説明

光学的情報読取装置

【課題】 受光光に照明光以外のノイズの混入を防止して高い読取り性能を得、そのための構成を比較的簡単で安価に済ませる。
【解決手段】 読取対象Rに向けて赤色光を発光する複数個のLED8と、防塵プレート10に一体に形成された照明用レンズ9とからなる照明部5と、読取対象Rからの反射光を受光しバーコードを読取る受光光学部6を設ける。受光光学部6を、物体側ミラー12、ローパスフィルタ13、絞り板14、結像レンズ15、結像側ミラー16、光センサ11から構成する。ローパスフィルタ13は、照明光のピーク波長においては、80%以上の透過率を有し、短い波長において低透過率となる特性を有する。受光センサ11の受光感度特性と、1個のローパスフィルタ13とによって、照明光のピーク波長を含む波長範囲の光のみを受光センサ11に導くバンドパスフィルタとしての機能を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケース内に、情報コードが記された読取対象に向けて照明光を照射する照明光源と、前記読取対象からの反射光を受光するための結像レンズ及び受光センサとを備える光学的情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばバーコード等の情報コードを読取るハンディタイプの光学的情報読取装置(バーコードリーダ)は、本体ケース内に、読取対象(バーコードが印刷されたラベル)に対し照明光を照射するための照明光学系と、読取対象からの反射光を、結像レンズを介してCCDセンサ等の受光センサより受光(撮像)する受光光学系とを備えている。前記照明光学系は、照明光源や、その前方に配置された照明用レンズなどから構成され、前記照明光源としては、例えば赤色光を発光するLEDが採用されている。
【0003】
ところで、この種の光学的情報読取装置にあっては、情報コードからの反射光が受光センサに入射される際に、照明光以外の光の混入によるノイズを防止し、ひいては読取り性能を高めるために、受光光学系の光路中に、所定の波長範囲(赤色光の範囲)の光のみを透過するバンドパスフィルタを設けることが有効である。具体的には、例えばガラス製の結像レンズの表面に、真空蒸着によって多層膜からなるバンドパスフィルタを形成する、あるいは、結像レンズとは別体に、板状のバンドパスフィルタを設けることが考えられていた。
【0004】
ところが、結像レンズの表面にバンドパスフィルタを形成するものでは、真空蒸着工程を繰返して何十層もの多層膜を形成しなければならず、極めて高価なものとなる不具合があった。この場合、安価なプラスチック製の結像レンズでは、多層膜を蒸着するにあたっての剥離強度が十分でなく、結像レンズ自体も高価なものを採用せざるを得ない事情があった。また、別体のバンドパスフィルタを設ける場合も、バンドパスフィルタ自体が比較的高価であるため、コストアップを招くものとなっていた。
【0005】
そこで、特許文献1には、受光センサの光路中に、照明光の波長帯よりも短い側の波長の光を遮断するローパスフィルタと、照明光の波長帯よりも長い側の波長の光を遮断するハイパスフィルタ(ダイクロイックミラー)との2つの光学フィルタを設けることにより、バンドパスフィルタを設ける場合に比べてコストダウンを図りながら、所望のバンドパス特性を得ることが記載されている。
【特許文献1】特開平9−160999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術においても、ローパスフィルタとハイパスフィルタとの2つのフィルタによってバンドパスフィルタの効果を得ようとするものであるため、部品点数がその分多くなってしまい、コストダウンを図る点では不十分であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、受光センサに入射される受光光に照明光以外のノイズの混入を防止して高い読取り性能を得ることができるものであって、そのための構成を比較的簡単で安価に済ませることができる光学的情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の光学的情報読取装置は、本体ケース内に、情報コードが記された読取対象に向けて可視光の領域にピーク波長を持つ照明光を照射する照明光源と、前記読取対象からの反射光を受光するための結像レンズ及び受光センサとを備えるものにあって、前記受光センサに、可視光の波長領域において受光感度が高くそれ以外の領域で減衰する特性を有するものを採用すると共に、前記受光センサの受光光路中に、所定波長より短い或いは長い波長の光を遮断する1個の光学フィルタを設け、前記受光センサの受光感度特性と前記光学フィルタとから、前記照明光のピーク波長を含む可視光の波長領域よりも狭い波長範囲の光のみを前記受光センサに導くバンドパスフィルタが構成されているところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0009】
これによれば、受光センサの受光感度特性と、1個の光学フィルタとによって、照明光のピーク波長(主スペクトル)を含む波長範囲の光のみを受光センサに導くバンドパスフィルタとしての機能が実現される。このとき、受光センサとしては、可視光の波長領域において受光感度が高い特性を有するCCDセンサ等が一般的であり、安価且つ容易に入手できる。このバンドパスフィルタによって、照明光以外のノイズの混入を防止し、受光センサにより照明光の主波長のみを受光することができ、高い読取り性能を得ることができる。この場合、光学フィルタは、バンドパスフィルタと異なり、短波長或いは長波長のいずれかを遮断するフィルタであるので、光学フィルタ自体が安価となる。これと共に、受光センサの受光感度特性を利用したことによって光学フィルタは1個設けるだけで済むので、高価なバンドパスフィルタを設ける場合や、ローパスフィルタとハイパスフィルタとの2つのフィルタを設ける場合に比較して、構成が簡単となると共に安価に済ませることができる。
【0010】
このとき、照明光源を、可視光の波長領域のうち波長の長い側又は短い側に偏った波長の照明光を発するものとし、光学フィルタを、照明光の波長が長い側に偏っている場合には、短波長側を遮断するローパスフィルタから構成し、照明光の波長が短い側に偏っている場合には、長波長側を遮断するハイパスフィルタから構成することができる(請求項2の発明)。
【0011】
これによれば、受光センサ及び光学フィルタを比較的安価に済ませることができ、所期の作用、効果を得ながらも、より一層のコストダウンを図ることができる。尚、上記波長が長い側、短い側とは、照明光のピーク波長が、可視光範囲の中心例えば550nmよりも長いか短いかで区分される。また、本発明においては、周波数が低い側(波長が長い側)を透過させる光学フィルタを、ローパスフィルタと称し、周波数が高い側(波長が短い側)を透過させる光学フィルタを、ハイパスフィルタと称している。
【0012】
上記光学フィルタを設けるにあたっての、より具体的な構成として、次のような構成を採用することができる。即ち、まず、本体ケースに読取対象からの反射光を入射させるための読取窓が設けられるものにあっては、光学フィルタを、読取窓の内側に配置することによって、防塵プレートの機能を兼用させるように構成することができる(請求項3の発明)。これにより、部品数のより一層の削減を図ることができる。
【0013】
また、結像レンズの前部(物体側)には、絞り板を設けることが行われるが、その絞り板を本体ケースに一体に形成し、光学フィルタを、その絞り板の前部(物体側)に配設することができる(請求項4の発明)。
【0014】
あるいは、結像レンズの前部(物体側)に前記光学フィルタを配置し、その表面に印刷により絞りを形成することにより、前記光学フィルタが絞りを兼用する構成とすることができる(請求項5の発明)。結像レンズ自身を、所定波長より短い或いは長い波長の光を遮断する材質から構成することにより、光学フィルタとしての機能を兼用させるように構成することができる(請求項6の発明)。これらによっても、部品数のより一層の削減を図ることができる。
【0015】
さらには、受光センサの受光光路中に、入射した光を折曲げるためのミラーが配設されるものにあっては、そのミラーをダイクロイックミラーから構成することによって、光学フィルタとしての機能を兼用させることができる(請求項7の発明)。これによっても、部品数の削減を図ることができ、しかも比較的安価に光学フィルタを構成することができる。
【0016】
