光学素子の表面平滑化方法
【課題】光学素子の表面形状に依存することなく、しかも低コスト、小電力でしかも短時間で、光学素子表面に形成されたナノオーダの凹凸をエッチングして平滑化する。
【解決手段】光学素子2を原料ガス雰囲気中に複数段に亘り重ねて配置し、原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を光学素子2に照射することにより、これを光学素子2の上段から下段へ順次透過させ、各光学素子2表面に形成された凹凸における少なくとも先鋭化部分において発生させた近接場光に基づいて原料ガスを解離させてエッチングすることを特徴とする。
【解決手段】光学素子2を原料ガス雰囲気中に複数段に亘り重ねて配置し、原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を光学素子2に照射することにより、これを光学素子2の上段から下段へ順次透過させ、各光学素子2表面に形成された凹凸における少なくとも先鋭化部分において発生させた近接場光に基づいて原料ガスを解離させてエッチングすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の表面に形成されたナノオーダの凹凸をエッチングすることにより平滑化する際に好適な光学素子の表面平滑化方法並びにこれを用いた光学素子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成石英、BK7(ホウケイ酸塩クラウンガラス)等を用いたレンズ、反射鏡、窓板、偏光素子等の光学素子の表面平滑化方法としては、例えば、特許文献1に示すような光学素子の研削・研磨加工方法が提案されている。この研削・研磨加工方法においては、固定砥粒工具とレンズホルダーとを少なくとも有する加工装置を用いており、このレンズホルダーに光学素子であるレンズを保持して固定砥粒工具の加工面に当接させたまま、固定砥粒工具を回転モーターによって所定の回転数をもって回転駆動させる。そして、レンズを固定砥粒工具の加工面上を円弧状に揺動させながら、レンズ表面の研磨を行う。かかる場合において、レンズと固定砥粒工具との間には、ダイヤモンド等を初めとした砥粒を含む研磨液が接触された状態にある。
【特許文献1】特開2001−198784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1に示す光学素子の研削・研磨加工方法では、レンズ表面を固定砥粒工具や研磨液等を用いて物理的に研磨することによってその表面を平滑化しているため、固定砥粒の物理的な寸法より小さな凹凸まで研磨することができないという問題点があった。また、上述のような研磨液を用いた物理的な研磨では、研磨工程の進行に伴い、研磨液が凝集、固体化等されてしまい粗大粒子を形成し、これによって光学素子表面に引っ掻き疵(スクラッチ)を形成し、微細な凹凸が光学素子表面に残存してしまうという問題点があった。また、上述した特許文献1に示す光学素子の研削・研磨加工方法では、研磨の対象となる光学素子を構成する材質や厚みに応じて最適な研磨条件を調整する必要があるが、光の回折限界以下のナノオーダのレベルで表面凹凸が最小となる条件を見つけ出すことは現実的に困難であった。
【0004】
また、従来提案されてきた、光学素子の表面平滑化方法では、光学素子の表面形状によっては研磨を施すこと自体が困難な場合もあった。このため、光学素子の表面形状に支配されることなく、その表面をナノオーダで平滑化可能なプロセスに対する要望が強かった。
【0005】
さらに、従来における光学素子の研削・研磨加工方法は、物理的な研磨を行う上で長時間を要し、しかもシステム全体が大掛かりになることから製造コストが過大となる欠点もあった。また、研磨の対象となる光学素子の数が増加するにつれて、プロセスを実行する上で必要な電力が大きくなり、より環境に配慮した方法を提案する必要もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されてものであり、その目的とするところは、光学素子の表面形状に依存することなく、しかも低コスト、小電力でしかも短時間で、光学素子表面に形成されたナノオーダの凹凸をエッチングすることにより平滑化することが可能な表面平滑化方法並びにこれを用いた光学素子の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の光学素子の表面平滑化方法は、光学素子を原料ガス雰囲気中に複数段に亘り重ねて配置し、上記原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を上記光学素子に照射することにより、これを上記光学素子の上段から下段へ順次透過させ、各光学素子表面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1記載の発明において、さらに上記各光学素子裏面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1又は2記載の発明において、上記光学素子表面に対してP偏光の光をブリュースター角で入射させることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、塩素系ガスからなる原料ガス雰囲気中に光学素子を配置し、上記塩素系ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の、又はこれに加えて吸収端波長未満の帯域を含む光を照射することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1〜4のうち何れか1項記載の発明において、光の回折限界以下のピッチで上記凹凸が形成された光学素子を上記原料ガス雰囲気中に配置することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1〜5のうち何れか1項に記載の光学素子の表面平滑化方法の工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法では、特に光学素子における先鋭化部分43を初めとした局所的な部分において近接場光を発生させ、かかる近接場光による非断熱光化学反応に基づいて当該部分のみについて原料ガス分子を選択的に解離させ、生成したラジカルに基づいて先鋭化部分を初めとした角部を選択的にエッチングすることが可能となる。特に、この近接場光は、1nmオーダの角部であっても選択的に発生させることができることから、表面平滑化処理そのものをナノオーダで実現することができる。このため、本発明では、従来の光学素子の研磨方法と比較して、ナノオーダの光の回折限界以下のピッチで凹凸を無くすことにより、光学素子の表面をより平滑化させることが可能となる。
【0014】
また本発明は、光学素子の表面形状がいかなるものであっても、その微細な表面凹凸の局所領域に近接場光を発生させることができることから、光学素子の表面形状により処理の制約を受けることが無くなり、処理対象としての光学素子の表面形状の自由度に幅を持たせることで汎用性を向上させることができる。従って、従来において物理研磨を精度よく施すことが困難であった、光学素子のような、表面が湾曲した形状の凹曲面や凸曲面に対しても、塩素系ガス雰囲気中でこれら曲面等に光を照射するのみで、特別の制御することなく平滑化が可能となる。
【0015】
さらに本発明では、光を照射するのみで処理を行うことが可能となることから、物理的な研磨を行う場合と比較して短時間で済み、しかも製造コストを低減させることが可能となる。特に本発明では、ステージ上に多くの光学素子を並べて同時に平滑化処理を行うことが可能となるため、処理効率を向上させることが可能となる。
【0016】
