説明

光学的情報再生装置および光学的情報記録媒体再生方法

【課題】反射率の異なる光学的情報記録媒体の再生時に、レーザノイズを低減するとともに、情報層に記録されているデータの消去を防止し、また光学的情報記録媒体の劣化を防ぐ。
【解決手段】 光学的情報記録媒体の反射率に応じて、半導体レーザの高周波重畳の振幅、もしくは半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比を、所定の値に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報再生装置および光学的情報記録媒体再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、例えば、特開2008−77796号公報(特許文献1)、特開2000−149032号公報(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1には、「レーザ出力を精度よく制御する。」とあり、解決手段として「レーザ3から出射され、光ディスク1に照射されるレーザ光のパワーを、アッテネータ4により減衰させる。」、または「レーザ出力が基準範囲に収まるように、レーザ光の強度をアッテネータ4により減衰させる場合におけるレーザ出力を制御する。」と記載されている。
【0004】
また特許文献2には、「光ディスク装置の各動作モードにおけるレーザパワー出力の最適化を図ることができる半導体レーザ駆動装置、光学ヘッド、光ディスク装置、および記録再生方法を提案する。」とあり、解決手段として「本発明の半導体レーザ駆動装置は、レーザダイオードに高周波電流を重畳する高周波重畳回路と、光ディスク装置における動作モードに応じて高周波電流の重畳周波数および振幅を可変にする重畳周波数可変回路とを備え、光ディスク装置における動作モードに応じて、半導体レーザの少なくとも第1の出力パワーから第2の出力パワーにおけるそれぞれの重畳周波数および振幅を変えるようにした。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−77796号公報
【特許文献2】特開2000−149032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ピックアップ装置のレーザ光源に半導体レーザを用いるとき、光学的情報記録媒体(以下、説明の簡略化のため、光ディスクと記す)の情報層で反射した反射光が半導体レーザに戻ると、半導体レーザの光出力が変動してレーザノイズが発生する。
【0007】
一般に、レーザノイズは相対強度雑音RIN(Relative Intensity Noise)で表すことができる。半導体レーザの平均パワーをPo、発光パワーの揺らぎをδP、測定帯域幅をΔfとすると、RINは次式で定義される。
【0008】
RIN=(δP/Po)/Δf (数1)

(数1)より、半導体レーザの平均パワーPoが低出力であるほどRINは大きくなる、つまりレーザノイズが劣化する。
光ディスクの再生時は、情報層に記録されているデータの消去を防止するため、また光ディスクの劣化を防ぐために、低出力のパワーであることが望ましい。しかし、(数1)からわかるように、低出力のパワーのときはレーザノイズが大きくなり、良質な再生を行うことが困難である。
【0009】
レーザノイズを軽減するための手法として、1つには光減衰器(アッテネータと呼ばれる)の使用がある。
【0010】
特許文献1は、光減衰器を用いてレーザの強度を減衰させる場合のレーザ出力と、光減衰器を用いずにレーザの強度を減衰させない場合のレーザ出力とを、切り替えるように制御する制御手段を設けている。
【0011】
しかし、特許文献1のように光ピックアップ装置に光減衰器を加える構成は、光減衰素子自体を機械的もしくは電気的に制御する手段が必要となるために、光ピックアップ装置の部品点数増加、サイズ大型化などの問題が生じる。
【0012】
固定の光減衰手段を設けた場合でも、半導体レーザの定格光量を大きくすることが必須になるため、半導体レーザのコスト増加が懸念される。
【0013】
レーザノイズを軽減するための別の手法として、高周波重畳と呼ばれる手法がある。
高周波重畳とは、一般的に数百MHzで高周波変調した駆動電流をレーザのDC出力に重畳し、レーザをマルチ縦モード発振させる方式のことである。
高周波重畳を行うことで、レーザの発振スペクトルはマルチモードスペクトルになり、レーザノイズは反射戻り光に対して安定になる。
【0014】
特許文献2は、情報の記録および再生の動作モードに応じて高周波重畳の条件を最適に制御することで、レーザノイズを低減することが開示されている。
しかし、特許文献2は、再生時と記録時で高周波重畳を最適に制御しているが、反射率の異なる光ディスク再生時に、高周波重畳を最適制御する方法については特に開示されていない。
同じ規格の光ディスクにおいても、個々の光ディスクごとに反射率は異なってくる。光ディスクの反射率が異なると、レーザへの戻り光量が変化し、レーザノイズも変化する。
【0015】
