説明

光学異方体、その製造方法及び液晶表示装置

【課題】光学異方層の液晶化合物が配向性の点で優れ、従来にない安価で、光学異方性、密着性に優れた光学異方体、光学異方体の製造方法および光学異方体を備えた液晶表示装置の提供。
【解決手段】置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、重合性ディスコチック液晶化合物または正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層は上記液晶化合物を配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化した層であることを特徴とする光学異方体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学異方体、その製造方法及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターのマルチメディア化が進み、ラップトップ型パーソナルコンピューターに於いても、カラー表示が一般的になってきている。ラップトップ型コンピューターでは、STN液晶ディスプレイ、TFT液晶ディスプレイが主に使用されている。
【0003】
STN液晶ディスプレイは、複屈折モードを利用した表示素子であるため、液晶で生じる位相差により着色し、白黒表示が不可能であるという大きな問題があった。このような問題を解決するために、D−STN方式(補償用液晶セルを用いる方式)が試みられたが、この方式では、液晶ディスプレイの特徴である「薄くて、軽い」という点で、時代の要求と逆行しており、補償用液晶セルの製造にも、高い精度が要求され、歩留りが悪いという問題点があった。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、各種の提案がなされ、例えば、特開昭63−149624号公報には、延伸樹脂フィルムを用いるF−STN方式が提案され、又、特開平3−87720号公報、同4−333019号公報には、D−STN方式の補償性能を維持して、その質量と肉厚を軽減する目的で、液晶性高分子をねじれ配向させたフィルムを使って色補償を行う方法が提案されている。この液晶ディスプレイの位相差補償板は、透光性基板とこの基板の上に形成された配向膜及びこの配向膜の上にねじれ配向状態に固定した液晶高分子層とから構成されている。
【0005】
さらに、最近では、TFT、TN液晶ディスプレイの視野角補償として、特開平7−191217号公報に開示されているように、ディスコティック液晶のフィルムを液晶セルの上面と下面に配置して、液晶セルの視野角特性を改善する試みがなされている。前記TN型液晶ディスプレイ用補償板は、前述の特開平3−87720号公報、同4−333019号公報に記載されている液晶ディスプレイの位相差補償板と同様に、透光性基板と、この基板の上に形成された配向膜及びこの配向膜の上に形成された液晶配向層とから構成されている。
【0006】
上述のように、近年、STN液晶ディスプレイやTFT、TN液晶ディスプレイに於いては、従来より高度な補償性能を有する光学フィルムが要望され、その解決手段として、液晶化合物を塗布した光学異方体または光学フィルムが検討されるようになってきた。
【0007】
光学異方体は、液晶表示部材に光学異方体を張り付けなどに用いられるため、光学異方体の透明樹脂基板は透明樹脂フィルムとして用いられることが多い。透明樹脂基板は基板の物性や透湿性の改良の観点から可塑剤を有することが多かった。光学異方体の光学異方層が液晶化合物を有するとき、液晶化合物を有機溶媒の溶液としてこれらの透明樹脂基板に塗設することは製造の観点からメリットがある。
【0008】
しかしながら該基板上に有機溶媒溶液を塗設するために、該基板を構成する樹脂や可塑剤が光学異方層に溶出し、液晶化合物の配向が乱されることが多い。このことは光学異方体の性能上重大な欠点を誘発し、製造工程において通常の樹脂を塗設するときと異なり、塗布性と液晶化合物の配向性の両者を満たすことが非常に困難となる。
【0009】
このようなことを回避する技術としては、例えば可塑剤を含まない樹脂フィルムに配向膜を塗設し、その上に液晶化合物を含む溶液を塗設し乾燥、配向処理を行い、フィルム物性上好ましい可塑剤を含む基板に接着剤を用いて転写し、可塑剤を含まない樹脂フィルムを剥離することによって製造することが容易に想定できる。しかしながら、剥離した樹脂フィルムは廃材となり、コスト的にも好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は上述のような問題点を解決するものであって、本発明の目的は光学異方層の液晶化合物が配向性の点で優れ、従来にない安価で、光学異方性、密着性に優れた光学異方体、光学異方体の製造方法および光学異方体を備えた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
1.置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、重合性ディスコチック液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層は重合性ディスコティック液晶化合物を配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化した層であることを特徴とする光学異方体。
2.置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、重合性ディスコチック液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体の製造方法において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層の重合性ディスコティック液晶化合物の配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化したことを特徴とする光学異方体の製造方法。
3.置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層は正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物を配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化した層であることを特徴とする光学異方体。
4.置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体の製造方法において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層の正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物の配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化したことを特徴とする光学異方体の製造方法。
5.前記置換セルロース樹脂基板の少なくとも一方にプラズマ処理を施し、プラズマ処理を施した隣接上に溶出ブロック層を有することを特徴とする1または3に記載の光学異方体。
6.前記置換セルロース樹脂基板の少なくとも一方に有機酸基含有ポリマーを塗設し、該塗設した層の隣接上に溶出ブロック層を有することを特徴とする1、3または5に記載の光学異方体。
7.前記置換セルロース樹脂基板に対する光学異方層の平均配向角度が斜めであることを特徴とする1、3、5または6の何れか1項に記載の光学異方体。
