説明

光学装置および撮像装置

【課題】低照度撮影時にも光路長を変化させることなく撮影可能な光学装置および撮像装置を提供する。
【解決手段】光学装置を構成している調光セルは、対向配置された光の入射側の第1透明基板と出射側の第2透明基板との間に収容層を有するものであり、この収容層は第1領域に液晶部を備えると共に、第1領域とは異なる第2領域に、液晶部よりも光透過率が高い透明部を備えている。液晶部と透明部との屈折率は、実質的に同じである。明るいシーン等の調光が必要な場合には光軸上に液晶部が配置され、暗いシーン等の低照度撮影時には光軸上に透明部が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、セルを通過する光の透過率を制御して調光を行う光学装置およびこの光学装置を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置での調光制御のため、電気的に入射光の透過率を自在に変更可能な調光セルが多数提案されているが、中でも液晶を用いた調光セルが多く提案されている。このような調光セルには、二色性色素を含有させたゲストホスト(GH)型液晶がよく使用されている。調光セルの配置場所は、従来から使用されているアイリス絞りが配置されていた部分、あるいは、撮像素子の周辺部である。
【0003】
しかしながら、光路にGH型液晶の調光セルを配置して調光を行う場合、GH型液晶には色素が含まれているため、この色素に光が吸収されて調光セルの最大光透過率が低下する。特に、非常に暗い状態になるように調合したGH型液晶を使用する場合に、この現象は顕著となり、レンズのF値(Fナンバー)を落とすこととなる。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1ではGH型液晶を含む調光セルを、低照度撮影時(例えば、暗いシーンの撮影時)には光軸から外すようにして調光制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−109630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように調光制御を行うと、光軸上に調光セルが存在している場合と、調光セルが光軸から逃れた場合とで液晶部の屈折率と空気の屈折率との差により撮像装置の光路長が変化してしまう。つまり、調光セルを移動させる度に光路長を設定し直す作業が必要となり、レンズの配置や露光制御が複雑になる。
【0007】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光路長を変化させることなく低照度撮影を行うことが可能な調光セルを含む光学装置およびこの光学装置を用いた撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術による光学装置は、光の入射側に配置される第1透明基板と、第1透明基板と対向すると共に光の出射側に配置される第2透明基板との間に収容層を有するセルと、収容層の第1領域に設けられ、光透過率を所定の範囲で変更可能な透過率可変部と、光が入射する方向から見て第1領域と異なる第2領域に設けられ、透過率可変部よりも高い光透過率を有する透過率固定部とを備えたものである。
【0009】
本技術の光学装置では、一つのセル内に透過率可変部と透過率可変部よりも高い光透過率を有する透過率固定部とが互いに異なる領域に配置されているので、撮影時の明るさに応じてセルを移動させ、光軸上に透過率可変部,透過率固定部または透過率可変部と透過率固定部との境界近傍領域を配置することが可能となる。また、セルの移動のみでなく、光軸上に透過率可変部を配置して、例えば電圧印加等により入射光の光透過率を変更することも可能である。
【0010】
本技術による撮像装置は、上記本技術の光学装置を備えたものであり、当該光学装置によって調光され、撮像が行われる。
【発明の効果】
【0011】
本技術の光学装置および撮像装置によれば、一つのセル内に透過率可変部と透過率可変部よりも高い光透過率を有する透過率固定部とを設けるようにしたので、低照度撮影時にはセルを移動させて光軸上に光透過率の高い透過率固定部を配置することができる。よって、光路長を変化させることなく低照度撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の適用例に係る撮像装置の外観構成例を表す斜視図である。
【図2】図1に示した鏡筒装置の外観構成例を表す斜視図である。
【図3】図1に示した鏡筒装置等における光学系の構成例を表す概略図である。
【図4】本開示の第1の実施の形態に係る調光セル(光学装置)を表す図である。
【図5】GH型液晶の最大光透過率と最小光透過率との関係の一例を表す図である。
