説明

光学接続部品の製造装置

【課題】光伝送媒体の端面にのみ屈折率整合体を再現性よく設けると共にコストダウンを図ることができる光学接続部品の製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置20は、光ファイバ2をホルダ22を介して保持すると共にこれを帯電させる静電チャック(媒体帯電手段)21と、光ファイバ2の一端側で液状屈折率整合体12を保持する保持装置(整合体保持手段)26と、光ファイバ2の端面と液状屈折率整合体12の液面とを近接離反させる移動機構(相対移動手段)29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバ(光伝送媒体)の端部に、他部品との光学接続を行うための光コネクタを設けることがある。この光コネクタを光ファイバの端部に取り付ける際には、該光コネクタのフェルール内に挿通された内蔵光ファイバの端面と前記光ファイバの端面との間に屈折率整合体を介在させることが多い。この屈折率整合体としては、両光ファイバ端面に塗布等する液状又はグリス状のものや(特許文献1,2)、両光ファイバ端面に挟まれるフィルム状のもの(特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−65512号公報
【特許文献2】特開平5−157943号公報
【特許文献3】特開2005−173575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記前者のものは、温度や振動等の影響により屈折率整合体の機能を損ねるという問題がある。また、後者のものは、固形の屈折率整合体を挟み込む際の圧力調整が困難であり、両光ファイバに折れや破損が生じるという問題がある。
【0005】
さらに、本出願人が近年提案した技術として、ゲル状の粘着性屈折率整合体をシート状に形成し、該屈折率整合体に光ファイバの端面を押し当て、該端面に屈折率整合体を付着させた状態でこれを切り離すというものがあるが、この場合、光ファイバを屈折率整合体から引き離す際に光ファイバが破損したり、光ファイバ側面に屈折率整合体が付着して光コネクタに組み込む際の芯出し精度に影響を与えるという問題がある。また、光ファイバ端面に付着した屈折率整合体の形状ばらつき、及び光ファイバ端面と屈折率整合体との間への空気の混入等を抑制して再現性を向上させるには、工程が複雑化してコストアップにつながるという問題がある。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、光伝送媒体の端面にのみ屈折率整合体を再現性よく設けると共にコストダウンを図ることができる光学接続部品の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造装置において、前記光伝送媒体を帯電させる媒体帯電手段と、液状屈折率整合体を保持する整合体保持手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記光伝送媒体の端面と前記液状屈折率整合体の液面とを近接離反させる相対移動手段を備えることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記媒体帯電手段が、電極と誘電体とで構成された静電誘電装置であり、該静電誘電装置が前記光伝送媒体を帯電させた状態で保持することを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記媒体帯電手段が、前記光伝送媒体を帯電させた状態で保持する静電チャックであることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、前記媒体帯電手段が、前記光伝送媒体を帯電させた状態で保持する摩擦帯電装置であることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、前記整合体保持手段が、前記液状屈折率整合体を付着させる保持機構と、該保持機構に前記液状屈折率整合体を供給する供給器とを有してなることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、前記保持機構が保持壁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1,2に記載した発明によれば、光伝送媒体の端面と液状屈折率整合体の液面とを相対的に近接させて、光伝送媒体端面にのみ液状屈折率整合体を吸着させた後に、該液状屈折率整合体を固化させて屈折率整合体とすることで、光伝送媒体の厳密な位置合わせ等を不要にして工程を簡素化すると共に、光伝送媒体端面と屈折率整合体との間への空気の混入等を効果的に防止することができる。
