説明

光学測定部及び光学測定用部材、並びにこれらを配設した微小粒子測定装置

【課題】優れた測定処理速度及び測定精度を備える光学測定部及び光学検出用部材、並びにこれらを配設した微小粒子測定装置の提供。
【解決手段】測定光の走査方向に配設された複数の流路11,12,13に対し、同方向に複数の測定光21,22,23を走査して、該流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定部を提供する。この光学測定部においては、一の測定光が一の流路に照射されている場合において、他の測定光はいずれの流路にも照射されないように測定光の走査を行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定部及び光学測定用部材、並びにこれらを配設した微小粒子測定装置に関する。より詳しくは、複数の流路に対し複数の測定光を走査して流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定部などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などの微小粒子を判別するため、微小粒子の分散液を流路内に導入し、流路内へ導入された微小粒子を光学的に測定する装置が知られている。
【0003】
一例として、各種合成粒子を大きさや形状に応じて判別するパーティクルアナライザーがある。パーティクルアナライザーは、Heプラズマ中で微小粒子を1個ずつ励起、発光させて分光検出することにより、微小粒子の元素組成や粒径、粒子数の測定を行うものである。
【0004】
また、生体関連微小粒子については、フローサイトメトリー(フローサイトメーター)を用いた光学測定が広く行われている(非特許文献1参照)。フローサイトメトリーは、測定対象とする細胞やマイクロビーズ等の微小粒子を、フローセルにおいてシース液の層流の中心に流し、光学検出部において測定光を微小粒子に照射して、微小粒子から生じる散乱光や蛍光を検出することにより、微小粒子の大きさや構造等を測定するものである。
【0005】
フローサイトメトリーには、微小粒子の大きさや構造等を測定することのみを目的とするものや、さらに測定された大きさや構造等に基づいて所望の微小粒子を分取できるように構成されたものがある。このうち、特に細胞の分取を行なうものを「セルソータ」と呼んでいる。市販のセルソータとしては、ベックマンコールター社やベクトンデッキンソン社、ダコ社製のものがあり、これらのセルソータによれば、毎秒数万〜10万という細胞の高速測定及び分取が可能である。
【0006】
近年では、これらの微小粒子の光学測定装置において、測定処理速度及び測定精度のより一層の向上が求められるようになっている。特に上述のセルソータでは、再生医療への期待の高まりを受け、生体細胞中にごくわずかに存在する幹細胞を効率よく単離するための処理速度及び測定精度を備えた装置が望まれている。
【0007】
本発明に関連して、特許文献1第7図及び第8図には、従来のセルソータの構成が記載されている。図に示されるセルソータは、蛍光標識試薬などで染色された細胞をフローセル内で一列に配列するための流体(フロー)系と、各細胞に波長の異なる複数のレーザー光を照射し、散乱光および蛍光等の検出対照光を検出するための光学系とからなっている。従来のフローサイトメーターの光学系は、複数の光源からの複数の測定光が、単一の流路であるフローセルの異なる位置にそれぞれ集光される構成となっている(上記第7図参照)。
【0008】
また、特許文献2には、粒子が移動する流路と、該流路に走査光を照射する手段とを有し、該照射によって粒子の種類に応じた作用力を与えて粒子の分別を行なうことを特徴とする粒子の分別装置が開示されている。この装置は、フローセルに対し走査光を走査する構成を有するが、この走査光は粒子のレーザートラッピング(当該文献段落0004等参照)を目的としたものである。なお、この装置においても、流路であるフローセルは単一の構成となっている。
【0009】
非特許文献2及び3には、ガラスや高分子材料の基板上に微小な流路を形成させて、その中で細胞などの微粒子を水流にのせてフローサイトメトリーを行い、所望微粒子を分別する技術(マイクロチップを利用する技術)が提案されている。このマイクロチップは、T字型の流路を形成させて、分取したい細胞とそれ以外の細胞とを、シース液の送流方向を切り替えること(流路選択制御)によって分取するものである。
【0010】
【特許文献1】特開2007−46947号公報
【特許文献2】特開平7−24309号公報
【非特許文献1】「細胞工学別冊 実験プロトコルシリーズ フローサイトメトリー自由自在」、中内啓光、秀潤社、第2版、2006年8月31日発行
【非特許文献2】Anne. Y. Fu, et al., "A microfabricated fluorescence-activated cell sorter", Nature Biotechnology, Vol.17, November 1999, pp.1109-1111
【非特許文献3】Anne Y. Fu, et al., "An Integrated Microfablicated Cell Sorter", Analytical Chemistry, Vol.74, No.11, June 1, 2002, pp.2451-2457
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような微小粒子の光学測定装置における測定処理速度及び測定精度の向上への要請に鑑み、本発明は、優れた測定処理速度及び測定精度を備える光学測定部及び光学検出用部材、並びにこれらを配設した微小粒子測定装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題解決のため、本発明は、測定光の走査方向に配設された複数の流路に対し、同方向に複数の測定光を走査して、該流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定部を提供する。
