説明

光学式異物検出装置およびこれを搭載した処理液塗布装置

【課題】異物を感度よく検出することができる光学式の異物検出装置およびこれを搭載した処理液塗布装置を提供すること。
【解決手段】ステージ2上に水平状態に載置された被処理基板1と、前記基板1の幅方向に延びるスリット状吐出開口11bを有する処理液供給ノズル11とを相対的に移動させて処理液供給ノズル11から帯状に吐出される処理液を、基板1の表面に塗布するように構成される。前記処理液供給ノズル11の相対移動方向の前方に投光部5と受光部6からなる光透過形センサユニットが搭載されている。前記センサユニットの相対移動方向に沿って複数の検査エリアが設定され、異物の移動方向の履歴を追ってセンサユニットによる受光データを集計することで、異物に対する反応感度を向上させた光学式の異物検出装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理基板に塵埃等の異物が付着した状態を光学式に検出する検出装置と、この検出装置を搭載し前記被処理基板に対して処理液を塗布する例えばスリットコート式の処理液塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLCDの製造技術分野においては、LCD基板上に形成された半導体層、絶縁体層、電極層等を選択的に所定のパターンにエッチングする工程が実行される。この場合、前記LCD基板上にフォトレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光し、これを現像処理するという、いわゆるフォトリソグラフィ技術が応用される。
【0003】
前記したLCD基板上にフォトレジスト液を塗布する場合においては、溶剤に感光性樹脂を溶解してなるレジスト液を帯状に吐出するレジスト供給ノズルが採用され、方形状のLCD基板を前記ノズルによるレジスト液の吐出方向と直交する方向に相対的に平行移動させて塗布する方法が知られている。この場合、前記レジスト供給ノズルにはLCD基板の幅方向に延びる微小間隔を有するスリット状の吐出開口が備えられ、このスリット状の吐出開口から帯状に吐出されるレジスト液を基板の表面全体に供給してレジスト層を形成するようになされる。
【0004】
この方法によれば、前記基板の一辺から他辺にわたってレジスト液を帯状に吐出(供給)することができるので、基板の全面にわたって平均してレジスト層を効率的に形成させることができる。このようなスリットコート式の処理液塗布装置については、本件出願人が過去に出願した例えば次に示す特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開平10−156255号公報
【0005】
ところで、前記した構成の処理液塗布装置においては、一回の塗布動作によって均一な膜厚を得るようにするために、前記したレジスト液をスリット状の吐出開口から吐出させる場合に、その膜厚を引き伸ばしつつ均一な層状に形成させる動作が伴われる。このために、前記レジスト液を吐出するノズルと前記基板との間の間隙(エアーギャップ)は、膜厚に対応するようにきわめて小さく設定され、例えば100μm程度のギャップをもって両者が相対移動するようになされる。
【0006】
前記したレジスト液に代表される処理液を基板に対して塗布するに際して、ノズルと基板とは前記した微小間隔をもって相対移動することになるため、例えば基板上に塵埃などの異物が付着している場合においては、その塗布動作中に前記異物が前記ノズルの先端部に接触するという問題が発生する。また、異物が前記基板とこの基板を載置保持するステージとの間に介在された場合には、基板の一部が山状に変形されるため、ノズルと基板の相対移動に伴って、ノズルの先端部に基板が強く押しつけられるという問題が発生する。
【0007】
特に後者のように、異物が前記基板とステージとの間に介在されている場合においては、基板の破損は当然のことながらノズルの先端部に傷がつき、塗布した処理液にいわゆるすじ引きが発生することになる。このために前記ノズルの交換およびこれに伴う調整作業等が必要になり、基板の製造ラインが長時間にわたって運転停止を余儀なくされるという問題にも発展する。
【0008】
そこで、本件出願人は前記した処理液吐出ノズルの相対的な進行方向の前方において水平方向に光ビームを投射し、被処理基板上の異物もしくは当該異物によって前記基板がステージから持ち上げられた異常状態を検出することができる光学的な検出手段を採用したスリットコート式塗布装置について提案しており、これは特許文献2に開示されている。