本発明においては、照明光のピーク波長を600〜700nmの範囲(赤色光)とすることができ、この場合、光学フィルタを、前記ピーク波長において80%以上の透過率を有し、600nmより短い波長において低透過率とされるローパスフィルタから構成することができる(請求項8の発明)。又は、照明光のピーク波長を400〜500nmの範囲(青色光)とすることができ、この場合、光学フィルタを、前記ピーク波長において80%以上の透過率を有し、500nmより長い波長において低透過率とされるハイパスフィルタからから構成することもできる(請求項9の発明)。これらによれば、受光センサの受光感度特性と、ローパス又はハイパスフィルタからなる光学フィルタとによって、簡単で安価な構成で、バンドパスフィルタとしての機能を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したいくつかの実施例について、図面を参照しながら説明する。
(1)第1の実施例
まず、図1ないし図4を参照して、本発明の第1の実施例について述べる。図1は、本実施例に係る光学的情報読取装置たるバーコードリーダ1の要部構成を示している。このバーコードリーダ1は、ユーザが片手で持って操作可能な大きさの縦長形状をなす本体ケース2内に、ラベル等の読取対象Rに記録された情報コードたるバーコード(図3参照)を読取るための読取機構を配設して構成される。
【0018】
前記本体ケース2は、上ケース2aと下ケース2bとを接合させて構成され、その先端側(図で左側)が斜め下方に傾斜するいわゆる首曲り状とされている。この本体ケース2の先端面部には、読取窓3が開口した状態に設けられている。そして、この本体ケース2内に設けられる読取機構は、回路基板4や、読取対象Rに向けて照明光を照射する照明手段としての照明部5、読取対象Rからの反射光を受光(撮像)しバーコードを読取る受光手段としての受光光学部6などから構成されている。前記回路基板4には、装置全体の制御やデコード処理等を行なうマイクロコンピュータ7(図3参照)や、後述する各種回路が設けられている。
【0019】
前記照明部5は、図3にも示すように、照明光源としての複数個のLED8と、その前部(物体側)に配置され前記LED8から発せられた光を集光又は拡散する照明用レンズ9とを備えて構成される。前記LED8は、例えば赤色光を発光するものからなり、前記回路基板4の先端側下面部に斜め下向き(読取窓3の方向)に配設されている。このとき、本実施例では、LED8の発光波長は、図4に符号Cで示すように、可視光の領域(400nm〜700nm)のうち波長の長い側(550nmを越える側)に偏っており、ピークの波長(輝度が最大となる主波長)が例えば640nmとされている。
【0020】
また、本実施例では、前記照明用レンズ9は、読取窓3の内側のやや奥方に配置された透光性を有するプラスチック製の防塵プレート10に一体に形成されている。これにて、照明光の光路を符号L1で示すように、LED8から発せられた照明光(赤色光)は、照明用レンズ9により集光又は拡散された後、前記読取窓3を通って読取対象R(バーコード)に対して照射されるようになっている。
【0021】
そして、前記受光光学部6は、バーコード画像を取込むための受光センサ11を備えると共に、前記読取窓3から入射した光(読取対象Rからの反射光)を前記受光センサ11に導くための、物体側ミラー12、光学フィルタとしてのローパスフィルタ13、絞り板14、例えば1個のプラスチックレンズからなる結像レンズ15、結像側ミラー16を備えて構成される。このとき、受光センサ11の受光光路は、図1に符号L2で示すものとなる。
【0022】
そのうち受光センサ11は、CCD撮像素子からなり、前記回路基板4の後部寄り部位の上面に上向きに配設されている。このとき、この受光センサ11は、図4に符号Aで示すように、特定の波長領域この場合可視光の波長領域(400nm〜700nmの範囲)で受光感度が高くそれ以外の波長領域で減衰する受光感度特性を有している。
【0023】
前記物体側ミラー12は、前記読取対象Rからの反射光(読取窓3及び防塵プレート10を通って本体ケース2内に入射した光)を奥方(図で右方)に折曲げて前記ローパスフィルタ13、絞り板14、結像レンズ15部分に導くようになっている。前記絞り板14及び結像レンズ15は、反射光(バーコード画像)を受光センサ11の受光部上に結像させるためのものである。前記結像側ミラー16は、結像レンズ15を通った反射光を折曲げて前記受光センサ11の受光部に導くようになっている。
