定装置の検知ユニットの概略図。
【図4】本発明による光学式位置測定装置の第二実施形態の概略図。
【図5】図4による光学式位置測定装置の構成要素の各外観図。
【図6】図4による光学式位置測定装置の検知ユニットの概略図。
【図7】本発明による光学式位置測定装置の第三実施形態の概略図。
【図8】本発明による光学式位置測定装置の第四実施形態の概略図。
【図9】図8による光学式位置測定装置の構成要素の各外観図。
【図10】図8による光学式位置測定装置の検知ユニットの概略図。
【図11】本発明による光学式位置測定装置の第五実施形態の概略図。
【図12】図11による光学式位置測定装置の構成要素の外観図。
【図13】本発明による光学式位置測定装置の第六実施形態の概略図。
【図14】図13による光学式位置測定装置の構成要素の外観図。
【図15】本発明による光学式位置測定装置の第七実施形態の概略図。
【図16】図15による光学式位置測定装置の構成要素の外観図。
【図17】本発明による光学式位置測定装置の第七実施形態の第一変形例の概略図示した構成要素。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下で本発明による光学式位置測定装置の色々な具体的実施例を詳細に説明する前に、まず変形例全ての基礎になる走査検知原理を説明することにする。
基準尺体ないしその上に配設された反射性または透過性の測定目盛は、光学軸に沿って光源の−好ましくは平行光線化された−光束により照光されるようになっている。測定目盛では入射する光束が、+1/−1次回折次数で二つの分光光束に分割ないし回折され、それが走査検知ユニットの方向に進む。続いて分光光束は、第一走査検知目盛を介して、光路で後に配設されたリフレクタ要素に集束される。そこで第一走査検知目盛は、円筒対称の回折性リングレンズとして構成されていると好ましい。リフレクタ要素の具体的な構成に関しては多数の可能性があり、それを具体的な実施例を使って更に詳細に説明する。それで例えばリフレクタ要素が、反射性の第二走査検知目盛として、またはミラーおよび一つまたは複数の偏光光学構成要素の組合せとして構成されていることもある。そのリフレクタ要素は、円筒対称の回折性リングレンズの焦点面に配設されている。引き続いてリフレクタ要素により、第一走査検知目盛の方向への二つの分光光束の逆反射が行われる。
【0025】
加えて、走査検知光路において構成要素を適切に構成することにより、測定目盛ないし基準尺体で分割された二つの分光光束が、互いの間で直角偏光されていることが確保される。その分光光束は、例えば互いの間で直角な直線偏光を、あるいは互いの間で直角な円偏光を受けることがある。そのために光路における色々な要素の少なくとも一つが、偏光光学構成要素として構成されると好ましい。それで例えば、測定目盛または場合により複数の走査検知目盛の少なくとも一つを、偏光光学構成要素として構成するようにしていることがある。更に、例えば位相差プレートおよび/またはポラライザ等のように、追加の偏光光学構成要素を走査検知光路に配設することもある。
【0026】
第一走査検知目盛を二回目に通過する時に、リフレクタ要素により逆反射された分光光束は、改めての回折により再平行光線化され、平行光線化された分光光束として引き続いて測定目盛ないし基準尺体の方向に進む。測定目盛では当たった分光光束が、+1/−1次回折次数で改めて回折を受ける。このようにして、反射された分光光束が再び単一の光束に重ね合わされ、それが測定目盛に二回目に当たった後に光学軸に沿って、光源から入射する光束の方向に進む。逆反射された分光光束の光路に配設された非偏光性分光器要素を介して、分光光束の重ね合わせペアは、反対方向に進む入射光束から分離されて、検知ユニットの方向に方向転換される。検知ユニットには色々な偏光光学構成要素および、入射する重ね合わせ分光光束ペアから、位相のずれた少なくとも二つの走査検知信号を生成するための複数の光電子式検知要素を含んでいる。基準尺体と走査検知ユニットが相対的に移動するケースでは、以上のようにして互いの間で位相がずれた複数の走査検知信号、あるいはインクリメント信号ができ、それを一般的な形式と方法で更に処理する。
【0027】
ここで光源、第一走査検知目盛、リフレクタ要素、分光器要素および検知ユニットが、測定目盛を備えた基準尺体に対して少なくとも一つの測定方向で移動自在である走査検知ユニット配設されていると好ましい。
【0028】
本発明による光学式位置測定装置の走査検知光路は、既に上記した利点の他に、公知の光学式位置測定装置とは対照的に一連の別の利点を提供する。
二回通過する第一走査検知目盛の回折性リングレンズおよび焦点面に配設されたリフレクタ要素の組合せから、光学的作用に関して逆反射リフレクタが得られる。これは入射するフラット光束を、反対方向に逆進する同じくフラットな光束に変換する。円環格子とは対照的に、ここでは顕著な光波前面歪みが発生しない。
【0029】
それで、提案の走査検知格子が扁平な回折性レンズとして構成されていると好ましく、屈折性レンズと較べて明らかに精密且つ充分低い製造コストで作ることができる。加えて分光光束において、このような走査検知格子を使うことにより生じる光波前面歪みは、屈折性レンズのケースと較べて明らかに小さい。
【0030】
更に回折レンズのアパーチャを自由に選択できることにより、簡単な方法でリングレンズを構成することができる。リングレンズが影響を与えるのは、屈曲された分光光束のみであり、リングレンズの中心を通過する分光光束ではない。それにより、照光する光束および反対方向に進む重ね合わせ光束が、光学軸に沿って同じレンズを通過せねばならないことを防ぐことができる。リングレンズは、傾斜して入射する分光光束の集束に特別に最適化されねばならないので、光学軸で照光する分光光束を平行光線化することには完全に不適切であろうし、そして大きな光波前面収差を発生するであろう。よって、回折性リングレンズによりアパーチャを簡単に制限することで、中央の分光光束および傾斜して屈曲された分光光束を分離してコントロールすることができる。それにより初めて、本発明による位置測定装置で光波前面収差の充分な最小化が可能である。
【0031】
勿論、照光光束を平行光線化するために、平行光線化機能に対応して最適化されている別の回折性レンズを、リングレンズの内側に設けることができる。屈折性レンズでは、高精密のポリッシュプロセスでシャープな移行部をできないので、異なった屈曲機能を有するリング範囲と中央範囲で、このようにアパーチャ分離することは不可能である。
【0032】
更に、第一走査検知目盛におけるリングレンズの位相変化を最適で選択すること、および光学式位置測定装置の別のパラメータを最適で選択することにより、本発明による光学式位置測定装置では組付け、使用、製造時に特に大きな許容度が得られる。
【0033】
加えて、アキシャル方向の照光およびアキシャル方向で重ね合わせ光束が出て行くことにより、分光光束の分割から重ね合わせまでの走査検知光路は、厳密に円筒対称であることが確保される。円筒対称からの偏りがあるのは、走査検知光路にある構成部品のみであり、それは専ら分光光束の偏光に影響を与えるが、その光線方向または光線位置に影響を与えない。この円筒対称からの偏りは、位相がずれた複数の走査検知信号を発生するために不可欠である。
【0034】
本発明の範疇では更に、例えば走査検知プレートの両側に第一走査検知目盛およびリフレクタ要素を設けた一体構造により、特にドリフトのない走査検知光学系を確保することができる。
【0035】
以下において、それぞれ先に説明した走査検知原理に基づく本発明による光学式位置測定装置の色々な具体的実施形態を説明する。
【実施形態1】
【0036】