【特許文献2】特開2007−85960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記特許文献2に示された光学式の異物検出装置においては、ステージ上に載置された被処理基板の上面に沿って例えばレーザ光等の光ビームを投射する投光部、および前記光ビームを受光する受光部(カメラ)とを含む光透過型センサユニットが採用され、前記光ビームの受光出力と、前記受光出力の単位時間における変化量(微分値)が所定値以上であるか否かを判断する検出手段が用いられている。
【0010】
前記したように特に受光出力の微分値を利用して異物を検出するようにした構成によると、異物の検出精度を高めることができるので、これを特許文献2に開示されたスリットコート式塗布装置に採用することで、塗布装置の稼働率を向上させることに寄与できる。
【0011】
しかしながら前記したように、たとえレーザ光等の光ビームを利用しても、空間に光を投射した場合、空気密度の変化による光の屈折の影響を皆無にすることはできず、また基板が載置されるステージと処理液供給ノズル等との相対移動による微振動の影響を受けて、異物の検出判定においてその精度を上げるには限界が生ずるなど、異物の検出判定手段においては改良の余地が残されている。
【0012】
そこで、この発明は異物の相対移動方向、換言すれば光透過型センサユニットの相対移動方向において、複数のエリアに別けて光学的な異物検出を行い、履歴を追ってデータを集計することで、異物に対する反応感度を向上せしめ、異物の有無の判定についてより高い精度を確保することができる光学式の異物検出装置およびこれを搭載した処理液塗布装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる好ましい光学式異物検出装置は、ステージ上に載置された被処理基板の上面に沿って光ビームを投射する投光部、および前記光ビームを受光する受光部とを含む光透過型センサユニットと、前記センサユニットを被処理基板に対して相対移動させることで、前記光ビームの光軸が被処理基板の上面に沿って平行に走査されるようになされる相対移動手段とを備えた光学式異物検出装置であって、前記相対移動手段による前記センサユニットの相対移動方向に沿って複数の検査エリアが設定され、前記各検査エリアごとにおける前記光ビームの受光量を、あらかじめ定められたサンプルタイミングごとに測定して、各検査エリアごとにおける前記受光量の情報を得る第1手段と、前記第1手段により得られた前記各検査エリアごとにおける受光量の情報と、前記サンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報との差分をそれぞれ演算し、各検査エリアごとの前記差分値を得る第2手段と、前記第2手段により得られた各検査エリアごとの前記差分値より、前記センサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた前記差分値をそれぞれ引き出し、当該各差分値を乗算する第3手段と、前記第3手段によって得られた乗算出力の絶対値に応じて、異物の存否を判定する第4手段とを具備した点に特徴を有する。
【0014】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる他の好ましい光学式異物検出装置は、ステージ上に載置された被処理基板の上面に沿って光ビームを投射する投光部、および前記光ビームを受光する受光部とを含む光透過型センサユニットと、前記センサユニットを被処理基板に対して相対移動させることで、前記光ビームの光軸が被処理基板の上面に沿って平行に走査されるようになされる相対移動手段とを備えた光学式異物検出装置であって、前記相対移動手段による前記センサユニットの相対移動方向に沿って複数の検査エリアが設定され、前記各検査エリアごとにおける前記光ビームの受光量を、あらかじめ定められたサンプルタイミングごとに測定して、各検査エリアごとにおける前記受光量の情報を得る第1手段と、前記第1手段により得られた前記各検査エリアごとにおける受光量の情報と、前記サンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報との差分をそれぞれ演算し、各検査エリアごとの前記差分値を得る第2手段と、前記第2手段により得られた各検査エリアごとの前記差分値より、前記センサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた前記差分値をそれぞれ引き出し、当該各差分値を加算する第3手段と、前記第3手段によって得られた加算出力の絶対値に応じて、異物の存否を判定する第4手段とを具備した点に特徴を有する。
【0015】
この場合、前記第1手段において得られる前記受光量の情報は、前記サンプルタイミングごとに得られる前記光ビームの受光量を、リファレンス値との比較による割合で示した値を用いることが望ましい。