この光学測定部においては、複数の流路を測定光の走査方向に所定間隔で配設し、同方向に間隔をもって照射される複数の測定光を走査するに際し、走査方向における流路幅をwchannelとした場合に、前記測定光から選択されるいずれか2つの測定光の走査方向における間隔のうち、最小の間隔D(min)と測定光のスポット幅Wと、が、以下の式(1)を満たすように構成する。
【0013】
【数5】

【0014】
また、走査方向における流路間の間隔をdchannelとした場合に、前記測定光の数Nと、測定光から選択されるいずれか2つの隣り合う測定光の走査方向における間隔のうち、最大の間隔D(max)と、測定光のスポット幅Wと、が、以下の式(2)を満たすように構成する。
【0015】
【数6】

【0016】
もしくは、流路間隔dchannelを、所定の間隔で測定光の走査方向に複数の帯域に区分し、前記測定光がいずれかの帯域内に照射され、かつ、一の測定光が照射される帯域と、他の一の測定光が照射される帯域と、が異なり、これらの帯域が連続しないように構成してもよい。
以上の構成により、この光学測定部では、一の測定光が一の流路に照射されている場合には、他の測定光がいずれの流路にも照射されないように測定光の走査を行うことが可能となる。
上記光学測定部において、流路は交換可能な部材に配設されていてもよい。この部材においては、微小粒子を導入可能な複数の流路を所定方向に所定間隔で配設し、同方向に間隔をもって照射される複数の測定光を走査するに際し、測定光の走査方向における測定光のスポット幅をWspot、前記測定光から選択されるいずれか2つの測定光の走査方向における間隔のうち、最小の間隔をDspot(min)とした場合に、同方向における流路幅wが、以下の式(3)を満たすように構成する。
【0017】
【数7】

【0018】
また、前記測定光の数をNλex、前記測定光から選択されるいずれか2つの隣り合う測定光の走査方向における間隔のうち、最大の間隔をD(max)とした場合に、走査方向における流路間の間隔dが、以下の式(4)を満たすように構成する。
【0019】
【数8】

【0020】
もしくは、流路間隔を、所定の間隔で測定光の走査方向に複数の帯域に区分し、前記測定光がいずれかの帯域内に照射され、かつ、一の測定光が照射される帯域と、他の一の測定光が照射される帯域と、が異なり、これらの帯域が連続しないように構成してもよい。
以上の構成により、この光学測定用部材では、一の測定光が一の流路に照射されている場合には、他の測定光がいずれの流路にも照射されないように測定光の走査を行うことが可能となる。
さらに、本発明は、以上のような光学測定部を備える微小粒子測定装置をも提供する。
【0021】
上記の各式において、アルファベット「W,D,N,w,d」は変数を表し、添え文字付アルファベット「wchannel,dchannel,Wspot,Dspot,Nλex」は任意の定数を表す。また、アルファベット大文字「W,D,N、Wspot,Dspot,Nλex」は測定光が満たすべき条件を規定する数値を表し、アルファベット小文字「w,d」は流路が満たすべき条件を規定する数値を表すものとする。
【0022】
本発明において、「微量粒子測定装置」には、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などの微小粒子を光学的に測定するための装置が広く含まれ、上述のパーティクルアナライザーやフローサイトメーター、セルソータ等が包含される。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、優れた測定処理速度及び測定精度を備える光学測定部及び光学検出用部材、並びにこれらを配設した微小粒子測定装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0025】
図1は、本発明に係る光学測定部における流路の配置と測定光の走査方向を示す模式図である。
【0026】
図中、符号11,12,13,14,15は、微小粒子(図中、符号P)を導入可能な流路である。各流路は、後述する測定光の走査方向(図中、点線矢印S参照)に所定間隔で配列されている。なお、図は、流路の測定光の照射領域(図中、符号R)近傍の構成を示し、他の部分ついては省略して示している。また、流路を5つ配設した場合の構成を示したが、流路の数はこれに限定されず、2以上の流路を任意に配設することが可能である。
【0027】
微小粒子Pの流路11〜15内への導入は、例えば、図中符号10で示す試料貯留部から、微小粒子Pの分散溶媒を投入し、各流路へ分流することによって行なうことができる。分散溶媒には、測定対象とする微小粒子Pに応じて、気体及び液体の溶媒が適宜用いられる。
【0028】
流路11〜15内に導入される際、微小粒子Pは、図示しないフロー系によって各流路内に一つずつ配列される。フロー系は、通常、微小粒子Pを含む分散溶媒を層流として送出するノズルと、溶媒のみを層流として送出するノズルからなり、これら二つのノズルによって溶媒層流(シース流)の中央に微小粒子Pの層流を作り出す。また、微小粒子Pの分散溶媒を送出する際、ノズルにわずかな圧力差を加えることによって、微小粒子Pを層流中に一つずつ配列させる。これにより、微小粒子Pは各流路の中央に一つずつ配列されて送流されることとなる。
【0029】
流路11〜15に一つずつ配列された微小粒子Pは、流路の上流部(図中上側)から矢印F1方向に送流され、測定光照射領域Rを通過した後、下流部(図中下側)に矢印F2方向へ送流される。
【0030】
