説明

光学用成形体

【課題】簡便な方法により生産することができ、反射型偏光板、特に輝度向上フィルム、として利用可能な優れた偏光特性を有する光学用成形体を提供すること。
【解決手段】相(a)と相(b)を含む光学用成形体において、これらの相を構成するポリマーとして、未延伸状態における平均屈折率nA、nBの関係が0≦nA−nB<0.1を満たす、或いは、所定の延伸条件で延伸倍率r(倍)を変えながら一軸延伸して延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyを測定し、延伸倍率rをX軸、延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyをY軸として同一座標にプロットしたときに特定の関係を満たす、固有複屈折値が正であるポリマーAと固有複屈折値が負であるポリマーBの組み合わせ、を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子として利用される成形体(光学用成形体)であって、特に、反射型偏光板や輝度向上フィルムとして好適な偏光特性を有する光学用成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ市場の拡大に伴い、より優れた偏光特性を有する光学用部材が求められている。液晶ディスプレイにおいては、自発光式ではないため、画面の輝度を向上させ、より美しい画像を得たいというニーズがある。また、近年の環境問題への意識の高まりから、より少ない消費電力で必要な輝度を得たいという要求もある。
【0003】
液晶ディスプレイは、バックライトからの光から分離した偏光を用いて画像の表示を行う。一般に、偏光分離に用いられる偏光板としては、ヨウ素や色素を配向させた吸収型の偏光板が用いられている。これらの吸収型偏光板は、偏光分離能は高いが、透過軸方向の光のみ透過し、残りは吸収してしまうため、光の透過率は最大でも50%であり、バックライトで発生させた光の利用効率が低いという問題がある。
【0004】
偏光板としては、上述した吸収型偏光板以外に、透過軸と直交する偏光成分を反射することにより偏光分離を行う反射型偏光板があり、これらの反射型偏光板を輝度向上フィルムとして用いてバックライトの光を有効に利用する方法が提案されている。
反射型偏光板としては、特許文献1〜3に記載される、2種類の材料を多層に積層し、これを延伸したフィルムが知られている。このフィルムにおいては、層界面での反射を利用して偏光分離を行う。
【0005】
【特許文献1】国際公開第95/17691号パンフレット
【特許文献2】国際公開第95/17692号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/17699号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献に記載された反射型偏光板は、その生産工程に複雑な多層積層工程を含み、生産コストが高くなるという問題点がある。
上記事情に鑑み、本発明は、簡便な方法により生産することができ、反射型偏光板、特に輝度向上フィルム、として利用可能な優れた偏光特性を有する光学用成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意研究した結果、ある方向における屈折率が概ね一致する(具体的には、屈折率差が0.05未満)と共に、その方向と垂直な方向の屈折率差が大きい2種類の相を含む成形体は、2種類の相の屈折率差が大きい方向に電場が振動する偏光成分を多く反射する傾向を示し、反射型偏光板として利用できることが分かった。
【0008】
そして、このような2種類の相は、相を構成するポリマーとして、未延伸状態における平均屈折率nA、nBの関係が0≦nA−nB<0.1を満たす、或いは、所定の延伸条件で延伸倍率r(倍)を変えながら一軸延伸して延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyを測定し、延伸倍率rをX軸、延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyをY軸として同一座標にプロットしたときに特定の関係を満たす、固有複屈折値が正であるポリマーAと固有複屈折値が負であるポリマーBの組み合わせ、を用いることにより、実現できることを見出した。
【0009】
なお、本発明において「固有複屈折」とは、配向に依存した複屈折の大きさを表す値で、下式(1)により定義される。
固有複屈折=npr−nvt・・・(1)
(ここで、nprは、一軸性の秩序をもって配向したポリマーの配向方向と平行な方向の屈折率、nvtはその配向方向と垂直な方向の屈折率を示す。)
すなわち、固有複屈折が正であるポリマーとは、ポリマーが一軸性の秩序をもって配向して形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなるポリマーを言い、固有複屈折が負であるポリマーとは、その逆のものを言う。
また、平均屈折率とは、成形体面内において屈折率が最大となる方向の屈折率、成形体面内において屈折率が最大となる方向に垂直な方向の屈折率、及び、成形体厚み方向の屈折率の平均値をいう。ここで、成形体面内の面とは、成形体を立方体と考えたときに最も短い辺を法線とする面を意味する。