【0024】
さて、図2にも示すように、本実施例では、前記結像レンズ15の前部(物体側)に絞り板14が配置され、その絞り板14の前部(物体側)に、ローパスフィルタ13が配置されている。このとき、絞り板14は、前記本体ケース2(上ケース2a)に下方に延びるように矩形状の薄板部を一体に形成すると共に、その薄板部にやや縦長の長方形の開口14aを形成することにより設けられている。前記結像レンズ15は、この絞り板14の後面部(結像側)に配設されている。
【0025】
そして、前記ローパスフィルタ13は、所定波長よりも短い波長の光を遮断するカラーフィルタからなり、この場合、図4に符号Bで示すように、前記照明光のピーク波長(640nm)においては、80%以上(より詳しくは90%以上)の透過率を有し、600nmより短い波長において、低透過率となる(透過率が急激に減少する)特性を有している。これにて、ローパスフィルタ13により、照明光のピーク波長(640nm)を含む波長範囲の光のみが前記受光センサ11に導かれるようになっている。
【0026】
図3は、上記バーコードリーダ1の電気的構成を概略的に示している。ここで、前記マイクロコンピュータ7には、本体ケース2の外面部に設けられたトリガスイッチ17からの信号が入力されるようになっていると共に、リセット回路18からの信号が入力されるようになっている。このマイクロコンピュータ7は、報知用のブザー19及び表示用LED20を、ブザー駆動回路21及び表示LED駆動回路22を介して夫々制御するようになっている。また、マイクロコンピュータ7は、インターフェイス回路23を介して外部のホスト装置との通信を実行するようになっている。さらに、このマイクロコンピュータ7には、画像データ等を記憶するためのメモリ24(例えばEEPROM)が接続されている。
【0027】
そして、マイクロコンピュータ7は、照明LED駆動回路25を介して照明部5の各LED8を駆動するようになっていると共に、受光センサ11を制御するようになっている。また、マイクロコンピュータ7には、前記受光センサ11による撮像信号が、波形成形部26を介して入力されるようになっている。このとき、マイクロコンピュータ7は、トリガスイッチ17がオン操作されると、照明部5(LED8)をオン(点灯)させて受光センサ11によるバーコードの画像の取込みを実行させ、その撮像信号からバーコードを読取る(デコードする)ようになっている。
【0028】
次に、上記構成の作用について述べる。上記構成のバーコードリーダ1によりバーコード読取るにあたっては、ユーザは、図1に示すように、本体ケース2の読取窓3を、バーコードが記された読取対象Rに近接(又は接触)させ、トリガスイッチ17の押圧(オン)操作を行うようにする。すると、LED8が発光され照明用レンズ9により集光又は拡散された後、光路L1で示すように、読取窓3を通して読取対象Rに照明光(赤色光)として照射される。
【0029】
そして、バーコードからの反射光が、光路L2で示すように、本体ケース2内に入射され、防塵プレート10を透過した後、物体側ミラー12にて折曲げられ、ローパスフィルタ13、絞り板14及び結像レンズ15を通り、さらに結像側ミラー16により折曲げられて受光センサ11上に結像される。これにて、受光センサ11により、バーコードの画像が取込まれ、読取りが行われる。
【0030】
このとき、図4に示すように、照明光が、符号Cのように、可視光の波長領域のうち波長の長い側に偏った(ピーク波長を640nmとした比較的狭い波長範囲の)赤色光とされているのに対し、受光センサ11の受光感度特性が、符号Aのように、可視光の波長領域において受光感度が高いものとされていると共に、光路L2中に設けられたローパスフィルタ13によって、符号Bのように、例えば600nmよりも短い波長側の光が遮断されるようになる。
【0031】
これにより、受光センサ11の受光感度特性と、1個のローパスフィルタ13とによって、照明光のピーク波長を含む波長範囲の光のみを受光センサ11に導くバンドパスフィルタとしての機能が実現され、照明光以外のノイズの混入が防止され、受光センサ11により照明光の主波長のみを受光することができ、高い読取り性能を得ることができるのである。
【0032】