本発明による光学式位置測定装置の第一実施形態を、図1,2a,2b,3を使って説明することにする。図1は光学式位置測定装置の著しく概略化した図示であり、図2aと2bはそれぞれ位置測定装置の構成要素の外観、そして図3は検知ユニットの著しく概略化した図を示している。
【0037】
図1で分かるように、本発明による光学式位置測定装置には、測定目盛11を備えた基準尺体10および規定の測定方向xで可動の走査検知ユニット20を含んでいる。呈示の実施例では測定目盛11が、反射性の測定目盛として構成されている。基準尺体10および走査検知ユニット20は通常、測定方向xに沿って互いの間でスライド自在であると共に相対位置を特定する二つの−図示していない−対象物、例えば機械構成要素と繋がっている。位置測定装置を介して生成された走査検知信号は、続いて処理するために同じく図示していない制御ユニット−例えば機械制御装置−に送られる。
【0038】
以下において図1,2a,2bを使い、第一実施例の走査検知光路を説明する。
直線偏光され平行光線化された光源21の照光光束は、まず屈曲されずに非偏光性分光器要素22を通過し、そして光学軸Zに沿って走査検知プレート23の中央窓範囲を通って基準尺体10の方向に向けられる。基準尺体10の表面にある直線測定目盛11、その格子定数ないし目盛周期を以下においてはdで表すが、その直線測定目盛が、入射する光束を±1次回折次数で二つの反射分光光束に分割する。そして二つの反射分光光束は、走査検知プレート23の前側に配設されていると共に基準尺体10から間隔Dを有する透過性の第一走査検知目盛24に、光学軸Zに対して対称的に当たる;間隔Dは、以下において走査検知間隔Dとも表すことにする。ここで走査検知プレート23の前側として、走査検知プレート23で基準尺体10に対向する側を、後側として走査検知プレート23でその反対側を表す。この実施例では第一走査検知目盛24が、透過する回折性リングレンズとして構成されており、それが入射する二つの分光光束を光学軸Zに対して平行に向けると同時に、走査検知プレート23の後側に集束する。走査検知プレート厚みDを有する走査検知プレート23の後側には、リフレクタ要素25が配設されている。よって第一走査検知目盛24を介して、それに入射する分光光束のリフレクタ要素25への集束が行われる。これは呈示の実施例においては、ゼロ次回折次数でのみ反射する反射性高周波格子の形態をしたリング状第二走査検知目盛として構成されている。高周波格子は以下で更に詳しく説明するように、それに衝突する二つの分光光束を直角偏光するために使用する。そうでなければ、高周波格子は光学的にミラーのように作用するので、それに入射する二つの分光光束、本来の入射する光線の進みに対して反対に光線ズレなしで逆進する。そして二つの分光光束は再び、走査検知プレート23の前側にある第一走査検知目盛24に到達する。回折性リングレンズとして構成された第一走査検知目盛を介して、分光光束は通過時に平行光線化されると同時に、光学軸Zに対して傾斜して屈曲される。引き続いて二つの分光光束は、重なり合って基準尺体10に再び当たり、その基準尺体がそれを+1ないし−1次回折次数で改めて回折した後に反射し、光学軸Zに沿って共軸で重ね合わせる。重ね合わされた光束は続いて、走査検知プレート23の内側窓範囲を改めて通過し、非偏光性分光器要素22により検知ユニット26に向けて方向転換される。検知ユニット26では、−以下において更に詳細に説明するように−位相のずれた走査検知信号が生成される。
【0039】
本発明による光学式位置測定装置の利点ある構成の可能性および色々な構成要素の機能を、以下において詳細に説明することにする。
光源21は、波長範囲λ=400nm〜1500nmにある光線を発する半導体レーザダイオードとして構成されていると好ましい。光源21として特に適しているのは、例えばストライプ導体レーザダイオードまたはVCSEL光源(垂直共振器面発光レーザー)である。測定誤差の原因となる長手方向モードスプリングを避けるために、例えば本出願人によるDE102004053082A1号公報に記載されているように、半導体レーザダイオードを電流変調して使用することがある。そこで変調周波数は、検知ユニット26で図示していないフォト要素増幅器の入力バンド幅より高いと好ましく、それにより走査検知信号の対応する変調が現れることがない。このような半導体レーザダイオードの電流変調は、場合により発生することのある妨害光束との干渉もなくす。これは場合により、0次回折次数で走査検知プレート23の窓範囲ないし測定目盛11において照光光束が反射することにより発生することがある。同じ理由から、本発明による光学式位置測定装置用の適切な光源21として、1mm以下の短いコヒーレント長を有する長手方向および/または横方向マルチモード半導体レーザダイオードが優先される。特別なケース、特に小さい走査検知間隔Dないし小さい走査検知プレート厚みDの時には、光源21としてLEDも使用することができる。
【0040】
一般的に、走査検知ユニット20と基準尺体10の走行速度が速い時に高い測定精度を必要とする位置測定装置に対しては、測定をトリガーした後の正確な測定時点が定義されていなければならない。時間的に正確に定義された測定時点は、半導体レーザダイオードのパルス駆動により保証することができる。加えて、短いパルス時間は半導体レーザダイオードのコヒーレント長さを短縮するので、妨害光束との前記干渉をパルス駆動により同じく効果的に抑えることができる。
【0041】
基準尺体10の側にある測定目盛11として特に良好で適しているのは、約180°の位相変化量および約d/2の格子幅を有する反射位相格子であり、その場合にゼロ次回折次数が抑えられている。そこでは、測定目盛11の目盛構造が殆ど扁平に構成されていることも利点がある。ここで、反射性の測定目盛に対する代替として勿論、透過性の測定目盛も本発明による光学式位置測定装置に使用できることを示唆しておきたい。
【0042】
呈示している本発明による光学式位置測定装置の第一実施例では、測定目盛11が一次元の直線目盛として構成されている。これに対する代替として測定目盛を、二次元の直線目盛として、ラジアル目盛として、あるいは円環目盛として、および/またはこれらの組合せとして構成するようにしていることもある。これら変形例の詳細は、以下の記述の中で更に詳細に説明する。
【0043】
図2aの上部外観で図示している走査検知プレート24の前側の第一走査検知目盛24は、回折性リングレンズの光学的機能を有しており、好ましくは多段ホログラムとして、呈示の例では透過性構造として光学構造化されている。それには2段ホログラムの最も簡単なケースも含まれ、それは、約180°の位相変化量および局所格子定数dの半分のレベルにある局所格子幅を有する二元位相格子に相当している。
【0044】
このような多段ホログラムの段数と共に、回折効率、よって達成可能な信号強度が向上する。しかしながら製造コストも増加するので、4段ホログラムが良好な妥協点となる。対応する製造方法、例えば浮き出し方法を使用できる時には、連続的なレリーフ凹凸も基本的に可能である。
【0045】
第一走査検知目盛24のリングレンズの目盛構造は、位相関数ΦA1(r)により定義され、それが、平行光線化された照光の時に光学軸Zに対する間隔rの関数として、現れる一次回折次数の位相ズレ量を説明する。リングレンズを多段ホログラムとして構成するケースでは、位相関数ΦA1(r)が階段関数により近似され、そのときこの関数の各段は、リリーフ高さに相当している。位相関数ΦA1(r)が半径rにのみ関係するという内在の条件が、この干渉性リングレンズの円筒対称性を確実にする。
【0046】
位相関数ΦA1(r)の最適選択のために、例えば数値的な最適化方法を使用することができる。そのためにまず位相関数ΦA1(r)を、最適化パラメータa(n=1,2,...N)を使って説明する。多項式により例えば
【0047】
【数2】

