説明

光学測定装置

【課題】簡易な構成で測定セルを自動的に取り外すことができる光学測定装置を提供する。
【解決手段】試料を保持する空間部と、空間部と連通する導入口および吸引口とを備える測定セルを用いて、試料中の被検物質を光学的に測定する光学測定装置は、空間部内を吸引する吸引部と、測定セルを取り付ける測定セル取付部と、測定セルを測定セル取付部から取り外す測定セル脱離補助部と、測定セルに入射する光を出射する光源と、測定セルから出射した光を検知する検知器と、を備え、吸引部は、可動部と可動部を動かす駆動部とを含み、駆動部が可動部を動かすことにより、吸引口を通して空間部内を吸引または排気し、測定セル脱離補助部を、可動部の他方の方向への動きと連動して、測定セル取付部に取り付けられた測定セルを測定セル取付部から取り外す方向に移動することができるように、可動部に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる被検物質を光学的に測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中に含まれる被検物質の光学測定を行うための測定システムは、試料を供給する開口部を有する測定セルと、測定セルを挿入する測定セル取付け部、試料を吸引するピストン機構、光源、および受光器を備えた測定装置と、から構成されている。
例えば、特許文献1では、以下のような測定システムが提案されている。測定セル取付け部内に挿入された測定セルの開口部を通して測定セル内に尿などの試料を吸引により供給する。その後、光源から光を測定セルに向けて出射し、測定セル内の試料中にその光を透過または散乱させる。そして、測定セルから出射し受光器に入射した光を検出する。また、測定後、測定セル取外しボタンを押すことにより測定セル取外し機構が作動して測定セル内の試料が排出された後、測定セルが測定装置から自動的に取り外される。
【特許文献1】国際公開第2005/108960号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では、測定セル取外し機構の詳細な構成は開示されていない。また、試料を吸引するためのピストン機構とは別に測定セル取外し機構を設ける場合、試料吸引用のアクチュエータとは別に測定セル取り外し用のアクチュエータが必要となり、機器構成が複雑になってしまうという問題があった。
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑み、簡易な構成で測定セルを自動的に取り外すことができる光学測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、試料を保持する空間部と、前記空間部と連通し、前記試料を前記空間部に導入する導入口と、前記空間部と連通し、前記空間部内を吸引するための吸引口とを備える測定セルを用いて、前記試料中の被検物質を光学的に測定する光学測定装置であって、
可動部と、前記可動部を動かすことにより、前記吸引口を通して前記空間部内を吸引または排気する駆動部と、を含む吸引部と、前記吸引口と前記吸引部とを接合して前記測定セルを取り付ける測定セル取付部と、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルに入射する光を出射する光源と、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルから出射した光を検知する検知器と、前記可動部に接続され、前記空間部内を排気する際の前記可動部の動きと連動して、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルを前記測定セル取付部から取り外す測定セル脱離補助部と、を備える。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、簡易な構成で測定セルを自動的に取り外すことができる光学測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、試料を保持する空間部と、前記空間部と連通し、前記試料を前記空間部に導入する導入口と、前記空間部と連通し、前記空間部内を吸引するための吸引口とを備える測定セルを用いて、前記試料中の被検物質を光学的に測定する光学測定装置に関する。そして、上記光学測定装置が、可動部と、前記可動部を動かすことにより、前記吸引口を通して前記空間部内を吸引または排気する駆動部と、を含む吸引部と、前記吸引口と前記吸引部とを接合して前記測定セルを取り付ける測定セル取付部と、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルに入射する光を出射する光源と、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルから出射した光を検知する検知器と、前記可動部に接続され、前記空間部内を排気する際の前記可動部の動きと連動して、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルを前記測定セル取付部から取り外す測定セル脱離補助部と、を備える点に特徴を有する。