この場合、ローパスフィルタ13は、所定範囲の波長の光を遮断するバンドパスフィルタに比べてそれ自体が安価であり、また、受光センサ11についても汎用のものを採用することができる。そして、受光センサ11の受光感度特性を利用したことによってローパスフィルタ13を1個設けるだけで済むので、高価なバンドパスフィルタを設ける場合や、ローパスフィルタとハイパスフィルタとの2つのフィルタを設ける場合に比較して、構成が簡単となると共に安価に済ませることができるのである。
【0033】
このように本実施例によれば、受光センサ11に入射される受光光に照明光以外のノイズの混入を防止して高い読取り性能を得ることができるものであって、そのための構成を比較的簡単で安価に済ませることができるという優れた効果を得ることができるものである。
【0034】
(2)第2〜第5の実施例、その他の実施例
次に、図5〜図8を参照しながら、本発明の第2〜第5の実施例について、以下順に説明する。尚、以下述べる実施例についても、上記第1の実施例と同様に、本発明をバーコードリーダに適用したものであり、照明部5や受光光学部6の基本的な構成は上記第1の実施例と共通する。従って、上記第1の実施例と同一部分については、符号を共通して使用すると共に詳しい説明を省略し、以下、異なる点についてのみ述べることとする。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施例を示すものである。この実施例が、上記第1の実施例と異なる点は、本体ケース2内の読取窓3の内側のやや奥方に、防塵プレートを兼用するローパスフィルタ(光学フィルタ)31を設けたところにある。この場合、ローパスフィルタ31は、所定波長よりも短い波長の光を遮断するカラーフィルタからなり、やはり、前記照明光のピーク波長(640nm)においては、80%以上の透過率を有し、600nmより短い波長において、低透過率となる(透過率が急激に減少する)特性を有している。また、このローパスフィルタ31に照明用レンズ32が一体に設けられている。尚、これに伴い、絞り板14の前部のローパスフィルタ13は省略されている。
【0036】
このような第2の実施例においても、受光センサ11の受光感度特性と、1個のローパスフィルタ31とによって、照明光のピーク波長を含む波長範囲の光のみを受光センサ11に導くバンドパスフィルタとしての機能が実現され、照明光以外のノイズの混入が防止され、受光センサ11により照明光の主波長のみを受光することができ、高い読取り性能を得ることができる。しかも、ローパスフィルタ31が、防塵プレートを兼用することにより、部品数のより一層の削減を図ることができる。
【0037】
図6は、本発明の第3の実施例を示すものである。この実施例においては、第1の実施例におけるローパスフィルタ13及び絞り板14に代えて、結像レンズ15の前部(物体側)に、光学フィルタとしての、上記ローパスフィルタ13,31と同様のローパスフィルタ41を設けるようにしている。このとき、このローパスフィルタ41の表面には印刷により絞り42が形成されており、これにより、光学フィルタ41が絞りを兼用する構成とされている。
【0038】
このような第3の実施例においても、受光センサ11の受光感度特性と、1個のローパスフィルタ41とによって、照明光のピーク波長を含む波長範囲の光のみを受光センサ11に導くバンドパスフィルタとしての機能が実現され、照明光以外のノイズの混入が防止され、受光センサ11により照明光の主波長のみを受光することができ、高い読取り性能を得ることができる。しかも、ローパスフィルタ41が、絞り板を兼用することにより、部品数のより一層の削減を図ることができる。
【0039】
図7は、本発明の第4の実施例を示すものである。この実施例が、上記第1の実施例と異なる点は、結像側ミラーに、単純に光を折曲げるための結像側ミラー16に代えて、ダイクロイックミラー51を採用した構成にある。また、これに伴い、絞り板14の前部のローパスフィルタ13は省略されている。前記ダイクロイックミラー51は、ガラスの表面に金属化合物を多層に真空蒸着してなる周知構成を備えるものであり、この場合、所定波長(例えば600nm)よりも長い波長の光のみを反射する特性を有したものとなっている。従って、このダイクロイックミラー51がローパスフィルタ(光学フィルタ)としての機能を兼用している。
【0040】