【0010】
すなわち、本発明の第一の態様は以下のとおりである。
固有複屈折値が正であるポリマーAからなる相(a)と固有複屈折値が負であるポリマーBからなる相(b)を含む光学用成形体であって、
ポリマーAとポリマーBの未延伸状態における平均屈折率nA、nBが、次の関係を満たす、光学用成形体:
0≦nA−nB<0.1
【0011】
また、本発明の第二の態様は以下のとおりである。
固有複屈折値が正であるポリマーAからなる相(a)と固有複屈折値が負であるポリマーBからなる相(b)を含む光学用成形体であって、
ポリマーA、ポリマーB各々について、延伸温度をポリマーAとポリマーBのガラス転移温度のうち高い方の温度+10(℃)、延伸速度を750(%/min.)、として延伸倍率r(倍)を変えながら一軸延伸して、延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyA、nyBを測定し、延伸倍率rをX軸、延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyA、nyBをY軸として同一座標にプロットしたときに、両曲線が最も近づく延伸倍率において、|nyA−nyB|<0.05を満たす、光学成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便な方法により生産することができ、かつ、優れた偏光特性を有する光学用成形体を提供することができる。
本発明の光学用成形体は、優れた偏光特性を有しているため、反射型偏光板、特に、輝度向上フィルム、として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本発明の光学用成形体」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本発明の第一の態様の光学用成形体においては、相(a)、相(b)を構成する材料として、未延伸状態における平均屈折率nA、nBの関係が0≦nA−nB<0.1を満たす、固有複屈折値が正であるポリマーAと固有複屈折値が負であるポリマーBの組み合わせを用いる。
【0015】
ポリマーAは、その固有複屈折値が正であるため、主鎖の配向が進むにつれて、配向方向の屈折率nxAが平均屈折率(未延伸時)nAより大きくなり、配向方向に垂直な方向(以下、「配向垂直方向」という。)の屈折率nyAが平均屈折率(未延伸時)nAより小さくなる。一方、ポリマーBは、固有複屈折値が負であるため、主鎖の配向が進むにつれて、配向方向の屈折率nxBが平均屈折率(未延伸時)nBより小さくなり、配向垂直方向の屈折率nyBが平均屈折率(未延伸時)nBより大きくなる。
したがって、相(a)、相(b)それぞれを構成するポリマーとして、未延伸状態における平均屈折率nA、nBの差が小さい(具体的には両者の関係が0≦nA−nB<0.1を満たす)、固有複屈折値が正であるポリマーAと固有複屈折値が負であるポリマーBの組み合わせを選択し、相(a)と相(b)を含む成形体を延伸するなどして両相を同一条件(延伸温度、延伸速度等)で配向させると、配向が進むにつれて、配向方向の屈折率nxaとnxbの差が広がると共に、ある配向度(延伸倍率)のところで、相(a)、相(b)の配向垂直方向の屈折率nya(=nyA)、nyb(=nyB)が近づくか、一致(大小が逆転)する(図1、図2参照)。
【0016】
本発明の光学用成形体においては、以上の原理を利用して、相(a)、相(b)を構成する材料の組み合わせを適切に選択し、適切な条件で配向させることにより、成形体の面内での一方向(具体的には、配向垂直方向)における2相の屈折率が概ね一致すると共に、その方向と面内で垂直な方向(具体的には、配向方向)における2相の屈折率差が大きい状態を実現する。
そして、その結果、本発明の光学用成形体に光が入射した場合、面内での屈折率差の小さい方向に電場が振動する偏光成分をより多く透過し、屈折率差の大きい方向に電場が振動する偏光成分をより多く反射することとなり、優れた偏光分離機能が発現すると考えられる。
【0017】
本発明において、相(a)及び相(b)の2種類の相のモルフォロジーに制限はなく、相(a)と相(b)が各々分離した(界面を有する)状態で光学用成形体中に存在していればよく、例えば、相(a)が海(連続相)で相(b)が島(分散相)の海島構造、相(b)が海(連続相)で相(a)が島(分散相)の海島構造、又は、相(a)と相(b)により形成される共連続構造等が挙げられる。
特に、配向方向の屈折率が大きい相(a)が島(分散相)で、配向方向の屈折率が小さい相(b)が海(連続相)である海島構造、又は、配向方向の屈折率が大きい相(a)が海(連続相)で、配向方向の屈折率が小さい相(b)が島(分散相)は、ポリマーA、ポリマーBを混合しこれを成形するという簡便な方法により製造することができる上、良好な偏光反射特性を示すため好ましい。
【0018】
本発明の光学用成形体において、光学用成形体中の相(a)と相(b)の比率は特に制限されないが、より優れた偏光特性を得る観点から、相(a)と相(b)の合計量を100質量%とした場合に、相(a)が好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下である。