さらに具体的には、前記駆動部は、可動部を一方向に動かすことにより、前記吸引口を通して前記空間部内を吸引し、可動部を前記方向とは別の方向に動かすことにより、前記吸引口を通して前記空間部内を排気する。また、前記測定セル脱離補助部は、前記可動部の前記別の方向への動きと連動して、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルを前記測定セル取付部から取り外す方向に動く。
【0007】
この構成により、測定セルの吸引口を通して空間部内に吸引することにより、導入口から空間部内に試料を供給することができるように、吸引部における可動部が一方向に動く。また、測定セルの吸引口を通して空間部内に排気することにより、導入口から空間部内に保持された試料を排出することができるように、吸引部における可動部が上記方向とは別の方向に動く。このとき、その動きに連動して可動部に接続された測定セル脱離補助部が動く。これにより、測定セル取付部に取り付けられた測定セルが自動的に取り外される。したがって、1つのアクチュエータにより試料の供給・排出と、測定セルの取り外しとを行うことができるので、機器全体の部品点数を減らし、測定機器の構成を簡易にすることができる。
【0008】
上記構成の光学測定装置において、前記測定セル取付部に前記測定セルを取り付ける際、前記空間部内の吸引および排気のいずれも可能な位置に配されていることが好ましい。すなわち、前記可動部は、前記測定セル取付部に前記測定セルを取り付ける際、前記一方向(前記空間部内を吸引する際に動く方向)および前記方向とは別の方向(前記空間部内を排気する際に動く方向)のいずれの方向にも動くことが可能な位置に配されていることが好ましい。
【0009】
また、前記測定セル脱離補助部は、前記可動部の可動軸方向と交わる脱離補助部を有し、前記測定セルは、前記測定セル取付部に取り付けられた際、前記脱離補助部と対向する被脱離補助部を有し、前記測定セル脱離補助部は、前記測定セルが前記測定セル取付部に取り付けられた際、前記脱離補助部と前記被脱離補助部とが接触するような位置に配置されていることが好ましい。
測定セルを測定装置から取り外す際に、測定セルを押し出す力が脱離補助部から被脱離補助部に伝わりやすいため、前記脱離補助部は脱離補助面であり、前記被脱離補助部は被脱離補助面であり、前記脱離補助部と前記被脱離補助部とが面状に接触するのが好ましい。面の形状は平面でも曲面でもよい。また、前記脱離補助部と前記被脱離補助部との接触部分の形状については、これ以外にも、前記脱離補助部および前記被脱離補助部のうちの一方に凹部を設け、他方に前記凹部と嵌合する凸部を設けてもよい。
【0010】
試料としては、尿、血清、血漿、血液等の体液及び培地の上清液等の液体の試料が挙げられる。これらの中で、試料として尿が好ましい。試料が尿であると、非侵襲的に在宅での日常の健康管理を行うことができる。
被検物質としては、アルブミン、hCG、LH、CRP、IgG等が挙げられる。
健康管理の最初の段階で行われる尿の定性検査では、pH、比重、蛋白、糖、潜血、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、白血球、アスコルビン酸、アミラーゼ、食塩の12項目について検査が行われる。また、腎機能を分析するという目的では、微量アルブミンが挙げられる、妊娠検査等のマーカーとしては、hCG、LH等のホルモンが挙げられる。蛋白や、微量アルブミン、hCG、LH等のホルモンは、抗原抗体反応に基づいた光学測定が適している。抗原抗体反応に基づいた光学測定としては、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫凝集法などが挙げられる。
【0011】
以下、本発明の光学測定装置の好ましい形態の一例を説明する。
図1は、本発明の光学測定装置の一例を示す斜視図である。図1に示すように、光学測定装置101は、光学測定装置101に取付けられた後述する測定セル401への試料の供給を開始するための試料供給ボタン301、測定後に測定セル401内の試料を後述の紙コップ701等の容器に排出するための試料排出ボタン302、試料の排出後に測定セル401を光学測定装置101から取り外すための測定セル脱離ボタン303、および測定結果を表示する表示部304を、筐体113の外表面上に備えている。筐体113の開口部305には、測定セル脱離ボタン303が押されることにより測定セル401を光学測定装置101から脱離させる圧力を測定セル401に与えるように作動する測定セル脱離補助部106が設けられている。測定セル脱離補助部106は開口部115を有し、開口部115の大きさは、測定セル401の少なくとも吸引口403を挿入することができる大きさに設定されている。開口部115の大きさは、例えば、縦12mmおよび横12mm程度である。
