説明

光学素子の製造方法および光学素子の製造システム

【課題】光学素子を精度よく成形することが可能な光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】光学素子の種類に応じて複数設定された照射光の照度分布を記憶装置に記憶
させておき、記憶装置に記憶された複数の照射光の照度分布の中から、成形に用いる照射
光の照度分布を選択し(ステップS101)、選択した照射光の照度分布が得られるよう
に照射装置の設定を行い(ステップS102)、設定を行った照射装置が照射する照射光
の実際の照度分布を測定し(ステップS103)、選択した照射光の照度分布と、測定し
た照射光の実際の照度分布とを比較し(ステップS104〜S105)、比較した結果に
基づいて、照射装置が照射する照射光の実際の照度分布が選択した照射光の照度分布とな
るように補正を行う(ステップS106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法および製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子の製造には、紫外線硬化型樹脂を使用した成形加工がよく用いられる(例えば
、特許文献1を参照)。例えば、密着複層型の回折光学素子である位相フレネルレンズの
成形加工を行う場合、円盤状のガラス基板と該ガラス基板に近接させた成形型との間隙に
第1の樹脂材を充填し、紫外線を含む照射光を第1の樹脂材に照射して硬化させることに
より、回折格子を有する1層目の樹脂層を成形する。さらに、1層目の樹脂層と該1層目
の樹脂層に近接させた成形型との間隙に第1の樹脂材と屈折率の異なる第2の樹脂材を充
填し、紫外線を含む照射光を第2の樹脂材に照射して硬化させることにより、2層目の樹
脂層を成形する。これにより、密着複層型の回折光学素子を成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4419665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紫外線硬化型樹脂に照射される照射光の照度分布にムラが生じると、成
形後の光学素子に照度ムラに応じた微小な変形が生じ、形状誤差の一因となっていた。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、光学素子を精度よく成形する
ことが可能な光学素子の製造方法および製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明に係る光学素子の製造方法は、成形型を当接させた
紫外線硬化型樹脂に対し紫外線を含む照射光を照射装置により照射して、前記紫外線硬化
型樹脂を硬化させることで光学素子の成形を行う光学素子の製造方法であって、前記光学
素子の種類に応じて複数設定された前記光学素子に対する照射光の照度分布を記憶装置に
記憶させ、前記記憶装置に記憶された前記複数の照射光の照度分布の中から、前記成形に
用いる照射光の照度分布を選択し、前記選択した前記照射光の照度分布が得られるように
前記照射装置の設定を行い、前記設定を行った前記照射装置が照射する照射光の実際の照
度分布を測定し、前記選択した前記照射光の照度分布と、前記測定した前記照射光の実際
の照度分布とを比較し、前記比較した結果に基づいて、前記照射装置が照射する前記照射
光の実際の照度分布が前記選択した前記照射光の照度分布となるように補正を行う。
【0007】
また、本発明に係る光学素子の製造システムは、成形型を当接させた紫外線硬化型樹脂
に対し紫外線を含む照射光を照射装置により照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ
ることで光学素子の成形を行う光学素子の製造システムであって、前記光学素子の種類に
応じて複数設定された前記光学素子に対する照射光の照度分布を記憶する記憶装置と、前
記記憶装置に記憶された前記複数の照射光の照度分布の中から、前記成形に用いる照射光
の照度分布を選択する操作が行われる操作部と、前記操作部の操作により選択された前記
照射光の照度分布が得られるように前記照射装置の設定を行う設定部と、前記設定部によ
り設定された前記照射装置が照射する照射光の実際の照度分布を測定する測定部と、前記
操作部の操作により選択された前記照射光の照度分布と、前記測定部により測定された前
