説明

光学素子

【課題】紫外線による表面劣化を抑制しながら、レンズ性能と光線透過率の低下を抑制する。
【解決手段】光学素子の一態様にかかるレンズL2は、C−H結合を含む熱可塑性樹脂で構成されている。レンズL2は、非球面形状を有する光学面30であって式(1)の条件を満たす光学面30を備え、光学面30には、フッ素ガス雰囲気下で水素原子をフッ素原子に置換するフッ素化処理により、フッ素含有層55が形成されている。
h/R≧0.5 … (1)
式(1)中、「h」は光学面30の半径であり、「R」は光学面30の曲率半径である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子に関し、特に車載カメラや屋外設置型の監視カメラなどに使用される広角レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学特性や機械的強度等が優れているという観点で、光学素子(主にはレンズ)の構成材料としては一般にガラスが用いられている。
近年では、光学素子が使用される機器の小型化が進むにつれて光学素子の小型化も必要になり、ガラスでは非球面形状や複雑な形状のものを作製することが困難で、ガラスに代わる材料として樹脂が広く使用されてきており、さらには光学面形状や材料の改良、量産性などに伴い、光学素子の用途も多様化している。
【0003】
例えば、車載カメラや屋外設置型の監視カメラなど、太陽光(紫外線)に長期間曝されることの多い用途で使用される光学素子がある。
このような光学素子に求められる特性として、過酷な環境に耐えられる耐久性や利用・普及のための量産性(低コスト化)を有することは基本であり、安全性の観点からも、画像が認識可能なレベルの解像度を有することや信号や被写体などの色表示が損なわれないことなど、的確に判断できる画質も必要となっている。
【0004】
しかしながら、樹脂製の光学素子の場合、紫外線による樹脂のダメージが大きく、耐光性などの耐久性が大きな課題となる。
耐光劣化現象としては、光学面表面の荒れ、形状変化、樹脂内部の変色などが挙げられ、その劣化現象による光学特性への影響は、光学面の表面劣化(表面粗さや非球面性の低下など)によるレンズ性能の劣化や光線透過率の低下などに顕在化する。
【0005】
一方、光学素子の光学面では、空気との界面で反射光が発生し、光線透過率の低下や散乱光によるゴーストの発生などの問題の原因となる場合がある。このような課題に対しては、光学面に無機酸化物等からなる反射防止膜を形成することが一般的になされている。しかしながら、樹脂基材に反射防止膜を形成した光学面は、樹脂基材と反射防止膜との間の界面で劣化が発生しやすくなる為、更に耐光性を考慮する必要がある。
このような問題に対して、車載カメラや屋外設置型の監視カメラなどに使用される光学素子とは用途は異なるもの、反射防止膜の構成材料の種類を適宜選定し、波長λ=405〜415nmのブルーレーザの照射に耐えうるような光ピックアップ用の光学素子が開示されている(特許文献1参照)。特に、特許文献1では、フッ化アルミニウムなどのフッ化物からなる反射防止膜を用いることで、樹脂基材と反射防止膜との間の劣化を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−266780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように無機物からなる反射防止膜を形成する場合、その一般的な形成方法として真空蒸着法により膜を形成することが多い。
また、車載カメラや屋外設置型の監視カメラなど屋外の過酷な環境下で用いられる光学素子においては、より広範な画像を取得するためにいわゆる広角レンズが使用されるため通常のレンズに比較して曲率が大きくなること、このような用途においても高い解像度が求められる為、光学面に非球面が用いられる必要がある。このような場合に、従来の形成方法により無機層からなる反射防止膜を設けた場合、蒸着処理では蒸着源を加熱して蒸着装置内のホルダに保持された樹脂成形品に対し蒸着物質を付着させるという構成上、レンズの中央部分と周辺部分で膜厚が均一な膜を形成するのが難しく、膜の厚みが不均一になることに起因して光線透過率が低下したり、反射光によるゴースト等の問題が発生するという課題が依然として残る。また、樹脂基材と反射防止膜との界面における耐光劣化を十分に抑制することが困難である為、非球面に荒れや形状変化、変色などの問題が発生することで光学性能の劣化や、光線透過率の劣化の原因にもなることが明らかになった。
