説明

光学活性化合物の製造方法

【課題】光学活性β−ジアリールカルボニル化合物の、高収率、高選択性な製法の提供。
【解決手段】一般式(I)のα,β−不飽和−β−アリールカルボニル化合物と、一般式(II)Ar−BXのアリールボロン酸とを、一般式(IV)PdY(Chiraphos)のパラジウム錯体触媒の存在下で反応させ、一般式(V)の光学活性β−ジアリールカルボニル化合物を製造する。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学活性β-ジアリールカルボニル化合物からなる光学活性化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性β‐ジアリールカルボニル化合物は、医農薬分野等で中間体として有用な化合物である。例えば、光学活性β‐ジアリールカルボニル化合物の分子内環化体であるクロマノール誘導体から、天然生物活性物質である4H-クロメンを容易に合成することができる。
【0003】
従来、β−ジアリールカルボニル化合物の製造方法として、ロジウム触媒の存在下、アリール金属反応剤とα,β−不飽和カルボニル化合物を反応させる方法が報告されている(非特許文献1)。しかし、この方法では光学活性化合物は合成されていない。又、光学活性β−ジアリールカルボニル化合物の製造方法として、ロジウム化合物に光学活性ホスホロアミダイト化合物を加えたロジウム触媒の存在下、アリール金属反応剤をα,β−不飽和エノンと反応させて製造する方法が報告されている(非特許文献2、3)。しかし、この方法の場合、収率、選択性共に実用的ではない。 一方、クロメン類の製造法として、パラジウム触媒を用い、アリール水銀化合物をα,β-不飽和ケトンへ共役付加させる方法が知られている(非特許文献4)。しかし、この方法は、水銀化合物を使用する点で好ましくなく、又、光学活性クロメン類の合成はなされていない。
【0004】
ところで本発明者らは、β‐ジアリールカルボニル化合物の製造法ではないが、パラジウム錯体触媒を用いて電子吸引性基置換化合物(マイケル付加物)を製造する方法を報告している(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004-315457号公報
【非特許文献1】S. Oi, M. Moro, H. Ito, Y. Honma, S. Miyano, Y. Inoue, Tetrahedron 2002, 58, 91.
【非特許文献2】J.-G. Boiteau, R. Imbos, A. J. Minnaard, B. L. Feringa, Organic Letters 2003, 5, 681.
【非特許文献3】A. Duursma, R. Hoen, J. Schuppan, R. Hulst, A. J. Minnaard, B. L. Feringa, Organic Letters 2003, 5, 3111.
【非特許文献4】S. Cacchi, D. Misiti, G. Palmieri, J. Org. Chem. 1982, 47, 2995.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、光学活性β-ジアリールカルボニル化合物を高収率、高選択性で製造する方法について鋭意検討した結果、上記特許文献1記載の技術において、パラジウム触媒として特定のものを用いることを見出した。 すなわち、本発明は、光学活性β-ジアリールカルボニル化合物を高収率、高選択性で製造できる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明の光学活性化合物の製造方法は、一般式(I)
【化1】

(式中Arは置換または無置換のアリール基を表し、R,Rはそれぞれ同一又は異なっていても良い水素又はアルキル基を表し、Eはホルミル基又はアシル基を表す。)で表されるα,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物と、一般式(II)Ar2-BXmMnで表されるアリールボロン酸若しくはその誘導体、又は一般式(III)
【化2】

(式II及びIII中、Arは置換または無置換のアリール基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基、又はフッ素原子を示し、mは1から3の整数であり、Mはアルカリ金属であり、nは0または1の整数である。)で表されるアリールボロン酸無水物とを、一般式(IV)PdYoL1p(Chiraphos)q(式IV中、YはClO4、BF4、PF6、SbF6、OTf、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基を表し、Lは有機配位子を表し、o,p,qはそれぞれ0から6の整数を表す。)で表されるパラジウム錯体触媒の存在下で反応させ、一般式(V)
【化3】

(式V中、Ar、Ar2、R1,R2及びEはそれぞれ式I〜IVに用いた置換基と同一である)で表される光学活性β‐ジアリールカルボニル化合物を製造することを特徴とする。
【0008】
又、本発明の光学活性化合物の製造方法は、一般式(VI)
【化4】

(式VI中、R,Rはそれぞれ同一又は異なっていても良い水素又はアルキル基を表し、R3は水素、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R4は塩素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルチオ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいベンゾイル基、炭素数2から8のアルコキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいアミノ基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいカルバモイル基、ニトロ基、炭素数1から8のフルオロアルキル基、又は炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシ基を表す。)で表されるα,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物と、一般式(II)Ar2-BXmMnで表されるアリールボロン酸若しくはその誘導体、又は一般式(III)
【化2】

(式II及びIII中、Arは置換または無置換のアリール基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基、又はフッ素原子を示し、mは1から3の整数であり、Mはアルカリ金属であり、nは0または1の整数である。)で表されるアリールボロン酸無水物とを、一般式(IV)PdYoL1p(Chiraphos)q(式IV中、YはClO4、BF4、PF6、SbF6、OTf、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基を表し、Lは有機配位子、Lは光学活性ホスフィン配位子を示す。o,p,qはそれぞれ0から6の整数を表す。)で表されるパラジウム錯体触媒の存在下で反応させ、一般式(VII)
【化5】

(式VII中、Ar、Ar2、R1,R2,R3及びR4はそれぞれ式II〜Vに用いた置換基と同一である)で表されるクロマノール誘導体(VII)を製造することを特徴とする。
【0009】
本発明において、反応系に銀塩を加えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、光学活性β-ジアリールカルボニル化合物を高収率、高選択性で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、以下の1)α,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物、2)アリールボロン酸若しくはその誘導体、又はアリールボロン酸無水物、3)パラジウム錯体触媒、を反応させ、4)β-ジアリールカルボニル化合物を製造する方法である。
【0012】
<α,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物> 基質であるα,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物は、一般式(I)
【化1】