また、本発明では、光学素子を複数段に亘り重ねて配置し、光を光学素子に照射することにより、これを光学素子の上段から下段へ順次透過させる。これにより何れの段に配置されている光学素子に対しても光源からの光が照射されることになることから、多数の光学素子を同時にエッチングすることが可能となり、ひいてはエッチング工程における歩留まりの向上並びに光学素子の作製時間の短縮化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法を実現するための表面平滑化処理システム1である。
【0019】
この表面平滑化処理システム1は、照射する光を利用して光学素子2の表面を平滑化するものであって、チャンバ11内に、ステージ13を配設して構成され、またこのチャンバ11内の気体は、ポンプ16を介して吸引可能とされ、更に圧力センサ17によりチャンバ11内の圧力を検出し、これに基づいてバタフライバルブ18を自動的に開閉することにより内圧の自動制御を実現可能としている。また、このチャンバ11に対して原料ガスを供給するための供給管23が接続されて構成されている。また、このチャンバ11における少なくとも一の面には、窓15が形成され、チャンバ11の外側に配設された光源14から照射された光がこの窓15を透過してチャンバ11内へと入射されることになる。
【0020】
ステージ13は、光学素子2を載置するための図示しない載置部や、光学素子2を加熱するための図示しない加熱機構等が設けられていてもよく、これらを制御することにより、光学素子2を原料ガスに基づいて表面平滑化処理を施す際において反応速度をコントロールすることが可能となる。なお、ステージ13は、光学素子2の位置を高精度に調整するための図示しない高精度ステージ機構等が設けられていてもよい。
【0021】
また、このステージ13上に載置される光学素子2は、複数段に亘り重ねて配置されている。但し、この光学素子2は、上下に重ねて配置する際において、上下間で間隙を設けて配置することが必要となる。これにより、各光学素子2の上面が原料ガス雰囲気に接触させることができる状態を作り出すことが可能となる。
【0022】
この光学素子2は、ステージ13上に組み立てられた段19上に配置されることにより、上下方向に向けて互いに重なり合うように配置されていてもよい。但し、段19上に載置される光学素子2の上面は段19を構成する部材に対して非接触とされていることが必要となり、これにより、各光学素子2の上面が原料ガス雰囲気に接触させることができる状態を作り出すことが可能となる。ちなみに、段19を利用して光学素子2を上下に重ねて配置する場合には、光源14から照射される光を透過できる材料で構成されている必要がある。
【0023】
チャンバ11内に対して供給管23を介して供給される原料ガスとしては、例えば塩素系ガスと不活性ガスとを混合してなる混合ガスである。この混合ガスは、所定の圧力となるように調整された上で随時供給される。塩素系ガスは、表面に凹凸を有する光学素子をナノオーダまで平滑化させるためにチャンバ11内に導入されるものであり、例えば、Cl2(塩素)、BCl3(三塩化ホウ素)、CCl4(四塩化炭素)等によって具体化される。また、不活性ガスは、N2,He,Ar,Kr,Xe等の何れか一種または二種以上を混合してなる塩素系ガスによって具体化される。
【0024】
光源14は、図示しない駆動電源による制御に基づき、所定の波長を有する光を射出するものである。この光源14からは、以下に詳細に説明するように、原料ガスのガス分子の吸収端波長よりも長波長からなる光が射出される。この光源14は、例えば、レーザーダイオード等によって具体化される。また、この光源以外に図示しない光学系を備えていてもよく、偏光レンズや集束レンズ等を備えて具体化される。これによって、光学素子2表面の凹凸の位置、大きさ、範囲等に応じて、ビーム径やビーム形状を制御し、光を照射する範囲を絞ることができる。
【0025】
図2は、この光源14から光学素子2へ光を照射する照射光学系7の他の例を示している。レーザーダイオード等からなる光源14から照射された光を反射ミラー71により略90°反射させ、更にこの反射された光を凹レンズ72によりビーム径を拡径させて窓15を通過させて光学素子2に照射するものである。かかる照明光学系7以外にもいかなる光学系を適用するようにしてもよいことは勿論である。
【0026】
なお、図3に、本発明を適用した表面平滑化処理システム1による処理対象としての光学素子2の例を示す。光学素子2は、例えば、レンズ、ミラー、プリズム、基板、ビームスプリッター、偏光素子として用いられるものである。光学素子2aは、図3(a)、(b)に示されるように、その表面31、裏面32ともに平坦な形状から構成される、いわゆる平行平面基板とよばれる光学素子である。光学素子2b、2cは、図3(c)〜(f)に示すように、その表面に凹曲面33や凸曲面34を有するレンズであり、裏面32は平坦な形状から構成される。このように、光学素子2は、その表面が平坦な形状からなる光学素子2aや、その表面が所定の曲率をもって湾曲してなる光学素子構造体2b、2c等が含まれるものであるが、図示される形状に限定されるものではない。また、光学素子2は、その大きさに限定されるものではない。
【0027】
光学素子2の材質は、例えば、BK7等のクラウンガラス、F2等のフリントガラスのような光学ガラスであったり、合成石英、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、岩塩(NaCl)、ゲルマニウム(Ge)、サファイヤ、ジンクセレン(ZnSe)等のような光学結晶等によって具体化される。
【0028】
このような光学素子2は、表面平滑化処理システム1による処理前において、図4(a)に示すように、表面に微細な凹凸が形成されている。この凹凸のピッチは、数nmのオーダから数μmまでのオーダまで様々であるが、本発明では特に1nm程度のピッチで構成されている凹凸をエッチングする場合においても適用可能である。
【0029】
以下この光学素子2の表面が内側に凹んでいる凹部41と、外側に先鋭化された凸部42で形成されているものとし、更に、この凸部42の先端を先鋭化部分43という。なお、表面粗さが極度に大きい場合等には、予め物理研磨を施しておき、その後の仕上げ加工として、本発明を適用するようにしてもよい。
【0030】
次に、上述した構成からなる表面平滑化処理システム1により、実際に光学素子2の表面を平滑化させるプロセスについて説明をする。
【0031】
先ず、表面処理を施すべき光学素子2をステージ13上に載置する。そしてチャンバ11内を密閉状態に保持し、所定圧力、所定温度に制御する。次に、供給管23を介してチャンバ11内に原料ガスを供給する。因みに以下では、原料ガスとして吸収端波長400nmの塩素系ガスを使用する場合を例にとる。その結果、この光学素子2は、原料ガスとしての塩素系ガス雰囲気中において配置されている状態を作り出すことが可能となる。
【0032】
次に、光源14からの光を光学素子2に入射させる。このときの光源14から照射する光の波長は、532nmである。ちなみに、この照射する光の波長は、10〜20nm程度の半値幅を持つ場合もある。但し、この照射する光の波長は、あくまで塩素系ガスの吸収端波長を基準とした場合の例であり、これに限定されるものではない。他の原料ガスを使用する場合にはその吸収端波長以上の光を適宜照射することになる。
【0033】