また、光伝送媒体端面にのみ屈折率整合体が形成されることで、該光伝送媒体を光コネクタに組み込む際の芯出し精度を確保できるため、互いに接続される光伝送媒体間の良好な光学接続を実現することができる。
さらに、光伝送媒体の帯電量及び液状屈折率整合体の液面に対する移動量、並びに液状屈折率整合体の粘度を調整することで、光伝送媒体端面に対する液状屈折率整合体の吸着量を調整することが可能となり、屈折率整合体の形状や厚みを安定させ易くなるため、光伝送媒体端面に屈折率整合体を再現性よく設けると共に、工程の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
請求項3,4,5に記載した発明によれば、光伝送媒体を載置するのみでその帯電及び保持を行うことが可能となり、装置自身及び工程の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
請求項6,7に記載した発明によれば、液状屈折率整合体の液面を常時新規に保つことができ、液面の固化等を防止して液状屈折率整合体を光伝送媒体の端面に良好に吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施例における屈折率整合体付き光ファイバ等の長手方向に沿う断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】上記屈折率整合体付き光ファイバに他の光ファイバを接続した際の各ファイバの長手方向に沿う断面図である。
【図4】上記屈折率整合体付き光ファイバの製造装置の側面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】上記製造装置を用いて光ファイバの端面に液状屈折率整合体を吸着させる際の図4に相当する側面図である。
【図7】上記光ファイバの端面に液状屈折率整合体が吸着した後の図4に相当する側面図である。
【図8】上記実施例の変形例を示す図4の一部に相当する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1に示す光ファイバ(光伝送媒体)2は、例えば石英やプラスチック等の材料からなる既存のもので、所定長さにカットされてその前半部分が光コネクタ3のフェルール4内に挿通保持されると共に、その前端面がフェルール4の前端面4aと面一をなすように研磨される。このフェルール4をコネクタ本体5前端部に取り付けた状態で、光ファイバ2の後半部分がコネクタ本体5内に挿通保持される。以下、光ファイバ2を内蔵光ファイバということがある。
【0011】
図2を併せて参照し、コネクタ本体5は、V溝プレート6及び押さえプレート7を一体的に挟持してなる。V溝プレート6のV溝8の前半部分には、光ファイバ2の後半部分が収容され、該光ファイバ2の側面(外周面)がV溝8の各傾斜面に密接するように、押さえプレート7が光ファイバ2をV溝8の内側に向けて押さえつける。この状態でV溝プレート6及び押さえプレート7がクランプされることで、V溝8に対する光ファイバ2の芯出しがなされる。
【0012】
コネクタ本体5の後部開口からは、当該光コネクタ3の取り付け相手である光ファイバ9(以下、被接続光ファイバということがある)の一端側が挿入され、該光ファイバ9がV溝8の後半部分に収容される。この光ファイバ9は前記光ファイバ2と同一径であり、その側面(外周面)がV溝8の各傾斜面に密接した状態で押さえプレート7によりV溝8の内側に向けて押さえつけられることで、前記光ファイバ2と同芯となるように配置される。なお、両光ファイバ2,9のV溝8内への収容は、コネクタ本体5のクランプを緩めた状態で行われる。
【0013】
ここで、図3を併せて参照し、内蔵光ファイバ2は、その後端面2aに両光ファイバ2,9間の屈折率整合性を有する屈折率整合体11を備えることで、被接続光ファイバ9の前端面9aとの間の良好な光学接続を可能とした屈折率整合体付き光ファイバ(光学接続部品)10として構成される。屈折率整合体11は弾性及び粘着性を有し、両光ファイバ2,9の端面2a,9aに密着すると共にこれらを接合する。これにより、両光ファイバ2,9の端面2a,9aが切断したままの未研磨状態であっても、該両光ファイバ2,9間に屈折率の異なる空気を挟み込むことなく、光信号の良好な伝播を可能としている。
【0014】
上記屈折率整合体11としては、光伝送媒体(上記光ファイバ2,9等)又は光学部品に接触した際、これらに適度なタック性を伴って密着する部材であればよい。好ましくは、光伝送媒体等との間で脱着性を有し、凝集破壊せず、取り外した光伝送媒体等に粘着性物質が付着しない材料がよい。具体的には、高分子材料(例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の各種粘着材料)の使用が好ましい。中でも、耐環境性及び接着性の面から、シリコーン系及びアクリル系が特に好ましい。また、架橋剤、添加剤、軟化剤、粘着調整剤等の添加により適宜に接着力、濡れ性を調節してもよく、また耐水性や耐湿性、耐熱性を付加してもよい。
【0015】
また、上記屈折率整合体11において、光伝送媒体等との間の屈折率整合性とは、屈折率整合体11の屈折率と光伝送媒体等の屈折率との近似の程度をいう。したがって、屈折率整合体11の屈折率は、光伝送媒体の屈折率と近いものであれば特に限定されないが、フレネル反射の回避による伝送損失の面からそれぞれの屈折率の差が±0.1以内であることが好ましく、特に0.05以内であることが好ましい。なお、前記光伝送媒体の屈折率と被接続光ファイバ9や光学部品の屈折率との差が大きい場合には、これらの屈折率の平均値と屈折率整合体11の屈折率とが上記範囲内であることが好ましい。
【0016】
さらに、上記屈折率整合体11は、単一の層から構成されている。これは、複数層のもののように異種材料が接する界面が内部に存在しないという意味であり、光の波長オーダで均一に混ざり合った系を排除するものではない。すなわち、上記屈折率整合体11は、粘着性を持つ単一の層からなる極めて単純な構成を有しており、このような単層構造の部材を用いることで、光反射が起きることなく光伝送媒体等を接続でき、低損失な接続を行うことが可能となる。
【0017】
また、光伝送媒体等の面にバリ等があっても屈折率整合体11に傷が付き難く、かつ表面に濡れ性を有することで、光伝送媒体等の面に容易に密着させることができ、しかも表面に接着力を有することで、光伝送媒体等との密着性を保持することができる。その上、光伝送媒体等を密着させる際に過剰な押圧力を加える必要がなく、光伝送媒体の折れや破損等が生じるおそれもない。また、再剥離性を有することで、複数回の着脱を行っても繰り返し使用することも可能である。
【0018】
次に、上記屈折率整合体付き光ファイバ10の製造方法について説明する。
まず、光ファイバ2を後述する静電チャック21により帯電状態で保持する一方、屈折率整合体11を溶媒との混合により溶液(以下、液状屈折率整合体12という)として保持する。そして、帯電により静電気を帯びた光ファイバ2の端面を液状屈折率整合体12の液面(界面)に近接させることで、前記静電気のクーロン力により液状屈折率整合体12の液面が光ファイバ2の端面に吸着され、その後に光ファイバ2と液状屈折率整合体12とを離反させることで、光ファイバ2の端面にのみ液状屈折率整合体12が塗布、転写された状態となり、この状態で液状屈折率整合体12の溶媒を揮発させて溶質のみとすることで、光ファイバ2の端面に弾性を有するゲル状の粘着性屈折率整合体11の被膜が形成され、もって屈折率整合体付き光ファイバ10が構成される。
【0019】
次に、上記屈折率整合体付き光ファイバ10の製造装置20について説明する。
図4に示すように、製造装置20は、光ファイバ2をホルダ22を介して保持すると共にこれを帯電させる静電チャック(媒体帯電手段)21と、光ファイバ2の一端側で液状屈折率整合体12を保持する保持装置(整合体保持手段)26と、光ファイバ2の端面と液状屈折率整合体12の液面とを近接離反させる移動機構(相対移動手段)29とを備える。なお、ホルダ22を設けずに静電チャック21上に直接あるいは適宜ギャップを設けて光ファイバ2を載置してもよい。なお、図8のように、ホルダ22と静電チャック21を可動ステージ31の上に並置し、光ファイバ2と静電チャック21の間にギャップが存在するような構成にしてもよい。ギャップの大きさは100μm〜200μm程度が好ましい。
【0020】