【0048】
が得られる。
理想的には干渉性リングレンズから、理想的な光波前面を有する分光光束が出るに違いなく、それが走査検知プレート23の後側で回折制限された焦点を生成する。そのような理想的な光波前面Φideal(x,y)は、
【0049】
【数3】

【0050】
そこで、
:=走査検知プレートの屈折率
(x,y):=求める横方向焦点位置
:=走査検知プレートの厚み
で得られる。
【0051】
この実施例では求める横方向焦点位置(x,y)が、第一走査検知目盛24への分光光束主光線の衝突点と同一である。最適化のために座標系を制限なしで選んで、測定目盛がx方向で屈曲し、それにより
【0052】
【数4】

【0053】
が当て嵌まるようにすることがある。
ここで半径rは、回折性リングレンズに当たる主光線のラジアル方向間隔を表し、測定目盛での回折により次のように規定されている:
【0054】
【数5】

【0055】
そこで、 D:=走査検知間隔
そして、回折性リングレンズから出る光波前面の光波前面収差δΦA(x,y)は、理想的な光波前面Φideal(x,y)と対比して次で得られる:
【0056】
【数6】

【0057】
ここで式5における第1項は、測定目盛11での回折後に入射する分光光束の光波前面を規定している。最適化パラメータa,a,...aを適切に選ぶことにより、この光波前面収差を光線中心点(r,0)の周囲で最小化することになる:
【0058】
【数7】

【0059】
このような数値的な最適化は、専門家には容易なことである。その最適化は、追加の要求により更に細かくできる。それで例えば、光学式位置測定装置の特定許容度の時に、光波前面収差の最小化を同時に嵌め込むことがある。
【0060】
しかしながら、概略化した数値的最適化の他に、次の追加条件が保たれる時には上記の最適化のために、非常に良好且つ簡単な解析的な解決手段がある:
【0061】
【数8】

【0062】
この条件の下では、最適解は次のとおりである:
【0063】
【数9】

【0064】
それにより式1と一緒で、回折性リングレンズの最適化された位相関数が得られる:
【0065】
【数10】

【0066】
式5による光波前面収差は、次で得られる:
【0067】
【数11】

【0068】
ΔxとΔyの多項式として展開すると、最低の多項式次数で次が得られる:
【0069】
【数12】

【0070】
式9が意味することは、例えばコマ収差のような、三次の多項式次数全てが除かれていることである。最初に例えば球面収差のような、四次の多項式次数が現れる。この解で残る僅かな光波前面収差は、回折性リングレンズにおける二回目の回折後に、再び非常に良好な平行光線化された分光光束になり、それが測定目盛11ないし基準尺体10における二回目の回折後にほぼ理想的に重ね合わされ、それにより特に大きな走査検知信号を出す。このようにすることにより、取付け、使用、製造時での誤差許容度も最大化される。
【0071】
式7と8に式4を代入すると、次が得られる:
【0072】
【数13】