8.前記置換セルロース樹脂基板がセルロースエステル樹脂であり、セルロースエステル樹脂中に該樹脂対して可塑剤が2〜15質量%および紫外線吸収剤が0.01〜3質量%含有されていることを特徴とする1、3、5〜7の何れか1項に記載の光学異方体。
9.5〜8のいずれか1項に記載の光学異方体の製造方法であって、前記プラズマ処理を大気圧下、反応性ガス及び不活性ガスの混在下、処理することを特徴とする光学異方体の製造方法。
10.2または4項に記載の光学異方体の製造方法において、活性線が紫外線であり、かつ紫外線開始剤を併用して硬化反応を行うことを特徴とする光学異方体の製造方法。
11.2または4項に記載の光学異方体の製造方法において、該液晶化合物が有機溶媒で希釈された溶液で調製され、これを塗布乾燥することを特徴とする光学異方体の製造方法。
12.偏光板と表示用液晶セルとの間に1、3、5〜8の何れか1項に記載の光学異方体を有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明による光学異方体、光学異方体の製造方法および光学異方体を備えた液晶表示装置は、光学異方層の液晶化合物の配向性に優れ、従来にない安価で、光学異方性、密着性に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を更に詳細に述べる。
【0014】
本発明において液晶化合物を塗設して光学異方性を得るには、配向膜を透明樹脂基板(以下、単に基板ともいう)上に塗設して、その上に液晶化合物を塗布して配向させることにより達成できる。
【0015】
液晶層に配向膜を使用せずに液晶化合物を配向させる方法として、液晶化合物が液晶性を示す温度に加熱し、電場或いは磁場を印加する方法を挙げることができる。又、熱風を吹き付ける方法や、液晶温度範囲で基板を傾斜させ、液晶化合物が流れることによって配向状態を得ることもできる。
【0016】
これらの中で生産のし易さから配向膜を設置してラビング処理することが好ましい。
【0017】
ここで配向膜について説明する。具体的には、以下の樹脂や基板が挙げられるがこれらに限定される訳ではない。例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0018】
配向材料を本発明の置換セルロース樹脂基板(以下、透明樹脂基板とも言う)上に塗布、乾燥して層を設置した後、ラビング処理することによって得ることができる。
【0019】
ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴム或いはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより達成される。
【0020】
本発明において、溶出ブロック層が前記配向膜の樹脂と同一とする場合は溶出ブロック層をそのまま配向膜として用いてもよい。このような例として例えばポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0021】
また、液晶化合物の配向のための配向膜として広く用いられているポリイミド膜(好ましくは弗素原子含有ポリイミド)も配向膜として好ましい。これはポリアミック酸(例えば日立化成(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を透明樹脂基板上に塗布し、熱処理後、ラビングすることにより得られる。また、ラビング処理を行わない光配向膜を用いてもよい。
【0022】
次に本発明に用いる液晶化合物について説明する。
【0023】
本発明の液晶化合物は、光学異方性を発現させるために液晶化合物の液晶分子を配向させた状態で用いることが好ましい。
【0024】
前述のような配向膜を透明樹脂基板上に塗設しその上に液晶化合物を塗設して配向させることができる。液晶化合物の配向処理は、液晶転移温度以上に加熱することが求められ、該温度は透明樹脂基板を変質させない温度以下で処理することが好ましい。
【0025】
本発明の請求項1、2の発明では、光学異方層が重合性ディスコティック液晶化合物を有することを特徴としている。
【0026】
本発明の液晶化合物がディスコティック構造単位を有する化合物である場合、例えば日本特許登録2587398号、同2640083号、同2641086号、同2692033号、同2692035号、同2767382号、同2747789号、同2866372号記載の構造の化合物を用いることができるが特に限定されるものではない。
【0027】
本発明の液晶化合物としては、上記の他に一般に棒状液晶が挙げられ、これに属する不飽和エチレン性基を有する正の複屈折性の重合性液晶化合物が配向の固定化の観点から好ましく、例えば特開平9−281480号、同9−281481号に記載の構造の化合物を用いることができるが特に限定されるものではない。
【0028】
本発明において、光学異方層が高分子液晶化合物を有してもよい。
【0029】
高分子液晶化合物としては、例えば日本特許登録2592694号、同2687035号、同2711585号、同2660601、特開平10−186356号、同10−206637号、同10−333134号記載の構造の化合物を用いることができる。
【0030】
また、高分子液晶化合物として、主鎖型の液晶性高分子、例えばポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルイミド等が挙げられ、側鎖型の液晶性高分子、例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等を用いてもよい。
【0031】
液晶化合物の塗布の方法としては、有機溶媒を液晶化合物を溶解した溶液を、カーテンコーティング、押し出しコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、印刷コーティング、スプレーコーティング及びスライドコーティングなどで実施することができるがこれらに限定されるものではない。
【0032】
溶液を塗布した場合、塗布後、溶媒を乾燥して除去し、膜厚が均一な液晶層を得ることができる。
液晶層は、熱および/または光エネルギーの作用で化学反応によって、液晶の配向を固定化することができる。特にモノメリックな液晶化合物は一般に粘度が低く、熱的外因によって液晶の配向が変化しやすいため、光重合性開始剤を用いて、重合性液晶化合物を光ラジカル反応等で硬化反応を行い固定化することもできる。
【0033】
本発明では、活性線で硬化反応を行い、液晶化合物を固定化することを特徴としている。
【0034】
本発明において、液晶化合物の配向を固定化する際、または活性線硬化樹脂層を設置する場合、光重合開始剤を使用する場合ことが反応の活性を上げることで製造時の硬化時間を短縮できることで優れている。
【0035】
前記反応系において、ラジカルを発生させるために、以下に述べる光源を用いることができる。例えば、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの近紫外線を強く吸収できるものが好ましく、360nm〜450nmの光に対するモル吸光係数の最大値が100以上、更には500以上のものが好ましい。光重合用の活性線としての光線は、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)を必要に応じて用いることができるが、中でも紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)及びショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)を挙げることができる。
【0036】
