説明

光学測定方法およびシステム

試料(310)の欠陥を検出する検出システムは、照射アセンブリ(320,322)と検出アセンブリ(350,354)を備える。照射アセンブリは、赤外線光源(320)と、光源からの光線を試料の上または内部のスポット(346)に向ける照射光学系(322)と、を有する。検出アセンブリは、試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出する検出器(354)と、試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出器(354)に向ける検出光学系(350)と、を有する。このようなシステムは、タービンブレードの遮熱コーティングまたは歯科用もしくはその他の医療用部品等の試料の欠陥を検出するために使用してもよい。特に、このシステムは、セラミック試料の欠陥を判定するために使用してもよい。試料中の欠陥を検出する方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ある素材から製品を製造すると、欠陥が発生しうる。例えば、素材を機械加工すれば、き裂が発生することがあり、または熱工程を実行すれば、温度勾配による応力き裂が生じることがある。製造後の部品を検査し、欠陥のあるものは全て、使用中に故障する可能性があるためはねる(reject)ことが有利である。残念ながら、特定の素材や部品の形態では、その部品を破壊する以外に、部品の欠陥の有無を確認する方法はない。それ故、非破壊的試験方法が必要である。好ましくは、その方法は、工業工程の一部として利用可能である。
【0003】
カスタム部品の製造が要求される多くの医療分野において、イットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Yttria-Stabilized Tetragonal Zirconia Polycrystal; Y−TZP)が高靱性、高強度の生体適合材料として使用されている。現在のマッチング技術、例えば機械的研削およびレーザ加工等は、き裂を生じさせるかもしれず、その結果、強度が低下する。製造または機械加工中に発生する欠陥の正確な形状、大きさおよび分布が不確実であるため、信頼性の高い試験方法が必要である。
【0004】
例えば、タービンエンジンコンポーネントのセラミック遮熱コーティングの欠陥を特定することは、非常に望ましい。この分野での欠陥特定のための非破壊的手法としては、ピエゾ分光法、赤外線サーモグラフィ、および中間波長赤外線カメラを用いた反射イメージングがあり、これは非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願公開第2006/114570号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.I.Eldridge,‘Monitoring Delamination Progression in Thermal Barrier Coating by Mid−Infrared Reflectance Imaging’,International Journal of Applied Ceramic Technology,3[2]94−104(2006)
【非特許文献2】Byrnes,James(2009),“Unexploded Ordnance Detection and Mitigation”,Springer.pp.21−22,ISBN9781402092527
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の中間波長赤外線カメラによるイメージングでは、いずれの欠陥についても二次元表現しか得られず、素材の中のどの深さでその欠陥が発生しているかに関する情報は一切得られない。これに加えて、この方式により得られる情報はカメラの解像度に限定され、またそのカメラは高価である。
【0008】
したがって、本発明は、素材中の欠陥を検出するための、改良された検出システムと方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、試料中の欠陥を検出する検出システムを提供し、このシステムは、
赤外線光源、および光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向ける照射光学系を有する照射アセンブリと、
試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出する検出器、および試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出器に向ける検出光系を有する検出アセンブリと、
を備える。
【0010】
好ましくは、検出システムは、検出された光を処理するプロセッサをさらに備える。検出システムは、赤外線検出システムであってもよい。特に、検出システムは、中赤外線検出システムであってもよい。
【0011】
検出システムは、筐体に入れた状態で提供されてもよく、この筐体は、例えば、座標位置決め装置および/または関着ヘッドに取り付け可能であってもよい。
【0012】
好ましくは、試料はセラミック材料からなっていてもよい。特に、試料は、ジルコニアからなっていてもよい。赤外線光源は、中間波長赤外線光源であってもよい。赤外線光源の波長は3から10μmであってもよい。好ましくは、赤外線光源の波長は3から7μmであってもよい。より好ましくは、この赤外線光源の波長は3から5μmであってもよい。その代わりに、またはそれに加えて、検出器は、中赤外線を検出する検出器であってもよい。特に、検出器は、中赤外線だけを検出する検出器であってもよい。
【0013】
赤外線光源は、空間的に広がりを持つ光源であってもよい。赤外線光源は、時間的インコヒーレント光とすることができる。赤外線光源は、広帯域幅光源とすることができる。
【0014】
空間的に広がりを持つ光源は、検出器によって受けられる光のスポットの大きさの少なくとも2倍であってもよい。空間的に広がりを持つ光源は、検出器によって受けられる光のスポットの大きさの約10倍であってもよい。空間的に広がりを持つ光源は、検出器により受けられる光のスポットの大きさの10倍より大きくてもよい。好ましくは、光源は、焦点における照度が実質的に最大となり、スペックルコントラストが実質的に最小となるように選択される。
【0015】
広帯域幅光源により、照度が実質的に最大となり、スベックルコントラストが実質的に最小となりうる。
【0016】