【0008】
したがって、本発明の主な目的は、樹脂製の光学素子であっても、高い光線透過率を維持しながら、紫外線による表面劣化によるレンズ性能の劣化や、反射防止膜の不均一に起因するような光線透過率の低下を抑制することができる光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
C−H結合を含む熱可塑性樹脂で構成された光学素子において、
非球面形状を有する光学面であって式(1)の条件を満たす光学面を備え、
前記光学面には、フッ素ガス雰囲気下で水素原子をフッ素原子に置換するフッ素化処理により、フッ素含有層が形成されていることを特徴とする光学素子が提供される。
h/R≧0.5 … (1)
式(1)中、「h」は前記光学面の半径であり、「R」は前記光学面の曲率半径である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、解像度の高い車載カメラや屋外設置型の監視カメラなどに使用可能な広角レンズに一般的に要求される曲率半径の小さい非球面からなる光学面を備えていても、その光学面にフッ素化処理によりフッ素含有層が形成することで、光学素子表面の屈折率を低下させることで反射防止効果を得ることができるとともに、光学素子をフッ素ガス雰囲気下で処理することで、均一な低屈折率層を形成することが可能となる為、反射防止膜が不均一となることによる光線透過率の低下やゴーストの発生を効果的に抑制することが可能となる。
また、光学面のC−H結合がC−F結合に置換(改質)されることで光学面表面の強度を増大することができ、屋外環境下で用いられた場合であっても、光学面が紫外線により表面劣化することで発生するレンズ性能の劣化や光線透過率の低下を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される車載カメラの概略構成や配置例を示す図面である。
【図2】図1の車載カメラに内蔵される撮像光学系の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
図1に示す通り、車載カメラ10(バックカメラ)は、自動車2の後方に取り付けられたナンバープレート4の近傍に設置されている。
車載カメラ10は円筒状の筐体12を有しており、筐体12の内部に撮像光学系(20,図2参照)が内蔵されている。
車載カメラ10を自動車2のバックカメラとして用いた場合、運転者が車体をバックさせると、車載カメラ10で撮像された画像がダッシュボードに設置されているモニタに表示される。
【0014】
撮像光学系20は本発明にかかる光学素子の一例であり、図2に示す通り、撮像対象側(物体側)から像面側(像側)にかけて順に、撮像対象側に凸面を向けたメニスカス形状の負のパワーを有する第1レンズL1、両凹形状であり両面が非球面である負のパワーを有する第2レンズL2、両凸形状の正のパワーを有する第3レンズL3、絞りS、像面側に強い凸面向けた両凸形状であり両面が非球面である正のパワーを有する第4レンズL4を有している。第4レンズL4の像側にはローパスフィルタF1、IRカットフィルタF2が設けられている。
【0015】
ここでいう「パワー」とは焦点距離の逆数で定義される量を表す。
【0016】
撮像対象側から順に、撮像対象側に凸面を向けたメニスカス形状の負パワーの第1レンズと、両凹形状であり少なくとも1面の非球面を有する第2レンズと、像面側に凸面を向けた正のパワーの第3レンズと、像面側に凸面を向けて少なくとも1面の非球面を有する正のパワーの第4レンズとを有する構成にすることにより、広い画角を達成することができ、広画角でありながら歪曲収差を良好に補正することができる。
【0017】
撮像光学系20では、負パワーの第2レンズL2と正パワーの第4レンズL4とがプラスチック(樹脂製)レンズで、負パワーの第1レンズL1と正パワーの第3レンズL3とがガラスレンズとなっている。
【0018】
負パワーの第2レンズL2と正パワーの第4レンズL4をプラスチックレンズとし、各々のレンズL2、L4に非球面を配置することにより、大幅にレンズ枚数を削減することになり、製造コストの削減をすることができ、撮像光学系20の全長を短くすることができる。
【0019】
撮像光学系20をプラスチックレンズで構成する場合に、温度変化による屈折率の変化とレンズ形状の変化が大きく、像面上で焦点位置がずれる。
