説明

光学異方性薄膜材料及び光学異方性薄膜

【課題】アルカリ水溶液で現像処理可能な重合性ポリマーの提供。
【解決手段】式(I)〔R1はH又はCH3,A1, A2はC1-4アルキレン基又は単結合,B1はOH又はCOOH,X1はC1-18アルキレン,フェノキシ側末端にC=Oを有するC1-18アルキレン,反フェノキシ側末端に-COO-基を介し結合したC1-6アルキレンを有するC1-18アルキレン基,又は反フェノキシ側末端に1-10個の-C2H4O-基を有するC1-18アルキレン,a,bはa+b=0-2の整数〕のモノマーと,式(II)〔R2はH又はCH3,A3,A4はC1-4アルキレン,-COO-又は単結合,Z1-Z3は水素,ハロゲン,CN,C1-18アルキル,C1-4アルコキシ,X2はC1-18アルキレン,c,dはc+d=0-2の整数〕のモノマーを重合させ,エポキシ基とエチレン性二重結合含有化合物と反応させ,更にカルボン酸無水物でエステル化した,ポリマー。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光学異方性薄膜材料及び光学異方性薄膜に関し,より詳しくは,側鎖に芳香環及び炭素炭素二重結合及びカルボキシル基を有する重合性ポリマー,及びそれを含有する多官能性液晶組成物,重合性液晶薄膜,及びこれを重合させてなる光学異方性薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,薄型ディスプレー分野,特に液晶ディスプレー分野では,光学フィルムがさまざまな形で応用されており,例えば,光学異方性フィルム(位相差フィルム)が液晶ディスプレーのガラス基板の外側に貼られて用いられている。これは,液晶による複屈折性の補償や制御を通じて,視野角や,反射,色調を制御するために活用されているものである。しかしながら,それらのフィルムは約0.3mm程度と厚く,そのことは,近年の薄型ディスプレー分野における一層の薄型化嗜好から,問題となり始めている。
【0003】
光や熱により重合性二重結合部位が反応して重合するタイプの光学異方性を有する重合性液晶材料は,光や熱をトリガーとして重合させると,重合前の光学特性が固定される。このため,そのような材料は,液晶状態において所望の配向を持たせた後,その配向特性を保持した状態で重合させることで,その配向を持った硬化膜とすることができる。この技術を利用すると,液晶セルの内部に光学異方性薄膜層を設けることができるようになり,位相差フィルムを液晶のガラス基板の外側に貼り付ける現在の技術に比して,液晶パネルの薄型化,低コスト化等のメリットが得られるものと期待されている。更に,光学異方性薄膜層を所定の画素ピクセル毎に,適切な配向特性で設けることにより,画素パターン毎の光学的な歪や視野角依存の問題,コントラストや輝度を改善することもできるようになる。そのため,光学異方性薄膜層を液晶セル内に形成させるいわゆるインセル技術についても,盛んに研究がなされている(例えば,特許文献1)。
【0004】
通常,ネガ材料での画素パターンは,光反応を起こすための露光と未硬化である未露光部分の除去のための現像処理を行うものであるフォトリソ法により得られる。しかしながら,これまで光学異方性薄膜層において報告されているフォトリソ可能な材料は,現像液として有機溶媒を用いるものであり,作業場の安全と環境への配慮という近年の要請に応え得る材料ではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000-221506公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景において,本発明は,アルカリ水溶液を用いた現像処理によりパターンを形成させるのに適した重合性ポリマー及びこれを含んだ組成物,並びにこれを重合させてなる液晶性薄膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は,側鎖に芳香環,重合性二重結合,及びカルボキシル基を有する特定範囲の新規の重合性ポリマーが,これを重合させたとき上記目的に合致した性質を有する光学異方性膜を与えることを見出し,更に検討を重ねて本発明を完成させた。すなわち,本発明は以下を提供する。
1.式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中,R1は,水素原子又はメチル基であり,A1及びA2は,それぞれ独立に,炭素数1〜4のアルキレン基又は単結合であり,B1は,水酸基又はカルボキシル基であり,X1は,
(i)炭素数1〜18のアルキレン基,
(ii)隣接するフェノキシ側末端にカルボニル基を有する炭素数1〜18のアルキレン基,
(iii)該フェノキシ側とは反対側の末端に−COO−基を介して結合した炭素数1〜6のアルキレン基を有する炭素数1〜18のアルキレン基,又は
(iv) 該フェノキシ側とは反対側の末端に一連に結合した1〜10個の−C24O−基を有する炭素数1〜18のアルキレン基であり,
a及びbは,a+b=0〜2を満たす0又は正の整数である。〕で示される(メタ)アクリル系モノマー(M1)と,
【0010】
式(II):
【化2】

【0011】
〔式中,R2は,水素原子又はメチル基であり,A3及びA4は,それぞれ独立に,炭素数1〜4のアルキレン基,−COO−基,又は単結合であり,Z1〜Z3は,それぞれ独立に,水素原子,ハロゲン原子,シアノ基,炭素数1〜18のアルキル基,又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり,X2は,炭素数が1〜18のアルキレン基であり,c及びdは,c+d=0〜2を満たす0又は正の整数である。〕で示される(メタ)アクリル系モノマー(M2)とを含んでなるモノマー混合物を重合させてなるポリマー(P1)に,エポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物を,該ポリマー(P1)の水酸基又はカルボキシル基とエポキシ基との間で付加反応させて,炭素炭素二重結合含有の重合性ポリマー(P2)とし,これをカルボン酸無水物との反応によりモノエステル誘導体化してなる,カルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)。
2.該エポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物が,グリシジル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル,3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートである,上記1のカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)。
3.該ポリマー(P1)とエポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物との反応率が60%以上である,上記1又は2のカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)。
4.上記1ないし3の何れかのカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)と,1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマーとを含有してなる,多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)。
5.多官能性モノマーが,式(VI):
【0012】
【化3】

【0013】
〔式中,R16は,水素原子又はメチル基,R17は,炭素数が1〜18のアルキレン基又は隣接する(メタ)アクリロイルオキシ側とは反対側の末端に−COO−基と−OCO−基との何れか一つを有する炭素数1〜18のアルキレン基,T1は,
【0014】
【化4】