また、本発明の光学用成形体には、相(a)、相(b)を構成するポリマーA、Bの他に、2相の屈折率を制御するための屈折率制御剤や、2相のサイズや均一性を高めるために相間の親和性を高める添加剤を加えることができる。
【0019】
[ポリマーA]
本発明の光学用成形体における相(a)を構成するポリマーAは、固有複屈折が正のポリマーである。
本発明においてポリマーAとして好ましく用いることのできる固有複屈折が正のポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂等が挙げられる。その中でもポリエステル系樹脂は、複屈折の特性、フィルム強度、光学特性等の観点から好ましい。ポリエステル系樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートは結晶配向性、複屈折が大きくなる傾向にあるため好ましく、ポリエチレンナフタレートがより好ましい。
【0020】
相(a)を構成するポリマーAとしては、市販品をそのまま用いることもでき、例えば、ポリカーボネート系樹脂としては、三菱エンジニアリングプラスチック製ユーピロン、帝人化成製パンライト;ポリエステル系樹脂としては、三菱化学製ノバペックス、帝人化成製テオネックス;ポリアミド系樹脂としては、旭化成ケミカルズ製レオナ、宇部興産製UBEナイロン;ポリフェニレンエーテル樹脂としては、旭化成ケミカルズ製及びゼネラルエレクトリック製の各種ポリマー、ポリサルフォン系樹脂としては、ソルベイアドバンストポリマーズ製ユーテル、ポリエーテルサルフォン系樹脂としては、BASF製ウルトラゾーンE、ポリアリレート系樹脂としては、ユニチカ製Uポリマー等を用いることができる。
【0021】
[ポリマーB]
本発明の光学用成形体における相(b)を構成するポリマーBは、固有複屈折値が負のポリマーである。中でも、スチレン系樹脂は透明性等の観点から好ましい。
【0022】
本発明の光学用成形体において、スチレン系樹脂とは、少なくともスチレン系単量体を単量体成分として含む重合体を言う。ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体をいう。
【0023】
本発明の光学用成形体においてスチレン系単量体とは、スチレンの他に、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等のビニル芳香族化合物単量体等が挙げられ、代表的なものはスチレンである。
上記スチレン系単量体は1種又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0024】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体成分に他の単量体成分を共重合したものでもよい。共重合可能な他の単量体としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン等が挙げられ、これらの2種以上を共重合してもよい。
このような他の単量体成分の含量は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0025】
相(b)を構成するポリマーBのスチレン系樹脂として、スチレン系単量体及び無水マレイン酸を単量体成分として含む共重合体は、耐熱性に優れ、光学素子に用いるのに適した光学特性を有するため好ましい。特に、ポリマーAとして、ポリエステル系樹脂を用いる場合、ポリマーAの屈折率との兼ね合いの観点から好ましい。
共重合体中の無水マレイン酸単位の含量は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.1〜40質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%〜30質量%である。共重合体中の無水マレイン酸単位の含量が0.1質量%以上であると耐熱性に優れる傾向にあり、50質量%以下であると透明性に優れる傾向にある。
また、スチレン系単量体及び無水マレイン酸を単量体成分として含む共重合体は、スチレン系単量体、無水マレイン酸以外のその他の単量体を共重合させてもよいが、その他の単量体成分の含量は20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0026】
スチレン系樹脂の重量平均分子量は、成形体の強度と成形加工性、流動性の観点から、好ましくは5万〜80万であり、より好ましくは7万〜60万であり、さらに好ましくは10万〜50万である。
本発明の光学用成形体において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算によって求めた値のことを意味する。
【0027】
[スチレン系樹脂の製造方法]
