説明

光学素子、光学素子の製造方法、光アシスト磁気記録ヘッド、及び磁気記録装置

【課題】位置調整が簡易で製造が容易な光学素子、該光学素子の製造方法、かかる光学素子を用いた組立容易な光アシスト磁気記録ヘッド、及びかかる光アシスト磁気記録ヘッドを用いた製造容易な磁気記録装置を提供する。
【解決手段】平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面とを有し、該凸面は発散状態で入射される入射光を一方向に平行化し、前記平面は一方向に平行化された入射光を反射して反射光を生成し、前記凸面は前記反射光を集光する光学素子。
予め設定された長さと曲率半径とを有する棒状体を準備するステップと、当該棒状体の一部を長手方向に沿って分離し、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面を有する部材とするステップと、前記平面と凸面を有する部材を個片化するステップとを少なくとも有する光学素子の製造方法。かかる光学素子を用いた光アシスト磁気記録ヘッド。かかる光アシスト磁気記録ヘッドを用いた磁気記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源からの光を平面導波路に結合させる光学素子、該光学素子の製造方法、該光学素子を用いた光アシスト磁気記録ヘッド、及び磁気記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の磁気記録密度を上げる方式として、光アシスト方式が活発に研究されている。この光アシスト方式とは、光スポットの熱によりメディアを加熱して記録層の保磁力を低下させ、外部磁界により記録情報に応じた磁区方向に制御して磁気記録を行うものである。
【0003】
従って、記録密度を向上させる上では、メディアを加熱するための光スポットを如何に微小化するかが重要なポイントとなる。
【0004】
光スポットを微小化する点に関しては、数十nmのスポットサイズを実現できる近接場光の技術を採用する方向に固まってきた。
【0005】
近接場光を発生させる手法としては、光源からの光を、導波路を経由してプラズモンプローブに照射し、プラズモンプローブから近接場光を発生させる方法が主流となりつつある。具体的には、ヘッドに設けられたスライダに磁気記録再生部(磁気ヘッド部)と共に導波路を半導体プロセスで積層させ、導波路のメディア側の出射端近辺にプラズモンプローブを形成し、光源からの光を導波路経由でプラズモンプローブに照射することにより近接場光を発生させる。
【0006】
このように近接場光を発生させる手法においては、光源からの光を導波路に結合させる結合光学系の構成が課題となる。
【0007】
結合光学系の一つとして、半導体レーザから出射した光を偏向すると共に集光して導波路に結合させるスライダ上に配置された結合光学系がある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
半導体レーザの活性層の端面から出射したレーザ光を反射集光させ、導波路に結合させる非球面ミラーが2次元集光素子としての結合光学系として記載されている。
【0009】
また、結合光学系として、特許文献2にはファイバを透過型レンズとして流用した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−45004号公報
【特許文献2】特開平4−232907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の結合光学系においては、微小なサイズの非球面ミラーを如何に低コストで大量に製造するかが課題であるが、具体的な製造方法が記載されていない。
【0012】
具体的な製造方法として、例えばガラスモールドが考えられるが、従来のガラスモールド法では、このような小さな非球面ミラーのプリフォーム自体を作製することが困難である。
【0013】
また、複数の非球面ミラーを一体としてガラスモールド法で作製し、切断加工して個々の非球面ミラーを製造する方法も考えられる。しかし、このような製造方法で作製された非球面ミラーは、入射面と出射面が切断面となり、研磨工程が必要となるが、非球面ミラーは小さいので研磨は非常に困難である。
【0014】
一方、プラスチックの射出成形により製造する方法も考えられるが、光源の直近に非球面ミラーを配置するため、光源の発熱により非球面ミラーに熱変形が生じるなどの問題が発生してしまう。
【0015】
さらに、製造方法以外にも、光のスポットと導波路入射端の相対的な位置調整が非常に難しく、この調整を互いに直交する2方向に対して行う必要があるため工数が大幅にかかるので、位置調整の簡易化という課題も存在する。すなわち、光源から集光照射する光のスポットを、数μmと非常に小さい幅の導波路の入射端に位置合わせする必要がある。