一方、ラジカル重合開始剤を用いる場合、例えばアゾビス化合物、パーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒など、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーカーボネート、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド或いはベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類等を挙げることができる。これらの詳細については「紫外線硬化システム」総合技術センター、63頁〜147頁、1989年等に記載されている。
【0037】
また、エポキシ基を有する化合物の重合には、紫外線活性化カチオン触媒として、アリルジアゾニウム塩(ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボラート)、ジアリルヨードニウム塩、VIa族アリロニウム塩(PF、AsF、SbFのようなアニオンをもつアリルスルホニウム塩)が一般的に用いられる。
【0038】
また、ラジカル反応を用いて硬化反応を行う場合、空気中の酸素の存在による重合反応の遅れをさけるために窒素雰囲気下で上記活性線を照射することが、反応時間の短縮化と少ない光量で硬化できる点で好ましい。
【0039】
これらの反応を利用して、液晶化合物を硬化させるためには、液晶化合物においても反応性基を導入した単量体液晶化合物を選択することが重要である。この硬化反応により液晶の配向が固定化できるものである。
【0040】
一方、液晶化合物が高分子液晶である場合、硬化反応を行って液晶の配向を固定しなくてもよい。これは、透明樹脂基板が熱によって変質しない温度範囲、例えば高分子液晶化合物が90℃以上のガラス転移温度であり、液晶転移温度を示す場合、配向膜上に高分子液晶を塗布して設置した後、液晶転移温度範囲内に加熱し配向させた後、ガラス転移温度よりも低い、例えば室温で放冷することによって液晶の配向が維持される。
【0041】
本発明の光学異方体の透明樹脂基板において、透明とは透過率が80%以上の特性を有するものである。この基板としては光学的に異方性が低い置換セルロース樹脂が用いられ、置換セルロース樹脂としては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが好ましく、特に好ましくはセルローストリアセテートである。
【0042】
これらの透明樹脂の物性を改良する目的として可塑剤を用いることが好ましい。具体的な可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが好ましく用いられる。リン酸エステルとしては、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェートが用いられる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが用いられる。フタル酸エステルとしては、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、エチルフタリルエチルグリコレート等が用いられる。クエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が用いられる。その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが用いられる。中でも、リン酸エステル(TPP、TCP、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート)、フタル酸エステル(DMP、DEP、DBP、DOP、DEHP)が好ましく用いられる。
【0043】
また、この中でもトリフェニルフォスフェート(TPP)が特に好ましく用いられる。
【0044】
可塑剤は透明樹脂への耐水性付与、あるいはその透湿性改善のため、重要な素材であるが、添加量が多すぎると塗布層への悪影響が拡大する問題がある。
【0045】
可塑剤の添加量は透明樹脂中に通常2〜15質量%で添加することが好ましい。
【0046】
透明樹脂に紫外線吸収剤を含有させることによって、耐光性に優れた光学異方体を得ることが出来好ましい。本発明に有用な紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、安息香酸誘導体又は有機金属錯塩等がある。具体例として特に限定されることはないが、例えば、サリチル酸誘導体としてはサリチル酸フェニル、4−t−ブチルフェニルサリチル酸等を、ベンゾフェノン誘導体としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、ベンゾトリアゾール誘導体としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、安息香酸誘導体としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、有機錯塩誘導体としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0047】
又、透明樹脂基板が透明樹脂フィルムである場合、製造、特に塗設においてすべり性を改善するために、これら透明樹脂フィルムを製造する際のドープ中に、シリカ等の微粒子(平均粒径0.005〜0.2μm)を0.01〜0.5質量%添加することもできる。例えば日本アエロジル製アエロジル200、アエロジルR972Dなどを添加することができる。すべり性は鋼球での測定で、動摩擦係数0.4以下好ましくは0.2以下であることが望まれる。
【0048】
透明樹脂基板において、特に接着性を改良するためにプラズマ処理を行うことが効果的で好ましい。透明樹脂基板を搬送しながらプラズマ処理を行うことは、連続的に処理が可能であり、特に真空にすることなく大気圧下で、反応性のガス雰囲気下で該処理を行うことは、フィルム表面上で反応が行われるため好ましい。
【0049】
反応性のガスとしては特に限定されるものではないが、酸素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、過酸化水素、オゾン等が挙げられる。
【0050】
本発明のプラズマ処理は、プラズマ放電を利用することであり、放電によりプラズマ状態を発生させることである。好ましくは、少なくとも2つの対向する電極に電圧を印加することによって行なう。
【0051】
処理空間は、前記反応性ガス存在下プラズマ放電を行なう処理空間のことであり、具体的には壁等で仕切りを設けて隔離した処理室のことである。該処理室の気圧を真空に近い0.007hPa〜27hPaで行なう真空プラズマ放電処理の場合には、反応性ガスの導入を調整する必要がある。処理速度を増加させるためには、電極に印加する電圧を高くする必要があるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与える場合があるので注意が必要である。
【0052】
また別の様態として、前記処理室の気圧を大気圧もしくは大気圧近傍で行なう大気圧プラズマ処理の場合には、処理室に導入する気体として、前記反応性ガス以外に不活性ガスを導入することが、安定な放電を発生させる上で好ましい。大気圧もしくは大気圧近傍とは、133〜1064hPaの圧力下のことであり、好ましくは931〜1037hPaの範囲である。
【0053】