スチレン系樹脂は、市販品をそのまま用いることもでき、市販の単量体を用いて公知の方法で製造することもできる。スチレン系樹脂を製造する方法としては、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができる。中でも、光学用途としては不都合な微小異物の混入を低減することが可能であるため、懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が好ましい。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合において一般に用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を用いることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行う場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は、例えば、全体のモノマー100質量%に対して、0.005〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
重合反応において、必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、ラジカル重合において一般に用いられる任意のものが使用でき、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、スチレン系樹脂の分子量が、上記の好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で添加する。
【0028】
本発明の光学用成形体中には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリマーA、ポリマーB以外のその他の重合体を混合することができる。そのような重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;及び、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられ、これらの1種以上を混合することができる。
このようなその他の重合体の含有量は、ポリマーAとポリマーBの合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。その他の重合体を全く含まないことも好ましい。
【0029】
さらに、本発明の光学用成形体には、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。配合することができる添加剤としては、光学材料に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
このような添加剤としては、例えば、二酸化珪素等の無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;りん系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、ラクトン系化合物等の紫外線吸収剤;その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの添加剤の総添加量は、光学用成形体を構成する重合体(ポリマーA、ポリマーB、及び、必要に応じて混合されるその他の重合体)の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0030】
[光学用成形体の製造方法]
本発明の光学用成形体は、ポリマーA、ポリマーB、及び、必要に応じてその他の成分(その他の重合体や添加剤等)を混合し、これを成形するという簡便な方法により製造することができる。
成形に際しては、事前に材料を混練してペレット化したものをフィルム成形しても良いし、成形時に直接フィルム成形機を用いて混練しても良い。事前に材料を混練する方法としては、一軸押出機や二軸押出機による溶融混練、ポリマーを溶媒に溶解して混ぜる方法等がある。
【0031】
混練条件に限定はなく、使用するポリマーA、Bの種類に応じて適宜決定すればよい。
例えば、ポリマーAとしてポリエステル系樹脂を用いる場合(とりわけ、ポリマーAとしてポリエステル樹脂と、ポリマーBとしてスチレン系単量体及び無水マレイン酸を単量体成分として含む共重合体と組み合せる場合)、使用するポリエステル系樹脂の融点より高い温度で混練すると、好ましい偏光分離特性が得られる。もっとも、混練温度が高すぎるとポリマーがゲル化してしまう。そこで、具体的には、ポリマーAとして、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は混練温度(シリンダー内樹脂温度)を255℃以上290℃以下とすることが好ましく、より好ましくは255℃以上280℃以下である。また、ポリマーAとして、ポリエチレンナフタレートの場合を用いる場合は混練温度を265℃以上290℃以下とすることが好ましく、より好ましくは265℃以上280℃以下である。
【0032】
本発明の光学用成形体の成形方法は、特に限定されず、例えば、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、押し出し成形、発泡成形等、公知の方法で成形することによって製造することでき、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法を用いることもできる。