光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向けるための照射光学系は、1枚またはそれ以上のレンズを含んでいてもよい。照射光学系は、1枚またはそれ以上の鏡を含んでいてもよい。照射光学系は、例えばピンホール等の絞りを含んでいてもよく、絞りにより、共焦点照射スポットが得られる。
【0017】
光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向けるステップは、光線をスポットに合焦させるステップを含んでいてもよい。試料の上または内部のスポットは、照射アセンブリの焦点であってもよい。照射アセンブリは、光源からの光線を試料の上または内部の焦点に向ける照射光学系を含んでいてもよい。
【0018】
照射アセンブリは、照射地点、すなわち試料の上の被照射スポットで、選択された波長の照度が最大となるように構成してもよい。照射アセンブリは、検出器においてスペックルコントラストが最小になるように構成してもよい。
【0019】
試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出するステップは、検出器の焦点からの光を検出するステップを含んでいてもよい。試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出器に向ける検出光学系は、検出器の焦点からの光を検出器に向ける検出光学系であってもよい。
【0020】
試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出器に向ける検出光学系は、共焦点光線を生成する光学系を含んでいてもよい。この光学系は、例えば絞りを含んでいてもよい。検出光学系が共焦点光線を生成する場合、検出器によって受けられる光のスポットは共焦点光のスポットであってもよい。検出光学系は、1枚またはそれ以上のレンズを含んでいてもよい。検出光学系は、1枚またはそれ以上の鏡を含んでいてもよい。
【0021】
検出器は、1つの赤外線センサを備えていてもよい。その代わりに、検出器は複数の赤外線センサを備えていてもよい。複数のセンサからの出力は、合体して、全出力を提供するようにすることができる。
【0022】
検出アセンブリは、試料を透過された光を検出するように構成されていてもよい。その代わりに、またはそれに加えて、検出アセンブリは、試料によって反射された、または試料から後方散乱した光を検出するように構成されていてもよい。
【0023】
照射アセンブリは、照射光軸を有していてもよい。検出アセンブリは、検出光軸を有していてもよい。光軸という用語は、当業界で周知である。照射光軸と検出光軸の二等分線は、照射光軸と検出光軸を最小の角度で等分するベクトルである。
【0024】
検出アセンブリが試料によって反射された、または試料から後方散乱した光を検出するように構成されている場合、好ましくは、照射光軸と検出光軸の二等分線は検査対象の試料の表面の法線に略平行ではない。
【0025】
検出システムと照射システムは、相対的に移動可能であってもよい。この場合、光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向ける照射光学系は、試料の上または内部のスポットを検出器によって検出される光と略整合した状態に保つように構成されていてもよい。検出器によって検出される光はスポットであってもよく、このスポットは共焦点スポットであってもよい。それ故、照射アセンブリの照射の焦点は、赤外線検出システムの共焦点スポットと略整合した状態に保たれてもよい。
【0026】
スポットは、試料に関して小さな照射面積であってもよい。スポットは、照射アセンブリの焦点であってもよい。スポットは円形、四角形またはその他の形状であってもよい。試料には複数の被照射サブスポットがあってもよく、この複数のサブスポットはそれぞれ、1つの検出器または別々の検出器によって検出されてもよい。複数の被照射スポットがあってもよい。各スポットまたはサブスポットは、1つの照射源または複数の照射源のいずれによって生成されてもよい。
【0027】
検出システムは、試料ホルダを備えていてもよい。検出システムの試料ホルダと照射アセンブリは、相対的に移動可能であってもよい。検出システムの試料ホルダと検出アセンブリは、相対的に移動可能であってもよい。試料ホルダは、検出システムの照射および検出アセンブリの両方に関して相対的に移動可能であってもよい。試料ホルダは、直線1、2または3自由度で移動可能であってもよい。試料ホルダは回転可能であってもよい。例えば、試料ホルダは傾斜可能であってもよい。
【0028】
検出された光を処理するプロセッサは、信号増幅器を備えていてもよい。この信号増幅器は、検出システムの筐体の中に配置されていてもよい。検出された光を処理するプロセッサは、デジタル化電子回路を備えていてもよい。デジタル化電子回路は、検出システムの筐体の中に配置されていてもよい。
【0029】
検出された光を処理するプロセッサは、コンピュータプロセッサを含んでいてもよい。このコンピュータプロセッサは位置決め装置のためのコントローラの中に位置付けられていてもよく、この位置決め装置には検出システムが取り付けられてもよい。しかしながら、当業者であればわかるように、プロセッサのコンポーネントは別の箇所に位置付けられていてもよい。
【0030】
検出システムは、位置決め装置に取り付けられていてもよい。位置決め装置は、例えば工作機械、位置決めロボットまたは座標測定装置等の座標位置決め装置であってもよい。このような位置決め装置は、直線移動1、2または3自由度を有していてもよい。位置決め装置は、他の自由度、例えば少なくとも回転1自由度等を有していてもよい。位置決め装置は、例えば、回転2または3自由度を有していてもよい。
【0031】
検出システムは、関着ヘッドに取り付けられていてもよい。検出システムは、位置決め装置に取り付けられた関着ヘッドに取り付けられていてもよい。関着ヘッドは、例えば、電動式でも手動式でもよい。関着ヘッドは、間欠移動ヘッドでも、連続回転ヘッドでもよい。関着ヘッドは、少なくとも回転1自由度を有していてもよい。好ましくは、関着ヘッドは、少なくとも回転2自由度を有していてもよい。関着ヘッドは、複数の回転自由度を有していてもよい。
【0032】
本発明の第二の態様は、試料中の欠陥を検出する方法が提供され、この方法は、
赤外線源からの光線を試料の上または内部のスポットに向けるステップと、
試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出するステップと、
試料からの光を解析してすべての欠陥を特定するステップと、
を含む。
【0033】