図5は、チャンバ11内に導入された塩素系ガスのガス分子の原子核間距離に対するポテンシャルエネルギーの関係について示している。通常、チャンバ11内に導入された塩素系ガスのガス分子に対して、基底準位と励起準位とのエネルギー差Ea以上の光エネルギーをもつ光、即ち、ガス分子の吸収端波長よりも短波長からなる光(以下、この光を共鳴光という。)を照射すると、このガス分子は、励起準位へ直接励起される。この励起準位は、解離エネルギーEbを超えているため、矢印で示される方向へガス分子を光解離させて塩素ラジカルが生成される。これは、伝搬光を使った通常の光解離のメカニズムに基づくものであるが、伝搬光の電場強度が分子サイズの空間内において均一な分布であるため、ガス分子を構成する原子核や電子のうち軽い電子のみが光に対して反応するものの、原子核間距離を変化させることができない。即ち、伝搬光による光解離過程は断熱近似となることから、基底状態から解離軌道へ遷移させるためには、励起準位軌道のポテンシャルエネルギーよりも高い光エネルギーを持つ光を照射する必要がある。ちなみに、塩素系ガスの吸収端波長以上の非共鳴光を伝搬光として照射した場合、ガス分子は励起準位へ励起されない。非共鳴光は、図6における光エネルギーS1、S2等のように励起準位軌道のポテンシャルエネルギーよりも低いため、伝搬光を単に照射させたのみでは、ガス分子を光解離させて活性種としてのラジカルを生成させることはできない。
【0034】
これに対して本発明では、塩素系ガスの吸収端波長以上の光(以下、この光を非共鳴光という。)を利用するが、光学素子2の表面凹凸をエッチングする上で、非共鳴光としての伝搬光を直接的に利用するものではなく、この照射された伝搬光に基づいて光学素子2の局所領域に発生させた近接場光に基づいて、表面の凹凸をエッチングする。
【0035】
ここでいう近接場光とは、約1μm以下の大きさからなる物体の表面に伝搬光を照射した場合に、その物体の表面にまとわりついて局在する非伝搬光のことをいう。この近接場光は、非常に強い電場成分を有しているが、物体の表面から遠ざかるにつれてその電場成分が急激に減少する性質をもっている。この非常に強い電場成分が見られる物体表面からの厚みは、その物体の寸法に依存しており、その物体の寸法と同程度の厚みからなる。
【0036】
近接場光の電場強度は、局所領域においても急激に減少するという特質を有する。このため、この近接場光を塩素系ガスの分子と反応させた場合において、その電場は分子にとって不均一な空間分布となり、塩素系ガス分子中の原子核も、かかる近接場光の電場勾配により引力を受けることになる。即ち、近接場光をガス分子と反応させることにより、当該ガス分子を構成する比較的軽い電子のみならず、原子核をも近接場光に対して応答させることができる。その結果、近接場光により、原子核間距離を周期的に変化させることが可能となり、分子の振動準位への直接的な励起を生じさせる、いわゆる非断熱光化学反応を起こさせることが可能となる。
【0037】
塩素系ガスの吸収端波長以上の非共鳴光を近接場光としてガス分子に反応させた場合には、かかる非断熱光化学反応により、ガス分子をラジカルへと解離させることが可能となる。この非断熱光化学反応は、図5に示すような過程T1〜T3に分類することができる。過程T1は、ガス分子が複数の分子振動準位を介して励起され(多段階遷移)、その結果、励起準位にまで励起された後に、活性種等に解離される過程のことをいう。また、過程T2は、ガス分子の解離エネルギーEb以上の光エネルギーをもつ光を照射した場合に、ガス分子が解離エネルギーEb以上のエネルギー準位の分子振動準位にまで励起され、その結果、活性種等に直接的に解離される過程のことをいう。また、過程T3は、ガス分子のEb以下の光エネルギーを持つ光を照射した場合に、ガス分子が複数の分子軌道準位を介して多段階遷移し、Ea未満Eb以上のエネルギー準位まで励起された後に、活性種等に解離される過程のことをいう。
【0038】
このように、非共鳴光を近接場光としてガス分子と反応させた場合に、非断熱光化学反応における過程T1〜T3により、当該ガス分子を分子振動準位にまで直接的に遷移させることが可能となる。
【0039】
ここで伝搬光を光学素子2に照射することにより、近接場光が発生する角部とは、図4(b)に示すように凸部42の先端に相当する先鋭化部分43である。この先鋭化部分43において近接場光が選択的に発生すると、当該発生した近接場光により原料ガス分子51が解離されてラジカル52が生成される。このラジカル52は、近接場光が発生した先鋭化部分43近傍のみにおいて選択的に生成される。そして、この生成されたラジカル52は、これに最も近接する先鋭化部分43と選択的に反応することになる。その結果、図4(c)に示すように、先鋭化部分43がラジカル52の活性によりエッチングされることになる。そして先鋭化部分43がエッチングされると、この凸部42において更に先鋭化部分43’が形成されるが、これに対しても近接場光が選択的に発生し、原料ガス分子51を解離させてラジカル52を先鋭化部分43’近傍において選択的に形成されることができる。その結果、この先鋭化部分43’は、ラジカル52と反応することによりエッチングされることになる。
【0040】
また、近接場光が発生する角部は、かかる先鋭化部分のみならず、凹部41、凸部42を構成するいかなる角部分をも含む。凹部41もここでいう角部に含まれ、図4(b)に示すように近接場光が発生し、この発生した近接場光に基づいて発生させたラジカル52により当該凹部41が平滑化されることになる。
【0041】
上述したように、光学素子2の局所領域における近接場光の発生と、原料ガス分子51の解離によるラジカル活性、先鋭化部分43の反応が繰り返し実行されることにより、最終的には図4(d)に示すように、角部をエッチングすることにより表面を平滑化させ、表面粗さを低減させることが可能となる。
【0042】
また、光学素子2に照射された光は、図7に示すように光学素子2の上段から下段へ順次透過することになる。例えば最上段に位置する光学素子2aは、照射された光が直接的に入射される。これに対して、光学素子2bは、光学素子2aを透過した光が入射される。さらに、光学素子2cは、光学素子2a及び/又は光学素子2bを透過した光が入射される。
【0043】
光学素子2b、2cは、これらよりも上段に配置される光学素子2を透過してきた光に基づいて近接場光を発生させる。かかる場合において、図7の点線矢印に示すように、入射された光が光学素子2の表面において反射してしまうと、それが光損失になってしまう。この光損失が、各段における光学素子2について起これば、下段の光学素子2になるにつれて、かかる光損失の影響を受け、入射される光の強度はより低くなってしまう。
【0044】
このような光学素子2の表面反射に基づくエネルギーのロスを防ぐために、図8に示すように、P偏光の光をブリュースター角θiで入射させるようにしてもよい。これにより、かかるP偏光の光は、光学素子の表面で反射することが無くなることから、表面反射に基づくエネルギーのロスを最小限に抑えることが可能となる。
【0045】
本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法では、特に光学素子2における先鋭化部分43を初めとした局所的な部分において近接場光を発生させ、かかる近接場光による非断熱光化学反応に基づいて当該部分のみについて原料ガス分子51を選択的に解離させ、生成したラジカル52に基づいて角部を選択的にエッチングすることが可能となる。特に、この近接場光は、1nmオーダの角部であっても選択的に発生させることができることから、表面平滑化処理そのものをナノオーダで実現することができる。このため、本発明では、従来の光学素子の研磨方法と比較して、ナノオーダの光の回折限界以下のピッチで凹凸を無くすことにより、光学素子2の表面をより平滑化させることが可能となる。
【0046】
また本発明は、光学素子2の表面形状がいかなるものであっても、その微細な表面凹凸の局所領域に近接場光を発生させることができることから、光学素子2の表面形状により処理の制約を受けることが無くなり、処理対象としての光学素子2の表面形状の自由度に幅を持たせることで汎用性を向上させることができる。従って、従来において物理研磨を精度よく施すことが困難であった、光学素子2b、2cのような、表面が湾曲した形状の凹曲面33や凸曲面34に対しても、塩素系ガス雰囲気中でこれら曲面等に光を照射するのみで、特別の制御することなく平滑化が可能となる。
【0047】