【0073】
大抵のケースでは測定目盛11の目盛周期dが、波長λより明らかに大きいので、二つのパラメータDとaは目盛周期dと殆ど関係しない。これは、そのような走査検知光学系を使うことにより、異なった目盛周期dを有する測定目盛11を充分に走査検知できることを意味している。それにより、非常に大きなモアレ傾斜許容度と一緒で、更に以下で説明するように広い用途の可能性が得られる。
【0074】
リフレクタ要素25ないし、走査検知プレート23の後側にある第二走査検知目盛の概略的な上部外観を、図2bで示している。呈示の例で第二走査検知目盛は、第一走査検知目盛24のようにリング状に構成されている;しかしながら、好ましくはλ/n以下の局所的格子定数を有する反射性の高周波格子が、第二走査検知目盛として設けられている。このようにすることにより、二つの分光光束が第二走査検知目盛に殆ど直角で入射する時に、ゼロ次回折次数のみが現れることが保証されている。それにより高周波格子が、それに入射する分光光束に対して、まずミラーのように作用する。この高周波格子の格子構造は、それにより反射される分光光束の異なった偏光特性が局所的な格子方向ないし格子構成、例えば格子線高さおよび格子線幅に関係して生じるように選ぶ。それにより、この格子パラメータの位置に関係した変化を使って、偏光特性を同様に位置に関係させることが可能である。図示した実施形態においては図2bにより、円環形状の高周波格子で二つの半分体に互いの間で直角な格子方向が設けられている。格子線は金属の格子線として構成されており、直線ポラライザとして作用する。格子線に対して平行な偏光方向のみが反射される。図2bで明示されているように、二つの分光光束はそれぞれ、高周波格子で二つの半分体の一つに当たる。入射する光束の偏光方向が二つの格子方向に対して45°以下で選ばれているので、このような形式と方法により二つの分光光束は互いの間で直角に偏光される。この例では従って、リフレクタ要素25の高周波格子ないしリフレクタ要素25が、偏光光学構成要素として機能する。
【0075】
第一実施例の検知ユニット26を、図3で概略的に図示している。左から入射する重ね合わせ光束はまず、λ/4位相差プレート26.1に当たり、それが、直角偏光された二つの分光光束の直線偏光を、右ないし左円偏光に変換する。格子分光器として構成されて後続する分光器26.2が、重ね合わせ光束を0次および±1次回折次数で空間的に三つの重ね合わせ分光光束に分割する。これらは引き続いて三つのポラライザ26.3a,26.3b,26.3cを通過して、最後に三つのディテクタ要素26.4a,26.4b,26.4cに当たる。ディテクタ要素26.4a,26.4b,26.4cが、走査検知信号S,S−120,S+120を出す。三つのポラライザ26.3a,26.3b,26.3cを互いにそれぞれ60°回転することにより、走査検知信号S,S−120,S+120のそれぞれ120°互いにずれた位相が得られる。そして位相のずれた走査検知信号S,S−120,S+120を更に処理するのは、公知の形式と方法で行う。
【0076】
この本発明による光学式位置測定装置の実施形態のモアレ傾斜許容度は、リフレクタ要素25ないしそのために設けた第二走査検知目盛により制限される。規定された互いの間で直角な直線偏光を反射後に常に保証するために、二つの分光光束の焦点がそれぞれ高周波格子の半分体に留まらねばならないので、ほぼ±90°のモアレ傾斜許容度を達成できる。第二検知走査目盛は、偏光作用を除いてミラーのような挙動をする。走査検知光学系の光線進路幾何形状を、分光光束の偏光状態ではなく光線進行の位置と方向のみと解釈すると、呈示している走査検知光学系の光線進路幾何形状は、二つの分光光束の分割からその重ね合わせまで完全に円筒対称である。
【実施形態2】
【0077】
以下において図4,5a,5b,6を使い、本発明による光学式位置測定装置の第二実施形態を説明する;ここで扱うのは、第一実施例との重要な違いのみである。
第一走査検知目盛124は、この本発明による光学式位置測定装置の変形例では、透過する回折性リングレンズとして構成されているが、それは、最初の通過後に出る分光光束を垂直方向に対して角度αだけラジアル方向に屈曲する作用をする。二つの分光光束の焦点は、同じく第二走査検知目盛として構成されているリフレクタ要素125にある。角度αがあることにより、焦点の光学軸Zからのラジアル方向間隔rは、第一走査検知目盛124での分光光束のラジアル方向間隔rと同一ではない。よって第二走査検知目盛は、直角偏光に加えて分光光束を、再び逆進させるためにラジアル方向に屈曲せねばならない。この追加のラジアル方向屈曲は、第二走査検知目盛の高周波格子が円形状格子線を備えた重ね合わせ円環格子構造を有していることにより達成する。そのために、円環格子のラジアル方向格子定数dを次のように選ぶ:
【0078】
【数14】

【0079】
更に、本発明による光学式位置測定装置で呈示実施形態の第二走査検知目盛にある高周波格子は、それが局所的にλ/4位相差プレートのように作用し、その向き方向は高周波格子の局所的な格子方向により規定されているように構成されている。この向き方向は第一実施例のように、第二走査検知格子の二つの半分体で互いの間で直角に選ばれるので、照光光束のように二つの格子方向に対して45°以下で直角に偏光されている入射分光光束が、左円ないし右円偏光分光光束に変換される。
【0080】
高周波格子は好ましくは、高屈折率の誘電性材料で出来ており、それを平坦な干渉ミラー層または平坦な金属ミラーがカバーしている。適切な高周波格子の例示的な説明は、例えばWanji Yu他著 「多層サブ波長構造により製造され波長関連の少ない1/4波プレート」応用光学、第45巻、第12号、2601頁以下、2006年で見られる。
【0081】
ここで高周波格子は、一つの偏光方向を吸収または透過するポラライザとしてではなく位相差プレートとして作用するので、反射された光線強度、それにより信号強度も向上する。
【0082】
この例において図6で図示している検知ユニット126では、二つの分光光束が既に直角に円偏光されているので、先の実施例から入力側λ/4位相差プレートをなくすことができる。その他には検知ユニット126の構成が、第一実施例のものに相当している。
【0083】
呈示の第二実施例では二つの走査検知格子が、分離されて別個の二つの走査検知プレート123a,123bに設けられており、空隙により分離されている。この空隙は位置測定装置の組み立て時に、最大信号強度を生じるように設定する。このようにすることにより、例えば光源の波長変化のような構成部品誤差許容度を補正することができる。
【0084】
第二実施例の走査検知光学系の光線進路幾何形状は、二つの分光光束の分割からその重ね合わせまで同じく円筒対称である。達成可能なモアレ傾斜許容度は、同じくほぼ±90°である。
【実施形態3】
【0085】
図7では先の図示に類似して、本発明による光学式位置測定装置の第三実施形態を示している。
同じく第一走査検知目盛224を、透過する回折性リングレンズとして構成するようにしている。リングレンズを最初に通過する時に出て行く分光光束は、第一実施例のように光学軸Zに対して平行に向けられる(α=0)。それが続いてλ/8位相差プレート227.1,227.2を通過した後に、呈示のようにミラーとして構成されているリフレクタ要素225に当たる。この本発明による光学式位置測定装置の例では、λ/8位相差プレート227.1,227.2とミラーの組合せが、前の二つの実施例の第二走査検知格子と置き換わっている。
【0086】
光源221により発せられた光束の直線偏光および二つのλ/8位相差プレート227.1,227.2は互いの間で、二つの分光光束がλ/8位相差プレート227.1,227.2を二回目に通過した後に左円ないし右円偏光を有すると共に、互いの間で直角偏光されているような向きになっている。検知ユニット226は、図6による第二実施例のように構成されている。
【0087】
この本発明による位置測定装置の実施形態は、偏光方向を適切に設定するために第二走査検知格子用の複雑な高周波格子を製造する可能性がない時に、特に利点がある。その代わりに、市場で一般的な例えば石英結晶でできたλ/8位相差プレート227.1,227.2を使用して、二つの分光光束での偏光方向を希望する方向に向ける。以上により、この実施例では位相差プレート227.1,227.2が、分割された分光光路で偏光方向を適切に設定するための偏光光学構成要素として機能する。第一走査検知目盛224とリフレクタ要素225の間に位相差プレート227.1,227.2を配設することに対する代替として、分割された分光光束の光路で測定目盛211と第一走査検知目盛224の間に、位相差プレート227.1,227.2を配設するようにもできるであろう。
【実施形態4】
【0088】
本発明による光学式位置測定装置の第四実施例を、図8,9a,9b,10に図示している。
この変形例においては先に説明した例との違いとして、走査検知目盛224が走査検知プレート223の後側に、そしてリフレクタ要素225ないし第二走査検知目盛が走査検知プレート223の前側に設けられている。第一走査検知目盛224もリフレクタ要素225の走査検知目盛も、ここでは反射を利用している。それにより、これらの走査検知目盛は、例えば指紋または水分凝縮のような汚れから特に良好に保護される。このような形式と方法により、位置測定装置の汚染に対する感度の度合が著しく鈍化する。
【0089】
ここでは光源321の平行光線化された照光光束が、図示していないλ/4位相差プレートを使って円偏光されて、まず分光器322を通過し、そして走査検知プレート223の内側窓範囲を通過する。引き続いて光束は、基準尺体310にある測定目盛311により、±1次回折次数で二つの分光光束に分割される。測定目盛311により反射された二つの分光光束は続いて、走査検知プレート323の前側の内側窓範囲を介して、走査検知プレート323の後側にある反射性の第一走査検知目盛324に到達する。図9aの上部外観で示している第一走査検知目盛324は、ここでも同じく回折性リングレンズとして構成されている。第一走査検知目盛324を介した回折の後に二つの分光光束は、光学軸Zに対して平行でリフレクタ要素325に、ないし走査検知プレート323の前側にある同じく反射性の第二走査検知目盛に集束される。図9bに示しているリング状第二走査検知目盛は、ここで同じく反射性で金属の高周波格子として実施されている。高周波格子の偏光作用により、0次回折次数で反射された分光光束は直線偏光を有している。その方向は、同じく高周波格子の局所的格子線方向により決まっている。図9bで分かるように局所的な格子線方向は、方位方向拡がりに従って連続的に180°回転している。ベースとなる格子位相Φ(x,y)は、以下の関係により形成することができる:
【0090】
【数15】