好ましくは、この方法は、上述の検出システムを使って実行される。赤外線光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向けるステップと、試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出するステップは、座標位置決め装置に取り付けられた検出システムによって実行されてもよい。試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出するステップは、焦点を有する検出器によって実行されてもよい。
【0034】
この方法は、追加として、
試料全体にわたって検出器の焦点を走査するステップと、
検出器の焦点が試料全体にわたって走査される際の試料からの光を検出するステップと、
を含む。
【0035】
上記の方法はまた、
試料全体にわたって被照射スポットを移動させるステップを含む。
【0036】
検出システムの焦点を、被照射スポットと同時に、試料全体にわたって移動してもよい。
【0037】
試料または試料ホルダが照射アセンブリ、検出アセンブリまたはその両方に関して相対的に移動可能である場合、方法はさらに、試料を走査するステップを含んでいてもよい。試料を走査するステップは、光のスポットと試料を相対的に移動させるステップを含んでいてもよい。光のスポットと試料を相対的に移動させるステップは、赤外線光源から試料の上または内部のスポットに向けられる光線と試料を相対的に移動させるステップを含んでいてもよい。赤外線光源から試料の上または内部のスポットに向けられた光線を移動させるステップは、光源もしくは照射光学系またはその両方を移動させるステップを含んでいてもよい。
【0038】
試料または検出および/または照射アセンブリが載置されてもよいXまたはX,YまたはX,Y,Z移動ステージを設置して、上記相対的運動を実現してもよい。他の自由度、例えば回転自由度等を有する移動ステージを設置してもよい。有利な態様としては、移動ステージは、並進3自由度と回転2自由度を有するが、用途によってはその他の自由度を有することが好ましいかもしれない。試料と検出システムの相対的移動は、検出システムを、座標位置決め機械等の位置決め装置上に取り付けることによって実現してもよい。特に、試料と検出システムの間の相対的運動は、検出システムを関着ヘッドに取り付けることによって実現してもよく、関着ヘッドは、座標位置決め装置に取り付けられる。試料は、例えば、座標位置決め装置のベッドに取り付けてもよい。
【0039】
方法は、試料の上または内部の複数の被照射スポットからのデータを収集するステップを含んでいてもよい。走査中に試料の上または内部の各被照射スポットから検出されるデータは、累積されてもよい。このようにして、試料の各部分により透過され、反射され、散乱し、または吸収された光の量のマップを作成してもよい。
【0040】
線データは、例えば試料の一次元走査を実行することによって取得してもよい。面データは、二次元走査を実行することによって取得してもよい。体積データは、試料の三次元走査を実行することによって取得してもよく、この場合、光のスポットを試料の体積全体に移動させてもよい。
【0041】
方法は、校正ステップを含んでいてもよい。校正ステップは、試料の上または内部の被照射スポットから検出された光の位置と座標位置決め装置の座標システムの間の関係を測定するステップを含んでいてもよい。試料の上または内部の被照射スポットから検出された光は、検出器の焦点から検出された光であってもよい。
【0042】
方法は、第一の検査システムで試料を検査して、試料からのデータを取得するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0043】
第一の検査システムで試料を検査して、試料からのデータを取得するステップは、座標位置決め装置に取り付けられた第一の検査システムによって実行されてもよい。
【0044】
方法は、試料の上または内部の被照射スポットから検出された光の位置と、第一の検査システムによって試料から取得したデータの関係を判定する校正ステップをさらに含んでいてもよい。
【0045】
試料の上または内部の被照射スポットから検出された光の位置は、試料の、検出器が検出する光の出所となる位置、すなわち検出システムの焦点である。
【0046】
試料の上または内部の被照射スポットから検出された光の位置と、第一の検査システムによって試料から取得したデータの関係を判定する校正ステップは、
第一の検査システムを使って校正アーティファクトの第一の点の位置を判定するステップと、
検出システムを使って校正アーティファクトの上記第一の点の位置を判定するステップと、
第一の点の位置の間のずれを判定するステップと、
を含んでいてもよい。
【0047】
校正アーティファクトが設置されてもよい。この構成アーティファクトは、例えば基準球であってもよい。その他の校正アーティファクトも周知で、検出システムとの使用に適しており、そのような校正アーティファクトの一例が立方体の角である。校正アーティファクトはジルコニアからなっていてもよい。校正アーティファクトは既知の形態を有していてもよく、これは第一の検査システム、例えばタッチトリガ、走査または表面粗さプローブと、本発明による検出システムの両方によって測定されてもよい。校正アーティファクトは、第一の検査システムと本発明による検出システムの両方によって、三次元での位置判定が可能な幾何学的特徴を有していてもよい。第一の検査システムと検出システムは、同じ基準座標系を有していてもよい。校正アーティファクトは、座標位置決め装置のベッドに取り付けられてもよい。
【0048】
好ましくは、検出システムは本発明による検出システムである。校正アーティファクトが球である場合、校正アーティファクトの第一の点はその球の中心であってもよい。校正アーティファクトが立方体である場合、第一の点は立方体の第一の角であってもよい。
【0049】
方法は、校正ステップ中に判定されたずれを検出システムによって取得されたデータに当てはめるステップをさらに含んでいてもよい。
【0050】
本発明はまた、例えばコンピュータまたはコントローラの中の処理デバイスによって実行されたときに、処理デバイスに上述の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムコードを提供する。これに加えて、本発明は、処理デバイスによって実行されたとき、処理デバイスに上述の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムコードが記録されたコンピュータ読取可能媒体を提供する。
【0051】
また別の実施形態において、本発明は、
プロセッサと、
メモリと、