図5を併せて参照し、静電チャック21は、プリント電極シート23aを例えばポリアミド等の誘電体で被覆してなる電極シート板23を、金属基板24上に高絶縁性接着剤25を介して接着した静電誘電装置として構成され、この静電チャック21上にホルダ22を介して光ファイバ2が配置される。この状態で、プリント電極シート23aに電圧を印加することで、光ファイバ2が帯電状態でホルダ22に保持される。この静電チャック21は、例えば可動ステージ31上に配置されている。
【0021】
保持装置26は、静電チャック21に保持された光ファイバ2の端面との対向面27aを形成する保持壁(保持機構)27と、該保持壁27の対向面27a上に液状屈折率整合体12を供給するディスペンサ(供給器)28とを有してなる。ディスペンサ28は、シリンダ内に貯留される液状屈折率整合体12をノズルを介して対向面27a上に適宜供給する。ディスペンサ28の作動は、例えば不図示の制御回路により電子制御される。この保持装置26は、例えば固定ステージ32上に配置されている。なお、ここでは液状屈折率整合体12を付着させる保持機構として、装置構成が簡便な保持壁27を用いているが、前記保持機構としては、壁以外にも、角柱又は円柱状の容器や液溜め、あるいは液状屈折率整合体12を付着させる平面状あるいは曲面状のもの等を用いることもできる。
【0022】
移動機構29は前記可動ステージ31側に設けられ、例えばモータ及びボールネジ機構の組み合わせによりフレーム33に対して可動ステージ31を略水平方向に沿って移動させることで、該可動ステージ31をフレーム33に固定された固定ステージ32に対して近接離反させる。移動機構29の作動は、前記制御回路により電子制御される。この移動機構29の作動により、静電チャック21に保持された光ファイバ2の端面と保持壁27に付着した液状屈折率整合体12の液面とが近接離反する。
【0023】
このような構成の製造装置20において屈折率整合体付き光ファイバ10を製造する際には、まず光ファイバ2をホルダ22上に配置し、静電チャック21に電圧を印加して光ファイバ2を帯電状態で保持すると共に、ディスペンサ28を作動させて保持壁27の対向面27aに液状屈折率整合体12を供給して新規の液面を形成する。
【0024】
次いで、図6に示すように、移動機構29の作動により可動ステージ31を固定ステージ32側に移動させ、光ファイバ2の端面2aと対向面27a上の液状屈折率整合体12の液面12aとを近接させる。このとき、光ファイバ2が帯びた静電気のクーロン力により、対向面27a上の液状屈折率整合体12が引き寄せられ、その液面12aが光ファイバ2の端面2aに吸着される。なお、上記では、光ファイバ2を帯電させた後、光ファイバと液状屈折率整合体12を近接させたが、これとは逆に、光ファイバ2と液状屈折率整合体12を近接させた後、光ファイバを帯電させてもよい。
【0025】
その後、図7に示すように、移動機構29の作動により可動ステージ31を固定ステージ32と反対側に移動させ、光ファイバ2の端面2aを対向面27a上の液状屈折率整合体12の液面12aから離反させると、光ファイバ2の端面2aに液状屈折率整合体12が塗布、転写された状態となる。このように形成された液状屈折率整合体12を強制乾燥させて溶媒を揮発させることで、光ファイバ2の端面にのみ屈折率整合体11の被膜が形成された屈折率整合体付き光ファイバ10が構成される。
【0026】
以下、本実施例の製造方法(及び製造装置20)を用いて製造を行った屈折率整合体付き光ファイバ10の一例についてさらに説明する。
まず、光ファイバ2として、古河電工製の外径250μm、クラッド外径125μmの光ファイバ心線を用意し、その一端から20mmの範囲の被覆を除去して光ファイバ素線を剥き出しにした後、前記一端から10mmの部位で光ファイバ素線をカットした。
【0027】
また、液状屈折率整合体12として、上記光ファイバ2に合わせて屈折率を1.46に調整したアクリル系粘着剤を用意した。具体的には、n−ブチルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(配合比=82/15/2.7/0.3)からなるアクリル系樹脂の30%酢酸エチル溶液100部に、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト)1.0部を配合して混合してなる溶液を用意した。なお、液状屈折率整合体12の粘度としては、特に限定されないが0.005〜1Pa・s程度が好ましい。
【0028】