押し出し成形による方法としては、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸成形体を押し出し成形することができる。押し出し成形により成形体を得る場合は、事前にポリマーA、ポリマーB、及び、必要に応じて他の成分を溶融混練してもよいし、押し出し成形時に溶融混練を経て成形することもできる。また、ポリマーAとポリマーB両方が可溶な溶媒、例えば、クロロホルム、二塩化メチレン等、を用いてキャスト成形し、未延伸フィルム、シートを得ることも可能である。
【0033】
本発明の光学用成形体においては、所望の反射型偏光分離特性を備えるために、相(a)と相(b)の配向垂直方向の屈折率nya、nybを一致、或いは、概ね一致させると共に、配向方向の屈折率差を大きくするために、相(a)、相(b)を構成するポリマーA、Bの主鎖及び側鎖に配向を与えることが好ましい。なお、本発明において、相(a)と相(b)の配向垂直方向の屈折率を概ね一致させるとは|nya−nyb|<0.05とすることをいう。
ポリマーA、Bに配向を与える方法に特に限定はないが、例えば、成形体全体に外力や電磁場を付与して、成形体に含まれるポリマーA、Bを同一条件で同時に配向させる方法が挙げられる。その中でも、成形体を適当な温度下で延伸してポリマーA、Bに配向を与える方法は、工業的にも効率的であり、効果的にポリマーを配向させる方法であるため好ましい。
【0034】
延伸方法は特に限定されないが、例えば、未延伸成形体を機械的流れ方向に縦一軸延伸し、続いて機械的流れ方向に直交する方向に横一軸延伸する方法、ロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等が挙げられる。
【0035】
ポリマーA、ポリマーBの配向を成形体の延伸により実現する場合、延伸温度、延伸倍率等の延伸条件は、相(a)と相(b)の延伸垂直方向における屈折率が近づく(一致する)と共に、延伸方向の屈折率差を大きくなるように設定する。
【0036】
延伸倍率の目安は、相(a)、(b)を構成するポリマーA、Bの種類にもよるが、少なくともどちらか一方向に1.5倍以上10倍以下であることが好ましく、4倍以上10倍以下であることがさらに好ましい。延伸倍率をこの範囲に設計することにより、偏光特性、耐熱性、強度の観点で好ましい延伸成形体が得られる。
ここで、延伸倍率とは、以下の式で表される値をいう。
延伸倍率(倍)=(延伸前の長さ/延伸後の長さ)−1
また、延伸温度の目安は、ポリマーA、Bの種類の種類にもよるが、ポリマーAとポリマーBのガラス転移温度のうち高い方の温度+10(℃)付近である。
【0037】
本発明の光学用成形体においては、相(a)と相(b)が、互いに分離した状態で存在しているので、成形体中の相(a)、相(b)の複屈折性や屈折率は、これらの相を構成するポリマーA、B各々単独の複屈折性や屈折率と概ね等しいとみなすことができる。
したがって、相(a)と相(b)の延伸垂直方向の屈折率を概ね一致させると共に延伸方向の屈折率を大きくするための具体的な延伸条件は、例えば、予め、ポリマーA、B各々単独について、延伸条件と屈折率(延伸方向、延伸垂直方向)の関係を調べておくことにより決定することができる。
具体的には、温度を変えて繰り返し延伸を行うなどして、ポリマーA、ポリマーB両方において、複屈折(延伸方向と延伸垂直方向の屈折率の差)が生じやすい温度を求め、これを成形体の延伸温度とすることが好ましい。また、このようにして決定した温度において、実際に光学用成形体を製造する際に採用するのと同等の延伸速度(例えば、750%/min.)で倍率r(倍)を変えながら一軸延伸して延伸垂直方向の屈折率nyA、nyBを測定し、延伸倍率rをX軸、延伸垂直方向の屈折率nyA、nyBをY軸として同一座標にプロットし、ポリマーAの延伸倍率−屈折率曲線とポリマーBの延伸倍率−屈折率曲線が最も近づく倍率を求め、これを成形体の延伸倍率とすることが好ましい。
【0038】
本発明者らが種々のポリマーの組み合わせについて検討したところ、ポリマーA、ポリマーBの混合物について相剥離等を起こすことなく延伸ができ、しかもポリマーA、ポリマーB双方について複屈折が生じやすい温度は、実際には、ポリマーAとポリマーBのガラス転移温度のうち高い方の温度+10(℃)付近であることを確認している。
そして、このポリマーAとポリマーBのガラス転移温度のうち高い方の温度+10(℃)を延伸温度とし、延伸速度を750(%/min.)として、延伸倍率r(倍)を変えながら一軸延伸して延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyを測定し、延伸倍率rをX軸、延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyをY軸として同一座標にプロットしたときに、両曲線が最も近づく延伸倍率において|nyA−nyB|<0.05となる固有複屈折が正と負のポリマーA、Bの組み合わせを相(a)、(b)を構成するポリマーとして選択すれば、相(a)と相(b)からなる成形体において、成形体の延伸垂直方向における2相の屈折率が概ね一致すると共に、延伸方向における2相の屈折率差が大きい状態を実現することができ、反射型偏光板としての特性を有するものとすることできることが分かった。これが本発明の第二の実施態様である。
もっとも、上記延伸条件は、ポリマーA、Bを選択するための条件であり、本発明の第二の実施態様においても、実際の延伸条件は、前述した決定方法によって、より最適な条件を決定することが好ましい。