不活性ガスはプラズマ放電により反応を起こさせない気体のことであり、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスがある。この中で好ましいガスはアルゴンガスとヘリウムガスである。大気圧プラズマ処理時に処理室に導入する不活性ガスは60圧力%以上と反応性ガスよりも割合を多くする放電を安定に発生させることができて好ましい。印加する電圧を高くすると処理速度を上げることができるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与えることになるので注意が必要である。
【0054】
図2を用いて、更に詳細に本発明におけるプラズマ処理について説明する。
【0055】
図2は、処理系の気圧を大気圧と同じもしくは大気圧近傍として大気圧プラズマ放電処理を行うための装置の一形態を示す概略構成図である。
【0056】
図2において、連続搬送される長尺の透明樹脂基板1を大気圧もしくはその近傍の圧力下、連続的にプラズマ処理するための処理室2が前記透明樹脂基板1の入口2Aを有する間仕切られた処理室によって構成されている。また出口側も同様である。
【0057】
処理室2には、複数の円筒の電極3を透明樹脂基板1の両面側に併設している。併設の方法は図示のようにチドリ状に配置してもよいが、対向させて配置することもできる。電極間隔Lは透明樹脂基板1の上側の電極の最下端と下側電極の最上端との距離で表される。電極間の間隔は均等でもよいし、そうでなくてもよい。
【0058】
円筒電極は内部に導電性金属が配置され、外部に誘電体が配置された二重管構造であり、導電性金属としては銀、金、銅、ステンレス、アルミニウム等の通電可能な材料に誘電体を溶射、蒸着、コーティング等で設けるのが一般的であるが、固体誘電体に導電層をメッキ、蒸着、コーティング、溶射等で設けることも可能である。
【0059】
固体誘電体としては、気密性の高い高耐熱性のセラミックスを焼結した焼結型セラミックスを用いることも好ましい。焼結型セラミックスの材質としては例えば、アルミナ系、ジルコニア系、窒化珪素系、炭化珪素系のセラミックスである。焼結型セラミックスの厚みは0.5mm〜5mmが好ましい。また体積固有抵抗は10Ω・cm以上が好ましい。
【0060】
焼結型セラミックスとして、アルミナ系焼結型セラミックスを用いる場合、純度99.6%以上のアルミナ系焼結型セラミックスを用いることが、電極の耐久性を上げる点で好ましい。純度99.6%以上のアルミナ系焼結型セラミックスに関しては、本出願人が先に提案した発明(特願平9−367413号)を参考にできる。
【0061】
この焼結型セラミックスを用いた電極の製造方法は、耐久性の高いセラミックスを焼結させ焼結型セラミックスを作り、その焼結型セラミックスにメッキ、蒸着、溶射またはコーティング等して金属導電部を付着させる。
【0062】
また固体誘電体としては、特願平10−300984号に記載の低温ガラスライニングを用いることもできる。
【0063】
またセラミックパイプの中に金属管や棒を挿入することもできる。
【0064】
金属電極は固体誘電体により全部が被覆されていてもよいし、一部が被覆されるだけでもよい。
【0065】
電極間の間隙Lは、0.3〜10mmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜7mmの範囲である。
【0066】
この上側電極全体に高周波電源5が接続され、下側電極全体はアース6により設置されており、それぞれの電極群の間に電界を印加できるように構成されている。
【0067】
なお、20、21、22は搬送ロールである。
【0068】
図示の例では、処理室2に隣接して透明樹脂基板の入り口側に予備室10が設けられている。透明樹脂基板の出口側にも表示はしていないが、処理室2に隣接して予備が設けられている。またこれらの間仕切りは、ニップロール7により行われるが、これに限定されるものではない。
【0069】
しかし、前記大気圧プラズマ処理であっても、パルス化された電界でプラズマを発生させる場合には、不活性ガスは必ずしも必要でなく、処理系における反応性ガスの濃度を上げることが可能となり、生産効率を上げることができる。
この時のパルス波形は例えば図1に示す例が挙げられるが、特開平10−130851号公報の図1(a)〜(d)のパルス波形であってもよい。
【0070】
本発明におけるパルス波形を図1に示す。縦軸はパルス電圧(V)、横軸は時間(t)である。パルス電圧の立ち上がりまたは立下り時間が、共に40ns〜100μsの範囲であることが好ましい。ここで立ち上がり(立ち下がり)時間とは図1のパルス波形において、電圧がベースラインから上昇(下降)を始めてから最高点(最低点)に達するまでのことを指す。パルス電界の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましい。1つのパルス電界が印加される時間は1μs〜1000μsであることが好ましい。1つのパルス電界が印加される時間というのは、図1における一つのパルス波形のパルスが印加される時間である。電極に印加する電圧の大きさは、電界強度が1〜100kV/cmとなる範囲が好ましく、この範囲を超えると処理速度は増加するが上げ過ぎると被処理体にダメージを与えるので好ましくない。
【0071】
また、大気圧プラズマ処理に用いる少なくとも2つの対向する電極は、固体誘電体をその対向面側に設けることが好ましい。固体誘電体としては、焼結セラミックスを用いることが好ましく、その体積固有抵抗値は10Ω・cm以上が好ましい。
【0072】
透明樹脂基板に有機酸基含有ポリマーを塗設する場合、溶出ブロック層と透明樹脂基板の間に塗設したほうが、接着性および製造上の観点から効果的である。有機酸基含有ポリマーは、ポリマー側鎖に有機酸基を有する構造が挙げられるが特に限定されるものではない。有機酸基としては例えば−COOH基が上げられる。このような化合物例としては特に限定されることはないが、例えば特開平7−333436号記載の一般式[1]または一般式[2]で示される構造が挙げられる。−COOH基の水素原子は、アンモニア、アルカリ金属カチオン(ナトリウムカチオン、リチウムカチオン)であってもよい。有機酸基をもつポリマーを構成するモノマー単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。また、無水マレイン酸を共重合モノマーとして高分子量化したのち、酸無水環を開環させて有機酸基を付加しててもよい。
【0073】
本発明の溶出ブロック層の一形態として、活性線硬化樹脂層の塗設がある。活性線は紫外線が光源や材料の入手のしやすさから好ましい。
【0074】
紫外線硬化樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0075】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号に記載の方法)。
【0076】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0077】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0078】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。
【0079】
また光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤又光増感剤は該組成物の0.5〜5質量%であることが特に好ましい。
【0080】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。紫外線を含む活性線硬化樹脂層の硬化後の膜厚は0.05μm〜30μmが好ましく、より好ましくは、0.1〜15μmである。この乾燥膜厚が0.05μm未満であると溶出ブロック性が低下し、また乾燥膜厚が30μmを越えると光学異方体がフィルム上であるときカールしてしまう。