図中、符号21,22,23は、微小粒子Pの光学測定のための測定光である。測定光21〜23は、測定光照射領域Rにおいて、流路内に配列された微小粒子Pに照射される。この際、測定光21〜23を図中点線矢印S方向へ走査することで、各流路内に配列された微小粒子Pに順次測定光を照射する。図は、測定光を3つ照射する場合の構成を示したが、測定光の数は後述する式(2)を満たす限りにおいて限定されず、2以上の測定光を任意に用いることができる。
【0031】
この測定光の照射によって微小粒子Pから発生する散乱光及び蛍光等の検出対象光を不図示の検出器で検出することにより、微小粒子Pの光学測定を行うことが可能となる。この際、本発明に係る光学測定部においては、一の測定光が一の流路に照射されている場合には、他の測定光がいずれの流路にも照射されないように測定光の走査を行う。例えば、図1では、測定光21が流路12に照射されているとき、測定光22及び23はいずれの流路にも照射されていない。これは、流路を測定光の走査方向に所定間隔で配設し、かつ測定光を所定の間隔で照射しながら走査することにより可能とされるものである。以下、図2〜5に基づいて、この流路の配設間隔及び測定光の照射間隔について具体的に説明する。
【0032】
図2は、本発明に係る光学測定部における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を説明する模式図である。また、これに対して、図3〜5には、本発明に係る光学測定部として不適切な流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を例示した模式図である。
【0033】
図2は、図1中流路11〜13の測定光照射領域Rと測定光21〜23を拡大して示している。符号wchannelは、測定光の走査方向(図中点線矢印S参照)における流路11〜13の幅を表し、符号dchannelは隣接する流路間(流路11−12間又は流路12−13間)の間隔(ランド幅)を表す。また、符号Wは測定光の走査方向における測定光21〜23のスポット幅を表し、符号Dは隣接する測定光間(測定光21−22間又は測定光22−23間)の照射間隔を表している。
【0034】
本図では、本発明に係る光学測定部における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔について、流路幅wchannel及び流路間隔dchannelを任意の定数とした場合に、測定光のスポット幅W及び照射間隔Dの2変数(パラメータ)が満たすべき条件を説明する。
【0035】
まず、スポット幅W及び照射間隔Dは、以下の式(1)を満たすものである。
【0036】
【数9】

【0037】
ここで、「D(min)」は、測定光21〜23から選択される隣り合う2つの測定光の走査方向Sにおける間隔(すなわち、測定光21−22間又は測定光22−23間の間隔)のうち、最小の間隔を表す。図2では、測定光21−22の間がD(min)となる。
【0038】
すなわち、照射間隔D(min)は、流路幅wchannelとスポット幅Wとの和よりも大きくなるよう構成される。換言すれば、各測定光は、流路幅wchannelにスポット幅Wを加えた距離よりも離れた間隔をもって照射される必要がある。これにより、図2(A)に示すように、流路12に測定光21が照射されている際に、さらに測定光22が同時に流路12に照射されないような構成とすることができる。
【0039】
図3には、比較のため、照射間隔D(min)が流路幅wchannelとスポット幅Dとの和よりも小さい場合を示した。この場合、測定光21と22との間隔D(min)が小さく上記(1)式を満たさないため、測定光21が流路12に照射されているときに、同時に測定光22が流路12に照射されており、上述の「一の測定光が一の流路に照射されている場合に、他の測定光がいずれの流路にも照射されない」という構成が実現されない。
【0040】
さらに、スポット幅W及び照射間隔Dは、以下の式(2)をも満たす。
【0041】
【数10】

【0042】
ここで、Nは測定光の数を表す。図2においては、測定光は符号21〜23の3つであり、N=3となる。また、「D(max)」は、測定光21〜23から選択される隣り合う2つの測定光の走査方向Sにおける間隔(すなわち、測定光21−22間又は測定光22−23間の間隔)のうち、最大の間隔を表す。図2では、測定光22−23の間がD(max)となる。
【0043】
すなわち、照射間隔D(max)と測定光数から1を減じた数の積とスポット幅Wとの和は、流路間隔dchannelよりも小さくなるように構成される。換言すれば、図2(B)に示すように、測定光は、全ての測定光の照射位置が流路間隔(ランド幅)dchannelの内に収まるような間隔をもって照射される必要がある。これにより、図2(A)に示すように、測定光21が照射されている際に、測定光23が同時に流路12に照射されないような構成とすることができる。
【0044】
比較のため、図4及び図5には、照射間隔Dと測定光数から1を減じた数の積とスポット幅Wとの和が、流路間隔dchannelよりも大きい場合を示した。図4では、照射間隔D(max)が大きく上記(2)式を満たさないため、測定光21が流路12に照射されているときに、同時に測定光23が流路11に照射されている。また、図5では、測定光数(N=4)が多く上記(2)式を満たさないために、同じく、測定光21が流路12に照射されているときに、測定光23が流路11に照射されている。従って、両図においては、「一の測定光が一の流路に照射されている場合に、他の測定光がいずれの流路にも照射されない」という構成が実現されていない。
【0045】
光学検出部の構成において、流路幅wchannel及び流路間隔dchannelは任意の値に設定することが可能であるが、この場合には流路幅wchannel及び流路間隔dchannelの数値に応じて、測定光のスポット幅W及び照射間隔Dを上記式(1)及び(2)を満たすように構成することで、常に一つの測定光のみが一つの流路のみを照射することが可能となる。
【0046】