を備え、プロセッサとメモリの少なくとも一方が上述の方法を実行するようになされている処理デバイスを提供する。
【0052】
処理デバイスは、一次的または永久的に検出システムに取り付けられたコンピュータまたはコントローラの中に位置付けることができる。コンピュータは、独立ユニットとすることも、検出システムの中に組み込むことも、または検出デバイスに接続することもできる。
【0053】
また、試料の欠陥を検出する方法も開示され、この方法は、
赤外線光源からの光を試料に向けるステップと、
試料からの光を検出するステップと、
試料からの光を解析して、すべての欠陥を特定するステップと、
を含む。
【0054】
さらに、材料中の欠陥を検出する検出システムが開示される。好ましくは、材料はセラミックであり、特にジルコニアである。
【0055】
検出システムは、
赤外線光源と、
光源からの光を試料に向ける発光光学系と、
試料からの光を検出器に向ける検出光学系と、
試料からの光を検出する検出器と、
検出された光を処理するプロセッサと、
を備えていてもよい。
【0056】
セラミック材料は、吸収と散乱の点で特異な光学特性を有し、これによって、高速でロバストな光学測定技術を開発することが難しくなっている。可視光の散乱は、これらの不透明なセラミックスについては特に問題である。中赤外線(MIR)測定方式は、試料内の光の透過と、試料による反射または試料による吸収を利用したイメージング方法であり、このような透過、反射および吸収は、中赤外線の波長で発生する散乱が少ないために可能である。広帯域幅赤外線源からの光が試料を照射し、それが赤外線センサによって観察される。試料内の光透過を観察すると、画像に現れる暗い領域はバルク材料内のき裂またはその他の欠陥等の特徴物の存在を示す。
【0057】
セラミックスの光学検査は、これらの半透明材料の中で発生する大量の散乱が障害となりうる。これは、構造の結晶の寸法と同様の波長を有する光を使用することによって克服できる。歯科用ジルコニアおよび遮熱コーティングの場合、これは1から10μmのオーダーである。ジルコニアの光透過特性は、この範囲の中の、より長い波長が吸収され、より短い波長はより多く散乱する、というものである。したがって、約3から5μmの範囲に光が透過される光学的「窓」があり、それによって表面から数ミリメートルに下に埋まっている特徴物の検査が可能となる。約3から7μmの波長を使用できるが、3から5μmの範囲でこの材料の最良の結果を生むことがわかったため、この範囲が好ましい。
【0058】
一例として、走査用共焦点顕微鏡が、透過と反射のいずれかにおいて使用され、マイクロメートルのオーダーの波長の赤外線光で動作する。赤外線光源からの光線が試料に向けられ、カメラまたはその他のセンサがその後の光線を受け取り、これが解析される。
【0059】
次に本発明を、例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】透過型赤外線カメライメージングシステムを示す図である。
【図2】透過型赤外線スポット検出システムの一例を示す図である。
【図3】ジルコニアの試料について撮影されたMIR画像とその後のESEM画像の図である。
【図4】反射型検出システムの一例を示す図である。
【図5】軸外反射型検出システムの一例を示す図である。
【図6】座標位置決め装置に取り付けられた関着ヘッドに取り付けられた赤外線イメージングシステムの一例を示す図である。
【図7】図6に示す赤外線イメージングシステムと関着ヘッドの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、透過型赤外線イメージングシステムを示す。試料10は、赤外線光源20、例えば白熱電球によって照射され、試料10を通過する光線28が赤外線カメラ30によって検査される。
【0062】
赤外線源20からの光は、平行光学系22を通過して平行光24となり、検査対象の試料10に入射する。試料10を通過する光線28は、赤外線カメラ30によって受け取られる。カメラからのデータ32は、例えば、画像処理ソフトウェア34によって処理されて、試料の画像が生成される(図3に示される)。
【0063】
透過型赤外線カメライメージングシステムから得られた試料の画像は、試料10の、カメラ30の焦点面付近の透過特性に関する情報を提供する。図1の赤外線カメライメージングシステムには、使用分野を限定するようないくつかの欠点があり、例えば、二次元情報しか得られない、情報がカメラの解像度に限定される、およびカメラが高価である、等がある。
【0064】
図2は透過型赤外線検出システムを示しており、これは、光源40および光源をスポット46に合焦させる第一の焦点調節光学系48を有する照射アセンブリ41と、集束レンズ50、絞り52および赤外線感知検出器54を有する検出器アセンブリ51と、を備える。試料110は、移動ステージ60に取り付けられ、照射アセンブリ41と検出器アセンブリ51との間に位置付けられる。赤外線検出器54からのデータは、プロセッサ134に送信(132)される。
【0065】
図2に示される検出システムにおいて、(図1の装置で使用されるような)広い領域の赤外線照射は不要である。その代わりに、光源40からの光は、第一の焦点調節光学系48を使って試料110の上または内部のスポット46に合焦され、これによって、同じ出力の光源によるスポットにおける照度が増大するため、光源の効率が改善される。集束レンズ50、絞り52および1つの赤外線感知検出器54を使って、試料110から透過される光を検出する。絞り52は、検出器焦点調節光学系50の共役点にあり、光学系の焦点面から外れる光を遮断する役割を果たし、すなわち、これによって、確実にある深さからの光だけが検出器54へと透過されることになり、それ故、検出システムは共焦点型である。使用する赤外線感知検出器54が1つであることは、多数の赤外線センサを使用するより安価である。
【0066】
図2に示される光源40は白熱電球である。この光源は、広帯域幅であり、空間的に広がりを持ち、時間的にインコヒーレントである。試料の照射は共焦点型ではない。これらの要素の全てにより、そのイメージングシステムのスペックルコントラストは低くなる。
【0067】
このような光源を使用すると、イメージングシステムの設計に対する要求事項が増す。第一に、光源は広帯域幅のものであるため、共焦点イメージングシステムの焦点距離を一定にする(および、したがって、対物レンズから一定の距離の点で合焦する)ためには、イメージング光学系は、光源と検出器の複合構造の光帯域幅において有効に無彩色であるべきである。空間的に広がり持つ光源の使用によって、照射の最小焦点サイズが大きくなり、それによって共焦点イメージングシステムが合焦する点における放射照度が低くなる。また、この焦点における放射照度の低下には、時間的にインコヒーレントな光源の出力は、時間的にコヒーレントな光源、すなわちレーザ源の出力より小さい傾向があるという事実も貢献している。したがって、この低い強度の光源からの光ができるだけ多く共焦点システムの焦点に到達し、できるだけ多くの透過光が検出器に到達することが重要である。したがって、検査対象のセラミックスを通る透過特性が良好な光の波長が望ましい。
