説明

光学式情報記録再生装置

【課題】3ビーム方式の光情報記録再生装置において、異なるトラックピッチのトラックの領域が混在して形成された光ディスクに対して、安定してレンズ位置制御を行う。
【解決手段】制御装置19は、レンズ位置信号LPを使用してロングジャンプ動作するときには、信号切替スイッチ20をレンズ位置信号演算回路18の出力側にすると共に、可変利得増幅器16で和信号Psに付与するゲインkを、レンズ位置信号に最適なゲインk2に設定する。ゲインk2の決定方法としては、主スポットの反射光の受光信号から作られた信号Pmと、副スポットの反射光の受光信号から作られた和信号(Ps1+Ps2)の振幅をそれぞれ測定し、Pm=k2(Ps1+Ps2)となるk2を探す。これにより、ロングジャンプ時においてトラックピッチが異なる領域においてレンズ位置信号にトラッキングエラー成分が残留してしまうことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式情報記録再生装置に係り、特に光ディスクの走査すべきトラックの両側にそれぞれ位置する2つのトラッキングスポットと、走査すべきトラックに位置する情報記録再生用メインスポットとからの反射光を検出して、トラッキングエラー信号とレンズ位置信号を生成する3ビーム方式による回路を有する光学式情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに対して情報を光学的に記録再生する光学式情報記録再生装置において、光ビームを光ディスク上のトラックを正確に追従走査させるためのトラッキングサーボループにおけるトラッキングエラー信号を生成する方式の一つとして、3ビーム方式によるディファレンシャル・プッシュプル(DPP:差動プッシュプル)法が従来よりよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この3ビーム方式では、図3に示すように光ディスクの情報面に対して配置された3つのビームスポットを用いてトラッキングを行いつつ情報の記録再生を行う。すなわち、図3において、光ディスクの情報面にはディスク半径方向にそれぞれ一定幅のトラック31が一定トラックピッチTPで形成されており、例えば回折格子により光源からの1本のビームから3つのビームスポットを生成し、それらを図3に示すように、1本のトラック31(32)上にメインビームスポット(主スポット)MBを配置し、その主スポットMBのトラック幅方向に距離Xoだけ互いに逆方向にずらし、かつ、トラック走査方向上に所定距離だけ互いに反対方向にずらした2つのサブビームスポット(副スポット)SB1、SB2を配置する。
【0004】
これにより、主スポットMBはその中心が記録再生すべきトラックであるトラック31(32)の中心線上に位置し、副スポットSB1、SB2はその中心がそれぞれ左右に隣接するトラックの間に位置し、互いにこれらの相対位置関係を保って一体的に走査する。
【0005】
そして、主スポットMBの反射光をトラック接線方向に分割線を持つ2分割受光器で受光して得られた2つの分割受光部の各出力信号を減算して得た第1の差信号をPmとし、副スポットSB1、SB2の反射光をトラック接線方向に分割線を持つ2つの2分割受光器で別々に受光して得られたそれぞれ2つの分割受光部の各出力信号を減算して得た第2の差信号と第3の差信号とをそれぞれPs1、Ps2としたとき、従来の光学式情報記録再生装置では、トラッキングエラー信号TEを
TE=Pm−k1(Ps1+Ps2) (1)
なる演算式で生成するDPP法を採用している。
【0006】
このような光学系では光ピックアップ内の対物レンズのシフトや光ディスクの傾きなどによって、スポットMB、SB1、SB2の位置がトラック幅に対して十分大きく移動することに起因して、オフセットが同相で発生するため、(1)式の係数(ゲイン)k1を設定することでオフセットをキャンセルすることが一般的である。また、主スポットMBの反射光に基づく差信号Pmと副スポットSB1、SB2の反射光に基づく差信号Ps1、とPs2とは逆相なため、(1)式のように差をとることでトラッキングエラー信号TEの振幅が更に大きくなる。
【0007】
また、従来の光学式情報記録再生装置では、光ピックアップ内の対物レンズの光ディスクの情報面に対する位置を示すレンズ位置信号LPを
LP=Pm+k1(Ps1+Ps2) (2)
なる演算式で生成する。ここで、上記ゲインk1に設定された場合、メインビームスポット(主スポット)とサブビームスポット(副スポット)とが、トラック幅方向に1/2トラックピッチずらして配置されている場合には、(2)式のレンズ位置信号LPは各トラック成分がキャンセルされ、レンズ位置の移動成分のみとなる。
【0008】