本発明は、高周波重畳を用いて、反射率の異なる光ディスクの再生時に、レーザノイズを低減するとともに、情報層に記録されているデータの消去を防止し、また光ディスクの劣化を防ぐことが可能な光学的情報再生装置または記録装置(以下、説明の簡略化のため、これらの光学的情報再生装置または記録装置を、光ディスク装置と記す)および光ディスク再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、その一例として特許請求の範囲に記載する構成により達成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、反射率の異なる光ディスクの再生時に、レーザノイズを低減するとともに、情報層に記録されているデータの消去を防止し、また光ディスクの劣化を防ぐことが可能な光ディスク装置および光ディスク再生方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光ディスク装置および光ピックアップ装置を示した図である。
【図2】一般的な半導体レーザの発光特性と、高周波重畳した駆動電流波形および発光波形の関係を示した図である。
【図3】実施例1における、光ディスク再生処理のフローチャートを示した図である。
【図4】実施例1における、光ディスク再生処理のフローチャートを示した図である。
【図5】一般的な半導体レーザの発光特性と、高周波重畳した駆動電流波形および発光波形の関係を示した図である。
【図6】実施例2における、光ディスク再生処理のフローチャートを示した図である。
【図7】実施例2における、光ディスク再生処理のフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を適用した光ディスク装置および光ピックアップ装置について、以下の実施例で説明する。実施例では例としてBDについて記すが、DVDや他の記録方式であってもなんら構わない。
【実施例1】
【0020】
図1は、光ディスク装置および光ディスク装置に搭載された光ピックアップ装置の概略構成を示す。
【0021】
まず、光ピックアップ装置100について説明する。
【0022】
半導体レーザ11から光束が発散光として出射される。半導体レーザは直線偏光の光束を出射するのが一般的であり、半導体レーザ11からも直線偏光の光束を出射することを想定する。なお、半導体レーザ11から出射された光束の中心光路(以下、光軸と略す。)を鎖線で、出射された光束の最外周光路を点線で、それぞれ図示する。
【0023】
半導体レーザ11から出射された光束は、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと略す。)12を透過する。
【0024】
ただし、一部の光束はPBS12を反射し、フロントモニタ13に入射する。一般的に光ディスクの記録再生動作の精度を良くするためには、光ディスクに照射される光束の光量を所望の値に制御することが必須となる。フロントモニタ13はレーザ光源からの光量変化を制御回路にフィードバックすることにより、光束の光量を制御することを可能とする。
【0025】
PBS12を透過した光束は、コリメートレンズ14によって略平行な光束に変換される。コリメートレンズ14を透過した光束は、1/4波長板(図示せず)を透過し、立ち上げミラー15を反射後、アクチュエータ16に搭載された対物レンズ17を透過して、光ディスク101の情報層上(図示せず)に集光される。
【0026】
光ディスクの記録層上より反射した光束は、対物レンズ17、立ち上げミラー15、1/4波長板(図示せず)、コリメータレンズ14を透過して、PBS12を反射する。これは、光束が1/4波長板を往復路で2回透過することによって、直線偏光方向が90度ずれたためである。
PBS12を反射した光束は、光検出器18上に集光する。光検出器18上は、複数の受光面で構成されており、受光面に照射された光量に従って再生信号であるRF信号やフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号などが生成される。
【0027】
なお、1/4波長板は、コリメータレンズ14と立ち上げミラー15の間には限定されず、PBS12と対物レンズ17の間に配置すればなんら影響はない。
【0028】
続いて、上述の光ピックアップ装置100を搭載する光ディスク装置について説明する。
【0029】
光ピックアップ装置100内の光検出器18で検出された信号は、サーボ信号生成回路102および情報信号再生回路103に送られる。
【0030】
サーボ信号生成回路102では、光ピックアップ装置100より検出された信号に基づいて光ディスク101に適したフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、チルト制御信号等が生成され、これらの信号を基にアクチュエータ駆動回路104を経て光ピックアップ装置100内の対物レンズアクチュエータ16を駆動して、対物レンズ17の位置制御が行われる。
【0031】
情報信号再生回路103では、光ピックアップ装置100より検出された信号から光ディスク101に記録された情報信号が再生される。
【0032】
また、サーボ信号生成回路102および情報信号再生回路103にて得られた信号の一部は、コントロール回路105に送られる。コントロール回路105からはレーザ駆動用信号が送られ、レーザ点灯回路106を駆動させて光ピックアップ装置100内の半導体レーザ11にレーザ駆動電流を供給する。また、光ピックアップ装置100内のフロントモニタ13を用いて半導体レーザ11からのレーザの出射光量を制御できる。
【0033】
また、高周波重畳回路107を用いて半導体レーザのDC出力に所定の周波数および振幅で高周波変調した駆動電流を重畳させる。
