説明

光学的パネル組立体の連続的製造方法及び装置

【課題】偏光膜を有する光学的パネル組立体の連続的製造方法を提供する。
【解決手段】偏光膜は、連続ウェブ状の熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成した積層体に対し、空中補助延伸とホウ酸水中延伸からなる2段階延伸により、PVA系樹脂層を10μm以下の厚みにする延伸と、PVA系樹脂膜に二色性物質を吸着させる吸着とを行うことによって形成される。該偏光膜を有する光学フィルム積層体に、粘着剤層を介してキャリアフィルムを剥離可能に貼り付けて形成したキャリアフィルム付光学フィルム積層体に対し、光学パネルの長辺寸法又は短辺寸法の一方に対応する所定の長さ方向間隔で、幅方向に、光学フィルム積層体の側からキャリアフィルムの面に達する深さの複数のスリットを形成し、長さ方向に隣接する2つのスリット間に、光学フィルム積層体のシートを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形形状のパネルに偏光膜を有する光学フィルム積層体を順次的に貼り付ける方法及び装置に関する。特に、本発明は、厚さが10μm以下という非常に薄い偏光膜を有する光学フィルムをパネルに順次的に貼り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状に製膜されたポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」という。)の単層体に染色処理及び延伸処理を施すことにより、PVA系樹脂の分子が延伸方向に配向され、該PVA系樹脂内に二色性物質が配向状態で吸着された、PVA系樹脂層からなる偏光膜の製造方法はよく知られている。このPVA系樹脂単層膜を使用する従来の方法により得られる偏光膜の厚みは、ほぼ15〜35μmである。この方法によれば、単体透過率が42%以上で、偏光度が99.95%以上の光学特性を有する偏光膜を得ることができ、この方法で製造された偏光膜は、現在では、テレビ、携帯電話機、携帯情報端末その他の光学的表示装置に使用されている。
【0003】
しかし、PVA系樹脂は親水性であり、高い吸湿性を有するため、PVA系樹脂を用いて製造された偏光膜は、温度や湿度の変化に敏感であり、周囲の環境変化により伸縮を生じ易く、そのためクラックが発生し易い、という傾向がある。このため、従来の一般的な偏光膜では、その両面に、保護フィルムとして40〜80μmのTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムを貼り付けて構成した光学フィルム積層体を使用している。
【0004】
さらに、PVA系樹脂層からなる従来の偏光膜を使用する場合における他の問題として、使用中の環境変化によって生じる伸縮のために、この偏光膜が、これと接合される隣接部材に対して応力を作用させ、該隣接部材に反り等の変形を生じることが挙げられる。
【0005】
しかしながら、偏光膜の両面に、保護フィルムとしてのTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムが貼り合された光学フィルム積層体においても、単層体による偏光膜を用いる場合には、偏光膜の薄膜化に限界があるので、伸縮力は無視できず、伸縮の影響を完全に抑制することは困難であり、偏光膜を含む光学フィルム積層体にある程度の伸縮を生じるのは避けられない。こうした偏光膜を含む光学フィルム積層体に伸縮が生じると、その伸縮に起因する応力が、隣接する部材に反り等の変形を生じさせることになる。この変形は、たとえ微小であっても、液晶表示装置に表示ムラを発生させる原因となる。したがって、この表示ムラの発生を低減させるために、偏光膜を含む光学フィルム積層体に使用される部材の材料を注意深く選択する、といった設計上の配慮が必要になる。また、こうした偏光膜の収縮応力が、液晶表示パネルからの光学フィルム積層体の剥離等の原因となるために、該光学フィルム積層体を液晶表示パネルに接合するには、高接着力の粘着剤が要求されることになる。しかしながら、このような高接着力の粘着剤を使用すると、液晶表示パネルに貼り合せた光学フィルム積層体の偏光膜に光学的な欠陥があることが後の検査で発見されたときに、この光学フィルム積層体を液晶表示パネルから剥がして、該液晶表示パネルに別の光学的フィルム積層体を貼り合せる作業である、リワークが困難になる、という問題があった。これがフィルム状に製膜したPVA系樹脂の単層体を使用する、従来の方法により得られる偏光膜の1つの技術的課題である。
【0006】
上述した課題が存在するために、十分な程度までの薄膜化を達成できない、従来のPVA系樹脂単層体を使用する偏光膜の製造方法に代わる、偏光膜の製造方法が求められている。しかしながら、フィルム状に製膜したPVA系樹脂の単層体を使用する従来の方法では、厚みが10μm以下の偏光膜を製造することは事実上不可能である。その理由は、フィルム状のPVA系樹脂単層体による偏光膜の製造においては、PVA系樹脂単層体の厚みが薄くなり過ぎると、染色工程及び/又は延伸工程において、PVA系樹脂層に溶解及び/又は破断を生じる恐れがあるため、均一な厚みの偏光膜を形成することができなくなるからである。
【0007】
この問題に対処するため、熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂層を塗布形成し、この樹脂基材上に形成されたPVA系樹脂層を樹脂基材とともに延伸し、染色処理を施すことにより、従来の方法で得られる偏光膜に比べて非常に薄い偏光膜を製造する製造方法が提案されている。この熱可塑性樹脂基材を用いた偏光膜の製造方法は、PVA系樹脂の単層体による偏光膜の製造方法に比べて、偏光膜をより均一に製造できる可能性をもたらす点で注目される。
【0008】
例えば、特許第4279944号公報(特許文献1)には、熱可塑性樹脂フィルムの片面に、厚さが6μm以上30μm以下のポリビニルアルコール系樹脂層を塗工法により形成した後、2倍以上5倍以下に延伸して該ポリビニルアルコール系樹脂層を透明皮膜素子層とすることにより、熱可塑性樹脂フィルム層と透明皮膜素子層との二層からなる複合フィルムを形成し、次いで、該二層からなる複合フィルムの透明皮膜素子層側に光学透明樹脂フィルム層を、接着剤を介して貼り合せた後、熱可塑性樹脂フィルム層を剥離除去し、さらに透明皮膜素子層を染色、固定して偏光素子層とする偏光板の製造方法が記載されている。この方法によって得られる偏光板は、光学透明樹脂フィルム層と偏光素子層との二層構成であり、特許文献1の記載によれば、偏光素子の厚みは2〜4μmである。
【0009】
この特許文献1に記載された方法は、延伸を、加熱下で、一軸延伸により行うものであり、その延伸倍率は、上述したように2倍以上5倍以下の範囲となるように制限される。特許文献1は、この方法において、延伸倍率が5倍以下に制限される理由として、延伸倍率が5倍を越す高率延伸では安定生産が極端に困難になる、と説明している。延伸の際の周囲温度は、具体的には、熱可塑性樹脂フィルムとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用する場合には55℃、無延伸のポリプロピレンを使用する場合には60℃、無延伸のナイロンを使用する場合には70℃としている。この特許文献1に記載された方法は、高温空中一軸延伸の手法を採用するものであり、特許文献1に記載されているように、延伸倍率は5倍以下に制限されるので、この方法により得られる2〜4μmといった極めて薄い偏光膜は、例えば液晶テレビのような光学的表示装置、或いは有機EL表示素子を用いる光学的表示装置に使用される偏光膜に望まれる光学特性を満足させるものとはならない。
【0010】
熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂層を塗工により形成して、該PVA系樹脂層を基材とともに延伸することにより偏光膜を形成する方法は、特開2001−343521号公報(特許文献2)及び特開2003−43257号公報(特許文献3)にも記載されている。これらの特許文献に記載された方法は、熱可塑性樹脂基材と該基材上に塗布されたPVA系樹脂層とからなる積層体を、基材が非晶性ポリエステル樹脂の場合には70℃〜120℃の温度で、一軸延伸するものである。次に、延伸によって配向されたPVA系樹脂層に染色によって二色性物質を吸着させる。特許文献2では、この一軸延伸は、縦一軸延伸又は横一軸延伸のいずれでもよい、と記載されているが、特許文献3では、横一軸延伸を行い、その横一軸延伸中又は延伸後に、延伸方向と直交する方向の長さを特定量収縮させる方法が記載されている。そして、延伸倍率は、特許文献2及び3のいずれにおいても、通常4〜8倍程度としている。得られる偏光膜の厚みとして、1〜1.6μmが記載されている。
【0011】
これら特許文献2及び3では、延伸倍率が通常4〜8倍と述べられているが、採用されている延伸方法は、高温空中延伸法であり、このような方法で安定した延伸を行うことができるのは、例えば特許文献1に記載されているように、5倍が限度である。特許文献2及び3においても、5倍を超える延伸倍率を高温空中延伸法により達成するための特段の手法は記載されていない。事実、これら特許文献2及び3に記載された実施例をみると、特許文献2では5倍の延伸倍率が記載され、特許文献3では4.5倍が記載されているだけである。本発明者らは、特許文献2及び3に記載された方法の追試を行い、ここに記載された方法では、延伸倍率が5倍を超える延伸はできないことを確認した。したがって、特許文献2及び3の記載は、延伸倍率に関しては、5倍以下のものしか記載していない、と理解すべきである。特許文献1に関して述べた通り、この特許文献2及び3においても、得られる偏光膜の光学特性は、例えば液晶テレビのような光学的表示装置に使用される偏光膜に望まれる光学特性を満足させるものとはならない。
【0012】
米国特許第4659523号明細書(特許文献4)は、ポリエステルフィルム上に塗工形成したPVA系樹脂層を、該ポリエステルフィルムとともに一軸延伸することからなる偏光膜の製造方法を開示する。この特許文献4に記載された方法は、PVA系樹脂層の基材となるポリエステルフィルムを、偏光膜とともに使用できる光学的特性を有するものとすることができるようにすることを目的とするもので、薄型で優れた光学特性をもつPVA系樹脂層からなる偏光膜を製造することを意図するものではない。すなわち、特許文献4に記載された方法は、偏光膜となるPVA系樹脂層とともに延伸されるポリエステル樹脂フィルムの光学的特性を改善しようとするものに過ぎない。同様の目的をもった偏光子用材料の製造方法は、特公平8−12296号公報(特許文献5)にも記載されている。
【0013】
上述した、偏光膜の両面にTACフィルムが貼り合された光学フィルム積層体からなる光学フィルム積層体は、一般的に、液晶表示パネルのような光学的表示パネルに貼り付けて、使用される。この光学フィルム積層体を、粘着剤層を介してキャリアフィルムに貼り付けることにより形成したキャリアフィルム付光学フィルム積層体を、長さ方向に連続的に送りながら、光学フィルム積層体を、対応する光学的表示パネルの寸法に適応した長さに切断して該光学的表示パネルに順次的に貼り付けるように構成された、連続貼り装置が、既に提案されている。例えば、特許第4361103号公報(特許文献6)、同第4377961号公報(特許文献7)同第4377964号公報(特許文献8)、同第4503689号公報(特許文献9)、同第4503690号公報(特許文献10)、同第4503691号公報(特許文献11)等に記載されている。
【0014】
これらの文献に記載された光学フィルム積層体の連続貼り付け装置は、連続的に送られるキャリアフィルム付光学フィルム積層体に、長さ方向に対して直角な幅方向に、光学フィルム積層体が貼り付けられる光学的表示パネルの長辺方向寸法及び短辺方向寸法の一方に対応する長さ方向間隔でスリットを形成するスリット形成機構を備える。このスリット形成機構は、キャリアフィルム付光学フィルム積層体の幅方向に、キャリアフィルムとは反対側の面から、該キャリアフィルムと粘着剤層との間の界面に達する深さまで達するスリットを形成するように構成されている。このようなスリット形成を、「ハーフカット」と呼ぶ。このハーフカットにより、キャリアフィルム付光学フィルム積層体の長さ方向に隣接する2つのスリット間に、光学的表示パネルの長辺方向寸法及び短辺方向寸法のいずれか一方に対応する長さの光学フィルム積層体のシートが形成される。この場合、光学フィルム積層体の幅は、光学的表示パネルの長辺方向寸法及び短辺方向寸法の他方に対応する寸法にされる。
【0015】
光学フィルム積層体の連続貼り付け装置は、さらに、光学的表示パネルを貼り合せ位置に順次的に送るパネル送り機構を備えており、光学フィルムのシートの各々は、貼り合せ位置に順次的に送られてくる光学的表示パネルと同期するように、貼り合せ位置に向けて送り込まれる。貼り合わせ位置の手前には、キャリアフィルム剥離機構が設けられており、この剥離機構が、光学フィルムのシートの各々に対し、粘着剤層が光学フィルムのシートの側に残される状態で、該光学フィルムのシートをキャリアフィルムから剥がすように作用する。そして、キャリアフィルムが剥がされた光学フィルム積層体のシートは、貼り合せ位置に送られてきたパネルに重ねるように送り込む。貼り合わせ位置には、貼り合わせローラのような貼り合わせ機構が設けられ、該貼り合わせ位置に送られてきた光学的表示パネルと光学フィルム積層体のシートとを粘着剤層を介して貼り合せる。
【0016】
キャリアフィルム剥離機構は、光学フィルム積層体のシートから剥がされたキャリアフィルムを鋭角的に折り返す形状に構成された縁部を有する剥離プレートを備える。光学フィルム積層体のシートは、そのまま進行方向を変えずに、キャリアフィルムから離れて貼り合わせ位置に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許4279944号公報
【特許文献2】特開2001−343521号公報
【特許文献3】特開2003−43257号公報
【特許文献4】米国特許第4659523号明細書
【特許文献5】特公平8-12296号公報
【特許文献6】特許第4361103号公報
【特許文献7】特許第4377961号公報
【特許文献8】特許第4377964号公報
【特許文献9】特許第4503689号公報
【特許文献10】特許第4503690号公報
【特許文献11】特許第4503691号公報
【特許文献12】特開2002−258269号公報
【特許文献13】特開2004−078143号公報
【特許文献14】特開2007−171892号公報
【特許文献15】特開2004−338379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
現在実用化されている偏光膜は、厚みが15〜35μm程度、通常は、30μm程度である。そして、この偏光膜の両面のそれぞれに、厚みが60〜80μmのTACフィルムが貼り付けられる。さらに、このようにTACフィルムが両面に貼られた偏光膜積層体に、位相差フィルム等の光学機能フィルムが貼り合わされ、その上に表面保護フィルムが積層されて光学フィルム積層体が形成される。したがって、光学フィルム積層体全体の厚みは、キャリアフィルム貼り付けのための粘着剤層の厚みを除いた状態でも、200〜270μmになる。しかし、最近の表示装置の薄型化に伴い、この光学フィルム積層体の厚みを極力減少させることの要求が高まっている。
【0019】
一方、本発明者らは、厚みが10μm以下であり、液晶表示パネル又は有機EL表示パネルとともに使用する偏光膜に要求される光学特性を持った偏光膜の製造に成功した。具体的には、本発明者らは、偏光膜の製造方法として、エステル系熱可塑性樹脂基材と、その上に塗布形成されたPVA系樹脂層とを一体に、空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸することと、該PVA系樹脂層に二色性色素による染色処理を施すこととによって、厚みが10μm以下であり、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、光学的表示装置に使用される偏光膜に要求される特性を満足させることができる、従来にない薄型の偏光膜を得ることに成功した。このような事情のもとで、光学フィルム積層体を全体として薄型に形成するための開発努力が続けられている。そして、本発明者らが開発した薄型の偏光膜を使用すれば、全体の厚みが170μm以下の光学フィルム積層体を製造することが可能になる。さらに、このような薄型の光学フィルム積層体を、特許文献6〜11に記載されているような連続貼り付け装置を用いて光学的表示パネルに貼り合わせることが望ましい。
【0020】
本発明は、このような薄型の光学フィルム積層体を矩形形状の光学パネルに連続貼り付けする、光学フィルム積層体の順次的貼り付方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様は、長辺寸法と短辺寸法とを有する矩形形状の光学パネルの2つの表面の少なくとも一方に、偏光膜を貼り付けることにより光学的パネル組立体を製造する方法である。この方法は、連続ウェブ状の熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成した積層体に対し、空中補助延伸とホウ酸水中延伸からなる2段階延伸により、総延伸倍率が5倍〜8.5倍となるように長さ方向に1軸延伸して、該ポリビニルアルコール系樹脂層を10μm以下の厚みにする延伸工程と、該ポリビニルアルコール系樹脂膜に二色性物質を吸着させる吸着工程と、を行って、厚みが10μm以下で長さ方向に吸収軸を有するポリビニルアルコール系樹脂層からなる偏光膜を形成することにより、少なくとも偏光膜を含む連続ウェブ状の光学フィルム積層体を形成する段階を含む。この光学フィルム積層体には、粘着剤層を介してキャリアフィルムが剥離可能に貼り付けられて、キャリアフィルム付光学フィルム積層体が形成される。該キャリアフィルムは、該粘着剤層に対する接着力が光学フィルム積層体と粘着剤層との間の接着力より弱い。さらに、該キャリアフィルム付光学フィルム積層体に対し、光学パネルの長辺寸法又は短辺寸法の一方に対応する所定の長さ方向間隔で、該長さ方向に対し直角方向である幅方向に、光学フィルム積層体の側から粘着層に面したキャリアフィルムの面に達する深さの複数のスリットを形成して、該キャリアフィルム付光学フィルム積層体の長さ方向に隣接する2つのスリット間に、光学フィルム積層体のシートを形成することにより、キャリアフィルム上に複数のシートが連続的に支持された構成の連続状長尺シート積層体を形成する。次いで、該長尺シート積層体上のシートの各々が、貼り合せ位置に順次に送られてくる光学パネルに同期する関係になるように、該長尺シート積層体を貼り合せ位置に送り、光学フィルム積層体の側に粘着剤層を残してシートを順次、該長尺シート積層体から剥がし、該シートを貼り合せ位置に送られてきた光学パネルに粘着剤層を介して貼り合せる。
【0022】
本発明の方法においては、連続状長尺シート積層体を形成する段階の前に、キャリアフィルム付偏光膜積層体を、前記光学パネルの前記長辺寸法又は前記短辺寸法の他方に対応する所定幅で、該キャリアフィルム付偏光膜積層体の長さ方向に切断して、所定幅で長さ方向に連続する連続ストリップを形成し、該連続ストリップに対し、上述の複数のスリットを形成して連続状長尺シート積層体を形成することができる。さらに、連続状長尺シート積層体を形成する段階の前に、光学フィルム積層体に対して欠点検査を行い、欠点が検出されたときには、その欠点についての情報を記録することができる。
【0023】
そして、連続状長尺シート積層体を形成する段階において形成された光学フィルム積層体シートが、欠点検査段階において検出された欠点を含むものである場合には、貼り合せ段階の前に、該欠点を含む前記光学フィルム積層体シートをキャリアフィルムから剥がして、光学フィルム積層体の送り経路外に排出することができる。また、連続状長尺シート積層体を形成する段階において形成された光学フィルム積層体シートが、欠点検査段階において検出された欠点を含むものである場合には、該欠点を挟んで送り方向上流側及び下流側のそれぞれの方向に該欠点から所定の距離だけ離れた位置でスリットを形成することにより、欠点を含む光学フィルム積層体シートを形成することができる。
【0024】
連続状長尺シート積層体を形成する段階において、スリットの形成は、欠点の有無に関係なく等間隔で行うことができ、この場合において、光学フィルム積層体シートのうち、記録された欠点についての情報に基づいて欠点を含むものと判定されたシートは、識別情報により、不良シートとして識別できるようにする。
【0025】
光学パネルは、光学的表示パネルとすることができる。また、光学パネルは、液晶表示パネル、有機EL表示パネルのいずれかとすることができる。或いは、光学パネルは、タッチセンサパネルとすることができる。
【0026】
さらに、本発明の方法においては、光学フィルムは、キャリアフィルムとは反対側の面に光学機能フィルムが接着された積層体とすることができる。また、光学フィルムには、偏光膜と粘着剤層との間に第2の光学機能フィルムを配置することもできる。
【0027】
本発明の方法においては、偏光膜は、単体透過率をT、偏光度をPとしたとき、
P>―(100.929T―42.4―1)×100(ただし、T<42.3)、および
P≧99.9(ただし、T≧42.3)
の条件を満足する光学特性を有するようにされたものとすることができる。このような光学特性を有する偏光膜は、液晶表示装置に使用するのに適したものである。或いは、偏光膜は、単体透過率をT、偏光度をPとしたとき、T≧42.5、及びP≧99.5の条件を満足する光学特性を有するようにされたものとすることができる。このような光学特性を有する偏光膜は、有機EL表示装置に使用するのに適したものである。
【0028】
上述した2段延伸を行う場合の本発明の方法においては、空中補助延伸時の延伸倍率は、3.5倍以下にすることが好ましい。また、二色性物質の吸着は、水溶媒に、ヨウ素濃度0.12〜0.30重量%の範囲のヨウ素を含む染色液にポリビニルアルコール系樹脂層を浸漬させることによって行うことが好ましい。
【0029】
本発明の他の態様は、長辺及び短辺を有する矩形形状のパネルに光学フィルム積層体を順次的に貼り付ける貼り付け装置である。この装置は、連続ウェブ状の熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成した積層体に対し、空中補助延伸とホウ酸水中延伸からなる2段階延伸により、総延伸倍率が5倍〜8.5倍となるように長さ方向に1軸延伸して、該ポリビニルアルコール系樹脂層を10μm以下の厚みにする工程と、該ポリビニルアルコール系樹脂膜に二色性物質を吸着させる工程とを行って、厚みが10μm以下で長さ方向に吸収軸を有するポリビニルアルコール系樹脂層からなる偏光膜を形成することにより形成された、少なくとも偏光膜を含む連続ウェブ状の光学フィルム積層体に、粘着剤層を介して、該粘着剤層に対する接着力が光学フィルム積層体と粘着剤層との間の接着力より弱いキャリアフィルムを剥離可能に貼り付けて形成された、キャリアフィルム付光学フィルム積層体を使用する。
【0030】
そして、該装置は、
キャリアフィルム付光学フィルム積層体を長さ方向に送る光学フィルム積層体送り機構と、
該送り機構により長さ方向に送られるキャリアフィルム付光学フィルム積層体に対し、長さ方向に、パネルの長辺及び短辺の寸法の一方に対応する間隔をもって、該キャリアフィルムとは反対側の光学フィルムの面から、キャリアフィルムの記光学フィルムに隣接する面に達する深さのスリットを、該キャリアフィルム付光学フィルム積層体の幅方向に、複数個、順次に形成して、長さ方向に隣接する2つのスリット間に、キャリアフィルムに支持された光学フィルムのシートを形成するスリット形成機構と、
パネルを貼り合せ位置に順次的に送るパネル送り機構と、貼り合せ位置に順次的に送られてくる該パネルと同期するように、該貼り合せ位置に向けて送り込まれる光学フィルムのシートの各々に対し、該貼り合わせ位置の手前において、粘着剤層が光学フィルムのシートの側に残される状態で、光学フィルムのシートをキャリアフィルムから剥がしながら、該光学フィルムのシートを貼り合せ位置に送られてきたパネルに重ねるように送り込む、キャリアフィルム剥離機構と、
貼り合わせ位置に配置され、該貼り合わせ位置に送られてきたパネルと光学フィルムのシートとを粘着剤層を介して貼り合せる、貼り合わせ機構と、
を備える。この装置は、光学フィルム積層体に対して欠点検査を行う欠点検査機構を備えることができる。
【0031】