【0016】
加えて、この発明にかかる光学式異物検出装置の好ましい実施の形態においては、前記センサユニットの相対移動方向に沿って、3もしくは4つの検査エリアが設定され、かつ前記サンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報として、5サンプルタイミング前の受光量の情報を利用するように構成される。
【0017】
一方、この発明にかかる処理液塗布装置においては、ステージ上に載置された前記被処理基板に対峙して相対的に移動し、前記被処理基板に向かって処理液を吐出することで、処理液を前記基板の表面に塗布する処理液供給ノズルが備えられ、前記被処理基板に対して相対移動する処理液供給ノズルの移動方向の前方に、前記した光学式異物検出装置を搭載することで、処理液供給ノズルを前記相対移動手段として利用するように構成した点に特徴を有する。
【0018】
この場合、前記処理液供給ノズルには、前記基板の幅方向に延びるスリット状吐出開口が備えられ、処理液供給ノズルのスリット状吐出開口から帯状に吐出される処理液を前記基板の表面に塗布するように構成され、前記スリット状吐出開口の長手方向に平行するように、かつ前記基板の直近に沿って前記光ビームが投射されるように前記センサユニットを配置した構成とすることが望ましい。
【0019】
さらに、好ましい実施の形態においては、前記光学式異物検出装置により異物の存在を検知した場合において、前記基板に対する処理液供給ノズルの相対移動が停止されるように構成される。
【発明の効果】
【0020】
前記した光学式異物検出装置によると、光透過型センサユニットの相対移動方向に沿って複数の検査エリアが設定され、前記センサユニットにより得られる検査エリアごとにおける受光量の情報とサンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報との差分、すなわち単位時間における受光量の変化に相当する微分値が演算される。
【0021】
加えて、各検査エリアごとの前記差分値(微分値)より、前記センサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた差分値が引き出される。そして、第1の好ましい手段においては前記した順次1サンプルタイミングがずれた差分値を乗算するようになされる。また、第2の好ましい手段においては前記した順次1サンプルタイミングがずれた差分値を加算するようになされる。
【0022】
これにより、たとえ一つの検査エリアにおいて異物の検出に誤差が生じても、他の検査エリアにおける検査データ(微分値)の乗算もしくは加算により、確実に異物の存在を検出することができる。したがって、異物に対する反応感度を遥かに向上させることができ、異物の有無の判定についてより高い精度を確保することができる異物検出装置を提供することが可能となる。
【0023】
そして、前記した異物検出装置を処理液供給ノズルに搭載した処理液塗布装置によると、処理基板に対する処理液供給ノズルの相対移動にしたがって、その移動方向の前方における基板上の異物を感度よく検知することができる。この検知に基づいて、前記基板に対する処理液供給ノズルの相対移動を停止させるように制御することで、基板および処理液供給ノズルに損傷を与える問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明にかかる光学式異物検出装置とこれを搭載した処理液塗布装置について説明するが、先ずは処理液塗布装置の全体構成について説明し、後に前記塗布装置に搭載した光学式の異物検出装置の詳細な構成について説明することにする。
【0025】
図1および図2は処理液塗布装置の主要部を互いに断面図で示したものである。すなわち、図1は図2におけるB−B線より矢印方向に見た状態の断面図で示し、また図2は図1におけるA−A線より矢印方向に見た状態の断面図で示している。
【0026】
図1および図2において、符号1は被処理基板としての例えば方形状のガラス基板を示しており、符号2は前記ガラス基板1を水平状態に載置し、例えば負圧によりこれを吸着保持する載置台(ステージ)を示している。符号11は処理液供給ノズルを示しており、このノズル11は外観が概ね直方体状に形成され、その上端部に処理液供給口11aが形成されると共に、その下端部にはスリット状の処理液吐出開口11bが形成されている。
【0027】
この図1および図2に示す実施の形態においては、処理液供給ノズル11は固定状態になされ、ガラス基板1を水平状態に載置したステージ2が、図1に白抜きの矢印Cで示す方向に移動するように構成されている。そして、前記ノズル11の先端部(図に示す下端部)と、ガラス基板1との間で、ほぼ100μm程度の間隔をもってステージ2が移動しつつ、ノズル11のスリット状開口11bより処理液Rを線状に吐出することで、ガラス基板1上に処理液Rを帯状に塗布するように動作する。