【0091】
そこで、
=r:=第二走査検知目盛における二つの分光光束の焦点の半径
:=高周波格子の局所的格子定数
arctan2=arctan関数の二乗
そのとき直径方向で反対位置にある局所的な格子線方向は、−少なくとも半径rにおいて−互いに直角である。二つの分光光束は、基準尺体310の任意のモアレ傾斜Rzの時に、そのような直径方向位置に正確に当たるので、それらは常に互いの間で直角に偏光される。尤も、モアレ傾斜Rzの時に二つの分光光束の偏光は、半分の角度だけ一緒に回転するので、適切な走査検知信号を生成するためには特別な検知ユニット326が必要である。
【0092】
当該形式の検知ユニットの原理的な構成を、図10で概略的に図示している。この本発明による位置測定装置の実施形態では検知ユニット326において、入射する重ね合わせ光束を六つの重ね合わせ分光光束に分割するために十字格子326.2が使用される。この重ね合わせ分光光束のそれぞれが、ポラライザ326.3a〜326.3fを通過した後に、ディテクタ要素326.4a〜326.4fに当たり、そして走査検知信号に変換される。重ね合わせ分光光束で二つの分光光束では加えて、λ/4位相差プレート326.5a,326.5bが、ポラライザ326.3b,326.3eの前に挿入されている。更に進める説明の中で偏光状態のポワンカレ図示を使用するが、それは例えばM.Born,E.Wolf著 専門書「光学理論」ケンブリッジ大学出版、1999年、第32,33頁に記載されている。ポラライザ326.3b,326.3eとλ/4位相差プレート326.5a,326.5bの向き方向は、重ね合わせ分光光束の偏光方向のポワンカレ図示において、ディテクタ要素326.4a〜326.4fにより次の状態が検知されるように選ばれている:
直線偏光:S0:0°、S45:45°、S90:90°、S135:135°;
円偏光:S+:左円、S−:右円
以上のようにして、重ね合わせ光束の各偏光状態を検知することができ、それはポワンカレ図示においてポワンカレ球上の正確な位置に相当している。
【0093】
六つの走査検知信号を適切に評価することにより、各モアレ傾斜角度Rzの時に位置位相を特定することができる。よってこの実施形態は、モアレ傾斜Rzの制限なしで使用できる。尤も、この本発明による光学式位置測定装置の変形例の使用開始時に、測定方向xでの曖昧さを明確にする必要がある。測定目盛310のプラスとマイナスの回折方向は判別できないので、追加の情報により測定方向xの符合を確定せねばならない。そのために例えば追加の信号を発生する、又は別の適切なソースからの適切な情報を評価することがある。選ばれた測定方向xは使用開始後、任意のモアレ傾斜Rzでも保持する。
【実施形態5】
【0094】
本発明による光学式位置測定装置の第五実施例は、先に説明した第四実施形態に大部分で相当しており、図11と12で図示している。
光源421により発せられた光束を平行光線化するために、ここではレンズ機能を備えた回折性構造427が使用される。その構造427は、走査検知プレート423の上側の範囲に配設されており、それを光源421により発せられた光束が通過する。この実施例で具体的にはその構造427が、走査検知プレート423の上側にある第一走査検知目盛424の回折性リングレンズの内側に挿入されている。その回折性構造427が、光源421から入射する散光光束を平行光線化する。
【0095】
回折性構造427を介して更に、別の光学的機能が実行される。それで、同時にこれが十字格子の形態をした格子分光器として作用し、測定目盛411から逆進する重ね合わせ光束を6つの重ね合わせ分光光束に分割する。2段ホログラムとしての回折性構造427の位相格子構造を、概略的に図12で示している。この図示の中に、リング状フレネルレンズのあることが分かり、それがチェス盤状の背景配設と重ね合わされており、その中にフレネルレンズの局所的構造が反転されている。測定目盛411での二回目の回折後に重ね合わされた分光光束は、光学軸Zに沿って出て行き、回折性構造427により六つの重ね合わせ分光光束に分割され、そして同時に集束される。それにより、小さいディテクタ要素426.4a〜426.4fを使用することができ、そのことが同じくコンパクトな構成を可能にする。加えて重ね合わせ分光光束が光学軸Zから屈曲されるので、光源421の照光光束から分離される。よって回折性構造427は、分光器としても使用される。
【0096】
第四実施例のように、ディテクタ要素426.4a〜426.4fの前でポラライザ426.3a〜426.3fおよびλ/4位相差プレート426.5a,426.5bの形態をした偏光光学構成要素は、走査検知信号S0,S45,S90,S135,S+,S−を生成するために使用する。
【0097】
本発明による光学式位置測定装置の第五実施形態は、第四実施形態と較べて明らかにコンパクトな構造を可能にする。代替として、平行光線化と分光のための組み合わせ回折性構造427の代わりに勿論、平行光線化レンズと分光格子に対する別個の回折性構成要素を設けることもある。
【実施形態6】
【0098】
本発明による光学式位置測定装置の第六実施形態を、図13と14に図示している。
この変形例において意図しているのは、上に配設された反射性測定目盛511が十字格子、即ち、二次元直線格子として構成されている基準尺体510の検知走査である。その十字格子は、規定のXとY方向で同じ目盛周期を有しており、例えばチェス盤構造で180°の位相変化量を有する位相格子として構成されていることがある。走査検知ユニット520の側には説明した第一実施例に類似して、殆ど同一の二つの走査検知光学系が設けられている。第一走査検知目盛524.1,524.2およびリフレクタ要素525.1,525.2が、共通の走査検知プレート523で対向する二つの側に設けられている。各走査検知位置において測定目盛511が、光源521.1,521.2の入射する照光光束を、XないしY方向に対して二つの指数で表す四つの一次回折次数:(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)で回折する。四つの一次回折次数全てが、走査検知プレート523の前側で回折性リングレンズとして構成された第一走査検知格子524.1,524.2により、走査検知プレート523の後側に集束される。第一実施形態と違って、第二走査検知目盛として構成されたリフレクタ要素525.1,525.2は、扇形状に境界を設けている。図14で図示しているように各走査検知位置には、リフレクタ要素525.1,5252.2の直径方向で対向する二つの扇形が関連配置されており、それにはそれぞれ高周波格子を含んでおり、その格子線は図14で分かるように互いの間で直角に延伸している。よって各走査検知位置では、二つの扇形の一つに当たる直径方向分光光束のみが反射される。二つの走査検知位置の扇形は、互いの間で90°回転しているので、第一走査検知位置では、測定目盛のX方向で屈曲された回折次数(1,0)と(−1,0)のみが反射され、第二走査検知位置では、Y方向で屈曲された回折次数(0,1)と(0,−1)のみが反射される。このようにすることにより、第一走査検知位置がX方向でのみ、第二走査検知位置がY方向でのみ測定することが確保される。第二走査検知目盛の扇形の開口角度は、最大90°であり、それにより約±45°の最大モアレ傾斜許容度となる。
