説明

光学式測距装置

【課題】簡単な構造にて、周囲温度の変化と自己発熱とによる測距精度の低下を防ぐことができる光学式測距装置を提供する。
【解決手段】測距対象物までの距離を測定しているときの温度センサ25によって検出された温度と、上記距離を測定していないときの温度センサ25によって検出された温度との変化量に基づいて検出値を補正した後に三角測距法により測距対象物までの距離を算出する受光素子12と、発光レンズ14及び受光レンズ15の間の距離を制御するレンズ間距離制御部18とを備えており、レンズ間距離制御部18は、測距装置10の周囲温度の変化によって生じる測距装置10の温度の変化に対する、発光レンズ14と受光レンズ15との間の距離の変動量と、測距装置10の自己発熱によって生じる測距装置10の温度の変化に対する当該距離の変動量とを近づけるように、当該距離を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距対象物までの距離を、三角測距法により測定する光学式測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測距対象物にスポット光を照射し、その反射光を受光して、三角測距法により測距対象物までの距離を測定する、測距装置が知られている。
【0003】
図18は、一般的な三角測距法の原理を説明するための図である。図18には、一般的な測距装置に備えられる、発光素子302、受光素子303、発光レンズ309及び受光レンズ310を示す。原点(0,0)に配置された発光素子302より出射された光束は、A点(0,d)に配置された発光レンズ309により略平行光束(発光軸331)となり、スポット光として、測距対象物313上のB点(0,y)に照射される。測距対象物313により反射された光束(受光軸332)は、C点(L,d)に配置された受光レンズ310(集光レンズ)により集光され、x軸上に配置された受光素子303上のD点(L+l,0)に結像されて、受光スポットを形成する。ここで、C点(受光レンズ310の中心)を通りy軸と平行な線がx軸と交差する点をE点(L,0)とするとき、三角形ABCと三角形ECDとは相似する。したがって、受光素子303により受光スポットの位置を検出して辺ED(=l)を測定することにより、測距対象物313までの距離yは、下記式(1)
【0004】
【数1】

【0005】
により算出できる。
【0006】
受光素子303は、受光素子303上に形成された受光スポットの位置を検出し、上記式(1)に基づいて測距対象物313までの距離を算出するが、当該距離を正確に求めるためには、発光レンズ309と受光レンズ310との間の距離L、および受光レンズ310と受光素子303との間の距離dが固定されている必要がある。
【0007】
図19は、一般的な測距装置の構成を示す図である。一般的な測距装置300が備える発光レンズ309および受光レンズ310は、遮光性樹脂により形成されたケース311によって固定されることが多い。
【0008】
また、特許文献1には、図20に示す測距装置400が記載されている。図20は、従来の測距装置の構成を示す図である。従来の測距装置400は、発光素子412を収納した発光側パッケージ416と、受光素子415を収納した受光側パッケージ417とが、フレキシブルな材質からなる接続部材422によって接続される構成である。
【0009】
また、特許文献2には、図21に示す測距装置500が記載されている。図21は、従来の測距装置の構成を示す図である。従来の測距装置500は、結像レンズ501a、501bと、結像レンズ501a、501bの保持部材502と、光センサアレイとしてのCCDパッケージ503a、503bの保持部材504とを、吸湿性のないプラスチックからなる同一材料により形成したものである。
【0010】
また、特許文献3には、図22に示す測距装置600が記載されている。図22は、従来の測距装置の構成を示す図である。測距装置600は、一対のレンズ及び一対のCCDチップからなる系の相対的な位置関係を保持する、一または複数の部材からなる支持手段上の所定の複数箇所にそれぞれ温度センサを取り付け、この複数箇所相互間の温度差により、CCDチップ上の物体像のシフト量を補正するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−337320号公報(2006年12月14日公開)
【特許文献2】特開平11−281351号公報(1999年10月15日公開)
【特許文献3】特開2001−99643号公報(2001年4月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来技術では、測距装置の周囲の温度(以下、「周囲温度」ともいう。)の変化と、発光素子及び受光素子(以下、これらをまとめて「受発光素子」ともいう。)の自己発熱との2つの原因による測距精度の低下を、容易に防ぐことができない。
【0013】
上述した従来の測距装置300では、発光レンズ309および受光レンズ310(以下、これらをまとめて「受発光レンズ」ともいう。)を固定するケース311に用いる樹脂は、一般に大きな熱膨張係数を有するため、周囲温度が変化すると、ケース311を構成する樹脂が伸縮することにより、例えば発光レンズ309と受光レンズ310とがそれぞれ点線で示す位置に移動し、レンズ間の距離Lが変化してしまう。その結果、光軸は、室温時における光軸(311aおよび312a)に比べ、破線(311bおよび312b)のように変化してしまう。そのため、測距対象物313までの距離は変わっていないにも関わらず、受光素子303上に形成される受光スポットの位置は、室温時に比べて外側にシフトしてしまう。このように、例えば周囲温度が上昇した場合には、測距対象物313は、実際よりも近い位置にあると誤って測定されてしまう。
【0014】
また、上述した従来の測距装置400および500では、受発光素子が自己発熱した場合には、測距装置全体における温度変化が均等でないため、受発光素子の近傍の部材と、受発光レンズ近傍の部材とは、異なった温度となる結果異なる挙動を示すため、受発光レンズと受発光素子との位置関係が保持されない。このように均等でない温度変化が生じた場合における受光スポットの位置の補正方法について、特許文献1および2には記載されていない。したがって、特許文献1および2に記載された技術では、自己発熱による測距精度の低下を防ぐことができないため、三角測距法の原理を満足に利用することができない。
【0015】
また、上述した従来の測距装置600では、測距精度の低下を防ぐためには、CCD保持部材の温度を測定する温度センサと、レンズ保持部材の温度を測定する温度センサとの2つの温度センサをとりつける必要がある。また、両温度センサは、CCDチップ(受光素子)等に内蔵することはできず、個別に各保持部材に接触させて配置させる必要がある。また、温度センサが出力した信号を送信するための配線が必要となる。
【0016】
ここで、温度センサが2つ必要となる理由について説明する。図23(a)〜(c)は、従来の測距装置の構成を示す図である。なお、図23(a)は、従来の測距装置700を横から見た断面図であり、図23(b)は、測距装置700の上面図であり、図23(c)は、測距装置700における、発光素子701が設けられた発光モールド部と、受光素子702が設けられた受光モールド部とを上から見た図である。
【0017】
従来の測距装置700においては、周囲からの熱710は、測距装置700の側面を含めた測距装置700全体を均等に加熱または冷却し、各部材を膨張または収縮させることによって、発光レンズ704と受光レンズ705との間の距離L、及び発光素子701と受光素子702との間の距離を変化させる。一方、受発光素子が通電されることによるこれらの素子自体の自己発熱720は、これらの素子を封止している遮光樹脂708を直接的に加熱して膨張させる一方、これらの受発光素子から放射された熱と、測距装置700の側面を伝う熱とによって、発光レンズ704と受光レンズ705とを保持する部材を間接的に加熱して膨張させる。
【0018】
したがって、自己発熱720が生じた場合には、遮光樹脂708の温度と、受発光レンズを保持する部材の温度とは異なったものとなり、それぞれの部材は、固有の熱膨張係数によって、それぞれの温度変化にしたがって膨張することとなる。そのため、発光素子701及び受光素子702の間の距離の変動量は、測距装置700の周囲の温度によって測距装置700が加熱された場合にも、測距装置700の自己発熱によって測距装置700が加熱された場合にも、略一定となるが、発光レンズ704と受光レンズ705との間の距離の変動量は、それぞれの場合で異なる。
【0019】
したがって、自己発熱720による、発光素子701及び受光素子702の間の距離の変動と、発光レンズ704及び受光レンズ705の間の距離の変動とをそれぞれ予測するためには、自己発熱720による影響を直接的に受ける部材の温度と、間接的に受ける部材の温度とをそれぞれ検出するための複数の温度センサを備える必要がある。
【0020】
以上の理由により、従来の測距装置600は、測距精度を高めるためには複雑な構造を要する。その結果、組み立て工数が増大するため、安価な測距装置を提供することは困難である。
【0021】
一方、上述した測距装置600において、温度センサをレンズ保持部材のみ、またはCCD保持部材のみに取り付けると、例えば温度が上昇した場合に、周囲温度の上昇または自己発熱のいずれの影響により温度が変化したのかが不明であり、受発光レンズと受発光素子との位置関係を正確に把握することができない。そのため、測距精度が低下してしまうという問題が生じる。