なお、後述する図7では、光学検出部の構成において測定光のスポット幅W及び照射間隔Dを任意の値に設定した場合に、流路の流路幅wchannel及び流路間隔dchannelが満たすべき条件について説明している。
【0047】
図2に示した流路の配設間隔及び測定光の照射間隔は、また以下のように規定することも可能である。
【0048】
図6は、本発明に係る光学測定部における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を説明する模式図である。なお、微小粒子Pについては図示を省略した(図7において同じ)。
【0049】
図6は、図1中流路11〜13の測定光照射領域Rと測定光21〜23を拡大して示している。符号wchannelは、測定光の走査方向(図中点線矢印S参照)における流路11〜13の幅を表し、符号dchannelは隣接する流路間(流路11−12間又は流路12−13間)の間隔を表す。また、符号Wは測定光の走査方向における測定光21〜23のスポット幅を表している。
【0050】
各流路間隔(ランド幅)dchannelは、所定の幅を有する複数の帯域により走査方向Sに区分されている。すなわち、ランド幅dchannelは、流路幅wchannelと等しい帯域幅(図中、符号B)を有する帯域(1)〜(7)によって区分されている。
【0051】
測定光21〜23は、図に示すように、各測定光は帯域(1)〜(7)のいずれかの帯域内に照射され、かつ、それぞれ異なる帯域に照射されている。また、測定光が照射される帯域は連続しないよう構成されている。
【0052】
具体的には、測定光23は帯域(1)に、測定光22は帯域(4)に、測定光21は帯域(6)に照射されている(図中、測定光が照射される帯域の番号に下線を付した)。各測定光のスポット幅Wは、本図では、帯域幅Bと等しく示したが、スポット幅Wは帯域幅Bを超えない限りにおいて、任意に設定することができる。
【0053】
そして、これらの各測定光が照射される帯域(1)、(4)、(7)はすべて異なっており、各帯域は連続しない。ここで、帯域が連続しないということは、帯域の番号(1)、(4)、(7)が不連続であることと同義である。
【0054】
以上のように構成することで、測定光11〜13は、「一の測定光が一の流路に照射されている場合に、他の測定光がいずれの流路にも照射されない」ようにされている。
【0055】
すなわち、測定光21と測定光22の間隔、及び、測定光22及び測定光23の間隔は、少なくとも1帯域幅以上となるため、測定光21と測定光22、又は測定光22と測定光23が同時に同一の流路に照射されることがない(図3参照)。
【0056】
さらに、測定光21〜23は、流路間隔(ランド幅)dchannelの内に収まるような間隔をもって照射されることとなるため、例えば、図4に示したように、測定光21が流路12に照射されているときに、測定光23が流路11に照射されるということがない。
【0057】
測定光は、帯域(1)〜(7)のいずれかの帯域内に照射され、かつ、それぞれの測定光が照射される帯域は異なっており、これらの帯域が連続しないという条件を満たす限りにおいて、図7(A)に示すように、4以上の測定光を配することも当然に可能である。また、図7(B)に示すように、各測定光の流路送流方向(図中、矢印参照)の照射位置は任意に設定することができる(この点については、図8を用いて詳しく後述する)。
【0058】
さらに、測定光が、図7(C)に示すように、複数の異なる流路間(ランド)に照射される構成を採用することもできる。
【0059】
図7(C)では、各ランドについて、流路幅wchannelと等しい帯域幅(図中、符号B)を有する帯域に区分し、それぞれ帯域番号(1)〜(7)を付している。この場合において、測定光24は、流路11と流路12との間(ランド1)の帯域(1)に照射されている。測定光23及び測定光22は、流路12と流路13との間(ランド2)の帯域(5)及び帯域(7)にそれぞれ照射されている。また、測定光21は、流路nと流路n+1との間(ランドn)の帯域3に照射されている(図中、測定光が照射される帯域の番号に下線を付した)。
【0060】
各測定光は、それぞれ異なる帯域(1)、(3)、(5)、(7)に照射され、かつ、これらの帯域は、帯域番号が不連続であり連続しない。
【0061】
これにより、測定光が複数の異なる流路間(ランド)に照射される場合にも、図6で説明した、測定光が同一の流路間(ランド)に照射される場合と同様に、「一の測定光が一の流路に照射されている場合に、他の測定光がいずれの流路にも照射されない」ようにすることが可能である。
【0062】
このように、本発明に係る光学検出部においては、測定対象とする微小粒子を複数の流路に導入し、測定光を走査して各流路内に導入される微小粒子の光学測定を行うため、単一の流路の定点に測定光を照射して測定を行う従来の光学測定部に比べ、短時間で測定処理を終えることが可能となる。
【0063】
また、常に一つの流路に対してのみに測定光が照射されるため、同時に複数の流路内の微小粒子から検出対象光が発生することがなく、高い測定精度が得られる。
【0064】
すなわち、仮に、一の測定光が一の流路に照射されている場合に、他の測定光がいずれかの流路に照射されると、複数の流路内の微小粒子から検出対象光が発生し、検出対象光の干渉(クロストーク)が発生することとなる。このようなクロストークは、測定精度の低下をもたらすため、これを回避するためには、各流路に対して個別の検出器を設け、それぞれの流路内の微小粒子から発生する検出対象光を個別に検出する必要がある。
【0065】
これに対して、本発明にかかる光学検出部では、上述の通り、常に一つの流路に対してのみに測定光が照射されるため、検出対象光のクロストークが発生せず、高い測定精度を得ることができる。さらに、検出対象光は常に一つの流路のみから発生するため、単一の検出器で検出対象光を検出することができ、光学系の構成を極めて簡素にすることができる。