なお、レンズ位置信号LPは、トラッキングエラー信号TEと同様に光ピックアップ内の対物レンズの光ディスクの情報面に対する位置を示す信号であるが、トラッキングエラー信号TEより大きな範囲(数トラック以上)のレンズ位置を表す信号である。数トラックだと殆どレンズ位置信号LPの変化が見られないため、通常は数10トラック以上の範囲のレンズ位置を表す。一方、トラッキングエラー信号TEは1トラック内に限定された光ディスクに対する対物レンズの相対位置を示す小さな範囲の位置信号である。
【0009】
上記トラッキングエラー信号TEは各トラックを走査するときに使用され、上記レンズ位置信号LPはトラッキングを用いた速度制御を使用しない長い距離のジャンプ中のレンズ位置制御(ロングジャンプ)に用いられる。
【0010】
【特許文献1】特許第3720851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の従来の光学式情報記録再生装置では、1枚の光ディスク上にトラックピッチ(トラック幅)が異なる領域が存在する場合には、第1のトラックピッチで各トラックが形成された1つの領域(領域A)においてのみ、主スポットMBの中心を記録再生すべきトラックであるトラックの中心線上に位置させ、かつ、副スポットSB1、SB2の中心をそれぞれ左右に隣接するトラックの中心に位置させることが可能であるが、第1のトラックピッチと異なる第2のトラックピッチで各トラックが形成された他の領域(領域B)では、主スポットMBの中心を記録再生すべきトラックであるトラックの中心線上に位置させたときには、副スポットSB1、SB2の左右に隣接するトラック上に対する位置が領域Aのそれと異なる。
【0012】
このため、領域Bにおいて、主スポットMBの中心を記録再生すべきトラックであるトラックの中心線上に位置させた場合には、副スポットSB1、SB2の各反射光を受光して得られる信号Ps1とPs2の振幅が領域Aより減少するため、トラッキングエラー信号に発生するオフセットをキャンセルするように、領域Aと同一のゲインk1を設定すると、信号Pm中のトラックに依存した信号成分(トラック成分)と、和信号(Ps1+Ps2)にゲインk1を乗じた信号中のトラックに依存した信号成分(トラック成分)とは、
Pmのトラック成分≠k1(Ps1+Ps2)のトラック成分
となる。その結果、レンズ位置信号LPにトラック毎に正弦波状信号(トラッキングエラー成分)が残留する。
【0013】
このようなレンズ位置信号でレンズ位置制御を行う場合制御が不安定になる。因みに、青色レーザーを用いた次世代光ディスク(Blu−ray)のデータ領域のトラックピッチは0.32μmであるが、内周PIC領域のトラックピッチは0.36μmであり、異なっている。
【0014】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、異なるトラックピッチのトラックの領域が混在して形成された光ディスクに対して、安定してレンズ位置制御を行い得る光学式情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明の光学式情報記録再生装置は、光ディスク上に形成された走査すべきトラック上に位置させたメインビームによる主スポットと、走査すべきトラックの両側に別々に配置した2本のサブビームによる2つの副スポットとを一体的に走査し、主スポットと2つの副スポットの各反射光を光電変換して得た信号に基づいて生成したトラッキングエラー信号に基づいて、主スポットを走査すべきトラックに追従走査させつつ、メインビームにより光ディスクに対して情報を光学的に記録し、再生すると共に光学式情報記録再生位置において、
主スポットの反射光を、光ディスクのトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された分割受光部で受光し、それぞれ光電変換して得た2信号の差信号Pmを演算生成する第1の受光手段と、2つの副スポットのうちの一方の反射光を、光ディスクのトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された分割受光部で受光し、それぞれ光電変換して得た2信号の差信号Ps1を演算生成する第2の受光手段と、2つの副スポットのうちの他方の反射光を、光ディスクのトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された分割受光部で受光し、それぞれ光電変換して得た2信号の差信号Ps2を演算生成する第3の受光手段と、差信号Ps1及びPs2の和信号Psを生成する和信号演算手段と、和信号Psに外部から可変設定されるゲインを付与して出力するゲイン付与手段と、ゲイン付与手段でゲインが付与された和信号と、第1の受光手段から出力された