従来の技術では、偏光膜の厚みを10μm以下にして、光学的表示装置に使用するのに望ましい光学特性を達成することはできなかった。
【0032】
ここで、本発明者らは、例えば液晶テレビのような光学的表示装置に使用される偏光膜の場合には、偏光膜に望まれる光学的特性を、単体透過率をTとし、偏光度をPとしたとき、次式
P>―(100.929T―42.4―1)×100(ただし、T<42.3)、及び
P≧99.9(ただし、T≧42.3)
で表される条件に設定した。
【0033】
また、液晶表示装置の場合とは異なり、有機EL表示装置の場合には、偏光膜は、通常は1枚使用される構成となるため、偏光膜に要求される光学的特性は、液晶表示装置に使用される偏光膜に要求される光学特性とは異なるものとなる。したがって、本発明者らは、有機EL表示装置に使用される偏光膜に要求される光学的特性として、単体透過率をTとし、偏光度をPとしたとき、T≧42.5及びP≧99.5で表される条件を設定した。
【0034】
PVA系樹脂フィルムを用いる従来の偏光膜の製造方法は、高温空中延伸によるものであったため、延伸倍率に限界があり、偏光膜の厚みを10μm以下という非常に薄いものとすると、上述した光学的表示装置に使用する偏光膜に望まれる光学特性を得ることはできなかった。しかし、本発明者らが開発した、上述の延伸と染色とによる製造方法を用いれば、厚みが10μm以下であり、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、上記の条件を満足する偏光膜を実現することができる。本発明は、このような光学特性の偏光膜を含む薄型の光学的フィルム積層体を、光学的表示パネルに連続的に貼り付ける、連続貼り付け方法及び装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明から分かるように、本発明によれば、厚みが10μm以下という薄型の偏光膜を使用し、光学フィルム積層体を光学表示パネル等の光学パネルに連続的に貼り付けることができる、光学フィルム積層体の連続的貼り付方法及び装置が得られる。
【0036】
前述したように、熱可塑性樹脂基材を用い、該基材上に形成されたPVA系樹脂層を含む積層体を、延伸倍率が5倍以上になるように一軸に延伸した事例は、従来技術を記載した文献に見出すことはできない。
【0037】
以下、本発明に使用される偏光膜の製造方法の代表例及び本発明による光学フィルム積層体の連続的貼り付方法及び装置の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】PVA層の厚みすなわち偏光膜の厚みに対する樹脂基材の適正な厚みを示す図表である。
【図2】厚みが3μm、8μm、10μmの偏光膜の偏光性能の比較図である。
【図3】単体透過率Pと偏光度Tとの関係を示す図表である。
【図4】光学的表示パネルを有する光学的表示装置に使用する偏光膜に要求される光学的性能の範囲を表す図表である。
【図5】偏光膜1〜7の偏光性能の理論値を二色比に基づいて表す図である。
【図6】染色浴のヨウ素濃度の違いによるPVA系樹脂層の溶解の有無を比較した比較表である。
【図7】染色浴のヨウ素濃度とPVA系樹脂層により生成された偏光膜の偏光性能との関係を示す図表である。
【図8】本発明の実施例となる偏光膜の偏光性能を示す図表である。
【図9】光学フィルム積層体を製造するための不溶化処理を含まない製造工程の概略図である。
【図10】光学フィルム積層体を製造するための不溶化処理を含む製造工程の概略図である。
【図11】本発明の光学的フィルム積層体が使用される有機EL表示装置の一例を示す断面図である。
【図12】本発明の光学的フィルム積層体が使用される液晶表示装置の一例を示す断面図である。
【図13】本発明の幾つかの実施例による偏光膜の偏光性能を対比して示す図表である。
【図14】本発明の別の幾つかの実施例による偏光膜の偏光性能を対比して示す図表である。
【図15】本発明の実施例による偏光膜の偏光性能を示す図表である。
【図16】本発明の他の実施例による偏光膜の偏光性能を示す図表である。
【図17】本発明のさらに他の実施例による偏光膜の偏光性能を示す図表である。
【図18】結晶性PETと非晶性PETとPVA系樹脂のそれぞれの延伸温度と延伸可能倍率との相対関係を表す図表である。
【図19】結晶性PETと非晶性PETのTgと融点Tm間での温度変化にともなう結晶化速度の変化を表す図表である。
【図20】非晶性PETとPVAの空中高温での延伸倍率と総延伸倍率との関係を表す図表である。
【図21】結晶性PETと非晶性PETとPVA系樹脂に関する空中高温での延伸温度と総延伸可能倍率との相対関係を表す図表である。
【図22】総延伸倍率に対する熱可塑性樹脂基材として用いられるPETの配向性と結晶化度とを表す図表である。
【図23】1.8倍の空中補助延伸を行った場合の補助延伸温度と補助延伸処理されたPETの配向関数との関係を表す図表である。
【図24】PVAの結晶化度とPVAの配向関数との相対関係を表す図表である。
【図25】熱可塑性樹脂基材を用いて製造される偏光膜の製造工程の概略図である。
【図26】2段延伸によらない従来の例示的な偏光膜の偏光性能を表す図表である。
【図27】2段延伸された実施例における、製造される偏光膜、又は偏光膜含む光学フィルム積層体の製造条件の一覧表である。
【図28】2段延伸された実施例における、製造される偏光膜、又は偏光膜含む光学フィルム積層体の製造条件の一覧表である。
【図29】2段延伸された実施例と参考例1〜3との配向関数値の比較表である。
【図30】本発明による方法に使用することができる光学的積層体ロールの製造工程の概略図である。
【図31】本発明による方法に使用することができる光学的積層体ロールの他の製造工程の概略図である。
【図32】さらに他の実施形態における光学的積層体ロールの製造工程の概略図である。
【図33】さらに他の実施形態における光学的積層体ロールの製造工程の概略図である。
【図34】広幅の光学フィルム積層体を長さ方向に切断して光学フィルム積層体ストリップを形成する工程を示す斜視図である。
【図35】光学フィルム積層体ストリップから個々のシートを切断して液晶表示パネルに貼り付ける工程を示す概略平面図である。
【図36】本発明により光学フィルム積層体シートを表示パネルに貼り付ける工程を示す概略図である。
【図37】本発明により光学フィルム積層体ストリップに定められるスリット形成位置を示す概略図である。
【図38】表示パネルに光学フィルム積層体シートを貼り付ける貼合せステーションの詳細を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[偏光膜に関連する技術的背景]
偏光膜の背景技術として、本発明に用いられる熱可塑性樹脂基材の材料特性と偏光膜の偏光性能によって表される光学特性について説明する。
【0040】
先ず、本発明に用いるのに適した熱可塑性樹脂の一般的材料特性を概説する。
熱可塑性樹脂は、高分子が規則正しく配列する結晶状態にあるものと、高分子が規則正しい配列を持たない、あるいは、ごく一部しか規則正しい配列を持たない無定形又は非晶状態にあるものとに大別できる。前者を結晶状態といい、後者を無定形又は非晶状態という。これに対応して、結晶状態にはないが、条件次第では結晶状態をつくることができる性質をもった熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂と呼ばれ、そうした性質をもたない熱可塑性樹脂は非晶性樹脂と呼ばれる。一方、結晶性樹脂であるか非晶性樹脂であるかを問わず、結晶状態にない樹脂又は結晶状態に至らない樹脂をアモルファス又は非晶質の樹脂という。ここでは、アモルファス又は非晶質という用語は、結晶状態をつくらない性質を意味する非晶性という用語とは区別して用いられる。
【0041】
結晶性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を含むオレフィン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)を含むエステル系樹脂がある。結晶性樹脂の特徴の一つは、一般的に加熱及び/又は延伸配向によって高分子が配列して結晶化が進む性質を有することである。樹脂の物性は、結晶化の程度に応じて様々に変化する。一方で、例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)のような結晶性樹脂でも、加熱処理や延伸配向によって起こる高分子の配列を阻害することによって、結晶化の抑制が可能である。結晶化が抑制されたこれらのポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)を、それぞれ非晶性ポリプロピレン及び非晶性ポリエチレンテレフタレートといい、これらを、それぞれ総称して非晶性オレフィン系樹脂及び非晶性エステル系樹脂という。
【0042】
例えばポリプロピレン(PP)の場合、立体規則性のないアタクチック構造にすることによって、結晶化を抑制した非晶性ポリプロピレン(PP)を作成することができる。また、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、重合モノマーとして、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような変性基を共重合すること、すなわち、ポリエチレンテレフタレート(PET)の結晶化を阻害する分子を共重合させることによって、結晶化を抑制した非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)を作成することができる。
【0043】
次に、大型液晶表示素子に用いることができる偏光膜の光学特性を概説する。
偏光膜の光学特性とは、端的には、偏光度Pと単体透過率Tとで表す偏光性能のことである。一般に、偏光膜の偏光度Pと単体透過率Tとは二律背反的な関係にある。この2つの光学特性値は、T−Pグラフにより表すことができる。T−Pグラフにおいて、プロットしたラインが単体透過率の高い方向にあり、かつ偏光度の高い方向にあるほど、偏光膜の偏光性能が優れていることになる。
【0044】
ここでT−Pグラフを示す図3を参照すると、理想的光学特性は、T=50%で、P=100%の場合である。図から分かるように、T値が低ければP値を上げやすく、T値が高いほどP値を上げにくい、という傾向にある。さらに、偏光膜の偏光性能を透過率Tと偏光度Pの関係を示す図4を参照すると、図4にライン1及びライン2より上の領域として定められた範囲では、偏光膜の単体透過率T及び偏光度Pは、液晶表示装置に必要と考えられる「要求性能」を満足するものとなり、この偏光膜を使用した表示装置は、コントラスト比が1000:1以上で、最大輝度が500cd/m2以上になる。この要求性能は、現在において、或いは将来においても、大型液晶表示素子などの偏光膜性能として求められる光学特性と考えられる性能である。単体透過率Tの理想値は、T=50%であるが、光が偏光膜を透過する際に、偏光膜と空気との界面で一部の光が反射する現象が起こる。この反射現象を考慮すると、反射に相当する量だけ単体透過率Tが減少するので、現実的に達成可能なT値の最大値は45〜46%程度である。
【0045】
一方、偏光度Pは、偏光膜のコントラスト比(CR)に変換することができる。例えば99.95%の偏光度Pは、偏光膜のコントラスト比の2000:1に相当する。この偏光膜を液晶テレビ用液晶表示パネルの両側に用いたときの表示装置のコントラスト比は、1050:1である。ここで表示装置のコントラスト比が偏光膜のコントラスト比を下回るのは、表示パネル内部において偏光解消が生じるためである。偏光解消は、バックライト側の偏光膜を透過してきた光がセル内部を透過する際に、カラーフィルタ中の顔料、液晶分子層、TFT(薄膜トランジスタ)によって光が散乱及び/又は反射し、一部の光の偏光状態が変化することにより生じる。偏光膜及び表示パネルのコントラスト比がいずれも大きいほど、液晶テレビはコントラストが優れ、見やすいものとなる。
【0046】
ところで、偏光膜のコントラスト比は、平行透過率Tpを直交透過率Tcで除した値として定義される。これに対して表示装置のコントラスト比は、最大輝度を最小輝度で除した値として定義することができる。最小輝度とは黒表示時の輝度である。一般的な視聴環境を想定した液晶テレビの場合、0.5cd/m2以下の最小輝度が要求基準になる。これを越える値では色再現性が低下する。最大輝度とは白表示時の輝度である。一般的な視聴環境を想定した液晶テレビの場合、表示装置は、最大輝度が450〜550cd/m2の範囲のものが用いられる。これを下回ると、表示が暗くなるため液晶テレビの視認性が低下する。
【0047】
大型表示素子を用いた液晶テレビ用の表示装置として求められる性能は、コントラスト比が1000:1以上で、最大輝度が500cd/m2以上である。これが表示装置の「要求性能」と考えられる。図4のライン1(T<42.3%)及びライン2(T≧42.3%)は、この表示装置の要求性能を達成するために必要とされる偏光膜の偏光性能の限界値を表している。これは、図5に示すバックライト側と視認側との偏光膜の組み合わせに基づく、次のようなシミュレーションによって求められたラインである。
【0048】
液晶テレビ用の表示装置のコントラスト比と最大輝度は、光源(バックライト)の光量と、バックライト側と視認側に配置される2つの偏光膜の透過率、液晶表示パネルの透過率、バックライト側と視認側の2つの偏光膜の偏光度、液晶表示パネルの偏光解消率に基づいて算出できる。一般的な液晶テレビの光源の光量(10,000cd/m2)、液晶表示パネルの透過率(13%)、及び偏光解消率(0.085%)の基礎数値を用い、異なる幾つかの偏光性能の偏光膜を組み合わせ、それぞれの組み合わせ毎に液晶テレビ用の表示装置のコントラスト比と最大輝度を算出することによって、要求性能を満足する図4のライン1及びライン2を導き出すことができる。すなわち、ライン1及びライン2に達しない偏光膜を使用すると、表示装置のコントラスト比が1000:1以下で、最大輝度が500cd/m2以下になることが示される。算出に用いた式は以下の通りである。
【0049】
式(1)は、表示装置のコントラスト比を求める式であり、式(2)は、表示装置の最大輝度を求める式である。式(3)は偏光膜の二色比を求める式である。

式(1):CRD =Lmax/Lmin
式(2):Lmax=(LB×Tp−(LB/2 ×k1B×DP/100)/2×(k1F-k2F))×Tcell/100
式(3):DR =Ak2/Ak1=log(k2)/log(k1)=log(Ts/100×(1-P/100)/TPVA)/log(Ts/100×(1+P/100)/ TPVA)

ここで、
Lmin=(LB×Tc+(LB /2 ×k1B×DP/100)/2×(k1F-k2F))×Tcell/100
Tp=(k1B×k1F+ k2B×k2F)/2×TPVA
Tc=(k1B×k2F+ k2B×k1F)/2×TPVA
k1=Ts/100×(1+P/100)/TPVA
k2=Ts/100×(1- P/100)/TPVA

CRD :表示装置のコントラスト比
Lmax :表示装置の最大輝度
Lmin :表示装置の最小輝度
DR :偏光膜の二色比
Ts :偏光膜の単体透過率
P :偏光膜の偏光度
k1 :第1主透過率
k2 :第2主透過率
k1F :視認側偏光膜のk1
k2F :視認側偏光膜のk2
k1B :バックライト側偏光膜のk1
k2B :バックライト側偏光膜のk2
Ak1 :偏光膜の透過軸方向の吸光度
Ak2 :偏光膜の吸収軸方向の吸光度
LB :光源の光量 (10000cd/m2)
Tc :偏光膜の直交透過率(視認側偏光板とバックライト側偏光板の組合せ)
Tp :偏光膜の平行透過率(視認側偏光板とバックライト側偏光板の組合せ)
Tcell :セルの透過率(13%)
DP :セルの偏光解消率(0.085%)
TPVA :ヨウ素が吸着していないPVAフィルムの透過率 (0.92)。
【0050】
図4のライン1(T<42.3%)は、図5において偏光膜3と表示される直線上に位置する偏光膜の偏光性能によって導き出される。図5の偏光膜3に属する偏光膜のうち、偏光性能が座標(T、P)=(42.1%、99.95%)で表される点D(白丸)の偏光膜Dは、これを液晶テレビ用の表示装置のバックライト側と視認側の両側に用いた場合に、要求性能を達成することができる。
【0051】
ところが、同じ偏光膜3に属する偏光膜であっても、単体透過率の低い(より暗い)領域にある、3つの偏光膜A(T=40.6%、P=99.998%)、B(T=41.1%、P=99.994%)、又はC(T=41.6%,P=99.98%)をバックライト側と視認側の両側に用いた場合、いずれも、要求性能を達成することができない。バックライト側と視認側のいずれか一方の片側偏光膜として偏光膜A、B、又はCを用いた場合、要求性能を達成するためには、例えば、他方の片側偏光膜として、偏光膜4に属する偏光膜E、偏光膜5に属する偏光膜F、又は偏光膜7に属するGのような偏光膜3に比べて、単体透過率が高く、少なくとも偏光度が99.9%以上の偏光性能の優れた偏光膜を用いることが必要になる。
【0052】
図5に示す偏光膜1〜7の偏光性能は、式(3)に基づき算出される。式(3)を用いることで偏光膜の偏光性能の指標となる二色比(DR)から単体透過率Tと偏光度Pとを算出することができる。二色比とは偏光膜の吸収軸方向の吸光度を透過軸方向の吸光度で除した値である。この数値が高いほど偏光性能が優れていることを表している。例えば、偏光膜3は、二色比が約94となる偏光性能を持つ偏光膜として算出される。この値を下回る偏光膜は要求性能に達しないということになる。
【0053】
また、バックライト側と視認側のいずれか一方の側の偏光膜として偏光膜3に比べ偏光性能の劣る、例えば、偏光膜1に属する偏光膜H(41.0%、99.95%)又は偏光膜2に属する偏光膜J(42.0%、99.9%)を用いた場合、式(1)(2)から明らかになるように、要求性能を達成するためには、例えば、他方の側の偏光膜として偏光膜6に属する偏光膜I(43.2%、99.95%)又は偏光膜7に属する偏光膜K(42.0%、99.998%)のような、偏光膜3に比べ、偏光性能がより優れた偏光膜を用いなければならない。
【0054】
液晶テレビ用の表示装置の要求性能を達成するためには、バックライト側と視認側のいずれか一方の側の偏光膜の偏光性能が、少なくとも偏光膜3よりも優れていなければならない。図4のライン1(T<42.3%)は、その下限値を示す。他方、図4のライン2(T≧42.3%)は、偏光度Pの下限値を示す。バックライト側と視認側のいずれか一方の側の偏光膜として偏光度Pが99.9%以下の偏光膜を用いた場合には、他方の側の偏光膜として偏光性能がいかに優れた偏光膜を用いても、要求性能を達成することができない。
【0055】
結論としては、大型表示素子を用いた液晶テレビ用の表示装置として求められる偏光性能を達成しようとする場合には、バックライト側と視認側のいずれか一方の側の偏光膜の偏光性能が少なくともライン1(T<42.3%)及びライン2(T≧42.3%)で表される限界を越える領域にある偏光膜、より具体的には、偏光膜3より優れた偏光性能を有し、偏光度が99.9%以上の偏光膜であることが望まれる条件となる。
【0056】
これに対して、有機EL表示装置に使用される偏光膜は、主として1/4波長位相差フィルムと組み合わされて円偏光を形成することにより、内部反射光を遮断する目的に使用されることが多く、この場合には、1枚の偏光膜が使用されることになる。したがって、2枚の偏光膜を使用する透過型液晶表示装置の場合と異なり、有機EL表示装置に使用される偏光膜は、先に述べたように、求められる光学的要求特性が異なったものとなり、単体透過率をTとし、偏光度をPとしたとき、T≧42.5及びP≧99.5で表される条件となる。図4に有機EL表示装置に使用される偏光膜の要求特性を想像線で示す。
【0057】
[偏光膜の製造に関する実施例]
本発明の光学的フィルム積層体に使用される偏光膜の実施例として、実施例1〜18を示す。これらの実施例において製造される偏光膜の製造条件を、図27及び図28に示す。さらに、対比される例として、参考例及び比較例も作成した。図29は、第1段の空中高温延伸後における実施例1〜18及び参考例1〜3による延伸積層体のそれぞれについて、PET樹脂基材の配向関数値を示す表である。
【0058】
[実施例1]
非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材として、イソフタル酸を6mol%共重合させたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、「非晶性PET」という)の連続ウェブの基材を作製した。非晶性PETのガラス転移温度は75℃である。連続ウェブの非晶性PET基材とポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)層からなる積層体を以下のように作製した。ちなみにPVAのガラス転移温度は80℃である。
【0059】
厚み200μmの非晶性PET基材と、重合度1000以上、ケン化度99%以上のPVA粉末を水に溶解した4〜5%濃度のPVA水溶液とを準備した。次に、上記した厚み200μmの非晶性PET基材にPVA水溶液を塗布し、50〜60℃の温度で乾燥し、非晶性PET基材上に厚み7μmのPVA層を製膜した。以下、これを「非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体」又は「7μm厚のPVA層を含む積層体」又は単に「積層体」という。
【0060】
7μm厚のPVA層を含む積層体を、空中補助延伸及びホウ酸水中延伸の2段延伸工程を含む以下の工程を経て、3μm厚の偏光膜を製造した。第1段の空中補助延伸工程によって、7μm厚のPVA層を含む積層体を非晶性PET基材と一体に延伸し、5μm厚のPVA層を含む延伸積層体を生成した。以下、これを「延伸積層体」という。具体的には、延伸積層体は、7μm厚のPVA層を含む積層体を130℃の延伸温度環境に設定されたオーブンに配備された延伸装置にかけ、延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸したものである。この延伸処理によって、延伸積層体内のPVA層は、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層へと変化した。
【0061】
次に、染色工程によって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成した。以下、これを「着色積層体」という。具体的には、着色積層体は、延伸積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させたものである。本工程において、染色液は、水を溶媒として、ヨウ素濃度を0.12〜0.30重量%の範囲内とし、ヨウ化カリウム濃度を0.7〜2.1重量%の範囲内とした。ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1対7である。
【0062】
ちなみに、ヨウ素を水に溶解するにはヨウ化カリウムを必要とする。より詳細には、ヨウ素濃度0.30重量%、ヨウ化カリウム濃度2.1重量%の染色液に延伸積層体を60秒間浸漬することによって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成した。実施例1においては、ヨウ素濃度0.30重量%でヨウ化カリウム濃度2.1重量%の染色液への延伸積層体の浸漬時間を変えることによって、最終的に生成される偏光膜の単体透過率を40〜44%になるようにヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする種々の着色積層体を生成した。
【0063】
さらに、第2段のホウ酸水中延伸工程によって、着色積層体を非晶性PET基材と一体にさらに延伸し、3μm厚の偏光膜を構成するPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。以下、これを「光学フィルム積層体」という。具体的には、光学フィルム積層体は、着色積層体をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温範囲60〜85℃のホウ酸水溶液に設定された処理装置に配備された延伸装置にかけ、延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸したものである。より詳細には、ホウ酸水溶液の液温は65℃である。それはまた、ホウ酸含有量を水100重量%に対して4重量%とし、ヨウ化カリウム含有量を水100重量%に対して5重量%とした。