【0066】
さらに、本発明に係る光学検出部において、測定光は、図1及び図2に示すように、流路内の微小粒子Pの送流方向(図1中矢印F及びF参照)にずらして走査を行うことが望ましい。これを、図8を参照しながら説明する。
【0067】
図8は、流路送流方向における測定光の照射位置を示す模式図である。図中、実線矢印は流路送流方向、点線矢印は測定光の走査方向を示している。図は、流路12内の微小粒子Pに測定光21が照射された状態を示している。
【0068】
図8(A)の状態において、測定光21により測定された微量粒子Pは、続いて測定光22によって測定されるが、この際、微小粒子Pは流路12内を所定の速度で送流され、図実線矢印方向へ移動する。
【0069】
ここで、仮に図8(B)に示すように、測定光21〜23を走査方向(図中点線矢印参照)に直線状に配列して走査を行う場合には、測定光22による測定は、測定光21による測定と同位置において行う必要がある。
【0070】
具体的に説明すると、図8(B)では、微小粒子Pが距離lを送流されるまでの間に、測定光22を流路12上に走査し、測定光22による測定を行う必要がある。このため、微小粒子Pの送流速度によっては、測定光22による測定を行うことができない可能性がある。
【0071】
また、測定光23及び4以上の測定光を用いる場合にも、同様に微小粒子Pが距離lを送流されるまでの間に各測定光を流路12上に走査する必要があり、微小粒子Pの送流速度によっては、全ての測定光による測定を行うことができない可能性がある。
【0072】
これに対して、図8(A)では、測定光21〜23を流路送流方向にずらして走査しているため、測定光22による測定を、測定光21による測定よりも流路12の下流で行うことができる。すなわち、微小粒子Pが距離L(L>l)を送流されるまでの間に測定光22を流路12上に走査すれば、測定光22による微小粒子Pの測定を行うことができる。ここで、距離Lは距離lよりも大きくとることが可能であるため、本構成によれば、測定光22による測定をより高い確度で行うことが可能となる。
【0073】
また、測定光23及び4以上の測定光を用いる場合にも、同様に流路12のさらに下流で測定を行えばよく、全ての測定光による測定を高い確度で行うことができる。
【0074】
本発明に係る光学検出部において、流路は、微小粒子を導入するためのインレット、及び溶媒層流(シース流)を導入し制御するためのインレットを少なくとも1つ以上備える。流路の断面形状は、矩形、円形、楕円等とすることができる。流路の材質は、石英や各種プラスチック(PP,PC,COP、PDMS)であって測定光を透過可能であり、測定光に対して波長分散が少なく光学誤差の少ない材質を用いる。流路の内部表面には、形成した送流を維持可能な表面処理を行う。また、流路は固定されて配設されていてもよく、後述する基板Aのような交換可能な部材に配設されていてもよい。
【0075】
微小粒子Pには、細胞や微生物、生体高分子物質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などが含まれる。細胞には、細胞には、動物細胞(血球系細胞など)および植物細胞が含まれる。微生物には、大腸菌などの細菌類、タバコモザイクウイルスなどのウイルス類、イースト菌などの菌類などが含まれる。生体高分子物質には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)などが含まれる。また、工業用粒子は、例えば有機もしくは無機高分子材料、金属などであってもよい。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレートなどが含まれる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、磁性体材料などが含まれる。金属には、金コロイド、アルミなどが含まれる。これら微小粒子の形状は、一般には球形であるのが普通であるが、非球形であってもよく、また大きさや質量なども特に限定されない。
【0076】
また、測定光は、測定対象とする微小粒子P及び測定目的に応じ、種々の波長を選択して用いればよく、光源も、アルゴンやヘリウム等のガスレーザーや半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)等公知の光源を適宜選択して使用することができる。
【0077】
例えば、微小粒子Pの元素組成を測定する目的では、各元素の吸収波長に対応した波長の測定光が選択される。また、複数の蛍光色素で標識した微小粒子の蛍光を測定する場合には、各蛍光色素の励起波長に応じた波長の測定光が使用される。例えば、図1において、測定光21に波長405nm、測定光22に473nm 、測定光23に658nmの波長を用いれば、各波長を励起波長とする3種類の蛍光色素を用いて微小粒子Pの判別を行うことができる。
【0078】
測定光の走査は、各波長の光源から発せられる測定光の光路上にポリゴンミラーやガルバノミラー、音響光学素子、電気光学素子等を配置し、一定周期で走査を行う。測定光の照射系は、測定光が各流路に対して原則垂直に照射され、各流路上の結像面において測定光のスポット幅が一定となるようなテレセントリック光学系とする。
【0079】
既に説明したように、本発明に係る光学測定部において、流路は交換可能な部材に配設されていてもよく、この光学測定用部材としては、上記非特許文献2及び3に開示されるガラスや高分子材料の基板上に微小な流路を形成させたものを好適に採用することが可能である。このような基板を用いることにより、従来の光学測定部において生じていたフローセル(流路)の使い回しに起因する不純物の混入やクロスコンタミネーションの問題を解決することができる。
【0080】
図9は、光学測定用部材(基板)の一例を示す上面図である。
【0081】