【0016】
また、特許文献2に記載の透過型レンズは、光アシスト磁気ヘッドで必要となる偏向機能が含まれていない。
【0017】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、位置調整が簡易で製造が容易な光学素子、かかる光学素子を容易に作製できる製造方法、かかる光学素子を用いた組立容易な光アシスト磁気記録ヘッド、及びかかる光アシスト磁気記録ヘッドを用いた製造容易な磁気記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0019】
1.平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面とを有し、該凸面は発散状態で入射される入射光を一方向に平行化し、前記平面は一方向に平行化された入射光を反射して反射光を生成し、前記凸面は前記反射光を集光することを特徴とする光学素子。
【0020】
2.前記平面に反射膜が形成されていることを特徴とする前記1に記載の光学素子。
【0021】
3.予め設定された長さと曲率半径とを有する棒状体を準備するステップと、
当該棒状体の一部を長手方向に沿って分離し、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面を有する部材とするステップと、
前記平面と凸面を有する部材を個片化するステップと、
を少なくとも有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【0022】
4.当該棒状体の一部を長手方向に沿って分離し、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面を有する部材とするステップに次いで、形成した平面の表面平滑化を行うステップを有することを特徴とする前記3に記載の光学素子の製造方法。
【0023】
5.前記平面又は平滑化された平面に反射膜を形成するステップを更に有することを特徴とする前記3又は4に記載の光学素子の製造方法。
【0024】
6.光源と、該光源からの出射光を磁気記録媒体上に照射する導波路と、前記光源と前記導波路とを搭載したスライダと、を有する光アシスト磁気記録ヘッドであって、
前記1または2に記載の光学素子を用いて前記光源からの出射光を反射させて前記導波路に結合させることを特徴とする光アシスト磁気記録ヘッド。
【0025】
7.前記光源と前記スライダとの間に前記光源を保持する保持手段を有することを特徴とする前記6に記載の光アシスト磁気記録ヘッド。
【0026】
8.前記保持手段は更に前記光学素子を保持することを特徴とする前記7に記載の光アシスト磁気記録ヘッド。
【0027】
9.前記6から8のいずれか一項に記載の光アシスト磁気ヘッドを搭載したことを特徴とする磁気記録装置。
【発明の効果】
【0028】
位置調整が簡易で製造が容易な光学素子、かかる光学素子を容易に作製できる製造方法、かかる光学素子を用いた組立容易な光アシスト磁気記録ヘッド、及びかかる光アシスト磁気記録ヘッドを用いた製造容易な磁気記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】光アシスト式磁気記録装置の概略構成例を示す斜視図である。
【図2】光アシスト式磁気記録ヘッドの概略断面図である。
【図3】1次元集光光学素子9Bの側面図である。
【図4】ミラー型集光機能を有するプラナーソリッドイマージョンミラー(PSIM)を有する平面導波路8aの具体例である。
【図5】テーパ型集光機能を有する平面導波路8bの具体例である。
【図6】y方向から光アシスト磁気記録ヘッド3の平面導波路8aを見た模式図である。
【図7】1次元集光光学素子の製造方法のフロー図である。
【図8】ロッド状の透明体の製造方法の一例である線引き法の模式図である。
【図9】所定長さに切断されたファイバ24の斜視図である。
【図10】ファイバ24の延在方向に分離する箇所を示す模式図である。
【図11】分離されて得られた円筒状ファイバ24aの斜視図である。
【図12】ダイシングと研磨を行うことによりファイバ24aを得る方法の模式図である。
【図13】ファイバ24aの平面14に成膜材Sを蒸着して反射膜13を成膜する状態の模式図である。
【図14】ファイバ24aの凸面15に成膜材Tを飛散させて無反射コートを成膜する状態の模式図である。
【図15】得られたファイバ24aをダイサーで切断するカットラインCLを示した模式図である。
【図16】個片の1次元集光光学素子9Bの概略図である。
【図17】V溝治具30上にファイバ24を設置した状態を示す模式図である。