【0064】
本工程においては、ヨウ素吸着量を調整した着色積層体をまず5〜10秒間ホウ酸水溶液に浸漬した。しかる後に、その着色積層体をそのまま処理装置に配備された延伸装置である周速の異なる複数の組のロール間に通し、30〜90秒かけて延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸した。この延伸処理によって、着色積層体に含まれるPVA層は、吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向した3μm厚のPVA層へと変化した。このPVA層が光学フィルム積層体の偏光膜を構成する。
【0065】
以上のように実施例1は、まず、非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された偏光膜を構成する3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成することができた。
【0066】
光学フィルム積層体の製造に必須の工程ではないが、洗浄工程によって、光学フィルム積層体をホウ酸水溶液から取り出し、非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に付着したホウ酸をヨウ化カリウム水溶液で洗浄した。しかる後に、洗浄された光学フィルム積層体を60℃の温風による乾燥工程によって乾燥した。なお洗浄工程は、ホウ酸析出などの外観不良を解消するための工程である。
【0067】
次に、貼合せ及び/又は転写工程によって、非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に接着剤を塗布しながら、80μm厚のTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムを貼合せた後、非晶性PET基材を剥離し、3μm厚のPVA層を80μm厚のTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムに転写した。
【0068】
[実施例2]
実施例2は、実施例1の場合と同様に、まず、非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を生成し、次に、7μm厚のPVA層を含む積層体を空中補助延伸によって倍率が1.8倍になるように延伸した延伸積層体を生成し、しかる後に、延伸積層体を、液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによって、ヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を生成した。実施例2は、実施例1とは異なる以下の架橋工程を含む。それは、着色積層体を40℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬することによって、ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士に架橋処理を施す工程である。本工程のホウ酸架橋水溶液は、ホウ酸含有量を水100重量%に対して3重量%とし、ヨウ化カリウム含有量を水100重量%に対して3重量%とした。
【0069】
実施例2の架橋工程は、少なくとも3つの技術的作用を求めたものである。第1は、後工程のホウ酸水中延伸において着色積層体に含まれる薄膜化されたPVA層を溶解させないようにした不溶化作用である。第2は、PVA層に着色されたヨウ素を溶出させないようにした着色安定化作用である。第3は、PVA層の分子同士を架橋することによって結節点を生成するようにした結節点生成作用である。
【0070】
実施例2は、次に、架橋された着色積層体を、実施例1の延伸温度65℃より高い75℃のホウ酸水中延伸浴に浸漬することによって、実施例1の場合と同様に、延伸倍率が3.3倍になるように延伸し、光学フィルム積層体を生成した。また実施例2の洗浄工程、乾燥工程、貼合せ及び/又は転写工程は、いずれも実施例1の場合と同様である。
【0071】
なお、ホウ酸水中延伸工程に先立つ架橋工程に求められる技術的作用をより明確にするために、実施例1の架橋されていない着色積層体を延伸温度70〜75℃のホウ酸水中延伸浴に浸漬した場合、着色積層体に含まれるPVA層は、ホウ酸水中延伸浴において溶解し、延伸することができなかった。
【0072】
[実施例3]
実施例3は、実施例1の場合と同様に、まず、非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を生成し、次に、7μm厚のPVA層を含む積層体を空中補助延伸によって倍率が1.8倍になるように延伸した延伸積層体を生成した。実施例3は、実施例1とは異なる以下の不溶化工程を含む。それは、延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA分子が配向されたPVA層を不溶化する工程である。本工程のホウ酸不溶化水溶液は、ホウ酸含有量を水100重量%に対して3重量%とした。実施例3の不溶化工程に求められる技術的作用は、少なくとも後工程の染色工程において、延伸積層体に含まれるPVA層を溶解させないようにした不溶化である。
【0073】
実施例3は、次に、不溶化された延伸積層体を、実施例1の場合と同様に、液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによって、ヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を生成した。しかる後に、生成された着色積層体を実施例1の延伸温度である65℃より高い延伸温度である75℃のホウ酸水中延伸浴に浸漬することによって、実施例1の場合と同様に、延伸倍率が3.3倍になるように延伸し、光学フィルム積層体を生成した。また実施例3の洗浄工程、乾燥工程、貼合せ及び/又は転写工程は、いずれも実施例1の場合と同様である。
【0074】
なお、染色工程に先立つ不溶化工程に求められる技術的条件及び作用をより明確にするために、まず、実施例1の不溶化されていない延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、生成された着色積層体を延伸温度70〜75℃のホウ酸水中延伸浴に浸漬した方法を遂行した。この場合、着色積層体に含まれるPVA層は、実施例2に示したように、ホウ酸水中延伸浴において溶解し、延伸することができなかった。
【0075】
次に、水を溶媒として、ヨウ素濃度を0.12〜0.30重量%の範囲内とした染色液のヨウ素濃度を0.12〜0.25重量%とし、他の条件をそのままの染色液に、実施例1の不溶化されていない延伸積層体を浸漬した方法を遂行した。この場合、延伸積層体に含まれるPVA層は、染色浴において溶解し、染色不能であった。ところが、実施例3の不溶化された延伸積層体を用いた場合には、染色液のヨウ素濃度を0.12〜0.25重量%であっても、PVA層は溶解することなく、PVA層への染色は可能であった。
【0076】
染色液のヨウ素濃度を0.12〜0.25%であってもPVA層への染色が可能な実施例3においては、延伸積層体の染色液への浸漬時間を一定にし、染色液のヨウ素濃度及びヨウ化カリウム濃度を実施例1に示した一定範囲内で変化させることによって、最終的に生成される偏光膜の単体透過率を40〜44%になるようにヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする着色積層体を種々生成した。
【0077】
[実施例4]
実施例4は、実施例1の製造工程に実施例3の不溶化工程と実施例2の架橋工程を加えた製造工程によって生成した光学フィルム積層体である。まず、非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を生成し、次に、7μm厚のPVA層を含む積層体を空中補助延伸によって延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸し、延伸積層体を生成した。実施例4は、実施例3の場合と同様に、生成された延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬する不溶化工程によって、延伸積層体に含まれるPVA分子が配向されたPVA層を不溶化した。実施例4はさらに、不溶化されたPVA層を含む延伸積層体を、実施例3の場合と同様に、液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによってヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を生成した。
【0078】
実施例4は、実施例2の場合と同様に、生成された着色積層体を40℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬する架橋工程によって、ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋した。実施例4はさらに、架橋された着色積層体を、実施例1の延伸温度65℃より高い75℃のホウ酸水中延伸浴に5〜10秒間浸漬し、実施例2の場合と同様に、延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸し、光学フィルム積層体を生成した。また実施例4の洗浄工程、乾燥工程、貼合せ及び/又は転写工程は、いずれも実施例1から3の場合と同様である。
【0079】
また、実施例4は、実施例3の場合におけると同様に、染色液のヨウ素濃度を0.12〜0.25重量%であっても、PVA層は溶解することはない。実施例4においては、延伸積層体の染色液への浸漬時間を一定にし、染色液のヨウ素濃度及びヨウ化カリウム濃度を実施例1に示した一定範囲内で変化させることによって、最終的に生成される偏光膜の単体透過率を40〜44%になるようにヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする着色積層体を種々生成した。
【0080】
以上のように、実施例4は、まず、非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を生成し、次に、7μm厚のPVA層を含む積層体を空中補助延伸によって延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸した延伸積層体を生成した。生成された延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬することによって延伸積層体に含まれるPVA層を不溶化した。不溶化されたPVA層を含む延伸積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによって不溶化されたPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成した。ヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を40℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬することによって、ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋した。架橋されたPVA層を含む着色積層体をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温75℃のホウ酸水中延伸溶に5〜10秒間浸漬し、しかる後に、ホウ酸水中延伸によって倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸した光学フィルム積層体を生成した。
【0081】
実施例4は、このように空中高温延伸及びホウ酸水中延伸からなる2段延伸と染色浴への浸漬に先立つ不溶化及びホウ酸水中延伸に先立つ架橋からなる前処理とによって、非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によってPVA分子に確実に吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された偏光膜を構成する3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を安定的に生成することができた。
【0082】
[実施例5]
実施例5は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は非晶性PET基材に製膜されたPVA層の厚みにある。実施例4は、7μm厚のPVA層で最終的に光学フィルム積層体に含まれるPVA層が3μm厚であった。これに対して、実施例5は、12μm厚のPVA層で最終的に光学フィルム積層体に含まれるPVA層が5μm厚であった。
【0083】
[実施例6]
実施例6は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は非晶性PET基材に用いた重合モノマーにある。実施例4は、イソフタル酸をPETに共重合させた非晶性PET基材を用いた。これに対して、実施例6は、PETに対して変性基として1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合させた非晶性PET基材を用いた。
【0084】
[実施例7]
実施例7は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、総延伸倍率が6倍又は6倍に近い値になるように空中補助延伸及びホウ酸水中延伸のそれぞれの延伸倍率を変化させたことにある。実施例4は、空中補助延伸及びホウ酸水中延伸のそれぞれの延伸倍率が1.8倍及び3.3倍とした。これに対して、実施例7は、それぞれの延伸倍率が1.2倍及び4.9倍とした。ところで実施例4の総延伸倍率が5.94倍であった。これに対して実施例7の総延伸倍率が5.88倍であった。これは、ホウ酸水中延伸において、延伸倍率が4.9倍以上に延伸することができなかったことによる。
【0085】
[実施例8]
実施例8は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、総延伸倍率が6倍になるように空中補助延伸及びホウ酸水中延伸のそれぞれの延伸倍率を変化させたことにある。実施例8は、それぞれの延伸倍率が1.5倍及び4.0倍とした。
【0086】
[実施例9]
実施例9は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、総延伸倍率が6倍になるように空中補助延伸及びホウ酸水中延伸のそれぞれの延伸倍率を変化させたことにある。実施例9は、それぞれの延伸倍率が2.5倍及び2.4倍とした。
【0087】
[実施例10]
実施例10は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、実施例4の場合、空中補助延伸の延伸温度を130℃に設定したのに対して、実施例10では、空中補助延伸の延伸温度を95℃としたことにある。
【0088】
[実施例11]
実施例11は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、実施例4の場合、空中補助延伸の延伸温度を130℃に設定したのに対して、実施例11では、空中補助延伸の延伸温度を110℃としたことにある。
【0089】
[実施例12]
実施例12は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、実施例4の場合、空中補助延伸の延伸温度を130℃に設定したのに対して、実施例12では、空中補助延伸の延伸温度を150℃としたことにある。
【0090】
[実施例13]
実施例13は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、空中補助延伸の延伸倍率が1.8倍でホウ酸水中延伸の延伸倍率を2.8倍に変化させたことにある。実施例13の場合には、そのことによって、総延伸倍率は、実施例4の場合の約6倍(正確には5.94倍)のに対して、約5倍(正確には5.04倍)となった。
【0091】
[実施例14]
実施例14は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、空中補助延伸の延伸倍率が1.8倍でホウ酸水中延伸の延伸倍率を3.1倍に変化させたことにある。実施例14の場合には、そのことによって、総延伸倍率は、実施例4の場合の約6倍(正確には5.94倍)のに対して、約5.5倍(正確には5.58倍)となった。
【0092】
[実施例15]
実施例15は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、空中補助延伸の延伸倍率が1.8倍でホウ酸水中延伸の延伸倍率を3.6倍に変化させたことにある。実施例15の場合、そのことによって、総延伸倍率は、実施例4の場合の約6倍(正確には5.94倍)のに対して、約6.5倍(正確には6.48倍)となった。
【0093】
[実施例16]
実施例16は、以下の相違点を除き、実施例4と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、空中補助延伸の延伸方法にある。実施例4においては、空中補助延伸によって、延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸した。これに対して、実施例16においては、固定端一軸の空中補助延伸によって、延伸倍率が1.8倍になるようにした。
【0094】
[実施例17]
実施例17は、以下の相違点を除き、実施例16と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。この場合の空中補助延伸は、延伸倍率が1.8倍であるが、相違点は、ホウ酸水中延伸の延伸倍率を3.9倍に変化させたことにある。実施例17の場合には、そのことによって、総延伸倍率は、実施例16の場合における約6倍(正確には5.94倍)に対して、約7倍(正確には7.02倍)となった。
【0095】
[実施例18]
実施例18は、以下の相違点を除き、実施例16と同様の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、空中補助延伸の延伸倍率が1.8倍でホウ酸水中延伸の延伸倍率を4.4倍に変化させたことにある。実施例18の場合、そのことによって、総延伸倍率は、実施例16の場合の約6倍(正確には5.94倍)に対して、約8倍(正確には7.92倍)となった。
【0096】
[比較例1]
比較例1は、実施例4と同様の条件で、200μm厚の非晶性PET基材にPVA水溶液を塗布し、乾燥させて非晶性PET基材に7μm厚のPVA層を製膜した積層体を生成した。次に、延伸温度を130℃に設定した空中高温延伸によって、7μm厚のPVA層を含む積層体を延伸倍率が4.0倍になるように自由端一軸に延伸した延伸積層体を生成した。この延伸処理によって、延伸積層体に含まれるPVA層は、PVA分子が配向された3.5μm厚のPVA層へと変化した。
【0097】
次に、延伸積層体は染色処理され、PVA分子が配向された3.5μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体が生成された。具体的には、着色積層体は、延伸積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させたものである。このように、PVA分子が配向されたPVA層へのヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする着色積層体を種々生成した。
【0098】
さらに、着色積層体は架橋処理される。具体的には、液温が40℃で、ホウ酸3%、ヨウ化カリウム3%からなるホウ酸架橋水溶液に60秒間、浸漬することによって着色積層体に架橋処理を施した。比較例1は、架橋処理が施された着色積層体が実施例4の光学フィルム積層体に相当する。したがって、洗浄工程、乾燥工程、貼合せ及び/又は転写工程は、いずれも実施例4の場合と同様である。
【0099】
[比較例2]
比較例2は、比較例1の延伸積層体を比較例1と同様の条件で、延伸倍率が4.5倍、5.0倍、6.0倍になるように延伸した延伸積層体を生成した。比較表は、比較例1と比較例2とを含めた、200μm厚の非晶性PET基材と該非晶性PET基材に製膜されたPVA層とに発生した現象を示したものである。これにより、延伸温度130℃の空中高温延伸による延伸倍率が4.0倍を限度とすることを確認した。
【0100】
[延伸に関連する技術的背景]
図18〜図22は、いずれも実験に基づいて表したものである。まず、図18を参照すると、図18は、結晶性PETと非晶性PETとPVA系樹脂のそれぞれの延伸温度と延伸可能倍率との相対関係を実験に基づいて表した図である。
【0101】
図18において、太線は、延伸温度の変化にともなう非晶性PETの延伸可能倍率の変化を表す。非晶性PETは、Tgが約75℃であり、これ以下の温度で延伸することはできない。図から分かるように、空中高温の自由端一軸延伸によると約110℃を越える点で7.0倍以上にまで延伸できる。一方、図18の細線は、延伸温度の変化にともなう結晶性PETの延伸可能倍率の変化を表す。結晶性PETは、Tgが約80℃であり、これ以下の温度では延伸することができない。
【0102】
次に、図19を参照すると、図は、ポリエチレンテレフタレート(PET)のTgと融点Tmとの間での温度変化にともなう結晶性PETと非晶性PETのそれぞれの結晶化速度の変化を表す。図19において、80℃から110℃前後のアモルファス状態にある結晶性PETは120℃前後で急速に結晶化することが理解される。
【0103】
また、図18から明らかなように、結晶性PETにおいては、空中高温の自由端一軸延伸による延伸可能倍率は、4.5〜5.5倍が上限となる。しかも、適用され得る延伸温度は、極めて限定的で、約90℃から約110℃までの温度範囲である。
【0104】
図29に、結晶性PETを用いて空中高温の自由端一軸延伸を行った例を、参考例1〜3として示す。これらは、いずれも、厚み200μmの結晶性PET基材に、厚み7μmのPVA層を製膜した積層体を、空中高温延伸することによって生成された、厚み3.3μmの偏光膜である。それぞれの延伸温度には違いがあり、延伸温度は、参考例1が110℃、参考例2が100℃、参考例3が90℃である。ここで注目すべきは、延伸可能倍率である。参考例1の延伸倍率の限界は4.0倍であり、参考例2及び3は4.5倍である。最終的には積層体自体が破断したことによって、これらを越える延伸処理が不可能であった。しかしながら、この結果には、結晶性PET基材に製膜されたPVA系樹脂層自体の延伸可能倍率が影響を及ぼしている可能性を否定することができない。
【0105】
そこで図18を参照すると、この図における破線は、PVA系樹脂に属するPVAの延伸可能倍率を表す。PVA系樹脂のTgは75〜80℃であり、これ以下でPVA系樹脂からなる単層体を延伸することはできない。図18から明らかなように、空中高温の自由端一軸延伸によると、PVA系樹脂からなる単層体の延伸可能倍率は5.0倍を限度とする。このことにより、本発明者らは、以下のことを明らかにすることができた。それは、結晶性PET及びPVA系樹脂のそれぞれの延伸温度及び延伸可能倍率の関係から、結晶性PET基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体の空中高温の自由端一軸延伸による延伸可能倍率は、90〜110℃の延伸温度範囲において4.0〜5.0倍が限度であるということである。
【0106】
次に、非晶性PET基材上にPVA系樹脂層を塗布形成した積層体を、空中高温のもとで、自由端一軸延伸した事例を、以下の表1に比較例1及び2として示す。非晶性PET基材に延伸温度による限界はない。比較例1は、200μm厚の非晶性PET基材に製膜された7μm厚のPVA系樹脂層を含む積層体を、延伸温度を130℃に設定した空中高温の自由端一軸延伸によって生成された偏光膜である。このときの延伸倍率は4.0倍であった。
【0107】
表1を参照すると、比較例2は、比較例1と同様に、200μm厚の非晶性PET基材に製膜された7μm厚のPVA系樹脂層を、延伸倍率が4.5倍、5.0倍、6.0倍になるようにそれぞれを延伸することによって生成された偏光膜である。いずれの比較例においても、表1に示した通り、非晶性PET基材にフィルムの面内で延伸の不均一が生じるか、破断が生じ、一方で、延伸倍率4.5倍でPVA系樹脂層に破断が生じている。これにより、延伸温度130℃の空中高温延伸によるPVA系樹脂層の延伸倍率の限界が4.0倍であることを確認した。