【0022】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造にて、周囲温度の変化と自己発熱とによる測距精度の低下を防ぐことができる光学式測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、本発明に係る測距装置は、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、発光素子と、上記発光素子からの光を上記測距対象物に照射する光照射手段と、上記測距対象物からの反射光を集光する集光手段と、上記光学式測距装置の温度を検出する温度検出手段と、上記集光手段によって集光された上記反射光の集光位置を示す検出値を取得し、上記距離を測定しているときの上記温度検出手段によって検出された温度と、上記距離を測定していないときの上記温度検出手段によって検出された温度との変化量に基づいて当該検出値を補正した後に、補正された当該検出値に基づいて三角測距法により上記測距対象物までの距離を算出する測距値算出手段と、上記光照射手段及び上記集光手段の間の距離を制御する距離制御手段とを備えており、上記距離制御手段は、上記光学式測距装置の周囲温度の変化によって生じる上記光学式測距装置の温度の変化に対する、上記光照射手段と上記集光手段との間の距離の変動量と、上記光学式測距装置の自己発熱によって生じる上記光学式測距装置の温度の変化に対する当該距離の変動量とを近づけるように、当該距離を制御することを特徴とする。
【0024】
上記の構成であれば、距離制御手段によって、光学式測距装置の周囲温度の変化によって生じる光学式測距装置の温度の変化に対する、光照射手段と集光手段との間の距離の変動量と、光学式測距装置の自己発熱によって生じる光学式測距装置の温度の変化に対する当該距離の変動量とを近づけることができる。そのため、測距値算出手段は、測距対象物までの距離を測定しているときの温度検出手段によって検出された温度と、当該距離を測定していないときの温度検出手段によって検出された温度との変化量に基づいて、光照射手段と集光手段との間の距離の変動を容易に予測することができ、より正確に検出値を補正することができる。
【0025】
したがって、自己発熱による影響を直接的に受ける部材の温度と、間接的に受ける部材の温度とをそれぞれ検出するための複数の温度検出手段を設ける必要がないため、簡単な構造にて、周囲温度の変化と自己発熱とによる測距精度の低下を防ぐことができる。
【0026】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記光照射手段と上記集光手段とを保持する保持部材を備えており、上記距離制御手段は、上記光照射手段と上記集光手段との間もしくは周囲またはその両方に形成されている、上記保持部材よりも熱膨張係数が小さい平板状部材であることが好ましい。
【0027】
上記の構成であれば、距離制御手段は、保持部材よりも熱膨張係数が小さい平板状部材であり、光照射手段と集光手段との間もしくは周囲またはその両方に形成されているため、保持部材の膨張または収縮による、光照射手段と集光手段との間の距離の変動を物理的に抑制することができる。したがって、より正確な測距値を得ることができる。
【0028】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記光照射手段と上記集光手段とを保持する保持部材を備えており、上記距離制御手段は、上記光照射手段と上記集光手段とを囲むように設けられている、上記保持部材よりも熱膨張係数が小さい板状部材であることが好ましい。
【0029】
上記の構成であれば、距離制御手段は、保持部材よりも熱膨張係数が小さい板状部材であり、光照射手段と集光手段とを囲むように設けられているため、保持部材の膨張または収縮による光照射手段と集光手段との間の距離の変動を物理的に抑制することができる。したがって、より正確な測距値を得ることができる。
【0030】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記保持部材は、上記光照射手段及び上記集光手段の周囲に設けられている側壁と、上記光照射手段及び上記集光手段の間に設けられている遮光壁とにより構成されており、上記平板状部材は、上記側壁及び上記遮光壁の少なくとも一方と位置決めされるための位置決め構造が形成されていることが好ましい。
【0031】
上記の構成であれば、光照射手段と集光手段との間もしくは周囲またはその両方に形成されている平板状部材が、側壁及び遮光壁の少なくとも一方と位置決めされることによって、光照射手段と集光手段とを正確に位置決めすることができる。そのため、被測距対象物からの反射光を集光手段により適切な位置に集光させることができ、より正確な測距値を得ることができる。
【0032】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記光照射手段と上記集光手段とは、上記平板状部材によって上記遮光壁と隔てられていることが好ましい。
【0033】
上記の構成であれば、光照射手段と集光手段とは、遮光壁と接触しないため、遮光壁の熱膨張によって、遮光壁と光照射手段及び集光手段とが押し合うことを防止できる。そのため、光照射手段と集光手段との間の距離の変動を抑えることができ、より正確な測距値を得ることができる。
【0034】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記光照射手段と上記集光手段とは、上記平板状部材によって上記側壁と隔てられていることが好ましい。
【0035】
上記の構成であれば、光照射手段と集光手段とは、側壁と接触しないため、側壁の熱膨張によって、側壁と光照射手段及び集光手段とが押し合うことを防止できる。そのため、光照射手段と集光手段との間の距離の変動を抑えることができ、より正確な測距値を得ることができる。
【0036】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記光照射手段と上記集光手段とは、それぞれ透光性樹脂によって形成されたレンズであり、上記平板状部材によって互いに隔てられていることが好ましい。
【0037】
上記の構成であれば、光照射手段と集光手段とを形成する透光性樹脂が、平板状部材によって互いに隔てられることにより接触しない。したがって、それぞれの透光性樹脂の熱膨張は、光照射手段と集光手段とのそれぞれの中心から外側に押し広げるように作用するが、光照射手段と集光手段との間の距離の変動に対する影響を抑えることができる。したがって、より正確な測距値を得ることができる。
【0038】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記発光素子を封止する第1の透光性樹脂部と、上記測距値算出手段を封止する第2の透光性樹脂部と、上記第1の透光性樹脂部及び上記第2の透光性樹脂部を互いに隔てる遮光性樹脂部と、上記第1の透光性樹脂部及び上記第2の透光性樹脂部を互いに接続する、上記遮光性樹脂部よりも熱膨張係数が小さいリードフレームとを備えていることが好ましい。
【0039】
上記構成であれば、第1の透光性樹脂部と第2の透光性樹脂部とは、遮光性樹脂部よりも熱膨張係数が小さいリードフレームにより互いに接続されているため、光学式測距装置の温度の変化によって遮光性樹脂部が膨張または収縮しようとした場合に、発光素子と測距値算出手段との間の距離の変動が抑制される。したがって、測距値算出手段による、温度検出手段によって検出された温度に基づく検出値の補正をより正確に行なうことが可能となり、より正確な測距値を得ることができる。
【0040】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記発光素子と上記測距値算出手段とは、上記リードフレーム上に設置されていることが好ましい。
【0041】
上記の構成であれば、光学式測距装置の温度の変化によって遮光性樹脂部が膨張または収縮しようとした場合に、リードフレームによって発光素子と測距値算出手段との間の距離の変動が抑制される。したがって、測距値算出手段による、温度検出手段によって検出された温度に基づく検出値の補正をより正確に行なうことが可能となり、より正確な測距値を得ることができる。
【0042】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記リードフレームと、上記距離制御手段とは、同一の材料により構成されていることが好ましい。
【0043】
上記の構成であれば、光学式測距装置が周囲の熱により加熱された場合にも、自己発熱により加熱された場合にも、発光素子と測距値算出手段との間の距離の変動、及び光照射手段と集光手段との間の距離の変動を、ほぼ同等とすることができる。したがって、測距値算出手段によって、光学式測距装置の温度の変化量に基づいて検出値をより正確に補正することができる。
【0044】
また、本発明に係る光学式測距装置では、上記発光素子の中心は、上記光照射手段の中心を通る面であって、上記光照射手段と上記集光手段とを通る線に垂直な面よりも上記光学式測距装置の中心側に位置しており、上記測距値算出手段の中心は、上記集光手段の中心を通る面であって、上記光照射手段と上記集光手段とを通る線に垂直な面よりも上記光学式測距装置の中心側に位置していることが好ましい。
【0045】