このような第4の実施例においても、受光センサ11の受光感度特性と、1個のローパスフィルタ(ダイクロイックミラー51)とによって、照明光のピーク波長を含む波長範囲の光のみを受光センサ11に導くバンドパスフィルタとしての機能が実現され、照明光以外のノイズの混入が防止され、受光センサ11により照明光の主波長のみを受光することができ、高い読取り性能を得ることができる。しかも、ダイクロイックミラー51がローパスフィルタの機能を兼用することにより、部品数のより一層の削減を図ることができるものである。
【0041】
図8は、本発明の第5の実施例を示すものである。この第5の実施例では、上記第1〜第4の実施例と異なり、照明光源としてのLEDを、例えば青色光を発光するものから構成すると共に、受光光路L2中のいずれかの部位に、光学フィルタとしてハイパスフィルタを配置する構成としている。このとき、前記LEDの発光波長は、図8に符号C´で示すように、可視光の領域(400nm〜700nm)のうち波長の短い側(550nm未満の側)に偏っており、ピークの波長(輝度が最大となる主波長)が400nm〜500nmの範囲内例えば470nmとされている。
【0042】
そして、前記ハイパスフィルタは、所定波長よりも長い波長の光を遮断するカラーフィルタからなり、この場合、図8に符号B´で示すように、前記照明光のピーク波長(470nm)においては、80%以上(より詳しくは90%以上)の透過率を有し、500nmより長い波長において、低透過率となる(透過率が急激に減少する)特性を有している。これにて、ハイパスフィルタにより、照明光のピーク波長(470nm)を含む波長範囲の光のみが前記受光センサ11に導かれるようになっている。
【0043】
従って、この第5の実施例によっても、照明光が、符号C´のように、可視光の波長領域のうち波長の短い側に偏った青色光とされているのに対し、受光センサ11の受光感度特性が、符号Aのように、可視光の波長領域において受光感度が高いものとされていると共に、光路L2中に設けられたハイパスフィルタによって、符号B´のように、例えば500nmよりも長い波長側の光が遮断されるようになる。
【0044】
これにより、受光センサ11の受光感度特性と、1個のハイパスフィルタとによって、照明光のピーク波長を含む波長範囲の光のみを受光センサ11に導くバンドパスフィルタとしての機能が実現され、照明光以外のノイズの混入が防止され、受光センサ11により照明光の主波長のみを受光することができ、高い読取り性能を得ることができ、しかも、高価なバンドパスフィルタを設ける場合や、ローパスフィルタとハイパスフィルタとの2つのフィルタを設ける場合に比較して、構成が簡単となると共に安価に済ませることができるものである。
【0045】
尚、上記した各実施例以外にも、光学フィルタを設けるための手段として、結像レンズ15自身を、所定波長より短い或いは長い波長の光を遮断する材質から構成することにより、光学フィルタ(ローパス又はハイパスフィルタ)としての機能を兼用させるように構成することができる。これによっても、所期の目的を達成することがでると共に、部品数のより一層の削減を図ることができる。
【0046】
その他、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、例えば、受光光学部の構成としても様々な変形が可能であり、例えばミラーを用いないような構成とすることもできる。また、本発明は、バーコードリーダに限らず、QRコード(登録商標)等の二次元コードを読取るものにも適用することができる等、要旨を逸脱しない範囲内で、適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、バーコードリーダの要部構成を示す縦断側面図
【図2】ローパスフィルタ部分の拡大側面図(a)及び拡大平面図(b)
【図3】電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】波長に対する受光センサの受光感度、光学フィルタの透過率、照明光の輝度の関係を示す特性図
【図5】本発明の第2の実施例を示す図1相当図
【図6】本発明の第3の実施例を示す図1相当図
【図7】本発明の第4の実施例を示す図1相当図
【図8】本発明の第5の実施例を示す図4相当図
【符号の説明】
【0048】