記照射光の実際の照度分布とを比較する比較部と、前記比較部が比較した結果に基づいて
、前記照射装置が照射する前記照射光の実際の照度分布が前記操作部の操作により選択さ
れた前記照射光の照度分布となるように補正を行う補正部とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学素子を精度よく成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】位相フレネルレンズの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】位相フレネルレンズの側断面図である。
【図3】光学素子の製造システムを示す第1の概要構成図である。
【図4】光学素子の製造システムを示す第2の概要構成図である。
【図5】測定装置の平面図である。
【図6】照度分布の一例を(a)および(b)に示すグラフである。
【図7】位相フレネルレンズの成形工程について(a)〜(e)へ順に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態の製造
方法により製造される光学素子の一例として、密着複層型の回折光学素子である位相フレ
ネルレンズ(以下、PFレンズ1と称する)が図2に示されている。本実施形態のPFレ
ンズ1は、ガラス基板2と、ガラス基板2の上に成形された1層目の樹脂層4と、1層目
の樹脂層4の上に重ねて成形された2層目の樹脂層6とを有して構成される。ガラス基板
2は、透明のガラス材料を用いて円盤状に成形され、ガラス基板2の一方の面(1層目の
樹脂層4と接合する方の面)には、シランカップリング剤からなるプライマー層3が形成
されている。なお、ガラス基板2の一方の面は凹面(球面もしくは非球面)となっており
、ガラス基板2の他方の面は凸面(球面もしくは非球面)となっている。
【0011】
ガラス基板2の方から数えて1層目の樹脂層4は、透明の樹脂材料(紫外線硬化型樹脂
)を用いて円盤状に成形され、1層目の樹脂層4の一方の面(2層目の樹脂層6と接合す
る方の面)には、複数の輪帯が同心円状に並ぶ回折格子5が形成されている。なお、1層
目の樹脂層4の径は、ガラス基板2の径と同等である。また、各図において、説明容易化
のため、回折格子5の輪帯の数を少なく記載しているが、実際の輪帯数は使用可能な程度
に十分多いものとする。また、各図において、説明容易化のため、断面図のハッチングを
省略している。
【0012】
ガラス基板2の方から数えて2層目の樹脂層6は、1層目の樹脂層4と屈折率が異なる
透明の樹脂材料(紫外線硬化型樹脂)を用いて円盤状に成形される。なお、2層目の樹脂
層6の径は、1層目の樹脂層4の径と同等である。また、2層目の樹脂層6の一方の面(
1層目の樹脂層4と接合する方とは反対の面)は凹面(球面もしくは非球面)となってい
る。
【0013】
以上のように構成されるPFレンズ1の製造を行う製造システムについて、図3を参照
しながら説明する。本実施形態に係る光学素子の製造システム10は、成形型等が載置さ
れるステージ部11と、ステージ部11の上方から紫外線を含む照射光UVを照射する照
射装置15と、照射装置15から照射される照射光UVの照度分布を設定・変更する変更
ユニット20と、照射装置15や変更ユニット20等の作動を制御する制御部25とを備
えて構成される。また、本実施形態に係る光学素子の製造システム10は、所定のデータ
が記憶された記憶部26と、所定の操作が行われる操作部27と、照射光UVの照度分布
を測定する測定装置30(図4を参照)とを備えている。
【0014】
照射装置15は、紫外線ランプ(UVランプ)等からなる光源16と、光源16に接続
されたファイバ17と、ファイバ17の先端部に取り付けられたロッドレンズ18と、ロ
ッドレンズ18の所定の近傍に配置されたテレセントリックレンズ19とを有して構成さ
れる。ファイバ17は、光源16から射出された紫外光をステージ部11の上方に導く。
【0015】
ロッドレンズ18は、ステージ部11の上方に配置固定され、ファイバ17によって導
かれた光源16からの紫外光を下方に向けて射出させる。テレセントリックレンズ19は
、照射装置15の先端部に設けられ、ロッドレンズ18と同様に、ステージ部11の上方
に位置して当該ステージ部11と対向するように配置固定される。ロッドレンズ18から