【0039】
本発明の光学用成形体の形体は、フィルム又はシートが好ましい。本発明において、フィルムとは300μm以下の厚さのものを言い、シートとは300μmを超えるものを言う。また、フィルムの厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、シートの厚さは好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0040】
本発明の光学用成形体は、反射型偏向板や輝度向上フィルムの用途に適している。
反射型偏光板及び輝度向上フィルムの偏光特性は、以下の式で表される偏光度PE及び平均透過率Tspによって評価することができる。
【数1】

【数2】

(ここでTpは、ポリマー主鎖の配向方向と平行に電場が振動する偏光の透過率(%)、Tvはポリマー主鎖の配向方向とフィルム面内で垂直方向に電場が振動する偏光の透過率(%)を示す。)
偏光度PE及び平均透過率Tspは、それぞれ、100(%)及び50(%)に近いほど反射型偏光板として優れていることを意味する。偏光度PEは、好ましくは40%以上、より好ましくは70%以上である。平均透過率Tspは、好ましくは40〜60%以上、より好ましくは45〜55%以上である。光学用成形体の偏光度PE及び平均透過率Tspがこれらの値であると、反射型偏光板及び輝度向上フィルムとして好適に用いることができる。
【0041】
このような偏光度PEと平均透過率Tspは、ポリマーA、Bとして、固有複屈折の絶対値が大きいものどうしを組み合せると達成しやすい傾向にあるが、一方の固有複屈折の絶対値が大きい場合には、他方のそれが大きくなくても達成できる場合がある。
さらに、本発明の光学用成形体の中でも、特に、ポリマーAとして、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレート、ポリマーBとして、スチレン系単量体及び無水マレイン酸を単量体成分として含む共重合体をそれぞれ用い、ポリマーBからなる連続相(b)中にポリマーAからなる分散相(a)が分散した海島構造としたもの、又は、ポリマーAからなる連続相(a)中にポリマーBからなる分散相(b)が分散した海島構造としたものは、他の同等の複屈折性を有するポリマーの組み合わせや他のモルフォロジーの場合と比較して、偏光度PEと平均透過率Tspが共に理想の値(それぞれ、100%、50%)に近づくため好ましい。特に好ましいのは、ポリマーAがポリエチレンナフタレートで、ポリマーBがスチレン−無水マレイン酸共重合体の組み合わせである。
上記の組み合わせが他の組み合わせと比較して好ましい理由は明らかではないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートと、スチレン系単量体及び無水マレイン酸を単量体成分として含む共重合体とは、条件を適切に選択することにより反応させて適度にグラフト化させることが可能であり、このグラフト化された適量(少量)のポリマーが、ポリマーAとポリマーBの相溶化剤として働き、両者の界面を安定化させるので、せん断応力を加えてポリマーAとポリマーBを混合(混練)すると、ポリマーB(連続相(b))中にポリマーA(分散相(a))、或いは、連続相(a)中に分散相(b)を細かく均一に分散させることが可能となるためと推測される。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
(1)測定方法
本明細書中の各物性等の測定方法は次の通りである。
(i)偏光度PE及び透過率Tspの測定
測定装置として、150mm径の積分球の付いた日本分光製紫外可視近赤外分光光度計V−670を使用した。サンプル両面に流動パラフィンを薄く塗布し、これを両側から厚さ1mmのスライドグラスで挟んだ状態でサンプルホルダーにセットした。サンプルを通過する光を、積分球により拡散する光も含めて集光して測定した。光源とサンプルの間に偏光板をセットし、偏光板の透過軸をサンプルの延伸方向に0°又は90°にセットした。0°の場合の550nm波長における透過率(%)をTp、90°の場合の550nm波長における透過率(%)をTvとし、Tp、Tvの値から、偏光度PE及び平均透過率Tspを以下の式により算出した。
【数3】

【数4】

(ii)屈折率の測定
屈折率の測定はMETRICON製モデル2010プリズムカプラを用いて測定した。532nm、633nm及び838nmにおける屈折率を測定し、コーシーの式により波長分散の曲線を求め、550nmの屈折率を計算した。なお、本発明において屈折率とは、全て550nmにおける屈折率を意味するものとする。
また、未延伸フィルムについて、未延伸フィルムを製造した押出成形機のMD方向をx方向、フィルムの厚み方向をz方向として、x、y及びz3方向の屈折率を測定し、その平均値を未延伸状態の平均屈折率とした。
(iii)固有複屈折正負の判断
ポリマーに対して、そのガラス転移温度以上、ガラス転移温度+50℃以下の範囲内で伸張応力をかけながら延伸を行い、急冷固化し、23℃におけるnpr−nvtを測定した。測定には大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100を用いて、測定面が測定光と垂直になるように試料を配置し、回転検光子法により測定した。npr−nvtが負の場合を固有複屈折が負、npr−nvtが正の場合を固有複屈折が正と判断した。
