説明

光学活性なフルルビプロフェンの製造方法

【課題】フルルビプロフェンのラセミ体から、所望の絶対配置を有するフルルビプロフェンを、優れた光学純度で効率よく製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】光学活性なフルルビプロフェンを製造するための方法が開示されている。本発明の製造方法は、有機溶媒中に、フルルビプロフェンのラセミ体と、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンとを添加してジアステレオマー塩を得る工程;および該ジアステレオマー塩を第二溶媒中で酸と作用させる工程;を包含する。本発明の方法では、光学分割の手順を複数回繰り返す必要もなく、極めて効率的に所望の絶対配置を有するフルルビプロフェンを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性なフルルビプロフェンを製造するための方法に関し、より詳細には、フルルビプロフェンのラセミ体から光学純度に優れるフルルビプロフェンを効率的に製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルルビプロフェンは、消炎鎮痛剤などの目的で医薬として利用される物質であり、特に(S)−フルルビプロフェンに優れた薬効を有することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
フルルビプロフェンは、ラセミ体の形態で製造されており、このラセミ体は、例えば、光学活性なアミン化合物(より具体的な例としてはα−フェニルエチルアミン)を光学分割剤として用いる光学分割方法により、光学純度の高いフルルビプロフェンを製造し得ることが知られている(例えば、特許文献2および特許文献3)。
【0004】
上記光学分割剤を使用する方法は、フルルビプロフェンのラセミ体を構成する一組の鏡像体が、第三の光学活性物質と作用して生成するジアステレオマーの物理的性質の差を利用するものである。
【0005】
しかし、これらの方法では、得られるフルルビプロフェンの光学純度をより向上させるためには、頻回にわたる分割操作が必要とされる。そのため、所望の光学純度を有するフルルビプロフェンを効率よく製造することが困難であった。
【0006】
ところで、ラセミ体の物質を光学分割する場合、光学分割剤として、どのような対掌体を使用すれば、目的の物質のみと作用して難溶性の結晶を提供するかについて一般則は知られていない。そのため、通常は、光学分割すべき物質に対して、種々の光学分割剤と種々の溶媒とを組み合わせた相当な予備的実験の繰り返しが不可欠であり、好適な光学分割剤の選定は困難を極める。また、上記のように比較的好ましい光学分割剤を見出したとしても、頻回にわたる分割操作が必要とされ、工業的生産性を高める点からもより効率的な光学分割方法の開発が所望されている。
【0007】
【特許文献1】 米国特許第5190981号明細書
【特許文献2】 特開昭54−154724号公報
【特許文献3】 米国特許第4209638号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、フルルビプロフェンのラセミ体から、所望の絶対配置を有するフルルビプロフェンを、優れた光学純度で効率よく製造することができる方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光学活性なフルルビプロフェンを製造するための方法であって、水を含有していてもよい有機溶媒中に、フルルビプロフェンのラセミ体と、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンとを添加してジアステレオマー塩を得る工程;および該ジアステレオマー塩を第二溶媒中で酸と作用させる工程; を包含する、方法である。
【0010】
好ましい実施態様では、上記ジアステレオマー塩を得る工程で(S)−2−フェニルイソブチルアミンが用いられる。
【0011】
好ましい実施態様では、上記水を含有していてもよい有機溶媒は、水を含有していてもよい1個から3個の炭素数を有するアルコール、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される少なくとも1種の溶媒である。
【0012】
好ましい実施態様では、上記水を含有していてもよい有機溶媒は、0.01v/v%から20v/v%の含水率を有する含水溶媒、または0v/v%の含水率を有する溶媒である。
【0013】
好ましい実施態様では、上記第二溶媒は疎水溶媒または水である。
【0014】