【表1】

【0108】
参考例1〜3はいずれも、延伸温度に違いはあるが、結晶性PET基材にPVA系樹脂層を製膜した積層体に対し、4.0〜4.5倍の延伸処理を施すことによってPVA分子を配向させ、薄膜化したPVA系樹脂層に、ヨウ素を吸着させて着色積層体を生成したものである。具体的には、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA系樹脂層の単体透過率が40〜44%になるように、延伸積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA系樹脂層にヨウ素を吸着させた。また薄膜化されたPVA系樹脂層へのヨウ素吸着量を調整することによって単体透過率Tと偏光度Pとを異にする種々の偏光膜を生成した。
【0109】
図26を参照すると、図26におけるライン1及びライン2は、本発明の光学的表示装置に使用される偏光膜に要求される光学特性を規定する線であり、偏光度Pと透過率Tの関係が、これらライン1、2より上にある偏光膜は、要求される光学特性を満足する。図26では、これらライン1、2と対比して、参考例1〜3の偏光膜の光学特性を表している。図から分かるように、参考例1〜3の偏光膜は、いずれも、要求される光学特性を満足しない。その原因は、結晶性PET基材に製膜されたPVA系樹脂層は、空中高温延伸によって、ある程度PVA分子が配向されるが、その一方で、空中高温延伸は、PVA分子の結晶化を促進し、非晶部分の配向を阻害しているものと推定される。
【0110】
そこで、本発明者らは、本発明に先立って、PCT/JP2010/001460に係る国際出願に開示される偏光膜及びその製造方法を開発した。これは、Tg以下の延伸温度であってもPET基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体を延伸することができる、という水の可塑剤機能に着目した知見に基づいたものである。この方法により製造される偏光膜の一例を、ここでは比較例3とする。この方法によれば、PET基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体は、延伸倍率5.0倍まで延伸できる。
【0111】
本発明者らは、その後さらに研究を進め、延伸倍率の限界が5.0倍となる原因は、PET基材が結晶性PETによるものであることを確認した。PET基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体はTg以下のホウ酸水溶液で延伸されるため、PET基材が結晶性であるか非晶性であるかは延伸作用に大きく影響しないとの認識であったが、非晶性PETを用いた場合には、積層体を延伸倍率5.5倍まで延伸できることを見出した。この場合、非晶性PETを基材として使用し、比較例3に示す偏光膜の製造方法と同様の方法を適用する場合において、延伸倍率の限界が5.5倍であることの原因は、非結晶性のPET基材による延伸倍率の制限が影響しているものと推定される。
【0112】
比較例1については、単体透過率Tと偏光度Pを異にする種々の偏光膜を生成した。図26に、参考例1〜3とともに、それらの光学特性を示す。
【0113】
図20は、本発明者らが、こうした研究結果を基に着想を得た、2段延伸における、空中高温延伸の延伸倍率と総合延伸倍率(以下、「総延伸倍率」という。)との関係を表したものである。横軸は、自由端一軸延伸による延伸温度130℃の空中延伸における延伸倍率である。縦軸の総延伸倍率は、以下に述べる自由端一軸空中高温延伸を含む2段階の延伸処理によって、空中高温延伸前の長さである元長を1として、最終的に元長が何倍延伸されたかを表す総延伸倍率である。例えば、延伸温度130℃の空中高温延伸による延伸倍率が2倍であって、次の延伸倍率が3倍であれば、総延伸倍率は6倍(2×3=6)になる。空中高温延伸に続く第2段の延伸工程は、延伸温度65℃のホウ酸水溶液中における自由端一軸延伸(以下、ホウ酸水溶液に浸漬させながら延伸する処理を「ホウ酸水中延伸」という。)である。この二つの延伸方法を組み合わせることによって、図20に示す結果を得ることができた。
【0114】
図20の実線は、非晶性PETの延伸可能倍率を表している。非晶性PETの総延伸倍率は、空中高温延伸せずに、直接ホウ酸水中延伸をした場合、すなわち空中高温延伸の倍率が1倍のときには、5.5倍が限度である。これ以上の延伸を行うと、非晶性PETは破断する。しかしながら、この値は、非晶性PETの最小延伸倍率に相当する。非晶性PETの総延伸倍率は、空中高温延伸時の延伸倍率が大きくなるほど大きくなり、延伸可能倍率は、10倍を越える。
【0115】
これに対して、図20の破線は、非晶性PETに製膜されたPVA系樹脂層の延伸可能倍率を表している。空中高温延伸せずに、直接ホウ酸水中延伸した場合には、PVA系樹脂層の総延伸倍率は最大倍率を示す7倍である。しかしながら、空中高温延伸時の延伸倍率が大きくなるほどPVA系樹脂層の総延伸倍率は小さくなり、空中高温延伸時の延伸倍率が3倍の点では、PVA系樹脂層の総合延伸倍率が6倍を下回る。PVA系樹脂層の総合延伸倍率を6倍にしようとすると、PVA系樹脂層が破断する。図20から明らかなように、非晶性PET基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体を延伸できなくなる原因は、空中高温の延伸倍率の大きさに応じて、非晶性PET基材に起因するものからPVA系樹脂層に起因するものに移ることにある。因みに、PVAの空中延伸倍率は4倍までであり、それ以上は延伸不能である。この倍率が、PVAの総延伸倍率に相当するものと推定される。
【0116】
ここで、図21を参照する。図21は、結晶性PETと非晶性PET、及びPVA系樹脂について、空中高温延伸とホウ酸水中延伸の2段延伸を行った場合における総延伸可能倍率を、空中高温延伸の延伸温度との関係で示すもので、実験に基づくデータに従って描かれたものである。図18は、結晶性PETと非晶性PET及びPVA系樹脂について、空中高温延伸の延伸温度を横軸にとり、空中高温延伸の延伸可能倍率を縦軸とって表すものである。図21の図18との違いは、横軸が2倍の空中高温延伸のときの延伸温度を横軸にとり、空中高温延伸とホウ酸水中延伸との総延伸可能倍率を縦軸とって表したことにある。
【0117】
本発明において使用するのに適した偏光膜の製造方法は、後述されるように、空中高温延伸とホウ酸水中延伸との2段階の延伸工程の組み合わせからなる。2段階延伸工程の組み合わせは、単純に想到できるものではない。本発明者らが長期間にわたって鋭意研究を重ねた結果、この組み合わせによって初めて、以下に述べる2つの技術的課題を同時に解決することができる、という驚くべき結果に到達するに至ったのである。熱可塑性樹脂基材にPVA系樹脂層を形成して延伸及び染色を行うことにより偏光膜を製造しようとする試みにおいては、これまで解決不能と考えられてきた2つの技術的課題が存在する。
【0118】
第1の技術的課題は、PVA系樹脂の配向性の向上に影響をもつ延伸倍率及び延伸温度が、その上にPVA系樹脂を形成する熱可塑性樹脂基材によって大きく制約を受けることである。
【0119】
第2の技術的課題は、延伸倍率及び延伸温度の制約という問題を克服できても、PVA系樹脂及び熱可塑性樹脂基材として使用されるPETなどでは、結晶性樹脂の結晶化と延伸可能性とが対立する物性であるため、PVA系樹脂の延伸がPVA系樹脂の結晶化によって制限されることである。
【0120】
第1の課題は以下の通りである。熱可塑性樹脂基材を用いて偏光膜を製造する場合における制約は、図18に示すように、延伸温度がPVA系樹脂のTg(約75〜80℃)以上であり、延伸倍率が4.5〜5.0倍であるというPVA系樹脂の特性に起因する。熱可塑性樹脂基材として結晶性PETを用いると、延伸温度が90〜110℃にさらに限定される。積層体の空中高温延伸によって、その積層体に含まれる熱可塑性樹脂基材に形成されたPVA系樹脂層を薄膜化した偏光膜は、こうした制限を逃れ難いものと考えられてきた。
【0121】
そのため、本発明者らは、水の可塑剤機能に着目して、空中高温延伸に代わることができるホウ酸水中延伸方法を提示した。しかしながら、延伸温度が60〜85℃のホウ酸水中延伸によっても、結晶性PETを用いると、延伸倍率の限界が5.0倍となり、非晶性PETを用いた場合でも、延伸倍率の限界が5.5倍という、熱可塑性樹脂基材に起因する制約を逃れることができなかった。このことにより、PVA分子の配向性向上が制限され、薄膜化された偏光膜の光学特性も限定される結果となった。これが第1の技術的課題である。
【0122】
第1の技術的課題の解決手段は、図22によって説明することができる。図22は、2つの関連図からなる。一つは、熱可塑性樹脂基材として用いられるPETの配向性を表す図であり、他の一つはPETの結晶化度を表す図である。いずれも横軸は、空中高温延伸とホウ酸水中延伸との総延伸倍率を表す。図22の破線は、ホウ酸水中延伸単独による総延伸倍率を表す。PETの結晶化度は、結晶性であるか非晶性であるかに関わりなく、延伸倍率が4〜5倍のところで急上昇する。そのため、ホウ酸水中延伸を適用した場合であっても、延伸倍率は、5倍又は5.5倍が限度であった。ここで配向性が上限となり、延伸張力が急上昇する。その結果、延伸不能となる。
【0123】
これに対して、図22の実線は、延伸温度110℃で延伸倍率が2倍になるように空中高温の自由端一軸延伸を行い、次に延伸温度65℃のホウ酸水中延伸を行った結果を示す。結晶性であるか非晶性であるかに関わりなく、PETの結晶化度は、ホウ酸水中延伸単独の場合と異なり急上昇することはなかった。その結果、総延伸可能倍率は、7倍まで高めることができた。ここで配向性が上限となり延伸張力が急上昇する。これは、図21から明らかなように、第1段の延伸方法として空中高温の自由端一軸延伸を採用した結果である。これに対して、後述されるように、延伸に際して延伸方向に直角な方向の収縮を拘束する、いわゆる固定端一軸延伸法による空中高温延伸を行うと、総延伸可能倍率を8.5倍にすることができる。
【0124】
図22において、熱可塑性樹脂基材として用いられるPETの配向性と結晶化度との関係は、空中高温延伸による補助延伸によって、結晶性であるか非晶性であるかに関わりなくPETの結晶化を抑制できることを確認した。しかしながら、補助延伸温度とPETの配向性との関係を示す図23を参照すると、熱可塑性樹脂基材として結晶性PETを用いた場合、補助延伸後の結晶性PETの配向性は、90℃では0.30以上、100℃では0.20以上、110℃でも0.10以上である。PETの配向性が0.10以上になると、ホウ酸水溶液中における第2段目の延伸において、延伸張力が上昇し、延伸装置にかかる負荷が大きく、製造条件としては好ましくない。図23は、熱可塑性樹脂基材としては非晶性PETを用いるのが好ましいことを示しており、さらに、より好ましくは、配向関数が0.10以下の非晶性PETであり、さらに好ましくは0.05以下の非晶性PETであることを示唆するものである。
【0125】
図23は、1.8倍の空中高温延伸における空中延伸温度と熱可塑性樹脂基材として用いられるPETの配向関数との関係を表した実験データである。図23から明らかなように、ホウ酸水溶液中において延伸積層体を高倍率に延伸することが可能になる、配向関数が0.10以下のPETは、非晶性PETになる。特に、配向関数が0.05以下になると、ホウ酸水溶液中における第2段目の延伸の際に、延伸装置に延伸張力が上昇するなどの大きな負荷をかけることなく、安定して高倍率に延伸することができる。この点は、図29に実施例1〜18及び参考例1〜3として示す例における配向関数値からも容易に理解できることである。
【0126】
第1の技術的課題を解決することによって、PET基材に起因する延伸倍率についての制約を取り払い、総延伸を高倍率化することによってPVA系樹脂の配向性を高めることができる。そのことにより、偏光膜の光学特性は、格段と改善される。ところが、本発明者らが達成した光学特性の改善は、これに止まるものではない。これは、第2の技術的課題を解決することによって達成される。
【0127】
第2の技術的課題は以下の通りである。PVA系樹脂や熱可塑性樹脂基材としてのPETなどの結晶性樹脂の特徴の一つは、一般的に加熱や延伸配向によって高分子が配列して結晶化が進む性質を有することである。PVA系樹脂の延伸は、結晶性樹脂であるPVA系樹脂の結晶化によって制限される。結晶化と延伸可能性とは対立する物性であり、PVA系樹脂の結晶化の進展はPVA系樹脂の配向性を阻害する、というのが一般的な認識であった。これが第2の技術的課題である。この技術的課題を解決する手段は、図24によって説明することができる。図24は、2つの実験結果に基づき算出されたPVA系樹脂の結晶化度とPVA系樹脂の配向関数との関係を実線と破線とで表したものである。
【0128】
図24の実線は、以下の試料のPVA系樹脂の結晶化度とPVA系樹脂の配向関数との関係を表したものである。試料は、まず、非晶性PET基材上に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体を6個、同一の条件で生成した。準備した6個のPVA系樹脂層を含む積層体を、それぞれ異なる延伸温度80℃,95℃,110℃、130℃,150℃、及び170℃で、同一の延伸倍率1.8倍となるように、空中高温延伸によって延伸し、PVA系樹脂層を含む延伸積層体を生成した。生成されたそれぞれの延伸積層体に含まれるPVA系樹脂層の結晶化度とPVA系樹脂の配向関数を測定及び解析した。測定方法及び解析方法の詳細は、後述する。
【0129】
図24の破線は、実線の場合と同様に、以下の試料におけるPVA系樹脂の結晶化度とPVA系樹脂の配向関数との関係を表したものである。まず、非晶性PET基材上に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体を6個、同一の条件で生成することにより、試料を準備した。準備した6つのPVA系樹脂層を含む積層体を、それぞれ異なる延伸倍率1.2倍、1.5倍、1.8倍、2.2倍、2.5倍、及び3.0倍となるように、同一の延伸温度130℃で、空中高温延伸によって延伸し、PVA系樹脂層を含む延伸積層体を生成した。生成されたそれぞれの延伸積層体に含まれるPVA系樹脂層の結晶化度とPVA系樹脂の配向関数を後述の方法により測定及び解析した。
【0130】
図24の実線によって、空中高温延伸の延伸温度を高く設定する方が、延伸積層体に含まれるPVA系樹脂層の配向性が向上することが分かる。また、図24の破線によって、空中高温延伸の延伸倍率を高倍率に設定する方が、延伸積層体に含まれるPVA系樹脂層の配向性が向上することが分かる。第2段のホウ酸水中延伸前に、PVA系樹脂の配向性を向上させておくこと、すなわちPVA系樹脂の結晶化度を高めておくことにより、結果としてホウ酸水中延伸後のPVA系樹脂の配向性も高くなる。さらにPVA系樹脂の配向性が高くなることで、結果としてポリヨウ素イオンの配向性も高くなることを、後述される実施例のT−Pグラフからも確認することができる。
【0131】
第1段の空中高温延伸の延伸温度を高く設定しておくか又は延伸倍率をより高倍率に設定しておくことによって、第2段のホウ酸水中延伸によって生成されたPVA系樹脂層のPVA分子の配向性を、より高めることができる、という予期しない優れた結果を得た。
【0132】
図24に示すPVA系樹脂の結晶化度(横軸)を参照する。PVA系樹脂層を含む延伸積層体の染色のための水溶液に浸漬する着色工程において、PVA系樹脂層の溶解などの不具合を生じさせることなく着色積層体を生成するためには、少なくともPVA系樹脂層の結晶化度が27%以上であることが好ましい。そのことによりPVA系樹脂層を溶解させることなく、PVA系樹脂層を染色することができる。またPVA系樹脂層の結晶化度を30%以上に設定することにより、ホウ酸水溶液中における延伸温度をより高温にすることができる。そのことにより着色積層体の安定した延伸を可能とし、偏光膜を安定的に作製することができる。
【0133】
一方、PVA系樹脂層の結晶化度が37%以上になると、染色性が低く染色濃度を濃くしなければならず、使用材料も増加し、染色時間がかかり、生産性が低下するおそれがでてくる。またPVA系樹脂層の結晶化度が40%以上になると、ホウ酸水溶液中での延伸処理においてPVA系樹脂層が破断するなどの不具合が生じるおそれもでてくる。したがって、PVA系樹脂の結晶化度は、27%以上で40%以下となるように設定されることが好ましい。より好ましくは、30%以上で37%以下に設定することである。
【0134】
次に、図24のPVA系樹脂層の配向関数(縦軸)を参照する。非晶性PETの樹脂基材を用いて高機能の偏光膜を作製するためには、少なくともPVA系樹脂層の配向関数が0.05以上であることが好ましい。また、PVA系樹脂層の配向性が0.15以上になると、PVA系樹脂層を含む着色積層体に対するホウ酸水溶液中における延伸倍率を下げることができる。そのことにより広幅の偏光膜の作製が可能になる。
【0135】
一方、PVA系樹脂層の配向関数が0.30以上になると、染色性が低く染色濃度を濃くしなければならず、使用材料も増加し、染色時間がかかり、生産性が低下するおそれがでてくる。またPVA系樹脂層の配向関数が0.35以上になると、ホウ酸水溶液中における延伸処理においてPVA系樹脂層が破断するなどの不具合が生じるおそれがでてくる。したがって、PVA系樹脂層の配向関数は、0.05以上で0.35以下となるように設定されることが好ましい。より好ましくは、0.15以上で0.30以下に設定することである。
【0136】
第1の技術的課題の解決手段は、非晶性PET基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体を、予め第1段の空中高温延伸によって予備的又は補助的に延伸しておくことによって、第2段のホウ酸水中延伸によって非晶性PET基材の延伸倍率に制限されることなく、PVA系樹脂層を高倍率に延伸することが可能となり、そのことによりPVAの配向性が十分に向上する、というものである。
【0137】
また、第2の技術的課題の解決手段は、予め第1段の空中高温延伸の延伸温度を予備的又は補助的により高い温度に設定しておくか又は延伸倍率を予備的又は補助的により高倍率に設定しておくことであり、これによって、第2段のホウ酸水中延伸によって生成されたPVA系樹脂層のPVA分子の配向性をより高めるという予期せざる結果がもたらされた。いずれの場合においても、第1段の空中高温延伸が第2段のホウ酸水中延伸に対する予備的又は補助的な空中延伸手段として位置付けることができる。以下、「第1段の空中高温延伸」を第2段のホウ酸水中延伸と対比して「空中補助延伸」という。
【0138】
「空中補助延伸」を行うことによる、特に第2の技術的課題の解決メカニズムについては、以下のように推定することができる。空中補助延伸を高温にするか又は高倍率にするほど、図24で確認したように、空中補助延伸後のPVA系樹脂の配向性が向上する。これは、高温又は高倍率であるほどPVA系樹脂の結晶化が進みながら延伸されるため、部分的に架橋点ができながら延伸されることが要因であると推定される。結果としてPVA系樹脂の配向性が向上していることになる。予めホウ酸水中延伸前に空中補助延伸によりPVA系樹脂の配向性を向上させておくことで、ホウ酸水溶液に浸漬した時に、ホウ酸がPVA系樹脂と架橋し易くなり、ホウ酸が結節点となりながら延伸されるものと推定される。結果としてホウ酸水中延伸後もPVA系樹脂の配向性が高くなる。
【0139】
以上を総合すると、空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸を行うことによって、厚みが10μm以下であり、単体透過率T及び偏光度Pで表される光学特性が、次式
P>―(100.929T―42.4―1)×100(ただし、T<42.3)、及び
P≧99.9(ただし、T≧42.3)
の条件、或いは、単体透過率をTとし、偏光度をPとしたとき、T≧42.5及びP≧99.5で表される条件を満足するように構成された偏光膜を得ることができる。二色性物質は、ヨウ素又はヨウ素と有機染料の混合物のいずれでもよい。
【0140】
単体透過率をT、偏光度をPとしたときの光学特性値がこの条件によって表される範囲にある偏光膜は、一義的には、大型表示素子を用いた液晶テレビ用の表示装置として求められる性能、或いは有機EL表示装置として求められる性能を有する。具体的に述べると、液晶テレビの場合には、コントラスト比が1000:1以上で、最大輝度が500cd/m2以上の光学的表示装置を製造することができる。ここでは、これを「要求性能」という。この偏光膜は、有機EL表示パネルの視認側に貼り合される光学機能フィルム積層体に用いることもできる。
【0141】
液晶表示パネルに用いられる場合には、バックライト側と視認側のいずれか一方の側に配置される偏光膜の偏光性能が、少なくともこの光学的特性を満足する偏光膜でなければならない。また、バックライト側と視認側のいずれか一方の側の偏光膜として偏光度Pが99.9%以下の偏光膜を用いた場合には、他方の偏光膜として、偏光性能がいかに優れた偏光膜を用いても、要求性能を達成することが困難になる。
【0142】
次に、図1を参照する。図1は、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材の厚み及びPVA系樹脂層の塗工厚(偏光膜厚)が何らかの不具合を生じる原因になるかどうかを検証した結果を示すものである。図1において、横軸は、熱可塑性樹脂基材の厚みをμmで表し、縦軸は、該基材上に塗工されたPVA系樹脂層の厚みを表す。縦軸において、括弧内の数字は、基材上のPVA系樹脂層が延伸され、染色されて偏光膜となった時の厚みを表す。図1に示したように、基材の厚みがPVA系樹脂層の厚みの5倍以下では、搬送性に問題が生じることが懸念され、不具合の原因となる可能性がある。また一方、延伸され、染色されて偏光膜となった時の厚みが10μm以上になると、偏光膜のクラック耐久性に問題が生じることが懸念される。
【0143】
熱可塑性樹脂基材としては、非晶性エステル系のものが好ましく、この種の熱可塑性樹脂基材としては、イソフタル酸を共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールを共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート又は他の共重合ポリエチレンテレフタレートを含む非晶性ポリエチレンテレフタレートを挙げることができる。基材は、透明樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂基材として非晶性材料を使用することについて説明してきたが、延伸の条件を適当に設定することにより、結晶性樹脂材料を使用することも可能である。
【0144】
ポリビニルアルコール系樹脂に染色させる二色性物質は、ヨウ素又はヨウ素と有機染料の混合物であることが好ましい。
【0145】
本発明においては、熱可塑性樹脂基材上のPVA系樹脂層により形成される偏光膜に、光学機能フィルムを接着することができる。また、偏光膜から樹脂基材を剥がし、樹脂基材を剥がした偏光膜の面に、粘着剤層を介してセパレータフィルムを剥離自在に積層することができる。セパレータフィルムは、粘着剤層に対する接着力が、偏光膜の粘着剤層に対する接着力よりも弱くなるように処理することにより、セパレータフィルムを剥がしたとき、粘着剤層が偏光膜側に残るようにする。このセパレータフィルムは、本発明により製造される光学フィルム積層体ロールを、表示装置製造に使用する場合のキャリアフィルムとして使用することができる。或いは、セパレータフィルムを、偏光膜に粘着剤層を付与するための媒体としてのみ、使用することもできる。
【0146】
本発明の別の形態として、熱可塑性樹脂基材、例えば非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材のPVA系樹脂層の偏光膜が形成されていない面に、光学機能フィルムを貼り合せ、該光学機能フィルムの上に粘着剤層を介してセパレータを剥離自在に積層するようにした光学機能フィルム積層体を生成することができる。この場合において、光学機能フィルムは、種々の光学的機能を達成するために表示装置内に配置される公知の光学機能フィルムのいずれかとすることができる。このような光学機能フィルムとしては、前述した1/4波長位相差フィルムがある。その他にも、視野角補償の目的で使用される種々の光学機能フィルムが知られている。他の形態として、熱可塑性樹脂基材とは反対側の偏光膜の面に、光学機能フィルムを貼り合せ、該光学機能フィルムの上に、保護フィルム等のフィルムを、粘着剤層を介して貼り付けることができる。そして、その後で、熱可塑性基材を剥がし、剥がした後の偏光膜の面に、粘着剤層を介してセパレータフィルムを接着することができる。欠点検査は、このセパレータフィルムを剥がした後に行い、検査終了後に、剥がしたセパレータフィルム又は別に用意したセパレータフィルムを粘着剤層を介して偏光膜に接着する。