(式中Arは置換または無置換のアリール基を表し、R,Rはそれぞれ同一又は異なっていても良い水素又はアルキル基を表し、Eはホルミル基又はアシル基を表す。)で表される。
【0013】
Arとしては、フェニル基、ナフチル基、ピローリル基、チオフェニル基、フラニル基、インドーリル基、ベンゾフラニル基、及びピリジル基等の芳香環が挙げられる。これら芳香環の置換基としては塩素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルチオ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいベンゾイル基、炭素数2から8のアルコキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいアミノ基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいカルバモイル基、ニトロ基、炭素数1から8のフルオロアルキル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシ基,及びシクロへキシルオキシ基等が挙げられる。Arとして具体的には、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、2−ナフチル基、(2-ベンジロキシ-5-メチル)フェニル基、(2-ヒドロキシ-5-メチル)フェニル基、及び(2-ヒドロキシ-5-メトキシ)フェニル基等が挙げられる。
【0014】
R1,R2としては、水素又は炭素数1から8のアルキル基が挙げられ、アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、n−プロキル基、イソプロピル基、n−ペンチル基、及びシクロへキシル基等が挙げられる。R1,R2として好ましくは水素を用いる。 Eとしてはホルミル基、又は炭素数2から8のアシル基が挙げられる。アシル基としては、例えばメチルカルボニル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、シクロへキシルカルボニルの他、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数2から8のアルコキシカルボニル基等の置換基を芳香環上に1から5個有していてもよいアリールカルボニル基が挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)で示される化合物の具体例としては、例えば、trans-4-フェニル-3-ブテン-2-オン、trans-カルコン、trans-1-フェニル-1-ヘプテン-3-オン、trans-4-メチル-1-fフェニル-1-ペンテン-3-オン、trans-1-シクロへキシル-3-フェニル-2-プロペン-1-オン、trans-1-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-2-プロペン-1-オン、trans-1-(4-ニトロフェニル)-3-フェニル-2-プロペン-1-オン、trans-3-(4-メトキシフェニル)-1-フェニル-2-プロペン-1-オン、trans-3-(2-ベンジロキシ-5-メチルフェニル)-1-フェニル-2-プロペン-1-オン、trans-4-(2-ベンジロキシ-5-メチルフェニル)-3-ブテン-2-オン、trans-4-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3-ブテン-2-オン、trans-4-(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン、trans-3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-フェニル-2-プロペン-1-オン等が挙げられる。
【0016】
<アリールボロン酸若しくはその誘導体、又はアリールボロン酸無水物> アリールボロン酸若しくはその誘導体、又はアリールボロン酸無水物は上記反応基質と不斉共役付加反応し、一般式(II)Ar2-BXmMn、又は一般式(III)
【化2】

(式II及びIII中、Arは置換または無置換のアリール基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基、又はフッ素原子を示し、mは1から3の整数であり、Mはアルカリ金属であり、nは0または1の整数である。)で表される。
【0017】
Ar2としては、フェニル基、ナフチル基、ピローリル基、チオフェニル基、フラニル基、インドーリル基、ベンゾフラニル基、又はピリジル基等の芳香環が挙げられる。これら芳香環の置換基としては塩素原子、フッ素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルチオ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいベンゾイル基、炭素数2から8のアルコキシカルボニル基、炭素数1−から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいアミノ基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいカルバモイル基、ニトロ基、炭素数1から8のフルオロアルキル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシ基、又はシクロへキシルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
Xとしてアルコキシ基を用いる場合、アルコキシ基として例えば炭素数1から8のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシ基、シクロへキシルオキシ基、又は下式(VIII)のa,b,cまたはdで表される化合物(式VIII中、rは1から4の整数を表し、sおよびtはそれぞれ独立に0から5の整数を表し、Meはメチル基を表す)が挙げられる。
【化6】