差信号Pmとの差分を演算してトラッキングエラー信号を生成する第1の演算手段と、ゲイン付与手段でゲインが付与された和信号と第1の受光手段から出力された差信号Pmとを加算演算してレンズ位置信号を生成する第2の演算手段と、トラッキングエラー制御時は第1の演算手段から出力されたトラッキングエラー信号を選択し、ロングジャンプ時は第2の演算手段から出力されたレンズ位置信号を選択する切替手段と、切替手段から出力された信号に基づいて、主スポットと2つの副スポットの位置を移動制御する移動手段と、切替手段によるトラッキングエラー信号選択時は、トラッキングエラー信号の変化量を最小とするゲインk1をゲイン付与手段に設定し、切替手段によるレンズ位置信号選択時は、差信号Pmの振幅にゲインk2が付与された和信号の振幅を一致させるゲインk2をゲイン付与手段に設定するゲイン制御手段とを有することを特徴とする。
【0016】
この発明では、3ビーム方式のトラッキングサーボにおいて、同じ光ディスク内で異なるトラッキングピッチの領域が存在する場合やその他の光学的な原因によって、トラッキングエラーに最適な演算比とレンズ位置情報に最適な演算比が異なる場合に、トラッキングエラー信号とレンズ位置信号とが同時に使用されないことに着目し、トラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う場合には、ゲインk1を付与した和信号Psと主スポットの反射光を光電変換して得た差信号Pmとからトラッキングエラー信号を生成することでトラッキングエラー信号の変化量を最小とし、一方、ロングジャンプ時にはゲインk2を付与した和信号Psと主スポットの反射光を光電変換して得た差信号Pmとからレンズ位置信号を生成することで、差信号Pmの振幅にゲインk2が付与された和信号Psの振幅を一致させる。これにより、光ディスクにトラックピッチの異なる領域が混在していた場合、トラックピッチに応じた振幅の和信号Psが得られるが、差信号Pmの振幅にゲインk2が付与された和信号Psの振幅を一致させることで、トラッキングエラー成分が残留しないレンズ位置信号を生成することができ、トラックピッチの異なる領域が光ディスクに存在していても、最適なトラッキング制御動作とロングジャンプ動作とを行わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異なるトラックピッチのトラックの領域が混在して形成された光ディスクに対して行う、トラッキングエラー信号を用いたトラッキング制御と、レンズ位置信号を用いたロングジャンプ制御の安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明になる光学式情報記録再生装置の一実施の形態のブロック図を示す。同図において、光学式情報記録再生装置100は、光学系と検出回路系とよりなる。上記の光学系は、所定波長のレーザービームを出射する光源としての半導体レーザー1と、コリメータレンズ2と、回折格子3と、偏光ビームスプリッタ4と、1/4波長板5と、対物レンズ6と、円筒レンズ7と、レンズ8と、それぞれ光ディスク25のトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された受光面を有する光受光器9、10及び11とからなる。
【0020】
また、上記の検出回路系は、光受光器9、10及び11の各出力信号が供給される差動増幅器により構成されている演算回路12、13及び14と、演算回路12、14からそれぞれ出力された信号を加算演算するサブ演算回路15と、外部から利得(ゲイン)が設定される可変利得増幅器16と、トラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー演算回路17と、レンズ位置信号を生成するレンズ位置信号演算回路18と、制御装置19と、トラッキングエラー信号とレンズ位置信号の一方を選択して制御装置19へ出力する切替手段である信号切替スイッチ20と、対物レンズ6の高さ位置や光軸方向を制御する対物レンズ駆動回路21とからなる。
【0021】
なお、対物レンズ駆動回路21には、対物レンズ6の高さ位置や光軸方向を制御する制御機構も含まれる。また、半導体レーザー1の光強度は記録時には記録データによって変調されるが、それを実現するための手段の図示は本発明とは直接の関係がないので省略する。また、周知のように、光ディスク25は図示しないスピンドルモータにより高速で回転される。なお、図1において、回折格子3を設けず、偏光ビームスプリッタ4により入射レーザービームを3本のビームに分割することも可能である。
【0022】