【0015】
(Z4は,水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜8のアルキル基である),Y1は単結合であるか又は−COO−であり,Y1’は単結合であるか又は−OCO−である。〕で示される多官能性液晶性モノマーである,上記4の多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)。
6.上記4又は5の多官能性液晶性ポリマー組成物を含んでなる液晶パネル用感光性ポリマー組成物。
7.上記4又は5の多官能性液晶性ポリマー組成物を基材表面に塗布してなる,重合性薄膜。
8.上記4又は5の多官能性液晶性ポリマー組成物を基材表面に塗布し,硬化させてなる,光学異方性薄膜。
【発明の効果】
【0016】
上記構成になる本発明のポリマー組成物は,これを薄膜状に基材に塗布し露光することにより,光学異方性薄膜を与える。また露光を所定のマスクを通す等して行って硬化させ,次いでアルカリ水溶液処理することにより,硬化した液晶性薄膜からなる所定のパターンを作成することができる。従って,本発明の組成物によれば,光学特性に優れた重合性液晶薄膜を,液晶セルの外部はもとより,セル内に設けることができ,液晶パネルの薄型化,低コスト化に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.ポリマーP1の製造
本発明のポリマーを形成するモノマーである次式(I):
【0018】
【化5】

【0019】
で示される(メタ)アクリル系モノマー(M1)において,R1は,水素原子又はメチル基であり,A1及びA2は,それぞれ独立に,炭素数1〜4のアルキレン基又は単結合であり,単結合であることがより好ましい。B1は,水酸基又はカルボキシル基であり,カルボキシル基であることがより好ましい。X1は,(i)炭素数1〜18のアルキレン基,(ii)フェノキシ側末端にカルボニル基を有する炭素数1〜18のアルキレン基,(iii)フェノキシ側とは反対側の末端に−COO−基を介して結合した炭素数1〜6のアルキレン基を有する炭素数1〜18のアルキレン基,又は(iv) フェノキシ側とは反対側の末端に一連に結合した1〜10個の−C24O−基を有する炭素数1〜18のアルキレン基であり,a及びbは,a+b=0〜2を満たす0又は正の整数であり,光学異方性や耐熱性の観点から,より好ましくはa+b=1〜2を満たす0又は正の整数である。
式(I)で表される(メタ)アクリルモノマーの具体例を以下に示す。なお、本明細において「(メタ)アクリル〜」は,「アクリル〜」及び「メタクリル〜」を特に両者の区別なく表す。
【0020】
【化6】

【0021】
〔式中,nは1〜18の整数,R1は水素原子またはメチル基,G1はカルボキシル基を表す。〕
【0022】
【化7】

【0023】
〔式中,nは1〜18の整数,R1は水素原子またはメチル基,G1はカルボキシル基を表す。〕
【0024】
【化8】

【0025】
〔式中,mは1〜5の整数,nは1〜18の整数,R1は水素原子またはメチル基,G1はカルボキシル基を表す。〕
【0026】
【化9】

【0027】
〔式中,nは1〜18の整数,R1は水素原子またはメチル基,G1はカルボキシル基を表す。〕
【0028】
【化10】

【0029】
〔式中,nは1〜18の整数,R1は水素原子またはメチル基,G1は水酸基を表す。〕
【0030】
【化11】

【0031】
〔式中,nは1〜18の整数,R1は水素原子またはメチル基,G1はカルボキシル基を表す。〕
【0032】
本発明のポリマーを形成するモノマーである次式(II):
【0033】
【化12】

【0034】
で示される(メタ)アクリル系モノマー(M2)において,R2は,水素原子又はメチル基であり,A3及びA4は,それぞれ独立に,炭素数1〜4のアルキレン基,−COO−基,又は単結合であり,−COO−基又は単結合がより好ましい。Z1〜Z3は,それぞれ独立に,水素原子,ハロゲン原子,シアノ基,炭素数1〜18のアルキル基,又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり,シアノ基がより好ましい。X2は,炭素数が1〜18のアルキレン基であり,c及びdは,c+d=0〜2を満たす0又は正の整数であり,c+d=1〜2を満たす0又は正の整数がより好ましい。
【0035】
式(II)で示される(メタ)アクリル系モノマーの好ましい例を以下に示す。
【0036】
【化13】