射出された発散光(紫外光)は、テレセントリックレンズ19により略平行な光となり、
照射装置15から下方に向けて射出される。なお、照射装置15から射出された略平行な
光の照度分布は、変更ユニット20を介さない状態で、例えば図6(a)に示すように、
均一となるように調整される。
【0016】
変更ユニット20は、照射装置15とステージ部11との間に配置固定され、照射光U
Vの照度分布を設定するための第1フィルタ群21と、照射光UVの照度分布を補正する
ための第2フィルタ群22とを有して構成される。第1フィルタ群21は、照射光UVの
照度分布を変えることが可能な複数種の照度変更用光学素子から構成されており、変更ユ
ニット20は、これら複数種の照度変更用光学素子のうち少なくともいずれかを選択して
照射装置15とステージ部11との間の光路上に挿入および抜去可能に構成される。第1
フィルタ群21に用いられる照度変更用光学素子として、例えば、減光フィルタ(NDフ
ィルタ)や、レンズ型光学素子等が用いられる。
【0017】
ところで、記憶部26には、照射対象となる光学素子の種類に応じて複数設定された該
光学素子に対する照射光UVの照度分布に関するデータベースが記憶されている。このデ
ータベースには、照射対象となる光学素子の種類(光学素子の材質や形状)と、これに対
応する照射光UVの照度分布とが関連付けられて記録されている。
【0018】
例えば、図6(a)に示すように、照射対象となる光学素子が平行平面板L1の場合、
照射光UVの照度分布は均一になる。この場合、第1フィルタ群21の中から、照射光U
Vの照度分布が均一になるような照度変更用光学素子(例えば、所望の照度が得られるよ
うに、照射装置15からの略平行な光を均一に減光させる減光フィルタ)が選択される。
また例えば、図6(b)に示すように、照射対象となる光学素子が凸形状のレンズL2の
場合、照射光UVの照度分布は凸形状を反転させたような凹形状の分布になる。この場合
、第1フィルタ群21の中から、照射光UVの照度分布が凹形状の分布になるような照度
変更用光学素子(例えば、照射装置15からの略平行な光を光軸に近づくほど多く減光さ
せる光学素子)が選択される。
【0019】
なお、本実施形態における照射光UVの照度分布は、2次元の照度分布(照度マップ)
であり、図5に示すように、照射装置15の光軸(照射光UVの光線軸)と垂直な面、す
なわち、ステージ部11と平行な面をXY平面とし、照射装置15の光軸を原点とする。
またこのとき、光学素子の光軸が照射装置15の光軸と一致するように、ステージ部11
の上で位置調整されるものとする。
【0020】
第2フィルタ群22は、照射光UVの照度分布を補正可能な複数種の照度変更用光学素
子から構成されており、変更ユニット20は、これら複数種の照度変更用光学素子のうち
少なくともいずれかを選択して照射装置15とステージ部11との間の光路上に挿入およ
び抜去可能に構成される。第2フィルタ群22に用いられる照度変更用光学素子として、
例えば、照射光UVの照度分布を部分的に減光させることが可能な減光フィルタ(NDフ
ィルタ)等が用いられる。
【0021】
制御部25は、照射装置15、変更ユニット20、測定装置30等の作動を制御する。
また、制御部25には、前述の記憶部26や操作部27等が電気的に接続される。操作部
27は、所定の入力操作や選択操作が可能なキーボードやモニター等から構成され、記憶
部26に記憶されたデータベースの中から照射対象(成形対象)となる光学素子の種類お
よび照射光UVの照度分布を選択する操作や、成形加工を行うための操作等、製造システ
ム10を作動させるための各種操作が行われるようになっている。
【0022】
測定装置30は、図4および図5に示すように、照射光UVの照度を測定する紫外線照
度計31と、紫外線照度計31をXY方向(2次元方向)に移動可能に支持するXYステ
ージ32とを有して構成され、図示しない搬送装置を用いて、所定の待機位置からステー
ジ部11の上に搬送される。なお、測定装置30を手動でステージ部11の上に搬送して
もよい。紫外線照度計31は、XYステージ32を利用して、照射光UVの照射範囲にお
ける複数の測定位置で、照射光UVの照度を測定し、照度の測定信号を制御部25に出力
する。なおこのとき、紫外線照度計31およびXYステージ32の作動が制御部25に制
御され、制御部25は、XYステージ32の制御信号(例えば、XYステージ32を駆動