上記の構成であれば、発光素子及び測距値算出手段が光学式測距装置の中心よりに位置するため、これらが発熱した場合に、光学式測距装置の筐体等の熱膨張に対する影響を抑えることができる。そのため、光照射手段と集光手段との間の距離の変動、及び発光素子と測距値算出手段との間の距離の変動を抑制することができる。したがって、より正確な測距値を得ることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明に係る光学式測距装置は、以上のように、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、発光素子と、上記発光素子からの光を上記測距対象物に照射する光照射手段と、上記測距対象物からの反射光を集光する集光手段と、上記光学式測距装置の温度を検出する温度検出手段と、上記集光手段によって集光された上記反射光の集光位置を示す検出値を取得し、上記距離を測定しているときの上記温度検出手段によって検出された温度と、上記距離を測定していないときの上記温度検出手段によって検出された温度との変化量に基づいて当該検出値を補正した後に、補正された当該検出値に基づいて三角測距法により上記測距対象物までの距離を算出する測距値算出手段と、上記光照射手段及び上記集光手段の間の距離を制御する距離制御手段とを備えており、上記距離制御手段は、上記光学式測距装置の周囲温度の変化によって生じる上記光学式測距装置の温度の変化に対する、上記光照射手段と上記集光手段との間の距離の変動量と、上記光学式測距装置の自己発熱によって生じる上記光学式測距装置の温度の変化に対する当該距離の変動量とを近づけるように、当該距離を制御する。したがって、簡単な構造にて、周囲温度の変化と自己発熱とによる測距精度の低下を防ぐことができる光学式測距装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す測距装置の上面図である。
【図2】図2(a)〜(b)は、図1(a)〜(b)に示す測距装置の発光モールド部及び受光モールド部の内部を詳細に示す図であり、図2(a)は上面図であり、図2(b)は側面から見た断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る測距装置の発光モールド部及び受光モールド部の内部を詳細に示す上面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る測距装置の発光モールド部及び受光モールド部の内部を詳細に示す上面図である。
【図5】図4に示す測距装置の一変形例を示す上面図である。
【図6】図4に示す測距装置の他の変形例を示す上面図である。
【図7】図4に示す測距装置の他の変形例を示す上面図である。
【図8】図8(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図8(b)は、図8(a)に示す測距装置の上面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図9(b)は、図9(a)に示す測距装置の上面図である。
【図10】図10(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図10(b)は、図10(a)に示す測距装置の上面図である。
【図11】図11(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す測距装置の上面図である。
【図12】図8(a)〜(b)に示す測距装置の要部の構成を示す図である。
【図13】図12に示す測距装置の要部の一変形例を示す図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る測距装置の要部の構成を示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る測距装置の要部の構成を示す図である。
【図16】図16(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図16(b)は、図16(a)に示す測距装置の上面図である。
【図17】本発明の測距装置が測距値を測定する方法を説明するための図である。
【図18】一般的な三角測距法の原理を説明するための図である。
【図19】一般的な測距装置の構成を示す図である。
【図20】従来の測距装置の構成を示す図である。
【図21】従来の測距装置の構成を示す図である。
【図22】従来の測距装置の構成を示す図である。
【図23】従来の測距装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態における測距装置(光学式測距装置)10は、三角測距法を利用して測距対象物までの距離を示す測距値を測定する光学式測距装置である。
【0049】
(測距装置10の構成)
測距装置10の構成について、図1(a)〜(b)を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す測距装置の上面図である。
【0050】
測距装置10は、発光素子11と、受光素子(測距値算出手段)12と、リードフレーム13と、発光レンズ(光照射手段)14と、受光レンズ(集光手段)15と、ケース(保持部材、側壁)16と、遮光壁(保持部材)17と、レンズ間距離制御部(距離制御手段)18と、発光モールド部(第1の透光性樹脂部)19と、受光モールド部(第2の透光性樹脂部)20と、遮光性樹脂部(遮光性樹脂部)21とを備えている。
【0051】
発光素子11とは、光を出射する素子である。
【0052】
発光レンズ14は、発光素子11から出射された光を集光して測距対象物に照射する、投光用のレンズである。受光レンズ15は、測距対象物からの反射光を集光する受光用のレンズである。発光レンズ14と受光レンズ15とは、発光レンズ14から照射される光の光路に対して垂直な同一の平面上に、遮光壁17を挟んで設けられ、かつ、同一の保持部材であるケース16及び遮光壁17によって保持されている。
【0053】
ケース16と遮光壁17とは、遮光性樹脂により構成され、一体的に形成された筐体である。ケース16と遮光壁17とは、発光レンズ14及び受光レンズ15を保持する保持部材であるとともに、遮光性樹脂部21を係止するための部材である。
【0054】
ケース16は、発光レンズ14及び受光レンズ15の周囲に設けられ、これらを保持するものである。ケース16は、発光レンズ14及び受光レンズ15の周囲から遮光性樹脂部21の周囲までを覆うように設けられており、測距装置10の側壁を構成する。
【0055】
遮光壁17は、発光レンズ14と受光レンズ15との間に設けられ、ケース16とともにこれらを保持するものである。遮光壁17は、発光素子11から発光レンズ14までの光路と、受光レンズ15から受光素子12までの光路とを仕切るように設けられており、発光素子11から出射した光が、発光レンズ14またはケース16の内壁により反射して直接受光素子12に入射することを防止する。
【0056】
ケース16及び遮光壁17を構成する遮光性樹脂としては、公知の遮光性の樹脂を用いることができ、例えばポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)等を用いることができる。なお、ケース16と遮光壁17とは、同じ材料により構成されていてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。
【0057】
受光素子12は、光検出部(図示せず)と、温度センサ(温度検出手段)25と、信号処理回路(図示せず)とを備えている。
【0058】
受光素子12は、光検出部により、受光素子12の基準点から、受光レンズ15によって反射光が集光されて形成された受光スポットの光重心位置(集光位置)までの距離を検出し、スポット検出値(検出値)として得る。また、温度センサ25により、測距装置10の温度を検出する。ここで、「測距装置10の温度(光学式測距装置の温度)」とは、測距装置10を構成する部材であって、測距装置10の周囲の温度と測距装置10の自己発熱とのいずれもが直接的に伝わる部材の温度をさす。なお、このような部材としては、発光素子11、受光素子12及びこれらの周囲にある部材などが挙げられる。温度センサ25については後述する。
【0059】
また、受光素子12は、信号処理回路により、受光素子12の光検出部が検出したスポット検出値と、温度センサ25が検出した測距装置10の温度とに基づいて、三角測量の原理に基づいて測距対象物までの測距値を算出する。このとき、受光素子12は、測距対象物までの距離を測定しているときの温度センサ25によって検出された温度と、当該距離を測定していないときの温度センサ25によって検出された温度との変化に基づいて、スポット検出値を補正する。
【0060】
「測距対象物までの距離を測定しているとき」とは、発光素子11及び発光レンズ14によって測距対象物に光を照射し、測距対象物からの反射光の受光スポットを受光素子12が検出しているときをさす。また、「測距対象物までの距離を測定していないとき」とは、発光素子11が光を出射しておらず、受光スポットが受光素子12上に集光されていないときをさす。
【0061】
測距値の具体的な測定方法については、後述する。
【0062】
受光素子303としては、半導体位置検出素子(PSD)または複数のフォトダイオード(PD)が配置されたリニアセンサ、イメージセンサなどを用いることができる。
【0063】
発光モールド部19は、発光素子11を封止する透光性樹脂により構成されており、受光モールド部20は、受光素子12を封止する透光性樹脂により構成されている。これにより、発光素子11と受光素子12とは、それぞれ個別に透光性樹脂によって封止されている。透光性樹脂としては、公知の透光性の樹脂を用いることができ、例えばエポキシ樹脂等を用いることができる。なお、発光モールド部19と受光モールド部20とは、同一の透光性樹脂により構成されていてもよいし、それぞれ異なる透光性樹脂により構成されていてもよい。
【0064】
