説明

光学素子の連結構造

【課題】光学素子モジュールを確実にコネクタハウジング内に位置決め固定することが可能な光学素子の連結構造を提供する。
【解決手段】第1環状端21、第2環状端22、及び複数の波型バネ部23から成るバネ部材14を筒状スリーブ16に装着し、更に、バネ部材14,15が装着された筒状スリーブ16を、PCBコネクタ12に形成された開口部26に挿入して固定する。この際、バネ部材14に設けられている調芯バネ35により、開口部26の内周面26aを外側に付勢するので、開口部26と筒状スリーブ16,17の中心位置を高精度に合わせることができる。また、バネ部材14を用いて筒状スリーブ16と開口部26との着脱が行われるので、複数回の着脱操作を行った際の劣化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に接続される筒状スリーブをPCBコネクタに設けられる開口部内に挿入して固定する際の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両においては、搭載される電装機器の数が増加する傾向にあり、これに伴って電装機器間で送受信する制御信号が増大している。そこで、信号の伝送に用いるワイヤハーネスの一部を光ファイバーケーブルに置き換え、例えばノード間を光ファイバーケーブルで接続することによりワイヤハーネスシステムの本数を削減することが提案されている。
【0003】
このような光ファイバーケーブルを用いるシステムでは、光学素子を着脱するためのコネクタが用いられる(例えば、特許文献1参照)。図11は、PCBコネクタ112内に光学素子モジュール101を連結する連結構造を示す斜視図、図12(a)は、PCBコネクタ112内に設けられる開口部102,103を示す説明図、図12(b)は開口部102内に光学素子モジュール101が装着された状態を示す側面断面図である。
【0004】
図11に示すように、光学素子モジュール101は、2つの光学素子筐体118,119と、各光学素子筐体118,119にそれぞれ接続された筒状スリーブ116,117を備えており、各筒状スリーブ116,117を、それぞれPCBコネクタ112内に設けられる開口部102,103(図12参照)に装着して位置決め固定し、更に、図11に示すシェル113を接続することにより、全体が固定される。
【0005】
また、図13(a)は、開口部102内に筒状スリーブ116が挿入された様子を示す正面図であり、図示のように、開口部102の内周面にはキー溝122、及び3個のボス121が形成され、また、筒状スリーブ116の周囲には、キー123、及び嵌合孔124が形成されており、3個のボス121と3個の嵌合孔124がそれぞれ係合し、且つキー123とキー溝122が係合することにより、筒状スリーブ116が開口部102の内周面に位置決め固定されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−152196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来における光学素子の連結構造では、光学素子モジュール101と開口部102,103と間の着脱を繰り返すと、ボス121が摩擦によりすり減ってしまうことがある。即ち、図13(b)に示すように、ボス121と嵌合孔124との間の摩擦力により、ボス121が削れてしまい、光学素子モジュール101の保持力が低下するという問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光学素子モジュールを確実にコネクタハウジング内に位置決め固定することが可能な光学素子の連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、光学素子筐体(18,19)に接続される筒状スリーブ(16,17)を、コネクタハウジング(PCBコネクタ12)内に設けられる円周リブ(開口部26)に挿入して固定する光学素子の連結構造において、前記光学素子筐体から前記筒状スリーブが突起する付け根部分には、周面に少なくとも一つの係合孔(28)が設けられた収容溝(27)が形成され、更に、第1環状端(21)、第2環状端(22)、及び前記第1環状端と第2環状端とを連結する複数の波型バネ部(23)、から成り、前記筒状スリーブの周囲部に配設されるバネ部材(14,15)を備え、前記波型バネ部は、前記円周リブの内側面に当接して該円周リブの径方向に付勢し、前記筒状スリーブを前記コネクタハウジングに位置決め固定する調芯バネ(35)を備え、前記第1環状端の外周面には少なくとも一つのボス(24)が形成され、該第1環状端が前記収容溝内に挿入され、前記ボスと前記係合孔が係合して前記バネ部材が前記筒状スリーブに固定されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記収容溝内の少なくとも一部には、前記筒状スリーブの略径方向に欠切された固定溝(29)が形成され、且つ、前記第1環状端の外周面適所には固定用突起(25)が形成され、前記収容溝内に前記第1環状端を挿入した際に、前記固定用突起が前記固定溝に係合することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記波型バネ部は、前記円周リブに当接し、該円周リブの軸方向に付勢して前記筒状スリーブを前記コネクタハウジングに固定する係止用バネ(34)を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光学素子の連結構造では、光学素子モジュールに設けられる筒状スリーブにバネ部材を装着し、更に、このバネ部材をコネクタハウジングの円周リブに挿入して、光学素子モジュールをコネクタハウジングに連結する。この際、複数の波型バネ部に設けられた各調芯バネの付勢力により、円周リブの内周面を外側に付勢するので、筒状スリーブと円周リブの中心を精度良く合わせることができる。また、筒状スリーブが円周リブに係合した状態において、係止用バネが円周リブを軸方向に付勢するので、筒状スリーブと円周リブとの係合状態を堅固に保持することが可能となる。