【実施形態7】
【0099】
本発明による光学式位置測定装置の第七実施形態を、図15,16に図示している;図17は、光学式位置測定装置でこの実施形態の第一変形例の構成要素を示している。
この実施形態では位相差区間が、分割された二つの分光光束の一つの光路に挿入されている。図15で示しているように、二つの分光光束用の二つのリフレクタ要素625aおよび625bは、同じ面に配設されておらず、光学軸に沿ってz方向で僅かな量ΔDだけ互いの間でずれている。走査検知目盛624は対応して二つの半分体に分けられており、それが、付属する分光光束をリフレクタ要素625aないし625bに集束する。nを走査検知プレート623の屈折率、ΔDを走査検知プレート623の厚みとする時に、この処置により二つの分光光束は、量n・ΔDだけ違いのある異なった長さの光路を通過する。このような形式と方法により分光光束の干渉時に位相ズレが生じ、それは光源621の波長に関係している。そのとき二つの分光光束の直角偏光は、最早必要としない。
【0100】
この実施形態の付属する検知ユニット626を、図16に概略的な形態で示している。それに含まれるのは、走査検知信号S0を生成する一つだけのディテクタ要素626.4である。位置測定装置で方向を認識するために必要な位相のずれた走査検知信号は、光源621の波長を適切に変調することにより得る。位相のずれた走査検知信号をこのように生成する基本原理は、ススム・マキノウチ他著 「変調レーザエンコーダの評価」精密工学第35巻(2011)302〜308頁に記載されている。その場合に光源621は波長が高周波で変調されており、それにより走査検知信号S0の対応する位相変調が生じる。それが、後続の−図16で図示していない−評価エレクトロニクスで評価され、方向認識のために必要な情報を出す。半導体レーザダイオードの波長の変調は、その電流源を変調することにより特に簡単である。走査検知信号S0の評価についての詳細な説明は、先に挙げた文献で見られる。
【0101】
この本発明による光学式位置測定装置の実施形態は、一方で光源621、分光器622、検知ユニット626、そして他方で走査検知プレート623の間に、−図示していない−光ファイバ接続ないし光波導体を設けると特に有利である。そのとき単一の光ファイバーが、光束を光源621から走査検知プレート623まで、そして同時に二つの重ね合わせ分光光束を走査検知プレート623から逆に検知ユニット626に送ることができる。ここで光ファイバとして、シングルモードファイバもマルチモードファイバも適している。
【0102】
更に分光器622を偏光性分光器として実施すると共に、光源621の光束が分光器622による減衰なしで送られるように光源621の直線偏光を選ぶと利点がある。通過する光束の円偏光を生成するλ/4位相差プレート−図示していない−を、光線進路で偏光性分光器622の後に接続して配設する。このλ/4位相差プレートに向かって走査検知プレート623から逆進する重ね合わせ分光光束は、反対向きに円偏光されており、そしてλ/4位相差プレートにより、発光された光源621の光束の偏光に対して直角である直線偏光に移される。この光束を偏光性分光器622が、減衰なしで検知ユニット626に向けて反射する。それにより、本発明による光学式位置測定装置の信号強度が最適化され、信号雑音が最小化される。
【0103】
本発明による光学式位置測定装置の第七実施形態の第一変形例は、WO 2011/000715A1公報で公知の原理に基づいて構成することができる。そのとき、非常に短いコヒーレンス長を有する光源、例えばLEDまたはスーパールミネッセンスダイオードを使用すると好ましく、それは最早波長が変調されない。ここでは選択するコヒーレンス長が、光学的位相差区間n・ΔDと較べて出来るだけ小さい必要がある。この本発明による光学式位置測定装置変形例のための検知ユニット626’を、図17で概略的に図示している。格子として構成された分光器626.1が、入射する二つの重ね合わせ分光光束を、二つの二次重ね合わせ分光光束に分割する。その両方が、分光器626.1と固く繋がっている格子626.2で反射され、合流格子として作用する分光器626.1に向かって逆に進む。二つの二次重ね合わせ分光光束の一つが、ガラスプレート626.3を二回通過するので、分光光束のために第二の光学的位相差区間が構成される。その第二光学的位相差区間、即ちガラスプレート626.3の厚みは、図15による構成の第一光学的位相差区間のそれと一致するように寸法が決められている。光源621のコヒーレンス長が短いことにより、走査検知プレート623で短い経路および第二位相差区間でガラスプレート626.3を通って長い経路を通過した分光光束のみが、走査検知プレート623で長い経路および第二位相差区間で短い経路を通過したものと干渉する。分光光束で他のペア全ては、光源621のコヒーレンス長が短いことにより干渉しない。分光光束が逆進する時に合流格子として作用する格子626.1は、結果としての0次と±1次回折次数で出て行く光束が、互いの間で120°位相がずれていると共に対応するディテクタ要素626.4a〜626.4cにより走査検知信号S+120,S0,S−120に変換されるように、公知の形式で設計されている。一方で光源621、分光器622、検知ユニット626’、そして他方で走査検知プレート623の間で光ファイバ接続を使用する時に、この変形例も特に利点がある。
【更に別の実施の可能性】
【0104】
本発明による光学式位置測定装置で今まで詳細に説明した種々の実施例の他に、本発明の範疇では勿論、別の実施の可能性も結果として出てくる。色々な展開の可能性を、以下において簡単に示すことにする。
【0105】
式12を書き換えることにより次が得られる:
【0106】
【数16】