【0037】
〔式中,nは1〜18の整数,R2は,水素原子又はメチル基,G2はシアノ基である。〕
【0038】
【化14】

【0039】
〔式中,nは1〜18の整数,R2は水素原子又はメチル基,G2はシアノ基である。〕
【0040】
【化15】

【0041】
〔式中,nは1〜18の整数,R2はそれぞれ独立に,水素原子又はメチル基である。〕
【0042】
【化16】

【0043】
〔式中,nは1〜18の整数,R2はそれぞれ独立に,水素原子又はメチル基である。〕
【0044】
ポリマー(P1)の製造のためのモノマー(M1及びM2)の重合は,無溶媒で行ってもよく,溶媒中に混合して行ってもよい。重合工程において材料や溶媒等を仕込む方法は特に限定されず,重合前に反応容器へ予め全材料を投入した後に重合を開始してもよいし,(メタ)アクリル系モノマーや溶媒等の一部を,重合開始した後に,滴下又は分割投入などの方法により段階的に追加してもよい。
【0045】
また,ポリマー(P1)の製造のためのモノマー(M1及びM2)の重合に際して,必須ではないが,他のモノマーを,含有させてもよく,そのようなモノマーは,重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物である限り,それ以外の点では特に限定されず,液晶性を有するものでなくてもよい。
【0046】
そのようなモノマーとしては,例えば,メチル(メタ)アクリレート,t−ブチル(メタ)アクリレート,ステアリル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,エトキシエチル(メタ)アクリレート,ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,フェニル(メタ)アクリレート,N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルモノマー,スチレン,α-メチルスチレン,p-スチレンスルホン酸,エチルビニルエーテル,N−ビニルイミダゾール,ビニルアセテート,ビニルピリジン,2−ビニルナフタレン,塩化ビニル,フッ化ビニル,N−ビニルカルバゾール,ビニルアミン,ビニルフェノール,N−ビニル−2−ピロリドンなどのビニル系モノマー,4−アリル−1,2−ジメトキシベンゼン,4−アリルフェノール,4−メトキシアリルベンゼンなどのアリル系モノマー,フェニルマレイミド,シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類が挙げられる。
【0047】
ポリマー(P1)において,これを構成するモノマー(M1及びM2)との割合は,重量比(M1:M2)で10:90〜60:40の範囲であることが好ましく,20:80〜50:50の範囲であることがより好ましい。
【0048】
溶液中で重合する場合には,汎用の有機溶媒を特に限定なく用いることができる。溶媒の具体例としては,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール系溶媒,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン,シクロペンタノン等のケトン系溶媒,酢酸エチル,ブチルアセテート,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒,ジエチルエーテル,ジグリム等のエーテル系溶媒,ヘキサン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,トルエン,キシレン等の炭化水素系溶媒,アセトニトリル等のニトリル系溶媒,N−メチルピロリドン,ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。
【0049】
上記芳香環含有ポリマー(AP)の重合には,重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は,一般的に使用されているものでよく,具体例としては,アゾビスイソブチロニトリル(AIBN),ジエチル−2,2´−アゾビスイソブチレート(V−601),2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル),ジメチルアゾビスメチルプロビオネート等のアゾ系重合開始剤,過酸化ベンゾイル,過硫酸カリウム,過酸化水素,過酸化ラウロイル等の過酸化物系重合開始剤,過硫酸カリウム,過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤は,何れかを単独で用いてもよく,また2種以上を併用することもできる。
【0050】
上記重合の際の温度は,重合性モノマー(PM)の種類,重合溶媒種,開始剤種などにより異なるが,好ましくは40〜150℃,より好ましくは50〜120℃の範囲である。
【0051】
本発明の重合性ポリマーは,上記芳香環含有ポリマー(AP)と,エチレン性不飽和結合を含んだ側鎖(Q)を有するエポキシ骨格を含んだ環状モノマーとを,前者の水酸基及び/又はカルボキシル基と後者のエポキシ環との間で付加反応(付加反応)させることにより得ることができる。付加反応の温度は,該環状モノマーの種類,反応溶媒の種類,触媒の種類などにより異なるが,好ましくは30〜140℃,より好ましくは40〜120℃の範囲である。
【0052】
上記付加反応における触媒としては,オクチルアミン,ジメチルベンジルアミン,ジブチルアミン,トリエタノールアミン,ベンジルアミン,トリエチルアミン等のアミン系触媒,テトラメチルアンモニウムクロライド,テトラエチルアンモニウムクロライド,トリメチルベンジルアンモニウムクロライド,テトラエチルアンモニウムブロマイドトリエチルベンジルアンモニウムクロライド,テトラエチルアンモニウムアセテート,テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド,テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド,トリエチルベンジルアンモニウムブロマイド,ジフェニルヨードニウムブロマイド,トリフェニルスルホニウムブロマイド,トリ−n−オクチルスルホニウムブロマイド,トリフェニルスルホニウムクロライド,テトラエチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩,トリメチルフォスフィン,トリフェニルフォスフィン,トリス(4−メチルフェニル)フォスフィン,クロロジフェニルフォスフィン等のリン系触媒等が挙げられる。
【0053】
上記付加反応に用いる触媒量は,該環状モノマー1モルに対して,着色防止や副生成物の抑制の観点から,0.0001〜0.1モルとするのが好ましく,0.003〜0.05モルとするのが更に好ましい。
【0054】
2.炭素炭素二重結合含有の重合性ポリマー(P2)の製造
ポリマーP1とエポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物との反応による炭素炭素二重結合含有の重合性ポリマーP2の製造は,ポリマーP1の水酸基又はカルボキシル基とエポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物のエポキシ基との間での常法による付加反応によって行なわれ,同時にエポキシ基の開環により水酸基を生じる。
【0055】
上記において,「エポキシ基とエチレン性二重結合含有化合物」の例としては,脂肪族エポキシ基含有モノマー,脂環式エポキシ基含有モノマーが挙げられる。
【0056】
脂肪族エポキシ基含有モノマーの具体例としては,グリシジル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル,イタコン酸グリシジル,アリルグリシジルエーテル,メタアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
脂環式エポキシ基含有モノマーの具体例としては,3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(商品名:サイクロマーM−100,ダイセル化学工業社製),エポキシ化シクロヘキシルポリラクトンメタクリレート(商品名:サイクロマーM−101,ダイセル化学工業社製),3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(商品名:サイクロマーA−200,ダイセル化学工業社製),ビニルシクロヘキセンモノエポキシド,リモネンモノエポキシド等が挙げられる。
【0058】
重合性ポリマー(P2)の製造スキームを,式(I)においてB1がカルボキシル基である場合のポリマー(P1)の場合の例を次に模式的に示す。ここにポリマーの主鎖から延びる波線は,式(I)及び式(II)のモノマー由来の側鎖部分を表す。
【0059】
【化17】

【0060】
【化18】

【0061】
【化19】

【0062】
この反応において,ポリマーP1を構成している式(メタ)アクリル系モノマーM1単位の1モルに対し,エポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物の使用割合は,0.01〜3.0モルであることができ,より好ましくは0.1〜2.1モル,更に好ましくは0.2〜1.3モルの範囲である。
【0063】
また,ポリマーP1中の(メタ)アクリル系モノマーM1単位とエポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物との反応率は,60%以上であることが好ましく,70%以上であることがより好ましい。ここに「反応率」は,次のとおりに定義される。
【0064】
【数1】