【0028】
前記処理液供給ノズル11の相対移動方向の前方における側壁には、ホルダ部材12が取り付けられている。このホルダ部材12は前記ノズル11におけるスリット状開口11bの長手方向の寸法よりもさらに長い寸法の例えば柱状の部材により形成されている。そして、ホルダ部材12の両端部には、投光部5および受光部6がそれぞれ向き合うようにして取り付けられ、これにより光透過形センサユニットを構成している。
【0029】
図2に示したように前記投光部5および受光部6は、これらを結ぶ直線、すなわち光軸(光ビーム)4が処理液供給ノズル11におけるスリット状吐出開口11bの長手方向と平行となるように、かつ前記ノズル11の相対移動方向の前方に位置するように前記ホルダ部材12に取り付けられている。
【0030】
前記投光部5より投射される光ビーム4としては、例えば670nm程度の波長を有するレーザビームが用いられる。そして、前記光ビーム4の光軸は基板1の上面に沿って平行に、すなわちこの実施の形態においては基板1の上面における約50μmの位置を通るように設定され、前記光ビーム4は基板1の水平移動に伴い、基板1の上面に沿って走査される。
【0031】
図3は、前記図1および図2に示した構成における特に光学式の異物検出装置の基本作用を説明するものである。すなわち図3(A)はステージ2上に水平状態に載置されたガラス基板1上に異物3が付着している状態を示しており、また(B)はガラス基板1とステージ2との間に異物3が介在されて、基板1の一部が符号1aとして示すように盛り上がり状態にされている例を模式的に示している。
【0032】
そして、前記したスリット状の吐出開口11bは、その長手方向が図3に示す紙面の左右方向に配置された状態になされる。この場合、処理液供給ノズルと前記基板1との間の間隙は、前記したとおり100μm程度になされ、前記光ビーム4は基板1の上面に沿って、その上面における約50μmの位置を通るように調整されている。
【0033】
図3(A)に示す状態においては、投光部5から投射されるレーザビームは、基板1の上面に付着した異物3の影響を受けてレーザビームが遮断されるかもしくは受光部6によって受ける受光量は低減する。また、図3(B)に示す状態においても、投光部5から投射されるレーザビームは基板の盛り上がり部1aの影響を受けて、同様にレーザビームが遮断されるかもしくは受光部6によって受ける受光量は低減する。この作用を利用し、前記受光量を後で詳細に説明する演算処理することで、異物3の存否を精度よく判定することができる。
【0034】
図4は、前記した塗布装置に搭載した光学式異物検出装置の基本形態について説明するものである。この異物検出装置においては前記した投光部5および受光部6よりなる光センサユニットの相対移動方向に沿って複数の検査エリアが設定されている。すなわち、図4に示す例においては、エリア1〜エリア4の4つの検査エリアが設定されている。そして図4には基板の一部に異物3が付着している場合について例示しており、光センサユニットの相対移動に伴い、前記異物3はエリア1からエリア4に向かって移動することになる。
【0035】
ここで、前記したステージ2および基板1は、等速度で水平移動することになり、その速度は例えば100mm/sec程度になされる。そして前記光センサユニットは、前記各検査エリアごとの前記光ビームの受光量を、あらかじめ定められたサンプルタイミング(一例として、10msec)ごとに測定して、各検査エリアごとにおける前記受光量の情報を得るようになされる。
【0036】
この場合、光センサユニットを構成する前記受光部6には、例えばCCDによる光電変換素子が用いられており、これにより得られる受光信号は、あらかじめ基板の処理開始時に得た受光信号をリファレンス値とし、このリファレンス値との比較による割合、すなわち“%”(パーセント)で示した値を得るようになされる。
【0037】
図5は、その一例について示したものであり、異物3が存在する部分における実データの一部を抜粋した例を示している。すなわち、t0011〜t0028は抜粋されたサンプルタイミングを示しており、これは一例として前記したとおり、10msec間隔になされている。そしてサンプルタイミングごとに検査エリア1〜4における受光量を取得し、これを前記したとおりリファレンス値との比較による“%”値でメモリに書き込むようにされる(第1手段)。
【0038】