さらに本発明では、光を照射するのみで処理を行うことが可能となることから、物理的な研磨を行う場合と比較して短時間で済み、しかも製造コストを低減させることが可能となる。特に本発明では、ステージ13上に多くの光学素子2を並べて同時に平滑化処理を行うことが可能となるため、処理効率を向上させることが可能となる。
【0048】
また、本発明では、光学素子2を複数段に亘り重ねて配置し、光を光学素子2に照射することにより、これを光学素子2の上段から下段へ順次透過させる。これにより何れの段に配置されている光学素子2に対しても光源14からの光が照射されることになることから、多数の光学素子2を同時にエッチングすることが可能となり、ひいてはエッチング工程における歩留まりの向上並びに光学素子2の作製時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0049】
しかも光学素子表面に対してP偏光の光をブリュースター角度で照射することにより、入射された光が光学素子2の表面において反射してしまうのを防止することが可能となり、下段の光学素子2においても、かかる光損失の影響を受けることなく、エッチングにおける光効率を高く維持することが可能となる。
【0050】
因みに、上述した実施の形態においては、原料ガスとして塩素系ガスを使用する場合を例にとり説明をしたが、塩素系ガス以外を使用する場合も同様の技術思想が適用される。即ち、使用する原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上のみの光を照射することにより、上述したような近接場光を利用した非断熱光化学反応に基づいてガス分子を解離させることが可能となる。 なお本発明において、光源14から出射する光の波長帯域としては10μm以下とするのが好ましい。この光の波長が10μm超であると、ガス分子の振動準位への直接的な励起が生じにくく、近接場光によるエッチングレートが低減するためである。
【0051】
また、本発明において、チャンバ11内に導入される塩素系ガスのガス分子の分圧は、少なくとも1×10−5Pa以上とするのが望ましい。チャンバ11内の塩素系ガスのガス分子の分圧が1×10−5Pa未満であると、光学素子2表面の凸部51近傍の空間内に、エッチング反応を起こすために必要となる塩素系ガスのガス分子が行き届かず、これによって、凸部51に近接場光が発生したとしてもエッチング反応が進行しにくくなるためである。なお、チャンバ11内に導入される塩素系ガスのガス分子の分圧は、あまりに低すぎるとエッチングレートが低くなり、プロセスが完了するまでに多大な時間を要することになるので、100Pa以上とするのが一層望ましい。これによって、光学素子2表面に形成された角部近傍の空間に、エッチング反応を起こすために必要となる塩素系ガスのガス分子を十分行き渡らせることが可能となり、平滑化処理プロセスを短時間で完了させることが可能となる。
【0052】
また、本発明においては、光学素子2を多段に亘り重ねて配置する場合における光の減衰を考慮して、光学素子2に対して照射される光のエネルギー密度を適宜上昇させるようにしてもよい。
【0053】
さらに本発明では、あくまで、各光学素子2表面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて原料ガスを解離させてエッチングする場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。例えば、各光学素子2裏面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて原料ガスを解離させてエッチングするようにしてもよい。そのメカニズムは、上述と同様である。即ち、光学素子2の裏面においても原料ガスが回り込むことから、光学素子2の表面と同様の現象、効果が生じることになる。このため、本発明では、光学素子2の表面に加え裏面も同時にエッチングすることができる点において有用である。
【0054】
また本発明は、原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を照射する場合に限定されるものではない。ガス分子の吸収端波長以上の帯域に加えて吸収端波長未満の帯域を含む光を照射するようにしてもよいことは勿論である。
【0055】
因みに本発明は、上述したプロセスからなる光学素子の表面平滑化方法の工程を有すること光学素子の作製方法として具体化されていてもよい。
【0056】
また、チャンバ11内に対して供給管23を介して供給される原料ガスは、塩素系ガスに限定されるものではなく、例えば、SiH4(モノシラン)、Si2H6(ジシラン)等のシラン系ガスや、Cr(η5-C5H5)2(クロモセン)、Cr(CO6)(ヘキサカルボニルクロム)等であってもよい。またこれ以外にも、例えば、SF6(六フッ化硫黄)、CHF3(トリフルオロメタン)、CF4(四フッ化炭素)、C3F8(オクタフルオロプロパン)等のフッ素系ガス等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法を実現するための表面平滑化処理システムを示す図である。
【図2】本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法を実現するための他の光学系の例を示す図である。
【図3】本発明を適用した表面平滑化処理システムによる処理対象としての光学素子の例を示す図である。
【図4】本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法について説明するための図である。
【図5】チャンバ内に導入された塩素系ガスのガス分子の原子核間距離に対するポテンシャルエネルギーの関係図である。
【図6】共鳴光照射モードについて説明するための図である。
【図7】光学素子表面における光損失を低減させる方法について説明するための図である。
【図8】光学素子表面における光損失を低減させる方法について説明するための他の図である。
【符号の説明】
【0058】
1 表面平滑化処理システム
2 光学素子
11 チャンバ
13 ステージ
15 窓
16 ポンプ
17 圧力センサ
18 バタフライバルブ
19 段
23 供給管
41 凹部
42 凸部
43 先鋭化部分
71 反射ミラー
72 凹レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の表面に形成されたナノオーダの凹凸をエッチングすることにより平滑化する際に好適な光学素子の表面平滑化方法並びにこれを用いた光学素子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成石英、BK7(ホウケイ酸塩クラウンガラス)等を用いたレンズ、反射鏡、窓板、偏光素子等の光学素子の表面平滑化方法としては、例えば、特許文献1に示すような光学素子の研削・研磨加工方法が提案されている。この研削・研磨加工方法においては、固定砥粒工具とレンズホルダーとを少なくとも有する加工装置を用いており、このレンズホルダーに光学素子であるレンズを保持して固定砥粒工具の加工面に当接させたまま、固定砥粒工具を回転モーターによって所定の回転数をもって回転駆動させる。そして、レンズを固定砥粒工具の加工面上を円弧状に揺動させながら、レンズ表面の研磨を行う。かかる場合において、レンズと固定砥粒工具との間には、ダイヤモンド等を初めとした砥粒を含む研磨液が接触された状態にある。