しかし、本実施形態のように、負パワーの第1レンズL1と正パワーの第3レンズL3をガラスレンズとして、負パワーの第2レンズL2と正パワーの第4レンズL4をプラスチックレンズで構成すると、負パワーのレンズと正パワーのレンズにより、温度変化による焦点位置のズレを打ち消し、像面での焦点位置のズレを抑えることができ、高性能である撮像光学系20となる。
【0020】
撮像光学系20では、第2レンズL2の像側の光学面30が非球面形状を有しており、光学面30の曲率が第2レンズL2の物体側の光学面40や他のレンズL1,L3,L4の光学面に比較して大きくなっている。
【0021】
詳しくは、光学面30は式(1)の条件を満たしている。
h/R≧0.5 … (1)
式(1)中、「h」は光学面30の半径であり、「R」は光学面30の曲率半径である。
本発明における非球面の半径とは、当該非球面を構成する光学面として用いられる連続した曲面の最外周部における光軸と直交する断面の半径を意味しており、曲率半径とは、当該非球面に最も近似する球面における曲率半径を表す。光学面は凸面であっても凹面であってもよい。
【0022】
さらに、図2中拡大図に示す通り、第2レンズL2は主には成形部50で構成されており、その表面上にフッ素含有層55が形成された構成を有している。
【0023】
成形部50はC−H結合を含む熱可塑性樹脂で構成されている。
当該熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂が例示され、好ましくは脂環式構造を有する環状オレフィンである。
具体例として、特開2003−73559号公報に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を下記表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
なお、上述した熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、環状オレフィン樹脂(日本ゼオン製:ZEONEX、三井化学製:APEL、JSR製:アートン、ポリプラスチック製:TOPAS)、ポリエステル系樹脂(大阪ガスケミカル製:OKP4HT)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂(帝人化成製:パンライトAD5503、三菱ガス化学製:ユーピロンH4000、ユピゼータEP5000)などが好適に用いられる。
【0026】
フッ素含有層55は成形部50に対し、フッ素雰囲気下でフッ素化処理が実行されることで形成された層であり、第2レンズL2の表面反射率を低下させる機能を有している。
フッ素含有層55はd線に対する屈折率が1.35〜1.45となっており、当該屈折率の値は表面反射率により測定することができる。
フッ素含有層55の層厚は好ましくは10〜5000nmであるが、特に限定はなく、フッ素含有層55の厚みdと屈折率nとの積(nd)が設計波長λとした場合に、nd≒λ/4となるように厚みを設定することで光の干渉効果により反射防止機能が得られる為、好ましい。層厚が5000nmを超えると、干渉縞の影響が光の波長に大きく依存し、その上に反射防止膜を形成してもその機能を発揮させるのが難しくなり、逆に層厚が10nm未満であると、フッ素含有層55の機能を十分に発揮させるのが難しくなるからである。
【0027】
続いて、第2レンズL2の製造方法であって、特にフッ素含有層55の形成方法(フッ素化処理)について説明する。
【0028】
始めに、上記熱可塑性樹脂を一定条件下で金型に対し射出成形し、所定形状を有する成形部50を形成する。その後、成形部50に対してフッ素化処理を実行し、成形部50上にフッ素含有層55を形成する。
【0029】
フッ素化処理では、成形部50をフッ素ガス雰囲気中に晒し、その表面にフッ素含有層55を形成する。これにより、高分子材料(熱可塑性樹脂)の屈折率を低下させ、第2レンズL2の表面反射率を低下させることができる。
【0030】
フッ素ガス雰囲気中のフッ素ガス濃度、フッ素ガス雰囲気中に曝露する温度や時間を適宜選択することにより、フッ素含有層55の層厚およびフッ素化率を任意に制御でき、所望の波長の表面反射率を低下させることが出来る。
【0031】
ここで、フッ素ガス雰囲気とは、フッ素ガスを含む気体に覆われていることを意味し、フッ素ガスと窒素,アルゴン等の不活性ガスとの混合ガスに覆われていることも含まれる。