発光モールド部19と受光モールド部20とは、遮光性樹脂部21によって覆われ、この遮光性樹脂部21によって互いに隔てられている。また、発光モールド部19と受光モールド部20とは、リードフレーム13の一部によって接続されている。
【0065】
遮光性樹脂部21は、遮光性樹脂により構成されており、発光モールド部19と受光モールド部20とを覆うように形成される。遮光性樹脂部21は、発光モールド部19と受光モールド部20とを互いに隔てることによって、光が発光素子11から受光素子12に直接入射することを防止する。遮光性樹脂部21を構成する遮光性樹脂としては、公知の遮光性の樹脂を用いることができ、例えばPPS等が挙げられる。また、遮光性樹脂部21には、窓22及び23が形成されている。
【0066】
窓22及び23は、それぞれ発光素子11の上方と受光素子12の上方とにおける所定の位置に形成される。窓22及び23によって、発光素子11からの光を前方に出射させ、測距対象物からの反射光を受光素子12に入射させるための光路が確保される。
【0067】
(発光モールド部19及び受光モールド部20の詳細な構成)
発光モールド部19及び受光モールド部20の詳細な構成について、図2(a)〜(b)を参照して説明する。図2(a)〜(b)は、図1(a)〜(b)に示す測距装置の発光モールド部及び受光モールド部の内部を詳細に示す図であり、図2(a)は上面図であり、図2(b)は側面から見た断面図である。
【0068】
図2(a)に示すように、発光モールド部19内では、発光素子11がリードフレーム13上の所定の位置に実装されており、受光モールド部20内では、受光素子12がリードフレーム13上の所定の位置に実装されている。すなわち、発光素子11と受光素子12とは、同一平面にあるリードフレーム13上にそれぞれ実装されている。発光素子11及び受光素子12は、それぞれ金(Au)ワイヤー24によってリードフレーム13に電気的に接続されている。リードフレーム13の一部は、発光モールド部19内から受光モールド部20内に貫通し、両モールドを接続している。
【0069】
リードフレーム13のうち、少なくとも発光モールド部19と受光モールド部20とを接続するリードフレーム13は、遮光性樹脂部21よりも熱膨張係数が小さいことが好ましい。リードフレーム13に用いる材料としては、遮光性樹脂部21よりも熱膨張係数が小さいものであればよく、例えば金属等を用いることができ、具体的にはセラミック、タングステン、モリブデン、42アロイ等が挙げられる。
【0070】
遮光性樹脂部21は、測距装置10の周囲温度が変化した場合、及び発光素子11及び受光素子12が自己発熱した場合などに、図2(b)に矢印で示すように膨張しようとする。しかし、上述した構成であれば、発光モールド部19と受光モールド部20とはリードフレーム13により接続されているため、遮光性樹脂部21が膨張または収縮しようとした場合に、発光素子11と受光素子12との間の距離(以下、「受発光素子間距離」ともいう。)の変動が抑制される。したがって、受光素子12による、温度センサ25が検出した温度に基づく受光スポットの位置の補正を正確に行なうことが可能となり、より正確な測距値を得ることができる。
【0071】
(レンズ間距離制御部18)
レンズ間距離制御部18は、発光レンズ14及び受光レンズ15を保持する保持部材であるケース16及び遮光壁17よりも熱膨張係数が小さい板状部材であり、ケース16の側壁の内部に、測距装置10を囲むように設けられている。すなわち、レンズ間距離制御部18は、発光レンズ14と受光レンズ15とを囲むように設けられている。
【0072】
レンズ間距離制御部18の熱膨張係数は、例えば、レンズ間距離制御部18の熱膨張係数をαとし、発光レンズ14と受光レンズ15との間の距離をLとし、受光レンズ15と受光素子12との間の距離をdとすると、下記式(2)
α/(L×d) < 1・・・(2)
を満たすことが好ましい。
【0073】
レンズ間距離制御部18を構成する材料としては、例えば金属等を用いることができ、具体的には、セラミック(熱膨張係数〜5.0×10−6[1/℃])、タングステン(熱膨張係数〜4.3×10−6[1/℃])、モリブデン(熱膨張係数〜4.0×10−6[1/℃])、42アロイ(熱膨張係数〜5.0×10−6[1/℃])などが挙げられる。なかでも、生産性及びコストの観点から、42アロイが好ましい。
【0074】
このような構成により、レンズ間距離制御部18は、ケース16及び遮光壁17の膨張または収縮を物理的に抑制することにより、測距装置10の周囲温度の変化によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対する発光レンズ14と受光レンズ15との間の距離(以下、「レンズ間距離」「受発光レンズ間距離」ともいう。)の変動量と、測距装置10の自己発熱によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量とを近づけるように、レンズ間距離を制御する。したがって、レンズ間距離制御部18によって、測距装置10の周囲温度の変化によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量と、測距装置10の自己発熱によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量とを、略等しくすることができる。
【0075】
なお、ケース16及び遮光壁17に使用される遮光性樹脂として例示されるポリカーボネート樹脂の熱膨張係数は約7.0×10−5[1/℃]であり、ABS樹脂は約7.4×10−5[1/℃]である。したがって、上述した構成により、レンズ間距離制御部18は、ケース16及び遮光壁17の膨張を効果的に抑制し、レンズ間距離の変動を、受光素子12がスポット検出値の変化量として検出できる検出限界より小さくすることができる。したがって、レンズ間距離を効果的に制御することができる。
【0076】
ここで、受発光レンズを保持する部材であるケース16及び遮光壁17のうち、受発光レンズの近傍にある部分の温度は、主に、測距装置10の周囲からの熱によって測距装置10が全体的に加熱されることにより変動するとともに、当該部分とは空間によって隔てられている受発光素子の自己発熱が間接的に伝わることによって変動する。そのため、温度センサ25が検出する測距装置10の温度、すなわち測距装置10の周囲の熱と測距装置10の自己発熱との両方が直接的に伝わる部材(例えば受光素子12)の温度、とは異なる温度となる。
【0077】
しかし、本実施形態であれば、レンズ間距離制御部18によって、測距装置10の周囲温度の変化によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量と、測距装置10の自己発熱によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量とを、近づけることができる。そのため、測距装置10の温度を検出する温度センサ25を1つのみ備えることによって、この測距装置10の温度の変化量に基づいて受発光素子間距離とレンズ間距離との変動を容易に予測し、スポット検出値をより正確に補正することができる。したがって、測距精度の低下を容易に防ぐことが可能となる。
【0078】
(温度センサ25)
温度センサ25は、測距装置10の温度を検出するセンサであり、受光素子12に内蔵されている。
【0079】
温度センサ25としては、公知のものを用いることができ、通常の半導体プロセスによって設置することができる。温度センサ25は、温度センサ25が搭載された単機能ICであってもよく、例えばnational semiconductor社、analog devices社、STマイクロエレクトロニクス社等から入手可能である。また、温度センサ25は、これらのような半導体温度センサと他の機能(ドライバ)とを同一チップに搭載したドライブIC等であってもよく、具体例としては、マキシム社のMAX8702/8703等が挙げられる。また、温度センサ25は、受光素子に内蔵されている測距IC等に搭載されてもよい。
【0080】
上述した構成であれば、温度センサ25は、自己発熱の熱源となる受光素子12及び発光素子11の近傍に配置されるため、自己発熱を直接的に感知できる。また、温度センサ25は、測距装置10の周囲の温度をも直接的に感知できる。したがって、温度センサ25は、「測距装置10の温度」を検出できる。なお、温度センサ25は、受光素子12に内蔵されている必要はなく、「測距装置10の温度」を検出できるように構成されていれば、どこに設置されていてもよい。
【0081】
以上の構成により、測距装置10は、温度センサ25を1つのみ備えており、従来と比較して簡単な構造であるため、安価にて製造することができる。また、測距装置10は、かかる構造によって、測距精度の低下を充分に防ぐことができ、測距対象物までの距離をより正確に測定することができる。
【0082】
(測距値の測定方法)
次に、測距装置10の受光素子12が測距値を測定する方法について詳細に説明する。
【0083】
図17は、本発明の一実施形態に係る測距装置が測距値を測定する方法を説明するための図である。
【0084】
図17に示すように、基準温度においては、発光レンズ14はAに位置し、測距対象物はBに位置し、受光レンズ15はCに位置し、受光スポットはDに位置する。また、計算の簡単のために、受光素子12の基準点を、受光レンズ15の中心Cと同じx座標である点Eとする。測距対象物までの距離(測距値)(AB)をyとし、基準温度時の受発光レンズ間距離(AC)をLとし、受光レンズ15と受光素子12との間の距離(CE)をdとする。このとき、受発光レンズ間距離と受発光素子間の距離とはともにLとなる。受光素子12は、基準温度時には、スポット検出値として、基準点からDまでの距離、すなわち三角形CEDの底辺lの長さを示す値を得る。