【0019】
Mとしてはカリウム、ナトリウム等が挙げられる。
【0020】
一般式(II)で示されるアリールボロン酸の具体例としては、フェニルボロン酸、o-トリルボロン酸、m-トリルボロン酸、p-トリルボロン酸、o-メトキシフェニルボロン酸、m-メトキシフェニルボロン酸、p-メトキシフェニルボロン酸、4-アセトキシボロン酸、3,4-ジメトキシフェニルボロン酸、3,4-メチレンジオキシフェニルボロン酸、4-ブロモ-3-フルオロフェニルボロン酸、4‐(N,N−ジメチル)アミノフェニルボロン酸、1-ナフチルボロン酸、2-ナフチルボロン酸、2,3-ジヒドロベンゾフラニルボロン酸、2−ピローリルボロン酸、2−チオフェニルボロン酸、2−フラニルボロン酸が挙げられる。 又、式(II)のアリールボロン酸の誘導体としては、上記ボロン酸のトリフルオロカリウム塩が例示される。式(III)の具体例としては、上記したアリールボロン酸の無水物が挙げられる。 上記アリールボロン酸若しくはその誘導体、又はアリールボロン酸無水物の添加量は、α,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物(I)に対してモル比で0.1から50程度とすることができ、好ましくはモル比で1から20程度の範囲である。
【0021】
<パラジウム錯体触媒> パラジウム錯体触媒は、一般式(IV)PdYoL1p(Chiraphos)q(式IV中、YはClO4、BF4、PF6、SbF6、OTf、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基を表し、Lは有機配位子を表し、o,p,qはそれぞれ0から6の整数を表す。)で表される。
【0022】
Yの具体的な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ClO4,BF4,PF6又はSbF6アニオンなどが挙げられる。又、Yとして有機含酸素化合物を用いる場合の例としては、ヒドロキシ基、炭素数1から8のアルキル基を有するアルコキシ基、アセチルアセトナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、又はアセトキシ基などが挙げられる。 Yとして好ましくはClO4,BF4,PF6,又はSbF6アニオンであり、特に好ましくはSbF6アニオンである。又、式IVのoは好ましくは2である。
【0023】
有機配位子L1としては、CO,NO,NH2,NH3の他、オレフィン類、アセチレン類、芳香族化合物類、有機含酸素化合物類、有機含窒素化合物類、又は有機含硫黄化合物類などが挙げられる。 オレフィン類化合物としては、例えばエチレン、アリル、ブタジエン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、シクロオクテン(coe)、1,5−シクロオクタジエン(cod)、ノルボルナジエン(nbd)、アクリル酸エチル、メタクリル酸エステル、シクロペンタジエニル、又はペンタメチルシクロペンタジエニルなどが例示される。 アセチレン類化合物としてはアセチレン、1,2−ジメチルアセチレン、1,4−ペンタジイン、1,2−ジフェニルアセチレンなどが例示される。芳香族化合物としてはベンゼン、p−シメン、メシチレン、ヘキサメチルベンゼン、ナフタレン、アントラセンが例示される。有機含酸素化合物としては、アセテート、ベンゾエート、アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルホネートなどが例示される。有機含窒素化合物としてはアセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-ブチルイソシアニド、ピリジン、1,10−フェナントロリン2,2'-ビピリジルが例示される。有機含硫黄化合物としてはジメチルスルホキシド、ジメチルスルフィド、チオフェン、二硫化炭素、硫化炭素、チオフェノールなどが例示される。
【0024】
L1は好ましくはアセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等ニトリル化合物であり、さらに好ましくはベンゾニトリルである。又、式IVのpは好ましくは2である。
【0025】
Chiraphos(キラホス)((2S,3S)-(-)-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、および(2R,3R)-(+)-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)は光学活性ホスフィン配位子であり、遷移金属を用いる不斉合成などに用いられ、二つのリン原子を持つホスフィンであり、配位子となる。キラホスには、(S,S)-および(R,R)-キラホスがある。 式IVのqは好ましくは1である。
【0026】
パラジウム錯体触媒(IV)は、例えばPdCl2(cod)(cod=1,5-シクロオクタジエン)のようなパラジウム前駆体と、chiraphosから調整されるPdCl2(Chiraphos)にAgSbF6のような銀塩とを用いて、ベンゾニトリル中でこれらを混合して得られる。ベンゾニトリルを他の有機配位子に変えることにより(IV)式中のLを変えることができ、上記パラジウム錯体中のSbF6を他の塩に変えることにより(IV)式中のYを変えることができる。パラジウム前駆体は、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム以外に、金属パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウム、クロロアリルパラジウムダイマー、テトラクロロパラジウム酸カリウムなどのアルカリ金属塩などが使用できる。 本発明においては、このようにして得たパラジウム錯体触媒を反応系に導入してもよく、反応系に上記各成分を加え、反応系内でパラジウム錯体触媒を生成させてもよい。 上記のパラジウム錯体触媒におけるchiraphosの配合量は反応条件により異なるが、反応系内に共存するパラジウム元素(パラジウム錯体触媒中のPd)に対するモル比で、0.1から50程度とすることができ、好ましくはモル比で0.9から5程度の範囲である。 又、上記(IV)で示されるパラジウム錯体触媒の添加量は反応基質(I式の化合物)に対するモル比で0.00001から0.5程度とすることができ、好ましくはモル比で0.0001から0.05程度の範囲である。
【0027】
パラジウム錯体触媒(IV)中のPdの価数としては、二価カチオン性パラジウムが好ましい。
【0028】
<反応条件> 本発明においては通常、溶媒が用いられる。溶媒としては、反応原料、触媒系を可溶化するものが好ましく用いられる。溶媒の具体例としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシドなどへテロ原子を含む有機溶媒、及び水を用いることができる。これら溶媒は単独でも、任意の割合で2種以上を混合して用いることもできる。 本発明における反応温度は通常、−40℃から200℃程度の範囲とすることができるが、好ましくは-10℃から120℃とすることができる。特に好ましくは0℃付近が良い。また、反応中に酸素による触媒の失活を防ぐため、反応は窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。反応時の圧力は特に制限されないが、通常大気圧でおこなわれる。 反応時間は反応基質濃度、温度等の条件によって異なるが通常、数分から30時間程度で完結する。 本発明における反応形式はバッチ式でも連続式でもよい。
【0029】
<銀塩> 本発明において、銀塩を反応系に配合することが好ましい。銀塩としては、例えばテトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロ燐酸銀、炭酸銀及び過塩素酸銀の群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。銀塩の配合量はアリールボロン酸若しくはその誘導体、又はアリールボロン酸無水物に対してモル比で0.0001から5とすることができ、より好ましくはモル比で0.001から3である。 なお、銀塩として塩化銀、硝酸銀は有効でない。
【0030】
<生成物> 上記一般式(I)の反応基質に対し、光学活性βージアリール電子吸引性基置換化合物が生成物として得られる。光学活性βージアリール電子吸引性基置換化合物の具体例としては、(S)-4-(3-メトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン、S)-1-(3-メトキシフェニル)-1-フェニル-3-ヘプタノン、(S)-1-(3-メトキシフェニル)-4-メチル−1−フェニル−3−ペンタノン、(S)-1-シクロへキシル-3-(3―メトキシフェニル)-3-フェニル-1-プロパノン、(S)-3-(3-メトキシフェニル)-1,3-ジフェニル-1-プロパノン、(S)-3-(3-メトキシフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-1-プロパノン、(S)-3-(3-メトキシフェニル)-1-(4-ニトロフェニル)-3-フェニル-1-プロパノン、(S)-3-(3-メトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-1-フェニル-1-プロパノン、(R)-4-(2-ベンジロキシ-5-メチルフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)-2-ブタノン、(R)-3-(2-ベンジロキシ-5-メチルフェニル)-3-(3-メトキシフェニル)-1-フェニル-1-プロパノン、(S)-1,3-ジフェニル-3-(4-メチルフェニル)-1-プロパノン、(S)-4-(3-メトキシフェニル)-4-(2-ナフチル)-2-ブタノン、(S)-4-(4-アセトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン、(S)-4-(4-メトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン、(S)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン、及び(S)-4-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン、並びにこれらの鏡像異性体等が挙げられる。
【0031】
<光学活性クロメン誘導体の製造> 本発明を適用することにより、光学活性クロメン誘導体(4H-クロメン誘導体)の前駆体となる2-クロマノール誘導体を高効率、高選択性で製造することができる。 2-クロマノール誘導体の製造に用いる反応基質としては、式(I)の化合物において、式(VI)
【化4】

(式VI中、R,Rはそれぞれ同一又は異なっていても良い水素又はアルキル基を表し、R3は水素、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R4は塩素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルチオ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいベンゾイル基、炭素数2から8のアルコキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいアミノ基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいカルバモイル基、ニトロ基、炭素数1から8のフルオロアルキル基、又は炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシ基を表す。)で表されるα,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物を用いる。
【0032】
そして、式(VI)の反応基質に対し、上記した場合と同様なアリールボロン酸若しくはその誘導体、又はアリールボロン酸無水物、を式(IV)のパラジウム錯体触媒存在下で反応させることにより、β-ジアリールカルボニル化合物の1種である2−クロマノール誘導体を製造することができる。 上記2−クロマノール誘導体は、一般式(VII)
【化5】