【図18】研磨が終了した状態を示す模式図である。
【図19】光アシスト磁気記録ヘッド3の組立工程の概要図である。
【図20】他の光アシスト磁気記録ヘッドである光アシスト磁気記録ヘッド8の組立工程の概要図である。
【図21】1次元集光光学素子9Bの平面14の角度を測定しながら調整する調整冶具100の模式図である。
【図22】図20(f)のI−I線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る光学素子、それを備えた光アシスト式の磁気記録ヘッド及び磁気記録装置等を、図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態、具体例等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0031】
図1に、光アシスト磁気記録ヘッド3を搭載した磁気記録装置(例えばハードディスク装置)7の概略構成例を示す。この磁気記録装置7は、記録用のディスク(磁気記録媒体)2と、支軸5を支点として矢印mA方向(トラッキング方向)に回動可能に設けられたサスペンション4と、サスペンション4に取り付けられたトラッキング用のアクチュエータ6と、サスペンション4の先端部に取り付けられた光アシスト磁気記録ヘッド3と、ディスク2を矢印mB方向に回転させるモータ(不図示)と、を筐体1内に備えており、光アシスト磁気記録ヘッド3がディスク2上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている(図2中の矢印mC方向にディスク2が移動する。)。
【0032】
図2に、光アシスト磁気記録ヘッド3の概略構成例を断面図で示す。この光アシスト磁気記録ヘッド3は、ディスク2に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドであって、光源部9A,スライダ10,1次元集光光学素子9B等を備えている。
【0033】
光源部9Aは半導体レーザを有する。光源部9Aは半導体レーザと、光ファイバ、光導波路、コリメートレンズ等の光学部品との組み合わせであってもよい。光源部9Aを構成している半導体レーザから出射されるレーザ光の波長は、可視光から近赤外の波長(波長帯としては、0.6μmから2μm程度であり、具体的な波長としては、650nm、780nm、830nm、1310nm、1550nmなどが挙げられる)が好ましい。
【0034】
スライダ10はAlTiC材などから成る基板で構成されており、ディスク2の被記録部分の流入側から流出側にかけて順に(矢印mC方向)、磁気再生部8C,光アシスト部8A及び磁気記録部8Bが、基板表面に積層状態で形成されている。尚、光アシスト部8Aが磁気記録部8Bよりも流入側にあれば、この順番でなくても良い。
【0035】
磁気記録部8Bは、ディスク2の被記録部分に対して磁気情報の書き込みを行う磁気記録素子から成っており、磁気再生部8Cは、ディスク2に記録されている磁気情報の読み取りを行う磁気再生素子から成っている。なお、光アシスト部8A,磁気記録部8B及び磁気再生部8Cは、スライダ10と一体に形成されているが、別体に構成されたものをスライダ10に取り付けて構成してもよい。
【0036】
光アシスト部8Aは後述する平面導波路(図4,5参照)と不図示のプラズモンプローブで構成されている。平面導波路は光源からのレーザ光をディスク2側の出射端面に向かって集光してプラズモンプローブに照射する。プラズモンプローブはディスク2の被記録部分をスポット加熱するための近接場光を発生させる。
【0037】
本発明の光学素子である1次元集光光学素子9Bは、発散状態の入射光を偏向してかつ集光する偏向光学素子である。
【0038】
図3に1次元集光光学素子9Bの側面図を示す。1次元集光光学素子9Bは、反射膜13を形成された平面14と、平面14に対向する円筒面形状の凸面15とを有する。
【0039】
凸面15は図示しない点光源から発散状態で入射される入射光を一方向に平行化し、平面14は一方向に平行化された入射光を反射膜13で反射して反射光を生成し、凸面15はこの反射光を集光する。点光源からの入射光は平面14に略45度の入射角で入射し、略45度の反射角で反射する。従って平面14は入射光を略90度偏向することとなる。
【0040】
集光機能が一次元であるので、集光された光は線状となり、光を結合する平面導波路の入射端面上での光の厳密な位置調整が1次元方向のみで済むため、2次元方向に集光する場合に比して、位置調整が格段に容易になる。
【0041】