【特許文献1】特開2001−198784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1に示す光学素子の研削・研磨加工方法では、レンズ表面を固定砥粒工具や研磨液等を用いて物理的に研磨することによってその表面を平滑化しているため、固定砥粒の物理的な寸法より小さな凹凸まで研磨することができないという問題点があった。また、上述のような研磨液を用いた物理的な研磨では、研磨工程の進行に伴い、研磨液が凝集、固体化等されてしまい粗大粒子を形成し、これによって光学素子表面に引っ掻き疵(スクラッチ)を形成し、微細な凹凸が光学素子表面に残存してしまうという問題点があった。また、上述した特許文献1に示す光学素子の研削・研磨加工方法では、研磨の対象となる光学素子を構成する材質や厚みに応じて最適な研磨条件を調整する必要があるが、光の回折限界以下のナノオーダのレベルで表面凹凸が最小となる条件を見つけ出すことは現実的に困難であった。
【0004】
また、従来提案されてきた、光学素子の表面平滑化方法では、光学素子の表面形状によっては研磨を施すこと自体が困難な場合もあった。このため、光学素子の表面形状に支配されることなく、その表面をナノオーダで平滑化可能なプロセスに対する要望が強かった。
【0005】
さらに、従来における光学素子の研削・研磨加工方法は、物理的な研磨を行う上で長時間を要し、しかもシステム全体が大掛かりになることから製造コストが過大となる欠点もあった。また、研磨の対象となる光学素子の数が増加するにつれて、プロセスを実行する上で必要な電力が大きくなり、より環境に配慮した方法を提案する必要もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されてものであり、その目的とするところは、光学素子の表面形状に依存することなく、しかも低コスト、小電力でしかも短時間で、光学素子表面に形成されたナノオーダの凹凸をエッチングすることにより平滑化することが可能な表面平滑化方法並びにこれを用いた光学素子の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の光学素子の表面平滑化方法は、光学素子を原料ガス雰囲気中に複数段に亘り重ねて配置し、上記原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を上記光学素子に照射することにより、これを上記光学素子の上段から下段へ順次透過させ、各光学素子表面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1記載の発明において、さらに上記各光学素子裏面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1又は2記載の発明において、上記光学素子表面に対してP偏光の光をブリュースター角で入射させることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、塩素系ガスからなる原料ガス雰囲気中に光学素子を配置し、上記塩素系ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の、又はこれに加えて吸収端波長未満の帯域を含む光を照射することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1〜4のうち何れか1項記載の発明において、光の回折限界以下のピッチで上記凹凸が形成された光学素子を上記原料ガス雰囲気中に配置することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の光学素子の表面平滑化方法は、請求項1〜5のうち何れか1項に記載の光学素子の表面平滑化方法の工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法では、特に光学素子における先鋭化部分43を初めとした局所的な部分において近接場光を発生させ、かかる近接場光による非断熱光化学反応に基づいて当該部分のみについて原料ガス分子を選択的に解離させ、生成したラジカルに基づいて先鋭化部分を初めとした角部を選択的にエッチングすることが可能となる。特に、この近接場光は、1nmオーダの角部であっても選択的に発生させることができることから、表面平滑化処理そのものをナノオーダで実現することができる。このため、本発明では、従来の光学素子の研磨方法と比較して、ナノオーダの光の回折限界以下のピッチで凹凸を無くすことにより、光学素子の表面をより平滑化させることが可能となる。
【0014】
また本発明は、光学素子の表面形状がいかなるものであっても、その微細な表面凹凸の局所領域に近接場光を発生させることができることから、光学素子の表面形状により処理の制約を受けることが無くなり、処理対象としての光学素子の表面形状の自由度に幅を持たせることで汎用性を向上させることができる。従って、従来において物理研磨を精度よく施すことが困難であった、光学素子のような、表面が湾曲した形状の凹曲面や凸曲面に対しても、塩素系ガス雰囲気中でこれら曲面等に光を照射するのみで、特別の制御することなく平滑化が可能となる。
【0015】
さらに本発明では、光を照射するのみで処理を行うことが可能となることから、物理的な研磨を行う場合と比較して短時間で済み、しかも製造コストを低減させることが可能となる。特に本発明では、ステージ上に多くの光学素子を並べて同時に平滑化処理を行うことが可能となるため、処理効率を向上させることが可能となる。
【0016】
また、本発明では、光学素子を複数段に亘り重ねて配置し、光を光学素子に照射することにより、これを光学素子の上段から下段へ順次透過させる。これにより何れの段に配置されている光学素子に対しても光源からの光が照射されることになることから、多数の光学素子を同時にエッチングすることが可能となり、ひいてはエッチング工程における歩留まりの向上並びに光学素子の作製時間の短縮化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法を実現するための表面平滑化処理システム1である。
【0019】
この表面平滑化処理システム1は、照射する光を利用して光学素子2の表面を平滑化するものであって、チャンバ11内に、ステージ13を配設して構成され、またこのチャンバ11内の気体は、ポンプ16を介して吸引可能とされ、更に圧力センサ17によりチャンバ11内の圧力を検出し、これに基づいてバタフライバルブ18を自動的に開閉することにより内圧の自動制御を実現可能としている。また、このチャンバ11に対して原料ガスを供給するための供給管23が接続されて構成されている。また、このチャンバ11における少なくとも一の面には、窓15が形成され、チャンバ11の外側に配設された光源14から照射された光がこの窓15を透過してチャンバ11内へと入射されることになる。
【0020】
ステージ13は、光学素子2を載置するための図示しない載置部や、光学素子2を加熱するための図示しない加熱機構等が設けられていてもよく、これらを制御することにより、光学素子2を原料ガスに基づいて表面平滑化処理を施す際において反応速度をコントロールすることが可能となる。なお、ステージ13は、光学素子2の位置を高精度に調整するための図示しない高精度ステージ機構等が設けられていてもよい。
【0021】
また、このステージ13上に載置される光学素子2は、複数段に亘り重ねて配置されている。但し、この光学素子2は、上下に重ねて配置する際において、上下間で間隙を設けて配置することが必要となる。これにより、各光学素子2の上面が原料ガス雰囲気に接触させることができる状態を作り出すことが可能となる。
【0022】
この光学素子2は、ステージ13上に組み立てられた段19上に配置されることにより、上下方向に向けて互いに重なり合うように配置されていてもよい。但し、段19上に載置される光学素子2の上面は段19を構成する部材に対して非接触とされていることが必要となり、これにより、各光学素子2の上面が原料ガス雰囲気に接触させることができる状態を作り出すことが可能となる。ちなみに、段19を利用して光学素子2を上下に重ねて配置する場合には、光源14から照射される光を透過できる材料で構成されている必要がある。
【0023】