(式VII中、Ar
、Ar2、R1,R2,R3及びR4はそれぞれ式II〜Vに用いた置換基と同一である)で表される。
【0033】
そして、式(VII)の前駆体に対し、既知の脱水反応を施すことで光学活性クロメン誘導体を最終生成物として得ることができる。光学活性クロメン誘導体は天然生物活性物質であり、有用である。 本発明によって得られる光学活性クロメン誘導体の具体例としては、(+)-6-メトキシ-2-メチル-4-フェニル-4H-クロメン、(+)-2,4-ジフェニル-4H-クロメン、(+)-4-(4-メトキシフェニル)-2,6-ジメチル-4H-クロメン、(+)-4-(3-メトキシフェニル)-2,6-ジメチル-4H-クロメン、(+)-2,6-ジメチル-4-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4H-クロメン、(+)-2,6-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)-4H-クロメン、(+)-2,6-ジメチル-4-フェニル-4H-クロメン、(+)-2,6-ジメチル-4-(4-アセトキシフェニル)-4H-クロメンおよびこれらの鏡像異性体等が挙げられる。
【0034】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
光学活性β−ジアリールカルボニル化合物として、以下の表1に記載した各生成物5a〜5lを製造した。生成物5(5a〜5l)の反応式IXを以下に示す。
【化7】

【0036】
(S)-4-(3-メトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン(5a)の合成 窒素雰囲気、アセトン(1ml)と水 (0.1ml)中で、ビス(ベンゾニトリル)((2S,3S)-(-)-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)パラジウムヘキサフルオロアンチモン酸塩[Pd((S,S)-chiraphos)(PhCN)2]SbF6(0.01mmol,mol%)に対し、trans-4-フェニル-3-ブテン-2-オン(0.5mmol)、テトラフルオロホウ酸銀 (0.05mmol,10mol%)、3-メトキシフェニルボロン酸(0.6mmol)を加え0度で21時間攪拌した。反応液にエーテルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液で有機層を洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥後、ろ過し減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1〜15:1)で精製し、表1の4-(3-メトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノンを生成物として得た(122mg,96%)。
【0037】
生成物の分析結果を以下に示す。キラルHPLC(DAICEL CHIRALCEL OD-H)を用い、溶媒としてヘキサン:イソプロピルアルコール=9:1を用いて流速0.5ml/minで流し、生成物を測定したところ、二つの鏡像異性体の溶出時間は28分と32分であった。これより、生成物の鏡像異性体過剰率(%ee)を95%eeと同定した。 HPLC column,DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 28 and 32 min; IR(neat);559, 697, 773, 1040, 1150, 1257, 1356, 1453, 1488, 1583, 1596, 1712 cm-1; 1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ 2.08 (s, 3H), 3.16 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 3.75 (s, 3H), 4.55 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.70-6.77 (m, 2H), 6.81 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.15-7.29 (m, 6H); 13CNMR(100 Hz, CDCl3) δ 30.44, 45.48, 49.36, 54.91, 111.17, 113.78, 119.86, 126.31, 127.49, 128.41, 129.39, 143.55, 145.33, 159.51, 206.65; MS(m/z) 43(27), 77 (13), 91(9.3), 103(97), 165 (37), 197 (56), 211 (81), 254(100, M+); exact mass calcd for C17H18O2: 254.1307; found 254.1303. [α]21D(c in CHCl3): +2.8(0.43), 95%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=9/1, tr=28, 32)
【0038】
以下、式IXと同様にして、表1に示す基質とアリールボロン酸を用いて生成物5b〜5lを得た。
【表1】