【0012】
ここで、光学測定装置101の筐体113内部の構造を図2〜4を用いて説明する。
図2は、光学測定装置101の縦断面図である。図3は、光学測定装置101の筐体113内部の一部を示す斜視図である。なお、図3中では、筐体113、光源112、および検知器108を省略する。図4は、光学測定装置101の構成を示すブロック図である。
【0013】
図2および3に示すように、光学測定装置101は、シリンダ104の内側に設けられたプランジャ105、プランジャ105と連動するシャフト103、シャフト103を介してプランジャ105を動かす吸引駆動モータ102、測定セル401の光学窓404に入射する入射光を出射する光源112、測定セル401の光学窓404から出射した出射光を受光し検知する検知器108、測定セル401を取り付ける際、吸引口403を固定し、Oリングなどで測定セルとの間の気密性を確保する測定セル取付部107、および測定セル401に後述の脱離補助面111を押し付けて測定セル401を押し出す向きに力を加えることにより測定セル取付部107から測定セル401を取り外す測定セル脱離補助部106を備えている。
【0014】
このうち、吸引駆動モータ102、プランジャ105、シリンダ104、およびシャフト103が、試料を測定セル401の内部に吸引するための吸引部603に相当する。また、プランジャ105およびシャフト103が可動部に相当する。測定セル脱離補助部106は、先端部において、可動部の可動軸方向(シャフト103の軸方向)と交わる平面状の脱離補助面111を有する。
吸引駆動モータ102、シリンダ104、測定セル取付部107、光源112、および検知器108は筐体113に固定され、可動部の動きに影響しない。シリンダ104とプランジャ105との間にはOリングが設けられ、シリンダ104とプランジャ105との間の気密性が保持されている。筐体113の大きさは、例えば、150mm×50mm×50mm程度である。
【0015】
測定セル脱離補助部106は、ジョイント部114においてシャフト103と接続し、吸引駆動モータ102の動力によりプランジャ105の移動方向にシャフト103とともに連動する。測定セル脱離補助部106は、光源112からの入射光を測定セル401に通す入射光通過孔110と、測定セル401からの出射光を検知器108に通す出射光通過孔109とを有する。
【0016】
光源112としては、650nmの波長の光を出射する半導体レーザが用いられる。これに代えて、ライトエミッティングダイオード(LED)などを用いてもよい。なお、本実施の形態においては免疫比濁法による測定を適用し、650nmの照射及び受光波長を選択するが、この波長は測定法や測定対象に応じて適宜適切な値が選択され得る。
検知器108としては、フォトダイオードが用いられる。これに代えて、電荷結合型素子(CCD)、フォトマルチメーターなどを用いてもよい。
【0017】
吸引部603は、シリンダ104内のプランジャ105をリニア型のステップモータである吸引駆動モータ102により作動させるように構成されている。
ステップモータには、例えば小歯を有するステータ(固定子)と同じく小歯を有するムーバ(移動子)からなり、ムーバをあらかじめ永久磁石化しておいて、ステータのそれぞれの小歯をコイル巻線などで励磁するものが用いられる。入力された1パルス信号あたりにステータの励磁歯を移動することにより、ムーバが対応するステータ歯に順次引き寄せられ、結果としてある一定距離を正確に移動する。すなわち、入力パルスステップ数により、プランジャ105(ピストン)の動作距離を制御できる。このムーバをシャフト103に接続することにより、入力パルス数に応じてプランジャ105が直進運動するように構成されている。
【0018】
次に、光学測定装置101の機能を、図4を用いて説明する。光学測定装置101の内部には、測定セル401の光学窓404から出射した光の検知器108による検知に基づいて、試料中に含まれる被検物質を検出または定量するための演算部であるCPU601、被検物質の量(例えばヒトアルブミンの濃度)と、それに対する検知器108により検知される光強度との関係を表す検量線が格納されている記憶部であるメモリ602、吸引部603、計時部604、記録部605、送信部606、および受信部607が設けられている。
【0019】
記録部605は、被検物質濃度等の測定結果をSDカードなどの記憶媒体に記録する機能を有する。取り外し可能な記憶媒体に保存することにより、測定結果を光学測定装置101から容易に取り出すことができるため、記憶媒体を分析専門業者に持参または郵送して、分析を依頼することが可能である。