【0034】
なお、レーザ点灯回路106および高周波重畳回路107は、図1において光ピックアップ装置100の外に搭載しているが、光ピックアップ装置100の内に組み込むことも可能である。
【0035】
コントロール回路105には、サーボ信号制御回路102、レーザ点灯回路106、高周波重畳回路107の他にスピンドルモータ駆動回路108、アクセス制御回路109等が接続されており、それぞれ光ディスク101を回転させるスピンドルモータ110の回転制御、光ピックアップ装置100のアクセス方向位置制御が行われる。
【0036】
なお、記録時はコントロール回路105とレーザ点灯回路106の間に情報信号記録回路を設けて、情報信号記録回路からの記録制御信号に基づいて、レーザ点灯回路106を駆動させる記録型の光ディスク装置としてもなんら構わない。
【0037】
図2は、半導体レーザへの駆動電流と半導体レーザから出射されるレーザパワー、および駆動電流を高周波重畳したときの駆動電流波形と、それによるレーザ発光波形の関係を示す。
レーザ点灯回路106のみを用いて直流電流Idcのみで半導体レーザをDC出力したときは、図2の発光特性21のように発振を開始する閾値電流Ithまでは発光は起こらず、Ith以上の直流電流になると線形にレーザパワーが大きくなる。しかし発光パワーがDC出力のみでは、反射戻り光の影響でレーザノイズが大きくなってしまう。
【0038】
そこで、高周波重畳回路107を用いて直流電流Idcに振幅Ippの高周波電流を重畳すると、駆動電流波形22は時間によって変化する。このため発光波形23も時間によって変化する。高周波電流振幅Ippを十分大きくすると、閾値電流Ithを下回る時間が発生するため、発光波形23は図のようにオンとオフを繰り返したパルス列となる。このとき、レーザはマルチ縦モードで発振するため、レーザノイズを反射戻り光に対して安定にすることができる。
ここで、発光波形23の発光平均パワーをPo、発光波形23のパワー振幅をPampとしたとき、高周波重畳の条件を決定する指標をPamp/Poと定義する。なお、Pampを高周波重畳振幅、Pamp/Poの指標値を高周波重畳比と、それぞれ呼ぶ。
一般的に、光ディスクの再生時は平均パワーPoが低出力であるためにRINの影響が大きくなるため、上記で説明した高周波重畳を行っている。
【0039】
さて、レーザノイズは(数1)のように平均パワーPoが小さいほど大きくなるが、同じ平均パワーのときは発光パワーの揺らぎδPに依存する。δPは光ディスクの戻り光量に依存するため、同じ光ディスク装置で比較した場合は、光ディスクの反射率に依存することになる。
現在、例えばBDにおいて、光ディスクは再生専用のBD−ROM、ライトワンス追記型のBD−R、記録書換可能型のBD−REなどいくつかの種類があり、さらに情報層が1層の単層ディスクや、情報層が2層の2層ディスクがあるため、光ディスクの種類によって反射率が異なる。光ディスクを製造するメーカやロットよっても、当然反射率のばらつきは生じる。
反射率のばらつきが発生すると、δPが変化する、すなわち光ディスクによってRINが変化する。
【0040】
そこで、光ディスクの反射率によって高周波重畳の条件を最適にすることが望ましい。
高周波重畳を行ったときのレーザノイズの大小は、例えば、高周波重畳比Pamp/Poで決定する。
そして、光ディスクの反射率によって、平均パワーと高周波重畳振幅を調整し、高周波重畳比を制御する。
また、光ディスクの再生パワーが一定である場合は、光ディスクの反射率によって高周波重畳振幅を制御する。
【0041】
以上で述べた光ディスクの反射率によって高周波重畳比もしくは高周波重畳振幅を制御する光ディスク再生処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0042】
光ディクス装着(ステップ301)後、ステップ302で適切な波長のレーザをONにし、平均パワーをPo1に、高周波重畳振幅をPamp1に、それぞれ設定する。
ステップ303で所定の位置へ光ピックアップ装置を移動し、ステップ304で光ディスクの反射率の測定を開始する。
このとき、装着した光ディスクの反射率から、その媒体に適した平均パワーと高周波重畳振幅を設定することで、高周波重畳比を所定の値に切り替える。(ステップ305)。
反射率によって最適となる平均パワーおよび高周波重畳振幅は、予め設定しておく。
設定後、ステップ306で再生処理を開始する。
以上のように、光ディスク装着時に光ディスクの反射率測定を行って最適な平均パワーおよび高周波重畳振幅にすることによって、レーザノイズを低減することが可能である。
【0043】
図3は、反射率ごとに高周波重畳比を切り替える制御を行っているが、もっと大まかに高周波重畳比もしくは高周波重畳振幅を制御する光ディスクの再生処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
光ディクス装着(ステップ401)後、ステップ402で適切な波長のレーザをONにし、平均パワーをPo1に、高周波重畳振幅をPamp1に、それぞれ設定する。
ステップ403で所定の位置へ光ピックアップ装置を移動し、ステップ404で光ディスクの反射率の判別を開始する。
【0045】
予め光ディスクの反射率の閾値Rxを設けておき、ステップ405で装着した光ディスクの光ディスクがRx以上であるか判別する。