例えば、図5に示すサンプルタイミング“t0017”におけるエリア1の数値S1は“51.45114”と示されており、これは前記したリファレンス値に対して約半分の受光量であることを示している。そして、次に示すサンプルタイミング“t0018”におけるエリア2の数値S2は“56.13845”と示されており、前記した相対移動により異物3はエリア2に存在していることが示されている。
【0039】
前記した状況は、次のサンプルタイミング“t0019”におけるエリア3の数値S3にも現れ、さらに次のサンプルタイミング“t0020”におけるエリア4の数値S4にも同様に現れている。
【0040】
前記したサンプルタイミングごとの各エリアにおける数値S1〜S4は、いわば検査エリアごとにおける受光量の情報を示すものである。そこで、この実施の形態においては、各検査エリアごとにおける受光量の情報と、前記サンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報との差分をそれぞれ演算するようになされる。すなわち、単位時間における受光量の変化に相当する微分値が演算される。
【0041】
前記微分値を得るために、この実施の形態においては、5サンプルタイミング前の同一検査エリアの受光量の情報を利用するようにしている。すなわち、前記したサンプルタイミング“t0017”においてエリア1の数値S1が取得された場合には、これよりも5サンプルタイミング前である“t0012”の同一検査エリアであるエリア1の数値S1、すなわち“75.81424”との差分が演算され、その差分値である“−24.3631”がエリア1微分値として書き込まれる。
【0042】
同様の手順により、エリア2〜4の各数値S2〜S4が順に得られると同時に、それぞれ5サンプルタイミング前の同一検査エリアの受光量の情報との比較が順になされ、それぞれエリア1〜4の微分値として書き込まれる(第2手段)。
【0043】
なお、この実施の形態においては前記した各微分値を得る際に、5サンプルタイミング前の同一検査エリアの受光量の情報との比較(差分検出)するようになされるが、これは原理的には1サンプルタイミング前のものでも、2サンプルタイミング前のものでもよい。ただし、直近のデータとの比較を行うと、異物3の大きさ、前記相対速度、サンプルタイムのインターバルなどのパラメータよっては、その変化率(微分値)を大きくとることができない場合がある。したがって、幾つのサンプルタイミング前の受光量の情報と比較するかについては、前記したパラメータに応じて、チューニングする必要がある。
【0044】
この発明にかかる光学式異物検出装置の好ましい第1の実施の形態(請求項1に記載)においては、前記した手順によりエリア1〜4の各微分値が得られた時に、前記センサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた前記差分値(微分値)をそれぞれ引き出し、当該4つの差分値を乗算する演算がなされる。例えば、サンプルタイミング“t0020”において、エリア4の数値S4が取得された場合には、その微分値(“−21.5195”)をエリア4の微分値として得ることができる。
【0045】
この微分値が得られた場合には、“演算1(乗算)=エリア4の微分値×エリア3の1サンプルタイミング前の微分値×エリア2の2サンプルタイミング前の微分値×エリア1の3サンプルタイミング前の微分値”の演算がなされる。すなわち、図5に太い斜め矢印で示した4つの微分値を乗算することにより、一例としてサンプルタイミング“t0020”において、その演算値として“703962.4994”を得ることができる(第3手段)。
【0046】
なお、図6は基板上に異物3が存在する部分における図5に示す実データを用いて描いた線図であり、aがこの第1の実施の形態に基づく特性線図である。またcは例えばエリア1の微分値のみを利用したいわば前記した従来のものの特性を示しており、dは受光量の単純な変化特性を示している。
【0047】
図6に示した線図から理解できるように、前記“演算1(乗算)”によって得られた乗算出力の絶対値を参照し、これをあらかじめ定められたしきい値と比較することにより異物の存否を判定することができる(第4手段)。すなわち、図6に示した特性線図aに示す例においては、前記“演算1(乗算)”によって得られた数値が、例えば±200程度に設定したしきい値を超える場合において、異物3が存在するものと判定することができる。
【0048】
この実施の形態による光学式異物検出装置によると、例えば異物の相対移動履歴に沿って、各検査エリアに対応した微分値が乗算されることになる。したがって、たとえ一つの検査エリアにおいて異物の検出に誤差が生じても、他の検査エリアにおける検査データ(微分値)の乗算により、確実に異物の存在を検出することができ、異物に対する反応感度を遥かに向上させることができる。