【0081】
活性線硬化性樹脂は、重合可能なビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基、エポキシ基等の重合性基を二つ以上有するもので、活性エネルギー線に照射により架橋構造または網目構造を形成するものが好ましい。これら活性基のうちアクリロイル基、メタクリロイル基またはエポキシ基が重合速度、反応性の面から好ましく多官能モノマーまたはオリゴマーが好ましい。例として紫外線硬化型のアクリウルレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂が好ましく用いられる。
【0082】
本発明の溶出ブロック層の好ましい形態として、透明樹脂基板から遠い方向から配向膜、光学異方層を設置する際に透明樹脂基板と配向膜の間に溶出ブロック層を設置することができる。溶出ブロック層は、配向膜や液晶化合物を塗設する際、これらの有機溶媒溶液として塗設する際、有機溶媒の存在により透明樹脂基板から配向膜あるいは液晶化合物が存在する光学異方層に溶出物が拡散するのを抑制することができる。薄膜として配向膜や液晶化合物の層を塗設する場合、これらの化合物の有機溶媒溶液を調製して塗布することは好ましい方法である。
【0083】
しかしながら透明樹脂基板は、樹脂で構成され、可塑剤を含むことが多く、樹脂あるいは可塑剤を溶解する有機溶媒が、配向膜としての樹脂や液晶化合物を溶解するとき、塗設によって層間の拡散、層間の混溶が生じ好ましくない。
【0084】
しかし、この間に前述の有機溶媒に不溶もしくは溶けにくい溶媒に溶解する樹脂を塗設することにより、の塗設時の層間拡散、層間混溶を抑制することができる。
【0085】
また、樹脂あるいは可塑剤を溶解する有機溶媒に溶解する化合物であっても、活性線硬化性の樹脂をモノマーの状態で透明基板上に塗設し硬化反応を行うことは、単に樹脂を塗設することと異なり架橋構造が多い層が設置でき、配向膜としての樹脂や液晶化合物を溶解するとき、塗設によって層間の拡散、コンタミネーションを抑制することができる。
【0086】
樹脂あるいは可塑剤を溶解する有機溶媒よりも、溶解しにくい溶媒を溶出ブロック層の塗布溶媒として選択することは本発明の効果をより奏する点で好ましい。この場合の塗布溶媒は水を30質量%以上含む有機溶媒との混合溶媒であり、好ましくは水を45質量%以上含む有機溶媒との混合溶媒であることがより本発明の効果を奏する点で好ましい。本発明の溶出ブロック層を塗設するための有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒を混合して使用することができる。本発明においては、水に溶解できる有機溶媒を選択することが好ましいが、少量であれば水に溶けない有機溶媒を用いて、もう1種以上の水に溶解する有機溶媒と併用して混合溶媒が3成分以上で溶解した混合溶媒を用いてもよい。
【0087】
ここでアルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられ、グリコールエーテル(炭素数1〜4)類としては、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、又はプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4)アルキルエーテルエステル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、その他の溶媒としてメチレンクロライド、N−メチルピロリドンなどがあげられるがこれらに限定されるものではない。
【0088】
本発明の溶出ブロック層の樹脂としてはノニオン性のポリマーであることを特徴としている。水と有機溶媒を用いることが樹脂に対する溶解性の観点から好ましい。
【0089】
このような混合溶媒に対して溶ける樹脂を溶出ブロック層の樹脂として用いることもできる。具体的には、天然ポリマーあるいは合成水溶性ポリマーなどを用いても良い。
【0090】
また、合成水溶性ポリマーは天然物とは異なり分子設計上ノニオン性とすることが容易で好ましい。このような化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは、共重合体の如き多種の合成高分子を用いることができる。また、溶出ブロック層として用いる合成ポリマーとしては下記のモノマー単位を単独もしくは共重合体として上記混合溶媒に溶解する特性の有するものを用いてもよい。ポリマーを構成するモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、クロトン酸エステル、ビニルエステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステル、オレフィン類、スチレン類等が挙げられる。
【0091】
モノマーとしては、アクリル酸エステル誘導体が挙げられる。アクリル酸エステル誘導体の置換基として以下のものが挙げられる。
【0092】
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、4−クロロブチル基、シアノエチル基、2−アセトキシエチル基、ジメチルアミノエチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、2−クロロシクロヘキシル基、シクロヘキシル基、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基、フェニル基、5−ヒドロキシペンチル基、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、グリシジル基、アセトアセトキシエチル基、3−メトキシブチル基、2−エトキシエチル基、2−iso−プロポキシ基、2−ブトキシエチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル基、ω−メトキシオリゴオキシエチレン基(オキシエチレン繰り返し単位数:n=7、9、11等)、ω−ヒドロキシオリゴオキシエチレン基(オキシエチレン繰り返し単位数:n=7、9、11等)、1−ブロモ−2−メトキシエチル基、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチル基などである。
【0093】
アクリル酸エステル誘導体の具体例としては、これらの置換基によって構成されるアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0094】
また、アクリルアミド誘導体やメタクリルアミド誘導体としては、置換、無置換のアクリルアミドおよびメタクリルアミドが挙げられ、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの置換基としては以下のものが挙げられる。
【0095】
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、メトキシエチル基、ジメチルアミノプロピル基、フェニル基、アセトアセトキシプロピル基、シアノエチル基等である。
【0096】
モノ置換アクリルアミドおよびメタクリルアミドの具体例としては上記の置換基を置換した化合物である。
【0097】
N,N−ジ置換アクリルアミドおよびメタクリルアミド誘導体としては、N,N−ジメチル基あるいはN,N−ジエチル基を有するアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0098】