【0065】
3.カルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)の製造
次いで,上記で得られる重合性ポリマーP2が,カルボン酸無水物とのエステル化反応に付される。エステル反応をさせるカルボン酸無水物としては,無水マレイン酸,無水コハク酸,無水フタル酸,メチルテトラヒドロ無水フタル酸,メチルヘキサヒドロ無水フタル酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸,無水ハイミック酸,オクテニルコハク酸無水物,テトラプロペニル無水コハク酸などのジカルボン酸無水物や無水トリメリット酸,メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物などのトリカルボン酸無水物やブタンテトラカルボン酸二無水物,ビシクロ[2.2.2]オクタ‐7‐エン‐2,3,5,6‐テトラカルボン酸二無水物,テトラリン二無水物,ピロメリット酸二無水物,ビフェニルテトラカルボン酸二無水物,ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物,エチレングリコールビストリメリット酸二無水物,ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸無水物等を用いることができる。これらのうち無水マレイン酸,無水コハク酸,無水フタル酸,メチルテトラヒドロ無水フタル酸,メチルヘキサヒドロ無水フタル酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸,無水ハイミック酸,オクテニルコハク酸無水物,テトラプロペニル無水コハク酸などのジカルボン酸無水物が,現像性の観点から特に好ましい。カルボン酸無水物と反応する重合性ポリマーP2側の水酸基は,ポリマーP1が有するモノマーである式(I)由来水酸基又はカルボキシル基が,エポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物のエポキシ基との反応で,エポキシ基が開環して生じた水酸基であることができる。この水酸基とカルボン酸無水物との間で,常法に従ったエステル化反応によりモノエステル化を行なえばよい。これにより炭素炭素二重結合含有の重合性ポリマーP2にカルボン酸無水物1分子とのエステル反応毎に1個のカルボキシル基が付与されて,カルボキシ基含有重合性ポリマー(P3)が得られる。
【0066】
本発明のカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)は,酸価が160以下であることが好ましく,100以下であることがより好ましい。これは酸価が余り高いと配向性や膜の透明性が低下するという不都合が生じるからである。
【0067】
また,カルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)は,二重結合当量が200〜3000の範囲であることが好ましく,300〜2000の範囲であることがより好ましい。これは二重結合当量が余り高いと耐熱性が低下することになり,余り低いと配向性が低下するという不都合が生じるからである。
【0068】
本発明のカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)は,光開始剤,付加反応触媒,界面活性剤,溶媒等のような,光又は熱により重合を起こさせる重合性組成物に通常含まれる成分を適宜添加し,重合性ポリマー組成物の形で提供してよい。
【0069】
本発明のカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)中に未反応で残り得るエポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物は,カルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)全体に対して少量,例えば30重量%未満,好ましくは15重量%未満,より好ましくは10重量%未満であるが,ある程度残存していても本発明の目的は達成でき,その限りにおいて残存量は特に限定されない。
【0070】
これらの任意成分の含有量は特に限定はされないが,重合性ポリマー組成物の総重量に対し,光開始剤は0.01〜30.0重量%,付加反応触媒は0〜1.0重量%,界面活性剤は0〜10.0重量%,有機溶媒は0〜90.0重量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0071】
4.多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)の製造
多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)は,上記のカルボキシル基含有重合性ポリマーと1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマーとを含んでなる組成物であり,両者を攪拌し均一に混合することにより得ることができる。重合性ポリマーに,そのような多官能性モノマーを混合することは,配向安定化や膜形成安定化の向上に有用である。
【0072】
1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマーとしては,例えば,多官能(メタ)アクリレートモノマー,多官能(メタ)アクリルアミドモノマー,多官能ビニルモノマー,多官能アリルモノマーが挙げられる。
【0073】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては,エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート,1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート,1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ (メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例としては,N,N’−メチレンビスアクリルアミドやエチレンジアミン,フェニレンジアミンなどから合成される多官能(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0075】
多官能ビニルモノマーの具体例としては,ジビニルベンゼン,エチレングリコールジビニルエーテル,アジピン酸ジビニル,コハク酸ジビニル等が挙げられる。
【0076】
多官能アリルモノマーの具体例としては,ジアリルフタレート,ジアリルエーテル,マロン酸ジアリル,p−アリルスチレン等が挙げられる。
【0077】
多官能性モノマーとしては,多官能(メタ)アクリレートモノマーがより好ましく,そのうち特に好ましいのは,式(VI)で示される多官能性液晶性モノマーであり,例えば次のものが挙げられる。これらの多官能性モノマーは,何れかを単独で用いてもよいし,2種以上を併せて用いてもよい。
【0078】
【化20】

【0079】
〔式中,nは1〜18の整数,Rは水素原子又はメチル基である。〕
【0080】
【化21】

【0081】
〔式中,nは1〜18の整数,Rは水素原子又はメチル基,Zは水素原子,ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。〕
【0082】
【化22】