このときRxよりも反射率が大きい光ディスクが装着されたときには、ステップ406で平均パワーをPo1、高周波重畳振幅をPamp1の設定のままにする。なお、Po1およびPamp1は、Rxよりも大きい反射率の光ディスク再生時に適した値であるとする。
一方、Rxよりも反射率が小さい光ディスクが装着されたときには、ステップ407で平均パワーをPo2に、高周波重畳振幅をPamp2に変更する。なお、Po2およびPamp2は、Rxよりも小さい反射率の光ディスク再生時に適した値であるとする。
平均パワーおよび高周波重畳振幅を設定した後に、ステップ408で再生処理を開始する。
【0046】
このように、全ての反射率によって高周波重畳比を設定しなくても、RINの影響が無視できない反射率を閾値として予め設定しておいて、閾値前後で高周波重畳比を切り替えることによっても、RIN低減効果を得ることが可能である。
なお、反射率が大きい方がRINの影響が大きいため、反射率の大きい光ディスク再生時は高周波重畳振幅も大きくした方がRINを低減できる。従って、図4においてPamp1はPamp2よりも大きい方が望ましい。
また、平均パワーが光ディスクの規格で一定に決まっている場合は、Po1とPo2の値が同じであっても何ら構わない。
また、光ディスクの反射率の閾値は図4のように1つに限定されるものではなく、2つ以上の閾値を設定しても問題ない。
【0047】
以上のように、光ディスクの反射率に応じて高周波重畳比を設定する、もしくは反射率の閾値前後で高周波重畳比を切り替える設定を予め設けておき、光ディスク装着時に光ディスクの反射率を測定し、最適な高周波重畳比にすることによって、レーザノイズを低減することが可能である。
なお、光ディスク装置およびそれに搭載された光ピックアップ装置の構成は、図1に限定されるものではないことは言うまでもない。
また、図2のように駆動電流の直流電流Idcは、発光特性21の閾値電流Ith以上である必要はなく、例えば図5のように直流電流Idcが閾値電流Ith以下のような条件であっても何ら構わない。
また、反射率に対して最適となる高周波重畳比の条件を光ディスク装置において学習するという処理を加えても何ら構わない。例えば光ディスクが経時変化し、光ディスクの反射率に対する高周波重畳比が最適ではなくなり再生時の信号性能が劣化する場合、光ディスク装置にて再生性能に係る信号が最良となる学習を行ってもよい。学習することで、予め設定された反射率と高周波重畳比の関係が最適化される。よって、レーザノイズ低減効果を大きくすることが可能である。
また、高周波重畳周波数Pfreqを最適に変更しても何ら構わない。
【実施例2】
【0048】
本実施例では少なくとも2層以上の情報数を有した光ディスクにおいて、再生する情報層に応じて、高周波重畳比もしくは高周波重畳振幅を制御する。
【0049】
BDの規格書によると、BD−ROMの2層ディスクの反射率は10%から28%と規定されている。反射率の定義される範囲が広いため、光ディスクごとに反射率ばらつきが生じるのはもちろんのこと、各情報層でも反射率に差異が生じることが予想される。
また、3層以上の多層光ディスクが規格化された場合、光ディスクの製造難易度が上がるために各情報層の反射率のばらつきは顕著になると予想される。
このため、複数の情報層を有した光ディスクでも、情報層ごとでRINの影響が異なるので、高周波重畳の条件も変更することが望ましい。
【0050】
以上より、複数の情報層を有した光ディスクの情報層数ごとの高周波重畳比もしくは高周波重畳振幅を制御する光ディスク再生処理について、図6および7のフローチャートを用いて説明する。
なお、本実施例における光ディスク装置および光ディスク装置に搭載された光ピックアップ装置の概略構成は、例えば図1と同様であると仮定する。
【0051】
図6は複数の情報層を有した光ディスクまで想定した場合の、光ディスク再生処理のフローチャートである。
【0052】
光ディクス装着(ステップ601)後、ステップ602で適切な波長のレーザをONにし、平均パワーをPo1に、高周波重畳振幅をPamp1に、それぞれ設定する。
ステップ603で所定の位置へ光ピックアップ装置を移動し、ステップ604で光ディスクの情報層数判別を開始する。
判別時、装着した光ディスクの情報層数が1層であるか2層以上であるかを確認する(ステップ605)。
このとき、光ディスクの情報層数が1層の場合は、ステップ606で情報層の反射率の測定し、その反射率から適切な平均パワーと高周波重畳振幅を設定することで、高周波重畳比を所定の値に切り替える。(ステップ607)。
反射率によって最適となる平均パワーおよび高周波重畳振幅は、予め設定しておく。
設定後、ステップ611で再生処理を開始する。
【0053】
一方、光ディスクの情報層数が1層ではない場合は、ステップ608で複数ある情報層全ての反射率の測定し、各情報層の反射率に適した平均パワーと高周波重畳振幅の値を格納する(ステップ609)。格納した値は、情報層数を変更するときに呼び出すことができる状態にしておく。
反射率によって最適となる平均パワーおよび高周波重畳振幅は、予め設定しておく。
その後、ステップ610で再生する情報層の平均パワーと高周波重畳振幅を設定することで、高周波重畳比を所定の値に切り替え、設定後、ステップ611で再生処理を開始する。
【0054】
図7は複数の情報層を有した光ディスク再生中に、再生する情報層を変更するとき光ディスク再生処理のフローチャートである。
【0055】