なお、本発明において平行化とは、5度程度までの収発散を含む場合をも指す。光が収発散した場合、1次元集光光学素子9Bを出射した光の集光位置は変化するが、平面導波路と1次元集光光学素子9Bの相対位置を適切に設定することで平面導波路に光を入射させることができる効果には変わりがない。また5度程度までの収発散であれば、平面導波路の入射端面上における光のスポット径も充分に小さく結合効率の変化も小さいからである。
【0042】
反射膜13は金、アルミなどの金属膜である。誘電体多層膜の反射膜でもよい。1次元集光光学素子9Bについての詳細は後述する。
【0043】
尚、平面14に対して全反射が可能となる場合には反射膜13は無くてもよい。例えば、平面14に対する光の入射角を45度とすると、1次元集光光学素子9Bの材料の屈折率が凡そ1.414以上である場合には全反射となるので反射膜13は不要である。図2に戻り、光源部9Aから出射したレーザ光は、1次元集光光学素子9Bによって光アシスト部8Aに導かれる。光アシスト部8Aに入射したレーザ光は、光アシスト部8A内の平面導波路を通って光アシスト磁気記録ヘッド3から出射する。
【0044】
光アシスト部8Aから出射したレーザ光が、微小な光スポットとしてディスク2に照射されると、ディスク2の被照射部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保磁力が低下する。その保磁力の低下した状態の被照射部分に対して、磁気記録部8Bにより磁気情報が書き込まれる。
【0045】
次いで、図4と図5に、光アシスト部8Aが有する平面導波路の具体例を示す。図4は、ミラー型集光機能を有するプラナーソリッドイマージョンミラー(PSIM)を有する平面導波路8aの具体例である。図5は、テーパ型集光機能を有する平面導波路8bの具体例である。これらの平面導波路8a,8bに採用されている導波路構造は、いずれも基板上に高屈折率層8Hを積層し、その周りに低屈折率層8Lを積層することにより構成され、高屈折率層8Hと低屈折率層8Lとの境界面での反射作用によりレーザ光が集光される。
【0046】
図4に示す平面導波路8aでは、高屈折率層8Hと低屈折率層8Lとの境界面が、略楕円面の一部形状を成している。
【0047】
図4に示す高屈折率層8Hと低屈折率層8Lとの境界面では、その屈折率差によって全反射を生じさせる構成としている。境界面は略楕円面の一部形状を成しているので、平面導波路8aに発散光が入射すると、略楕円面の焦点位置で光源像が形成されることになる。つまり、平面導波路8aでは全反射を利用したミラー効果によりレーザ光を一方向に集光して、微小な光スポットを形成することができる。
【0048】
図5に示す平面導波路8bでは、高屈折率層8Hと低屈折率層8Lとの境界面が、直線状に形成されている。平面導波路8bには二つの境界面が形成されており、高屈折率層8Hに入射したレーザ光はこれら二つの境界面の間で繰り返し全反射され、出射端に進むにつれて次第にモードフィールド径が小さくなって行き、高屈折率層8Hの出射端で集光され、微小な光スポットを形成することができる。
【0049】
上記のように光アシスト部8Aに平面導波路8a,8bを用いれば、微小な光スポットを得ることができる。従って、よりエネルギー密度の高い光をプラズモンプローブに照射することができ、近接場光の発生光量を増大することが可能となる。
【0050】
図2に示す光アシスト磁気記録ヘッド3では、1次元集光光学素子9Bが光源部9Aと光アシスト部8A内の平面導波路8a又は8b(図4,図5)とを光学的に結合させ、かつ、光源部9Aから出射したレーザ光を平面導波路8a,8bに入射させるために偏向させる構成になっている。
【0051】
図6は、y方向から光アシスト磁気記録ヘッド3の平面導波路8aを見た模式図である。光源部9Aから平面導波路8aに結合されたレーザ光は平面導波路8aによりディスク2上に近接場光を発生させるように集光される。
【0052】
以上説明した光アシスト磁気記録ヘッド3を搭載した磁気記録装置においては、半導体レーザから出射した光は偏向光学素子の平面にてy方向の光軸がyz面内で90°折り返されてz方向に偏向されると共にyz面内で集光され、平面導波路に入射される。一方、x方向の光は集光されず広がった状態で導波路に入射し、例えば図4に示す楕円反射面を持つ導波路においてx方向の光が集光される。導波路出射端ではxy面で十分光が絞られた状態となり、導波路出射端面に形成された図示しないプラズモンプローブを照射し、プラズモンプローブから近接場光が発生する。この近接場光によりディスク2が加熱され、保磁力が低下し、磁気記録部8Bにて磁気情報が記録される。ディスク2が光アシスト磁気記録ヘッド3から移動し、冷却されると保磁力が回復し、磁気情報が保持される。
【0053】
従って、高精度の位置調整を必要とせずに、高い光利用効率で微小な光スポットを得ることが可能となり、その光スポットを用いて高密度の情報記録を行うことが可能となる。