【0083】
〔式中,nは1〜18の整数,Rは水素原子又はメチル基,Zは水素原子,ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。〕
【0084】
本発明の多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)は,少量の光照射により均一な膜を形成させるために一般に知られている汎用の光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0085】
光重合開始剤の具体例としては,イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製),イルガキュア369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のα−アミノケトン系光重合開始剤,4−フェノキシジクロロアセトフェノン,4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン,ジエトキシアセトフェノン,1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1オン,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤,ベンゾイン,ベンゾインメチルエーテル,ベンゾインエチルエーテル,ベンゾインイソプロピルエーテル,ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤,ベンゾフェノン,ベンゾイル安息香酸,ベンゾイル安息香酸メチル,4−フェニルベンゾフェノン,ヒドロキシベンゾフェノン,アクリル化ベンゾフェノン,4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤,2−クロルチオキサンソン,2−メチルチオキサンソン,イソプロピルチオキサンソン,2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤,2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン,2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン,2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン,2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン,2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン,2,4−−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリルs−トリアジン,2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン,2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン,2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン,2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤,カルバゾール系光重合開始剤,イミダゾール系光重合開始剤等;更には,α−アシロキシエステル,アシルフォスフィンオキサイド,メチルフェニルグリオキシレート,ベンジル,9,10−フェナンスレンキノン,カンファーキノン,エチルアンスラキノン,4,4’−ジエチルイソフタロフェノン,3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン,4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン,チオキサンソン等の光重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤は,何れかを単独で用いてもよいし,2種以上を併せて用いてもよい。
【0086】
本発明の多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)は,均一な膜を形成させるために汎用の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては,例えば,ラウリル硫酸ソーダ,ラウリル硫酸アンモニウム,ラウリル硫酸トリエタノールアミン,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,アルキルエーテルホスフェート,ナトリウムオレイルスクシネート,ミリスチン酸カリウム,ヤシ油脂肪酸カリウム,ナトリウムラウロイルサルコシネート等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールモノラウレート,ステアリン酸ソルビタン,ミリスチン酸グリセリル,ジオレイン酸グリセリル,ソルビタンステアレート,ソルビタンオレエート等のノニオン性界面活性剤;ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド,塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム,塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム,セチルトリメチルアンモニウムクロリド等のカオチン性界面活性剤;ラウリルベタイン,アルキルスルホベタイン,コカミドプロピルベタイン,アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン,アルキルイミダゾリン,ラウロイルサルコシンナトリウム,ココアンホ酢酸ナトリウム等の両性界面活性剤;更には,BYK−361,BYK−306,BYK−307(ビックケミージャパン社製),フロラードFC430(住友スリーエム社製),メガファックF171,R08(大日本インキ化学工業社製)等の界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は,何れかを単独で用いてもよいし,2種以上を併用することもできる。
【0087】
本発明の多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)を用いることにより,熱安定性に優れた電子デバイス用の薄膜を製造することができる。以下に例示するが,その製造方法はこれらに限定されない。
【0088】
薄膜を製造するには,例えば,本発明の多官能性液晶性ポリマー組成物を基材例えばフィルム上に直接又は溶媒を添加して希釈して塗布し,溶媒除去して,液晶層を形成させ,或いは更に続けて,光照射により硬化させて液晶層を固定すればよい。多官能性液晶性ポリマー組成物の塗布方法としては,当該分野において一般的に知られている何れの方法でもよく,例えば,スピンコート法,バーコート法,ダイコーター法,スクリーン印刷法,スプレーコーター法などがある。組成物の塗布後,溶剤を除去することにより,組成物の層である液晶層を形成させる。溶剤除去は何れの方法でもよく,樹脂層が一定の形態で固定化するまで行う。乾燥工程を経た塗膜は,その後,さらに熱処理を行ってから光重合させてもよい。
【0089】
溶剤の好ましい例は,トルエン,エチルベンゼン,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールジメチルエーテル,プロピレングリコールメチルエーテル,ジブチルエーテル,アセトン,メチルエチルケトン,エタノール,プロパノール,シクロヘキサン,シクロペンタノン,メチルシクロヘキサン,テトラヒドロフラン,シクロヘキサノン,n−ヘキサン,酢酸エチル,酢酸ブチル,プロピレングリコールメチルエーテルアセテート,メトキシブチルアセテート,N−メチルピロリドン,ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは何れかを単独で用いることもでき,2種以上を併用することもできる。
【0090】
使用できる基材としては,例えば,アルカリガラス,無アルカリガラスなどのガラス基材,ポリイミド,ポリアミド,アクリル樹脂,ポリビニルアルコール,トリアセチルセルロース,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン,ポリカーボネート,ポリスチレン,ポリ三フッ化塩化エチレンなどの樹脂基材,鉄,アルミニウム,銅などの金属基材などが挙げられ,ガラス基板がより好ましい。基材は,200℃以上の高温度に加熱された場合にも性質変化の無い基板が好ましい。
【0091】
塗膜の熱処理は,液晶の均一配向性が得られる条件で行うことが好ましい。熱処理方法としては,例えば,配向が均一となる温度まで塗膜を加温して,その後冷却する方法などがある。熱処理は,20℃から120℃の温度範囲がより好ましく,50℃から100℃の温度範囲が更に好ましい。生産効率の観点から,熱処理は,10秒から3時間の処理時間の範囲がより好ましく,30秒から20分の処理時間の範囲が更に好ましい。
【0092】
光照射に用いられる光源としては,キセノンランプ,高圧水銀ランプ,エキシマレーザー,ナトリウムランプ,ハロゲンランプ,ブラックライト,電子線照射等が利用できる。
光の波長は限定されないが,150〜800nmがより好ましく,180〜600nmが更に好ましい。
光量は光重合開始剤により限定されず,20から5000mJ/cm2がより好ましく,100〜1500mJ/cm2が更に好ましい。
【0093】
本発明の薄膜の膜厚は0.1から20.0μmの範囲がより好ましく,1.0から5.0μmの範囲がさらに好ましい。
【0094】
本発明の方法により製造される薄膜は,光学フィルム等として,液晶画面の画質向上に好適に利用できる。特に,本発明の組成物は,液晶ディスプレイパネルの基板全面に形成することもでき,基板の特定の場所(画素)に薄膜を独立して形成することもできる。
【実施例】
【0095】
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0096】
1.ポリマー(P1)の合成
〔実施例1〕 ポリマー(W-1)(モノマー組成比率,I-a1:II-a1=40:60)の合成
式(I−a1):
【化23】

【0097】
〔式中,nは6,G1はカルボキシル基である。〕で示されるアクリル系モノマー4.0g(0.011mol)と,式(II- a1):
【0098】
【化24】

【0099】
〔式中,nは6,G2はシアノ基である。〕で示されるアクリル系モノマー6.0 g(0.017mol)と,シクロヘキサノン30.0gとを混合した溶液を窒素気流下にて1時間攪拌混合した。その後,混合溶液を加熱して液温度が75℃となったとき,重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.10gを投入して,75〜85℃の温度範囲で8時間重合反応を行わせた。その結果,ポリマー組成物40.1g〔芳香環含有ポリマー(W-1)10.0gを含む。〕が得られた。
【0100】
<重量平均分子量(MW)の測定>
ポリマー(W-1)の重量平均分子量(MW)を,ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。得られた芳香環含有ポリマーの重量平均分子量(MW)は,18000であった。
【0101】
<酸価の測定>
測定方法は以下の通りである。すなわち,100ml三角フラスコにエタノール約60mlを採り,フェノールフタレインを指示薬として,0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で中和した。ポリマー組成物約1.5gを精秤し,上記溶液に均一に溶解,攪拌し,0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行い,微赤色が約30秒間消えない点を滴定終点とした。
次式に従い,酸価を算出した。
酸価=(0.1×f×A×56.1/B)/(C/100)
A:滴定量(ml)
f:水酸化ナトリウム水溶液のファクター
B:ポリマー組成物量(g)
C:ポリマー濃度(%)
(ポリマー量/ポリマー組成物量×100)
上記ポリマー(W-1)の酸価は61mgKOH/gであった。
【0102】
〔実施例2〕 ポリマー(W-2)(モノマー組成比率,I-a1:II-a1=20:80)の合成
式(I-a)で示される(メタ)アクリル系モノマーの使用量を2.0g(0.005mol)に,式(II-a)で示される(メタ)アクリル系モノマーの使用量を8.0g(0.023mol)に変更した以外は,実施例1と同様に実施した。
得られたポリマー(W-2)は,重量平均分子量(MW)14000,酸価28mgKOH/gを有していた。
【0103】
〔実施例3〕 ポリマー(W-3)(モノマー組成比率,I-a1:II-a1=30:70)の合成
式(I-a)で示される(メタ)アクリルモノマーの使用量を3.0g(0.008mol)に,式(II-a)で示される(メタ)アクリル系モノマーの使用量を7.0g(0.020mol)に変更した以外は,実施例1と同様に実施した。
得られたポリマー(W-3)は,重量平均分子量(MW)14000,酸価45mgKOH/gを有していた。
【0104】
2.重合性ポリマー(P2)の合成〔エポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物のエポキシ基への付加反応)
〔実施例4〕 重合性ポリマー(X-1)(モノマー組成比率=40:60の場合)の合成
実施例1で合成されたポリマー組成物(モノマー組成比率=40:60)40.1g〔芳香環含有ポリマー(W-1)10.0g〕を攪拌しながら加熱して,液温度60℃にて,グリシジルメタクリレート(GMA)1.54g( 0.011mol:MW142),重合防止剤ヒドロキノンモノメチルエーテル (MEHQ) 0.006g,及びエステル化触媒ジメチルベンジルアミン0.019g(0.000143mol)を投入して,その後も加熱を続けて,反応温度95〜105℃の範囲で反応した。酸価反応率が90.0%以上となったとき反応液温度を30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン4.43gを攪拌しながら投入して,重合性ポリマー組成物46.16g〔重合性ポリマー(X-1)11.43gを含む〕を得た。得られた重合性ポリマーの重量平均分子量(MW)は,24000,酸価4mgKOH/gであった。
【0105】
酸価反応率は,以下の計算式に従って算出した。
【0106】
【数2】