【0032】
また、フッ素ガス雰囲気中のフッ素ガスの濃度は、所望の屈折率およびフッ素含有層厚の材料に応じて適宜選択することができる。
【0033】
また、成形部50とは、炭素−水素結合を有する熱可塑性樹脂から成る重合体で、上記の例のほかにも、炭素−水素結合を有する重合体であるならば、特に、限定されるものではない。
【0034】
なお、成形部50に添加される酸化防止剤や紫外線吸収剤、可塑剤のような、全重量に対して添加量が5%以下である添加剤の構成元素は、炭素と水素以外でも構わない。
【0035】
また、成形部50を製造する際に使用される触媒や反応停止剤のような重合副資材が残留している場合でも、全重量に対して残留量が1%未満であれば、その構成元素が炭素と水素に限定されるものではない。
【0036】
本実施形態において、成形部50としては、特に上記条件が満たされていれば限定されないが、高透明性、高耐熱性、低吸水性、高純度、低複屈折性を加味すると、環状オレフィン重合体であることがより好ましい。
【0037】
これらの重合体を例えば窒素ガス等で希釈した種々の濃度のフッ素ガス中に、所定温度、所定時間曝すことにより、高分子材料の表面から内部に向かって徐々に分子内でのフッ素の導入が起こり、材料のフッ素含有率が増加してゆくことになる。
【0038】
材料表面からのフッ素の浸透深さ、フッ素処理後の材料中のフッ素含有率は、フッ素処理中のフッ素ガスの濃度、フッ素処理温度、フッ素処理時間に依存して変化する。
【0039】
これらの条件については特に制限はないが、フッ素濃度が高い場合、処理時間が長い場合、処理温度が高い場合に、フッ素の浸透深さが深くなり、またフッ素処理後の高分子材料のフッ素含有率が高くなる。
【0040】
フッ素含有率の増加に伴ってフッ素化された部分の屈折率が低減するので、フッ素濃度、処理温度、処理時間を適宜選択すれば、所望の厚さの低屈折フッ素含有層55を形成することが可能である。
【0041】
ただし、極端にフッ素濃度を高くしたり、極端な高温長時間でのフッ素処理を行うと分子が劣化するため、通常のフッ素処理条件としてはフッ素濃度が1ppm〜25%、処理温度が0〜100℃、処理時間が0.1秒〜120分が好適である。
【0042】
以上の本実施形態によれば、フッ素化処理により第2レンズL2の光学面30のC−H結合がC−F結合に置換(改質)されるから、光学面30のうちフッ素含有層55が形成された部位はC−H結合より結合力が強化され、光学面30表面の荒れ、形状変化などの表面劣化を抑制することができ、ひいては光学面30の表面粗さや非球面性の低下などを抑制することができる。
【0043】
さらに、第2レンズL2の光学面30はフッ素含有層55を有するから反射率が低く反射防止機能は維持される。すなわち、光学面30にフッ素化処理が施されフッ素含有層55が形成されているから、光学面30は全面にわたり均一に改質され、反射防止機能を司る部位の厚さ(反射防止膜の膜厚)が不均一になるといった蒸着処理特有の課題は生じない。
その結果、反射防止の機能は損なわれず、コートムラに起因するといった光線透過率の低下も抑制することができる。
【0044】
なお、車載カメラ10は自動車2の後方に限らず、前方や側方に設置されてもよいし車内に設置されてもよく、自動車2における設置場所は不問である。
撮像光学系20は自動車2の車載カメラ10に使用される用途に限らず、屋外設置型の監視カメラなどに使用されてもよく、紫外線の照射を長期にわたり受ける屋外で広角な画像を取得したい場合に、好適に使用することができる。
【実施例】
【0045】
(1)サンプルの作製
(1.1)サンプル1〜3
ポリエステル系樹脂(大阪ガスケミカル製OKP4HT)を成形して、図2に示されるレンズのうち、第2レンズL2を3個作製し、サンプル1〜3として評価に用いた。
作製されたサンプル1〜3の形状は、両側に非球面の光学面を有し、物体側の光学面の曲率半径が−10.75,像側の光学面の曲率半径(R)が1.94であり、像側光学面の半径(h)は1.16mmであった。従って、サンプル1の像側の光学面のh/R=1.16/1.94=0.6であった。また、物体側光学面の非球面係数(r3)、像側光学面の非球面係数(r4)を、表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
サンプル1では、成形されたレンズに、反射防止膜を設けなかった。