次に、本実施の形態の動作について説明する。半導体レーザー1から出射されたレーザービームは、コリメータレンズ2により平行光化されて回折格子3に入射し、ここで、0次回折光と、±1次回折光の計3本の直線偏光のビームとされて、偏光ビームスプリッタ4にそれぞれP偏光として入射してほぼ100%が透過し、更に1/4波長板5により直線偏光から円偏光に変換された後、対物レンズ6で光ディスク25の情報面に集光される。
【0023】
ここで、上記の0次回折光がメインビームとして図3に示した主スポットMBを光ディスク25の情報面上に形成し、上記の+1次回折光と−1次回折光とがそれぞれサブビームとして図3に示した副スポットSB1、SB2を光ディスク25の情報面上に形成する。
【0024】
この光ディスク25からのスポットMB、SB1、SB2の各反射光は、対物レンズ6を上記往路とは逆向きに透過し、1/4波長板5を透過して円偏光から往路と偏光方向が直交した直線偏光に変換され、更に偏光ビームスプリッタ4にS偏光として入射してほぼ100%が反射された後、円筒レンズ7及びレンズ8をそれぞれ透過して光検出器9、10、11で受光される。
【0025】
ここで、光受光器9、10及び11は、それぞれ光ディスク25のトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された受光面(第1の分割受光部と第2の分割受光部)を有する2分割受光器である。光受光器10は、前記主スポットMBの反射光を受光して光電変換し、第1の分割受光部で得られた第1の電気信号と第2の分割受光部で得られた第2の電気信号をそれぞれ演算回路13に供給して、ここでそれらの差信号Pmを演算生成させる。この光受光器10と演算回路13とは差信号Pmを生成する第1の受光手段を構成している。
【0026】
一方、光受光器9は、前記副スポットSB1の反射光を受光して光電変換し、第1の分割受光部で得られた第1の電気信号と第2の分割受光部で得られた第2の電気信号をそれぞれ演算回路12に供給して、ここでそれらの差信号Ps1を演算生成させる。同様に、光受光器11は、前記副スポットSB2の反射光を受光して光電変換し、第1の分割受光部で得られた第1の電気信号と第2の分割受光部で得られた第2の電気信号をそれぞれ演算回路14に供給して、ここでそれらの差信号Ps2を演算生成させる。上記の光受光器9と演算回路12とは差信号Ps1を生成する第2の受光手段を構成し、上記の光受光器11と演算回路14とは差信号Ps2を生成する第3の受光手段を構成している。
【0027】
サブ演算回路15は、演算回路12、14からそれぞれ出力された差信号Ps1、Ps2を加算演算して和信号Ps(=Ps1+Ps2)を生成し、可変利得増幅器16に供給して、ゲインk倍させる。トラッキングエラー演算回路17は、演算回路13から出力された差信号Pmから上記のゲインk倍された和信号Psを差し引いて、前記(1)式で表されるトラッキングエラー信号TEを生成する。一方、レンズ位置信号演算回路18は、演算回路13から出力された差信号Pmと上記のゲインk倍された和信号Psとを加算して、前記(2)式で表されるレンズ位置信号LPを生成する。
【0028】
以上のトラッキングエラー信号TE及びレンズ位置信号LPの生成方法は従来と同様であるが、本実施の形態では、これらトラッキングエラー信号TE及びレンズ位置信号LPを同時に使用せず、どちらか一方を信号切替スイッチ20で選択して制御装置19へ供給して所定の動作を行わせる点に特徴がある。
【0029】
制御装置19は、入力信号TE又はLPをディジタル信号に変換した後、後述する所定の動作を行って制御信号を生成し、その制御信号をアナログ信号に変換した後、対物レンズ駆動回路21に供給する。対物レンズ駆動回路21は、入力制御信号に基づいて図示しないアクチュエータを駆動し、対物レンズ6の光軸を光ディスク25の半径方向に微小変位させて走査すべきトラックを主スポットMBが追従走査するよう制御する。また、対物レンズ駆動回路21は、必要に応じて対物レンズ6の位置を所望のトラック位置にロングジャンプさせる。なお、制御装置19は、内部にトラッキングエラーとして最適なゲインk=Ktと、レンズ位置信号として最適なゲインk=Kpとを決定する機能を有する。
【0030】
この制御装置19は、対物レンズ駆動回路21及び対物レンズ6を駆動変位させるアクチュエータ(図示せず)と共に、信号切替スイッチ20から出力された信号に基づいて、主スポットと2つの副スポットの位置を移動制御する移動手段を構成すると共に、後述するように、信号切替スイッチ20によるトラッキングエラー信号TE選択時は、トラッキングエラー信号TEの変化量を最小とするゲインk1をゲイン付与手段の一例としての可変利得増幅器16に設定し、信号切替スイッチ20によるレンズ位置信号LP選択時は、差信号Pmとゲインが付与された和信号Psとの振幅を一致させるゲインk2を可変利得増幅器16に設定するゲイン制御手段を構成する。