【0107】
そこで
【0108】
【数17】

【0109】
パラメータλ,n,Dにより、相当する第一走査検知目盛が完全に特定される。そこで測定目盛の目盛周期dは、直接ではなく式16により長さDを介して間接的に扱う。長さDが一定で留まる限り、測定目盛の非常に異なった目盛周期dも、同じ走査検知光学系を使って走査検知することができる。そこでは式16による走査検知間隔Dのみを容易に合わせるので、長さDが一定で留まる。目盛周期dとの長さDの関係は少ないので、走査検知間隔Dを合わせなくても、測定目盛の目盛周期dの別の範囲を走査検知することができる。
【0110】
よって、モアレ傾斜許容度が大きいこととの組合せで別の選択肢が得られる。それでラジアル目盛として構成された測定目盛を、組付けと使用時に非常に大きな誤差許容度を有して走査検知することも可能である。ラジアル目盛では局所的な目盛周期dがラジアル方向で変化する一方、方位方向ではモアレ傾斜が現れる。同じ一つの走査検知光学系を使って、直線測定目盛だけでなくラジアル目盛も走査検知することができ、それが本発明による位置測定装置の製造および取り扱いに対して顕著な利点を意味している。ところが同じ走査検知光学系が、円環目盛を備えた基準尺体も同じく走査検知することができる。第六実施形態に相当する走査検知光学系を使うことにより、局所的に同じく十字格子目盛を示すラジアル目盛と円環目盛の重ね合わせで構成された測定目盛も走査検知できる。
【0111】
本発明による光学式位置測定装置の別の変形例においては、二つの分光光束を別の偏光光学構成要素によって直角偏光することもある。例えば第一走査検知目盛を、(図2aによる)リングレンズの機能の他に、(図2bによる)二つの分光光束の直角偏光の機能を担う組合せ回折性構成要素として実施することがある。この組合せがリング状の高周波格子に至り、それは二つの半分体で直角の格子線方向を有すると共に、フレネルレンズの形態をした二重構造を備えている。図9aと9bの構造を組み合わせることにより、制限のないモアレ傾斜Rzのために拡張することも勿論同じく可能である。
【0112】
更に第三実施例においてλ/8位相差プレートを、測定目盛と第一走査検知目盛の間の光路に設けることもある。またλ/8位相差プレートの代わりに、二つの互いの間で直角な直線ポラライザを使用することもある。
【0113】
360°の完全なモアレ許容範囲で十字格子として構成された測定目盛を走査検知することが不可欠である時、XとY方向において目盛周期を異なって選択することにより、測定目盛の二つの回折方向を判別可能にすることができる。そして第四実施形態に相当して互いに隣接して配設された二つの走査検知光学系ないし走査検知ユニットは、そのような測定目盛を走査検知する。それらは、第一走査検知光学系が測定目盛のX方向のみを、そして第二走査検知光学系がY方向のみを走査検知するように修正されている。これは例えば、リフレクタ要素の第二走査検知目盛のラジアル方向寸法を小さく選んで、半径rが幾分異なっていることにより、測定目盛で走査検知しない目盛周期により発生する分光光束が最早当たらないようにすることにより行うことができる。
【0114】
更に、求められるモアレ傾斜許容度が±45°より小さいとき、第一走査検知目盛およびリフレクタ要素ないし第二走査検知目盛を扇形に制限することがある。別の寸法にした第一ないし第二走査検知目盛を、間にある扇形に設けることができる。それで基準尺体に対する相対的な走査検知光学系の組み立てによっては、一つまたは別の分割走査検知光学系を利用することができる。分割走査検知光学系の寸法が異なっていることを、例えば測定目盛で非常に異なった目盛周期を走査検知するために使用することができる。測定目盛の目盛周期が非常に異なっている時に、ラジアル方向で互いに隣接し対応する寸法の第一ないし第二走査検知目盛が配設されていることがあり、それをアクティブで利用する又は利用しないかは、使用する測定目盛の目盛周期に従う。
【0115】
直角偏光された分光光束を偏光光学的に位相検知するためには、従来技術において公知である多数の種類がある。それらは大抵、偏光コード化された干渉計と関連して説明される。その場合に大抵、偏光性および非偏光性分光器が、位相差プレートとポラライザと組み合わせて使用される。勿論、そのような公知の偏光光学的位相ディテクタを、本発明による光学式位置測定装置にも同じく使用できる。
【0116】
更に最後に云えることは、透過する測定目盛を備えた基準尺体を有する透過光システムとして、本発明による光学式位置測定装置を構成することも可能なことである。このケースでは走査検知ユニットにおいて光源および検知ユニットが基準尺体の側に、そして反対側に第一走査検知目盛およびリフレクタ要素が配設されることになるであろう。
【0117】
また本発明の範疇において、光源および検知ユニットを走査検知ユニットに直接ではなく、それから空間的に離れて配設することも基本的に考えられるであろう。そして走査検知ユニットへ照光光束を送ること、ないし検知ユニットへ重ね合わせ分光光束を送ることは、適切な第一および第二光波導体を介して行う。そして走査検知ユニットでは第一光波導体の出力側端部が光源として、そして第二光波導体の入力側端部が検知ユニットとして機能する。
【0118】
個々の実施形態で色々説明した処置は、勿論、本発明による光学式位置測定装置の別の変形例において互いに組み合わせること等もできる。
【符号の説明】
【0119】
10 基準尺体
11 測定目盛
20 走査検知ユニット
21 光源
22 非偏光性分光器要素
23 走査検知プレート
24 第一走査検知目盛
25 リフレクタ要素
26 検知ユニット
26.1 λ/4位相差プレート
26.2 分光器
26.3 ポラライザ
26.4 ディテクタ要素
123 走査検知プレート
124 第一走査検知目盛
125 リフレクタ要素
126 検知ユニット
211 測定目盛
221 光源
223 走査検知プレート
224 第一走査検知目盛
225 リフレクタ要素
226 検知ユニット
227 λ/8位相差プレート
310 基準尺体
321 光源
322 分光器
323 走査検知プレート
324 第一走査検知目盛
325 リフレクタ要素
326 検知ユニット
326.2 十字格子
326.3 ポラライザ
326.4 ディテクタ要素
326.5 λ/4位相差プレート
411 測定目盛
421 光源
423 走査検知プレート
424 第一走査検知目盛
426.3 ポラライザ
426.4 ディテクタ要素
426.5 λ/4位相差プレート
427 回折性構造
510 基準尺体
511 測定目盛
520 走査検知ユニット
521 光源
523 走査検知プレート
524 第一走査検知目盛
525 リフレクタ要素
621 光源
622 分光器
623 走査検知プレート
624 走査検知目盛
625 リフレクタ要素
626 検知ユニット
626.1 分光器
626.2 格子
626.3 ガラスプレート
626.4 ディテクタ要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査検知ユニットおよび測定目盛を備えた基準尺体の相対位置を検出するための光学式位置測定装置であって、その走査検知ユニットおよび基準尺体は、少なくとも一つの測定方向(x)に沿って互いの間で移動自在であり、そして
− 走査検知ユニットには、光源、第一円環状走査検知目盛、リフレクタ要素、分光器要素、および検知ユニットを含んでおり、そして
− 光源により発せられた光束が測定目盛に当たり、そこで少なくとも二つの分光光束への分割が行われ、
− 走査検知ユニットの方向に進む分光光束が、第一走査検知目盛を介してリフレクタ要素に当たり、
− その分光光束が、リフレクタ要素により測定目盛の方向への反射を受け、そして測定目盛へ向かう経路で第一走査検知目盛を通過し、そして
− 再び測定目盛に当たった後に、走査検知ユニットの方向に進む分光光束が重ね合わされて、分光器要素を介して検知ユニット方向へ方向転換され、そこで位置に関係すると共に位相のずれた複数の走査検知信号を検出することができる、光学式位置測定装置において、
第一走査検知目盛(24;124;224;324;424;524.1,524.2;624)が、
− それを介して、それに測定目盛(11;111;211;311;411;511;611)から入射する分光光束を、リフレクタ要素(25;125;225;325;425;525.1,525.2;625a,625b)に集束し、
− それを介して分光光束の再平行光線化が行われ、それがリフレクタ要素(25;125;225;325;425;525.1,525.2;625a,625b)での反射の後に、測定目盛(11;111;211;311;411;511;611)の方向に進むように構成されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
− 少なくとも一つの偏光光学構成要素が、分割された分光光束の光路に配設されており、それを介して、測定目盛(11;111;211;311;411;511)で分割された二つの分光光束が、直線または円の直角偏光を互いの間で受け、そして
− 検知ユニット(26;126;226;326;526.1,526.2)において複数の光電子式ディテクタ要素(26.4a〜26.4c;126.4a〜126.4c;326.4a〜326.4f;426.4a〜426.4f)の前に、ポラライザ(26.3a〜26.3c;126.3a〜126.3c;326.3a〜326.3f;426.3a〜426.3f)が配設されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式位置測定装置において、
少なくとも一つの偏光光学構成要素を介して、
− 分光光束の直角偏光が、直径方向に配設された二つの扇形で生じるか、又は
− 方位方向で位置に関係して180°の範囲に亘って回転する直線偏光を生じるか、のいずれかである、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光学式位置測定装置において、
偏光光学構成要素として少なくとも一つの高周波格子が、分光光束の走査検知光路に配設されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項5】
請求項2に記載の光学式位置測定装置において、
リフレクタ要素(25;125;525.1,525.2)が、偏光光学構成要素として構成されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項6】
請求項2に記載の光学式位置測定装置において、
位相差プレート(227.1,227.2)として構成された複数の偏光光学構成要素が、分光光束の走査検知光路において測定目盛(211)と第一走査検知目盛(224)の間、または第一走査検知目盛(224)とリフレクタ要素(225)の間に配設されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
二回目に測定目盛(11;111;211;311;411;511;611)に当たった後に重ね合わせ分光光束が、光学軸に沿って進む、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
第一走査検知目盛(24;124;224;324;424;524.1,524.2;624)が、
【数1】