サンプル2では、像側の光学面全面に蒸着処理により二酸化シリコンの膜を形成した。蒸着処理では、真空蒸着装置内で真空度が1.5×10−2Pa以下になるまで排気した後、電子銃により蒸着材料を加熱、蒸発させることで、レンズ表面に二酸化シリコンの膜を形成した。蒸着の際のレンズ温度は80〜90℃とし、成膜スピードは1nm/secの条件で成膜した。
サンプル3では、レンズ表面(像側の光学面)にフッ素化処理を施した。フッ素化処理は、フッ素濃度5%、処理温度25℃、処理時間1分の条件で行なった。
【0048】
(1.2)サンプル4〜6
サンプル1〜3で使用した樹脂の種類を日本ゼオン社製ZEONEX E48R(日本ゼオン社製)に変更し、サンプル1〜3を作製したのと同様に、「サンプル4〜6」を作製した。
【0049】
(2)サンプルの評価
各サンプルに対して、温度83℃,湿度50%の環境下で波長300〜400nm,照度160W/mの光を1000時間照射し続けた(耐光試験)。
【0050】
(2.1)表面粗さRaの測定
測定機としてパナソニック社製 超高精度三次元測定機UA3Pを用いて、耐光試験後の各サンプルの表面粗さRaを測定した。当該測定では表面粗さRaの目標をΔ0.1μm以下とした。測定結果を表3に示す。
表3では、参考のため、耐光試験していないサンプルを基準サンプルとして、その表面粗さRaなども記載している。なお、サンプル1を用いた基準サンプルを基準1と、サンプル4を用いた基準サンプルを基準2としている。
【0051】
(2.2)形状変化の測定
測定機としてパナソニック社製 超高精度三次元測定機UA3Pを用いて、耐光試験後の各サンプルの形状変化(非球面性)を測定した。当該測定では非球面性の目標をΔ0.2μmとした。測定結果を表3に示す。
【0052】
(2.3)光線透過率の測定
日立分光光度計U4100を用いて、耐光試験前後で各サンプルの光線透過率(波長600nm)を測定してその変化量を算出した。当該測定では光線透過率変化量(散乱度)の目標を−1%以下とした。算出結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
(3)まとめ
表3に示す通り、なんらの処理も施さないサンプル1,4では、耐光試験後の表面粗さRaや非球面性が基準サンプルに対し著しく低下しており、光線透過率の変動(低下)も認められる。
蒸着処理による反射防止膜を形成したサンプル2,5では、表面粗さRaや非球面性の低下は認められないものの、コートムラに起因するような光線透過率の低下が認められる。
これに対し、フッ素化処理を施したサンプル3,6では、表面粗さRaや非球面性の低下は認められず、光線透過率の低下が抑制されている。
以上から、光学面にフッ素化処理を施してフッ素含有層を形成することは、光学面の表面劣化によるレンズ性能の劣化や光線透過率の低下の抑制に有用であることがわかる。
【符号の説明】
【0055】
2 自動車
4 ナンバープレート
10 車載カメラ
12 筐体
20 撮像光学系
30,40 光学面
50 成形部
55 フッ素含有層
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
S 絞り
F1 ローパスフィルタ
F2 IRカットフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C−H結合を含む熱可塑性樹脂で構成された光学素子において、
非球面形状を有する光学面であって式(1)の条件を満たす光学面を備え、
前記光学面には、フッ素ガス雰囲気下で水素原子をフッ素原子に置換するフッ素化処理により、フッ素含有層が形成されていることを特徴とする光学素子。
h/R≧0.5 … (1)
(式(1)中、「h」は前記光学面の半径であり、「R」は前記光学面の曲率半径である。)
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子において、
車載カメラ又は屋外設置型の監視カメラに用いられることを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−221109(P2011−221109A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87501(P2010−87501)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】