次いで、上記光ファイバ2を古河電工製のホルダ22にセットすると共に、該ホルダ22を静電チャック21上に配置した後、静電チャック21に電圧(約3kV)を印加して静電気を発生させ、ホルダ22上に光ファイバ2を保持すると共に該ホルダ22を介して光ファイバ2を帯電させた。
このように帯電させた光ファイバ2の端面を保持壁27上の液状屈折率整合体12の液面に近接させると、光ファイバ2の端面に液状屈折率整合体12が吸着され、その後に光ファイバ2を液状屈折率整合体12から離反させることで、光ファイバ2の端面に膜厚5〜50μm程度(実測値)の液状屈折率整合体が塗布、転写された。
【0029】
このように、光ファイバ2の端面に液状屈折率整合体12を付着させた後、該光ファイバ2に70℃程度のオーブンで1.5時間程度の加熱を施して液状屈折率整合体12の溶媒を蒸発させることで、光ファイバ2の端面にのみ弾性のある粘着性屈折率整合体11の被膜が形成された。
この屈折率整合体11(実測膜厚15.7μm)とカットしたままの(未研磨の)被接続光ファイバ9の端面とを突き合わせて接続したところ、その反射減衰量は51.4dB、接続損失は0.1〜0.2dBであった。
なお、本実施例では、電界を用いる代表的な静電誘電装置である静電チャック21を用いたが、例えば回転摩擦装置等の摩擦帯電装置を用いても同様である。
【0030】
以上説明したように、上記実施例における屈折率整合体付き光ファイバ10の製造方法は、光ファイバ2を帯電させた状態でその端面を液状屈折率整合体(高分子材料の溶液)12の液面に近接させ、該液状屈折率整合体12を前記光ファイバ2の端面に吸着させた後、該吸着された液状屈折率整合体12を固化させて屈折率整合体11とするものである。
【0031】
この構成によれば、光ファイバ2の端面と液状屈折率整合体12の液面とを相対的に近接させて、光ファイバ2端面にのみ液状屈折率整合体12を吸着させた後に、該液状屈折率整合体12を固化させて屈折率整合体11とすることで、光ファイバ2の厳密な位置合わせ等を不要にして工程を簡素化すると共に、光ファイバ2端面と屈折率整合体11との間への空気の混入等を効果的に防止することができる。
また、光ファイバ2端面にのみ屈折率整合体11が形成されることで、該光ファイバ2を光コネクタ3に組み込む際の芯出し精度を確保できるため、互いに接続される光ファイバ2,9間の良好な光学接続を実現することができる。
【0032】
さらに、光ファイバ2の帯電量及び液状屈折率整合体12の液面に対する移動量、並びに液状屈折率整合体12の粘度を調整することで、光ファイバ2端面に対する液状屈折率整合体12の吸着量を調整することが可能となり、屈折率整合体11の形状や厚みを安定させ易くなるため、光ファイバ2端面に屈折率整合体11を再現性よく設けると共に、工程の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
【0033】
しかも、光ファイバ2端面にのみ屈折率整合体11が設けられることで、その占有範囲が極めて小さくなって設計自由度が向上すると共に、粘着性屈折率整合体11が光ファイバ2の側面を汚すこともなく、かつ周囲からの汚れが付着することもない。また、屈折率整合体11が単一構造であるため、その内部で光の反射が起きることもない。しかも、屈折率整合体11を保持する特別な支持手段を新たに設ける必要がなく、省スペース化が図れ、現行の光コネクタへの取り付けも容易である。
【0034】
また、上記製造方法においては、屈折率整合体11が弾性及び粘着性を有することで、光ファイバ2,9の端面形状に対応して柔軟に変形することとなり、該端面に密着して光ファイバ2,9間の空気の挟み込みを防止し、かつこの密着状態を良好に維持できるため、端面研磨工程を不要とした上で低損失での光学接続が可能となり、かつその復元力により複数回の光学接続を行うことが可能となる。
【0035】
ここで、上記屈折率整合体付き光ファイバの製造装置20においては、光ファイバ2を帯電させる手段として、該光ファイバ2を帯電させた状態で保持する静電チャック21を用いたことで、光ファイバ2を載置するのみでその帯電及び保持を行うことが可能となり、装置自身及び工程の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
【0036】
また、上記製造装置20においては、液状屈折率整合体12を保持する手段が、該液状屈折率整合体12を付着させる保持壁27と、該保持壁27に液状屈折率整合体12を供給するディスペンサ28とを有してなることで、液状屈折率整合体12の液面を常時新規に保つことができ、液面の固化等を防止して液状屈折率整合体12を光ファイバ2の端面に良好に吸着させることができる。