【0068】
遮熱コーティング、セラミック製医療用インプラント(例えば、歯科修復物、人工関節、人工骨インプラント等)およびその他の構造的セラミック部品は、一般に、ジルコニアまたは同様のセラミックスで構成される。このようなセラミックスには、中間波長赤外線領域の中の3から8μmの波長が必要であり(非特許文献2)、3から5μmの波長が好ましい。
【0069】
図2に示される照射装置41(40,48)と検出器51(50,52,54)のアセンブリ(発光検出アセンブリ41,51ともいう)は、相互に一定の空間関係にある。試料110の各部分により透過される光の量のマップは、試料110を発光検出アセンブリ41,51に関して移動させ、検出アセンブリの焦点を通じてその部品の検査対象領域を走査することによって作成できる。発光検出アセンブリ41,51に関して試料110を移動させる1つの方法として、X,YまたはX,Y,Z(図示のもの)の移動ステージ60を提供し、その上に試料110を置く。あるいは、発光検出アセンブリ41,51を試料に関して移動させてもよく、または発光検出アセンブリを相互に相対移動させてもよい。発光検出アセンブリが相対的に移動可能である場合、発光システムの照射の焦点は、赤外線検出システムの共焦点スポットと略整合した状態に保たれるべきである。このような相対移動は、各部分のシャドウイングを克服し、照射および回帰信号が通過する必要のある材料を小さくすることができる。
【0070】
システムの空間分解能は、透過応答を空間的にオーバーサンプリングし、その結果を、検出システムの点拡がり関数を使ってデコンボリューションすることによって改善することができる。これにより、セラミックス検査用の、高解像度の3D非破壊的検査システムが得られる。
【0071】
図2に示される赤外線検出器54からのデータは、プロセッサ134に送信(132)される。有利な態様として、プロセッサ134はまた、移動の命令140を移動ステージ60に送信し、このステージの上に試料110が取り付けられる。これにより、センサからのデータを処理して試料の画像を形成することが容易となり、それは、プロセッサが、試料110の位置と、赤外線検出器54が受け取るデータと、に関する両方の座標情報を把握しているからである。
【0072】
図2のアセンブリは、図1に示される赤外線カメラシステムより、格段に安価であり、感度が高い。試料110を発光検出アセンブリ41,51に関して移動させることによって、その試料に関する2Dの透過応答が得られるだけでなく、絞りが焦点面以外からの光を遮断するため、深さ情報も回収できる。それ故、試料の3Dマップを生成することが可能である。
【0073】
システム内の光学系の位置と光学系の焦点距離が分かっているため、焦点の位置が判定できる。これに加え、共焦点システムでは、検出器が受け取る光は焦点の含まれる面から発しているが、これは、他の全ての光がピンホールによって遮断されるからである。したがって、赤外線検出システムは、各情報が試料のどの地点から発しているかを判定でき、3Dマップを作成できる。
【0074】
図2の実施形態で使用可能な他の光源としては、蛍光灯やキセノンフラッシュランプがある。このようなランプは、スペックルコントラストが低い。
【0075】
他の実施形態においては、光源は、例えばレーザ光源であってもよい。レーザまたはその他の光源は、ファイバ型であってもよい。ファイバからの入射光により、光源の空間的広がりは、ファイバのコア径によって画定される。シングルモードの光ファイバはコア径が小さく、例えば10マイクロメートル未満であり、したがって、光源の空間的広がりは、10マイクロメートル未満のオーダーである。
【0076】
例えば、白熱電球と比較した場合、レーザ光とファイバからの光によって、試料の検査対象地点における照度が高くなる。このような光源は、試料へのより深い侵入深さが必要な場合に使用してもよい。レーザ光源またはファイバ型光源は、共焦点型で、試料により深く侵入するようにしてもよい。しかしながら、このような光源はコントラストスペックルが高くなる可能性があり、それによって結果として得られるデータに固定パターンのランダムノイズが加わる。このような固定パターンのランダムノイズはフィルタ処理しなければならない。しかしながら、フィルタの動作は、ノイズと信号を区別できず(例えば、微細き裂や空隙)、そのため、スペックルノイズと同じオーダーの大きさの特徴物もフィルタ処理される。小さな特徴物の分解能は、コントラストスペックルの高い光源を使用することにより、大幅に低下する。
【0077】
図3に示される試料は、レーザ加工された穴を有し、これらの穴の間に、レーザ工程中の高い温度勾配によってき裂が生じている。これらのき裂200,202は、MIR画像の中で明らかである。き裂の存在を確認するために、試料を切断した後に試料のESEM画像を撮影したところ、検出されたき裂をそれぞれ300と302に見ることができる。
【0078】
セラミックスの(MIR波長での散乱と吸収の点での)好ましい光学特性によって、最大6mmもの厚さの材料であっても、欠陥が発生する領域において、マイクロスケール(数マイクロメートルのオーダー)でのき裂の検出にとって十分な光透過とコントラストの両方の変化がある。以前は、このような厚さのセラミックスの欠陥を検出するには、最終的な部品検査には適さない破壊的手法(すなわち、切断)しかなかった。その結果、この中赤外線透過イメージング(MIR−TI)技術は、ジルコニア材料の厚い部分を検査するための、新規で信頼性の高いソリューションを提供する。
【0079】
図4は、反射型検出システムを示す。この例では、赤外線源220からの光は、第一の焦点調節光学系222を通過して、ビームスプリッタ224に入射する。ビームスプリッタからの光は、第二の焦点調節光学系226を使って、試料210の上のスポット246に合焦される。試料210から反射された、または後方散乱した光230は、再び第二の焦点調節光学系226を通り、ビームスプリッタ224を通り、絞り252を通って赤外線センサ254に入る。センサ254からのデータは、プロセッサ234で処理される。
【0080】
図4に示されるように、試料が移動式ステージ260に取り付けられると、この移動に関する命令240がプロセッサ234によってステージのモータ(図示せず)に与えられることが好ましい。