【0147】
上述した図1から分かるように、熱可塑性樹脂基材、例えば非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材の厚みは、製膜されるPVA系樹脂層の厚みの6倍以上であることが好ましく、7倍以上であることがより好ましい。PVA系樹脂層に対する非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材の厚みが7倍以上であれば、製造工程の搬送時にフィルム強度が弱く破断するような搬送性、液晶ディスプレイのバックライト側と視認側のいずれか一方の片側偏光膜として用いられる際の偏光膜のカール性や転写性などの不具合は生じない。
【0148】
非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材は、配向関数を0.10以下に設定した、空中高温延伸処理したイソフタル酸を共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールを共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート又は他の共重合ポリエチレンテレフタレートを含む非晶性ポリエチレンテレフタレートであることであることが好ましく、また透明樹脂とすることができる。
【0149】
ここでさらに、熱可塑性樹脂基材を用いて、PVA系樹脂からなる偏光膜を製造する本発明の方法を実施する場合において、PVA系樹脂を不溶化する不溶化方法が、重要な技術的課題の一つに位置付けられることについて、以下に述べる。
【0150】
熱可塑性樹脂基材上に製膜されたPVA系樹脂層を延伸する場合において、延伸中間生成物又は延伸された積層体に含まれるPVA系樹脂層を染色液に溶解させることなく、ヨウ素をPVA系樹脂層に吸着させることは決して容易なことではない。偏光膜の製造において、薄膜化されたPVA系樹脂層にヨウ素を吸着させることは、必須の工程である。通常の染色工程においては、ヨウ素濃度が0.12〜0.25重量%の範囲にあるヨウ素濃度の異なる複数の染色液を用い、浸漬時間を一定にすることよってPVA系樹脂層へのヨウ素吸着量を調整している。こうした通常の染色処理は、偏光膜を製造する場合には、PVA系樹脂層が溶解されるため染色不能になる。ここでは、濃度とは、全溶液量に対する配合割合のことをいう。また、ヨウ素濃度とは、全溶液量に対するヨウ素の配合割合のことをいい、例えば、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物として加えられたヨウ素の量は含まない。本明細書の以下においても、濃度及びヨウ素濃度という用語は同様の意味で用いる。
【0151】
この技術的課題は、図6に示した実験結果から明らかなように、二色性物質であるヨウ素の濃度を、0.3重量%又はそれ以上にすることによって解決できる。具体的には、PVA系樹脂層からなる延伸中間生成物を含む積層体を、ヨウ素濃度の異なる染色液を用いて染色し、その浸漬時間を調整することによって、着色中間生成物を含む着色積層体を生成し、ホウ酸水中延伸によって種々の偏光性能を有するそれぞれの偏光膜を生成することができる。
【0152】
ここで、図7を参照する。図7は、ヨウ素濃度を、それぞれ0.2重量%、0.5重量%、1.0重量%に調整した偏光膜の偏光性能に有意差はないことを示すものである。ちなみに、着色中間生成物を含む着色積層体の生成において、安定して、均一性に優れた着色を実現するためには、ヨウ素濃度を濃くして僅かな浸漬時間で染色するよりは、薄くして安定した浸漬時間を確保することができるようにするのが好ましい。
【0153】
図8を参照すると、本発明の方法を実施する場合における2つの異なる不溶化(以下において、「第1及び第2の不溶化」という)が、いずれも最終的に製造される偏光膜の光学特性にも影響を与えることが示される。図8は、薄膜化されたPVA系樹脂層に対する第1及び第2の不溶化の作用の分析結果とみることができる。図8は、大型表示素子を用いた液晶テレビ用の表示装置として求められる要求性能を満たす4つの実施例1〜4に基づいて製造されたそれぞれの偏光膜の光学特性を示すものである。
【0154】
実施例1は、第1及び第2の不溶化工程を経ることなく製造された偏光膜の光学特性である。これに対して、実施例2は、第1の不溶化工程を行わず、第2の不溶化処理のみを行った偏光膜、実施例3は、第2の不溶化工程を行わず、第1の不溶化処理のみを行った偏光膜、実施例4は、第1及び第2の不溶化処理が行われた偏光膜の、それぞれの光学特性を示すものである。
【0155】
本発明の実施態様において、後述する第1及び第2の不溶化工程を経ることなく要求性能を満たす偏光膜を製造することができる。しかしながら、図8から明らかなように、実施例1の不溶化処理が施されていない偏光膜の光学特性は、実施例2〜4のいずれの偏光膜の光学特性よりも低い。それぞれの光学特性値を比較すると、実施例1<実施例3<実施例2<実施例4の順に光学特性が高くなる。実施例1及び実施例3においては、いずれも、染色液のヨウ素濃度を0.3重量%に設定し、ヨウ化カリウム濃度を2.1重量%に設定した染色液を用いた。これに対して、実施例2及び実施例4においては、ヨウ素濃度を0.12〜0.25重量%に設定し、ヨウ化カリウム濃度0.84〜1.75重量%の範囲内で変化させた複数の染色液を用いた。実施例1及び実施例3のグループと実施例2及び実施例4のグループとの顕著な違いは、前者の着色中間生成物には不溶化処理が施されていないが、後者の着色中間生成物には不溶化処理が施されていることである。実施例4においては、染色処理前の延伸中間生成物のみならず、ホウ酸処理前の着色中間生成物に対しても不溶化処理が施されている。第1及び第2の不溶化処理によって、偏光膜の光学特性を一段と向上させることができた。
【0156】
偏光膜の光学特性を向上させるメカニズムは、図7から分かるように、染色液のヨウ素濃度によるものでない。第1及び第2の不溶化処理による効果である。この知見は、本発明の製造方法における第3の技術的課題とその解決手段として位置付けることができる。
【0157】
本発明の実施態様において、第1の不溶化は、後述するように、延伸中間生成物(又は延伸積層体)に含まれる薄膜化されたPVA系樹脂層を溶解させないようにする処理である。これに対して、架橋工程に含まれる第2の不溶化は、後工程の液温75℃のホウ酸水中延伸において着色中間生成物(又は着色積層体)に含まれるPVA系樹脂層に着色されたヨウ素を溶出させないようにする着色安定化と、薄膜化されたPVA系樹脂層を溶解させない不溶化とを含む処理である。
【0158】
ところが、第2不溶化工程を省くと、液温75℃のホウ酸水中延伸においては、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出が進み、そのことにより、PVA系樹脂層の溶解も進む。ヨウ素の溶出及びPVA系樹脂層の溶解を回避することは、ホウ酸水溶液の液温を下げることによって対応することができる。例えば、液温65℃を下回るホウ酸水溶液に着色中間生成物(又は着色積層体)を浸漬しながら延伸する必要がある。しかしながら、結果として水の可塑剤機能が十分に発揮されないため、着色中間生成物(又は着色積層体)に含まれるPVA系樹脂層の軟化は十分には得られない。すなわち、延伸性能が低下するため、ホウ酸水中延伸の過程で着色中間生成物(又は着色積層体)が破断することになる。当然のことであるが、PVA系樹脂層の所定の総延伸倍率が得られないことにもなる。
【0159】
以下に、図を参照して本発明に使用される偏光膜の製造方法の例を説明する。
[製造工程の概要]
図9を参照すると、図9は、不溶化処理工程を有しない、偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造工程の概要図である。ここでは、上述した実施例1に基づく偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造方法について概説する。
【0160】
熱可塑性樹脂基材として、非晶性エステル系のイソフタル酸を6mol%共重合させたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、「非晶性PET」という)の連続ウェブの基材を作製した。ガラス転移温度が75℃の連続ウェブの非晶性PET基材1と、ガラス転移温度が80℃のPVA層2とを含む積層体7を以下のように作製した。
【0161】
[積層体作製工程(A)]
まず、200μm厚の非晶性PET基材1と、重合度1000以上、ケン化度99%以上のPVA粉末を水に溶解した4〜5%濃度のPVA水溶液とを準備した。次に、塗工手段21と乾燥手段22及び表面改質処理装置23を備えた積層体作製装置20において、200μm厚の非晶性PET基材1にPVA水溶液を塗布し、50〜60℃の温度で乾燥し、非晶性PET基材1に7μm厚のPVA層2を製膜した。後述するように、このPVA層の厚みは、適宜変更することができる。以下、このようにして得られた積層体を「非晶性PET基材にPVA層が製膜された積層体7」、「PVA層を含む積層体7」、又は単に「積層体7」という。
【0162】
PVA層を含む積層体7は、空中補助延伸及びホウ酸水中延伸の2段延伸工程を含む以下の工程を経て、最終的に3μm厚の偏光膜3として製造される。本発明は、厚みが10μm以下の偏光膜を使用するものであるが、PET基材1上に製膜されるPVA系樹脂層の厚みを適宜変更することによって、厚み10μm以下の任意の厚みの偏光膜を作成することができる。
【0163】
[空中補助延伸工程(B)]
第1段の空中補助延伸工程(B)によって、7μm厚のPVA層2を含む積層体7を非晶性PET基材1と一体に延伸し、5μm厚のPVA層2を含む「延伸積層体8」を生成した。具体的には、オーブン33内に延伸手段31が配備された空中補助延伸処理装置30において、7μm厚のPVA層2を含む積層体7を130℃の延伸温度環境に設定されたオーブン33内で延伸手段31に通し、延伸倍率が1.8倍になるように、自由端一軸延伸し、延伸積層体8を生成した。この段階で、オーブン30に併設させた巻取装置32に巻き取って延伸積層体8のロール8’を製造することができる。
【0164】
ここで、自由端延伸と固定端延伸について概説する。長尺フィルムを搬送方向に延伸すると、延伸する方向に対して垂直方向すなわち幅方向にフィルムが収縮する。自由端延伸は、この収縮を抑制することなく延伸する方法をいう。また、縦一軸延伸とは、縦方向にのみに延伸する延伸方法のことである。自由端一軸延伸は、一般に延伸方向に対して垂直方向に起こる収縮を抑制しながら延伸する固定端一軸延伸と対比されるものである。この自由端一軸の延伸処理によって、積層体7に含まれる7μm厚のPVA層2は、PVA分子が延伸方向に配向された5μm厚のPVA層2になる。
【0165】
[染色工程(C)]
次に、染色工程(C)によって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層2に二色性物質のヨウ素を吸着させた着色積層体9を生成した。具体的には、染色液41の染色浴42を備えた染色装置40において、染色装置40に併設されたロール8’を装着した繰出装置43から繰り出される延伸積層体8を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液41に、最終的に生成される偏光膜3を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体8の配向されたPVA層2にヨウ素を吸着させた着色積層体9を生成した。
【0166】
本工程において、染色液41は、延伸積層体8に含まれるPVA層2を溶解させないようにするため、ヨウ素濃度が0.30重量%である水溶液とした。また、染色液41は、ヨウ素を水に溶解させるためのヨウ化カリウム濃度が2.1重量%になるように調整した。ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1対7である。より詳細には、ヨウ素濃度0.30重量%、ヨウ化カリウム濃度2.1重量%の染色液41に延伸積層体8を60秒間浸漬することによって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層2にヨウ素を吸着させた着色積層体9を生成した。実施例1においては、ヨウ素濃度0.30重量%、ヨウ化カリウム濃度2.1重量%の染色液41への延伸積層体8の浸漬時間を変えることによって、最終的に生成される偏光膜3の単体透過率を40〜44%になるようにヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする種々の着色積層体9を生成した。
【0167】
[ホウ酸水中延伸工程(D)]
第2段のホウ酸水中延伸工程によって、ヨウ素を配向させたPVA層2を含む着色積層体9をさらに延伸し、3μm厚の偏光膜3を構成するヨウ素を配向させたPVA層を含む光学フィルム積層体10を生成した。具体的には、ホウ酸水溶液51のホウ酸浴52と延伸手段53を備えたホウ酸水中延伸処理装置50において、染色装置40から連続的に繰り出された着色積層体9をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温65℃の延伸温度環境に設定されたホウ酸水溶液51に浸漬し、次にホウ酸水中処理装置50に配備された延伸手段53に通し、延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸することによって、光学フィルム積層体10を生成した。
【0168】
より詳細には、ホウ酸水溶液51は、水100重量%に対してホウ酸を4重量%含み、水100重量%に対してヨウ化カリウムを5重量%含むように調整した。本工程においては、ヨウ素吸着量を調整した着色積層体9を、まず5〜10秒間ホウ酸水溶液51に浸漬した。次いで、その着色積層体9を、そのままホウ酸水中処理装置50の延伸手段53である周速の異なる複数の組のロール間に通し、30〜90秒かけて延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸した。この延伸処理によって、着色積層体9に含まれるPVA層は、吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向した3μm厚のPVA層へと変化した。このPVA層が光学フィルム積層体10の偏光膜3を構成する。
【0169】
以上のように実施例1においては、非晶性PET基材1に7μm厚のPVA層2が製膜された積層体7を延伸温度130℃で空中補助延伸して延伸積層体8を生成し、次に、延伸積層体8を染色して着色積層体9を生成し、さらに着色積層体9を延伸温度65度でホウ酸水中延伸して、総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体10を生成した。このような2段延伸によって、非晶性PET基材1に製膜されたPVA層2においてPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された偏光膜3を構成する3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体10を生成することができた。好ましくは、これに続く洗浄、乾燥、転写工程によって、生成された光学フィルム積層体10は完成する。洗浄工程(G)、乾燥工程(H)、さらに転写工程(I)についての詳細は、不溶化処理工程を組み込んだ実施例4に基づく製造工程と併せて説明する。
【0170】
[他の製造工程の概要]
図10を参照すると、図10は、不溶化処理工程を有する、偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造工程の概要図である。ここでは、実施例4に基づく偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造方法について概説する。図10から明らかなように、実施例4に基づく製造方法は、染色工程前の第1不溶化工程とホウ酸水中延伸工程前の第2不溶化を含む架橋工程とが、実施例1に基づく製造工程に組み込まれた製造工程を想定すればよい。本工程に組み込まれた、積層体の作成工程(A)、空中補助延伸工程(B)、染色工程(C)、及びホウ酸水中延伸工程(D)は、ホウ酸水中延伸工程用のホウ酸水溶液の液温の違いを除き、実施例1に基づく製造工程と同様である。この部分の説明は、簡略化し、専ら、染色工程前の第1不溶化工程とホウ酸水中延伸工程前の第2不溶化を含む架橋工程とについて、説明する。
【0171】
[第1不溶化工程(E)]
第1不溶化工程は、染色工程(C)前の不溶化工程(E)である。実施例1の製造工程と同様に、積層体の作成工程(A)において、非晶性PET基材1に7μm厚のPVA層2が製膜された積層体7を生成し、次に、空中補助延伸工程(B)において、7μm厚のPVA層2を含む積層体7を空中補助延伸し、5μm厚のPVA層2を含む延伸積層体8を生成した。次に、第1不溶化工程(E)において、ロール8’を装着した繰出装置43から繰り出される延伸積層体8に不溶化処理を施し、不溶化された延伸積層体8’’を生成した。当然のことながら、この工程で不溶化された延伸積層体8’’は、不溶化されたPVA層2を含む。以下、これを「不溶化された延伸積層体8’’」という。
【0172】
具体的には、ホウ酸不溶化水溶液61を備えた不溶化処理装置60において、延伸積層体8を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液61に30秒間浸漬する。この工程に用いられるホウ酸不溶化水溶液61は、水100重量%に対してホウ酸を3重量%含む(以下、「ホウ酸不溶化水溶液」という。)ものである。この工程は、少なくとも直後の染色工程(C)において、延伸積層体8に含まれる5μm厚のPVA層を溶解させないための不溶化処理を施すことを目的とする。
【0173】
延伸積層体8は、不溶化処理された後に、染色工程(C)に送られる。この染色工程(C)においては、実施例1の場合と異なり、0.12〜0.25重量%の範囲でヨウ素濃度を変化させた複数の染色液を準備した。これらの染色液を用いて、不溶化された延伸積層体8’’の染色液への浸漬時間を一定にし、最終的に生成される偏光膜の単体透過率を40〜44%になるようにヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする種々の着色積層体9を生成した。ヨウ素濃度が0.12〜0.25重量%の染色液に浸漬しても、不溶化された延伸積層体8’’に含まれるPVA層が溶解することはなかった。
【0174】
[第2不溶化を含む架橋工程(F)]
以下に説明する架橋工程(F)は、以下の目的からみて、第2不溶化工程を含むものということができる。架橋工程は、第1に、後工程のホウ酸水中延伸工程(D)において、着色積層体9に含まれるPVA層を溶解させないようにする不溶化と、第2に、PVA層に着色されたヨウ素を溶出させないようにする着色安定化と、第3に、PVA層の分子同士を架橋することによって結節点を生成する結節点の生成とを達成するもので、第2不溶化は、この第1と第2の結果を実現するものである。
【0175】
架橋工程(F)は、ホウ酸水中延伸工程(D)の前工程として行われる。前述の染色工程(C)において生成された着色積層体9に架橋処理を施すことによって、架橋された着色積層体9’が生成される。この架橋された着色積層体9’は、架橋されたPVA層2を含む。具体的には、ホウ酸とヨウ化カリウムとからなる水溶液(以下、「ホウ酸架橋水溶液」という)71を収容する架橋処理装置70において、着色積層体9を40℃のホウ酸架橋水溶液71に60秒間浸漬し、ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋することによって、架橋された着色積層体9’が生成される。この工程で使用されるホウ酸架橋水溶液は、水100重量%に対してホウ酸を3重量%含み、水100重量%に対してヨウ化カリウムを3重量%含む。
【0176】
ホウ酸水中延伸工程(D)において、架橋された着色積層体9’を75℃のホウ酸水溶液に浸漬し、延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸することによって、光学フィルム積層体10が生成される。この延伸処理によって、着色積層体9’に含まれるヨウ素を吸着させたPVA層2は、吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向した3μm厚のPVA層2へと変化する。このPVA層が、光学フィルム積層体10の偏光膜3を構成する。
【0177】
実施例4においては、まず、非晶性PET基材1に7μm厚のPVA層2が製膜された積層体7を生成し、次に、積層体7を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸延伸し、延伸積層体8を生成した。生成された延伸積層体8を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液61に30秒間浸漬することによって延伸積層体に含まれるPVA層を不溶化した。これが不溶化された延伸積層体8’’である。不溶化された延伸積層体8’’を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによって、不溶化されたPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体9を生成した。ヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体9を40℃のホウ酸架橋水溶液71に60秒間浸漬し、ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋した。これが架橋された着色積層体9’である。架橋された着色積層体9’をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温75℃のホウ酸水中延伸溶51に5〜10秒間浸漬し、次いで、ホウ酸水中延伸によって延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸し、光学フィルム積層体10を生成した。
【0178】
このように、実施例4は、空中高温延伸及びホウ酸水中延伸からなる2段延伸と、染色浴への浸漬に先立つ不溶化及びホウ酸水中延伸に先立つ架橋からなる前処理によって、非晶性PET基材1上に製膜されたPVA層2におけるPVA分子が高次に配向され、染色によってPVA分子に確実に吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された偏光膜を構成する3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体10を安定的に生成することができた。
【0179】
[洗浄工程(G)]
実施例1又は4の着色積層体9又は架橋された着色積層体9’は、ホウ酸水中延伸工程(D)において延伸処理され、ホウ酸水溶液51から取り出される。取り出された偏光膜3を含む光学フィルム積層体10は、好ましくは、そのままの状態で、洗浄工程(G)に送られる。洗浄工程(G)は、薄型高性能偏光膜3の表面に付着した不要残存物を洗い流すことを目的とする。洗浄工程(G)を省き、取り出された偏光膜3を含む光学フィルム積層体10を直接乾燥工程(H)に送り込むこともできる。しかしながら、この洗浄処理が不十分であると、光学フィルム積層体10の乾燥後に薄型高性能偏光膜3からホウ酸が析出することもある。具体的には、光学フィルム積層体10を洗浄装置80に送り込み、薄型高性能偏光膜3のPVAが溶解しないように、液温30℃のヨウ化カリウムを含む洗浄液81に1〜10秒間浸漬する。洗浄液81中のヨウ化カリウム濃度は、0.5〜10重量%程度である。
【0180】
[乾燥工程(H)]