【0037】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、光ファイバ2を帯電させる帯電手段と該光ファイバ2を保持する保持手段とを個別に設けた構成であったり、光ファイバ2端面と液状屈折率整合体12液面との相対移動手段や保持壁27への液状屈折率整合体12の供給手段が手動であったり、光ファイバ2に対して液状屈折率整合体12を移動させる構成であったり、光ファイバ2と液状屈折率整合体12とが例えば垂直方向に沿って近接離反する構成であってもよい。このとき、液状屈折率整合体12を保持する手段が、例えば水平な保持面に液状屈折率整合体12を滴下する構成のものであったり、容器内に液状屈折率整合体12を貯留した構成のものであってもよい。
しかも、多数本の光ファイバ2に対しても一括で均一に液状屈折率整合体12を塗布、転写することも可能である。また、液状屈折率整合体12が屈折率整合体11の溶液であることから、液状屈折率整合体12を固化する際の工程を簡素化してコストダウンを図ることもできる。また、液状屈折率整合体12が光ファイバ2の端面に設けられるので、溶媒の気化性が向上して固化し易くなる。
上記実施例では、光ファイバを予め帯電させたが、液状屈折率整合体を予め帯電させてもよい。また、両者が逆電荷を持つように予め帯電させておいてもよい。また、上記実施例における構成は一例であり、光ファイバ以外の光伝送媒体や光学部品、並びにガラス、セラミック、プラスチック等のファイバ状の誘電体に高分子材料被覆を形成する方法にも適用可能であることはもちろん、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0038】
2 光ファイバ(光伝送媒体)
10 屈折率整合体付き光ファイバ(光学接続部品)
11 屈折率整合体
12 液状屈折率整合体
20 製造装置
21 静電チャック(媒体帯電手段、静電誘電装置)
26 保持装置(整合体保持手段)
27 保持壁(保持機構)
28 ディスペンサ(供給器)
29 移動機構(相対移動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造装置において、前記光伝送媒体を帯電させる媒体帯電手段と、液状屈折率整合体を保持する整合体保持手段とを備えることを特徴とする光学接続部品の製造装置。
【請求項2】
前記光伝送媒体の端面と前記液状屈折率整合体の液面とを近接離反させる相対移動手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項3】
前記媒体帯電手段が、電極と誘電体とで構成された静電誘電装置であり、該静電誘電装置が前記光伝送媒体を帯電させた状態で保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項4】
前記媒体帯電手段が、前記光伝送媒体を帯電させた状態で保持する静電チャックであることを特徴とする請求項3に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項5】
前記媒体帯電手段が、前記光伝送媒体を帯電させた状態で保持する摩擦帯電装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項6】
前記整合体保持手段が、前記液状屈折率整合体を付着させる保持機構と、該保持機構に前記液状屈折率整合体を供給する供給器とを有してなることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項7】
前記保持機構が保持壁であることを特徴とする請求項6に記載の光学接続部品の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−276784(P2009−276784A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193590(P2009−193590)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【分割の表示】特願2006−1087(P2006−1087)の分割
【原出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】