【0081】
図4に示される反射型システムでは、不完全箇所があると光の後方散乱が発生し、そのため、材料に欠陥のないと検出器での応答は暗く、不完全箇所または欠陥があると明るい反応となる。事実上、反射型システムでは、透過型システムで得られるものに対してネガティブの画像が得られる。
【0082】
別の反射型装置においては、試料の背後に鏡が設置され、これは、タービンブレード上のセラミックコーティングの評価用として適している。しかしながら、システムによっては、鏡により、検出された信号が混同される可能性があり、検出器は鏡によって反射された光と材料の中の欠陥から後方散乱した光を受け取るかもしれない。遮熱コーティングは、背後に鏡を置かずに、図4と図5に関して説明する反射型システムを使って検査してもよい。
【0083】
図5は、軸外反射型赤外線検出システムの例を示す。この例において、赤外線源320からの光は、第一の焦点調節光学系322によって試料310の上または内部のスポット346に合焦される。試料310の上または内部のスポット346から反射され、または後方散乱した光330は、第二の焦点調節光学系350を通過し、絞り352を通過し、赤外線センサ354に入る。センサ354からのデータは、プロセッサ334で処理される。
【0084】
この例において、試料310は、タービンブレード312の上の遮熱コーティング311からなる。試料310は、移動可能、傾斜可能なステージ360に取り付けられる。ステージ360は、x,y,zと2つの回転軸で移動可能であり、これは図の矢印a,b,cで示される。前述のように、この移動に関する命令340が、プロセッサ334によってステージのモータ(図示せず)に与えられることが好ましい。
【0085】
ステージ360は、試料310を移動させて、試料310の検査対象の表面が照射およびイメージングシステムの光軸の二等分線に略垂直にならないようにすることができるモーションシステムである。これによって、鏡面反射された光400がセンサ354に到達し、試料310の上または内部のスポット346から反射された光を遮断する機会が減る。
【0086】
試料310が複雑であると、試料310を、試料310の検査対象表面が照射およびイメージングシステムの光軸の二等分線に略垂直にならないように位置付けることにより、シャドウイングの問題が発生することがあるため、同軸型システムが好ましいかもしれない。反射型システムが「軸外型」でなければ、偏光フィルタをシステム内に設置して、その表面から鏡面反射された光400が後方散乱した光を遮断する可能性をなくしてもよい。しかしながら、このようなフィルタによって、鏡面反射が検出器に到達する問題は避けられるかもしれないが、信号の半分もまた破棄される。放射照度が低いと、スペックルが最小となる実施形態の場合、信号の半分が破棄されることは不利となりうる。
【0087】
同軸型システムにおいて、軸外型システムの信号強度は、同軸型システムでの測定速度を半分にすることによって保持されるかもしれない。あるいは、より高い開口数のイメージングシステムを使用してもよく、これは後方散乱光をより多く有効に収集できる。これは、高価でかさばり、アクセスを制限するかもしれないが、スペックルコントラストをさらに低減させ、システムの深さ分解能を改善するという利点を有する。現実的なシステムにおいて、同軸システムが必要であるか、および、どの程度の開口数が費用、速度および分解能に基づいて適当であるかに対して、妥協点を探らなければならず、これらの要素の適正なバランスは用途によって異なる。
【0088】
図2、図4および図5に関して説明したような共焦点イメージングシステムを使用することによって、散乱、透過、反射および吸収等の光学的現象が観察される深さを特定できる。試料に関するデータを生成するために、検査対象の体積全体にわたって焦点を走査しなければならない。線データは一次元走査でよく、面データには二次元走査が必要であれ、体積データには三次元走査が必要である。この走査は、複雑な形状の部品、例えば高圧タービンブレードのコンフォーマルコーティングを測定する必要性に加え、時間が掛かることがある。したがって、図6に関して説明するように、イメージングシステムを座標位置決め装置の上に取り付けることが有利となりうる。
【0089】
図6は、赤外線検査システム500が関着ヘッド510に取り付けられ、ヘッド510が位置決め装置、この場合は座標測定装置520に取り付けられている例を示しており、図7は、関着ヘッド(articulating head)510に取り付けられた赤外線検査システム500の拡大図である。校正アーティファクト(calibration artefact)540もまた示されている。
【0090】
座標測定装置520は、機械ベッド522と、アーム526を担持する相対移動可能なキャリッ524と、を備える。この機械のアーム526は、矢印528で示されるように、3つの直線軸x,y,zにおいて移動可能である。関着ヘッド510は、座標測定装置520のアーム526に取り付けられ、それと一緒に移動する。
【0091】
関着ヘッド510は、第一と第二の軸のAとBのそれぞれの周囲で回転可能である。関着ヘッド510は、第一および第二の筐体部材511および512を備える。第一の筐体部材511は、座標測定装置520のアーム526に取り付けられるようになされており、第一の軸Aの周囲で第一のシャフト(図示せず)を角度的に変位させる第一のモータ(図示せず)を格納する。第一のシャフトには、第二の筐体部材512が取り付けられ、これは第二の軸Bの周囲で第二のシャフト(図示せず)を角度的に変位させる第二のモータ(図示せず)を格納する。赤外線検査システム500は第二のシャフトに取り付けられ、それと一緒に回転する。座標測定装置で使用するための関着ヘッドは、レニショウの特許文献1により詳しく記載されている。
【0092】
座標位置決め装置の直線軸によって、赤外線検査システム500のスポットフォーカスを検査対象のセラミックスの体積全体を通じて走査することが可能となる。関着ヘッドを使用して回転軸を追加することにより、体積の中で視線の届きにくい部分へのアクセスが可能となり、赤外線検査システムの照射システムとイメージングシステムの光軸が一致しない場合のシャドウイングに伴う問題を回避できる。回転軸により、赤外線検査システムは、表面に対して、赤外線検査システムの検出器の中に鏡面反射が戻るような姿勢をとらないように(すなわち、表面の法線が、照射光軸と検出光軸の二等分線に平行でないように)することが可能となる。
【0093】
赤外線検査システム500は、図4と図5に関して説明したように、反射型赤外線検出システムである。赤外線検査システム500の照射アセンブリからの光は、焦点502に送られ、物体を検査する際、この焦点502が、物体の表面上の、または物体のバルク材料の中の所望の点となるように位置付けられる。