【0054】
次いで、以下に1次元集光光学素子の製造方法について図面を参照して説明する。
【0055】
図7は、1次元集光光学素子の製造方法のフロー図である。最初にロッド状(棒状体)の透明体を製造する(ステップS10)。
【0056】
図8は、ロッド状の透明体の製造方法の一例である線引き法の模式図である。線引き法とは、光ファイバの製造工程においてガラスを細長く作製する方法であり、光ファイバの代表的な製造工程の一つであり、本実施例のロッド状の透明体の製造方法として好適である。光ファイバは、コアやクラッドを有しており、本実施例のロッド状の透明体のような単一の材料で形成されている訳ではないが、以下、ロッド状の透明体のことを光ファイバとほぼ同じものであるということでファイバと称す。
【0057】
具体的な線引き法の工程としては、図8に示すように円筒形のガラス母材21を加熱ヒータ22で加熱し、延伸させてファイバ状に形成し、カッタ23により所定長さに切断する。
【0058】
所定長さに切断されたファイバ24の斜視図を図9に示す。
【0059】
ファイバ24の半径は光源から出射した光を平行化するために必要な曲率半径となっており、採用する光源、導波路の諸元に応じて決定される。
【0060】
ファイバ24を切断する長さとしては、10〜50mm程度が望ましい。この長さであれば、外径φ100μm前後の細いファイバ24でもハンドリングは容易である。
【0061】
次いで、図10に示す点線に沿って、ファイバ24の延在方向にファイバ24を切断して分離する(ステップS11)。分離されて得られたファイバ24aの斜視図を図11に示す。
【0062】
分離手段としては不図示のダイサーが一例として挙げられる。
【0063】
図12は、ダイシングと研磨を行うことによりファイバ24aを得る方法の模式図である。図12(a)はダイサーを用いたファイバ24の切断方法の模式図である。図12(b)は、ファイバ24aの切断面の研磨が終了した状態を示す。
【0064】
図12(a)に示すようにV溝治具30を用意し、V溝29にファイバ24を設置する。そして、ダイサーのブレード28を用いて、ファイバ24をファイバ24の延在(長手)方向にダイシングし、2分割されたファイバ24aを得る。ダイシングの際には、ダイシングの摩擦によりファイバ24が移動しないようにV溝29とファイバ24の間に仮止めUV硬化接着剤を充填硬化し、固定することが望ましい。切断後、加熱や温水により接着剤を取り除く。V溝治具30とファイバ24の固定方法についてはこれに限らない。
【0065】
ファイバ24aを2分割した後に、図12(b)に示すように、ダイシングされた断面を研磨する(ステップS12)。なお、研磨とは表面平滑化の一手段であり、表面平滑化が可能であれば、研磨以外の他の手段を採用しても良い。
【0066】
V溝治具30にファイバ24を設置し、ピッチや仮固定接着剤などの仮固定剤32を用いてファイバ24をV溝治具30のV溝29に固定し、研磨板31を図中のM方向に回転させながら、ファイバ24の上面から研磨を行う。このとき、研磨板31とファイバ24の間には図示しない研磨材を介在させる。そして、加熱等により仮固定剤32を除去し、略半円状になったファイバ24aを得る。
【0067】
次いで、ファイバ24aの切断面である平面14に反射膜を成膜する(ステップS13)。図13は、ファイバ24aの平面14に成膜材Sを蒸着して反射膜13を成膜する状態の模式図である。ファイバ24aをV溝治具30に仮止めし、平面14が不図示の蒸着源に対向するよう配置し蒸着する。反射膜としては高反射率が得られるアルミ、金などの金属膜が望ましい。
【0068】
次いで、凸面15に無反射コートを蒸着等で施す。図14は、ファイバ24aの凸面15に成膜材Tを飛散させて無反射コートを成膜する状態の模式図である。例えば、略半円状になったファイバ24aを粘着性のあるシートDSに固着させた状態で蒸着槽内に配置し蒸着する。ファイバ24の固定方法についてはこれに限らない。
【0069】
最後に、得られたファイバ24aから個片化された光学素子を得る(ステップS14)。図15は、得られたファイバ24aをダイサーで切断するカットラインCLを示した模式図である。このカットラインCLに沿ってダイサーを用いて切断し、個片の1次元集光光学素子9Bを形成する。得られた個片の1次元集光光学素子9Bを図16に示す。なお、反射膜13の形成は個片化した後でも良い。
【0070】
以上、ファイバ24からファイバ24aを取り出す手段としてダイサーと研磨機を併用した例を説明したが、ダイサーを用いずに研磨機だけを用いてもよい。
【0071】