図9中、符号Aで示す基板には、微小粒子を導入可能な流路が10本形成されている。符号11はそのうちの1本を示している。以下、流路11についてその構成を説明するが、他の流路についても構成は同様である。なお、流路の数は特に限定されず、2以上の流路を任意に形成することができる。
【0082】
微小粒子P(不図示)の分散溶媒は、符号101で示される試料導入部から流路11内へ導入される。流路11の一端には溶媒導入部31が設けられており、溶媒導入部31から導入された溶媒は流路11の溶媒送流路32及び33を送流され、合流部111において試料導入部101から導入された微小粒子Pの分散溶媒と合流される。この際、溶媒送流路32及び33から合流する溶媒がシース流として微小粒子Pを流路11内中央に1つずつ配列させる役割を果たす。なお、微小粒子Pの分散溶媒は、例えば、図1中符号10で示した試料貯留部から投入され、各流路の試料導入部101に分流されるものである(図1矢印F1も参照)。
【0083】
流路11内に一つずつ配列された微小粒子Pは、測定光照射領域Rに送流され、図中点線矢印S方向に走査される測定光によって測定される。この際の流路の配設間隔及び測定光の照射間隔は、すでに図2〜5を用いて説明した通りであるが、再度、基板A側が満たすべき条件に注目して、測定光のスポット幅Wspot及び照射間隔Dspotを任意の値に設定した場合に、基板流路の流路幅w及び流路間隔dの2変数(パラメータ)が満たすべき条件について説明する。
【0084】
図10は、本発明に係る光学測定用部材(基板)における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を説明する模式図である。
【0085】
図10は、図9中測定光照射領域R拡大して示している。図では、図2〜5と同様に、3本の流路11〜13を代表して示し、測定光を3つ用いる場合を示した。
【0086】
符号Wspotは測定光の走査方向(図中点線矢印S参照)における測定光21〜23のスポット幅を表し、符号Dspotは隣接する測定光間(測定光21−22間又は測定光22−23間)の照射間隔を表す。また、符号wは、走査方向における流路11〜13の幅を表し、符号dは隣接する流路間(流路11−12間又は流路12−13間)の間隔(ランド幅)を表している。
【0087】
まず、流路の流路幅wは、以下の式(3)を満たすものである。
【0088】
【数11】

【0089】
ここで、「Dspot(min)」は、測定光21〜23から選択される隣り合う2つの測定光の走査方向Sにおける間隔(すなわち、測定光21−22間又は測定光22−23間の間隔)のうち、最小の間隔を表す。図8では、測定光21−22の間がDspot (min)となる。
【0090】
すなわち、流路幅wは、そのスポット幅Wspotとの和が、照射間隔Dspot(min)よりも小さくなるよう構成される。換言すれば、各流路は、照射間隔Dspot(min)からスポット幅Wspotを引いた距離よりも狭い間隔をもって形成される必要がある。
【0091】
さらに、流路間隔dは、以下の式(4)を満たす。
【0092】
【数12】

【0093】
ここで、Nは測定光の数を表す。図10においては、測定光は符号21〜23の3つであり、N=3となる。また、「Dspot(max)」は、測定光21〜23から選択される隣り合う2つの測定光の走査方向Sにおける間隔(すなわち、測定光21−22間又は測定光22−23間の間隔)のうち、最大の間隔を表す。図10では、測定光22−23の間がDspot (max)となる。
【0094】
すなわち、流路間隔dは、測定光数から1を減じた数と照射間隔Dspot(max)との積にスポット幅Wspotを加えた値よりも大きくなるように構成される。換言すれば、各流路は、全ての測定光の照射位置が流路間隔(ランド幅)dの内に収まるような間隔をもって形成される必要がある。
【0095】
ここで、流路間隔dについて特に上限値は設定されないが、流路間隔dの大きさは、測定光の照射間隔Dspot(max)及びスポット幅Wspotの大きさ、並びに基板そのものの大きさに照らして妥当な大きさとする。より具体的には、例えば、図9に示した基板Aの基板サイズは縦70mm×横30mm程度であり、各流路はさらにこの基板A上の6mm四方程度の領域に設けられる(図9では、基板全体に対して流路を大きく示している)。従って、通常想定される流路間隔dの大きさは、350〜500μm程度であり、最大でも1mmを超えることはない。
【0096】
測定光の構成において、測定光のスポット幅Wspot及び照射間隔Dspotは任意の値に設定することが可能であるが、この場合にはスポット幅spotW及び照射間隔Dspotの数値に応じて、基板の流路幅w及び流路間隔dを上記式(3)及び(4)を満たすように構成することで、図2〜5で説明したと同様に、常に一つの測定光のみが一つの流路のみを照射することが可能となる。
【0097】
また、図6で説明したのと同様に、測定光21〜23が、流路間隔を走査方向Sに所定の幅で区分した複数の帯域のいずれか内に照射され、かつ、それぞれ異なる帯域に照射されるようにし、またこれらの帯域が連続しないように構成することで、「一の測定光が一の流路に照射されている場合に、他の測定光がいずれの流路にも照射されない」ようにすることもできる。
【0098】
このように、本発明に係る光学検出用部材(基板)においては、測定対象とする微小粒子を複数の流路に導入し、測定光を走査して各流路内に導入される微小粒子の光学測定を行うため、基板上に単一の流路を設け、その定点に測定光を照射して測定を行う従来の基板に比べ、短時間で測定処理を終えることが可能となる。
【0099】
さらに、常に一つの流路に対してのみに測定光が照射されるため、検出対象光のクロストークが発生せず高い測定精度が得られ、また単一の検出器で検出対象光を検出することが可能である。
【0100】