【0107】
その結果,生成物の酸価反応率は,93%であった。
【0108】
<二重結合当量の測定>
上記重合性ポリマー(X-1)の二重結合当量(エチレン性不飽和基1mol当りのポリマー重量)は,以下の計算式に従って算出した。
【0109】
【数3】

【0110】
その結果,二重結合当量は1134であった。
【0111】
〔実施例5〕 重合性ポリマー(X-2)(モノマー組成比率=20:80の場合)の合成
実施例2で合成した芳香環含有ポリマー(モノマー組成比率=20:80)40.1g〔芳香環含有ポリマー(W-2)10.0g〕を攪拌しながら加熱し,液温度60℃にて,グリシジルメタクリレート(GMA)0.77g( 0.0054mol:MW142),重合防止剤ヒドロキノンモノメチルエーテル0.006g,及びエステル化触媒ジメチルベンジルアミン0.0093g(0.000070mol)を投入し,その後も加熱を続け,反応温度95〜105℃の範囲で反応した。酸価反応率が90.0%以上となったときに反応液温度を30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン2.19gを攪拌しながら投入し,重合性ポリマー組成物43.08g〔重合性ポリマー(X-2)10.69gを含む〕を得た。得られた重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)23000であった。また,酸価反応率は90%であった。
【0112】
〔実施例6〕 重合性ポリマー(X-3)(モノマー組成比率=30:70の場合)の合成
実施例3で合成した重合性ポリマー(モノマー組成比率=30:70)40.1g〔重合性ポリマー(W-3)10.0g〕を攪拌しながら加熱し,液温度60℃にて,グリシジルメタクリレート(GMA)1.16g( 0.0082mol:MW142),重合防止剤ヒドロキノンモノメチルエーテル0.006g,及びエステル化触媒ジメチルベンジルアミン0.0142g(0.000107mol)を投入し,その後も加熱を続け,反応温度95〜105℃の範囲で反応した。酸価反応率が70.0%以上となったときに反応液温度を30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン3.38gを攪拌しながら投入し,重合性ポリマー組成物44.64g〔重合性ポリマー(X-3)10.81gを含む〕を得た。得られた重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)23000であった。また,酸価反応率は70%であった。
【0113】
〔実施例7〕 重合性ポリマー(X-4)(モノマー組成比率=40:60の場合)の合成
実施例1で合成した重合性ポリマー(モノマー組成比率=40:60)40.1g〔重合性ポリマー(W-1)10.0g〕を攪拌しながら加熱し,液温度60℃にて,4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)1.85g( 0.0093mol:MW200),重合防止剤ヒドロキノンモノメチルエーテル0.006g,及びエステル化触媒ジメチルベンジルアミン0.0161g(0.000121mol)を投入し,その後も加熱を続け,反応温度95〜105℃の範囲で反応した。酸価反応率が90.0%以上となったときに反応液温度を30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン5.45gを攪拌しながら投入し,重合性ポリマー組成物47.40g〔重合性ポリマー(X-4)11.18gを含む〕を得た。得られた重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)23000であった。また,酸価反応率は90%であった。
【0114】
3.カルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)の合成(モノエステル化)
【0115】
〔実施例8〕 カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-1)(モノマー組成比率=40:60の場合)の合成
実施例4で合成された重合性ポリマー組成物(モノマー組成比率=40:60)46.16g〔重合性ポリマー(X-1)11.43g〕を攪拌しながら加熱して,液温度80℃にて,テトラヒドロ無水フタル酸1.49g(0.0098mol:MW152)を投入し,反応温度80℃で反応した。赤外分光分析により生成物中に1780cm-1付近の酸無水物基の吸収が無くなったとき反応液温度30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン4.47gを攪拌しながら投入して,カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物52.12g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-1)12.92gを含む〕を得た。得られたカルボキシル基含有重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)25000,二重結合当量1281,酸価56mgKOH/gを有していた。
【0116】
〔実施例9〕 カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-2)(モノマー組成比率=20:80の場合)の合成
実施例5で合成された重合性ポリマー組成物(モノマー組成比率=20:80)43.08g〔重合性ポリマー(X-2)10.69g〕を攪拌しながら加熱して,液温度80℃にて,テトラヒドロ無水フタル酸0.74g(0.0049mol:MW152)を投入し,反応温度80℃で反応した。赤外分光分析により生成物中に1780cm-1付近の酸無水物基の吸収が無くなったとき反応液温度30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン2.22gを攪拌しながら投入して,カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物46.04g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-2)11.43gを含む〕を得た。得られたカルボキシル基含有重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)25000,二重結合当量2343,酸価30mgKOH/gを有していた。
【0117】
〔実施例10〕 カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-3)(モノマー組成比率=30:70の場合)の合成
実施例6で合成された重合性ポリマー組成物(モノマー組成比率=30:70)44.64g〔重合性ポリマー(X-3)10.81g〕を攪拌しながら加熱して,液温度80℃にて,テトラヒドロ無水フタル酸1.12g(0.0074mol:MW152)を投入し,反応温度80℃で反応した。赤外分光分析により生成物中に1780cm-1付近の酸無水物基の吸収が無くなったとき反応液温度30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン3.36gを攪拌しながら投入して,カルボキシル基含有重合性ポリマー49.12g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-3)11.93gを含む〕を得た。得られたカルボキシル基含有重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)25000,二重結合当量2087,酸価46mgKOH/gを有していた。
【0118】
〔実施例11〕 カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-4)(モノマー組成比率=40:60の場合)の合成
実施例7で合成された重合性ポリマー組成物(モノマー組成比率=40:60)47.40g〔重合性ポリマー(X-4)11.18g〕を攪拌しながら加熱して,液温度80℃にて,テトラヒドロ無水フタル酸1.49g(0.0098mol:MW152)を投入し,反応温度80℃で反応した。赤外分光分析により生成物中に1780cm-1付近の酸無水物基の吸収が無くなったとき反応液温度30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン4.47gを攪拌しながら投入して,カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物53.36g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-4)12.67gを含む〕を得た。得られたカルボキシル基含有重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)25000,二重結合当量1522,酸価53mgKOH/gを有していた。
【0119】
〔実施例12〕 カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-5)(モノマー組成比率=40:60の場合)の合成
実施例4で合成された重合性ポリマー組成物(モノマー組成比率=40:60)46.16g〔重合性ポリマー(X-1)11.43g〕を攪拌しながら加熱して,液温度80℃にて,無水フタル酸1.45g(0.0098mol:MW148)を投入し,反応温度80℃で反応した。赤外分光分析により生成物中に1780cm-1付近の酸無水物基の吸収が無くなったとき反応液温度30℃以下まで冷却し,反応終了した。その後,シクロヘキサノン4.35gを攪拌しながら投入して,カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物51.96g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-5)12.88gを含む〕を得た。得られたカルボキシル基含有重合性ポリマーは,重量平均分子量(MW)25000,二重結合当量1277,酸価57mgKOH/gを有していた。
【0120】
4.多官能性液晶性ポリマー組成物の製造
〔実施例13〕 多官能性液晶性ポリマー組成物(Z-1)の製造
実施例8のカルボキシル基含有重合性ポリマー組成物52.12g(カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-1)12.92g含む)と,次式(VI-a):
【0121】
【化25】