【0039】
各生成物5b〜5lについての分析結果を以下に示す。 生成物:(S)-1-(3-メトキシフェニル)-1-フェニル-3-ヘプタノン(5b) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OJ-H: eluent, n-hexane/2-propanol (2:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 40 and 48 min; IR(neat);698, 775, 871, 1047, 1126, 1150, 1257, 1435, 1452, 1488, 1584, 1597, 1711, 2956 cm-1; 1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ 0.82 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.18 (hex, J = 7.6 Hz, 2H), 1.45 (quintet, J = 7.4 Hz, 2H), 2.31 (t, J = 7.4 Hz 2H), 3.13 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 3.75 (s, 3H), 4.57 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.69-6.76 (m, 3H), 7.14-7.28 (m, 6H); 13CNMR(100 Hz, CDCl3) δ 13.73, 22.08, 25.50, 43.22, 45.87, 48.58, 54.99, 111.2, 113.8, 120.0, 126.3, 127.6, 128.4, 129.4, 143.7, 145.5, 159.6, 209.0; MS(m/z) 103 (100), 133 (30), 165 (24), 197 (56), 211 (95), 239 (16), 296 (52, M+); exact mass calcd for C20H24O2: 296.1776; found 296.1773. [α]21D(c in CHCl3): +3.0(0.89), 99%ee (OJ-H, Hexane:iPrOH=2/1, tr=40, 48)
【0040】
生成物:(S)-1-(3-メトキシフェニル)-4-メチル−1−フェニル−3−ペンタノン (5c) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 32 and 34 min; IR(neat. cm-1): 2967, 1709, 1596, 1584, 1488, 1452, 1257, 1045, 698; 1HNMR(400 Hz, CDCl3): δ 7.28-7.14 (m, 6H), 6.81 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 6.77-6.69 (m, 2H), 4.59 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 3.75 (s, 3H), 3.18 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 2.49 (sept, J = 7.0 Hz, 1H), 0.99 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 0.98 (d, J = 7.0 Hz, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3): δ 212.3, 159.6, 145.7, 143.9, 129.4, 128.4, 127.6, 126.3, 120.0, 113.9, 111.2, 55.0, 46.4, 45.7, 41.3, 17.8 ; MS(m/z): 103 (54), 165 (28), 197(100), 211(72), 239(38), 282(70, M+); exact mass calcd for C19H22O2: 282.1620; found 282.1620; [α]23D(c in CHCl3): +5.0 δ(0.56), 95%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=99/1, tr=32, 34)
【0041】
生成物:(S)-1-シクロへキシル-3-(3―メトキシフェニル)-3-フェニル-1-プロパノン (5d) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 67 and 73 min; IR(neat. cm-1): 2927, 2852, 1705, 1596, 1583, 1488, 1449, 1257, 1046, 699; 1HNMR(400 Hz, CDCl3): δ 7.27-7.14(m, 6H), 6.82-6.69 (m, 3H), 4.59 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 3.75 (dd, J = 1.9, 8.3 Hz, 1H), 3.17 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 2.24 (m, 1H), 1.72-1.60 (m, 5H), 1.24-1.12 (m, 5H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3): δ 211.5, 159.6, 145.8, 144.0, 129.4, 128.4, 127.7, 126.2, 120.0, 113.9, 111.2, 55.0, 51.2, 46.7, 45.5, 28.1, 25.7, 25.5; MS(m/z): 55 (34), 83 (38), 103 (69), 165 (29), 197 (100), 211 (96), 239 (50), 322 (55, M+); exact mass calcd for C22H26O2: 322.1933; found 322.1936; [α]23D(c in CHCl3): +5.7 δ(0.80), 95%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=67, 73)
【0042】
生成物:(S)-3-(3-メトキシフェニル)-1,3-ジフェニル-1-プロパノン(5e) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 28 and 32 min; IR(neat);553, 691, 725, 750, 872, 922, 983, 1042, 1077, 1149, 1203, 1256, 1361, 1448, 1487, 1582, 1596, 1682 cm-1; 1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ 3.73 (s, 3H), 4.79 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.96-6.72 (ddd, J = 0.8, 2.6, 8.2 Hz 1H), 6.81 (t, J = 2.1 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.16-7.26 (m, 6H), 7.42 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.55 (tt, J = 1.3, 7.4, 7.5 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 7.1 Hz, 2H); 13CNMR(100 Hz, CDCl3) δ 44.48, 45.80, 54.93, 111.2, 113.0, 120.1, 126.3, 127.7, 127.9, 128.4, 129.4, 132.9, 136.9, 143.9, 145.7, 159.5, 197.8; MS(m/z) 77 (45), 103 (86), 105 (100), 133 (23), 165 (22), 197 (42), 211 (69), 316 (63, M+)exact mass calcd for C22H20O2: 316.1463; found 316.1465. [α]21D(c in CHCl3): +7.1(0.71), 97%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=95/5, tr=28, 32)
【0043】
生成物:(S)-3-(3-メトキシフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-1-プロパノン(5f) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (4:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 22 and 25 min; IR(neat. cm-1): 1673, 1597, 1252, 1167, 697; 1HNMR(400 Hz, CDCl3): δ 7.93(d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.26-7.14 (m, 6H), 6.92-6.80(m, 5H), 6.70 (dd, J = 1.9, 8.3 Hz, 1H), 4.79 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 3.66 (d, J = 7.3 Hz, 2H); 13CNMR(100 Hz, CDCl3): δ 196.4, 163.4, 159.6, 145.8, 144.1, 130.3, 130.2, 130.1, 129.4, 128.5, 128.4, 127.79, 127.75, 126.3, 120.2, 114.0, 113.69, 113.66, 111.2, 55.4, 55.3, 55.1, 55.0, 46.0, 44.2; MS(m/z): 77 (12), 103 (24), 135 (100), 197(22), 211 (36), 346 (51, M+); exact mass calcd for C23H22O3: 346.1569; found 346.1565; [α]23D(c in CHCl3): +10.6 δ(0.63), 95%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=4/1, tr=22, 25)
【0044】
生成物:(S)-3-(3-メトキシフェニル)-1-(4-ニトロフェニル)-3-フェニル-1-プロパノン(5g) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (2:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 114 and 131 min; IR(neat, cm-1): 1691, 1515, 1345, 1257, 1045, 852, 771, 733, 699; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 8.27 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.04(d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.27-7.18(m, 7H), 6.85(d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.79 (s, 1H), 6.74-6.72(m, 1H), 4.76(t, J = 7.3 Hz, 1H), 3.76-3.74 (m, 5H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 196.5, 159.6, 150.1, 145.0, 143.3, 141.3, 129.5, 128.9, 128.5, 127.6, 126.5, 123.7, 119.9, 114.0, 111.2, 55.0, 45.8, 45.0; MS(m/z) 103(90), 133(26), 165(33), 197(66), 211(100), 361(64, M+); exact mass calcd for C22H19NO4: 361.1314; found 361.1313; [α]23D(c in CHCl3): +9.1(0.42), 92%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=2/1, tr=114, 131)
【0045】
生成物:(S)-3-(3-メトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-1-フェニル-1-プロパノン(5h) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flo
w rate, 0.5 mL/min: tR 21 and 27 min; IR(neat, cm-1): 1683, 1597, 1582, 1509, 1448, 1245, 1178, 1034, 691; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.92(d, J = 7.3 Hz, 2H), 7.54(t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.43(t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.2-7.1(m, 3H), 6.84(d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.91-6.69(m, 4H), 4.74(t, J = 7.3 Hz, 1H), 3.74(s, 6H), 3.68(d, J = 7.3 Hz, 2H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 197.8, 159.5, 157.9, 146.0, 136.9, 135.9, 132.8, 129.3, 128.5, 128.4, 127.8, 119.9, 113.8, 113.7, 111.0, 55.0, 54.9, 45.0, 44.6; MS(m/z) 77(15), 105(13), 133(20), 227(100), 346(24, M+); exact mass calcd for C23H22O3: 346.1569; found 346.1565; [α]23D(c in CHCl3): +2.8(1.01), 99%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=9/1, tr=21, 27)
【0046】
生成物:(R)-4-(2-ベンジロキシ-5-メチルフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)-2-ブタノン(5i) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 13 and 16 min; IR(neat, cm-1): 1712, 1496, 1235, 1021, 804, 734, 695; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.35-7.14(m, 10H), 6.93-6.94(m, 2H), 6.77(d, , J = 8.7 Hz, 1H), 5.03-4.95(m, 3H), 3.13(d, J = 7.8 Hz, 2H), 2.24(s, 3H), 2.03(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 207.3, 153.6, 143.4, 137.1, 132.0, 129.8, 128.6, 128.3, 128.2, 127.9, 127.7, 127.6, 127.2, 126.0, 112.0, 70.1, 48.8, 39.8, 30.0, 20.6; MS(m/z) 91(100), 149(14), 211(22), 253(56), 344(4, M+); exact mass calcd for C29H26O2: 406.1933; found 406.1936; [α]21D(c in CHCl3): +13.9(0.67), 96%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=9/1, tr=13, 16)
【0047】
生成物:(R)-3-(2-ベンジロキシ-5-メチルフェニル)-3-(3-メトキシフェニル)-1-フェニル-1-プロパノン(5j) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (15:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 20 and 30 min; IR(neat, cm-1): 1679, 1496, 1450, 1235, 735, 695, 681; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.89-7.87(m, 2H), 7.52-7.49(m, 1H), 7.39-7.14(m, 12H), 6.98-6.93(m, 2H), 6.77(d, , J = 8.5 Hz, 1H), 5.16 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 4.99(d, J = 3.0 Hz, 2H), 3.70(d, 7.8 Hz, 2H), 2.23(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 198.4, 153.8, 143.6, 137.2, 137.1, 132.7, 132.4, 129.8, 129.0, 128.44, 128.40, 128.18, 128.16, 128.0, 127.7, 127.6, 127.3, 125.9, 112.1, 70.1, 43.7, 40.2, 20.7; MS(m/z) 91(70), 105(100), 211(17), 315(41), 406(5, M+); exact mass calcd for C29H26O2: 406.1933; found 406.1936; [α]21D(c in CHCl3): +13.0(0.75), 98%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=15/1, tr=22, 30)
【0048】
生成物:(S)-1,3-ジフェニル-3-(4-メチルフェニル)-1-プロパノン(5k) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 31 and 34 min; IR(neat); 822, 1678 cm-1; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 2.28 (s, 3H), 3.72 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 4.79(t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.06-7.08 (m, 2H), 7.17-7.79 (m, 3H), 7.23-7.26 (m, 4H), 7.41-7.45 (m, 2H), 7.52-7.55 (m, 1H), 7.92-7.94 (m, 2H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 20.95, 44.77, 45.52, 126.26, 127.65, 127.75, 128.03, 128.51, 128.55, 129.23, 133.00, 135.85, 137.06, 141.11, 144.36, 198.04; MS(m/z) 77 (36), 91 (6), 105 (98), 117 (10), 165 (27), 181 (100), 195 (23), 300(35, M+); exact mass calcd for C22H20O: 300.1514; found 300.1517. [α]21D(c in CHCl3): +7.9(0.54), 95%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=31, 34)
【0049】
生成物:(S)-4-(3-メトキシフェニル)-4-(2-ナフチル)-2-ブタノン(5l) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 39 and 41 min; IR(neat);543, 622, 659, 694, 717, 755, 785, 818, 858, 953, 1041, 1092, 1150, 1258, 1316, 1357, 1434, 1453, 1487, 1582, 1597, 1713 cm-1; 1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ 2.11 (s, 3H), 3.27 (dd, J = 2.7, 7.5 Hz, 2H), 3.76 (s, 3H), 4.73 (t, J = 7.5 Hz 1H), 6.72 (dd, J = 2.5, 8.3 Hz, 1H), 6.80 (m, 1H), 6.86 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.20 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.32 (dd, J = 1.8, 8.6, 7.5 Hz, 1H), 7.40-7.46 (m, 2H), 7.67 (s, 1H), 7.76 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.76-7.79 (m, 2H); 13CNMR(100 Hz, CDCl3) δ 30.54, 45.90, 49.23, 54.68, 111.2, 114.0, 120.1, 125.5, 126.0, 126.4, 127.4, 127.6, 128.2, 129.5, 132.1, 133.3, 141.0, 145.2, 160.0, 206.7; MS(m/z) 133 (51), 153 (51), 215 (33), 247 (100), 261 (30), 304 (82, M+)exact mass calcd for C21H20O2: 304.1463; found 604.1475. [α]21D(c in CHCl3): -30(0.23), 96%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=9/1, tr=39, 41)
【実施例2】
【0050】
光学活性β−ジアリールカルボニル化合物として、以下の表2に記載した各生成物5m〜5pを製造した。生成物5m〜5pの反応式、反応条件、反応の手順は実施例1と同様である。
【0051】
生成物5b〜5lの反応に用いた基質とアリールボロン酸を表2に示す。
【表2】