送信部606は、被検物質濃度等の測定結果を光学測定装置101外に送信する機能を有する。これにより、測定結果を、病院内の分析関連部門または分析関連業者等に送信し、それを分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析することができるので、測定から分析までの時間を短縮することができる。
受信部607は、分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析した結果を受信する機能を有する。これにより、分析結果を迅速にユーザにフィードバックすることができる。
【0020】
ここで、光学測定装置101に用いられる測定セルの一例を図5および図6に示す。図5は、測定セル401の斜視図であり、図6は図5中のA−A方向の断面図である。
測定セル401は、試料を保持する空間部406、空間部406と連通し、試料を空間部406に導入する導入口402、空間部406と連通し、空間部406内を吸引するための吸引口403、光源112からの入射光および検知器108へ出射する出射光を透過する光学窓404、並びに測定セル401を脱離する際、測定セル脱離補助部106により圧力が加えられる平面状の被脱離補助面405を備える。吸引口403は、吸引部603を用いて測定セル401内部に負圧を印加することにより導入口402から試料を導入するために吸引部603に接続されている。
【0021】
被脱離補助面405は、測定前に光学測定装置101に測定セル401を差し込んだ際、測定セル脱離補助部106と接する位置に設けられていることが好ましい。このようにすると、被脱離補助面405が測定セル脱離補助部106と接するまで測定セル401を光学測定装置101の開口部305に差し込むことにより、測定セル401を容易に正しい位置に取付けることができる。また、被脱離補助面405がそのような位置に設けられていると、測定セル401を脱離する際に測定セル脱離補助部106による圧力を測定セル401に対して十分に伝えることができる。
【0022】
また、光学窓404は、被脱離補助面405と吸引口403との間に位置することが好ましい。このようにすると、測定セル401を光学測定装置101に差し込んだ際に、被脱離補助面405が外乱光を遮蔽することにより、光学測定装置101内に外乱光が入射することを抑制することができるので、検知器108において受光される出射光に外乱光が混入することがない。
【0023】
測定セル401は、さらに試料中の被検物質と特異的に反応する試薬を空間部406内に備えていてもよい。試薬は、空間部406内に乾燥状態で備えられ、空間部406に試料が供給された際、試料に溶解するように配置されていることが好ましい。例えば、ガラス繊維や濾紙等からなる多孔性の担体に試薬を含む溶液を含浸させた後、乾燥させることにより試薬を担体に担持させ、試薬を担持させた担体を空間部406内に設ければよい。また、空間部406を囲み、測定セル401を構成する内壁面上に、試薬溶液を直接塗布した後、乾燥させることにより試薬を測定セル401に配置してもよい。
【0024】
試薬としては、例えば、酵素、抗体、ホルモンレセプター、化学発光試薬、DNA等が挙げられる。特に抗体は、公知の方法により産生することができるので、試薬を作製しやすいという点で有利である。例えば、アルブミンなどの蛋白や、hCG、LHなどのホルモンを抗原として、マウス・ウサギ等に免疫することにより、前記抗原に対する抗体を得ることができる。抗体としては、アルブミン等の尿中に含まれる蛋白に対する抗体や、hCG、LHなどの尿中に含まれるホルモンに対する抗体等が挙げられる。
【0025】
測定セル401における光学窓404は、光学的に透明な材料または可視光を実質的に吸収しない材料で形成されていることが好ましい。例えば、石英、ガラス、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。測定セル401が使い捨ての場合には、コストの観点からポリスチレンが好ましい。
【0026】
次に、測定セル401の光学測定装置101への取り付けについて図7を用いて説明する。図7は、測定セル401を光学測定装置101に挿入した時の状態を示す縦断面図である。
測定セル401を光学測定装置101に取り付ける際、測定セル取付部107内に測定セル401の吸引口403が挿入される。このとき、挿入部における空気の漏れが発生しないよう、例えばフッ素樹脂やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂又はゴム製の封止リングを測定セル取付部107の内壁に設け、測定セル取付部107と吸引口403との密着性を高めることが好ましい。
【0027】