チャンバ11内に対して供給管23を介して供給される原料ガスとしては、例えば塩素系ガスと不活性ガスとを混合してなる混合ガスである。この混合ガスは、所定の圧力となるように調整された上で随時供給される。塩素系ガスは、表面に凹凸を有する光学素子をナノオーダまで平滑化させるためにチャンバ11内に導入されるものであり、例えば、Cl2(塩素)、BCl3(三塩化ホウ素)、CCl4(四塩化炭素)等によって具体化される。また、不活性ガスは、N2,He,Ar,Kr,Xe等の何れか一種または二種以上を混合してなる塩素系ガスによって具体化される。
【0024】
光源14は、図示しない駆動電源による制御に基づき、所定の波長を有する光を射出するものである。この光源14からは、以下に詳細に説明するように、原料ガスのガス分子の吸収端波長よりも長波長からなる光が射出される。この光源14は、例えば、レーザーダイオード等によって具体化される。また、この光源以外に図示しない光学系を備えていてもよく、偏光レンズや集束レンズ等を備えて具体化される。これによって、光学素子2表面の凹凸の位置、大きさ、範囲等に応じて、ビーム径やビーム形状を制御し、光を照射する範囲を絞ることができる。
【0025】
図2は、この光源14から光学素子2へ光を照射する照射光学系7の他の例を示している。レーザーダイオード等からなる光源14から照射された光を反射ミラー71により略90°反射させ、更にこの反射された光を凹レンズ72によりビーム径を拡径させて窓15を通過させて光学素子2に照射するものである。かかる照明光学系7以外にもいかなる光学系を適用するようにしてもよいことは勿論である。
【0026】
なお、図3に、本発明を適用した表面平滑化処理システム1による処理対象としての光学素子2の例を示す。光学素子2は、例えば、レンズ、ミラー、プリズム、基板、ビームスプリッター、偏光素子として用いられるものである。光学素子2aは、図3(a)、(b)に示されるように、その表面31、裏面32ともに平坦な形状から構成される、いわゆる平行平面基板とよばれる光学素子である。光学素子2b、2cは、図3(c)〜(f)に示すように、その表面に凹曲面33や凸曲面34を有するレンズであり、裏面32は平坦な形状から構成される。このように、光学素子2は、その表面が平坦な形状からなる光学素子2aや、その表面が所定の曲率をもって湾曲してなる光学素子構造体2b、2c等が含まれるものであるが、図示される形状に限定されるものではない。また、光学素子2は、その大きさに限定されるものではない。
【0027】
光学素子2の材質は、例えば、BK7等のクラウンガラス、F2等のフリントガラスのような光学ガラスであったり、合成石英、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、岩塩(NaCl)、ゲルマニウム(Ge)、サファイヤ、ジンクセレン(ZnSe)等のような光学結晶等によって具体化される。
【0028】
このような光学素子2は、表面平滑化処理システム1による処理前において、図4(a)に示すように、表面に微細な凹凸が形成されている。この凹凸のピッチは、数nmのオーダから数μmまでのオーダまで様々であるが、本発明では特に1nm程度のピッチで構成されている凹凸をエッチングする場合においても適用可能である。
【0029】
以下この光学素子2の表面が内側に凹んでいる凹部41と、外側に先鋭化された凸部42で形成されているものとし、更に、この凸部42の先端を先鋭化部分43という。なお、表面粗さが極度に大きい場合等には、予め物理研磨を施しておき、その後の仕上げ加工として、本発明を適用するようにしてもよい。
【0030】
次に、上述した構成からなる表面平滑化処理システム1により、実際に光学素子2の表面を平滑化させるプロセスについて説明をする。
【0031】
先ず、表面処理を施すべき光学素子2をステージ13上に載置する。そしてチャンバ11内を密閉状態に保持し、所定圧力、所定温度に制御する。次に、供給管23を介してチャンバ11内に原料ガスを供給する。因みに以下では、原料ガスとして吸収端波長400nmの塩素系ガスを使用する場合を例にとる。その結果、この光学素子2は、原料ガスとしての塩素系ガス雰囲気中において配置されている状態を作り出すことが可能となる。
【0032】
次に、光源14からの光を光学素子2に入射させる。このときの光源14から照射する光の波長は、532nmである。ちなみに、この照射する光の波長は、10〜20nm程度の半値幅を持つ場合もある。但し、この照射する光の波長は、あくまで塩素系ガスの吸収端波長を基準とした場合の例であり、これに限定されるものではない。他の原料ガスを使用する場合にはその吸収端波長以上の光を適宜照射することになる。
【0033】
図5は、チャンバ11内に導入された塩素系ガスのガス分子の原子核間距離に対するポテンシャルエネルギーの関係について示している。通常、チャンバ11内に導入された塩素系ガスのガス分子に対して、基底準位と励起準位とのエネルギー差Ea以上の光エネルギーをもつ光、即ち、ガス分子の吸収端波長よりも短波長からなる光(以下、この光を共鳴光という。)を照射すると、このガス分子は、励起準位へ直接励起される。この励起準位は、解離エネルギーEbを超えているため、矢印で示される方向へガス分子を光解離させて塩素ラジカルが生成される。これは、伝搬光を使った通常の光解離のメカニズムに基づくものであるが、伝搬光の電場強度が分子サイズの空間内において均一な分布であるため、ガス分子を構成する原子核や電子のうち軽い電子のみが光に対して反応するものの、原子核間距離を変化させることができない。即ち、伝搬光による光解離過程は断熱近似となることから、基底状態から解離軌道へ遷移させるためには、励起準位軌道のポテンシャルエネルギーよりも高い光エネルギーを持つ光を照射する必要がある。ちなみに、塩素系ガスの吸収端波長以上の非共鳴光を伝搬光として照射した場合、ガス分子は励起準位へ励起されない。非共鳴光は、図6における光エネルギーS1、S2等のように励起準位軌道のポテンシャルエネルギーよりも低いため、伝搬光を単に照射させたのみでは、ガス分子を光解離させて活性種としてのラジカルを生成させることはできない。
【0034】
これに対して本発明では、塩素系ガスの吸収端波長以上の光(以下、この光を非共鳴光という。)を利用するが、光学素子2の表面凹凸をエッチングする上で、非共鳴光としての伝搬光を直接的に利用するものではなく、この照射された伝搬光に基づいて光学素子2の局所領域に発生させた近接場光に基づいて、表面の凹凸をエッチングする。
【0035】
ここでいう近接場光とは、約1μm以下の大きさからなる物体の表面に伝搬光を照射した場合に、その物体の表面にまとわりついて局在する非伝搬光のことをいう。この近接場光は、非常に強い電場成分を有しているが、物体の表面から遠ざかるにつれてその電場成分が急激に減少する性質をもっている。この非常に強い電場成分が見られる物体表面からの厚みは、その物体の寸法に依存しており、その物体の寸法と同程度の厚みからなる。
【0036】
近接場光の電場強度は、局所領域においても急激に減少するという特質を有する。このため、この近接場光を塩素系ガスの分子と反応させた場合において、その電場は分子にとって不均一な空間分布となり、塩素系ガス分子中の原子核も、かかる近接場光の電場勾配により引力を受けることになる。即ち、近接場光をガス分子と反応させることにより、当該ガス分子を構成する比較的軽い電子のみならず、原子核をも近接場光に対して応答させることができる。その結果、近接場光により、原子核間距離を周期的に変化させることが可能となり、分子の振動準位への直接的な励起を生じさせる、いわゆる非断熱光化学反応を起こさせることが可能となる。
【0037】