【0122】
〔式中,nは6である。〕で示される多官能性液晶性モノマー19.38g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y−1)の重量に対して1.5倍〕と,光重合開始剤 イルガキュア907の1.62g〔酸無水物付加ポリマー(Y−1)と上記式(VI-a)の多官能性液晶性モノマー〔式中,nは6である〕の総和の重量に対して5%〕と,シクロヘキサノン97.16gと,BYK−323(界面活性剤)0.032g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y−1)と上記式(VI-a)の多官能性液晶性モノマー〔式中,nは6である〕の総和の重量に対して0.1%〕を投入した溶液を1時間攪拌混合し,多官能性液晶性ポリマー組成物170.31gを得た。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-1)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は502,酸価は22mgKOH/gであった。
【0123】
〔実施例14〕 重合液晶性ポリマー組成物(Z-2)の合成
カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物を実施例9のもの46.04g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-2)11.43gを含む〕に変更し,上記式(VI-a)の多官能性液晶性モノマー〔式中,nは6である。〕を17.15g〔カルボキシル基含有重合性ポリマーポリマー(Y−2)の重量に対して1.5倍〕に変更した以外は,実施例13と同様に操作を実施した。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-2)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は538,酸価は12mgKOH/gであった。
【0124】
〔実施例15〕 多官能性液晶性ポリマー組成物(Z-3)の合成
カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物を実施例10のもの49.12g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-3)11.93gを含む〕に変更し,上記(VI-a)の多官能性液晶性モノマー〔式中,nは6である。〕を17.90g(カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y−3)の重量に対して1.5倍)に変更した以外は,実施例13と同様に操作を実施した。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-3)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は532,酸価は18mgKOH/gであった。
【0125】
〔実施例16〕 多官能性液晶性ポリマー組成物(Z-4)の合成
カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物を実施例11のもの53.36g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-4)12.67gを含む〕に変更し,上記(VI-a)の多官能性液晶性モノマー〔式中,nは6である。〕を19.01g(カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y−4)の重量に対して1.5倍)に変更した以外は,実施例13と同様に操作を実施した。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-4)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は514,酸価は21mgKOH/gであった。
【0126】
〔実施例17〕 多官能性液晶性ポリマー組成物(Z-5)の合成
カルボキシル基含有重合性ポリマー組成物を実施例12のもの51.96g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y-5)12.88gを含む〕に変更し,上記(VI-a)の多官能性液晶性モノマー〔式中,nは6である。〕を19.32g(カルボキシル基含有重合性ポリマー(Y−5)の重量に対して1.5倍)に変更した以外は,実施例13と同様に操作を実施した。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-5)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は501,酸価は23mgKOH/gであった。
【0127】
〔実施例18〕 多官能性液晶性ポリマー組成物(Z-6)の合成
カルボキシル基含有重合性ポリマーを実施例4の重合性ポリマー組成物46.16g〔カルボキシル基含有重合性ポリマー(X-1)11.43g〕に変更し,上記式(VI-a)の多官能性液晶性モノマーを17.15g〔重合性ポリマー(X-1)の重量に対して1.5倍〕に変更した以外は,実施例13と同様に操作を実施した。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-6)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は492,酸価は2mgKOH/gであった。
【0128】
〔実施例19〕 多官能性液晶性ポリマー組成物(Z-7)の合成
光重合開始剤を実施例12の光重合開始剤 イルガキュア907〔酸無水物付加ポリマーと多官能性液晶性モノマーの総和の重量に対して5%〕を光重合開始剤 イルガキュア907〔カルボキシル基含有重合性ポリマーと多官能性液晶性モノマーの総和の重量に対して3%〕,光重合開始剤 OXE-01〔カルボキシル基含有重合性ポリマーと多官能性液晶性モノマーの総和の重量に対して2%〕に変更した以外は,実施例13と同様に操作を実施した。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-7)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は502,酸価は22mgKOH/gであった。
【0129】
〔実施例20〕 重合性性液晶性ポリマー組成物(Z-8)の合成
光重合開始剤を実施例12の光重合開始剤 イルガキュア907〔カルボキシル基含有重合性ポリマーと多官能性液晶性モノマーの総和の重量に対して5%〕を光重合開始剤 イルガキュア907〔カルボキシル基含有重合性ポリマーと多官能性液晶性モノマーの総和の重量に対して3%〕,光重合開始剤 OXE-02〔カルボキシル基含有重合性ポリマーと多官能性液晶性モノマーの総和の重量に対して2%〕に変更した以外は,実施例13と同様に操作を実施した。得られた多官能性液晶性ポリマー(Z-8)の組成物に含まれる固形分について,二重結合当量は502,酸価は22mgKOH/gであった。
【0130】
4.各多官能性液晶性ポリマー組成物についての性能評価
上記各実施例及び比較例で製造した各多官能性液晶性ポリマー組成物について,下記の手順で成膜し,それぞれの膜につきコート性,透明性,単位厚みあたりの面内方向のレタデーション(Re/d)について次のようにして評価した。
【0131】
<成膜方法>
(1)230℃処理膜:
多官能性液晶性ポリマー組成物を基板(ガラス及びポリイミド,10×10cm2)上に約2mlキャストし,スピンコートにより薄膜を作製した後,乾燥(90℃/10分)させて厚さ2μmの配向フィルムを作製し,30℃まで冷却した。
その後,露光量900mJ/cm2の紫外光を照射し、アルカリ水溶液(0.1%炭酸ナトリウム水溶液)にて処理し,非露光領域のみを除去し作製されたフィルムを高温度処理(230℃/1時間)した後,30℃まで冷却した。
【0132】
<透明性>
上記により作製した膜について目視で観察し,次の基準に基づき透明性を評価して記録した。
○:透明である
×:白化している
【0133】
<現像性>
上記成膜方法でのアルカリ水溶液(0.1%炭酸ナトリウム水溶液)にて処理する際の非露光領域のみを除去するのに要する時間を測定した。
【0134】
<光学特性の評価>
上記で得られた膜について,次の条件で偏光解析装置OPTIPRO(シンテック(株)製)にて測定し,Re/dを求めた。
・測定波長λ:550[nm]
・膜の厚みd:2[μm]
【0135】
<配向均一性>
上記で得られた膜について,配向均一性を偏光顕微鏡を用いて評価した。作成した膜をクロスニコル下で観察し,液晶の配向欠陥由来の光抜けが確認されないものを○,そうでないものを×として記録した。
【0136】
<耐熱性の評価>
上記膜を追加で230℃に3時間加熱した後,再度Re/dを求め,加熱前のRe/dからの変化を求めた。
<評価結果>
上記評価の結果を以下の表1〜表2に纏めて示す。表に見られるとおり,実施例の多官能性液晶性ポリマー組成物は,良好な複屈折特性,膜透明性を有し,かつ,高温度に曝されても複屈折特性が変化を受けないフィルム膜を提供できることがわかる。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の組成物を用いたフィルムは,良好な複屈折特性を有し,且つ,液晶パネルの製造に際して用いられるような高温に曝されても十分な複屈折特性を保持できる熱安定性を有し,更に,環境に配慮したアルカリ水溶液において現像処理できるという有利な特徴を有することから,本発明の組成物によれば,光学特性に優れた重合性液晶薄膜を,液晶セルの外部はもとよりセル内の必要な所に,所定の形状で設けることができ,液晶パネルの薄型化,低コスト化をはかる上で有利である。また,室温下のみならず高温度下においても光学異方性を安定に維持できることから,液晶パネル以外の種々の電子デバイスや,有機ELディスプレイ,ホログラフィー材料としても利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