【0094】
赤外線検査システム500は、例えば、測定プローブの代わりに関着ヘッド510に取り付けられる。物体に対する操作中に、赤外線検査システム500は、異なるタイプの検査システム、例えば、走査、タッチトリガ測定プローブまたは表面粗さプローブと交換してもよい。交換は、例えば、手で行っても、または、座標測定装置を操作して関着ヘッドを他の検査システムが保管されている検査システムラック上へと移動させ、装置を操作して検査システムラックの別の検査システムと赤外線検査システム500を交換することによって行ってもよい。かくして、赤外線検査システム500を使ったイメージング作業は、他の検査作業の前、後またはその最中に行ってもよい。
【0095】
校正アーティファクトは、ジルコニア基準球540の形態であり、座標測定装置520のベッド522に取り付けられる。校正プロセスは、ジルコニア基準球540を使用して、赤外線検査システム500の焦点502と、座標測定装置520の座標系と、の関係を確認することによって行ってもよい。
【0096】
ジルコニア基準球540の形状は分かっており、これは、第一の検査システム(前述のもの)と赤外線検査システム500との両方により測定されてもよい。基準球540の中心の位置は、第一の検査システムによって、その後、赤外線検査システムによって(またはその逆)判定され、2つの中心の間のずれを使って、赤外線検査システム500の焦点502が第一の検査システムの測定中心に関してどこにあるかを確認する。このずれは次に、その後取得されるデータがあればそれに適用してもよく、それによって、座標幾何学や、座標位置決め装置に取り付けられたその他の検査システムによって確立されたその他のデータを、赤外線検査システム500によって確立されたセラミックコンポーネントの中の欠陥に関するデータに関係付けることができる。
【0097】
ジルコニア基準球の代わりに、第一の検査システムと赤外線検査イメージングシステムの両方を使用して1つの地点を一意的に確認できる、その他どのような基準アーティファクトを使用してもよい。
【0098】
同じ座標位置決め装置の上で赤外線検査システム以外のシステムによって試料を検査する場合、試料に関する形状および/またはその他のテータは基本的に、赤外線イメージングシステムのデータと同じ基準座標系にある。これによって、例えば、遮熱コーティングを塗布する前に部品座標系に関する既知の位置における表面仕上げを正確に評価してもよく、またこの表面仕上げが遮熱コーティングの成長または欠陥に与える影響を、コーティングプロセス後に同じ部品座標系においてその部分を検査することによって確認してもよい。これによって、プロセスの開発と管理をはるかに体系的かつ正確に行うことができる。航空宇宙および医療分野における自動検査データの相関関係もまた、ロバストで自動的な品質管理と記録システムを可能にし、人為的エラーの発生範囲がずっと狭くなる。これは、航空および医療業界の認証機関の承認を受ける上で望ましい。
【0099】
座標測定機械について説明したが、例えば工作機械またはロボットアーム等、その他の位置決め装置でもよい。上述の位置決め装置と関着ヘッドを備えるシステムは、位置決めロボットとしてもよい。特に、座標位置決め装置と関着ヘッドを備えるシステムは、座標位置決めロボットとしてもよい。
【0100】
前述の関着ヘッドは、例えば電動式でも手動式でもよい。関着ヘッドは、間欠移動ヘッドでも、連続回転ヘッドでもよい。
【0101】
さらに、赤外線検査システム500そのものを、関着ヘッドまたは、位置決めシステムに取り付けられるその他の中間デバイスに取り付けるよりも、位置決め装置に取り付け、それと一緒に移動するようにしてもよい。
【0102】
図1、図2および図4に示される試料は、セラミック歯科用コンポーネントである。歯科およその他多くの産業におけるセラミックコンポーネントの欠陥特定することは、非常に重要である。歯科分野での非破壊的試験は、「キャンドリング(candling)」という、物体を明るい光にかざして影や不完全箇所を探す方法、色素侵入(dye penetration)およびX線に限られる。色素侵入以外はいずれも分解能が低く、大きなき裂しか特定できず、染色侵入は、審美的な部品にとって不適当であり、また毒性の問題もある。X線またはキャンドリングでは特定できない大きなき裂は、部品の機械的完全性に重大な悪影響を与える可能性がある。
【0103】
したがって、本発明は、非破壊的試験を用いたセラミック材料の欠陥検出方法、および、特に、中赤外線透過または反射方式を用いたジルコニア材料のための方法を提供しうる。本発明により、セラミック部品の中、数ミリメートルまでの深さに埋まった、ごく小さな不完全箇所も特定可能であり、これらには、既存の手法で可能な限界の大きさよりはるかに小さなき裂も含まれる。
【0104】
例と具体的な説明はジルコニア材料および、特に歯科分野でのその使用に関しているが、上述の方法と検出システムは、他のセラミック材料、および、欠陥が皆無の部品または非常に小さな欠陥しか許容されないその他の業界にも適用可能である。例えば、図5に示されるように、赤外線検査システムは、遮熱コーティングの検査に使用できる。
【0105】
異なる材料が使用されている場合、使用する波長範囲は上述の範囲とは違うかもしれない。しかしながら、当業者であれば、問題の材料の赤外線分光の解析によって、最適な波長範囲を特定できるであろう。
【0106】
試料の検査結果を提示する簡単な方法は、画像の使用であるが、情報はそれ以外の方法、例えば表等で提示することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の中の欠陥を検出する検出システムであって、
赤外線光源、および前記赤外線光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向ける照射光学系を有する照射アセンブリと、
赤外線を検出する検出器、および試料の上または内部の被照射スポットからの光を前記検出器に向ける検出光学系を有する検出アセンブリと、
を備えることを特徴とする検出システム。
【請求項2】
セラミック材料の中の欠陥を検出するための請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
ジルコニアの中の欠陥を検出するための請求項1または2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記赤外線光源は中間波長赤外線光源であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の検出システム。