塩素系ガスの吸収端波長以上の非共鳴光を近接場光としてガス分子に反応させた場合には、かかる非断熱光化学反応により、ガス分子をラジカルへと解離させることが可能となる。この非断熱光化学反応は、図5に示すような過程T1〜T3に分類することができる。過程T1は、ガス分子が複数の分子振動準位を介して励起され(多段階遷移)、その結果、励起準位にまで励起された後に、活性種等に解離される過程のことをいう。また、過程T2は、ガス分子の解離エネルギーEb以上の光エネルギーをもつ光を照射した場合に、ガス分子が解離エネルギーEb以上のエネルギー準位の分子振動準位にまで励起され、その結果、活性種等に直接的に解離される過程のことをいう。また、過程T3は、ガス分子のEb以下の光エネルギーを持つ光を照射した場合に、ガス分子が複数の分子軌道準位を介して多段階遷移し、Ea未満Eb以上のエネルギー準位まで励起された後に、活性種等に解離される過程のことをいう。
【0038】
このように、非共鳴光を近接場光としてガス分子と反応させた場合に、非断熱光化学反応における過程T1〜T3により、当該ガス分子を分子振動準位にまで直接的に遷移させることが可能となる。
【0039】
ここで伝搬光を光学素子2に照射することにより、近接場光が発生する角部とは、図4(b)に示すように凸部42の先端に相当する先鋭化部分43である。この先鋭化部分43において近接場光が選択的に発生すると、当該発生した近接場光により原料ガス分子51が解離されてラジカル52が生成される。このラジカル52は、近接場光が発生した先鋭化部分43近傍のみにおいて選択的に生成される。そして、この生成されたラジカル52は、これに最も近接する先鋭化部分43と選択的に反応することになる。その結果、図4(c)に示すように、先鋭化部分43がラジカル52の活性によりエッチングされることになる。そして先鋭化部分43がエッチングされると、この凸部42において更に先鋭化部分43’が形成されるが、これに対しても近接場光が選択的に発生し、原料ガス分子51を解離させてラジカル52を先鋭化部分43’近傍において選択的に形成されることができる。その結果、この先鋭化部分43’は、ラジカル52と反応することによりエッチングされることになる。
【0040】
また、近接場光が発生する角部は、かかる先鋭化部分のみならず、凹部41、凸部42を構成するいかなる角部分をも含む。凹部41もここでいう角部に含まれ、図4(b)に示すように近接場光が発生し、この発生した近接場光に基づいて発生させたラジカル52により当該凹部41が平滑化されることになる。
【0041】
上述したように、光学素子2の局所領域における近接場光の発生と、原料ガス分子51の解離によるラジカル活性、先鋭化部分43の反応が繰り返し実行されることにより、最終的には図4(d)に示すように、角部をエッチングすることにより表面を平滑化させ、表面粗さを低減させることが可能となる。
【0042】
また、光学素子2に照射された光は、図7に示すように光学素子2の上段から下段へ順次透過することになる。例えば最上段に位置する光学素子2aは、照射された光が直接的に入射される。これに対して、光学素子2bは、光学素子2aを透過した光が入射される。さらに、光学素子2cは、光学素子2a及び/又は光学素子2bを透過した光が入射される。
【0043】
光学素子2b、2cは、これらよりも上段に配置される光学素子2を透過してきた光に基づいて近接場光を発生させる。かかる場合において、図7の点線矢印に示すように、入射された光が光学素子2の表面において反射してしまうと、それが光損失になってしまう。この光損失が、各段における光学素子2について起これば、下段の光学素子2になるにつれて、かかる光損失の影響を受け、入射される光の強度はより低くなってしまう。
【0044】
このような光学素子2の表面反射に基づくエネルギーのロスを防ぐために、図8に示すように、P偏光の光をブリュースター角θiで入射させるようにしてもよい。これにより、かかるP偏光の光は、光学素子の表面で反射することが無くなることから、表面反射に基づくエネルギーのロスを最小限に抑えることが可能となる。
【0045】
本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法では、特に光学素子2における先鋭化部分43を初めとした局所的な部分において近接場光を発生させ、かかる近接場光による非断熱光化学反応に基づいて当該部分のみについて原料ガス分子51を選択的に解離させ、生成したラジカル52に基づいて角部を選択的にエッチングすることが可能となる。特に、この近接場光は、1nmオーダの角部であっても選択的に発生させることができることから、表面平滑化処理そのものをナノオーダで実現することができる。このため、本発明では、従来の光学素子の研磨方法と比較して、ナノオーダの光の回折限界以下のピッチで凹凸を無くすことにより、光学素子2の表面をより平滑化させることが可能となる。
【0046】
また本発明は、光学素子2の表面形状がいかなるものであっても、その微細な表面凹凸の局所領域に近接場光を発生させることができることから、光学素子2の表面形状により処理の制約を受けることが無くなり、処理対象としての光学素子2の表面形状の自由度に幅を持たせることで汎用性を向上させることができる。従って、従来において物理研磨を精度よく施すことが困難であった、光学素子2b、2cのような、表面が湾曲した形状の凹曲面33や凸曲面34に対しても、塩素系ガス雰囲気中でこれら曲面等に光を照射するのみで、特別の制御することなく平滑化が可能となる。
【0047】
さらに本発明では、光を照射するのみで処理を行うことが可能となることから、物理的な研磨を行う場合と比較して短時間で済み、しかも製造コストを低減させることが可能となる。特に本発明では、ステージ13上に多くの光学素子2を並べて同時に平滑化処理を行うことが可能となるため、処理効率を向上させることが可能となる。
【0048】
また、本発明では、光学素子2を複数段に亘り重ねて配置し、光を光学素子2に照射することにより、これを光学素子2の上段から下段へ順次透過させる。これにより何れの段に配置されている光学素子2に対しても光源14からの光が照射されることになることから、多数の光学素子2を同時にエッチングすることが可能となり、ひいてはエッチング工程における歩留まりの向上並びに光学素子2の作製時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0049】
しかも光学素子表面に対してP偏光の光をブリュースター角度で照射することにより、入射された光が光学素子2の表面において反射してしまうのを防止することが可能となり、下段の光学素子2においても、かかる光損失の影響を受けることなく、エッチングにおける光効率を高く維持することが可能となる。
【0050】
因みに、上述した実施の形態においては、原料ガスとして塩素系ガスを使用する場合を例にとり説明をしたが、塩素系ガス以外を使用する場合も同様の技術思想が適用される。即ち、使用する原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上のみの光を照射することにより、上述したような近接場光を利用した非断熱光化学反応に基づいてガス分子を解離させることが可能となる。 なお本発明において、光源14から出射する光の波長帯域としては10μm以下とするのが好ましい。この光の波長が10μm超であると、ガス分子の振動準位への直接的な励起が生じにくく、近接場光によるエッチングレートが低減するためである。
【0051】
また、本発明において、チャンバ11内に導入される塩素系ガスのガス分子の分圧は、少なくとも1×10−5Pa以上とするのが望ましい。チャンバ11内の塩素系ガスのガス分子の分圧が1×10−5Pa未満であると、光学素子2表面の凸部51近傍の空間内に、エッチング反応を起こすために必要となる塩素系ガスのガス分子が行き届かず、これによって、凸部51に近接場光が発生したとしてもエッチング反応が進行しにくくなるためである。なお、チャンバ11内に導入される塩素系ガスのガス分子の分圧は、あまりに低すぎるとエッチングレートが低くなり、プロセスが完了するまでに多大な時間を要することになるので、100Pa以上とするのが一層望ましい。これによって、光学素子2表面に形成された角部近傍の空間に、エッチング反応を起こすために必要となる塩素系ガスのガス分子を十分行き渡らせることが可能となり、平滑化処理プロセスを短時間で完了させることが可能となる。