測定セル401を光学測定装置101に取り付けた際、測定セル脱離補助部106の先端面である脱離補助面111と、測定セル401の被脱離補助面405とが接しているのが好ましい。このように、測定セル401は測定セル取付部107により光学測定装置101に保持されており、測定セル取付部107以外の部分は測定セル401の保持に寄与しなくてもよい。
また、測定セル401が測定セル取付部107により測定装置101に取り付けられた際、被脱離補助面405と脱離補助面111とが接触するように、測定セル401と光学測定装置101とが設計されているのが好ましい。
【0028】
図7において、プランジャ105およびシャフト103、すなわち可動部が上方に移動することにより、空間部406内が吸引される。また、プランジャ105およびシャフト103、すなわち可動部が下方に移動することにより、空間部406内が排気される。
測定セル401を光学測定装置101に取り付ける際、プランジャ105の位置はシリンダ104内で上向き(吸引駆動モータ102に近づく方向、すなわち空間部406内を吸引する方向)にも下向き(測定セル取付部107に近づく方向、すなわち空間部406内を排気する方向)にも移動できる位置に調整されている。同様に、ジョイント部114も上向きにも下向きにも移動できる位置に調整されている。ここで、図7においてプランジャ105が上向きに移動できる距離は、プランジャ105がシリンダ104の内部上面に接触するまでの距離に相当し、プランジャ105が下向きに移動できる距離は、プランジャ105がシリンダ104の内部下面に接触するまでの距離に相当する。また、ジョイント部114が上向きに移動できる距離は、ジョイント部114が吸引駆動モータ102の下面に接触するまでの距離に相当し、ジョイント部114が下向きに移動できる距離は、ジョイント部114がシリンダ104の外部上面に接触するまでの距離に相当する。
【0029】
次に、測定セル401を用いた本発明の光学測定装置101の測定手順を説明する。ここでは、試料として尿を用い、被検物質がアルブミンである例を示す。
まず、図7に示すように、測定セル脱離補助部106の開口部115と測定セル401の吸引口403とが接合するように、測定セル401を光学測定装置101の測定セル取付部107に装着する。このとき、被脱離補助面405と脱離補助面111とが接触する。測定セル脱離補助部106の開口部115は、測定セル401のうち、被脱離補助面405から吸引口403までの部分のみを挿入することができる大きさに設定されている。
【0030】
次に、図8に示すように、紙コップ701に排出された尿中に、測定セル401のうち少なくとも導入口402が尿の液面より下方に位置し尿と接触するように測定セル401を浸漬させる。
次に、ユーザが試料供給ボタン301を押すことにより、CPU601が吸引部603を作動させる。具体的には、光学測定装置101内の吸引駆動モータ102が駆動し、シリンダ104内側のプランジャ105がシャフト103を介して引き上げられる。これにより、図9に示すように、測定セル401の導入口402から空間部406内に所定量(例えば、2mL)の尿が供給される。
【0031】
ここで、測定セル401内への試料の導入量は、プランジャ105の断面積(S)とプランジャ105が引き上げられた際のプランジャ105の移動距離との積によって決まる。図9に示すように、プランジャ105、シャフト103、および測定セル脱離補助部106は、吸引駆動モータ102によりそれぞれ同じ距離だけ引き上げられる。測定セル401を装着した状態におけるプランジャ105およびジョイント部114の上下方向の位置を、それぞれプランジャ105の初期位置およびジョイント部114の初期位置とした場合、測定セル401を装着した状態からプランジャ105を引き上げることのできる距離は、プランジャ105がプランジャ105の初期位置(Hp(S))からシリンダ104の内部上面に接触する位置(Hp(F))まで移動する距離(L1=Hp(F)−Hp(S))と、ジョイント部114がジョイント部114の初期位置(Hj(S))から吸引駆動モータ102の下部に接触する位置(Hj(F))まで移動する距離(L2=Hj(F)−Hj(S))のうち短いほうの距離になる。したがって、L1とL2のうち小さい方の距離とプランジャ105の断面積(S)との積が、測定セル401に導入することができる試料の最大量となる。そこで、例えば、円筒形のプランジャ105およびシリンダ104を、Sが201mm2(シリンダ104内の半径が8mmに相当)となり、L1とL2がともに9.95mmとなるように設計すると、プランジャ105を十分に引き切った時に2mLの尿を吸引することができるようになる。
【0032】