複数の情報層を有した光ディスクにおいて、ある情報層を再生中に(ステップ701)、再生する情報層を変更するかを確認する(ステップ702)。
このとき、変更する場合は、ステップ703でフォーカスジャンプ処理を行い、変更する情報層へとディスク上の光スポットを切り替える。
フォーカスジャンプ後、ステップ704で変更する情報層の反射率に適した平均パワーと高周波重畳振幅を設定することで、高周波重畳比を所定の値に切り替える。
変更値は、図6において予め各情報層の最適値を格納しているため、即座に呼び出すことが可能である。
変更後、ステップ705で再生処理を再開する。
なお、ステップ702において情報層の変更を行わないと判別した場合は、そのまま再生処理を行う。
【0056】
以上のように、複数の情報層を有した光ディスクの情報層数ごとで、各情報層の反射率に応じて最適な平均パワーおよび高周波重畳振幅にすることによって、レーザノイズを低減することが可能である。
【0057】
なお、光ディスク装置およびそれに搭載された光ピックアップ装置の構成は、図1に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0058】
また、図6および図7では、情報層ごとに高周波重畳比を制御しているが、同じ情報層でも位置によって反射率の違いが生じるため、再生する情報層の位置に応じて反射率を測定して、最適な高周波重畳比に切り替えても何ら構わない。例えば、情報層の内周、中周、外周で予め反射率を測定しておき、再生時に情報層がどこに当てはまるかを確認して、その位置での最適な平均パワーおよび高周波重畳振幅にすることで、レーザノイズ低減が可能である。
【0059】
また、反射率に対して最適となる高周波重畳比の条件を光ディスク装置において学習するという処理を加えても何ら構わない。例えば光ディスクが経時変化し、光ディスクの反射率に対する高周波重畳比が最適ではなくなり再生時の信号性能が劣化する場合、光ディスク装置にて再生性能に係る信号が最良となる学習を行ってもよい。学習することで、予め設定された反射率と高周波重畳比の関係が最適化される。よって、レーザノイズ低減効果を大きくすることが可能である。
【0060】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0061】
また、上記実施例において、光ディスク装置には、再生機能のみを有する再生専用の光ディスク装置のみならず、記録と再生が可能な光ディスク装置も含まれる。
【符号の説明】
【0062】
11…半導体レーザ、
12…偏光ビームスプリッタ(PBS)、
13…フロントモニタ、
14…コリメートレンズ、
15…立ち上げミラー、
16…アクチュエータ、
17…対物レンズ、
18…光検出器、
100…光ピックアップ装置、
101…光ディスク
102…サーボ信号生成回路、
103…情報信号再生回路、
104…アクチュエータ駆動回路
105…コントロール回路、
106…レーザ点灯回路、
107…高周波重畳回路
108…スピンドルモータ駆動回路
109…アクセス制御回路
110…スピンドルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、前記半導体レーザから出射した光束を光学的情報記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、前記光学的情報記録媒体の情報記録面を反射した前記光束を受光する光検出器と、を備えた光ピックアップ装置と、
前記半導体レーザを点灯するためのレーザ点灯回路と、
前記半導体レーザに高周波電流を重畳する高周波重畳回路と、
前記光ピックアップ装置の光検出器で得られた検出信号を用いてサーボ信号を生成するためのサーボ信号生成回路と、
光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生するための情報信号再生回路と、
前記レーザ点灯回路、前記高周波重畳回路、前記サーボ信号生成回路および前記情報信号再生回路を制御するコントロール回路と、
を備えた光学的情報再生装置であって、
前記コントロール回路は、前記光学的情報記録媒体の反射率に応じて、前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅を所定の値に切り替える機能を備えた
ことを特徴とする光学的情報再生装置。
【請求項2】
半導体レーザと、前記半導体レーザから出射した光束を光学的情報記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、前記光学的情報記録媒体の情報記録面を反射した前記光束を受光する光検出器と、を備えた光ピックアップ装置と、
前記半導体レーザを点灯するためのレーザ点灯回路と、
前記半導体レーザに高周波電流を重畳する高周波重畳回路と、
前記光ピックアップ装置の光検出器で得られた検出信号を用いてサーボ信号を生成するためのサーボ信号生成回路と、
光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生するための情報信号再生回路と、
前記レーザ点灯回路、前記高周波重畳回路、前記サーボ信号生成回路および前記情報信号再生回路を制御するコントロール回路と、
を備えた光学的情報再生装置であって、
前記コントロール回路は、前記光学的情報記録媒体の反射率に応じて、前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比を所定の値に切り替える機能を備えた