【0049】
ところで、以上説明した光学式異物検出装置の第1の実施の形態においては、前記したセンサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた差分値(微分値)を乗算する演算がなされるが、前記差分値をそれぞれ加算することでも同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
以下、この発明にかかる光学式異物検出装置の第2の実施の形態(請求項2に記載)について説明する。すなわち、第2の実施の形態においては、前記した第2手段によってエリア1〜4の各微分値が得られた時に、前記センサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた前記差分値(微分値)をそれぞれ引き出し、当該4つの差分値を加算する演算がなされる。
【0051】
すなわち、“演算2(加算)=エリア4の微分値+エリア3の1サンプルタイミング前の微分値+エリア2の2サンプルタイミング前の微分値+エリア1の3サンプルタイミング前の微分値”の演算がなされる。これは、図5に太い斜め矢印で示した4つの微分値を加算することにより、一例としてサンプルタイミング“t0020”において、その加算演算値として“−120.456”を得ることができる(第3手段)。
【0052】
図6には、前記した“演算2(加算)”を実行することにより得られたデータに基づいく特性線図をbとして示している。図6に示した線図bから理解できるように、前記“演算2(加算)”によって得られた出力の絶対値を参照し、これをあらかじめ定められたしきい値と比較することにより異物の存否を判定することができる(第4手段)。すなわち、図6に線図bとして示した例においては、前記“演算2(加算)”によって得られた数値が、例えば±30〜40程度に設定したしきい値を超える場合において異物3が存在するものと判定することができる。
【0053】
この第2の実施の形態による光学式異物検出装置においても、異物の相対移動履歴に沿って、各検査エリアに対応した微分値が加算されることになる。したがって、たとえ一つの検査エリアにおいて異物の検出に誤差が生じても、他の検査エリアにおける検査データ(微分値)の加算により、確実に異物の存在を検出することができ、従来の手段に比較して異物に対する反応感度を遥かに向上させることができる。
【0054】
図7および図8は、前記した第1もしくは第2の異物検出装置を搭載した処理液塗布装置の動作について説明するブロック図およびフローチャートである。この処理液塗布装置においては、図7に示すように例えばCPUを備えた制御手段として機能する上位装置21が備えられている。この上位装置21からの指令により、まずリファレンス要求がなされると、図8のステップS11〜S13に示すようにリファレンス取得の動作が実行される。
【0055】
これには、図8のステップS11に示すように基板がステージ上で搬送され、ステップS12においてリファレンス取得の要求ありと判断された場合、ステップS13に示すようにリファレンス値の取得動作が実行される。
【0056】
このリファレンス値の取得動作においては、図7に示すセンサユニットを構成する受光部6により得られた画像信号が、画像/受光量変換手段22において受光信号に変換される。この受光信号は各検査エリアごとの受光量演算手段23において各エリアごとのリファレンス値として識別され、前記エリアごとのリファレンス値はそれぞれデータ管理機能を果たすメモリ24に書き込まれる。
【0057】
続いて、図8のステップS14に示すように検査要求があるか否かが判定され、検査要求ありと判断されると、ステップS15に示す検査、すなわち異物検出動作が実行される。これには、図7に示す異物検出のために受光部6により得られた画像信号が、画像/受光量変換手段22において受光信号に変換され、検査エリアごとの受光量演算手段23に供給される。
【0058】
そして、前記演算手段23においては、前記したリファレンス値が管理されるメモリ24よりリファレンス値を受け取り、このリファレンス値との比較による割合、すなわち前記した“%”(パーセント)で示した前記受光量の情報S1〜S4を得ると共に、この値はメモリ24に書き込まれる。そして、前記値(S1〜S4)は、エリア内履歴差分演算手段25に供給される。
【0059】
前記差分演算手段25は、最新の前記値(S1〜S4)と、過去(5サンプルタイミング前)の同一検査エリアの受光量の情報との差分を演算し、これにより得られた各エリアごとの差分(微分値Dt_1〜Dt_4)は、メモリ26に書き込まれる。前記メモリ26に書き込まれたデータ(微分値Dt_1〜Dt_4)は、図5に基づいて説明したように、順次1サンプルタイミングがずれた4つの差分値を乗算(第1の実施の形態)もしくは加算(第2の実施の形態)する演算がなされ、この乗算もしくは加算値は比較器27に供給される。