するパルスモータのパルス信号等)から、紫外線照度計31の測定位置に関するデータを
取得することができる。またこのとき、エンコーダ(図示せず)等を用いて紫外線照度計
31の測定位置を測定し、測定位置に関するデータを制御部25へ出力するようにしても
よい。
【0023】
このような製造システム10を用いたPFレンズ1の製造方法について、図1に示すフ
ローチャートを参照しながら説明する。なお予め、上述した照射光UVの照度分布に関す
るデータベースを作成し、記憶部26に記憶させておく。まず、制御部25は、操作部2
7の操作に応じて、記憶部26に記憶されたデータベースの中から、PFレンズ1の成形
に用いる照射光の照度分布を選択し(ステップS101)、変更ユニット20に照度分布
の設定を行わせる制御信号を出力する。そうすると、変更ユニット20は、第1フィルタ
群21の中から、照射光UVの照度分布が操作部27の操作により選択された照射光の照
度分布になるような照度変更用光学素子を選択して、照射装置15とステージ部11との
間の光路上に挿入する。なお、PFレンズ1を成形する際、光路上に挿入する照度変更用
光学素子として、レンズ拡散板(LSD:Light Shaping Diffusers)を用いると、PF
レンズ1を精度よく成形するのに効果的である。また、PFレンズ1に対する照度分布の
設定が初めての場合、変更ユニット20は、図4に示すように、照射装置15とステージ
部11との間の光路上から第2フィルタ群22の照度変更用光学素子を抜去する。
【0024】
次に、制御部25は、照射装置15に変更ユニット20を介して照射光UVを照射させ
る制御信号を出力し、測定装置30に照射光UVの実際の照度分布を測定させる制御信号
を出力する(ステップS102)。このとき、照射装置15において、光源16から射出
された紫外光は、ファイバ17に導かれてロッドレンズ18から射出され、ロッドレンズ
18から射出された発散光(紫外光)は、テレセントリックレンズ19により略平行な光
となり、照射装置15から下方に向けて射出される。照射装置15から射出された略平行
な光は、図4に示すように、変更ユニット20の第1フィルタ群21(および第2フィル
タ群22)を透過し、照射光UVとしてステージ部11の上に載置された測定装置30に
照射される。
【0025】
一方、測定装置30は、図示しない搬送装置を用いて、所定の待機位置からステージ部
11の上に搬送される。照射装置15および変更ユニット20により照射光UVが測定装
置30に照射された状態で、紫外線照度計31は、XYステージ32を利用して、照射光
UVの照射範囲における複数の測定位置で、照射光UVの照度を測定し、照度の測定信号
を制御部25に出力する。なおこのとき、制御部25は、XYステージ32の制御信号(
例えば、XYステージ32を駆動するパルスモータのパルス信号等)から、紫外線照度計
31の測定位置に関するデータを取得することができる。またこのとき、エンコーダ(図
示せず)等を用いて紫外線照度計31の測定位置を測定し、測定位置に関するデータを制
御部25へ出力するようにしてもよい。なお予め、紫外線照度計31が照射装置15の光
軸(照射光UVの光線軸)と重なる位置を基準位置(原点位置)として検出できるように
調整しておく。
【0026】
次に、制御部25は、紫外線照度計31から入力された照度の測定信号に基づいて、照
射光UVの実際の照度分布(照度マップ)を作成する(ステップS103)。次に、制御
部25は、作成した照射光UVの実際の照度分布と、操作部27の操作により選択された
データベースに記録されている照射光の照度分布とを比較する(ステップS104)。こ
のとき、2つの照度分布の相対的な差(例えば、2次元の照度分布において形成される面
の曲率(パワー)の差)を求める。
【0027】
次に、制御部25は、ステップS104で求めた2つの照度分布の相対的な差(例えば
、2つの照度分布の面形状(曲率)の差)に基づいて、2つの照度分布の面形状が合致し
ているか否かを判定する(ステップS105)。判定がNOの場合、ステップS106に
進み、制御部25は、変更ユニット20に照度分布の補正を行わせる制御信号を出力する
。そうすると、変更ユニット20は、第2フィルタ群22の中から、照射光UVの実際の
照度分布が操作部27の操作により選択された照射光の照度分布になるような照度変更用