【0085】
なお、「基準温度」とは、測距対象物までの距離を測定していないときに温度センサ25によって検出される温度をさし、例えば常温などであってもよいし、測距装置10を使用開始する直前の測距装置10の温度であってもよい。
【0086】
三角形ABCと三角形CEDとは相似の関係にあるので、測距値yは、以下の式(1)によって表される。
【0087】
【数2】

【0088】
ところで、受発光レンズ間距離と、受発光素子間距離とは、「測距装置10の温度」が変化することによって変動する。ここでは、測距対象物までの距離を測定しているとき(以下、「測定時」ともいう。)に、「測距装置10の温度」が、測距装置10の周囲温度の変化によって基準温度よりも上昇するとともに、測距装置10の自己発熱によっても上昇した場合の測距値の測定方法について説明する。なお、このとき、基準温度時における位置に対して、受光レンズ15はCからC’の位置に移動し、受光素子12の基準点はEからE’に移動し、受光スポットはDからD’に移動する。
【0089】
測距装置10の周囲温度の変化によって生じる「測距装置10の温度」の変化量をΔT1とし、測距装置10の自己発熱によって生じる「測距装置10の温度」の変化量をΔT2とすると、測定時に温度センサ25が検出する、「測距装置10の温度」の基準温度からの変化量ΔTは、ΔT=ΔT1+ΔT2と表される。
【0090】
ここで、測距装置10の周囲温度の変化によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量に関する変動係数をα1とし、測距装置10の自己発熱によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量に関する変動係数をα2とし、測距装置10の周囲温度の変化によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対する受発光素子間距離の変動量に関する変動係数をβ1とし、測距装置10の自己発熱によって生じる「測距装置10の温度」の変化に対する受発光素子間距離の変動量に関する変動係数をβ2とする。このとき、受発光レンズ間距離の変化量(CC’)は、L(α1ΔT1+α2ΔT2)と表される。したがって、基準温度時に対する、測定時のスポット検出値の変化量Δl(DD’)は、三角形BCC’とBDD’との相似関係から、下記式(3)
【0091】
【数3】

【0092】
と表される。
【0093】
また、受発光素子間距離の変化量(EE’)は、L(β1ΔT1+β2ΔT2)と表される。したがって、受光素子12は、スポット検出値として、E’からD’までの距離(l’)を示す値を得る。l’は、下記式(4)
【0094】
【数4】

【0095】
と表される。上記式(3)及び式(4)から、l’は、下記式(5)
【0096】
【数5】

【0097】
と表される。式(5)のl’を式(1)のlに代入すると、下記式(6)
【0098】
【数6】

【0099】
となる。
【0100】
本実施形態では、レンズ間距離制御部18により、レンズ間距離の変動係数α1とα2とが略等しい。また、発光素子11及び受光素子12の周囲の遮光性樹脂部21は、測距装置10の周囲温度の変化及び自己発熱の影響を直接的に受けるため、受発光素子間距離の変動係数β1とβ2とは略等しい。したがって、α1=α2=α及びβ1=β2=βとすると、上記式(6)は、下記式(7)のように変形できる。
【0101】
【数7】

【0102】
ここで、k=αl+(α−β)Lとすると、上記式(7)は、下記式(8)
【0103】
【数8】

【0104】
と表すことができる。なお、上記式(8)中の「k」は、測距装置10の構造に固有の値であり、予め測定することによって求めることができる。
【0105】
したがって、測距装置10は、スポット検出値lと、「測距装置10の温度」の変化量とに基づいて、上記式(8)により測距値を算出することができる。言い換えれば、測距装置10は、「測距装置10の温度」の変化量に基づいてスポット検出値lを補正値(l−kΔT)に補正した後に、この補正値をスポット検出値として用い、上記式(1)を用いて測距値を算出することができる。これにより、より正確に測距値を測定することができる。
【0106】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図3を参照して詳細に説明する。図3は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の発光モールド部及び受光モールド部の内部を詳細に示す上面図である。
【0107】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)30は、第1実施形態における測距装置10とは、発光素子11が実装される発光ヘッダー部31と、受光素子12が実装される受光ヘッダー部32とがつながって構成されているリードフレーム13を備えている点のみが異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第1実施形態における構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。ここでは、主に、第1実施形態との相違点について説明するものとする。
【0108】
本実施形態では、発光ヘッダー部31と受光ヘッダー部32とがつながって構成されているリードフレーム13が、発光モールド部19と受光モールド部20とを互いに接続している。すなわち、発光素子11と受光素子12とは、共通のリードフレーム13上に実装されることにより設置されている。リードフレーム13は、上述したように、遮光性樹脂部21よりも熱膨張係数が小さい。したがって、測距装置30の周囲温度の変化、発光素子11及び受光素子12の自己発熱などによって、遮光性樹脂部21が膨張または収縮しようとした場合に、受発光素子間距離の変動は、リードフレーム13の熱膨張係数に従うこととなり、すなわちリードフレーム13によって抑制されるためほとんど変化しない。
【0109】
発光ヘッダー部31及び受光ヘッダー部32を構成するリードフレーム13は、遮光性樹脂部21よりも熱膨張係数が小さいことが好ましい。このリードフレーム13に用いる材料としては、例えば金属等を用いることができ、具体的にはセラミック、タングステン、モリブデン、42アロイ等が挙げられる。
【0110】
なお、第1実施形態では、発光モールド部19と受光モールド部20との間を結ぶリードフレーム13と透光性樹脂で形成された両モールド部との密着性が不十分な場合には、受発光素子間距離が遮光性樹脂部21等の熱膨張により変化する可能性がある。しかし、第2実施形態の構成であれば、発光素子11と受光素子12とがリードフレーム13により直接接続されているため、受発光素子間距離の変動をより効果的に抑えることができる。したがって、受光素子12により、温度センサ25が検出した温度に基づく受光スポットの位置の補正をより正確に行なうことが可能となり、より正確な測距値を得ることができる。
【0111】
発光ヘッダー部31と受光ヘッダー部32とは、電気的にグランド(GND)として使用されることが好ましい。
【0112】
なお、第1実施形態及び第2実施形態におけるリードフレーム構造は、以下の各実施形態と好適に組み合わせることができる。リードフレーム構造については、以下の実施形態においては説明を省略する。
【0113】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図4を参照して詳細に説明する。図4は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の発光モールド部及び受光モールド部の内部を詳細に示す上面図である。なお、図4では、遮光性樹脂部21及びリードフレーム13等を省略している。
【0114】
本実施形態では、説明の便宜上、第1実施形態及び第2実施形態にかかる構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、主に、第1実施形態及び第2実施形態との相違点について説明するものとする。
【0115】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)40Aでは、発光素子11は、ワイヤボンディング部42と発光部41とにより構成されている。発光部41は、発光レンズ14の中心を通る面であって、発光レンズ14と受光レンズ15とを通る線に垂直な面M上に位置する。そして、ワイヤボンディング部42の中心、すなわち発光素子11全体の中心は、この面Mよりも受発光素子間の内側(測距装置40Aの中心側)に位置する。
【0116】
発光素子11は発熱するため自己発熱の熱源となるが、上述した構成により、発光素子11の中心が測距装置40Aの中心側に位置することとなり、発光素子11をケース16から遠ざけることができる。そのため、発光素子11の発熱によるケース16の熱膨張を抑え、受発光レンズ間距離L及び受発光素子間距離の変動を抑制することができる。
【0117】
受光素子12は、光検出部33を備えている。このような受光素子12としては、例えば光検出部33と信号処理回路とが一体化されたCMOSイメージセンサ、PSDまたは多分割PDが内蔵された回路内蔵受光素子等を用いることができる。受光素子12の中心は、受光レンズ15の中心を通る面であって、発光レンズ14と受光レンズ15とを通る線に垂直な面Nよりも受発光素子間の内側(測距装置40Aの中心側)に位置する。つまり、光検出部43は、受光素子12の中心よりも外側に配置されている。なお、受光素子12の中心を通り、発光素子11と受光素子12とを通る線に垂直な面Pを図4に示す。