(iv)輝度向上特性の評価
反射シートを配置し、その10mm上方に線状光源として直径4mm、長さ500mmの冷陰極管16本を25mm間隔になるように配置し、冷陰極管から12mm上方に拡散板を設置し、さらにその上に拡散フィルム、プリズムシートを積層して、直下型バックライト式輝度評価用装置を作成した。該装置の上に評価対象である反射型偏光板サンプルフィルムをフィルムの偏光透過方向が冷陰極管と平行になるように積層した。この状態でELDIM製XL−88を用いて、サンプルフィルム面に対して法線方向の輝度と、サンプルフィルムを透過する光(拡散する光も含む)の強度を測定した。なお、XL−88の偏光板は、反射型偏光板サンプルフィルムと平行ニコルになるようにセットした。このようにして得られた、サンプルフィルム面に対して法線方向の輝度を正面輝度、拡散する光も含めた透過光を総計した明るさを積分光強度(Integrated Intencity)として、輝度向上特性を評価した。
(v)ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス転移温度(Tg)は、PERKIN ELMER製 Pyris1 DSCを用い、20℃/分の昇温速度で測定した。
(vi)MFR測定
MFRの測定は、ISO R1133に準拠して測定(条件:200℃、荷重49N)した。
【0043】
(2)ポリマーの種類と調製
〔ポリマーA〕
(i)ポリエチレンナフタレート
ポリエチレンナフタレートは、帝人製ポリエチレンナフタレートのペレットを使用した。Tgは122℃であり、高い耐熱性を持つことを確認した。固有複屈折は正であった。
〔ポリマーB〕
(ii)スチレン−無水マレイン酸共重合体
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部の比率で合計100質量部を準備した。(ただし、両者は混合しない。)
メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液とした。0.95kg/hr.の速度で連続して内容積4Lのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、70℃に加熱した無水マレイン酸を、第二調合液として0.10kg/hr.の速度で第1調合液の入った同一のジャケット付き完全重合機へ供給し、111℃で重合を行った。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出し、スチレン−無水マレイン酸共重合体のペレットを得た。
得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量85質量%、無水マレイン酸単位15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。また、Tgは130℃であり、高い耐熱性を持つことを確認した。固有複屈折は負であった。
【0044】
(3)ポリマーA、B単独の屈折率
(2)で調製したポリマーAのペレット及びポリマーBのペレットを乾燥後、東洋精機製単軸押出機及びTダイ装着ラボプラストミル(Tダイ幅150mm、リップ幅350μm)を用いて、押出機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度、押出量、巻き取り速度を調整し押出成形することによりポリマーAからなる未延伸フィルムとポリマーBからなる未延伸フィルムを得た。各未延伸フィルムの平均屈折率nA、nBを測定したところ、nA−nBは0.069であり、0≦nA−nB<0.1の関係を満たしていた。
次いで、得られたポリマーA、ポリマーBの未延伸フィルムの幅方向の中点を中心とする幅40mmの部分から複数枚のフィルムを切り出し、各々を恒温槽付き引張試験機を用い、延伸方向と垂直な方向の端を自由端として延伸条件を変えながら繰り返し一軸延伸を行った。得られた各延伸フィルムの延伸方向とフィルム面内で垂直な方向の屈折率nyを測定して、|nyA−nyB|<0.05となる延伸条件ア〜エを決定した。
延伸条件ア〜エ、及び、延伸条件ア〜エで一軸延伸した場合の各フィルムの延伸方向と垂直な方向の屈折率を表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
(4)光学用成形体の製造
[実施例1〜4]
栗本鐵工所製二軸混練機(KRC−S1)のホッパーに表2に示す配合比率となるようにポリマーAとポリマーBのペレットを投入した。押出機のシリンダー内樹脂温度と押出量を調整し、ポリマーAとポリマーBの混合物のペレットを得た。得られたペレットをさらに東洋精機製単軸押出機及びTダイ装着ラボプラストミル(Tダイ幅150mm、リップ幅350μm)を用いて、押出機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度、押出量、巻き取り速度を調整し押出成形することにより未延伸フィルムを得た。
次いで、得られたポリマーAとポリマーBの混合物からなる未延伸フィルムを、恒温槽付き引張試験機を用い、延伸方向と垂直な方向の端を自由端として、前述の延伸条件ア〜エと同じ条件で一軸延伸を行った。得られた延伸フィルムの偏光特性を測定した。