【0031】
次に、本実施の形態における制御装置19の動作について、図2のフローチャートを併せ参照して更に詳細に説明する。本実施の形態では、トラッキングエラー信号を使用する状態Stと、レンズ位置信号を使用する状態Slの2つの状態をとる。状態Stは、回転している光ディスク25の情報面上のトラックを、再生のためにトラッキングしつつビームを走査している状態、トラッキングエラーを監視しながら速度制御とトラック本数をカウントし図示せぬトラックアクチュエータで短距離のジャンプをしている状態(ショートジャンプ)、その他トラッキングエラー信号TEを使用した処理を行っている状態である。
【0032】
一方、状態Slは、ピックアップ全体を移動させながら長距離のジャンプをしている状態(ロングジャンプ)である。ロングジャンプ中は非常に高速に光ディスク25の半径方向へピックアップ全体を目標トラック位置へ移動するため、目標トラック位置にてピックアップを移動から停止に移行させた際に、対物レンズ6が慣性にて大きく振動する。そのため、対物レンズ6の振動を抑えるためにレンズ位置信号LPを用い、ロングジャンプ終了後にトラッキングサーボをするまではトラッキングエラー信号TEを必要としない。
【0033】
制御装置19は、状態Stであるか、状態Slであるか監視し(ステップS10)、状態Stであれば信号切替スイッチ20をトラッキングエラー演算回路17の出力側にして(ステップS11)、可変利得増幅器16で和信号Psに付与するゲインkを、トラッキングエラー信号に最適なゲインk1に設定する(ステップS12)。
【0034】
ここで、トラッキングエラー信号に最適なゲインk1の決定方法としては、図示しないトラッキングアクチュエータに正弦波状の外乱を加えながら、対物レンズ6の光軸を光ディスク25の半径方向に微小往復変位させて主スポットの位置を走査すべきトラックの中心からずらしながら、ゲインk1を変化させ、トラッキングエラー信号の中心の変化量が最小となる(トラッキングエラーのオフセットが最低になる)k1を探す方法がある。このような機能は制御装置19に実装されており、初期起動時のサーボ調整時に行うのが望ましい。
【0035】
このようにして、状態Stのときには、トラッキングエラー信号に最適なゲインk1に設定されたトラッキングエラー信号TEがトラッキングエラー信号演算回路17から信号切替スイッチ20を介して制御装置19に供給される。制御装置19はこのトラッキングエラー信号TEに基づいて、対物レンズ駆動回路21を介して対物レンズ6等にトラッキング動作を行わせる。
【0036】
一方、制御装置19は、ステップS10で状態Slと判定したときは、信号切替スイッチ20をレンズ位置信号演算回路18の出力側にして(ステップS13)、可変利得増幅器16で和信号Psに付与するゲインkを、レンズ位置信号に最適なゲインk2に設定する(ステップS14)。
【0037】
ここで、レンズ位置信号に最適なゲインk2の決定方法としては、主スポットの反射光の受光信号から作られた信号Pmと、副スポットの反射光の受光信号から作られた和信号(Ps1+Ps2)の振幅をそれぞれ測定し、Pm=k2(Ps1+Ps2)となるk2を探す方法がある。
【0038】
前述したように、主スポットの反射光に基づく差信号Pmと副スポットの反射光に基づく差信号Ps1、Ps2とは逆相なため、このようなゲインを設定することで、レンズ位置信号演算回路18で信号Pmとゲインk2が設定された和信号k2(Ps1+Ps2)とを加算することにより、トラッキングエラーの成分は互いに略打ち消しあい、レンズ位置情報のみが残る。このような機能は制御装置19に実装されており、初期起動時のサーボ調整時に行うのが望ましい。
【0039】
このようにして、状態Slのときには、レンズ位置信号に最適なゲインk2に設定されたレンズ位置信号LPがレンズ位置信号演算回路18から信号切替スイッチ20を介して制御装置19に供給される。制御装置19はこのレンズ位置信号LPに基づいて、対物レンズ駆動回路21を介して対物レンズ6等の位置を中央から大きくずれないようにレンズ位置制御し(この制御を行うことによりジャンプ後のトラッキングサーボ状態への移行をすばやく行うことができる)、図示しないスレッドモータ制御装置により図示しないスレッドモータを駆動し、対物レンズ6を目標トラック位置へ移送するロングジャンプを行わせる。
【0040】
以上の構成により、本実施の形態による光学式情報記録再生装置によれば、次世代光ディスクのようにトラックピッチが異なる領域が混在する光ディスク25に対して、それぞれの領域においてトラックピッチに応じた振幅の和信号Psに対して、ロングジャンプを行うとき及びトラッキング制御を行うときのいずれにおいても、ゲインkを最適な値で設定することができる。
【0041】