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプレート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなどが挙げられる。
【0099】
またオレフィン類の例としては、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等が挙げられる。
【0100】
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられる。
【0101】
クロトン酸エステルとしては、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0102】
また、イタコン酸エステル類としては、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノブチルエステル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0103】
マレイン酸エステルとしては、例えばフマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチルなどが挙げられる。
【0104】
その他のモノマーの例としては、以下のものが挙げられる。
【0105】
ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトンなどが挙げられる。
【0106】
ヘテロ環含有ビニルモノマーとしては、N−ビニルピリジンおよび2−および4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルトリアゾール、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0107】
不飽和ニトリル類としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0108】
前述のポリマーにおいて接着性の改良のために高分子側鎖に不飽和エチレン性基、エポキシ基などを含んでもよい。中でも不飽和エチレン性基が好ましい。
【0109】
前述のポリマーは水を30質量%以上、好ましくは45質量%以上を含む有機溶媒の混合溶媒に溶解する。このような溶解性を示すポリマーで構成される溶出ブロック層の樹脂としては、高分子側鎖にヘテロ環を有するコポリマーが好ましく、より好ましくはN−ビニル−2−ピロリドンを60質量%以上有するコポリマー、特に好ましくはN−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマーである。また、ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
【0110】
溶出ブロック層の樹脂の分子量は大きい方が配向層や液晶層への拡散がし難い観点から好ましく、数平均分子量が80万以上であることが好ましい。
【0111】
また、上記ポリマーを溶出ブロック層として用いた場合、透明樹脂基板上の乾燥膜厚は0.1μm〜15μmであることが好ましい。この乾燥膜厚が0.1μm未満であると溶出ブロック性が低下することがあり、また乾燥膜厚が15μmを越えると光学異方体がフィルムであるとカールする欠点がある。
【0112】
透明樹脂基板上に有機酸基含有ポリマー層、溶出ブロック層(活性線硬化モノマーで硬化した層、水を含む混合溶媒に溶解する樹脂層)、配向層、光学異方層(液晶層)等を塗設するために塗布する方法は、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ロールコート、グラビアコート、ワイヤバーコート、リバースコート、カーテンコート、押し出しコートあるいは米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート方法等により塗布することができる。各々の各層は目的に応じて乾燥膜厚を調整することができる。
【0113】
液晶ディスプレイのモードが多種製品化されており光学的に補償できる光学異方体は、ディスプレイに適した光学特性を設計することができる。透明樹脂基板上光学異方層を複数層塗設することができ、光学異方層が液晶化合物を有するとき配向方向は適宜ディスプレイに適合した光学特性を設計できる。液晶層が2層以上透明樹脂基板上に塗設される場合、透明樹脂基板より遠い方向から配向層、光学異方層が複数層繰り返して設置できる。配向方向が配向膜によって決定されるために、配向膜と液晶層は隣接していることが好ましい。複数層設置されるとき、配向膜上に塗設された液晶層の上に配向膜を直接塗設または他の樹脂層で構成される中間層を塗設して、その上に配向膜を塗設し、複数目の配向層上に液晶層を設置することができる。液晶層が2層の場合、配向方向は透明樹脂基板面に投影した方向において同一方法であってもよいが、好ましくは交差角度が60°〜120°、より好ましくは交差角度が85°〜95°に実質的に直交することが特定のディスプレイに適合できる。実質的に直交するとは交差角度がほぼ90°一方前記配向は液晶層の厚さ方向から観察した場合、平均の傾斜角が斜めであることが好ましく、傾斜角は厚さ方向に対して一定であってもよく、厚さ方向に対して傾斜角が変化してもよい。傾斜角はディスプレーの光学設計により異なるが5°〜70°が好ましく、より好ましくは10°〜60°、更に好ましくは15°〜50°である。
【0114】
光学異方体の光学特性および構成は、ディスプレイの光学補償の観点から公知の光学設計から選択することができる。
【0115】
本発明の光学異方体の光学異方層上には、傷などの光学的変質をさけるために保護層を設けてもよい。保護層の材料としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/無水マレイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネート等のポリマー及びこれらの誘導体を挙げる事ができる。これらの材料を上記塗布方法より、溶液を調製して塗布、乾燥によって塗設することができる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0117】
実施例で用いる各組成物を説明する。
【0118】
〈透明樹脂フィルム1の作製〉
セルローストリアセテート 100kg
エチルフタリルエチルグリコレート 2kg
トリフェニルフォスフェート 8.5kg
2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−
メチル−6−(tert−ブチル)フェノール 1kg
2−〔2H−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4,6−ジ−tert−
ペンチルフェノール 1kg
メチレンクロライド 430kg
メタノール 90kg
超微粒子シリカ(アエロジル200)
(日本アエロジル(株)製) 0.01kg
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。次にこのドープ組成物を濾過し、冷却して35℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離した。剥離後の残留溶媒量が50質量%〜5質量%になるように乾燥ゾーン内でテンターによって幅保持しながら乾燥を進行させ、さらに、多数のロールで搬送させながら残留溶媒量が1質量%以下となるまで乾燥させ、膜厚80μmの透明樹脂フィルムを得た。
【0119】
〈透明樹脂フィルム2の作製〉
透明樹脂フィルム1の作製においてエチルフタリルエチルグリコレートとトリフェニルフォスフェートを添加しない他は透明樹脂フィルム1と同様に作製し、乾燥後の膜厚が80μmとなるように調整してフィルムを得た。