【0052】
各生成物5m〜5pについての分析結果を以下に示す。 生成物:(S)-4-(4-メトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン(5m) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 18 and 20 min; IR(neat);700, 838, 1250, 1506, 1605, 1720, 2940, 2960 cm-1; 1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ 2.04 (s, 3H), 3.13 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 3.73 (s, 3H), 4.53 (t, J = 7.6 Hz 1H), 6.95 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.11-7.29 (m, 7H); 13CNMR(100 Hz, CDCl3) δ 30.05, 38.7, 45.2, 49.8, 55.1, 113.9, 126.3, 127.5, 128.5, 128.6, 135.9, 144.2, 158.0, 206.8; MS(m/z) 254 (M+); [α]22D(c in CHCl3): +0.75 (0.60)
【0053】
生成物:(S)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン(5n) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 23 and 27 min; IR(neat, cm-1): 1712, 1512, 1235, 1141, 1024, 700; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.87(d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.33-7.17(m, 7H), 4.65(t, J = 7.3 Hz, 1H), 3.21(d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.55(s, 3H), 2.10 (s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 206.1, 197.5, 149.4, 142.9, 135.3, 128.7, 128.6, 127.9, 127.6, 126.7, 49.0, 45.7, 30.5, 26.4; MS(m/z) 103(10), 227(100), 284(39, M+); exact mass calcd for C18H20O3: 284.1412; found 284.1407; [α]23D(c in CHCl3): -1.7(0.59), 97%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=9/1, tr=23, 27)
【0054】
生成物:(S)-4-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン(5o) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 21 and 26 min; IR(neat, cm-1): 1486, 1230, 1036, 699, 533; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.31-7.17(m, 5H), 6.74-6.70(m, 3H), 5.91(s, 2H), 4.52(t, J = 7.6 Hz, 1H), 3.14(d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.10(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 206.7, 147.7, 146.0, 143.9, 137.8, 128.6, 127.5, 126.5, 120.5, 108.2, 108.1, 100.9, 49.7, 45.7, 30.6; MS(m/z) 77(4.8), 152(22), 211(100), 225(3.2), 268(44, M+); exact mass calcd for C17H16O3: 268.1099; found 268.1101; [α]23D(c in CHCl3): +1.8(0.41), 95%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=9/1, tr=21, 26)
【0055】
(S)-4-(4-アセトキシフェニル)-4-フェニル-2-ブタノン(5p) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (9:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 31 and 37 min;IR(neat, cm-1): 1714, 1677, 1603, 1357, 1266, 700, 596, 539; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.87(d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.33-7.17(m, 7H), 4.65(t, J = 7.3 Hz, 1H), 3.21(d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.55(s, 3H), 2.10 (s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 206.1, 197.5, 149.4, 142.9, 135.3, 128.7, 128.6, 127.9, 127.6, 126.7, 49.0, 45.7, 30.5, 26.4; MS(m/z) 77(8), 165(30), 209(49), 223(39), 266(58, M+); exact mass calcd for C18H18O2: 266.1307; found 266.1309; [α]23D(c in CHCl3): +15.7(0.34), 93%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=9/1, tr=31, 37)
【実施例3】
【0056】
光学活性β−ジアリールカルボニル化合物として、以下の表3に記載した各生成物6a〜6hを製造した。生成物6(6a〜6h)の反応式Xを以下に示す。
【化8】