吸引駆動モータ102によるプランジャ105の引き上げが完了した状態で、測定セル脱離補助部106に設けられた入射光通過孔110が光源112と測定セル401の光学窓404とを結ぶ光路上に位置し、出射光通過孔109が測定セル401の光学窓404と検知器108とを結ぶ光路上に位置するように配される。そのようにすることにより、測定時に検知器108により測定セル401からの出射光を正しく検知することができる。なお、この入射光通過孔110および出射光通過孔109の大きさは、光軸の断面と同じ程度の大きさであることが好ましい。そのようにすることにより、外乱光を排除できるとともに、測定時以外には測定セル脱離補助部106が光源112および検知器108をふさぐ形になるため、測定セル401の抜き差し動作に起因する光源112および検知器108の破損を防止することができる。
【0033】
吸引駆動モータ102によりプランジャ105を引き上げ、その位置に保持することにより空間部406内に尿が保持され、導入口402から尿が漏れ出したり、シリンダ104内に吸引されたりすることがない。吸引駆動モータ102が停止し吸引動作が終了すると、CPU601は、空間部406内への試料の供給が完了したことを通知するメッセージを表示部304に表示させるとともに、計時部604であるタイマーによる計時を開始させる。試料の供給が完了した後は、導入口402を尿中から引き上げてもよい。
空間部406内に供給された尿は、空間部406内の試薬保持部(図示せず)に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。
【0034】
次に、計時部604からの信号によって、空間部406内への試料の供給完了から所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU601が判断すると、CPU601は光源112による光の照射を実行させる。
光源112から出射したレーザ光が光学窓404を通って空間部406内の尿に照射され、尿中で散乱され光学窓404から出射した光を検知器108により受光する。CPU601はメモリ602に格納されている出射光強度とヒトアルブミン濃度との関係を表す検量線を読み出し、それを参照することによりCPU601が検知器108により受光された出射光強度をヒトアルブミン濃度に換算する。得られたヒトアルブミン濃度は表示部304に表示される。表示部304にヒトアルブミンが表示されることにより、ユーザはヒトアルブミン濃度測定が完了したことがわかる。好ましくは、得られたヒトアルブミン濃度は、計時部604により計時された時刻とともにメモリ602に保存される。
【0035】
次に、ユーザが試料排出ボタン302を押すと、図10に示すように、吸引駆動モータ102が駆動し、シリンダ104内側にあるプランジャ105がシャフト103を介して押し下げられる。これにより、測定セル401内の尿が紙コップ701内に排出される。紙コップ701内に排出された尿は流し捨て、その後紙コップ701も廃棄する。なお、この際、図10に示すように、吸引駆動モータ102はプランジャ105がシリンダ104内壁下部に接触する位置までしか動作させない。
【0036】
最後に、測定セル401内の尿の排出が終了し、図11に示す、測定セル401を廃棄するための廃棄箱1001の準備ができると、ユーザが測定セル脱離ボタン303を押すことにより吸引駆動モータ102を再度駆動させる。これにより、シャフト103が測定セル401を押し出す向きに移動し、シャフト103と接続している測定セル脱離補助部106も、シャフト103と連動し、同様に移動する。測定セル脱離補助部106が測定セル401を押し出す向きに移動すると、脱離補助面111が測定セル401の被脱離補助面405に対して力を加える。測定セル401の被脱離補助面405に加わる力は、シャフト103の移動距離の増大とともに大きくなる。
【0037】
図11に示すように、測定セル401の被脱離補助面405に加わる力が、測定セル取付部107が測定セル401を保持する力を上回ったときに、測定セル401が測定セル取付部107から押し出され、取り外される。この際、測定セル401を廃棄するための廃棄箱1001を測定セル401の下に用意する。以上の手順により、ユーザが測定セル401に触れたりすることなく自動的に測定セル401を廃棄することができる。なお、吸引駆動モータ102は、測定セル取付部107から測定セル401を押し出すことができるだけのトルクを有する。
【0038】
なお、上記では、吸引部603として、シリンダ104内のプランジャ105をリニア型のステップモータである吸引駆動モータ102により作動させる構成を用いたが、これに限らない。リニア型以外のステップモータや、直流モータ等を用いてもよい。
また、上記では、紙コップ701に尿を採取したが、これに限らず、プラスティック製のカップ等の運搬可能な容器や、便器内に設けられた受尿容器等を用いてもよい。