各フィルムのポリマー組成、押し出し条件、成形条件、延伸条件、フィルム特性を表2に示した。
【0047】
【表2】

【0048】
各フィルムの微細構造を走査型電子顕微鏡により観察したところ、ポリマーAよりなる相(a)が、ポリマーBよりなる相(b)中に分散した海島構造をしていることが確認できた。
そして、いずれのフィルムも、偏光度PEは75%より大きく、平均透過率Tspは50%付近に近い値を示した。これらの結果から、本発明の成形体は、輝度向上フィルムとしても十分使用できる反射型偏光板であることが確認できた。
【0049】
[実施例5、比較例1]
延伸装置として東洋精機製二軸延伸装置X6Hを用いた以外は実施例2と同様にして製造した延伸フィルムとを前述の直下型バックライト式輝度評価用装置に積層して、正面輝度、積算光強度を測定した。結果を表3に示す。
比較のため、直下型バックライト式輝度評価用装置に、輝度向上フィルムを積層することなく正面輝度、積算光強度を測定した。
実施例5と比較例1の結果を比べたところ、本発明の光学用成形体を輝度向上フィルムとして利用した実施例5では、これを利用していない場合(比較例1)と比較して、正面輝度が1.18倍、積算光強度が1.41倍向上した。
【0050】
【表3】

【0051】
以上の実施例から、本発明の光学用成形体は、優れた偏光特性及び輝度向上特性を有し、液晶ディスプレイの反射型偏光板、とりわけ輝度向上フィルム、として好適に用いることができることが確認できた。
さらに、本発明の光学用成形体は、ポリマーAとポリマーBを事前に混練して成形・延伸するというきわめて簡便な方法で製造することができ、製造段階において複雑な工程を伴わないため、従来の多層積層型の反射型偏光板及び輝度向上フィルム等と比較して、より容易に製造することが可能であり、結果として生産コストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光学用成形体は、偏光特性に優れ、反射型偏光板として使用できる。
特に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイやプロジェクターに用いられる偏光板、輝度向上フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、タッチパネル、レンズ、プロジェクター用のスクリーン等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等として好適に用いることができる。
その他、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】相(a)、相(b)の屈折率と配向度(延伸倍率)の関係の模式図
【図2】相(a)、相(b)の屈折率と配向度(延伸倍率)の関係の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有複屈折値が正であるポリマーAからなる相(a)と固有複屈折値が負であるポリマーBからなる相(b)を含む光学用成形体であって、
ポリマーAとポリマーBの未延伸状態における平均屈折率nA、nBが、次の関係を満たす、光学用成形体:
0≦nA−nB<0.1
【請求項2】
固有複屈折値が正であるポリマーAからなる相(a)と固有複屈折値が負であるポリマーBからなる相(b)を含む光学用成形体であって、
ポリマーA、ポリマーB各々について、延伸温度をポリマーAとポリマーBのガラス転移温度のうち高い方の温度+10℃、延伸速度を750(%/min.)、として延伸倍率r(倍)を変えながら一軸延伸して、延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyA、nyBを測定し、延伸倍率rをX軸、延伸方向に対し垂直な方向の屈折率nyA、nyBをY軸として同一座標にプロットしたときに、両曲線が最も近づく延伸倍率において、|nyA−nyB|<0.05を満たす、光学成形体。
【請求項3】
少なくとも一方向に延伸されたものである請求項1又は2記載の光学用成形体。
【請求項4】
ポリマーAが、ポリエステル系樹脂である請求項1〜3いずれか1項記載の光学用成形体。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンナフタレートである請求項4記載の光学用成形体。
【請求項6】
ポリマーBが、スチレン系単量体及び無水マレイン酸を単量体成分として含む共重合体である請求項1〜5のいずれか1項記載の光学用成形体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の光学用成形体からなる反射型偏光板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の光学用成形体からなる輝度向上フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−258183(P2009−258183A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104085(P2008−104085)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】