図面中、1はバーコードリーダ(光学的情報読取装置)、2は本体ケース、3は読取窓、5は照明部、6は受光光学部、7はマイクロコンピュータ、8はLED(照明光源)、9,32は照明用レンズ、10は防塵プレート、11は受光センサ、12は物体側ミラー、13,31,41はローパスフィルタ(光学フィルタ)、14は絞り板、15は結像レンズ、16は結像側ミラー、42は印刷により形成した絞り、51はダイクロイックミラー、Rは読取対象、L2は受光光路を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に、情報コードが記された読取対象に向けて可視光の領域にピーク波長をもつ照明光を照射する照明光源と、前記読取対象からの反射光を受光するための結像レンズ及び受光センサとを備える光学的情報読取装置であって、
前記受光センサに、可視光の波長領域において受光感度が高くそれ以外の領域で減衰する特性を有するものを採用すると共に、
前記受光センサの受光光路中に、所定波長より短い或いは長い波長の光を遮断する1個の光学フィルタを設け、
前記受光センサの受光感度特性と前記光学フィルタとから、前記照明光のピーク波長を含む可視光の波長領域よりも狭い波長範囲の光のみを前記受光センサに導くバンドパスフィルタが構成されていることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記照明光源は、可視光の波長領域のうち波長の長い側又は短い側に偏った波長の照明光を発するように構成され、
前記光学フィルタは、前記照明光の波長が長い側に偏っている場合には、短波長側を遮断するローパスフィルタから構成され、前記照明光の波長が短い側に偏っている場合には、長波長側を遮断するハイパスフィルタから構成されることを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記本体ケースには、前記読取対象からの反射光を入射させるための読取窓が設けられ、前記光学フィルタは、前記読取窓の内側に配置され、防塵プレートの機能を兼用していることを特徴とする請求項1又は2記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記結像レンズの前部に、前記本体ケースに一体に形成された絞り板が配設され、前記光学フィルタは、前記絞り板の前部に配設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記結像レンズの前部に配置された前記光学フィルタの表面に、印刷により絞りが形成されることにより、前記光学フィルタが絞りを兼用していることを特徴とする請求項1又は2記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記結像レンズは、それ自身が所定波長より短い或いは長い波長の光を遮断する材質から構成されることにより、前記光学フィルタとしての機能を兼用していることを特徴とする請求項1又は2記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記受光センサの受光光路中に、入射した光を折曲げるためのミラーが配設され、そのミラーがダイクロイックミラーから構成されることにより、前記光学フィルタとしての機能を兼用していることを特徴とする請求項1又は2記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
前記照明光のピーク波長が、600〜700nmの範囲にあり、前記光学フィルタは、前記ピーク波長において80%以上の透過率を有し、600nmより短い波長において低透過率とされるローパスフィルタからなることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項9】
前記照明光のピーク波長が、400〜500nmの範囲にあり、前記光学フィルタは、前記ピーク波長において80%以上の透過率を有し、500nmより長い波長において低透過率とされるハイパスフィルタからなることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−34605(P2007−34605A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215938(P2005−215938)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】