洗浄された光学フィルム積層体10は、乾燥工程(H)に送られ、ここで乾燥される。次いで、乾燥された光学フィルム積層体10は、乾燥装置90に併設された巻取装置91によって、連続ウェブの光学フィルム積層体10として巻き取られ、薄型高性能偏光膜3を含む光学フィルム積層体10のロールが生成される。乾燥工程(H)として、任意の適切な方法、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥を採用することができる。実施例1及び実施例4はいずれにおいても、オーブンの乾燥装置90において、60℃の温風で、240秒間、乾燥を行った。
【0181】
[貼合せ/転写工程(I)]
本発明は、上述したように、空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段階延伸工程で延伸されることにより、光学特性が上述の所望の条件を満足するように構成された、二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光膜を使用する光学フィルム積層体ロールの製造方法を提供するものである。
【0182】
この光学フィルム積層体を形成するために、例えば非晶性PET基材のような熱可塑性樹脂基材上に製膜された、厚み10μm以下の、例えば上述した実施例により製造された厚み3μmの偏光膜3を含む光学フィルム積層体10が、欠点検査を経た後、ロール状に巻かれて、光学フィルム積層体のロールとなる。この本発明の方法により形成される光学フィルム積層体ロールは、例えば図10に示す貼合せ/転写工程(I)において使用される。この貼合せ/転写工程(I)においては、光学フィルム積層体10は、ロールから繰り出され、このロールから繰り出された光学フィルム積層体10に対し、以下のような貼合せ処理と転写処理とを同時に行うことができる。
【0183】
製造される偏光膜3の厚みは、延伸による薄膜化によって10μm以下、通常は、僅か2〜5μm程度にすぎない状態にされる。このような薄い偏光膜3を単層体として扱うことは難しい。従って、偏光膜3は、該偏光膜が製膜された熱可塑性基材、例えば非晶性PET基材上にそのまま残された状態で、光学フィルム積層体10として扱うか、又は、他の光学機能フィルム4に貼合せ/転写することによって光学機能フィルム積層体11として扱うことになる。
【0184】
図9及び図10に示す貼合せ/転写工程(I)においては、連続ウェブの光学フィルム積層体10に含まれる偏光膜3と、別に準備される光学機能フィルム4とを貼合せながら巻き取り、その巻き取り工程において、偏光膜3を光学機能フィルム4に転写しながら非晶性PET基材を剥離することによって、光学機能フィルム積層体11が生成される。具体的には、貼合せ/転写装置100に含まれる繰出/貼合せ装置101によって光学フィルム積層体10がロールから繰り出され、繰り出された光学フィルム積層体10の偏光膜3が、巻取/転写装置102によって光学機能フィルム4に転写され、その過程で、偏光膜3が基材1から剥離されて、光学機能フィルム積層体11が生成される。
【0185】
乾燥工程(H)において巻取装置91によってロール状に巻き取られたた光学フィルム積層体10、或いは貼合せ/転写工程(I)によって生成される光学機能フィルム積層体11は、種々異なる形態とすることができる。
【0186】
[様々な製造条件による偏光膜の光学特性]
(1)不溶化工程による偏光膜の光学特性の向上(実施例1〜4)
すでに図8を用いて説明した通り、実施例1〜4に基づいて製造されたそれぞれの偏光膜は、いずれも上述した技術的課題を克服するものであり、これらの光学特性は、大型表示素子を用いた液晶テレビ用の光学的表示装置として求められる要求性能を満たすものである。さらに、図8から明らかなように、実施例1の不溶化処理が施されていない偏光膜の光学特性は、第1不溶化処理及び/又は第2不溶化処理が施された実施例2〜4の偏光膜の光学特性のいずれよりも低い。それぞれの光学特性を比較すると、(実施例1)<(第1不溶化処理のみが施された実施例3)<(第2不溶化処理のみが施された実施例2)<(第1及び第2不溶化処理が施された実施例4)の順に光学特性が高くなる。偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造工程に加えて、第1及び/又は第2不溶化工程を有する製造方法によって製造された偏光膜は、それらの光学特性を一段と向上させることできる。
【0187】
(2)PVA系樹脂層の厚みによる偏光膜の光学特性への影響(実施例5)
実施例4においては、厚み7μmのPVA層を延伸して厚み3μmの偏光膜が形成された。これに対して、実施例5は、先ず厚み12μmのPVA層を形成し、このPVA層を延伸して厚み5μmの偏光膜を形成した。その他は、同一の条件で偏光膜を製造した。
【0188】
(3)非晶性PET基材を異にした偏光膜の光学特性への影響(実施例6)
実施例4においてはイソフタル酸をPETに共重合させた非晶性PET基材を用いたのに対して、実施例6おいては、PETに対して変性基として1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合させた非晶性PET基材を用いた。実施例6においては、この点を除き実施例4と同一の条件で偏光膜を製造した。
【0189】
図13を参照すると、実施例4〜6に基づく方法により製造された偏光膜の光学特性に有意差がないことが分かる。このことは、PVA系樹脂層の厚み及び非晶性エステル系熱可塑性樹脂の種類が得られた偏光膜の光学特性に、認識できるほどの影響を与えないことを示すものと考えられる。
【0190】
(4)空中補助延伸倍率による偏光膜の光学特性の向上(実施例7〜9)
実施例4においては、第1段の空中補助延伸及び第2段のホウ酸水中延伸のそれぞれの延伸倍率が1.8倍及び3.3倍であったが、実施例7〜9においては、それぞれの延伸倍率を1.2倍及び4.9倍と、1.5倍及び4.0と、2.5倍及び2.4倍とした。これらの実施例においては、この点を除き、実施例4と同様の条件で偏光膜を製造した。例えば、空中補助延伸の延伸温度は130℃であり、液温75℃のホウ酸水溶液を用いてホウ酸水中延伸を行った。実施例8,9の総延伸倍率は、6.0倍となり、実施例4において空中補助延伸倍率1.8倍としたときの総延伸倍率5.94倍に匹敵するものであった。しかしながら、これに対して、実施例7の総延伸倍率は、5.88倍が限界であった。これは、ホウ酸水中延伸において、延伸倍率を4.9倍以上にすることができなかった結果である。このことは、図20を用いて説明した、第1段の空中補助延伸倍率と総延伸倍率との相関関係に及ぼす非晶性PETの延伸可能倍率の影響と推定される。
【0191】
図14を参照すると、実施例7〜9による偏光膜は、いずれも、実施例4の場合と同様に、薄型偏光膜の製造に関連する技術的課題を克服し、光学的表示装置に必要な要求性能を満たす光学特性を有する。それぞれの光学特性を比較すると、実施例7<実施例8<実施例4<実施例9の順に光学特性が高くなる。このことは、第1段の空中補助延伸の延伸倍率が1.2倍から2.5倍の範囲内で設定された場合に、第2段のホウ酸水中延伸による最終的な総延伸倍率が同程度に設定されたとしても、第1段の空中補助延伸が高延伸倍率に設定された偏光膜ほど、光学特性が高まることを示している。偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造工程において、第1の空中補助延伸を高延伸倍率に設定することによって、製造される偏光膜、又は偏光膜含む光学フィルム積層体は、それらの光学特性を一段と向上させることできる。
【0192】
(5)空中補助延伸温度による偏光膜の光学特性の向上(実施例10〜12)
実施例4においては空中補助延伸温度を130℃に設定したのに対して、実施例10〜12においては、それぞれの空中補助延伸温度を95℃、110℃、150℃に設定した。いずれもPVAのガラス転移温度Tgより高い温度である。これらの実施例においては、この点を除き、例えば空中補助延伸倍率を1.8倍とする点、ホウ酸水中延伸における延伸倍率を3.3倍とする点を含み、実施例4と同様の条件で偏光膜を製造した。実施例4の空中補助延伸温度は130℃である。実施例4を含め、これらの実施例は、延伸温度を95℃、110℃、130℃、及び150℃とすることの違いを除くと、製造条件は全て同じである。
【0193】
図15を参照すると、実施例4、10〜12による偏光膜は、いずれも、薄型偏光膜の製造に関連する技術的課題を克服し、光学的表示装置に必要とされる要求性能を満たす光学特性を有する。それぞれの光学特性を比較すると、実施例10<実施例11<実施例4<実施例12の順に光学特性が高くなる。このことは、第1段の空中補助延伸温度をガラス転移温度より高く、95℃倍から150℃へと順次高くなるように温度環境を設定した場合には、第2段のホウ酸水中延伸による最終的な総延伸倍率が同じに設定されたとしても、第1段の空中補助延伸温度がより高く設定された偏光膜ほど、光学特性が高まることを示している。偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造工程において、第1の空中補助延伸温度をより高く設定することによって、製造される偏光膜、又は偏光膜含む光学フィルム積層体は、それらの光学特性を一段と向上させることできる。
【0194】
(6)総延伸倍率による偏光膜の光学特性の向上(実施例13〜15)
実施例4においては、第1段の空中補助延伸倍率が1.8倍及び第2段のホウ酸水中延伸倍率が3.3倍と設定された。これに対して、実施例13〜15においては、それぞれの第2段のホウ酸水中延伸倍率のみを、2.1倍、3.1倍、3.6倍とした。これは、実施例13〜15における総延伸倍率が、5.04倍(約5倍)、5.58倍(約5.5倍)、6.48倍(約6.5倍)になるように設定したことを意味するものである。実施例4の総延伸倍率は5.94倍(約6倍)である。実施例4を含め、これらの実施例は、5倍、5.5倍、6.0倍、6.5倍の総延伸倍率の違いを除くと製造条件は全て同じである。
【0195】
図16を参照すると、実施例4、13〜15の偏光膜は、いずれも、薄型偏光膜の製造に関連する技術的課題を克服し、液晶表示装置に必要とされる要求性能を満たす光学特性を有する。それぞれの光学特性を比較すると、実施例13<実施例14<実施例4<実施例15の順に光学特性が高くなる。このことは、いずれの第1段の空中補助延伸倍率を1.8倍に設定し、総延伸倍率を5倍、5.5倍、6.0倍、6.5倍へと順次高くなるように第2段のホウ酸水中延伸倍率のみを設定した場合には、最終的な総延伸倍率がより高く設定された偏光膜ほど、光学特性が高まることを示している。偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造工程において、第1段の空中補助延伸と第2段のホウ酸水中延伸との総延伸倍率をより高く設定することによって、製造される偏光膜、又は偏光膜含む光学フィルム積層体は、それらの光学特性を一段と向上させることできる。
【0196】
(7)固定端一軸延伸における総延伸倍率による偏光膜の光学特性の向上(実施例16〜18)
実施例16〜18は、以下の相違点を除き、実施例4と同一の条件で製造された光学フィルム積層体である。相違点は、空中補助延伸の延伸方法にある。実施例4においては自由端一軸による延伸方法が用いられているのに対して、実施例16〜18においては、いずれも固定端一軸による延伸方法を採用している。これらの実施例は、いずれも第1段の空中補助延伸倍率を1.8倍に設定し、それぞれの第2段のホウ酸水中延伸倍率のみを3.3倍、3.9倍、4.4倍とした。このことにより、実施例16の場合、総延伸倍率が5.94倍(約6倍)であり、実施例17の場合には、7.02倍(約7倍)、さらに実施例18の場合には、7.92倍(約8倍)となる。実施例16〜18は、この点を除くと製造条件は全て同じである。
【0197】
図17を参照すると、実施例16〜18による偏光膜は、いずれも、薄型偏光膜の製造に関連する技術的課題を克服し、光学的表示装置に必要とされる要求性能を満たす光学特性を有する。それぞれの光学特性を比較すると、実施例16<実施例17<実施例18の順に光学特性が高くなる。このことは、いずれの第1段の空中補助延伸倍率を1.8倍に設定し、総延伸倍率を6倍、7倍、8倍へと順次高くなるように第2段のホウ酸水中延伸倍率のみを設定した場合には、最終的な総延伸倍率がより高く設定された偏光膜ほど、光学特性が高まることを示している。偏光膜3を含む光学フィルム積層体10の製造工程において、固定端一軸延伸方法による第1段の空中補助延伸と第2段のホウ酸水中延伸との総延伸倍率をより高く設定することによって、製造される偏光膜、又は偏光膜含む光学フィルム積層体は、それらの光学特性を一段と向上させることできる。さらに、第1段の空中補助延伸に固定端一軸延伸方法を用いる場合には、第1段の空中補助延伸に自由端一軸延伸方法を用いる場合に比べて、最終的な総延伸倍率をより高くすることができることも確認した。
【表2】

【0198】
[比較例3]
比較例3は、比較例1の場合と同様の条件で、200μm厚のPET基材にPVA水溶液を塗布し、乾燥させてPET基材に7μm厚のPVA層を製膜した積層体を生成した。次に、積層体を、液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによって、ヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を生成した。具体的には、着色積層体は、積層体を液温30℃の0.3重量%濃度のヨウ素及び2.1重量%濃度のヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させたものである。次に、延伸温度を60℃に設定したホウ酸水中延伸によって、ヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を延伸倍率が5.0倍になるように自由端一軸に延伸することで、PET樹脂基材と一体に延伸された3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を種々生成した。
【0199】
[参考例1]
参考例1は、樹脂基材として、結晶性ポリエチレンテレフタレート(以下、「結晶性PET」という)の連続ウェブの基材を用い、200μm厚の結晶性PET基材にPVA水溶液を塗布し、乾燥させて結晶性PET基材に7μm厚のPVA層を製膜した積層体を生成した。結晶性PETのガラス転移温度は80℃である。次に、生成された積層体を110℃に設定した空中高温延伸によって延伸倍率が4.0倍になるように自由端一軸に延伸した延伸積層体を生成した。この延伸処理によって、延伸積層体に含まれるPVA層は、PVA分子が配向された3.3μm厚のPVA層へと変化した。参考例1の場合、延伸温度110℃の空中高温延伸において、積層体を4.0倍以上に延伸することができなかった。
【0200】
延伸積層体は、次の染色工程によって、PVA分子が配向された3.3μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体に生成された。具体的には、着色積層体は、延伸積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させたものである。このように、PVA分子が配向されたPVA層へのヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする着色積層体を種々生成した。次に、生成された着色積層体を架橋処理する。具体的には、液温が40℃で、ホウ酸3%、ヨウ化カリウム3%からなるホウ酸架橋水溶液に60秒間、浸漬することによって着色積層体に架橋処理を施した。参考例1は、架橋処理が施された着色積層体が実施例4の光学フィルム積層体に相当する。したがって、洗浄工程、乾燥工程、貼合せ及び/又は転写工程は、いずれも実施例4の場合と同様である。
【0201】
[参考例2]
参考例2は、樹脂基材として、参考例1の場合と同様に、結晶性PET基材を用い、200μm厚の結晶性PET基材に7μm厚のPVA層を製膜した積層体を生成した。次に、生成された積層体を100℃の空中高温延伸によって延伸倍率が4.5倍になるように自由端一軸に延伸した延伸積層体を生成した。この延伸処理によって、延伸積層体に含まれるPVA層は、PVA分子が配向された3.3μm厚のPVA層へと変化した。参考例2の場合、延伸温度100℃の空中高温延伸において、積層体を4.5倍以上に延伸することができなかった。
【0202】
次に、延伸積層体から着色積層体を生成した。着色積層体は、延伸積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させたものである。参考例2は、参考例1の場合と同様に、PVA分子が配向されたPVA層へのヨウ素吸着量を調整し、単体透過率と偏光度を異にする着色積層体を種々生成した。
【0203】
[参考例3]
参考例3は、樹脂基材として、参考例1又は2の場合と同様に、結晶性PET基材を用い、200μm厚の結晶性PET基材に7μm厚のPVA層を製膜した積層体を生成した。次に、生成された積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を種々生成した。しかる後に、生成された着色積層体を90℃の空中高温延伸によって、延伸倍率が4.5倍になるように自由端一軸に延伸し、着色積層体から偏光膜に相当するヨウ素を吸着させたPVA層を含む延伸積層体を生成した。この延伸処理によって、着色積層体から生成された延伸積層体に含まれるヨウ素を吸着させたPVA層は、PVA分子が配向された3.3μm厚のPVA層へと変化した。参考例3の場合、延伸温度90℃の空中高温延伸において、積層体を4.5倍以上に延伸することができなかった。
【0204】
[測定方法]
[厚みの測定]
非晶性PET基材、結晶性PET基材、及びPVA層の厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製KC−351C)を用いて測定した。
【0205】
[透過率及び偏光度の測定]
偏光膜の単体透過率T、平行透過率Tp、直交透過率Tcは、紫外可視分光光度計(日本分光社製V7100)を用いて測定した。これらのT、Tp、Tcは、JIS Z
8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度Pを上記の透過率を用い、次式により求めた。
偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0206】
(PETの配向関数の評価方法)
測定装置は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(Perkin Elmer社製、商品名:「SPECTRUM2000」)を用いた。偏光を測定光として、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により、PET樹脂層表面の評価を行った。配向関数の算出は以下の手順で行った。測定偏光を延伸方向に対して0°と90°にした状態で測定を実施した。得られたスペクトルの1340cm-1の吸収強度を用いて、以下に記した(式4)(出典:H. W. Siesler,Adv. Polym. Sci. , 65, 1(1984))に従い算出した。なお、f=1のとき完全配向、f=0のときランダムとなる。また、1340cm-1のピークは、PETのエチレングリコールユニットのメチレン基起因の吸収といわれている。
(式4)f=(3<cos2θ>−1)/2
=[(R−1)(R0+2)]/[(R+2)(R0−1)]
=(1−D)/[c(2D+1)]
=−2×(1−D)/(2D+1)

但し
c=(3cos2β−1)/2
β=90deg
θ:延伸方向に対する分子鎖の角度
β:分子鎖軸に対する遷移双極子モーメントの角度
0=2cot2β
1/R=D=(I⊥)/(I//)
(PETが配向するほどDの値が大きくなる。)
I⊥:偏光を延伸方向と垂直方向に入射して測定したときの吸収強度
I//:偏光を延伸方向と平行方向に入射して測定したときの吸収強度
【0207】
(PVAの配向関数の評価方法)
測定装置は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(Perkin Elmer社製、商品名:「SPECTRUM2000」)を用いた。偏光を測定光として、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により、PVA樹脂層表面の評価を行った。配向関数の算出は以下の手順で行った。測定偏光を延伸方向に対して0°と90°にした状態で測定を実施した。得られたスペクトルの2941cm-1の吸収強度を用いて、以下に記した(式4)(出典:H. W. Siesler,Adv. Polym. Sci. , 65, 1(1984))に従い算出した。また、下記強度Iは3330cm-1を参照ピークとして、2941cm-1/3330cm-1の値を用いた。なお、f=1のとき完全配向、f=0のときランダムとなる。また、2941cm-1のピークは、PVAの主鎖(−CH2−)の振動起因の吸収といわれている。
(式4)f=(3<cos2θ>−1)/2
=[(R−1)(R0+2)]/[(R+2)(R0−1)]
=(1−D)/[c(2D+1)]
=−2×(1−D)/(2D+1)

但し
c=(3cos2β−1)/2
β=90deg
θ:延伸方向に対する分子鎖の角度
β:分子鎖軸に対する遷移双極子モーメントの角度
0=2cot2β
1/R=D=(I⊥)/(I//)
(PVAが配向するほどDの値が大きくなる。)
I⊥:偏光を延伸方向と垂直方向に入射して測定したときの吸収強度
I//:偏光を延伸方向と平行方向に入射して測定したときの吸収強度
【0208】
(PVAの結晶化度の評価方法)
測定装置は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(Perkin Elmer社製、商品名:「SPECTRUM2000」)を用いた。偏光を測定光として、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により、PVA樹脂層表面の評価を行った。結晶化度の算出は以下の手順で行った。測定偏光を延伸方向に対して0°と90°にした状態で測定を実施した。得られたスペクトルの1141cm-1及び1440cm-1の強度を用いて、下式に従い算出した。事前に、1141cm-1の強度の大きさが結晶部分の量と相関性があることを確認しており、1440cm-1を参照ピークとして下記式より結晶化指数を算出している(式6)。更に、結晶化度が既知のPVAサンプルを用いて、事前に結晶化指数と結晶化度の検量線を作成し、検量線を用いて結晶化指数から結晶化度を算出している(式5)。
結晶化度 = 63.8×(結晶化指数)−44.8 (式5)
結晶化指数 = ((I(1141cm-1)0° + 2×I(1141cm-1)90° )/ 3)/((I(1440cm-1)0° + 2×I(1440cm-1)90° )/ 3)
(式5)
但し
I(1141cm-1)0°:偏光を延伸方向と平行方向に入射して測定したときの1141cm-1の強度
I(1141cm-1)90°:偏光を延伸方向と垂直方向に入射して測定したときの1141cm-1の強度
I(1440cm-1)0°:偏光を延伸方向と平行方向に入射して測定したときの1440cm-1の強度
I(1440cm-1)90°:偏光を延伸方向と垂直方向に入射して測定したときの1440cm-1の強度
【0209】
[偏光膜の使用例]
図11及び図12に、上述の偏光膜を使用した光学的表示装置の実施形態を例示的に示す。
【0210】
図11は、有機EL表示装置の最も基本的な実施形態を示す断面図であり、この表示装置200は、有機EL表示パネルである光学的表示パネル201を備え、該表示パネル201の一方の面に、光学的に透明な粘着剤層202を介して偏光膜203が接合される。該偏光膜203の外側の面には、1/4波長位相差フィルム204が接着される。任意ではあるが、光学的表示装置の視認側となる保護層204の外側には、破線で示すように、透明なウインドウ205を配置することができる。
【0211】
層や膜などを接合又は接着させる材料としては、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系、イソシアネート系、ポリビニルアルコール系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステルなどのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