【0060】
前記比較器27にはアラームを発する基準となるしきい値設定手段28からのしきい値が供給されており、比較器27は前記しきい値よりも大きなレベルの乗算もしくは加算演算値がもたらされた場合には、前記した上位装置21に対してアラームを出力するように機能する。
【0061】
図8に示す前記した検査ステップS15の実行中において、ステップS16に示すようにアラームの発生が監視されており、アラームが発生せずにステップS17に示すように基板の全面にわたる異物検出の検査が終了すれば、この異物検出のルーチンは終了する。
【0062】
一方、検査の継続中にステップS16においてアラームありと判定された場合には、図7に示す上位装置21はこれを受けて、ステップS18に示すように基板の搬送を停止させると共に、ステップS19に示すようにノズル11からの処理液Rの吐出を停止させて、ノズル11を上昇させる動作を実行させる。
【0063】
なお、以上説明した実施の形態においては、被処理基板1を載置したステージ2が水平移動し、処理液供給ノズル11と投光部5および受光部6を含むセンサユニットが固定状態になされているが、これとは逆に、被処理基板1を載置したステージ2が固定状態になされ、処理液供給ノズル11と投光部5および受光部6を含むセンサユニットが被処理基板上を移動するように構成されていても同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
また、以上説明した光学式異物検出装置においては、前記したセンサユニットの相対移動方向に沿って、4つの検査エリアを設定しているが、この数は4つに限られることはなく、適宜複数の検査エリアを設定することができる。すなわち、検査エリアの数が多くなるほど、異物に対する反応感度を上げることができるものの、演算に時間を要することになる。したがって、検査エリアの数は異物に対する反応感度と、許される演算時間との関係で決定されることになり、前記した理由により前記検査エリアの数は好ましくは3〜4に設定される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明にかかる処理液塗布装置は、先に説明したLCD基板に対して例えばレジスト液を塗布する場合の塗布装置に限らず、半導体ウエハやプリント基板、その他の電子ディバイスの製造分野、またはその他の分野において採用されるスリットコート式塗布装置等に好適に採用することができる。また、この発明にかかる光学式異物検出装置は、前記した処理液塗布装置に採用されるのみならず、特に平面状になされた基板面を監視する必要のある自動機等に好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明にかかる処理液塗布装置の実施の形態を示した断面図である。
【図2】図1におけるA−Aから見た状態の断面図である。
【図3】図1および図2に示した処理液塗布装置に搭載された光透過形センサユニットの作用を説明する模式図である。
【図4】この発明にかかる光学式異物検出装置の基本形態について説明する模式図である。
【図5】異物の存否を判定するための処理演算を説明する表図である。
【図6】図5に示す表図から得られる異物の検出状況を説明する線図である。
【図7】異物検出装置を搭載した処理液塗布装置の全体構成を説明するためのブロック図である。
【図8】同じく動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 被処理基板(ガラス基板)
1a 基板の盛り上がり部
2 載置台(ステージ)
3 異物
4 光軸(光ビーム)
5 投光部
6 受光部(カメラ)
11 処理液供給ノズル
11a 処理液供給口
11b 処理液吐出開口
R 処理液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上に載置された被処理基板の上面に沿って光ビームを投射する投光部、および前記光ビームを受光する受光部とを含む光透過型センサユニットと、前記センサユニットを被処理基板に対して相対移動させることで、前記光ビームの光軸が被処理基板の上面に沿って平行に走査されるようになされる相対移動手段とを備えた光学式異物検出装置であって、
前記相対移動手段による前記センサユニットの相対移動方向に沿って複数の検査エリアが設定され、前記各検査エリアごとにおける前記光ビームの受光量を、あらかじめ定められたサンプルタイミングごとに測定して、各検査エリアごとにおける前記受光量の情報を得る第1手段と、