【0120】
[プラズマ放電処理装置および処理]
装置1:連続大気圧プラズマ放電処理装置(図2に示すものを使用)
電源:ハイデン研究社製PHF−4K
電源周波数:10kHz
装置1を使用し、表1に示す透明樹脂フィルムをプラズマ処理した。
【0121】
電源出力:400W/m
処理ガス:アルゴン:酸素:水素=10:1:0.38(圧力比)の割合となるようにマスフローコントローラで流量を制御し、ミキサーで混合したものを処理室へ導入した。処理時間は60秒とした。
【0122】
<有機酸基含有ポリマー層の塗設>
酢酸ビニル:無水マレイン酸:マレイン酸=2:1:1(モル比)の共重合体50gを無水アセトン500gと酢酸エチル500g中に溶解し、表1に示す透明樹脂フィルムに乾燥膜厚が100nmとなるようにワイヤーバーで塗布、乾燥した。
【0123】
〈溶出ブロック層1の作製〉
表1に示すように樹脂フィルム上に下記活性線硬化層用塗布組成物をワイヤーバー塗布し乾燥後、窒素雰囲気下200mj/cm(365nmの光量)の紫外線を照射して硬化して樹脂フィルムを作製した。硬化後の膜厚は3μmであった。
【0124】
(ハードコート塗布組成物−1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 70g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 15g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分
15g
ジエトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75g
メチルエチルケトン 75g
<溶出ブロック層2の作製>
表1に示すように下記ポリマー塗布液を調製し透明樹脂フィルム上に、乾燥膜厚が0.2μmとなるようにワイヤーバーで塗布して乾燥した。
【0125】
(2−1)
ポリビニルピロリドン(数平均分子量110万) 1g
溶媒組成 水:メタノール:プロプレングリコールモノメチルエーテル
=35:60:5(質量比) 200g
(2−2)
ポリビニルピロリドン(数平均分子量3.5万) 1g
溶媒組成 水:メタノール=55:45(質量比) 200g
(2−3)
ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル=7:3モル比(数平均分子量90万)
1g
溶媒組成 水:メタノール=55:45(質量比) 200g
(2−4)
ポリビニルアルコール(数平均分子量2万) 1g
溶媒組成 水:メタノール=60:40(質量比) 200g
《配向膜1の塗設》
表1、2に示した透明樹脂フィルム上に直鎖アルキル変性ポリビニルアルコール(MP203:クラレ(株)製)を乾燥膜厚が0.2μmとなるように塗布した。これらを80℃温風にて乾燥させた後、ラビング処理を行い、配向膜を形成した。
【0126】
《配向膜2の塗設》
表1、2に示した透明樹脂フィルム上にサンエバー5291(日産化学製)を乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗布した。これを110℃3時間乾燥させた後、ラビング処理を行い、配向膜を形成した。
【0127】
《液晶層1の塗設》
表1、2に示した配向膜上に、液晶性ディスコティック化合物LC−1を1.6g、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(M101;東亜合成(株)製)0.4g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1;イーストマンケミカル社製)0.05g及び光重合開始剤(イルガキュア−907;チバ・ガイギー社製)0.01gを、3.65gのメチルエチルケトンに溶解して得られた塗布液を、ワイヤーバーで塗布した。これらに金属の枠を貼りつけて固定して130℃の高温槽中で3分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に試料を窒素雰囲気下として高圧水銀灯を用いて照度10mW/cmで130℃下30秒間紫外線を照射し、架橋反応により配向を固定化した。室温まで放冷して、ディスコティック化合物を含む液晶層を形成して試料を作製した。液晶層の膜厚は1.8μmであった。
【0128】
《液晶層2の塗設》
表1、2に示した配向膜上に、LC−2(5g)を45gのクロロホルムに溶解させ10質量%の溶液を印刷法により塗布した。110℃のホットプレート上で乾燥し、オーブンで110℃で30分間熱処理した後、室温中に取り出して冷却して、LC−2を配向固定化した。液晶層の膜厚は2.0μmであった。
【0129】
《液晶層3の塗設》
表1、2に示した配向膜上に、LC−3を1.6g、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(M101;東亜合成(株)製)0.4g及び光重合開始剤(イルガキュア−907;チバ・ガイギー社製)0.01gを、3.65gのメチルエチルケトンに溶解して得られた塗布液を、ワイヤーバーで塗布した。これらに金属の枠を貼りつけて固定して120℃の高温槽中で3分間加熱し、液晶化合物を配向させた。次に高圧水銀灯を用いて窒素雰囲気下、照度10mW/cmで30秒間120℃下10秒間紫外線を照射し、架橋反応により配向を固定化した。室温まで放冷して、試料を得た。液晶層の膜厚は0.8μmであった。
【0130】
【化1】

【0131】
[評価方法]
<密着性>
JIS−K−5400に準拠した碁盤目試験を行った。具体的には塗布面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個つくった。この上にセロハンテープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った碁盤目の数をmとして表した。
【0132】
◎:0≦m<15 密着性が高く優れている
○:16≦m<30 若干剥離するが実用上問題がないレベル
△:31≦m<70 剥離が目立ち実用上問題がある
×:71≦m≦100 剥離が著しく実用上使用できない
<光学異方性の評価>
偏光板を直交ニコルの状態として、その間に各試料を設置した。各試料の光学異方性を目視および100倍の光学顕微鏡で観察した。
【0133】
◎:良好な光学異方性を有し、モノドメインであった
○:良好な光学異方性を有すが、若干配向が乱れた部分が微少存在した
△:光学異方性が若干認められるがムラが多い
×:光学異方性は若干もしくはまったく認められない
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
本発明の光学異方体は比較に比して、光学異方性と密着性とも優れていることが分かる。試料E、F、Jは、配向膜自身が溶出ブロック層とした形態であり、本発明の効果が認められることが分かる。
【0137】
<リターデーション値の測定>
試料Rに関して、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、下記試料の遅相軸における角度(−40°〜+40°の範囲、測定は10°毎)依存性のリターデーションを測定し、同様に透明樹脂フィルムも測定した。光学異方性層が存在する試料から、対応する透明樹脂フィルムの各角度成分のリターデーションを差を求めた。
【0138】
リターデーションの最大値が試料の面に対する法線方向(0°)から20°ずれており、光学異方層の液晶分子が傾いていることを確認した。
【0139】