図17は、V溝治具30上にファイバ24を設置した状態を示す模式図である。図17に示すようにV溝治具30にファイバ24を設置し、ピッチや仮固定接着剤などの仮固定剤32を用いてファイバ24をV溝治具30のV溝29に固定し、研磨板31を図中のM方向に回転させながら、ファイバ24の上面から研磨を行って、断面が略半円状となるまで研磨する。このとき、研磨板31とファイバ24の間には図示しない研磨材を介在させる。
【0072】
図18は、研磨が終了した状態を示す。図18の状態で加熱等により仮固定剤32を除去し、略半円状になったファイバ24aを得る。
【0073】
この工程の後、上記と同様に、図13に示したように、ファイバ24aの平面14に反射膜を成膜する。次いで、凸面15に無反射コートを蒸着等で施し、個片に切断する。なお、反射膜13の形成は個片化した後でも良い。
【0074】
以上の製造方法によれば、微小な光学素子であっても棒状でダイシング、研磨、成膜を行うことが可能であり、個片の状態で研磨、成膜を行う方法よりも格段に製造が容易となる。更に本発明の1次元集光光学素子においては研磨が必要な面は1面のみであるため、先行文献1に記載の非球面ミラーに比べ製造工数を低減できる。
【0075】
次いで、1次元集光光学素子9Bを、光アシスト磁気記録ヘッド3に実装する工程について説明する。図19は、光アシスト磁気記録ヘッド3の組立工程の概要図である。
【0076】
図19(a)は、光源部9Aと1次元集光光学素子9Bとをスライダ10に実装するユニット基板70の概要図である。
【0077】
図19(b)は、ユニット基板70に光源部9Aを実装する様子を示す概要図である。
【0078】
図19(c)は、光源部9Aが実装された状態のユニット基板70をスライダ10に実装した状態を示す概要図である。
【0079】
図19(d)は、ユニット基板70に対して1次元集光光学素子9Bの角度調整を行う様子を示す概要図である。
【0080】
図19(e)は、組み立てられた光アシスト磁気記録ヘッド3の概要図である。
【0081】
ユニット基板70は、光源部9Aと1次元集光光学素子9Bとをスライダ10に実装するための中間部品である。
【0082】
ユニット基板70は、図19(a)に示されているように平板であり、例えばセラミックを材料としている。ユニット基板70は、円筒状の1次元集光光学素子9Bと光源部9Aとを保持する保持手段であり、円筒状の溝73が形成されている。溝73の断面形状は1次元集光光学素子9Bと同様に半円筒状であってもよいし、半円筒より中心角の小さい形状であってもよい。ユニット基板70は例えば切削で作製することが可能である。ユニット基板70には、光源部9Aと不図示の電力供給部とを配線する上で使用されるボンディングパッド71a、71bを設けてもよい。
【0083】
次いで、図19(b)に示されているように、光源部9Aをユニット基板70に実装する。実装の際には例えば図示しないチップボンダー等を用いる。
【0084】
次いで、図19(c)に示されているように、光源部9Aがユニット基板70に実装されたユニット基板70を、光アシスト部8A,磁気再生部8C,磁気記録部8Bが予め積層されたスライダ10に実装する。実装の際には上記と同様に図示しないチップボンダー等を用いる。
【0085】
次いで、図19(d)に示されているように、1次元集光光学素子9Bを溝73にセットする。そして、光源部9Aを光らせて、光源部9Aからの光を1次元集光光学素子9Bに入射させ、1次元集光光学素子9Bから出射した光を導波路に入射させる。そして図示しない光パワーメータを用いて、導波路からの出射光のパワーをモニターしながら出射光の光強度が最大となるように光学素子を溝73上で回転調整する。
【0086】
次いで、図19(e)に示されているように、1次元集光光学素子9Bの側面と溝73に接着剤72を図示しないディスペンサを用いて塗布して例えば肉盛り接着し、図示しないUV照射光源からのUV光を照射して接着剤を硬化させる。
【0087】
以上のように1次元集光光学素子9Bの保持手段としてユニット基板70を採用することで、光源部9Aと1次元光学素子9Bの相対位置精度を容易に確保できる。
【0088】
次いで、図20は、他の光アシスト磁気記録ヘッドである光アシスト磁気記録ヘッド8の組立工程の概要図である。図20(a)は、光源部9Aと1次元集光光学素子9Bとをスライダ10に実装するユニット基板80の概要図である。
【0089】
図20(b)は、ユニット基板80に1次元集光光学素子9Bを接着する様子を示す概要図である。
【0090】
図20(c)は、1次元集光光学素子9Bが接着された状態のユニット基板80を示す概要図である。
【0091】
図20(d)は、1次元集光光学素子9Bが接着された状態のユニット基板80の側面図である。
【0092】
図20(e)は、光源部9Aが実装された状態のユニット基板80の概要図である。
【0093】