【0118】
受光素子12は、上述した発光素子11と同様に発熱するため自己発熱の熱源となるが、上述した構成により、受光素子12の中心が測距装置40Aの中心側に位置することとなり、受光素子12をケース16から遠ざけることができる。そのため、受光素子12の発熱によるケース16の熱膨張を抑え、受発光レンズ間距離L及び受発光素子間距離の変動を抑制することができる。
【0119】
なお、本実施形態及び以下の各変形例における発光素子11及び受光素子12の位置関係は、以下の各実施形態と好適に組み合わせることができる。
【0120】
(変形例3−1)
上述した第3実施形態の一変形例について、図5を参照して詳細に説明する。図5は、図4に示す測距装置の一変形例を示す上面図である。なお、図5では、遮光性樹脂部21及びリードフレーム13等を省略している。
【0121】
本変形例の測距装置(光学式測距装置)40Bは、発光素子11のワイヤボンディング部42’の形状が、上述した測距装置40Aのワイヤボンディング部42とは異なっており、その他の構成は測距装置40Aと共通している。ワイヤボンディング部42’の中心は、面Mよりも受発光素子間の内側(測距装置40Bの中心側)に位置するように配置されている。
【0122】
(変形例3−2)
次に、上述した第3実施形態の他の変形例について、図6を参照して詳細に説明する。図6は、図4に示す測距装置の他の変形例を示す上面図である。なお、図6では、遮光性樹脂部21及びリードフレーム13等を省略している。
【0123】
本変形例の測距装置(光学式測距装置)40Cは、発光素子11のワイヤボンディング部42”の形状が、上述した測距装置40Aのワイヤボンディング部42とは異なっており、その他の構成は測距装置40Aと共通している。ワイヤボンディング部42”の中心は、面Mよりも受発光素子間の内側(測距装置40Cの中心側)に位置するように配置されている。
【0124】
(変形例3−3)
次に、上述した第3実施形態の他の変形例について、図7を参照して詳細に説明する。図7は、図4に示す測距装置の他の変形例を示す上面図である。なお、図7では、遮光性樹脂部21及びリードフレーム13等を省略している。
【0125】
本変形例の測距装置(光学式測距装置)40Dは、受光素子12’が、光検出部43が独立した素子44と、その出力信号を処理する信号処理IC(信号処理回路)45とにより構成されており、その他の構成は測距装置40Aと共通している。素子44としては、PSD、多分割PDなどを用いることができる。
【0126】
信号処理IC45は、面Nよりも受発光素子間の内側(測距装置40Aの中心側)に位置する。これにより、受光素子12’全体の中心は、面Nよりも測距装置40Aの中心側に位置している。信号処理IC45は、発熱するため自己発熱の熱源となるが、上述した構成により測距装置40Aの中心側に位置するため、信号処理IC45をケース16から遠ざけることができるので、信号処理IC45の発熱によるケース16の熱膨張を抑え、受発光レンズ間距離L及び受発光素子間距離の変動を抑制することができる。
【0127】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図8(a)〜(b)を参照して詳細に説明する。図8(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図8(b)は、図8(a)に示す測距装置の上面図である。
【0128】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)50は、第1実施形態〜第3実施形態における測距装置とは、ケース16の内部にレンズ間距離制御部18を備えておらず、発光レンズ14と受光レンズ15とが成型されているレンズ間距離制御部(距離制御手段)51を備えている点が異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第1実施形態〜第3実施形態における構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。ここでは、主に、第1実施形態〜第3実施形態との相違点について説明するものとする。
【0129】
レンズ間距離制御部51は、ケース16及び遮光壁17よりも熱膨張係数が小さい平板状部材であり、ケース16及び遮光壁17と一体的に形成されている。発光レンズ14と受光レンズ15とは、レンズ間距離制御部51に成型されている。すなわちレンズ間距離制御部51は、発光レンズ14と受光レンズ15との間及び周囲に形成されており、発光レンズ14と受光レンズ15とを接続している。レンズ間距離制御部51に用いる材料としては、レンズ間距離制御部18として例示したものと同様のものを用いることができる。レンズ間距離制御部51は、ケース16及び遮光壁17とともに、受発光素子を覆う遮光性樹脂部21を係止する。
【0130】
レンズ間距離制御部51の具体的な構成について、図12を参照して説明する。図12は、図8(a)〜(b)に示す測距装置の要部の構成を示す図である。
【0131】
発光レンズ14と受光レンズ15とは、それぞれ透光性樹脂92a、92bによって形成されている。発光レンズ14と受光レンズ15とに用いる透光性樹脂92a、92bとしては、レンズを形成させるために一般的に用いる公知の透光性の樹脂を用いることができ、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ナイロン(登録商標)等が挙げられる。なお、発光レンズ14と受光レンズ15とは、同一の透光性樹脂により構成されていてもよいし、それぞれ異なる透光性樹脂により構成されていてもよい。
【0132】
レンズ間距離制御部51は、図12に示すように、発光レンズ14を形成する透光性樹脂92aと受光レンズ15を形成する透光性樹脂92bとを、互いに分離させて隔てている。透光性樹脂92a、92bの熱膨張は、図12に矢印で示すように、発光レンズ14と受光レンズ15とのそれぞれの中心から外側に押し広げるように作用するが、上述した構成により、受発光レンズ間距離の変動にはほとんど影響を与えない。
【0133】
レンズ間距離制御部51は、例えばケース16及び遮光壁17を構成する遮光性樹脂にインサート成型させることにより形成させてもよいし、射出成型させたケース16に係止することによって形成させてもよい。
【0134】
ケース16及び遮光壁17のうち、受発光レンズの近傍にある部分の温度は、主に、測距装置50の周囲からの熱によって測距装置50が全体的に加熱されることにより変動するとともに、当該部分とは空間によって隔てられている受発光素子の自己発熱が間接的に伝わることによって変動する。そのため、温度センサ25が検出する「測距装置50の温度」、すなわち測距装置50の周囲の熱と測距装置50の自己発熱との両方が直接的に伝わる部材(ここでは受光素子12)の温度、とは異なる温度となる。
【0135】
本実施形態では、レンズ間距離制御部51は、発光レンズ14と受光レンズ15とを接続するため、受発光レンズを保持する部材であるケース16及び遮光壁17の膨張または収縮による、レンズ間距離に対する影響を抑制するため、レンズ間距離の変動は、ほとんど生じない。そして、これにより、レンズ間距離制御部51は、測距装置50の周囲温度の変化によって生じる「測距装置50の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量と、測距装置50の自己発熱によって生じる「測距装置50の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量とを近づけるように、レンズ間距離を制御するものである。したがって、レンズ間距離制御部51によって、測距装置50の周囲温度の変化によって生じる「測距装置50の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量と、測距装置50の自己発熱によって生じる「測距装置50の温度」の変化に対するレンズ間距離の変動量とを、略等しくすることができる。
【0136】
そのため、測距装置50の温度を検出する温度センサ25を1つのみ備えることによって、この測距装置50の温度の変化量に基づいて受発光素子間距離とレンズ間距離との変動を容易に、かつ正確に予測し、スポット検出値をより正確に補正することができる。したがって、測距精度の低下を容易に防ぐことが可能となる。
【0137】
なお、レンズ間距離制御部51と、発光素子11及び受光素子12が搭載されるリードフレーム13とは、熱膨張係数が同一であることが好ましく、例えば、同一の材料により構成されていることが好ましい。これにより、測距装置50が周囲の熱により加熱された場合にも、自己発熱により加熱された場合にも、受発光素子間距離の変動量と受発光レンズ間距離の変動量とがほぼ同等となるため、測距装置50の温度の変化量に基づいて、スポット検出値をより正確に補正することができる。
【0138】
(変形例4−1)
上述した第4実施形態の一変形例について、図13を参照して詳細に説明する。図13は、図12に示す測距装置の要部の一変形例を示す図である。
【0139】
本変形例では、発光レンズ14を形成する透光性樹脂と受光レンズ15を形成する透光性樹脂とが繋がっており、1つの透光性樹脂部92を構成している。レンズ間距離制御部51は、発光レンズ14と受光レンズ15との間及び周囲に形成されており、これらを接続している。これにより、レンズ間距離がレンズ間距離制御部51によって制御されるため、スポット検出値を容易に、かつ正確に補正することができる。