光学素子を選択して、照射装置15とステージ部11との間の光路上に挿入する。なお、
照射光UVの実際の照度分布が操作部27の操作により選択された照射光の照度分布より
小さい場合、照射装置15から射出される光の照度を高くするように照射装置15の作動
を制御してもよく、第1フィルタ群21の照度変更用光学素子を変更するように変更ユニ
ット20の作動を制御してもよい。照度分布の補正(ステップS106)が終了すると、
ステップS102へ戻り、ステップS102からステップS105までの処理を繰り返す

【0028】
一方、判定がYESの場合、図示しない搬送装置を用いて、ステージ部11の上の測定
装置30を所定の待機位置に搬送し、図3に示すようにPFレンズ1の成形を行う(ステ
ップS107)。ここで、PFレンズ1の成形工程について説明する。まず、図7(a)
に示すように、ガラス基板2の一方の面にシランカップリング剤/エチルアルコール/水
(酢酸でやや酸性にした水)の混合液をスピンコートにより全面的に塗布し、ベーキング
してプライマー層3を形成する。
【0029】
次に、所定の格子形状を有する第1の成形型(金型)35を上方に向けてステージ部1
1の上に載置するとともに、プライマー層3を形成したガラス基板2の一方の面を下方に
向けて第1の成形型35に近接させ、その間隙に1層目の樹脂層4を成形するための未硬
化の樹脂材4aを充填する。この状態で、図3および図7(b)に示すように、照射装置
15および変更ユニット20により、ガラス基板2の他方の面(すなわち、ガラス基板2
の上方)から未硬化の樹脂材4aに向けて照射光UVを所定の補正を行った照度分布で照
射し、第1の成形型35(およびガラス基板2)が当接した未硬化の樹脂材4aを硬化さ
せた後、図7(c)に示すように離型する。
【0030】
これにより、第1の成形型35の格子形状が樹脂材4aに転写されて回折格子5を有す
る1層目の樹脂層4が成形されるとともに、当該1層目の樹脂層4がプライマー層3を介
してガラス基板2の一方の面に接合される。なお、1層目の樹脂層4に用いられる樹脂材
料(樹脂材4a)は紫外線硬化樹脂である。
【0031】
次に、第1の成形型35に替えて第2の成形型(金型)36を上方に向けてステージ部
11の上に載置するとともに、1層目の樹脂層4の一方の面を下方に向けて第2の成形型
36に近接させ、その間隙に2層目の樹脂層6を成形するための未硬化の樹脂材6aを充
填する。この状態で、図7(d)に示すように、照射装置15および変更ユニット20に
より、ガラス基板2の他方の面(すなわち、ガラス基板2の上方)から未硬化の樹脂材6
aに向けて照射光UVを所定の補正を行った照度分布で照射し、第2の成形型36(およ
び1層目の樹脂層4)が当接した未硬化の樹脂材6aを硬化させた後、図7(e)に示す
ように離型する。なお、第2の成形型36の表面(転写面)は凸面(球面もしくは非球面
)となるように形成される。また、第2の成形型36の表面(転写面)は、平面であって
もよく、2層目の樹脂層6の形状に応じて決定される。
【0032】
これにより、図7(e)に示すように、他方の面で回折格子5に密着するように2層目
の樹脂層6が成形されるとともに、当該2層目の樹脂層6が1層目の樹脂層4の一方の面
に接合される。なお、2層目の樹脂層6に用いられる樹脂材料(樹脂材6a)は紫外線硬
化樹脂である。このようにして、ガラス基板2の上に2つの樹脂層4,6が成形されたP
Fレンズ1が製造される。
【0033】
この結果、本実施形態によれば、PFレンズ1の成形を行う前に、照射光UVの実際の
照度分布が操作部27の操作により選択された照射光の照度分布となるように補正を行う
ことで、照射光UVの照度分布にムラが生じなくなるので、成形後のPFレンズ1に照度
ムラによる微小な変形が生じることなく、PFレンズ1を精度よく成形することができる

【0034】
なお、上述の実施形態において、PFレンズ1の成形に用いる照射光の照度分布を選択
した後に、ステップS102からステップS106までの処理を行って、照度分布の補正
を行っているが、これに限られるものではなく、光源16のランプを交換した後や、成形
型35,36を新しい物に交換した後に、照度分布の補正を行うようにしてもよい。また
、一定期間(例えば、1か月間)経過するごとに、照度分布の補正を行うようにしてもよ
い。
【0035】
また、上述の実施形態において、照射装置15および変更ユニット20により、照射光