また、上記では、空間部406内への試料の供給が完了したことを通知するメッセージを表示部304に表示させたが、これに代えて、ブザー等の音声により通知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の光学測定装置は、医療分野及び医療関連の検査分野における検査、特に尿の検査に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の光学測定装置の一例を示す斜視図である。
【図2】同光学測定装置の縦断面図である。
【図3】同光学測定装置の筐体内部の要部を示す斜視図である。
【図4】同光学測定装置の構成を示す図である。
【図5】同光学測定装置に用いた測定セルの斜視図である。
【図6】図5におけるA−A部分の断面図である。
【図7】測定セルを本発明の光学測定装置に取り付けた時の状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の光学測定装置に取り付けられた測定セルに試料を供給する前の状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の光学測定装置に取り付けられた測定セルに試料を供給した後の状態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の光学測定装置に取り付けられた測定セルから試料を排出した状態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の光学測定装置から測定セルが取り外された状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
101 光学測定装置
102 吸引駆動モータ
103 シャフト
104 シリンダ
105 プランジャ
106 測定セル脱離補助部
107 測定セル取付部
108 検知器
109 出射光通過孔
110 入射光通過孔
111 脱離補助面
112 光源
113 筐体
114 ジョイント部
115 開口部
301 試料供給ボタン
302 試料排出ボタン
303 測定セル脱離ボタン
304 表示部
305 開口部
401 測定セル
402 導入口
403 吸引口
404 光学窓
405 被脱離補助面
406 空間部
601 CPU
602 メモリ
603 吸引部
604 計時部
605 記録部
606 送信部
607 受信部
701 紙コップ
1001 廃棄箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する空間部と、前記空間部と連通し、前記試料を前記空間部に導入する導入口と、前記空間部と連通し、前記空間部内を吸引するための吸引口とを備える測定セルを用いて、前記試料中の被検物質を光学的に測定する光学測定装置であって、
可動部と、前記可動部を動かすことにより、前記吸引口を通して前記空間部内を吸引または排気する駆動部と、を含む吸引部と、
前記吸引口と前記吸引部とを接合して前記測定セルを取り付ける測定セル取付部と、
前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルに入射する光を出射する光源と、
前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルから出射した光を検知する検知器と、
前記可動部に接続され、前記空間部内を排気する際の前記可動部の動きと連動して、前記測定セル取付部に取り付けられた前記測定セルを前記測定セル取付部から取り外す測定セル脱離補助部と、を備える光学測定装置。
【請求項2】
前記可動部は、前記測定セル取付部に前記測定セルを取り付ける際、前記空間部内の吸引および排気のいずれも可能な位置に配されている請求項1記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記測定セル脱離補助部は、前記可動部の可動軸方向と交わる脱離補助部を有し、
前記測定セルは、前記測定セル取付部に取り付けられた際、前記脱離補助部と対向する被脱離補助部を有し、
前記測定セル脱離補助部は、前記測定セルが前記測定セル取付部に取り付けられた際、前記脱離補助部と前記被脱離補助部とが接触するような位置に配置されている請求項1または2記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記脱離補助部は脱離補助面であり、前記被脱離補助部は被脱離補助面である請求項3記載の光学測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−32624(P2008−32624A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208158(P2006−208158)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】