基板Aの材質は、ガラスや各種プラスチック(PP,PC,COP、PDMS)であって測定光を透過可能であり、測定光に対して波長分散が少なく光学誤差の少ない材質を用いる。基板Aの材質をガラスとする場合には、ウェットエッチングやドライエッチングによって流路を転写する。また、プラススチック製とする場合には、タノインプリントや成型によって基板上に流路を形成する。流路を形成した基板は、基板と同じ材質を用いて流路をカバーシールする。
【0101】
次に、図9を参照しながら、本発明に係る光学検出部における測定光の走査方法及び検出対象光の検出方法、並びに本発明に係る光学検出部を配設した微小粒子測定装置について、基板Aを配設した場合を例に説明する。
【0102】
測定光及び光源、走査手段は、測定対象とする微小粒子P及び測定目的に応じて適宜選択して用いればよい点はすでに述べた通りである。ここでは、光源に波長405nm、473nm 、658nmのレーザーダイオード(LD)を用い、光学経路上に設けたポリゴンミラーによってこれら光源からの測定光を走査して、各波長を励起波長とする3種類の蛍光色素により微小粒子Pの判別を行う場合を説明する。なお、測定のパラメータには、測定対象微小粒子の大きさを測定する前方散乱光や、構造を測定する側方散乱光、レイリー散乱やミー散乱等の散乱光などがあり、検出対象光は蛍光に限定されるものではない。また蛍光は、コヒーレントな蛍光であっても、インコヒーレントな蛍光であってもよい。
【0103】
以下に説明する複数の蛍光色素を用いた微小粒子Pの判別は、一般的なフローサイトメーターにおいて、蛍光色素で標識された細胞や生体高分子の判別を行なう場合に好適に採用される。また、蛍光色素を含有させたマイクロビーズの判別にも用いられている。
【0104】
まず、流路11内に一つずつ配列された微小粒子Pは、測定光照射領域Rに送流され、図中点線矢印S方向に走査される波長405nm、473nm 、658nmの測定光を照射される。この際、微小粒子Pが各波長を励起波長とする蛍光色素で標識されている場合には、微小粒子Pから蛍光(検出対象光)が発せられる。ここでは、微小粒子Pを3種類の蛍光色素により標識しているため、3種類の測定光の照射によって発生する蛍光のパターンは、各蛍光色素の発光の有無に基づき、2×2×2の8パターンとなる。この蛍光パターンを解析することで微小粒子Pの判別を行なうことが可能となる。
【0105】
測定光の照射によって波長405nm,473nm,658nmを励起波長とする各蛍光色素から発生する蛍光は、例えば、グレーティングにより分散した後、マルチチャンネルフォトマルチプライヤーチューブ(PMT)を用いて波長ごとに検出することができる。PMTは、検出された各波長の光を増幅して電気信号へと変換し、装置に設けられたデータ解析手段へ出力する。
【0106】
この際、基板Aの流路及び測定光は上記(1)〜(4)式を満たすように構成されているため、ポリゴンミラーによって走査される測定光は、常に一つの流路に対してのみに照射される。このため、蛍光は一つの流路のみから発生し、同時に他の流路から蛍光が発生することがない。従って、単一の検出器によって蛍光の検出を行なっても、クロストークが発生することがなく、高い測定精度を得ることが可能である。また、単一の検出器によって装置を構成することで、光学検出部及び微小粒子測定装置の構造を簡素にすることができる。
【0107】
本発明に係る微小粒子測定装置では、微小粒子Pの蛍光パターンに基づいて、所定の蛍光パターンを示すポピュレーション(集団)を分取することができる。
【0108】
測定光照射領域Rでの測定後、微小粒子Pは、図9中符号41で示す試料排出部から流路11外へ排出される。このとき、測定光照射領域Rと試料排出部41との間に設けられた分取部42によって、微小粒子Pのうち所望の集団の分取を行なう。
【0109】
装置に設けられるデータ解析手段は、PMTからの電気信号の出力を受けて、各微小粒子Pの蛍光パターンを判別し、所定の蛍光パターンを示す微小粒子Pについて分取信号を分取部42に出力する。分取部42はこの分取信号に基づいて、流路11内を送流される微小粒子Pの中から、所定の蛍光パターンを示す集団を分取する。
【0110】
分取部42は、例えば、上記非特許文献2及び3に記載される公知の技術によって構成すればよく、他に、特開2004-85323号公報に開示される超音波発生素子や、特開2006-220423号公報に記載されたゲル電極を用いて構成することもできる(当該公報請求項10参照)。このゲル電極を用いた方法によれば、流路の両側に対向し、かつ、溶媒の送流方向に対して位置をずらして配置された電解質を含むゲルからなる二つのゲル電極に所定の電流を流すことによって、微小粒子Pが送流される流路を切換えることにより、所望の集団を分取することが可能である。
【0111】
このように、本発明に係る光学検出部及び微小粒子測定装置においては、測定対象とする微小粒子を複数の流路に導入し、測定、分取を行うことにより、単一の流路の定点に測定光を照射して測定、分取を行う従来の装置に比べ、短時間で分取処理を終えることが可能とされている。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る光学測定部は、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などの微小粒子の光学的に測定に利用することができる。
【0113】
また、本発明に係る光学測定用部材及び微小粒子測定装置は、フローサイトメトリーやパーティクルアナライザーとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係る光学測定部における流路の配置と測定光の走査方向を示す模式図である。
【図2】本発明に係る光学測定部における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を説明する模式図である。
【図3】本発明に係る光学測定部として不適切な流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を例示した模式図である。