UVを上方から照射しているが、これに限られるものではなく、成形型35,36等の上
下の向きを逆にすれば、照射光UVを下方から照射するようにしてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態において、ガラス基板2、1層目の樹脂層4、および2層目の樹
脂層6の各面がそれぞれ曲面状に形成されているが、これに限られるものではなく、平面
であってもよい。
【0037】
また、上述の実施形態において、基材としてガラス基板を用いているが、これに限られ
るものではなく、例えば、プラスチック製の基板であってもよく、透明な材料であればよ
い。
【0038】
また、上述の実施形態において、ガラス基板2の上に2つの樹脂層4,6を成形してい
るが、これに限られるものではなく、1層や3層以上であってもよい。
【0039】
また、上述の実施形態において、回折光学素子の一種であるPFレンズを例に説明した
が、これに限られるものではなく、例えば、一般的なフレネルレンズや、非球面レンズ、
球面レンズ等、紫外線硬化型樹脂を用いて光学素子を成形する場合に、本発明を適用する
ことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 PFレンズ 2 ガラス基板
4 1層目の樹脂層 5 回折格子
6 2層目の樹脂層
10 光学素子の製造システム
15 照射装置 20 変更ユニット(設定部、補正部)
25 制御部(比較部) 26 記憶部
27 操作部 30 測定装置
35 第1の成形型 36 第2の成形型
UV 照射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型を当接させた紫外線硬化型樹脂に対し紫外線を含む照射光を照射装置により照射
して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることで光学素子の成形を行う光学素子の製造方
法であって、
前記光学素子の種類に応じて複数設定された前記光学素子に対する照射光の照度分布を
記憶装置に記憶させ、
前記記憶装置に記憶された前記複数の照射光の照度分布の中から、前記成形に用いる照
射光の照度分布を選択し、
前記選択した前記照射光の照度分布が得られるように前記照射装置の設定を行い、
前記設定を行った前記照射装置が照射する照射光の実際の照度分布を測定し、
前記選択した前記照射光の照度分布と、前記測定した前記照射光の実際の照度分布とを
比較し、
前記比較した結果に基づいて、前記照射装置が照射する前記照射光の実際の照度分布が
前記選択した前記照射光の照度分布となるように補正を行うことを特徴とする光学素子の
製造方法。
【請求項2】
成形型を当接させた紫外線硬化型樹脂に対し紫外線を含む照射光を照射装置により照射
して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることで光学素子の成形を行う光学素子の製造シ
ステムであって、
前記光学素子の種類に応じて複数設定された前記光学素子に対する照射光の照度分布を
記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記複数の照射光の照度分布の中から、前記成形に用いる照
射光の照度分布を選択する操作が行われる操作部と、
前記操作部の操作により選択された前記照射光の照度分布が得られるように前記照射装
置の設定を行う設定部と、
前記設定部により設定された前記照射装置が照射する照射光の実際の照度分布を測定す
る測定部と、
前記操作部の操作により選択された前記照射光の照度分布と、前記測定部により測定さ
れた前記照射光の実際の照度分布とを比較する比較部と、
前記比較部が比較した結果に基づいて、前記照射装置が照射する前記照射光の実際の照
度分布が前記操作部の操作により選択された前記照射光の照度分布となるように補正を行
う補正部とを備えて構成されることを特徴とする光学素子の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−252287(P2012−252287A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126885(P2011−126885)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】