【0057】
(+)-6-メトキシ-2-メチル-4-フェニル-4H-クロメン(6a)の合成 窒素雰囲気、アセトン (1 ml)と水 (0.1 ml)中で、ビス(ベンゾニトリル)((2S, 3S)-(-)-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)パラジウムヘキサフルオロアンチモン酸塩 [Pd((S, S)-chiraphos)(PhCN)2]SbF6(0.01 mmol, 1 mol%)に対し、α,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物(0.5 mmol)と、ボロン酸 (0.6 mmol)を加え20度で21時間攪拌した。反応液にエーテルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液で有機層を洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥後、ろ過し減圧濃縮し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1〜15:1)で精製し、6-メトキシ-2-メチル−4−フェニル−2−クロマノール(A)を得た(133.8mg, 99%)。続いて得られたクロマノール誘導体(A, 0.5 mmol)をトルエン (4 ml)中、p-トルエンスルホン酸 (10 mol%)を加え、モレキューシーブス4A (1g) 存在下、3時間加熱還流した。室温まで冷却後、反応液にエーテルを加え、飽和塩化アン
モニウム水溶液で有機層を洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥後、ろ過、減圧濃縮し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製し、表3の6-メトキシ-2-メチル-4-フェニル-4H-クロメンを生成物として得た(117.4mg, 94%)。
【0058】
生成物の分析結果を以下に示す。キラルHPLC(DAICEL CHIRALCEL OD-H)を用い、溶媒としてヘキサン:イソプロピルアルコール=99.5:0.5を用いて流速0.5ml/minで流し、生成物を測定したところ、二つの鏡像異性体の溶出時間は15分と18分であった。これより、生成物の鏡像異性体過剰率(%ee)を95%eeと同定した。 HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 15 and 18 min; IR(neat, cm-1): 1696, 1490, 1215, 1030, 942, 820, 697; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.30-7.16(m, 5H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.68 (dd, J = 2.9, 9.2 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 4.72-4.71(m, 1H), 4.60(brs, 1H), 3.64 (s, 3H), 1.93 (s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 155.1, 147.0, 146.9, 145.2, 128.5, 128.0, 126.4, 123.6, 117.0, 113.9, 113.4, 99.5, 55.4, 41.3, 19.3; MS(m/z) 77(50), 105(43), 150(40), 175(100), 228(86), 237 (40), 252 (40, M+); exact mass calcd for C17H16O2: 252.1150; found 252.1155; [α]21D(c in CHCl3): +172.3(0.53), 96%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=15, 18)
【0059】
以下、式Xと同様にして、表3に示す基質とアリールボロン酸を用いて生成物6b〜6hを得た。
【表3】