【図4】本発明に係る光学測定部として不適切な流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を例示した模式図である。
【図5】本発明に係る光学測定部として不適切な流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を例示した模式図である。
【図6】本発明に係る光学測定部における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を説明する模式図である。
【図7】本発明に係る光学測定部における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔の他の例を説明する模式図である。
【図8】流路送流方向における測定光の照射位置を示す模式図である。
【図9】光学測定用部材(基板)の一例を示す上面図である。
【図10】本発明に係る光学測定用部材(基板)における流路の配設間隔及び測定光の照射間隔を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0115】
10 試料貯留部
101 試料導入部
11,12,13,14,15 流路
111 合流部
21,22,23 測定光
31 溶媒導入部
32,33 溶媒送流路
41 試料排出部
42 分取部
A 光学測定用部材(基板)
P 微小粒子
R 測定光照射領域
S 測定光走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光の走査方向に配設された複数の流路に対し、同方向に複数の測定光を走査して、該流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定部。
【請求項2】
一の測定光が一の流路に照射されている場合において、他の測定光はいずれの流路にも照射されないように測定光の走査を行うことを特徴とする請求項1記載の光学測定部。
【請求項3】
測定光の走査方向に所定間隔で配設された複数の流路に対し、同方向に間隔をもって照射される複数の測定光を走査して、該流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定部において、
走査方向における流路幅をwchannelとした場合に、
前記測定光から選択されるいずれか2つの測定光の走査方向における間隔のうち、最小の間隔D(min)と、
測定光のスポット幅Wと、が、
以下の式(1)を満たすことを特徴とする請求項2記載の光学測定部。
【数1】

【請求項4】
走査方向における流路間の間隔をdchannelとした場合に、
前記測定光の数Nと、
前記測定光から選択されるいずれか2つの隣り合う測定光の走査方向における間隔のうち、最大の間隔D(max)と、
測定光のスポット幅Wと、が、
以下の式(2)を満たすことを特徴とする請求項3記載の光学測定部。
【数2】

【請求項5】
測定光の走査方向に所定間隔で配設された複数の流路に対し、同方向に間隔をもって照射される複数の測定光を走査して、該流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定部において、
測定光の走査方向における流路間の間隔を、所定の間隔で走査方向に複数の帯域に区分した場合に、
前記測定光が前記帯域のいずれかの帯域内に照射され、かつ、
一の測定光が照射される帯域と、他の一の測定光が照射される帯域と、が異なり、これらの帯域が連続しない、
ことを特徴とする請求項2記載の光学測定部。
【請求項6】
前記流路が交換可能な部材に配設されていることを特徴とする請求項1記載の光学測定部。
【請求項7】
請求項1記載の光学測定部を備える微小粒子測定装置。
【請求項8】
請求項6記載の光学測定部に供される部材であって、
微小粒子を導入可能な複数の流路を所定方向に所定間隔で配設し、同方向に間隔をもって照射される複数の測定光を走査することにより、該流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定用部材であり、
測定光の走査方向における測定光のスポット幅をWspot
前記測定光から選択されるいずれか2つの測定光の走査方向における間隔のうち、最小の間隔をDspot(min)とした場合に、
同方向における流路幅wが、以下の式(3)を満たすことを特徴とする光学測定用部材。
【数3】

【請求項9】
前記測定光の数をNλex
前記測定光から選択されるいずれか2つの隣り合う測定光の走査方向における間隔のうち、最大の間隔をD(max)とした場合に、
走査方向における流路間の間隔dが、以下の式(4)を満たすことを特徴とする請求項8記載の光学測定用部材。
【数4】

【請求項10】
請求項6記載の光学測定部に供される部材であって、
微小粒子を導入可能な複数の流路を所定方向に所定間隔で配設し、同方向に間隔をもって照射される複数の測定光を走査することにより、該流路内に導入された微小粒子の光学測定を行う光学測定用部材であり、
測定光の走査方向における流路間の間隔を、所定の間隔で測定光の走査方向に複数の帯域に区分した場合において、
前記測定光が前記帯域のいずれかの帯域内に照射され、かつ、
一の測定光が照射される帯域と、他の一の測定光が照射される帯域と、が異なり、これらの帯域が連続しない、
ことを特徴とする光学測定用部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−98049(P2009−98049A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271041(P2007−271041)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】