本発明はまた、水を含有していてもよい有機溶媒中で、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンと、該2−フェニルイソブチルアミンと同一の絶対配置を有するフルルビプロフェンとを作用させることにより得られる、ジアステレオマー塩である。
【0015】
好ましい実施態様では、フルルビプロフェンおよび2−フェニルイソブチルアミンはともにS−配置を有する。
【0016】
本発明はまた、以下の式(I):
【0017】
【化2】

【0018】
で表されるジアステレオマー塩である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0020】
本発明の光学活性なフルルビプロフェンの製造方法においては、まず、有機溶媒中に、フルルビプロフェンのラセミ体と、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンとが添加され、ジアステレオマー塩が形成される。
【0021】
本発明に用いられるフルルビプロフェンのラセミ体は、当業者に周知の方法により製造され、例えば、米国特許第3755427号明細書または米国特許第3959364号明細書に記載の方法によって製造され得る。なお、本明細書中に用いられる用語「フルルビプロフェンのラセミ体」とは、(S)−フルルビプロフェンと(R)−フルルビプロフェンとの混合物を指していい、(S)−フルルビプロフェンと(R)−フルルビプロフェンとのモル比が50:50である混合物だけでなく、(S)−フルルビプロフェンと(R)−フルルビプロフェンとのモル比が30:70から70:30までの範囲内にある混合物をも包含していう。
【0022】
本発明に用いられる2−フェニルイソブチルアミンは光学分割剤として機能するものであり、(S)−2−フェニルイソブチルアミンまたは(R)−2−フェニルイソブチルアミンのいずれかである。これら(S)−2−フェニルイソブチルアミンまたは(R)−2−フェニルイソブチルアミンは本発明によって製造が所望される光学活性なフルルビプロフェンの絶対配置に応じて選択される。すなわち、上記フルルビプロフェンのラセミ体から、本発明によって(S)−フルルビプロフェンを得たい場合は、(S)−2−フェニルイソブチルアミンが使用され、あるいは本発明によって(R)−フルルビプロフェンを得たい場合は、(R)−2−フェニルイソブチルアミンが使用される。
【0023】
本発明においては、製造される(S)−または(R)−フルルビプロフェンの光学純度を高めるために、光学純度の高い(S)−または(R)−フェニルイソブチルアミンを使用することが好ましい。(S)−2−フェニルイソブチルアミンまたは(R)−2−フェニルイソブチルアミンのいずれにおいても、選択され得る光学純度は、好ましくは70%ee以上であり、より好ましくは80%ee以上であり、さらにより好ましくは90%ee以上である。
【0024】
(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンの使用量は、特に限定されないが、使用される上記フルルビプロフェンのラセミ体1モルに対して、好ましくは0.3モル以上の使用量であり、より好ましくは0.3モル〜1モルであり、さらに光学分割剤の使用量を節約する点を考慮すれば、0.4モル〜0.6モルの範囲に設定されることがさらにより好ましい。
【0025】
本発明において、上記フルルビプロフェンのラセミ体と、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンとを用いたジアステレオマー塩の形成は、有機溶媒中で行われる。
【0026】
本発明に用いられる有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどの低級アルコール;酢酸エチルエステルなどのエステル類;およびイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類;ならびにこれらの組合せが挙げられる。特に、C〜Cアルコール、および/またはトルエンまたはキシレンのような芳香族炭化水素の溶媒を使用することが好ましい。また、本発明に用いられる有機溶媒は、光学純度の高いフルルビプロフェンを製造することができる点から含水溶媒であってもよく、含水率が0vv%である溶媒であってもよい。含水溶媒を使用する場合、含水率は、好ましくは0.01v/v%〜20v/v%、より好ましくは10v/v%〜20v/v%である。本発明に用いられる、水を含有していてもよい有機溶媒(含水溶媒)がこのような範囲の含水率を有していることにより、得られるフルルビプロフェンの光学純度をさらに向上させることができる。本発明においては、10v/v%〜20v/v%の含水率を有するC〜Cアルコールを使用することがさらに好ましい。