【0060】
各生成物6b〜6hについての分析結果を以下に示す。 生成物:(+)-2,4-ジフェニル-4H-クロメン(6b) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 15 and 20 min; IR(neat, cm-1): 1696, 1482, 1439, 1240, 1219, 1173, 1037, 927, 809; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.72(d, J = 1.8, 8.6 Hz, 2H), 7.42-7.10(m, 10H), 6.97-6.95(m, 2H), 5.59(d, J = 4.1 Hz, 1H), 4.84(d, J = 4.1 Hz, 1H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 150.9, 147.7, 146.6, 134.1, 129.7, 128.6, 128.4, 128.34, 128.30, 127.6, 126.6, 124.7, 123.4, 123.2, 116.6, 100.8, 41.1; MS(m/z) 178(15), 207(100), 284(35, M+); exact mass calcd for C21H16O: 284.1201; found 284.1201; [α]21D(c in CHCl3): +31.2(0.61), 99%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=15, 20)
【0061】
生成物: (+)-4-(4-メトキシフェニル)-2,6-ジメチル-4H-クロメン(6c) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 16 and 17 min; IR(neat, cm-1): 1697, 1497, 1315, 1245, 1219, 1171, 1034, 812, 531; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.15(d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.91 (dd, J = 1.4, 7.8 Hz, 1H), 6.86-6.81(m, 3H), 6.70(brs, 1H), 4.73-4.72(m, 1H), 4.54(brs, 1H), 3.78(s, 3H), 2.17(s, 3H), 1.94(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 158.0, 148.8, 146.6, 139.7, 132.2, 129.9, 129.0, 128.0, 122.9, 115.9, 113.8, 100.5, 55.1, 40.0, 20.5, 19.3; MS(m/z) 159(81), 251(100), 266(62, M+); exact mass calcd for C18H18O2: 266.1307; found 266.1298; [α]21D(c in CHCl3): +145.5(0.70), 97%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=16, 17)
【0062】
生成物:(+)-4-(3-メトキシフェニル)-2,6-ジメチル-4H-クロメン(6d) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 13 and 16 min; IR(neat, cm-1): 1696, 1597, 1485, 1311, 1257, 1238, 1219, 1179, 1044, 813, 699; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.22(t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.91 (dd, J = 1.9, 8.3 Hz, 1H), 6.84-6.72(m, 5H), 4.74-4.73(m, 1H), 4.56(brs, 1H), 3.78(s, 3H), 2.17(s, 3H), 1.94(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 159.7, 149.0, 148.9, 146.9, 132.3, 129.9, 129.4, 128.2, 122.4, 120.6, 116.0, 114.2, 111.3, 100.1, 55.1, 40.9, 20.6, 19.3; MS(m/z) 159(100), 251(37), 266(34, M+); exact mass calcd for C18H18O2: 266.1307; found 266.1307; [α]21D(c in CHCl3): +181.9(0.67), 97%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=13, 16)
【0063】
生成物:(+)-2,6-ジメチル-4-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4H-クロメン(6e) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 12 and 17 min; IR(neat, cm-1): 1696, 1482, 1439, 1240, 1219, 1173, 1037, 927, 809; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 6.91-6.89(m, 1H), 6.81(d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.73-6.70(m, 2H), 6.69(d, J = 8.3 Hz, 2H), 5.90(dd, J = 1.5, 4.9 Hz, 2H), 4.71-4.70(m, 1H), 4.50(brs, 1H), 2.17(s, 3H), 1.93(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 148.8, 147.8, 146.8, 146.0, 141.6, 132.3, 129.8, 128.1, 122.6, 120.7, 116.0, 108.7, 107.8, 100.8, 100.2, 40.5, 20.5, 19.3; MS(m/z) 159(100), 265(61), 280(62, M+); exact mass calcd for C18H16O3: 280.1099; found 280.1098; [α]21D(c in CHCl3): +184.9(0.72), 98%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=12, 17)
【0064】
生成物:(+)-2,6-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)-4H-クロメン(6f) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 114 and 119 min; IR(neat, cm-1): 1697, 1495, 1315, 1219, 1168, 811; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.10(s, 4H), 6.90-6.81(m, 2H), 6.69(s, 1H), 4.72-4.71(m, 1H), 4.54(brs, 1H), 2.30(s, 3H), 2.15(s, 3H), 1.92(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 148.9, 146.7, 144.5, 135.8, 132.3, 129.9, 129.2, 128.1, 128.0, 122.8, 115.9, 100.5, 40.5, 20.9, 20.6, 19.3; MS(m/z) 77(11), 91(27), 119(20), 134(21), 159(100), 178(26), 195(35), 211(46), 235(67), 250(34, M+); exact mass calcd for C18H18O: 250.1358; found 250.1362; [α]21D(c in CHCl3): +119.8(0.74), 97%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=114, 119)
【0065】
生成物:(+)-2,6-ジメチル-4-フェニル-4H-クロメン(6g) HPLC column, DAICEL CHIRALCEL OD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (99.5:0.5): flow rate, 0.5 mL/min: tR 9.2 and 10 min; IR(neat, cm-1): 1696, 1494, 1314, 1217, 942, 813, 697, 531; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.31-7.17(m, 5H), 6.91(dd, , J = 2.4, 8.2 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.69(s, 1H), 4.73(dd, J =1.0, 3.0 Hz, 1H), 4.58(s, 1H), 2.16(s, 3H), 1.93(s, 1H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 148.9, 147.3, 146.8, 132.3, 129.9, 128.5, 128.18, 128.17, 126.3, 122.6, 116.0, 100.2, 40.9, 20.6, 19.3; MS(m/z) 159(100), 221(31), 236(25, M+); exact mass calcd for C17H16O: 236.1201; found 236.1206; [α]21D(c in CHCl3): +142.4(0.70), 96%ee (OD-H, Hexane:iPrOH=99.5/0.5, tr=9.2, 10)
【0066】
生成物:(+)-2,6-ジメチル-4-(4-アセトキシフェニル)-4H-クロメン(6h) HPLC column, DAICEL CHIRALPAK AD-H: eluent, n-hexane/2-propanol (15:1): flow rate, 0.5 mL/min: tR 12 and 15 min; IR(neat, cm-1): 1680, 1603, 1495, 1315, 1265, 1219, 1169, 943, 813, 597; 1HNMR(400 Hz, CDCl3) δ 7.90(d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.31(d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.92(dd, d, J = 1.5, 8.3 Hz, 1H), 6.85(d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.64(brs, 1H), 4.72-4.71 (m, 1H), 4.66 (brs, 1H), 2.57(s, 3H), 2.16(s, 3H), 1.95(s, 3H); 13CNMR(400 Hz, CDCl3) δ 197.7, 152.5, 148.8, 147.4, 135.4, 132.5, 129.7, 129.0, 128.7, 128.5, 128.4, 128.3, 121.1, 116.1, 99.3, 40.9, 26.5, 20.5, 19.3; MS(m/z) 159(100), 263(28), 278(19, M+); exact mass calcd for C19H18O2: 278.1307; found 278.1316; [α]21D(c in CHCl3): +263.9(0.72), 96%ee (AD-H, Hexane:iPrOH=15/1, tr=12, 15)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中Arは置換または無置換のアリール基を表し、R,Rはそれぞれ同一又は異なっていても良い水素又はアルキル基を表し、Eはホルミル基又はアシル基を表す。)で表されるα,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物と、 一般式(II)Ar2-BXmMnで表されるアリールボロン酸若しくはその誘導体、又は一般式(III)
【化2】

(式II及びIII中、Arは置換または無置換のアリール基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基、又はフッ素原子を示し、mは1から3の整数であり、Mはアルカリ金属であり、nは0または1の整数である。)で表されるアリールボロン酸無水物とを、 一般式(IV)PdYoL1p(Chiraphos)q(式IV中、YはClO4、BF4、PF6、SbF6、OTf、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基を表し、Lは有機配位子を表し、o,p,qはそれぞれ0から6の整数を表す)で表されるパラジウム錯体触媒の存在下で反応させ、 一般式(V)
【化3】

(式V中、Ar、Ar2、R1,R2及びEはそれぞれ式I〜IVに用いた置換基と同一である)で表される光学活性β‐ジアリールカルボニル化合物を製造することを特徴とする光学活性化合物の製造方法。
【請求項2】
一般式(VI)
【化4】

(式VI中、R,Rはそれぞれ同一又は異なっていても良い水素又はアルキル基を表し、R3は水素、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R4は塩素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルチオ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいベンゾイル基、炭素数2から8のアルコキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシカルボニル基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいアミノ基、炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいカルバモイル基、ニトロ基、炭素数1から8のフルオロアルキル基、又は炭素数1から8のアルキル基を有していてもよいフェノキシ基を表す。)で表されるα,β-不飽和-β-アリールカルボニル化合物と、 一般式(II)Ar2-BXmMnで表されるアリールボロン酸若しくはその誘導体、又は一般式(III)
【化2】

(式II及びIII中、Arは置換または無置換のアリール基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基、又はフッ素原子を示し、mは1から3の整数であり、Mはアルカリ金属であり、nは0または1の整数である。)で表されるアリールボロン酸無水物とを、 一般式(IV)PdYoL1p(Chiraphos)q(式IV中、YはClO4、BF4、PF6、SbF6、OTf、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基を表し、Lは有機配位子、Lは光学活性ホスフィン配位子を示す。o,p,qはそれぞれ0から6の整数を表す。)で表されるパラジウム錯体触媒の存在下で反応させ、 一般式(VII)
【化5】

(式VII中、Ar、Ar2、R1,R2,R3及びR4はそれぞれ式II〜Vに用いた置換基と同一である)で表されるクロマノール誘導体(VII)を製造することを特徴とする光学活性化合物の製造方法。
【請求項3】
反応系に銀塩を加えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学活性化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−24607(P2008−24607A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196477(P2006−196477)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月13日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第86春季年会講演予稿集CD−ROM」に発表
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】