【0212】
偏光膜203は、上述したように、厚み10μm以下で、前述した光学特性を満足させるものである。この偏光膜203は、従来この種の光学的表示装置に使用されている偏光膜に比べて非常に薄いので、温度又は湿度条件で発生する伸縮による応力が極めて小さくなる。したがって、偏光膜の収縮によって生じる応力が隣接する表示パネル201に反り等の変形を生じさせる可能性が大幅に軽減され、変形に起因する表示品質の低下を大幅に抑制することが可能になる。この構成において、粘着剤層202として、拡散機能を備えた材料を使用するか、或いは、粘着剤層と拡散剤層の2層構成とすることもできる。
【0213】
粘着剤層202の接着力を向上させる材料として、例えば特開2002−258269号公報(特許文献12)、特開2004−078143号公報(特許文献13)、特開2007−171892号公報(特許文献14)に記載のあるようなアンカー層を設けることもできる。バインダー樹脂としては粘着剤の投錨力を向上出来る層であれは特に制限はなく、具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類、エステルウレタン系樹脂、オキサゾリン基などを含有する各種アクリル系樹脂などの有機反応性基を有する樹脂(ポリマー)を用いることができる。
【0214】
また、上記アンカー層には、帯電防止性を付与するために、例えば特開2004−338379号公報(特許文献15)に記載のあるように帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止性付与のための帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等の導電性ポリマー系、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などがあげられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の加熱、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマー系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマー、もしくは水分散性導電性ポリマーが特に好ましく使用される。帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーを用いた場合、塗工に際して有機溶剤による光学フィルム基材への変質を抑えることができる。
【0215】
図12は、光学的表示パネルとして透過型液晶表示パネル301を備える光学的表示装置300の実施形態を示す。この構成においては、液晶表示パネル301の視認側の面に、粘着剤層302を介して第1の偏光膜303が接合され、該第1の偏光膜303に易接着層307を介して保護層304が接合される。保護層304には1/4波長位相差層309が接合される。1/4波長位相差層309には、任意ではあるが、帯電防止層308が形成される。1/4波長位相差層309の外側には、これも任意であるが、ウインドウ305が配置される。液晶表示パネル301の他方の面には、第2の粘着剤層302aを介して第2の偏光膜303aが配置される。第2の偏光膜303aの裏側には、透過型液晶表示装置において周知のように、バックライト310が配置される。
【0216】
[発明の実施の形態]
次に、本発明に使用することができる光学フィルム積層体の製造の一実施形態を示す図30について説明する。図9又は図10に示すように、例えば非晶性PETからなる熱可塑性樹脂基材1は、積層体作成装置20による製膜と、オーブン30内での空中補助延伸、染色装置40における2色性色素による染色、及びホウ酸水溶液槽50における水中延伸を経て、基材1上に厚み10μm以下の、具体的には、厚み3〜4μmの偏光膜3が形成された光学フィルム積層体400となって、延伸装置外に送り出される。ここで、光学フィルム積層体400は、一旦ロール状に巻かれても良いし、そのまま連続的に次工程に送られるようにしても良い。図30に示される光学フィルム積層体形成装置は、次工程として、セパレータフィルム貼り合せステーション500と、欠点検査ステーション600とを備える。
【0217】
セパレータフィルム貼り合せステーション500は、一対の貼り合せローラ501、502を備える。このセパレータフィルム貼り合せステーション500においては、光学フィルム積層体400は、偏光膜3を下側にして貼り合せローラ501、502間に送り込まれる。セパレータフィルム503は、セパレータフィルム503のロール503aから繰り出され、光学フィルム積層体400の下側に重なる状態で貼り合せローラ501、502間に送り込まれる。重ねられる光学フィルム積層体400とセパレータフィルム503の間には、これらが貼り合せローラ501、502間に入る直前に、粘着剤504aが層状に付与される。したがって、光学フィルム積層体400とセパレータフィルム503とが貼り合せローラ501、502を出るときには、光学フィルム積層体400の偏光膜3の面に粘着剤層504を介してセパレータフィルム503が積層されたセパレータフィルム付光学フィルム積層体510が形成される。この段階で、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510は、一旦ロールに巻いても良い。セパレータフィルム503は、粘着剤層504に面する側の表面が離型処理されており、その粘着剤層504に対する接着力は、偏光膜3と粘着剤層504との間の接着力よりも弱くされている。したがって、後述するように、セパレータフィルム503が光学フィルム積層体400から剥がされるとき、粘着剤層504は、光学フィルム積層体400の側に残されるようになる。この粘着剤層504は、光学フィルム積層体400が表示パネル等の他の部材に貼り付けられるときの、粘着剤層として使用される。
【0218】
欠点検査ステーション600は、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510の基材1の表面に基準点マークMを印字する基準点印字手段610を備える。この基準点印字手段610は、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510の送り方向先導端付近の適切な個所に、該セパレータフィルム付光学フィルム積層体510の長さ方向位置の基準となる標識を付与するものである。
【0219】
図30に示す例では、貼り合せローラ501、502の対を出たセパレータフィルム付光学フィルム積層体510は、そのまま基準点印字手段610を通って送られる。印字手段610の下流側には側長ローラ611からなる送り量計測手段が配置されている。この測長ローラ611は、その回転量により、該測長ローラ611を通って送られたセパレータフィルム付光学フィルム積層体の送り量を計測し、計測信号を、光学フィルム積層体形成装置に設けられた記憶演算部620の積層体送り量演算手段620aに送信する。
【0220】
欠点検査ステーション600は、測長ローラ611より送り方向下流側にセパレータフィルム剥離部601を備える。このセパレータフィルム剥離部601は、一対の案内ローラ602、603と、剥離されたセパレータフィルム503を案内する剥離フィルム案内ローラ604、及び剥離されたセパレータフィルム503を巻き取る巻き取りローラ605を有する。セパレータフィルム503が剥離された光学フィルム積層体400は、偏光膜3の表面に粘着剤層504が残された形態である。この粘着剤層504を有する光学フィルム積層体400は、欠点検査部630に送られる。欠点検査部630は、基準点読取り手段631と、光源632及び光検知部材633からなる透過光検出方式の光学的欠点検出手段とにより構成される。基準点読取り手段631の読取り信号は、記憶演算部620の基準点読取り時間記憶手段620bに送られて、基準点が検出された時刻が記憶される。光学的欠点検出手段からの欠点検出信号は、記憶演算部620の欠点検出時間演算手段620cに送られ、該欠点検出時間演算手段620cは、その欠点が検出された時刻を演算して記憶する。積層体送り量演算手段620aと、基準点読取り時間記憶手段620b、及び欠点検出時間演算手段620cからの信号は、光学フィルム積層体形成装置に設けられた制御装置670の欠点位置演算部672に入力され、欠点位置演算部672は、これらの入力を受けて、基準点マークMからの欠点の位置を演算し、欠点位置信号を、記憶演算部620の欠点マーク印字指令生成部620dに送る。
【0221】
欠点検査ステーション600を通った光学フィルム積層体400は、次に、セパレータフィルム貼り付けステーション640に通される。このセパレータフィルム貼り付けステーション640は、セパレータフィルム503のロール503aから繰り出されるセパレータフィルム503を、光学フィルム積層体400の偏光膜3上に残された粘着剤層504により該光学フィルム積層体400に貼り合せるための貼り合せローラ641、642を備える。貼り合せローラ641、642を出た光学フィルム積層体400は、セパレータフィルム503が貼り付けられたセパレータ付光学フィルム積層体510である。ここで貼り付けられるセパレータフィルム503としては、セパレータフィルム剥離部620において剥離されたセパレータフィルムを使用してもよいし、別に準備したセパレータフィルムを使用してもよい。
【0222】
貼り合せローラ641、642を出たセパレータフィルム付光学フィルム積層体510は、任意に設けられる第2の欠点検査ステーション650に通される。この第2の欠点検査ステーション650は、基準点検出手段651と、光学的欠点検出手段652とを備える。光学的欠点検出手段652は、セパレータ付光学フィルム積層体510のセパレータフィルム503の表面に光を照射する光源652aと、セパレータフィルム503の表面からの反射光を受ける受光部652bとからなる。この光学的欠点検出手段652は、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510における粘着剤層504の欠陥、特にその表面欠陥を検出する。基準点検出手段651の検出信号は、基準点読取り時間記憶手段620bに送られ、受光部652bの検出信号は、欠点検出時間演算手段620cに送られる。
【0223】
第2の欠点検査ステーション650を通過したセパレータ付光学フィルム積層体510は、測長ローラ660を備える送り量計測手段を通って送られ、積層体510の送り量が計測される。この計測された送り量を表す信号は、光学フィルム積層体形成装置に設けられた制御装置670の基準点照合部671に送られる。測長ローラ660の下流側には基準点読取手段661が設けられ、該基準点読取手段661は、光学フィルム積層体400上に形成された基準点のマークMを読み取って、該マークMが通過した時刻に関する情報の信号を制御装置670の基準点照合部671に送る。基準点照合部671は、測長ローラ660及び基準点読取手段661からの信号を受けて、基準点マークMからの積層体の送り量に関する信号を、記憶演算手段620の欠点印字指令生成部620dに入力する。欠点印字指令生成部620dは、欠点位置演算部672からの欠点位置信号と、基準点照合部671からの送り量信号とに基づいて、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510上の欠点の位置に欠点マークDを印字する印字指令を生成する。この印字指令は、基準点読取手段661の下流側に配置されたマーク印字装置662に与えられ、該マーク印字装置662を作動させて、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510の熱可塑性樹脂機材上の、欠点に対応する位置に欠点マークDを印字する。印字されたセパレータフィルム付光学フィルム積層体510は、ロール680として巻き取られる。
【0224】
上記実施形態では、欠点位置は欠点マークDとして積層体510上に印字されるものとして説明したが、代替的には、個々の積層体510のロール680に該ロールを識別する識別記号を付し、他方では、欠点位置を積層体510のロール680を識別する識別記号に関連させて、記憶演算部620に記憶されておくようにすることもできる。このような構成においては、該積層体510のロール680を使用する後工程において、該ロールの識別記号に基づいて、記憶演算部から該ロールの欠点位置を読み出し、光学フィルム積層体の欠点位置を認定することができる。この場合には、ロール680に巻かれる際の積層体510の後尾端が、ロール680から送り出される際の先導端となるため、該後尾端にも基準点を印字しておき、後尾端に印字された基準点と先導端に印字された基準点との間の距離から、該後尾端の基準点と欠点位置との関係を把握することができる。
【0225】
図31は、本発明の他の実施形態を示す図30と同様の、光学的積層体ロールの製造工程の概略図である。図31において、図30の実施形態におけるものと対応する部分は、図30と同一の符号を付して、説明は省略する。図31の実施形態が図30の実施形態と異なる点は、光学フィルム積層体400の偏光膜3の側にセパレータフィルム503が接合される前に、該偏光膜3の面に光学機能フィルム800が接着剤801により接着されることである。光学機能フィルム800は、先に述べた1/4波長位相差フィルム、視野角補償用フィルム、その他、この種の技術分野において使用されている光学的補償用フィルムのいずれであってもよい。この光学機能フィルム800は、ロール800aから繰り出され、案内ロール802を介して送られて、対をなす貼り付けロール803、804により光学フィルム積層体400に接着され、光学フィルム中間積層体510aとなる。したがって、この実施形態では、セパレータフィルム503は、該光学機能フィルム800の上に粘着剤層504を介して貼り付けられて、光学フィルム積層体510bが形成される。その他の点では、この実施形態は、図30に示す実施形態と同一である。
【0226】
図32に示す実施形態は、図31に示す実施形態とは異なり、光学フィルム積層体400の偏光膜3の側にセパレータフィルム503は接合されず、代わりに、該偏光膜3の面に光学機能フィルム800が接着剤801により接着される。光学機能フィルム800が接着された後で、延伸に使用した熱可塑性樹脂基材1が、剥離ローラ810、811において偏光膜3から剥がされ、光学フィルム中間積層体510cが形成される。剥がされた基材1は、案内ローラ812を経てロール813に巻き取られる。
【0227】
基材1が剥がされた光学フィルム中間積層体510cは、光学機能フィルム800の面上に、基準点印字手段610により基準点を表すマークMが印字される。次いで、光学フィルム中間積層体510cは、測長ローラ611を通ってセパレータフィルム貼り付けステーション500Aに送られる。このセパレータフィルム貼り付けステーション500Aでは、セパレータフィルム503のロール503aから繰り出されたセパレータフィルム503が、光学フィルム中間積層体510cの基材1が剥がされた面に重なるように送り込まれ、セパレータフィルム503と偏光膜3との間に粘着剤504aが粘着剤層504を形成するように供給され、該セパレータフィルム503は、この粘着剤層504を介して、貼り付けローラ501、502により偏光膜3に貼り付けられ、光学フィルム積層体510dが形成される。
【0228】
この光学フィルム積層体510dは、剥離ローラ602、603を通る位置でセパレータフィルム503が剥がされて、光学フィルム中間積層体510cの偏光膜3に粘着剤層504が付着した層構成の積層体となる。この積層体は、欠点検査ステーション630を経てセパレータフィルム貼り付けステーション640に送られ、該ステーション640において、積層体の偏光膜3の面にある粘着剤層504により、セパレータフィルム503が積層体に接合されて、光学フィルム積層体510dが形成される。欠点マークIは、印字装置662aにより、光学機能フィルム800上に印字される。その他の点では、図32に示す実施形態は、図31に示すものと同一である。
【0229】
図33は、本発明のさらに他の実施形態を示す図32と同様な図である。この実施形態が図32に示す実施形態と異なる点は、基材1が剥がされた積層体の面にセパレータフィルム503を貼り付ける前に、第2の光学機能フィルム850が、接着剤851により、基材1が剥がされた積層体の偏光膜の面に接着されることである。第2の光学機能フィルム850は、ロール850aから繰り出され、案内ローラ852を介して送られ、対をなす貼り付けローラ803a、804aにより、積層体510cに貼り付けられて、光学フィルム中間積層体510eが形成される。この実施形態においては、該第2の光学機能フィルム850の上に、粘着剤層504aにより形成される粘着剤層504を介して、セパレータフィルム503が接合されて、光学フィルム積層体510fが形成される。基準点印字手段610と測長ローラ611は、セパレータフィルム503のための貼り付けローラ501、502より下流側に配置されているが、その機能は同じである。
【0230】
図34は、本発明において採用することができる長さ方向切断工程の一実施形態を示す斜視図である。この工程において使用されるセパレータフィルム付積層体は、例えば、図30〜図33の工程のいずれにより形成されたものでも良いが、ここでは、図32に示す工程により製造されたセパレータフィルム付光学フィルム積層体510dのロール680に関連して説明する。
【0231】
図34において、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510dのロール680が積層体繰り出し装置700に設置される。この装置700は、ロール680を回転自在に支持する支持軸701を備えており、該装置700内には、ロール680から繰り出される積層体510dが送り経路で蛇行するのを抑制するための蛇行制御装置702が設けられる。この蛇行制御装置702は、積層体510dの縁部に接触して該縁部の位置を検出する縁部センサー702aを備え、このセンサー702aにより検出された縁部の位置に応じて支持軸701の軸方向位置を調節する信号を生成する。
【0232】
図示実施形態では、積層体510dの偏光膜3が長辺と短辺を有する矩形形状の液晶表示パネルに貼り付けられるように構成された光学的表示装置の製造に関連して、偏光膜を適切な寸法に切断するために設けられた切断装置900が備えられる。この切断装置900は、広幅のセパレータフィルム付光学フィルム積層体510dを、液晶表示パネルの長辺と短辺とにそれぞれ対応する幅の光学フィルム積層体ストリップに切断するように構成されている。
【0233】
図34において、セパレータフィルム付光学フィルム積層体510dのロール680から繰り出された積層体510dは、蛇行制御装置702により蛇行を抑制されて、対の送りローラ901、902により、長さ方向に送られる。送りローラ901、902の下流側には、3枚の円盤状回転切断刃903a、903b、903cが横方向に間隔をもって配置されている。切断刃903aは、積層体510dの縁部510hを所定幅だけ切り落とす位置に配置される。切断刃903aと切断刃903bとの間の間隔は、該積層体510dの偏光膜3が貼り付けられる液晶表示パネルの短辺の寸法に対応する距離になるように設定される。同様に、切断刃903bと切断刃903cとの間の間隔は、該積層体510dの偏光膜3が貼り付けられる液晶表示パネルの長辺の寸法に対応する距離になるように設定される。また、切断刃903cは、積層体510dの縁部510hとは反対側の縁部を切り落とす作用も果たす。
【0234】
切断刃903aと切断刃903bとにより、液晶表示パネルの短辺に対応する幅の積層体ストリップ910aが形成され、切断刃903bと切断刃903cとにより長辺対応の幅を有する積層体ストリップ910bが形成される。長辺対応幅の積層体ストリップ910bは、そのまま送りローラ911、912により長さ方向に送られて、ロール920に巻き取られる。短辺対応幅の積層体ストリップ910aは、案内ローラ913により、長辺対応幅の積層体ストリップ910bよりも高い位置に案内され、送りローラ914、915により長さ方向に送られて、ロール921に巻き取られる。
【0235】
本発明によれば、上述の実施形態からも理解される通り、連続ウェブ状の光学フィルム積層体、すなわちセパレータフィルム付積層体を、偏光膜3の延伸方向である長さ方向に平行に、所定の幅で切断して、所定幅の連続ウェブ状積層体ストリップを形成するので、偏光膜3の吸収軸の方向は、高い精度で積層体ストリップの長さ方向に一致するようになる。従来は、幅広の光学フィルム積層体をロール状に巻いた状態で所定幅に切断していたが、この方法では、高い精度で偏光膜の吸収軸をストリップの長さ方向に一致させることができなかった。上記実施形態を参照して前述した本発明の方法は、ロール状態で切断する従来の方法に比べて、格段に高い精度をもたらす。上述の実施形態において、切断刃903a、903b、903cを等間隔に配置すれば、同一幅の2つの積層体ストリップが得られる。また、切断刃を2枚使用すれば、1つの積層体ストリップが形成される。
【0236】
図35は、図34を参照して上述した工程により製造された積層体ストリップロール920、921を使用して、偏光膜3を液晶表示パネルWの両面に、偏光膜3の吸収軸を直交させて貼り付けることにより、液晶表示ユニット1000を製造する工程を概略的に示すものである。図35を参照すると、パネルWの長辺対応幅の積層体ストリップ910bは、ロール920から繰り出され、長さ方向に送られる。ロール920から繰り出された積層体ストリップ910bは、識別情報読取り手段920aの下に通され、識別情報が読み取られる。読み取られた識別情報により積層体ストリップ910bには欠点が存在しないものと判断された場合には、液晶表示パネルWの短辺に対応する長さ方向間隔で、積層体ストリップ910bに対し、長さ方向に対して直角の方向である幅方向に、基材1の表面から偏光膜3及び粘着剤層504を通り、セパレータフィルム503の面に達する深さまでスリット921が形成される。このスリットにより形成される切り込みを「ハーフカット」と呼ぶ。このハーフカットにより積層体ストリップ910bの長さ方向に隣接する2つの位置に形成されるスリット921の間には、光学機能フィルム800と接着剤層801と偏光膜3及び粘着剤層504からなる偏光膜積層体シート922が形成される。この偏光膜積層体シート922は、粘着剤層504によりセパレータフィルム503に付着した状態にある。セパレータフィルム503は、多数の偏光膜積層体シート922を剥離可能に支持し、搬送するように作用するので、キャリアフィルムと呼ばれる。
【0237】
スリット921が形成された積層体ストリップ910bは、偏光膜貼り合せステーション950に送られる。この偏光膜貼り合せステーション950には、液晶表示パネルWが、積層体ストリップ910bとは反対側から、積層体ストリップ510b上の偏光膜積層体シート922と同期した関係で送られ、偏光膜積層体シート922は、セパレータフィルムすなわちキャリアフィルム503から剥がされて、液晶表示パネルWの上側の面に貼り付けられる。偏光膜3が一方の面に貼り付けられた液晶表示パネルWは、該液晶表示パネルWが貼り合せステーション950に送り込まれた方向に対して直角方向に、反転旋回部960に送られる。
【0238】
一方、短辺対応幅の積層体ストリップ910aは、ロール921から繰り出され、長さ方向に送られる。ロール921から繰り出された積層体ストリップ910aは、識別情報読取り手段923の下に通され、識別情報が読み取られる。ここで、積層体ストリップ910aには欠点が存在しないものと判断された場合には、液晶表示パネルWの長辺に対応する長さ方向間隔で、該積層体ストリップ910aに、長さ方向に対して直角の方向である幅方向に、光学機能フィルム800の表面から接着剤層801と偏光膜3及び粘着剤層504を通り、セパレータフィルム503の面に達する深さまで、スリット924がハーフカットにより形成される。このハーフカットにより、積層体ストリップ910aの長さ方向に隣接する2つの位置に形成されるスリット924の間には、光学機能フィルム800と接着剤層801と偏光膜3及び粘着剤層504からなる偏光膜積層体シート925が形成される。この偏光膜積層体シート925は、粘着剤層504によりセパレータフィルム503に付着した状態にある。
【0239】