〔式中,R1は,水素原子又はメチル基であり,A1及びA2は,それぞれ独立に,炭素数1〜4のアルキレン基又は単結合であり,B1は,水酸基又はカルボキシル基であり,X1は,
(i)炭素数1〜18のアルキレン基,
(ii)隣接するフェノキシ側末端にカルボニル基を有する炭素数1〜18のアルキレン基,
(iii)該フェノキシ側とは反対側の末端に−COO−基を介して結合した炭素数1〜6のアルキレン基を有する炭素数1〜18のアルキレン基,又は
(iv) 該フェノキシ側とは反対側の末端に一連に結合した1〜10個の−C24O−基を有する炭素数1〜18のアルキレン基であり,
a及びbは,a+b=0〜2を満たす0又は正の整数である。〕で示される(メタ)アクリル系モノマー(M1)と,
式(II):
【化2】


〔式中,R2は,水素原子又はメチル基であり,A3及びA4は,それぞれ独立に,炭素数1〜4のアルキレン基,−COO−基,又は単結合であり,Z1〜Z3は,それぞれ独立に,水素原子,ハロゲン原子,シアノ基,炭素数1〜18のアルキル基,又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり,X2は,炭素数が1〜18のアルキレン基であり,c及びdは,c+d=0〜2を満たす0又は正の整数である。〕で示される(メタ)アクリル系モノマー(M2)とを含んでなるモノマー混合物を重合させてなるポリマー(P1)に,エポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物を,該ポリマー(P1)の水酸基又はカルボキシル基とエポキシ基との間で付加反応させて,炭素炭素二重結合含有の重合性ポリマー(P2)とし,これをカルボン酸無水物との反応によりモノエステル誘導体化してなる,カルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)。
【請求項2】
該エポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物が,グリシジル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートである,請求項のカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)。
【請求項3】
該ポリマー(P1)とエポキシ基及びエチレン性二重結合含有化合物との反応率が60%以上である,請求項1又は2のカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかのカルボキシル基含有重合性ポリマー(P3)と,1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマーとを含有してなる,多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)。
【請求項5】
多官能性モノマーが,式(VI):
【化3】


〔式中,R16は,水素原子又はメチル基,R17は,炭素数が1〜18のアルキレン基又は隣接する(メタ)アクリロイルオキシ側とは反対側の末端に−COO−基と−OCO−基との何れか一つを有する炭素数1〜18のアルキレン基,T1は,
【化4】


(Z4は,水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜8のアルキル基である),Y1は単結合であるか又は−COO−であり,Y1’は単結合であるか又は−OCO−である。〕で示される多官能性液晶性モノマーである,請求項の多官能性液晶性ポリマー組成物(PC)。
【請求項6】
請求項4又は5の多官能性液晶性ポリマー組成物を含んでなる液晶パネル用ポリマー組成物。
【請求項7】
請求項4又は5の多官能性液晶性ポリマー組成物を基材表面に塗布してなる,重合性薄膜。
【請求項8】
請求項4又は5の多官能性液晶性ポリマー組成物を基材表面に塗布し,硬化させてなる,光学異方性薄膜。

【公開番号】特開2010−132724(P2010−132724A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307351(P2008−307351)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】