【0027】
なお、本発明に用いられる有機溶媒の量は、当業者によって適宜選択され得、特に限定されない。
【0028】
ジアステレオマー塩の形成はより具体的には以下のいずれかにより行われる:すなわち、上記フルルビプロフェンのラセミ体を、例えば、加温下にて上記水を含有していてもよい有機溶媒中に溶解し、その後、この溶液に所定量の(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンを撹拌しながら添加してもよく;(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンを、例えば、加温下にて上記水を含有していてもよい有機溶媒中に溶解し、その後、この溶液に所定量のフルルビプロフェンのラセミ体を撹拌しながら添加してもよく;あるいは、フルルビプロフェンのラセミ体を、例えば、加温下にて上記水を含有していてもよい有機溶媒に溶解させた溶液と、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンを、例えば、加温下にて別の上記水を含有していてもよい有機溶媒に溶解させた溶液とをそれぞれ調製し、その後これらの溶液を1つに撹拌しながら合わせてもよい。なお、上記加温において設定される具体的な温度は、使用する上記水を含有していてもよい有機溶媒の種類によって変化するため特に限定されない。
【0029】
その後、この溶液を徐冷することにより、溶液中の(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンと、当該2−フェニルイソブチルアミンと同一の絶対配置を有するフルルビプロフェンとが作用してジアステレオマー塩が優先的に析出する。
【0030】
本発明において析出するジアステレオマー塩は、例えば、(S)−2−フェニルイソブチルアミンを使用した場合では、当該2−フェニルイソブチルアミンとラセミ体中の(S)−フルルビプロフェンとの、例えば、以下の式(I):
【0031】
【化3】

【0032】
で表される塩である。他方、(R)−2−フェニルイソブチルアミンを使用した場合では、本発明において形成されるジアステレオマー塩は、当該2−フェニルイソブチルアミンとラセミ体中の(R)−フルルビプロフェンとの塩である。
【0033】
上記2つのジアステレオマー塩はいずれも、使用した有機溶媒に対し不溶性であり、その結果、有機溶媒中で析出する。
【0034】
上記ジアステレオマー塩の析出後、この塩は、例えば濾過することにより、容易に取出すことができる。濾取されたジアステレオマー塩は、必要に応じて再結晶を施してもよい。
【0035】
本発明の光学活性なフルルビプロフェンの製造方法においては、次いで、得られたジアステレオマー塩が第二溶媒中で酸と作用させられる。
【0036】
本発明に用いられる第二溶媒は疎水溶媒または水である。疎水性溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチルエステル、エチルエーテル、イソプロピスエーテル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンが挙げられる。疎水性溶媒を用いる場合には、フルルビプロフェンを溶解し得る溶媒量さえ用いれば、特に種類は限定されない。
【0037】
本発明においては、上記第二溶媒にジアステレオマー塩を添加かつ分散させた後、酸が添加される。あるいは、この第二溶媒にジアステレオマー塩を分散させたものを、酸に添加してもよい。
【0038】
本発明に用いられる酸の例としては、(希)塩酸、(希)硫酸、および(希)硝酸が挙げられる。使用される酸の量は特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0039】
酸の添加により、上記ジアステレオマー塩は複分解し、所望の絶対配置を有する光学活性なフルルビプロフェンを得ることができる。
【0040】
その後、得られた光学活性なフルルビプロフェンを取出すための後処理が行われる。
【0041】
まず、上記工程において、第二溶媒として疎水溶媒を使用した場合の後処理について説明する。
【0042】
酸の添加による複分解の後、さらに適切な量の上記と同様の疎水溶媒が反応系内に添加され、抽出が行われる。次いで、油層が取出され、必要に応じて、当業者に公知の手段を用いて水洗および乾燥が行われる。その後、減圧下にて溶媒が除去され、取出された生成物は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの石油系炭化水素でなる溶媒を用いて再結晶してもよい。このようにして、光学純度が高められた所望の光学活性なフルルビプロフェンを得ることができる。