【0052】
また、本発明においては、光学素子2を多段に亘り重ねて配置する場合における光の減衰を考慮して、光学素子2に対して照射される光のエネルギー密度を適宜上昇させるようにしてもよい。
【0053】
さらに本発明では、あくまで、各光学素子2表面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて原料ガスを解離させてエッチングする場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。例えば、各光学素子2裏面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて原料ガスを解離させてエッチングするようにしてもよい。そのメカニズムは、上述と同様である。即ち、光学素子2の裏面においても原料ガスが回り込むことから、光学素子2の表面と同様の現象、効果が生じることになる。このため、本発明では、光学素子2の表面に加え裏面も同時にエッチングすることができる点において有用である。
【0054】
また本発明は、原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を照射する場合に限定されるものではない。ガス分子の吸収端波長以上の帯域に加えて吸収端波長未満の帯域を含む光を照射するようにしてもよいことは勿論である。
【0055】
因みに本発明は、上述したプロセスからなる光学素子の表面平滑化方法の工程を有すること光学素子の作製方法として具体化されていてもよい。
【0056】
また、チャンバ11内に対して供給管23を介して供給される原料ガスは、塩素系ガスに限定されるものではなく、例えば、SiH4(モノシラン)、Si2H6(ジシラン)等のシラン系ガスや、Cr(η5-C5H5)2(クロモセン)、Cr(CO6)(ヘキサカルボニルクロム)等であってもよい。またこれ以外にも、例えば、SF6(六フッ化硫黄)、CHF3(トリフルオロメタン)、CF4(四フッ化炭素)、C3F8(オクタフルオロプロパン)等のフッ素系ガス等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法を実現するための表面平滑化処理システムを示す図である。
【図2】本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法を実現するための他の光学系の例を示す図である。
【図3】本発明を適用した表面平滑化処理システムによる処理対象としての光学素子の例を示す図である。
【図4】本発明を適用した光学素子の表面平滑化方法について説明するための図である。
【図5】チャンバ内に導入された塩素系ガスのガス分子の原子核間距離に対するポテンシャルエネルギーの関係図である。
【図6】共鳴光照射モードについて説明するための図である。
【図7】光学素子表面における光損失を低減させる方法について説明するための図である。
【図8】光学素子表面における光損失を低減させる方法について説明するための他の図である。
【符号の説明】
【0058】
1 表面平滑化処理システム
2 光学素子
11 チャンバ
13 ステージ
15 窓
16 ポンプ
17 圧力センサ
18 バタフライバルブ
19 段
23 供給管
41 凹部
42 凸部
43 先鋭化部分
71 反射ミラー
72 凹レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を原料ガス雰囲気中に複数段に亘り互いに間隙を設けて配置し、
上記原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を上記光学素子に照射することにより、これを上記光学素子の上段から下段へ順次透過させ、
各光学素子表面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすること
を特徴とする光学素子の表面平滑化方法。
【請求項2】
さらに上記各光学素子裏面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすること
を特徴とする請求項1記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項3】
上記光学素子表面に対してP偏光の光をブリュースター角で入射させること
を特徴とする請求項1又は2記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項4】
塩素系ガスからなる原料ガス雰囲気中に光学素子を配置し、
上記塩素系ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の、又はこれに加えて吸収端波長未満の帯域を含む光を照射すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項5】
光の回折限界以下のピッチで上記凹凸が形成された光学素子を上記原料ガス雰囲気中に配置すること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうち何れか1項に記載の光学素子の表面平滑化方法の工程を有すること
を特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項1】
光学素子を原料ガス雰囲気中に複数段に亘り互いに間隙を設けて配置し、
上記原料ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の光を上記光学素子に照射することにより、これを上記光学素子の上段から下段へ順次透過させ、
各光学素子表面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすること
を特徴とする光学素子の表面平滑化方法。
【請求項2】
さらに上記各光学素子裏面に形成された凹凸における少なくとも角部において発生させた近接場光に基づいて上記原料ガスを解離させてエッチングすること
を特徴とする請求項1記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項3】
上記光学素子表面に対してP偏光の光をブリュースター角で入射させること
を特徴とする請求項1又は2記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項4】
塩素系ガスからなる原料ガス雰囲気中に光学素子を配置し、
上記塩素系ガスを構成するガス分子の吸収端波長以上の、又はこれに加えて吸収端波長未満の帯域を含む光を照射すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項5】
光の回折限界以下のピッチで上記凹凸が形成された光学素子を上記原料ガス雰囲気中に配置すること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の光学素子の表面平滑化方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうち何れか1項に記載の光学素子の表面平滑化方法の工程を有すること
を特徴とする光学素子の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−282232(P2009−282232A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133279(P2008−133279)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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