【0013】
更に、筒状スリーブと円周リブとの間にバネ部材を介在させて連結する構成としており、バネ部材が変形することにより、光学素子モジュールの着脱操作が行われるので、複数回の着脱操作による劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造に用いられるバネ部材を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造により、光学素子モジュールと開口部が連結された状態を示す上面断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造により、光学素子モジュールと開口部が連結された状態を示す側面断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造により、光学素子モジュールと開口部が連結された状態を示す部分的な側面断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造により、光学素子モジュールと開口部が連結された状態を示す部分的な側面断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造により、筒状スリーブにバネ部材が装着される様子を示す部分的な側面断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造により、筒状スリーブにバネ部材が装着される様子を示す部分的な側面断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造に用いられる開口部の構成を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造に用いられる開口部内に、筒状スリーブが挿入された場合の正面図である。
【図11】従来における光学素子の連結構造を示す斜視図である。
【図12】従来における光学素子の連結構造に用いられるPCBコネクタ、及びPCBコネクタに筒状スリーブが挿入された状態を示す説明図である。
【図13】従来における光学素子の連結構造に用いられる開口部内に筒状スリーブが装着された場合の様子を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子の連結構造を示す斜視図であり、PCBコネクタ(コネクタハウジング)12に、光学素子モジュール11を連結する様子を示している。図示のように、光学素子モジュール11は2つの光学素子筐体18,19と、各光学素子筐体18,19にそれぞれ接続された筒状スリーブ16,17を備えている。
【0016】
そして、各筒状スリーブ16,17に、バネ部材14,15を装着し、更にバネ部材14,15が装着された筒状スリーブ16,17を、それぞれPCBコネクタ12内に設けられる開口部26(図9参照)に挿入することにより、PCBコネクタ12に対して光学素子モジュール11を位置決め固定する。更に、図1に示すシェル13を接続することにより、全体を覆設する。
【0017】
筒状スリーブ16,17は、光学素子筐体18,19の側面から突起して配置されており、その付け根部分には、図6に示すように、周方向に沿った細幅の収容溝27が形成されている。また、収容溝27の内側面の複数箇所(例えば、2箇所)には、後述するボス24と係合する係合孔28が形成されている(図7参照)。更に、収容溝27の適所には、図8に示すように、後述する固定用突起25と嵌合する固定溝29が筒状スリーブ16,17の径方向に沿って形成されている。
【0018】
図9は、PCBコネクタ12の内部に形成される開口部(円周リブ)26の構成を示す説明図である。図示のように、PCBコネクタ12の内部には、筒状スリーブ16,17の外周と略同一径の内周を有する開口部26が2個形成されている。
【0019】
図2は、バネ部材14の構成を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図を示している。図2に示すように、バネ部材14は、円筒形状を成す第1環状端21と、該第1環状端21に対して略平行に配置される第2環状端22と、等間隔で配置されて各環状端21,22間を連結する複数(図では10個)の波型バネ部23、から構成されている。
【0020】
第1環状端21の周囲部の適所には、バネ部材14を筒状スリーブ16に固定するための矩形状の固定用突起25が形成され、更に、第1環状端21の周囲部には、外側に向けて突起するボス24が2箇所に形成されている。
【0021】
波型バネ部23は、図5,図6に示されるように、振幅の小さい波型を有する調芯バネ35と、振幅の大きい波型を有する係止用バネ34を備えており、調芯バネ35側が第1環状端21に接続され、係止用バネ34側が第2環状端22側に接続されている。
【0022】
図7は、バネ部材14を筒状スリーブ16に装着する様子を示す断面図であり、バネ部材14を第1環状端21側から筒状スリーブ16内に挿入し、この第1環状端21を収容溝27内に挿入する。更に、図7,図10に示すように、ボス24を係合孔28に係合させることにより、第1環状端21と筒状スリーブ16が固定され、筒状スリーブ16に対して第1環状端21が回転することが阻止される。更に、図8に示すように、固定用突起25を固定溝29内に挿入することにより、バネ部材14は筒状スリーブ16に堅固に固定され、筒状スリーブ16に対して第1環状端21が抜け落ちることが阻止される。なお、筒状スリーブ17にバネ部材15を装着する場合についても同様である。
【0023】
次に、筒状スリーブ16に装着されたバネ部材14を用いて、筒状スリーブ16をPCBコネクタ12に設けられた開口部26(図9参照)に固定する際の作用について説明する。図3は、筒状スリーブ16,17が開口部26に固定されたときの上面断面図、図4は、側面断面図、図5は、固定用突起25が固定溝29内に係合した状態を詳細に示す説明図、図6は、第1環状端21が収容溝27内に挿入された状態を詳細に示す説明図である。