図20(f)は、組み立てられた光アシスト磁気記録ヘッド8の概要図である。
【0094】
図20(a)に示すように、ユニット基板80は、ユニット基板70と異なり、光源部9Aを実装する段差部81を有し、1次元集光光学素子9Bを実装する溝74を備える。
【0095】
その他、ユニット基板80は、ユニット基板70と同様の構造を有する。ユニット基板80は、段差部81を備えるので、光源部9Aの位置決め精度が向上する。また、ボンディングパッド71と光源部9Aの上面とが近い高さになるので、ボンディングが容易となる。また、溝74は垂直な2面からなる溝であり、ユニット基板70における溝73のような円筒状でないので作製が容易であるという長所を有する。
【0096】
最初に、図20(b)に示すように、1次元集光光学素子9Bをユニット基板80の段差部81に接着して実装する。予め、溝74にはディスペンサを用いてUV硬化型の接着剤72を塗布しておく。そして、図示しないUV光源を用いてUV照射し、図20(c)に示すように、1次元集光光学素子9Bを溝74に接着する。なお、接着剤72は、予め塗布しておくのではなく、1次元集光光学素子9Bを溝74にセットした後に、溝74と1次元集光光学素子9Bの側面に肉盛り接着してもよい。図20(d)に示すように、接着剤72を硬化させる前には、1次元集光光学素子9Bの平面14の法線方向が、ユニット基板80の底面と45°をなすように調整する。
【0097】
図21は、1次元集光光学素子9Bの平面14の角度を測定しながら調整する調整冶具100の概略図である。調整冶具100は、保持冶具83とオートコリメータ85を備える。保持冶具83における斜面86は、鉛直方向に対して45度をなす。斜面86にユニット基板80の底面を密着させる。そのため、1次元集光光学素子9Bが正しくユニット基板80に実装されると、1次元集光光学素子9Bの平面14の法線は鉛直方向に向けられることとなる。そこで、オートコリメータから予め鉛直方向に照射される光を平面14に照射し、オートコリメータへの反射光が照射した光と同じ光路を通過することを確認しつつ、1次元集光光学素子9Bの傾斜を調整する。このようにすることで、1次元集光光学素子9Bの角度調整を行うことができる。
【0098】
次いで、図20(e)に示すように、光源部9Aをユニット基板80に実装する。光源部9Aのユニット基板80への実装は図示しないチップボンダー等を用いる。
【0099】
次いで、図20(f)に示すように、ユニット基板80をスライダ10へ実装する。ユニット基板80をスライダ10上にセットし、光源部9Aを光らせ、そして図示しない光パワーメータを用いて、導波路からの出射光のパワーをモニターしながらユニット基板80とスライダ10との位置決め調整を行う。調整後に接着を行い、光アシスト磁気記録ヘッド8を得る。光アシスト磁気記録ヘッド8の断面は図22のようになる。図22は図20(f)のI−I線断面図である。
【0100】
尚、ユニット基板70を用いた場合においても上記のオートコリメータを用いた角度調整を行ってもよい。この場合には光源部9Aを点灯させて1次元光学素子9Bの回転調整をする必要はない。
【0101】
以上のように、本実施形態によれば、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面とを有し、該凸面は発散状態で入射される入射光を一方向に平行化し、前記平面は一方向に平行化された入射光を反射して反射光を生成し、前記凸面は前記反射光を集光することで、位置調整が簡易な光学素子を提供することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、前記平面に反射膜が形成されていることから、前記平面で全反射しない場合であっても高い反射率を確保することができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、予め設定された長さと曲率半径とを有する棒状体を準備するステップと、当該棒状体の一部を長手方向に沿って分離し、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面を有する部材とするステップと、前記平面と凸面を有する部材を個片化するステップとを少なくとも有することから、上記の光学素子を容易に作製できる製造方法を提供できる。
【0104】
また、本実施形態によれば、当該棒状体の一部を長手方向に沿って分離し、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面を有する部材とするステップに次いで、形成した平面の表面平滑化を行うステップを有することから、上記の光学素子を容易に作製できる製造方法を提供できる。
【0105】