ことを特徴とする光学的情報再生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光学的情報再生装置であって、
前記コントロール回路は、
前記光学的情報記録媒体の反射率に少なくとも1つ以上の閾値を設け、
該閾値より高い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合は、第1の高周波重畳電流の振幅、もしくは第1の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を設定し、
該閾値より低い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合は、第2の高周波重畳電流の振幅、もしくは第2の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を設定する機能を備えた
ことを特徴とする光学的情報再生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学的情報再生装置であって、
前記コントロール回路は、
前記閾値より高い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の、前記第1の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第1の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を、
前記閾値より低い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の前記第2の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第2の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比よりも大きく設定する機能を備えた
ことを特徴とする光学的情報再生装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学的情報再生装置であって、
前記コントロール回路は、
前記光学的情報記録媒体の反射率と、信号性能が最良となる前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅、もしくは前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比の条件を学習し、
該学習結果に基づき、反射率に応じて前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅、もしくは前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比を再設定する機能を備えた
ことを特徴とする光学的情報再生装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光学的情報再生装置であって、
前記コントロール回路は、
少なくとも2層以上で構成される前記光学的情報記録媒体を再生する場合、
再生する情報層によって、前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅、もしくは前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比を所定の値に切り替える機能を備えた
ことを特徴とする光学的情報再生装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光学的情報再生装置であって、
前記コントロール回路は、
反射率の高い情報層の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の、前記第1の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第1の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を、
反射率の低い情報層の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の前記第2の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第2の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比よりも大きく設定する機能を備えた
ことを特徴とする光学的情報再生装置。
【請求項8】
光学的情報記録媒体の再生方法であって、
半導体レーザを点灯するためのレーザ点灯ステップと、
前記半導体レーザに高周波電流を重畳する高周波重畳ステップと、
光ピックアップ装置の光検出器で得られた検出信号を用いてサーボ信号を生成するためのサーボ信号生成ステップと、
光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生するための情報信号再生ステップと、
前記光学的情報記録媒体の反射率に応じて、前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅を所定の値に切り替えるステップと、を有する