スリット924が形成された積層体ストリップ910aは、第2の偏光膜貼り合せステーション951に送られる。偏光膜貼り合せステーション951には、片側の面に偏光膜シート922が貼り合された液晶表示パネルWが、積層体ストリップ910aに対して直交する方向に、積層体ストリップ910a上の偏光膜積層体シート925と同期した関係で、反転旋回部660において、裏返しに反転され、かつ、90°旋回された状態で送られる。第2の偏光膜貼り合せステーション951において、偏光膜積層体シート925は、セパレータフィルム503から剥がされて、液晶表示パネルWの、反転により上側となった面に貼り付けられる。この工程により、液晶表示パネルWの両側の面には、偏光膜3が、互いの吸収軸を直交させた関係で貼り付けられることになる。
【0240】
積層体ストリップ910aにおいて、欠点マークが検出されると、欠点マークの下流側縁部から所定距離だけ下流側に離れた位置と、該欠点マークの上流側縁部から所定距離だけ上流側に離れた位置の2ヶ所において、ハーフカットにより、積層体ストリップ910aに、スリット924a、924bが形成される。これらのスリット924a、924b間に形成される偏光膜積層体シート925aは、不良シートとして、偏光膜貼り合せステーションに送られることなく、図示しない不良シート排出機構により、不良シート排出経路に排出される。通常は、スリット924a、924b間に形成される偏光膜積層体シート925aは、2つの隣接するスリット624間に形成される正常な偏光膜積層体シート925より長さが短い。したがって、不良シートとして廃棄される材料を減少させることができる。しかし、欠点が積層体ストリップ910aの長さ方向に続く長い大きさのものである場合、又は、複数の欠点が積層体ストリップ910aの長さ方向に連なって存在する場合には、不良の偏光膜積層体シート925aは、正常な偏光膜積層体シート925より長くなる。このような場合には、不良シートの排出を容易にするために、長い不良の偏光膜積層体シート925aの中間部に追加のスリットを形成して、不良偏光膜シートの長さを短くすることができる。
【0241】
積層体ストリップ910bにおいても、欠点マークが検出されると、欠点マークの下流側縁部から所定距離だけ下流側に離れた位置と、該欠点マークの上流側縁部から所定距離だけ上流側に離れた位置の2ヶ所において、ハーフカットにより、積層体ストリップ910bに、スリット921a、921bが形成される。これらのスリット921a、921b間に形成される偏光膜積層体シート922aは、不良シートとして、偏光膜貼り合せステーションに送られることなく、図示しない不良シート排出機構により、不良シート排出経路に排出される。
【0242】
図36は、積層体ストリップ910aのロール921を使用して、液晶表示パネルへの積層体の貼り付けを行う連続貼り付け装置の一例を示す概略図である。この例では、セパレータフィルム503が、光学機能フィルム800と接着剤層801と偏光膜3及び粘着剤層504からなる偏光膜積層体シート925、925aのキャリアフィルムとなる。したがって、以下の説明においては、符号503で示されるフィルムをキャリアフィルムと呼び、このキャリアフィルム503が積層された積層体を、キャリアフィルム付積層体と呼ぶことがある。
【0243】
この連続貼り付け装置は、ロール921が製造される工程において、検出された欠点の情報に基づいて、光学フィルム積層体ストリップ910aにスリット924を形成するための切断位置Sを定めておき、その切断位置Sについての情報を、記憶装置に格納しておくように構成される。
【0244】
切断位置Sは、図37に示されるように、欠点Dの位置に対し、その送り方向にみて上流側及び下流側のそれぞれに、所定の距離D1、D2だけ離れた位置として定める。この欠点Dを挟む2つのスリット切断位置に挟まれる領域は、欠点を含む不良シート925aとなる領域である。さらに、欠点を含まない領域では、積層体が貼り合わせられる液晶表示パネルの長辺に対応する間隔をおいて、スリット切断位置Sが定められる。図37では、欠点を含まない領域に定められるスリット切断位置の、送り方向に隣接する2つの間の部分が欠点のない正常シート925を形成し、積層体送り方向の長さがXαで示されている。これに対して、欠点Dを挟む2つのスリット切断位置の間の上述の不良シート925aの領域は、長さがXβで示されている。欠点の大きさ及び数によるが、通常は、長さXβの方がXαより小さい。
【0245】
このスリット切断位置の演算は、例えば図32に示す装置に示された制御装置670において行うようにすることができる。演算されたスリット切断位置情報は、図32に示される情報媒体690に積層体ストリップ910aのロール921を識別する識別情報とともに格納することができる。図36には、連続貼り付け装置に備えられる制御装置750が、図32に示す装置の情報媒体690から、上述した識別情報とともに、スリット切断位置情報を受け取るように示されている。受け取られた識別情報とスリット切断位置情報は、図36に示す連続貼り付け装置1100の制御装置750内の記憶装置770に格納される。
【0246】
連続貼り付け装置1100は、積層体ストリップ910aのロール921を回転自在に支持するロール支持装置1110を備え、該ロール支持装置1110に支持された積層体ストリップ910aのロール921を積層体送り出し方向に所定の速度で駆動することにより、該ロール921から、積層体ストリップ910aが所定の送り速度で送り出される。ロール921から送り出された該セパレータ付光学フィルム積層体ストリップ910aは、図35に関連して説明した識別情報読取り手段923を含む識別情報読取装置1120を経て、測長ローラ1130、1131に通される。識別情報読取装置1120は、ロール921から繰り出された積層体ストリップ910aの識別情報を読み取り、読み取った識別情報を、制御装置750の識別情報受信部760に送る。測長ローラ1130、1131は、積層体ストリップ910aの送り量を計測し、その計測した送り量に関する情報を繰出し情報として制御装置750に送る。
【0247】
測長ローラ1130、1131を通過した積層体ストリップ910aは、上下動可能に支持され所定の力で下方に弾性的に付勢されたアキュームローラ1140を経て、スリット切断ステーションAに送られる。スリット切断ステーションAの下流側には、積層体ストリップ910aを所定の速度で送るためのフィードローラ1170が配置されており、切断ステーションAにおいて、切断が行われる僅かな時間の間、該フィードローラ1170が停止することにより、積層体ストリップ910aがスリット切断ステーションAで停止される。フィードローラ1170の下流側には、第2のアキュームローラ1180が配置されている。このアキュームローラ1180は、アキュームローラ1140と同じ構成である。
【0248】
スリット切断ステーションAには、スリット切断装置1150と、該スリット切断装置1150の上流側及び下流側のそれぞれに配置された切断位置確認装置1160とを備える。制御装置750は、切断位置確認装置1160からの確認信号を受けて、識別情報読取装置1120からのロール識別情報に基づき記憶装置770に格納されているスリット切断位置情報を取得し、切断の指令をスリット切断装置1150に送る。スリット切断装置1150が作動して、光学フィルム積層体ストリップ910aにスリット924が形成されると、フィードローラ1170が作動して、キャリアフィルム付光学フィルム積層体ストリップ910aの送りを再び開始する。既に述べたように、キャリアフィルム付光学フィルム積層体ストリップ910aは、アキュームローラ1140の上流側では、常時送り駆動されており、スリット切断のため、切断ステーションAにおいて積層体の送りが停止されたときには、これらアキュームローラ1140、1180が上下動して、積層体の送り量の差を吸収する。
【0249】
スリット切断ステーションAにおけるスリット切断により形成されるスリット924は、セパレータ付光学フィルム積層体ストリップ910aのキャリアフィルム503とは反対側から、該キャリアフィルム503と粘着剤層504との間の界面まで達する深さであり、送り方向に隣接する2つのスリット924の間には、光学フィルムのシート925、925aが形成される。このシート925、925aは、キャリアフィルム503に支持された状態で、次工程に送られる。このようにして形成されるシートは、欠点Dを含む場合には不良シート925aであり、欠点を含まない場合には正常シート925である。
【0250】
第2のアキュームローラ1180を通過した積層体ストリップ910aは、次に、不良シート排除ステーションCを通過する。この排除ステーションCには、制御装置750から不良シート925aについての情報が送られ、この情報を受けて、排除ステーションCに備えられた排除装置1190が作動し、不良シート925aを送り経路外に排出する。この排除装置1190は、不良シート受取り用フィルム1190aを送り出す受取フィルムロール1190bと、該受取フィルムロール1190bから引き出された不良シート受取り用フィルム1190aを引き取るための引取りロール1190dとからなる。不良シート受取り用フィルム1190aは、受取フィルムロール1190bから、案内ローラ1190cを介して引取りロール1190dに送られる。引取りロール1190dは、駆動ロールであり、不良シート925aが排除装置1190の近くに達したとき駆動されて、不良シート受取り用フィルム1190aを図36に矢印で示す方向に送るように作動する。積層体ストリップ910aの送り経路には、該積層体ストリップ910aを挟んで案内ローラ1190cと対向する位置に、積層体経路移動ローラ1190eが、図36において左方向に移動可能に配置されている。不良シート925aが排除装置1190の近くに達して、引取りロール1190dが作動を始めると、該経路移動ローラ1190eが左方向に移動し、積層体ストリップ910aが案内ローラ1190cに接触するようになるまで該積層体の送り経路を移動させる。この経路の移動により、キャリアフィルム上の不良シート925aは、不良シート受取り用フィルム1190aに移される。これによって、不良シートの排除が完了し、引取りロール1190dは停止され、経路移動ローラ1190eは、右方向の元の位置に戻される。
【0251】
不良シート排除ステーションCを通過したキャリアフィルム付積層体ストリップ910aは、直進状態を確認するための直進状態確認装置1230を経て、貼合せステーションBに送られる。この貼合せステーションBには、該ステーションに送り込まれる正常シート925と同期したタイミングで、液晶表示パネルWが送り込まれる。液晶表示パネルWは、図35に示す反転旋回装置960から1枚ずつ送り出され、液晶表示パネル搬送装置1300により、貼合せステーションBに送られる。
【0252】
貼合せステーションBにおいて、光学フィルム積層体の正常シート925は、キャリアフィルム503から剥がされて、貼合せステーションBに送られてきた液晶表示パネルWの上に重なるように送られる。貼合せステーションBには貼合せ装置1200が配置されており、この貼合せ装置1200は、貼合せステーションBに送られてきた液晶表示パネルWの下に位置するように配置された下側貼合せローラ1200aと、貼合せステーションBに送られてきた光学フィルム積層体の正常シート925の上に位置する上側貼合せローラ1200bとから構成される。上側貼合せローラ1200bは、図34に破線で示すように、上下方向に移動可能である。
【0253】
貼合せステーションBには、正常シート先端検出装置1220が配置されて、正常シート925が貼合せ位置に達したことを検出する。正常シート925が貼合せ位置に到達したことが検出されると、上側貼合せローラ1200bが図36に実線で示す位置に降下し、該正常シートを液晶表示パネルWに貼り付ける。光学フィルム積層体をキャリアフィルムに接合する粘着剤層504は、正常シート925がキャリアフィルム503から剥がされるときに、該正常シート925の側に残り、この粘着剤層504によって、正常シート925が液晶表示パネルWに接着される。
【0254】
正常シート925をキャリアフィルムから剥がすための剥離機構は、鋭角の先端縁部を有する剥離部材1211を備える。該剥離部材1211は、剥がされたキャリアフィルム503を先端縁部において鋭角的に折り返すように作用し、この折り返されたキャリアフィルム503は、引取りローラ1212により図36において右方向に引き取られ、ロール1210に巻き取られる。キャリアフィルム503から剥がされた正常シート925は、そのまま送り方向に進んで、貼合せ位置に達する。貼合せ位置では、上側貼合せローラ1200bが図36に実線で示す位置に降下し、下側貼合せローラ1200aとの間に正常シート925を挟んで該正常シート925を液晶表示パネルWに圧着し、該液晶表示パネルWに貼り付ける。この貼り付けステーションBにおける各部の構成の詳細を図38に示す。
【0255】
以上述べた方法及び装置により、本発明の薄型偏光膜を有する光学フィルム積層体のシートを、連続的に、液晶表示パネルに貼り付けることができる。表示パネルが有機EL型のパネルである場合には、通常は、偏光膜の貼り付けは、パネルの片側のみへの貼り付けが行われる。
【0256】
以上、本発明を特定の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明は、図示し説明した構成以外にも、幾多の変更が可能である。したがって、本発明は、図示し説明した構成に限定されるものではなく、その範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ定められるべきである。
【符号の説明】
【0257】
1 基材
2 PVA系樹脂層
3 偏光膜
4 光学機能フィルム
5 第2光学機能フィルム
7 PVA系樹脂層を含む積層体
8 延伸積層体
8’ 延伸積層体のロール
8’’ 不溶化された延伸積層体
9 着色積層体
9’ 架橋された着色積層体
10 光学フィルム積層体
10a 粘着剤層付光学フィルム積層体
11 光学機能フィルム積層体
20 積層体作製装置
21 塗工手段
22 乾燥手段
23 表面改質処理装置
30 空中補助延伸処理装置
31 延伸手段
32 巻取装置
33 オーブン
40 染色装置
41 染色液
42 染色浴
43 繰出装置
50 ホウ酸水中処理装置
51 ホウ酸水溶液
52 ホウ酸浴
53 延伸手段
60 不溶化処理装置
61 ホウ酸不溶化水溶液
70 架橋処理装置
71 ホウ酸架橋水溶液
80 洗浄装置
81 洗浄液
90 乾燥装置
91 巻取装置
100 貼合せ/転写装置
101 繰出/貼合せ装置
102 巻取/転写装置
(A) 積層体作製工程
(B) 空中補助延伸工程
(C) 染色工程
(D) ホウ酸水中延伸工程
(E) 第1不溶化工程
(F) 第2不溶化を含む架橋工程
(G) 洗浄工程
(H) 乾燥工程
(I) 貼合せ/転写工程
200 貼合せ装置
200b 上側貼合せローラ
500 セパレータフィルム貼り付けステーション
503 セパレータフィルム
680 光学フィルム積層体ロール
630、650 欠点検出部
W 液晶表示パネル
670 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺寸法と短辺寸法とを有する矩形形状の光学パネルの2つの表面の少なくとも一方に、偏光膜を貼り付けることにより光学的パネル組立体を製造する方法であって、
連続ウェブ状の熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成した積層体に対し、
空中補助延伸とホウ酸水中延伸からなる2段階延伸により、総延伸倍率が5倍〜8.5倍となるように長さ方向に1軸延伸して、前記ポリビニルアルコール系樹脂層を10μm以下の厚みにする延伸工程と、
前記ポリビニルアルコール系樹脂膜に二色性物質を吸着させる吸着工程と、
を行って、厚みが10μm以下で前記長さ方向に吸収軸を有するポリビニルアルコール系樹脂層からなる偏光膜を形成することにより、少なくとも前記偏光膜を含む連続ウェブ状の光学フィルム積層体を形成する段階と、
前記光学フィルム積層体に、粘着剤層を介して、該粘着剤層に対する接着力が前記光学フィルム積層体と前記粘着剤層との間の接着力より弱いキャリアフィルムを剥離可能に貼り付けて、キャリアフィルム付光学フィルム積層体を形成する段階と、
前記キャリアフィルム付光学フィルム積層体に対し、前記光学パネルの前記長辺寸法又は前記短辺寸法の一方に対応する所定の長さ方向間隔で、該長さ方向に対し直角方向である幅方向に、前記光学フィルム積層体の側から前記粘着層に面した前記キャリアフィルムの面に達する深さの複数のスリットを形成して、該キャリアフィルム付光学フィルム積層体の長さ方向に隣接する2つのスリット間に、前記光学フィルム積層体のシートを形成し、前記キャリアフィルム上に複数の前記シートが連続的に支持された構成の連続状長尺シート積層体を形成する段階と、
前記長尺シート積層体上の前記シートの各々が、貼り合せ位置に順次に送られてくる前記光学パネルに同期する関係になるように、前記長尺シート積層体を貼り合せ位置に送り、前記光学フィルム積層体の側に前記粘着剤層を残して前記シートを順次、前記長尺シート積層体から剥がし、該シートを貼り合せ位置に送られてきた前記光学パネルに前記粘着剤層を介して貼り合せる段階と、
を含むことを特徴とする光学的パネル組立体の連続的製造方法。
【請求項2】
前記連続状長尺シート積層体を形成する段階の前に、前記キャリアフィルム付偏光膜積層体を、前記光学パネルの前記長辺寸法又は前記短辺寸法の他方に対応する所定幅で、該キャリアフィルム付偏光膜積層体の長さ方向に切断して、前記所定幅で長さ方向に連続する連続ストリップを形成し、
前記連続ストリップに対し、前記複数のスリットを形成して前記連続状長尺シート積層体を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連続状長尺シート積層体を形成する段階の前に、前記光学フィルム積層体に対して欠点検査を行う段階を含み、欠点が検出されたときには、その欠点についての情報を記録する段階を含むことを特徴とする請求項1又は積層体2に記載の方法。
【請求項4】
前記連続状長尺シート積層体を形成する段階において形成された前記光学フィルム積層体シートが前記欠点検査段階において検出された欠点を含むものである場合には、前記貼り合せ段階の前に、該欠点を含む前記光学フィルム積層体シートを前記キャリアフィルムから剥がして、前記光学フィルム積層体の送り経路外に排出する段階を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
連続状長尺シート積層体を形成する前記段階において形成された前記光学フィルム積層体シートが前記欠点検査段階において検出された欠点を含むものである場合には、該欠点を挟んで送り方向上流側及び下流側のそれぞれの方向に該欠点から所定の距離だけ離れた位置で前記スリットを形成することにより、欠点を含む光学フィルム積層体シートを形成することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記連続状長尺シート積層体を形成する段階において、前記スリットの形成は、欠点の有無に関係なく等間隔で行われ、前記光学フィルム積層体シートのうち、記録された欠点についての情報に基づいて欠点を含むものと判定されたシートは、不良シートとして識別されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記光学パネルは、光学的表示パネルであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学パネルは、有機EL表示パネルであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記光学パネルは、タッチセンサパネルであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項8に記載した方法であって、
前記偏光膜は、
単体透過率をT、偏光度をPとしたとき、
P>―(100.929T―42.4―1)×100(ただし、T<42.3)、および
P≧99.9(ただし、T≧42.3)
の条件を満足する光学特性を有するようにされたものである
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9に記載した方法であって、
前記偏光膜は、
単体透過率をT、偏光度をPとしたとき、
T≧42.5、及びP≧99.5
の条件を満足する光学特性を有するようにされたものである
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載した方法であって、前記空中補助延伸時の延伸倍率が3.5倍以下であることを特徴する方法。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載した方法であって、前記二色性物質の吸着は、水溶媒に、ヨウ素濃度0.12〜0.30重量%の範囲のヨウ素を含む染色液に前記ポリビニルアルコール系樹脂層を浸漬させることによって行われることを特徴とする方法。
【請求項15】
連続ウェブ状の熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成した積層体に対し、空中補助延伸とホウ酸水中延伸からなる2段階延伸により、総延伸倍率が5倍〜8.5倍となるように長さ方向に1軸延伸して、前記ポリビニルアルコール系樹脂層を10μm以下の厚みにする工程と、前記ポリビニルアルコール系樹脂膜に二色性物質を吸着させる工程と、を行って、厚みが10μm以下で前記長さ方向に吸収軸を有するポリビニルアルコール系樹脂層からなる偏光膜を形成することにより形成された、少なくとも前記偏光膜を含む連続ウェブ状の光学フィルム積層体に、粘着剤層を介して、該粘着剤層に対する接着力が前記光学フィルム積層体と前記粘着剤層との間の接着力より弱いキャリアフィルムを剥離可能に貼り付けることによって形成された、キャリアフィルム付光学フィルム積層体を使用して、長辺及び短辺を有する矩形形状のパネルに前記光学フィルム積層体を順次的に貼り付ける貼り付け装置であって、
前記キャリアフィルム付光学フィルム積層体を長さ方向に送る光学フィルム積層体送り機構と、
前記送り機構により長さ方向に送られる前記キャリアフィルム付光学フィルム積層体に対し、長さ方向に、前記パネルの前記長辺及び短辺の寸法の一方に対応する間隔をもって、前記キャリアフィルムとは反対側の前記光学フィルムの面から、前記キャリアフィルムの前記光学フィルムに隣接する面に達する深さのスリットを、前記キャリアフィルム付光学フィルム積層体の幅方向に、複数個、順次に形成して、長さ方向に隣接する2つの前記スリット間に、前記キャリアフィルムに支持された光学フィルムのシートを形成するスリット形成機構と、
前記パネルを貼り合せ位置に順次的に送るパネル送り機構と、
前記貼り合せ位置に順次的に送られてくる前記パネルと同期するように、該貼り合せ位置に向けて送り込まれる前記光学フィルムのシートの各々に対し、前記貼り合わせ位置の手前において、前記粘着剤層が前記光学フィルムのシートの側に残される状態で、前記光学フィルムのシートを前記キャリアフィルムから剥がしながら、該光学フィルムのシートを前記貼り合せ位置に送られてきた前記パネルに重ねるように送り込む、キャリアフィルム剥離機構と、
前記貼り合わせ位置に配置され、該貼り合わせ位置に送られてきた前記パネルと前記光学フィルムのシートとを前記粘着剤層を介して貼り合せる、貼り合わせ機構と、
を備えることを特徴とする貼り付け装置。
【請求項16】
光学フィルム積層体に対して欠点検査を行う欠点検査機構を備えることを特徴とする積層体15に記載の貼り付け装置。
【請求項17】
前記光学パネルは、光学的表示パネルであることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の貼り付け装置。
【請求項18】
前記光学パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の貼り付け装置。
【請求項19】
前記光学パネルは、有機EL表示パネルであることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の貼り付け装置。
【請求項20】
前記光学パネルは、タッチセンサパネルであることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の貼り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−73578(P2012−73578A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108632(P2011−108632)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】