また、本実施形態によれば、前記平面又は平滑化された平面に反射膜を形成するステップを更に有することから前記平面又は平滑化された平面で全反射しない場合であっても、前記平面又は平滑化された平面において高い反射率を確保することができる製造方法を提供できる。
【0106】
また、本実施形態によれば、光源と、該光源からの出射光を磁気記録媒体上に照射する導波路と、前記光源と前記導波路とを搭載したスライダと、を有する光アシスト磁気記録ヘッドであって、上記に記載の光学素子を用いて前記光源からの出射光を反射させて前記導波路に結合させることで、組立容易な光アシスト磁気記録ヘッドを提供することができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、前記光源と前記スライダとの間に前記光源を保持する保持手段を有することで、光源と光学素子の高さの設定を容易にする事ができる。
【0108】
また、本実施形態によれば、前記保持手段は更に前記光学素子を保持することから光源と光学素子の位置精度を確保する事ができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、上記の光アシスト用磁気ヘッドを搭載することで、製造容易な磁気記録装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 筐体
2 ディスク
3,8 光アシスト磁気記録ヘッド
4 サスペンション
5 支軸
6 アクチュエータ
7 磁気記録装置
10 スライダ
13 反射膜
14 平面
15 凸面
24 ファイバ
24a ファイバ
70,80 ユニット基板 8A 光アシスト部
8a,8b 平面導波路
8B 磁気記録部
8C 磁気再生部
9A 光源部
9B 1次元集光光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面とを有し、該凸面は発散状態で入射される入射光を一方向に平行化し、前記平面は一方向に平行化された入射光を反射して反射光を生成し、前記凸面は前記反射光を集光することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記平面に反射膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
予め設定された長さと曲率半径とを有する棒状体を準備するステップと、
当該棒状体の一部を長手方向に沿って分離し、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面を有する部材とするステップと、
前記平面と凸面を有する部材を個片化するステップと、
を少なくとも有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項4】
当該棒状体の一部を長手方向に沿って分離し、平面と、該平面に対向する円筒面形状の凸面を有する部材とするステップに次いで、形成した平面の表面平滑化を行うステップを有することを特徴とする請求項3に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記平面又は平滑化された平面に反射膜を形成するステップを更に有することを特徴とする請求項3又は4に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
光源と、該光源からの出射光を磁気記録媒体上に照射する導波路と、前記光源と前記導波路とを搭載したスライダと、を有する光アシスト磁気記録ヘッドであって、
請求項1または2に記載の光学素子を用いて前記光源からの出射光を反射させて前記導波路に結合させることを特徴とする光アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項7】
前記光源と前記スライダとの間に前記光源を保持する保持手段を有することを特徴とする請求項6に記載の光アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項8】
前記保持手段は更に前記光学素子を保持することを特徴とする請求項7に記載の光アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の光アシスト磁気ヘッドを搭載したことを特徴とする磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−64268(P2012−64268A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206441(P2010−206441)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】