試料Rに関して、再外の液晶層の上に、すでに設置した配向層と直交する角度で新たな配向膜を設置しラビングした。その上にすでに設置した液晶層と同一のプロセスで新たな液晶層を設置して同様に配向を固定化した試料R’を作製した。密着性と配向性はともに◎の結果を得た。
【0140】
<レターデーション値の測定>
試料R’に関して、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、下記試料の遅相軸の角度(−40°〜+40°の範囲、測定は10°毎)依存性のリターデーションを測定し、同様に透明樹脂フィルムも測定した。光学異方性層が存在する試料から、対応する透明樹脂フィルムの各角度成分のリターデーションを差を求めた。その結果、リターデーションの最小値が試料の面に対する法線方向(0°)から20°ずれており、0でない値かつ、最小値を中心に両側のリターデーションの角度に対する形状は左右非対称となった。試料R’の液晶層は傾いており、厚さ方向に角度が変化していることを確認した。
【0141】
〈視野角の評価〉
NEC製LA−1529HM型のTFT−TN液晶パネルの偏光板を剥がし、偏光板と液晶パネルの間に設置されている光学補償フィルムを剥がした。試料R、R’を剥がした偏光板に張り付け角度を調整しながら該液晶パネルに張り付けた。試料R、R’は偏光子と液晶パネルとの間になるように設置し添付した。この偏光板の貼付は、液晶パネルに対してバックライト側と画像観察面側の両側に実施した。各々の試料についてパソコンでモニターを駆動し、白色/黒色表示時のコントラスト比をELDIM社のEz−Contrastを用いて測定し、上下左右について、コントラストが10以上を示す液晶パネルの法線方向からの角度をそれぞれ測定し視野角とした結果、試料R、R’を添付することで視野角が、光学異方体を添付しないときの視野角と比較して拡大した。試料Rの溶出ブロック層と有機酸基含有ポリマー層を設置していない試料Cを同様に評価したところ、光学異方性が悪いため視野角は光学異方体を添付しないときの視野角と比較して拡大せず、黒表示のときに正面から観察したとき光り漏れを生じた。
【0142】
本発明の試料は、前記層構成により優れた配向性を有し、かつ密着性も改良され、優れた光学異方体が製造できることが分かる。本発明の光学異方体を用いた液晶表示装置は、視野角特性が改良でき、優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明において、大気圧プラズマ放電処理に適用出来る電極に印加する電圧のパルス波形を示すものである。
【図2】本発明において、処理系の気圧を大気圧と同じもしくは大気圧近傍として大気圧プラズマ放電処理を行うための装置の一形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0144】
1 透明樹脂基板
2 処理室
3 電極
5 高周波電源
6 アース
7 ニップロール
10、11、12 予備減圧室
20、21、22 搬送ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、重合性ディスコチック液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層は重合性ディスコティック液晶化合物を配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化した層であることを特徴とする光学異方体。
【請求項2】
置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、重合性ディスコチック液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体の製造方法において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層の重合性ディスコティック液晶化合物の配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化したことを特徴とする光学異方体の製造方法。
【請求項3】
置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層は正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物を配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化した層であることを特徴とする光学異方体。
【請求項4】
置換セルロース樹脂基板上に溶出ブロック層、配向層、正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物を含有する光学異方層を有する光学異方体の製造方法において、溶出ブロック層が置換セルロース樹脂基板と配向層の間に設置され、かつ溶出ブロック層が30〜100質量%の水及び0〜70未満質量%有機溶媒を含有する混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーを有し、更に、光学異方層の正の複屈折性の重合性低分子液晶化合物の配向のために温度を調整し、その後、活性線の照射で硬化反応を行い配向を固定化したことを特徴とする光学異方体の製造方法。
【請求項5】
前記置換セルロース樹脂基板の少なくとも一方にプラズマ処理を施し、プラズマ処理を施した隣接上に溶出ブロック層を有することを特徴とする請求項1または3に記載の光学異方体。
【請求項6】
前記置換セルロース樹脂基板の少なくとも一方に有機酸基含有ポリマーを塗設し、該塗設した層の隣接上に溶出ブロック層を有することを特徴とする請求項1、3または5に記載の光学異方体。
【請求項7】
前記置換セルロース樹脂基板に対する光学異方層の平均配向角度が斜めであることを特徴とする請求項1、3、5または6の何れか1項に記載の光学異方体。
【請求項8】
前記置換セルロース樹脂基板がセルロースエステル樹脂であり、セルロースエステル樹脂中に該樹脂対して可塑剤が2〜15質量%および紫外線吸収剤が0.01〜3質量%含有されていることを特徴とする請求項1、3、5〜7の何れか1項に記載の光学異方体。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の光学異方体の製造方法であって、前記プラズマ処理を大気圧下、反応性ガス及び不活性ガスの混在下、処理することを特徴とする光学異方体の製造方法。
【請求項10】
請求項2または4項に記載の光学異方体の製造方法において、活性線が紫外線であり、かつ紫外線開始剤を併用して硬化反応を行うことを特徴とする光学異方体の製造方法。
【請求項11】
請求項2または4項に記載の光学異方体の製造方法において、該液晶化合物が有機溶媒で希釈された溶液で調製され、これを塗布乾燥することを特徴とする光学異方体の製造方法。
【請求項12】
偏光板と表示用液晶セルとの間に請求項1、3、5〜8の何れか1項に記載の光学異方体を有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−304926(P2008−304926A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177704(P2008−177704)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【分割の表示】特願2000−186168(P2000−186168)の分割
【原出願日】平成12年6月21日(2000.6.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】