これにより、本実施の形態によれば、上記の光ディスク25において、主スポットと副スポットとの位置関係が光学的に理想的な状態であるトラックピッチの領域A(図示せず)では、ほぼ等しい最適な値のk1とk2を和信号Psに設定することができ、トラックピッチが領域Aとは異なり、主スポットと副スポットとの位置関係が光学的に崩れている状態である領域B(図示せず)では、k1とk2の最適な値は異なるが、それぞれ最適な値を和信号Psに設定することができる。これにより、ロングジャンプ時において領域Bでレンズ位置情報に対してトラッキングエラー成分が残留してしまうことを防止することができ、安定したレンズ位置制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の光学式情報記録再生装置の一実施の形態のブロック図である。
【図2】図1中の制御装置の動作説明用フローチャートである。
【図3】3ビーム方式のビームスポット配置の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体レーザー
2 コリメータレンズ
3 回折格子
4 偏光ビームスプリッタ
5 1/4波長板
6 対物レンズ
7 円筒レンズ
8 レンズ
9〜11 光検出器
12〜14 演算回路
15 サブ演算回路
16 可変利得増幅器
17 トラッキングエラー演算回路
18 レンズ位置信号演算回路
19 制御装置
20 信号切替スイッチ
21 対物レンズ駆動回路
25 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク上に形成された走査すべきトラック上に位置させたメインビームによる主スポットと、前記走査すべきトラックの両側に別々に配置した2本のサブビームによる2つの副スポットとを一体的に走査し、前記主スポットと前記2つの副スポットの各反射光を光電変換して得た信号に基づいて生成したトラッキングエラー信号に基づいて、前記主スポットを前記走査すべきトラックに追従走査させつつ、前記メインビームにより前記光ディスクに対して情報を光学的に記録し、再生する光学式情報記録再生装置において、
前記主スポットの反射光を、前記光ディスクのトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された分割受光部で受光し、それぞれ光電変換して得た2信号の差信号Pmを演算生成する第1の受光手段と、
前記2つの副スポットのうちの一方の反射光を、前記光ディスクのトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された分割受光部で受光し、それぞれ光電変換して得た2信号の差信号Ps1を演算生成する第2の受光手段と、
前記2つの副スポットのうちの他方の反射光を、前記光ディスクのトラック接線方向に平行な方向の分割線で2分割された分割受光部で受光し、それぞれ光電変換して得た2信号の差信号Ps2を演算生成する第3の受光手段と、
前記差信号Ps1及びPs2の和信号Psを生成する和信号演算手段と、
前記和信号Psに外部から可変設定されるゲインを付与して出力するゲイン付与手段と、
前記ゲイン付与手段でゲインが付与された和信号と、前記第1の受光手段から出力された前記差信号Pmとの差分を演算してトラッキングエラー信号を生成する第1の演算手段と、
前記ゲイン付与手段でゲインが付与された和信号と、前記第1の受光手段から出力された前記差信号Pmとを加算演算してレンズ位置信号を生成する第2の演算手段と、
トラッキングエラー制御時は前記第1の演算手段から出力された前記トラッキングエラー信号を選択し、ロングジャンプ時は前記第2の演算手段から出力された前記レンズ位置信号を選択する切替手段と、
前記切替手段から出力された信号に基づいて、前記主スポットと前記2つの副スポットの位置を移動制御する移動手段と、
前記切替手段による前記トラッキングエラー信号選択時は、該トラッキングエラー信号の変化量を最小とするゲインk1を前記ゲイン付与手段に設定し、前記切替手段による前記レンズ位置信号選択時は、前記差信号Pmの振幅にゲインk2が付与された前記和信号の振幅を一致させる該ゲインk2を、前記ゲイン付与手段に設定するゲイン制御手段と
を有することを特徴とする光学式情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−70522(P2009−70522A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240296(P2007−240296)
【出願日】平成19年9月16日(2007.9.16)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】