【0043】
次に、上記工程において、第二溶媒として水を使用した場合の後処理について説明する。
【0044】
酸の添加による複分解の後、系内に析出した生成物を濾取することにより、光学純度が高められた所望の光学活性なフルルビプロフェンを得ることができる。
【0045】
本発明を用いて得られる光学活性なフルルビプロフェンは、この一連の工程を経て好ましくは80%ee以上、より好ましくは90%ee以上の光学純度を有する。このことにより、上記一連の工程を繰り返すことなく、極めて効率よく目的の光学活性なフルルビプロフェンを製造することができる。
【0046】
なお、上記酸の添加により複分解の後、系内に残存する他方の絶対配置を有するフルルビプロフェン(例えば、フルルビプロフェンのラセミ体から(S)−フルルビプロフェンを製造した場合の系内に残存する(R)−フルルビプロフェン)は、国際公開第96/23759号パンフレットに記載されるような手法を用いることにより、容易にフルルビプロフェンのラセミ体に再生することが可能である。よって、再生して得られたフルルビプロフェンのラセミ体を用いて、再度、本発明を実施することも可能である。その結果、光学活性なフルルビプロフェンの全体的な収率をさらに高めることもできる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の実施例を記載する。しかし、これによって本発明は特に限定されない。
【0048】
<実施例1>
6mLのトルエン(第一溶媒)に、フルルビプロフェンのラセミ体2g(8.2mmol)と(S)−2−フェニルイソブチルアミン0.67g(4.1mmol)とを添加し、撹拌しながら加熱溶解した。均一な溶液となった後、撹拌下にて放冷した。
【0049】
放冷後、溶液中に結晶が析出した。この析出した結晶を含む状態のままで、溶液を室温で30分間撹拌し、その後結晶を濾別した。得られた結晶をトルエンで洗浄(1mL×3回)し、乾燥して白色結晶(ジアステレオマー塩)を得た。このジアステレオマー塩の収量は1.07g(収率32.1%:使用したフルルビプロフェンのラセミ体に基づく)であり、融点は178.6℃〜180.0 ℃であった。
【0050】
次いで、上記で得られたジアステレオマー塩の一部をトルエンに分散させ、希塩酸を加えて複分解を行った。その後、反応物をトルエンで抽出し、水洗および乾燥した後、減圧下にてトルエンを留去し、残渣をヘキサンで結晶化させることにより、白色の結晶を得た。得られた結晶の旋光度を分析することにより、(S)−フルルビプロフェンであることが確認された。得られた(S)−フルルビプロフェンの光学純度は96.9%eeであった。
【0051】
なお、上記光学純度は、次の条件で測定された:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製)を使用し、移動層としてpH2の 0.2M H3PO4−KH2PO4 緩衝液/アセトニトリル=65/35(容量比)を使用し、流速0.5mL/分とする高速液体クロマトグラフィーにより行った。検出波長はUV254nmとし、温度は室温で行った。
【0052】
<実施例2〜10>
実施例1において第一溶媒として使用したトルエンの代わりに、表1に示される第一溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして(S)−フルルビプロフェンを得た。各実施例において使用した第一溶媒、得られたジアステレオマー塩の収率、および得られた(S)−フルルビプロフェンの光学純度をそれぞれ表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示されるように、実施例2〜10で得られたジアステレオマー塩はいずれも、実施例1のものと同様に高い収率(理論最大値50%)を示し、使用した(S)−2−フェニルイソブチルアミンが効率よく、ラセミ体中の(S)−フルルビプロフェンとの間で塩を形成していることがわかる。さらに、実施例2〜10で得られた(S)−フルルビプロフェンの光学純度も高く、一連の工程を1回行うのみで光学活性を高めることができることもわかる。特に、メタノール(実施例2)、エタノール(実施例3)ならびにこれらの含水溶媒(実施例6および7)を用いた系と、トルエン(実施例1)およびキシレン(実施例10)などの芳香族炭化水素溶媒を用いた系では、医薬品への使用にあたり満足され得る極めて高い光学純度を有する(S)−フルルビプロフェンを製造することができることもわかる。
【0055】
<実施例11>