【0140】
なお、本変形例では、発光レンズ14と受光レンズ15との間にある透光性樹脂92の熱膨張は、図13に矢印で示すように受発光レンズを外側に押し広げるように作用する。したがって、第4実施形態の構成とすることによって、本変形例の構成よりも、受発光レンズ間距離の変動を効果的に抑えることができ、スポット検出値の補正をさらに正確に行なうことが可能となる。
【0141】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図9(a)〜(b)を参照して詳細に説明する。図9(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図9(b)は、図9(a)に示す測距装置の上面図である。
【0142】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)60は、第4実施形態における測距装置50とは、ケース16の内側に、発光モールド部19及び受光モールド部20を覆う遮光性樹脂部21と同じ遮光性樹脂によって側壁62a及び遮光壁62bが形成されている点、及び発光レンズ14と受光レンズ15とが成型されているレンズ間距離制御部(距離制御手段)61が、位置決めピン63によって位置決めされている点が異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第4実施形態にかかる構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。ここでは、主に、第4実施形態との相違点について説明するものとする。
【0143】
レンズ間距離制御部61には、位置決めピン63に対応する孔(位置決め構造)64が形成されることによって、遮光壁62bと位置決めされるための位置決め構造が形成されている。レンズ間距離制御部61は、この点以外については、上述したレンズ間距離制御部51と同様に構成されている。
【0144】
側壁62aと遮光壁62bとは、ケース16とともに、発光レンズ14と受光レンズ15とを保持する保持部材の一部を構成する。側壁62aは、発光レンズ14と受光レンズ15との周囲に設けられ、遮光壁62bは、発光レンズ14と受光レンズ15との間に設けられている。側壁62aと遮光壁62bとは、発光モールド部19及び受光モールド部20を覆う遮光性樹脂部21と一体的に形成されている。すなわち、側壁62aと、遮光壁62bと、遮光性樹脂部21とは、同じ遮光性樹脂によって構成されている。
【0145】
遮光壁62bの天面には、位置決めピン63となる突起が形成されている。そして、側壁62a及び遮光壁62bの上方から、レンズ間距離制御部61が形成されているケース16が被せられ、位置決めピン63と孔64とが係止されることによって、位置決めされる。
【0146】
なお、位置決めピン63は、上述した構成に限らず、例えば側壁62aの天面に形成されていてもよいし、側壁62aと遮光壁62bとの両方の天面に形成されていてもよい。
【0147】
本実施形態であれば、簡単に測距装置60の各部品を製造することができる。また、位置決めピン63及び孔64によって、発光モールド部19及び受光モールド部20を覆う遮光性樹脂部21と一体的に形成されている遮光壁62bと、レンズ間距離制御部61とを、正確に位置決めすることができる。そのため、受光レンズ15によって、被測距対象物からの反射光を受光素子12上に精度よく集光させることができる。
【0148】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図10(a)〜(b)を参照して詳細に説明する。図10(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図10(b)は、図10(a)に示す測距装置の上面図である。
【0149】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)70は、第5実施形態における測距装置60とは、発光レンズ14と受光レンズ15とが成型されているレンズ間距離制御部(距離制御手段)71には、ケース16との間に隙間(位置決め構造)74が形成されており、この隙間74と、側壁72aの天面に形成された切り欠き構造とが係止されることによって位置決めされている点が異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第5実施形態にかかる構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0150】
側壁72a及び遮光壁72bは、側壁72aの天面に切り欠き構造が形成され、遮光壁72bの天面には位置決めピンが形成されていない点以外については、上述した側壁62a及び遮光壁62bと同様に構成されている。
【0151】
レンズ間距離制御部71には、その周囲とケース16との間に隙間74が形成されることによって、側壁72aの天面の切り欠き構造と位置決めされるための位置決め構造が形成されている。レンズ間距離制御部71は、この点以外については、上述したレンズ間距離制御部61と同様に構成されている。
【0152】
この構成であれば、簡単に測距装置70の各部品を製造することができる。また、隙間74と側壁72aの天面とを係止することによって、発光モールド部19及び受光モールド部20を覆う遮光性樹脂部21と一体的に形成されている側壁72aと、レンズ間距離制御部71とを、正確に位置決めすることができる。そのため、受光レンズ15によって、被測距対象物からの反射光を受光素子12上に精度よく集光させることができる。
【0153】
〔第7実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図11(a)〜(b)を参照して詳細に説明する。図11(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す測距装置の上面図である。
【0154】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)80は、第5実施形態における測距装置60とは、ケース16がなく、側壁82a及び遮光壁82bのみが測距装置80の筐体を構成している点、ならびに、発光レンズ14と受光レンズ15とが成型されているレンズ間距離制御部(距離制御手段)81が、側壁82a及び遮光壁82bの天面にそれぞれ形成されている位置決めピン83によって位置決めされている点、が異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第5実施形態にかかる構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0155】
側壁82a及び遮光壁82bは、それぞれの天面に位置決めピン83となる突起が形成されている点以外については、上述した側壁62a及び遮光壁62bと同様に構成されている。なお、側壁62a及び遮光壁62bは、発光レンズ14と受光レンズ15とを保持する保持部材を構成する。
【0156】
レンズ間距離制御部81には、位置決めピン83に対応する孔(位置決め構造)84が形成されることによって、側壁82a及び遮光壁82bと位置決めされるための位置決め構造が形成されている。レンズ間距離制御部81は、位置決めピン83によって側壁82a及び遮光壁82bに位置決めされることによって、保持部材である側壁82a及び遮光壁82bと一体的に受発光レンズを保持している。レンズ間距離制御部81は、これらの点以外については、レンズ間距離制御部61と同様に構成されている。
【0157】
レンズ間距離制御部81は、位置決めピン83を孔84に挿入させて側壁82a及び遮光壁82bにはめ込んだ後、位置決めピン83を熱かしめによってつぶすことにより、側壁82a及び遮光壁82bと結合させることができる。
【0158】
本実施形態であれば、側壁82a及び遮光壁82bが筐体を構成しているため、他のケースなどの部材を設ける必要がなく、低コストにて製造することができる。
【0159】
〔第8実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図14を参照して詳細に説明する。図14は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の要部の構成を示す図である。
【0160】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)90は、第4実施形態における測距装置50とは、遮光壁97が、発光レンズ14を形成する透光性樹脂92a、及び受光レンズ15を形成する透光性樹脂92bと、それぞれ隔てられて構成されている点が異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第4実施形態における構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。ここでは、主に、第4実施形態との相違点について説明するものとする。
【0161】
遮光壁97は、レンズ間距離制御部51によって、透光性樹脂92a及び透光性樹脂92bのそれぞれと、一定の間隔をおいて隔てられるとともに接続されており、レンズ間距離制御部51を介して発光レンズ14と受光レンズ15とを保持する。遮光壁97としては、上述した遮光壁17と同様の材料により構成されることができる。「一定の間隔」とは、遮光壁97、透光性樹脂92a及び透光性樹脂92bが熱膨張した場合に、互いに接触しない間隔であればよい。
【0162】