そこで、
ΦA1(r):=半径に関係する位相関数
r:=半径
:=測定目盛の目盛周期
:=回折性リングレンズに当たる主光線のラジアル方向間隔
による二次位相関数を有する回折性レンズとして構成されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
分光光束が、最初に第一走査検知目盛(24;124;224;324;424;524.1,524.2;624)に当たった後に、光学軸に対して平行に進む、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項10】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
第一走査検知目盛(24;124;224;324;424;524.1,524.2)およびリフレクタ要素(25;125;225;325;425;525.1,525.2)が、偏光光学構成要素を例外として、光学軸に対して円筒対象で構成されており、そして光源(21;121;221;321;421;521.1,521.2)により発せられた光束が、光学軸に沿って進む、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項11】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
測定目盛(11;111;211;311;411;511;611)が、
− 一次元の直線目盛として、または
− 二次元の直線目盛として、または
− ラジアル目盛として、または
− 円環目盛として、構成されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項12】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
光源(421)により発せられた光束の通過する回折性構造(427)が、走査検知プレート(423)の範囲に配設されており、そこで回折性構造(427)が、光源(421)から入射する光束用の平行光線化レンズとして、および/または測定目盛(411)から入射する重ね合わせ分光光束用の格子分光器としての役割を果たし、そして走査検知プレート(423)の前側と後側に第一走査検知目盛(424)およびリフレクタ要素(425)が、またはその逆で配設されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項13】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
検知ユニット(26;126;226;326;526.1,526.2)が、入射する重ね合わせ分光光束を空間的に分割する分光器(26.2;126.2;326.2)を有しており、そして分割された分光光束が、それぞれポラライザ(26.3a〜26.3c;126.3a〜126.3c;326.3a〜326.3f;426.3a〜426.3f)を通過した後に光電子式ディテクタ要素(26.4a〜26.4c;126.4a〜126.4c;326.4a〜326.4f;426.4a〜426.4f)に当たる、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光学式位置測定装置において、
分光器(26.2;126.2;326.2)が格子分光器として構成されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項15】
請求項1に記載の光学式位置測定装置において、
分光光束の光路において、光学的位相差区間(n・ΔD)が配設されている、ことを特徴とする光学式位置測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−127946(P2012−127946A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258593(P2011−258593)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(501232827)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲーエムベーハー (24)
【Fターム(参考)】