【請求項5】
前記赤外線光源の波長は3から7μmであることを特徴とする請求項4に記載の検出システム。
【請求項6】
前記赤外線光源の波長は3から5μmであることを特徴とする請求項5に記載の検出システム。
【請求項7】
前記赤外線光源は空間的に広がりを持つことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の検出システム。
【請求項8】
前記赤外線光源は時間的にインコヒーレントであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の検出システム。
【請求項9】
前記光源は広帯域幅光源であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の検出システム。
【請求項10】
試料の上または内部の被照射スポットからの光を検出器に向ける前記検出光学系は、共焦点光線を生成する絞りを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の検出システム。
【請求項11】
前記検出アセンブリは、試料を透過した光を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の検出システム。
【請求項12】
前記検出アセンブリは、試料によって反射され、または試料から後方散乱した光を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の検出システム。
【請求項13】
前記照射アセンブリは照射光軸を有し、前記検出アセンブリは検出光軸を有し、前記照射および検出光軸の二等分線は、検査対象表面の法線と略平行ではないことを特徴とする請求項12に記載の検出システム。
【請求項14】
前記検出システムは、関着ヘッドに取り付けられることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の検出システム。
【請求項15】
前記関着ヘッドは座標位置決め装置に取り付けられることを特徴とする請求項14に記載の検出システム。
【請求項16】
試料ホルダをさらに備え、前記試料ホルダは、前記検出および照射アセンブリに関して相対的に移動可能であることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の検出システム。
【請求項17】
前記検出された光を処理するプロセッサをさらに備えることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の検出システム。
【請求項18】
試料中の欠陥を検出する方法であって、
赤外線光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向けるステップと、
前記試料の上または内部の前記被照射スポットからの光を検出するステップと、
前記試料からの前記光を解析して、欠陥を特定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
赤外線光源からの光線を試料の上または内部のスポットに向ける前記ステップと、前記試料の上または内部の前記被照射スポットからの光を検出する前記ステップは、座標位置決め装置に取り付けられた検出システムによって行われることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記試料の上または内部の前記被照射スポットから検出された前記光の位置と、前記座標位置決め装置の座標系と、の関係を判定する校正ステップをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第一の検出システムで前記試料を検査して、前記資料からのデータを取得するさらなるステップを含むことを特徴とする請求項19から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
第一の検出システムで前記試料を検査する前記ステップは、前記座標位置決め装置に取り付けられた前記第一の検査システムによって行われることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記試料の上または内部の前記被照射スポットから検出された前記光の位置と、前記第一の検査システムによって前記試料から得られたデータと、の関係を判定する校正ステップをさらに含むことを特徴とする請求項21と22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記校正ステップは、
前記第一の検査システムを使って、校正アーティファクトの第一の地点の位置を判定するステップと、
前記検出システムを使って、前記校正アーティファクトの前記第一の地点の位置を判定するステップと、
前記第一の地点の前記位置のずれを判定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試料の上または内部の被照射スポットからの光は、焦点を有する検出器によって検出され、前記方法は追加として、
前記検出器の前記焦点を前記試料の全体にわたって走査するステップと、
前記検出器の前記焦点が前記試料の全体にわたって走査される際の前記試料からの光を検出するステップと、
を含むことを特徴とする請求項18から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記被照射スポットを前記試料全体にわたって移動させる追加のステップを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記検出器の前記焦点は、前記被照射スポットと同時に、前記試料の全体にわたって移動されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
試料を採取するステップをさらに含み、前記試料はセラミックであることを特徴とする請求項18から27のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515913(P2012−515913A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546937(P2011−546937)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000088
【国際公開番号】WO2010/084314
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】