上述した構成により、遮光壁97の熱膨張、及び透光性樹脂92a、92bの熱膨張によって、遮光壁97と透光性樹脂92a、92bとが接触して押し合うことを防止できるため、受発光レンズ間距離の変動にほとんど影響を与えない。そのため、受発光レンズ間距離の変動を抑えることができる。
【0163】
〔第9実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図15を参照して詳細に説明する。図15は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の要部の構成を示す図である。
【0164】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)100は、第4実施形態における測距装置50とは、発光レンズ14を形成する透光性樹脂92aと、受光レンズ15を形成する透光性樹脂92bとが、それぞれ側壁102と隔てられて構成されている点が異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第4実施形態における構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。ここでは、主に、第4実施形態との相違点について説明するものとする。
【0165】
側壁102は、レンズ間距離制御部51によって、透光性樹脂92a及び透光性樹脂92bのそれぞれと、一定の間隔をおいて隔てられるとともに接続されており、レンズ間距離制御部51を介して発光レンズ14と受光レンズ15とを保持する。側壁102としては、上述したケース16と同様の材料により構成されることができる。「一定の間隔」とは、側壁102、透光性樹脂92a及び透光性樹脂92bが熱膨張した場合に、互いに接触しない間隔であればよい。
【0166】
上述した構成により、側壁102の熱膨張、及び透光性樹脂92a、92bの熱膨張によって、側壁102と透光性樹脂92a、92bとが接触して押し合うことを防止できるため、受発光レンズ間距離の変動を抑えることができる。
【0167】
〔第10実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について、図16(a)〜(b)を参照して詳細に説明する。図16(a)は、本発明の他の実施形態に係る測距装置の構成を示す断面図であり、図16(b)は、図16(a)に示す測距装置の上面図である。
【0168】
本実施形態の測距装置(光学式測距装置)110は、第4実施形態における測距装置50とは、発光レンズ14と受光レンズ15との間のみにレンズ間距離制御部(距離制御手段)111を備えている点が異なっており、その他の構成は共通している。したがって、説明の便宜上、第4実施形態における構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。ここでは、主に、第4実施形態との相違点について説明するものとする。
【0169】
レンズ間距離制御部111は、発光レンズ14と受光レンズ15との間のみに設けられている点以外については、上述したレンズ間距離制御部51と同様に構成されている。すなわち、レンズ間距離制御部111は、発光レンズ14と受光レンズ15との間に形成されている、受発光レンズの保持部材であるケース16及び遮光壁17よりも熱膨張係数が小さい平板状部材である。そして、発光レンズ14と受光レンズ15とを接続しており、ケース16及び遮光壁17の膨張または収縮による、レンズ間距離に対する影響を抑制することにより、レンズ間距離を制御する。
【0170】
本実施形態においては、発光レンズ14と受光レンズ15との周囲にはレンズ間距離制御部111が設けられていないため、レンズ間距離制御部111に使用するための材料を削減することができる。したがって、測距装置110を安価に製造することができる。
【0171】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は、簡単な構造にて、周囲温度の変化と自己発熱とによる測距精度の低下を防ぐことができるため、測距対象物までの測距値を測定するための種々の光学式測距装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0173】
10、30、40A、40B、40C、40D、50、60、70、80、90、100、110 測距装置(光学式測距装置)
11 発光素子
12 受光素子(測距値算出手段)
13 リードフレーム
14 発光レンズ(光照射手段)
15 受光レンズ(集光手段)
16 ケース(保持部材、側壁)
17 遮光壁(保持部材)
18、51、61、71、81、111 レンズ間距離制御部(距離制御手段)
19 発光モールド部(第1の透光性樹脂部)
20 受光モールド部(第2の透光性樹脂部)
21 遮光性樹脂部(遮光性樹脂部)
25 温度センサ(温度検出手段)
45 信号処理IC(信号処理回路)
62a、72a、82a、102 側壁
62b、72b、82b、97 遮光壁
64、84 孔(位置決め構造)
74 隙間(位置決め構造)
92a、92b 透光性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、
発光素子と、
上記発光素子からの光を上記測距対象物に照射する光照射手段と、
上記測距対象物からの反射光を集光する集光手段と、
上記光学式測距装置の温度を検出する温度検出手段と、
上記集光手段によって集光された上記反射光の集光位置を示す検出値を取得し、上記距離を測定しているときの上記温度検出手段によって検出された温度と、上記距離を測定していないときの上記温度検出手段によって検出された温度との変化量に基づいて当該検出値を補正した後に、補正された当該検出値に基づいて三角測距法により上記測距対象物までの距離を算出する測距値算出手段と、
上記光照射手段及び上記集光手段の間の距離を制御する距離制御手段とを備えており、
上記距離制御手段は、上記光学式測距装置の周囲温度の変化によって生じる上記光学式測距装置の温度の変化に対する、上記光照射手段と上記集光手段との間の距離の変動量と、上記光学式測距装置の自己発熱によって生じる上記光学式測距装置の温度の変化に対する当該距離の変動量とを近づけるように、当該距離を制御することを特徴とする光学式測距装置。
【請求項2】
上記光照射手段と上記集光手段とを保持する保持部材を備えており、
上記距離制御手段は、上記光照射手段と上記集光手段との間もしくは周囲またはその両方に形成されている、上記保持部材よりも熱膨張係数が小さい平板状部材であることを特徴とする請求項1に記載の光学式測距装置。
【請求項3】
上記光照射手段と上記集光手段とを保持する保持部材を備えており、
上記距離制御手段は、上記光照射手段と上記集光手段とを囲むように設けられている、上記保持部材よりも熱膨張係数が小さい板状部材であることを特徴とする請求項1に記載の光学式測距装置。
【請求項4】
上記保持部材は、上記光照射手段及び上記集光手段の周囲に設けられている側壁と、上記光照射手段及び上記集光手段の間に設けられている遮光壁とにより構成されており、
上記平板状部材は、上記側壁及び上記遮光壁の少なくとも一方と位置決めされるための位置決め構造が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学式測距装置。
【請求項5】
上記光照射手段と上記集光手段とは、上記平板状部材によって上記遮光壁と隔てられていることを特徴とする請求項4に記載の光学式測距装置。
【請求項6】
上記光照射手段と上記集光手段とは、上記平板状部材によって上記側壁と隔てられていることを特徴とする請求項4または5に記載の光学式測距装置。
【請求項7】
上記光照射手段と上記集光手段とは、それぞれ透光性樹脂によって形成されたレンズであり、上記平板状部材によって互いに隔てられていることを特徴とする請求項2、4〜6のいずれか1項に記載の光学式測距装置。
【請求項8】
上記発光素子を封止する第1の透光性樹脂部と、
上記測距値算出手段を封止する第2の透光性樹脂部と、
上記第1の透光性樹脂部及び上記第2の透光性樹脂部を互いに隔てる遮光性樹脂部と、
上記第1の透光性樹脂部及び上記第2の透光性樹脂部を互いに接続する、上記遮光性樹脂部よりも熱膨張係数が小さいリードフレームとを備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学式測距装置。
【請求項9】
上記発光素子と上記測距値算出手段とは、上記リードフレーム上に設置されていることと特徴とする請求項8に記載の光学式測距装置。
【請求項10】
上記リードフレームと、上記距離制御手段とは、同一の材料により構成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の光学式測距装置。
【請求項11】
上記発光素子の中心は、上記光照射手段の中心を通る面であって、上記光照射手段と上記集光手段とを通る線に垂直な面よりも上記光学式測距装置の中心側に位置しており、
上記測距値算出手段の中心は、上記集光手段の中心を通る面であって、上記光照射手段と上記集光手段とを通る線に垂直な面よりも上記光学式測距装置の中心側に位置していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学式測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−37276(P2012−37276A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175392(P2010−175392)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】