【0024】
図3〜図6に示すように、バネ部材14が装着された筒状スリーブ16を、PCBコネクタ12に形成された開口部26内に徐々に挿入すると、初めに係止用バネ34と開口部26の側壁が接触し、更に筒状スリーブ16を押し込むと係止用バネ34が撓んで開口部26の内周面26aを乗り越える。
【0025】
この状態で、光学素子筐体18の側面18aと開口部26の側面26cとが接触し(図5,図6参照)、筒状スリーブ16が最終位置に達する。即ち、筒状スリーブ16がこれ以上挿入されることが阻止される。このとき、波型バネ部23の調芯バネ35と、開口部26の内周面26aが接触し、調芯バネ35が撓んで、外周方向に向けて付勢される。この付勢力は、複数個(この例では10個)設けられた波型バネ部23全てに対して均等に作用するので、開口部26の内周面26aと、筒状スリーブ16の外周面との間の距離は、外周面全体で均等に保持されることになる。従って、筒状スリーブ16を開口部26のほぼ中心に位置決め固定することが可能となる。
【0026】
また、図5,図6に示すように、側面18aと開口部26が接触した状態において、バネ部材14の係止用バネ34と、開口部26の角部とが図示の当接点26bにて接触し、係止用バネ34の付勢力により、開口部26の側面が筒状スリーブ16の付け根側に向けて付勢される。即ち、筒状スリーブ16の軸方向に向けて開口部26を付け根側に押し付けるので、筒状スリーブ16と開口部26が堅固に接触して固定されることとなる。
【0027】
その結果、光学素子モジュール11をPCBコネクタ12に対して、高精度、且つ堅固に固定することが可能となる。なお、筒状スリーブ17についても筒状スリーブ16と同様に、開口部26内に固定することが可能である。
【0028】
このようにして、本実施形態に係る光学素子の連結構造では、光学素子モジュール11に設けられる筒状スリーブ16,17にバネ部材14,15を装着し、更に、このバネ部材14,15をPCBコネクタ12に形成された開口部26に挿入して、光学素子モジュール11をPCBコネクタ12に連結する。この際、複数の波型バネ部23に設けられた各調芯バネ35の付勢力により、開口部26の内周面26aを外側に略均一に付勢するので、筒状スリーブ16,17と開口部26の中心を精度良く合わせることができる。また、筒状スリーブ16,17が開口部26に係合した状態において、係止用バネ34が開口部26を軸方向に付勢するので、両者の係合状態を堅固に保持することが可能となる。
【0029】
更に、本実施形態では、筒状スリーブ16,17と開口部26との間にバネ部材14,15を介在させて連結する構成としており、バネ部材14,15が変形することにより、光学素子モジュール11の着脱操作が行われるので、複数回の着脱操作による劣化を防止することができ、保持力の低下を防止できる。
【0030】
以上、本発明の光学素子の連結構造を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、光学素子を連結する際の精度を高め、且つ複数回の着脱による劣化を防止することに利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
11 光学素子モジュール
12 PCBコネクタ
13 シェル
14,15 バネ部材
16,17 筒状スリーブ
18,19 光学素子筐体
21 第1環状端
22 第2環状端
23 波型バネ部
24 ボス
25 固定用突起
26 開口部(円周リブ)
26a 内周面
26b 当接点
26c 側面
27 収容溝
28 係合孔
29 固定溝
34 係止用バネ
35 調芯バネ
101 光学素子モジュール
102,103 開口部
113 シェル
116,117 筒状スリーブ
118,119 光学素子筐体
121 ボス
122 キー溝
123 キー
124 嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子筐体に接続される筒状スリーブを、コネクタハウジング内に設けられる円周リブに挿入して固定する光学素子の連結構造において、
前記光学素子筐体から前記筒状スリーブが突起する付け根部分には、周面に少なくとも一つの係合孔が設けられた収容溝が形成され、
更に、第1環状端、第2環状端、及び前記第1環状端と第2環状端とを連結する複数の波型バネ部、から成り、前記筒状スリーブの周囲部に配設されるバネ部材を備え、
前記波型バネ部は、前記円周リブの内側面に当接して該円周リブの径方向に付勢し、前記筒状スリーブを前記コネクタハウジングに位置決め固定する調芯バネを備え、
前記第1環状端の外周面には少なくとも一つのボスが形成され、該第1環状端が前記収容溝内に挿入され、前記ボスと前記係合孔が係合して前記バネ部材が前記筒状スリーブに固定されることを特徴とする光学素子の連結構造。
【請求項2】
前記収容溝内の少なくとも一部には、前記筒状スリーブの略径方向に欠切された固定溝が形成され、且つ、前記第1環状端の外周面適所には固定用突起が形成され、
前記収容溝内に前記第1環状端を挿入した際に、前記固定用突起が前記固定溝に係合することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の連結構造。
【請求項3】
前記波型バネ部は、前記円周リブに当接し、該円周リブの軸方向に付勢して前記筒状スリーブを前記コネクタハウジングに固定する係止用バネを備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の光学素子の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−230165(P2012−230165A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96980(P2011−96980)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】