前記第1手段により得られた前記各検査エリアごとにおける受光量の情報と、前記サンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報との差分をそれぞれ演算し、各検査エリアごとの前記差分値を得る第2手段と、
前記第2手段により得られた各検査エリアごとの前記差分値より、前記センサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた前記差分値をそれぞれ引き出し、当該各差分値を乗算する第3手段と、
前記第3手段によって得られた乗算出力の絶対値に応じて、異物の存否を判定する第4手段と、
を具備したことを特徴とする光学式異物検出装置。
【請求項2】
ステージ上に載置された被処理基板の上面に沿って光ビームを投射する投光部、および前記光ビームを受光する受光部とを含む光透過型センサユニットと、前記センサユニットを被処理基板に対して相対移動させることで、前記光ビームの光軸が被処理基板の上面に沿って平行に走査されるようになされる相対移動手段とを備えた光学式異物検出装置であって、
前記相対移動手段による前記センサユニットの相対移動方向に沿って複数の検査エリアが設定され、前記各検査エリアごとにおける前記光ビームの受光量を、あらかじめ定められたサンプルタイミングごとに測定して、各検査エリアごとにおける前記受光量の情報を得る第1手段と、
前記第1手段により得られた前記各検査エリアごとにおける受光量の情報と、前記サンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報との差分をそれぞれ演算し、各検査エリアごとの前記差分値を得る第2手段と、
前記第2手段により得られた各検査エリアごとの前記差分値より、前記センサユニットの相対移動履歴に対応した検査エリア順に、順次1サンプルタイミングがずれた前記差分値をそれぞれ引き出し、当該各差分値を加算する第3手段と、
前記第3手段によって得られた加算出力の絶対値に応じて、異物の存否を判定する第4手段と、
を具備したことを特徴とする光学式異物検出装置。
【請求項3】
前記第1手段において得られる前記受光量の情報は、前記サンプルタイミングごとに得られる前記光ビームの受光量を、リファレンス値との比較による割合で示した値であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された光学式異物検出装置。
【請求項4】
前記センサユニットの相対移動方向に沿って、3もしくは4つの検査エリアが設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された光学式異物検出装置。
【請求項5】
前記サンプルタイミング単位の過去の同一検査エリアの受光量の情報として、5サンプルタイミング前の受光量の情報を利用するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された光学式異物検出装置。
【請求項6】
ステージ上に載置された前記被処理基板に対峙して相対的に移動し、前記被処理基板に向かって処理液を吐出することで、処理液を前記基板の表面に塗布する処理液供給ノズルが備えられ、
前記被処理基板に対して相対移動する処理液供給ノズルの移動方向の前方に、前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された光学式異物検出装置を搭載することで、前記処理液供給ノズルを前記相対移動手段として利用するように構成したことを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項7】
前記処理液供給ノズルには、前記基板の幅方向に延びるスリット状吐出開口が備えられ、処理液供給ノズルの前記スリット状吐出開口から帯状に吐出される処理液を前記基板の表面に塗布するように構成され、前記スリット状吐出開口の長手方向に平行するように、かつ前記基板の直近に沿って前記光ビームが投射されるように前記センサユニットが配置されていることを特徴とする請求項6に記載された処理液塗布装置。
【請求項8】
前記光学式異物検出装置により異物の存在を検知した場合において、前記基板に対する処理液供給ノズルの相対移動が停止されるように構成したことを特徴とする請求項6または請求項7に記載された処理液塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−78348(P2010−78348A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244081(P2008−244081)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】