ことを特徴とする光学的情報記録媒体再生方法。
【請求項9】
光学的情報記録媒体の再生方法であって、
半導体レーザを点灯するためのレーザ点灯ステップと、
前記半導体レーザに高周波電流を重畳する高周波重畳ステップと、
光ピックアップ装置の光検出器で得られた検出信号を用いてサーボ信号を生成するためのサーボ信号生成ステップと、
光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生するための情報信号再生ステップと、
前記光学的情報記録媒体の反射率に応じて、前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比を所定の値に切り替えるステップと、を有する
ことを特徴とする光学的情報記録媒体再生方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の光学的情報記録媒体再生方法であって、
前記光学的情報記録媒体の反射率に閾値を設け、
該閾値より高い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合は、第1の高周波重畳電流の振幅、もしくは第1の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を設定し、
該閾値より低い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合は、第2の高周波重畳電流の振幅、もしくは第2の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を設定するステップを有する
ことを特徴とする光学的情報記録媒体再生方法。
【請求項11】
請求項10に記載の光学的情報記録媒体再生方法であって、
前記閾値より高い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の、前記第1の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第1の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を、
前記閾値より低い反射率の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の前記第2の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第2の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比よりも大きく設定するステップを有する
ことを特徴とする光学的情報記録媒体再生方法。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれかに記載の光学的情報再生装置であって、
前記光学的情報記録媒体の反射率と、信号性能が最良となる前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅、もしくは前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比の条件を学習し、
該学習結果に基づき、反射率に応じて前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅、もしくは前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比を再設定するステップを有する
ことを特徴とする光学的情報記録媒体再生方法。
【請求項13】
請求項8から請求項12のいずれかに記載の光学的情報記録媒体再生方法であって、
少なくとも2層以上で構成される前記光学的情報記録媒体を再生する場合、
再生する情報層によって、前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅、もしくは前記半導体レーザの平均パワーと前記半導体レーザに重畳される高周波電流の振幅の比を所定の値に切り替えるステップを有する
ことを特徴とする光学的情報記録媒体再生方法。
【請求項14】
請求項13に記載の光学的情報再生方法であって、
反射率の高い情報層の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の、前記第1の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第1の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比を、
反射率の低い情報層の前記光学的情報記録媒体を再生する場合の前記第2の高周波重畳電流の振幅、もしくは前記第2の平均パワーと高周波重畳電流の振幅の比よりも大きく設定するステップを有する
ことを特徴とする光学的情報記録媒体再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−53965(P2012−53965A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197345(P2010−197345)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】