300mLの90%(vol/vol)イソプロピルアルコール水溶液に、フルルビプロフェンのラセミ体150g(614mmol)と(S)−2−フェニルイソブチルアミン50g(307mmol)とを添加し、撹拌しながら加熱溶解した。その後、この溶液を撹拌下にて室温まで放冷した。
【0056】
放冷後、溶液中に結晶が析出した。次いで、析出した結晶を含む状態で30分間さらに撹拌を行い、結晶を濾取した。得られた結晶を90%(vol/vol)イソプロパノール水溶液で洗浄(30mL×3回)し、乾燥して白色結晶(ジアステレオマー塩)を得た。このジアステレオマー塩の収量は95.4g(収率38.1%:使用したフルルビプロフェンのラセミ体に基づく)であった。
【0057】
次いで、上記で得られたジアステレオマー塩の一部を実施例1と同様にして複分解および結晶化させて、(S)−フルルビプロフェンの結晶を得た。得られた(S)−フルルビプロフェンの光学純度は94.7%eeであった。
【0058】
この(S)−フルルビプロフェンの光学純度を確認した後、再度、上記で得られたジアステレオマー塩の白色結晶80gを、300mLの90%(vol/vol)イソプロピルアルコール水溶液に加え、加熱溶解した後に、撹拌下にて室温まで冷却して再結晶を行った。析出した結晶を含む状態で30分間撹拌した後、結晶を濾取した。得られた結晶を90%(vol/vol)イソプロパノール水溶液で洗浄(30mL×3回)し、乾燥して、再度、白色結晶(精製されたジアステレオマー塩)を得た。この精製されたジアステレオマー塩の収量は75.2g(収率94%:再結晶に供したジアステレオマー塩に基づく)であった。
【0059】
次いで、上記精製されたジアステレオマー塩の一部を実施例1と同様にして複分解および結晶化させて、(S)−フルルビプロフェンの結晶を得た。得られた(S)−フルルビプロフェンの光学純度は、99.5%eeを超えるものであった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、フルルビプロフェンのラセミ体から、より少ない工程で光学純度の高いフルルビプロフェンを製造することができる。本発明の方法では、光学分割の手順を複数回繰り返す必要もなく、極めて効率的に所望の絶対配置を有するフルルビプロフェンを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性なフルルビプロフェンを製造するための方法であって、
水を含有していてもよい有機溶媒中に、フルルビプロフェンのラセミ体と、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンとを添加してジアステレオマー塩を得る工程;および
該ジアステレオマー塩を第二溶媒中で酸と作用させる工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記ジアステレオマー塩を得る工程で(S)−2−フェニルイソブチルアミンが用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水を含有していてもよい有機溶媒が、水を含有していてもよい1個から3個の炭素数を有するアルコール、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される少なくとも1種の溶媒である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水を含有していてもよい有機溶媒が、0.01v/v%から20v/v%の含水率を有する含水溶媒、または0v/v%の含水率を有する溶媒である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第二溶媒が疎水溶媒または水である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
水を含有していてもよい有機溶媒中で、(S)−または(R)−2−フェニルイソブチルアミンと、該2−フェニルイソブチルアミンと同一の絶対配置を有するフルルビプロフェンとを作用させることにより得られる、ジアステレオマー塩。
【請求項7】
フルルビプロフェンおよび2−フェニルイソブチルアミンがともにS−配置を有する、請求項6に記載のジアステレオマー塩。
【請求項8】
以下の式(I):
【化1】

で表されるジアステレオマー塩。

【公開番号】特開2006−335639(P2006−335639A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−14520(P2003−14520)
【出願日】平成15年1月23日(2003.1.23)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】