【図6】図1に示した撮像装置における制御処理部等の構成例を表すブロック図である。
【図7】図4に示した調光セルの動作について説明するための斜視図である。
【図8】比較例に係る調光セルの動作について説明するための図である。
【図9】本開示の第2の実施の形態に係る調光セル(光学装置)を表す図である。
【図10】図9に示した仕切り部の変形例を表す断面図である。
【図11】図9に示した層厚変化領域の変形例を表す断面図である。
【図12】図9に示した調光セルの動作について説明するための斜視図である。
【図13】図7に示した調光セルの動作における光透過率およびMTFの変化を表す図である。
【図14】図12に示した調光セルの動作における光透過率およびMTFの変化を表す図である。
【図15】図12に示した調光セルの動作における調光範囲を表す図である。
【図16】NDフィルタの外観構成例を表す斜視図である。
【図17】図16に示したNDフィルタを移動させた場合の光透過率およびMTFの変化を表す図である。
【図18】図9に示した調光セルの変形例に係る断面図である。
【図19】図18に示した調光セルの変形例に係る断面図である。
【図20】図18に示した調光セルの他の変形例に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(透過率可変部の透過率固定部との仕切られた面が光軸に対して平行な光学装置の例)
2.第2の実施の形態(透過率可変部の透過率固定部との仕切られた面が光軸に対して傾斜している光学装置の例)
3.変形例(光軸方向に複数の透過率可変部および透過率固定部が配置された光学装置)
【0014】
<第1の実施の形態>
[撮像装置1の全体構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る光学装置(後述する光学装置5)が適用された撮像装置(撮像装置1)の全体構成(外観構成)を斜視図で表したものである。この撮像装置1は、被写体からの光学的な画像を撮像素子(後述する撮像素子3)によって電気的な信号に変換するデジタルカメラ(デジタルスチルカメラ)である。なお、このようにして得られた撮像信号(デジタル信号)は、半導体記録メディア(図示せず)に記録したり、液晶ディスプレイ等の表示装置(図示せず)に表示したりすることが可能となっている。
【0015】
撮像装置1では、本体部10(筐体)上に、レンズ部11、レンズカバー12、フラッシュ13および操作ボタン14が設けられている。具体的には、本体部10の前面(Z−X平面)に、レンズ部11、レンズカバー12およびフラッシュ13がそれぞれ配設され、本体部10の上面(X−Y平面)に操作ボタン14が配設されている。この撮像装置1はまた、本体部10内に、上記したレンズ部11を含む鏡筒装置2(レンズ鏡筒装置)と、撮像素子3と、制御処理部(後述する制御処理部4)とを備えている。なお、本体部10内には、これらの他にも、例えばバッテリーやマイクロフォン、スピーカー等(いずれも図示せず)が内蔵されている。
【0016】
鏡筒装置2は、入射した撮像光をその光路を屈曲させて出射する屈曲型(折り曲げ型)であっても、光路が直線となる沈胴型であってもよい。屈曲型であれば、鏡筒装置2の薄型化(Y軸方向の薄型化)を図ることが可能となる。この鏡筒装置2は、例えば図2に示したような外観構成からなる。すなわち、鏡筒装置2では、筒状部材20の上部(Z軸上の正方向の端部)に、上記したレンズ部11が配設されている。このレンズ部11は、対物レンズ(後述のレンズ群21の一部)と、本体部10の一部を構成するフロントフレーム110とからなる。
【0017】
撮像素子3は、鏡筒装置2から出射された撮像光を検出して撮像信号を取得する素子である。この撮像素子3は、例えば、CCD(Charge-Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等のイメージングセンサーを用いて構成されている。
【0018】
レンズカバー12は、レンズ部11を外部から保護するための部材であり、図中の破線の矢印で示したように、Z軸方向に沿って移動することが可能となっている。具体的には、被写体の撮像時には、レンズ部11が外部に露出されるように、レンズカバー12がレンズ部11の下方に配置される。一方、撮像時以外のときには、レンズ部11が外部に露出されないように、レンズ部11の上方に配置されるようになっている。
【0019】
操作ボタン14は、ここでは、撮像装置1の電源をオン・オフさせるための電源ボタン14aと、被写体の撮像を実行するための記録ボタン14b(シャッターボタン)と、撮像信号に対して所定の像ぶれ補正を実行するための手ぶれ設定ボタン14cとからなる。なお、本体部10上に、これらに加えて(これらの代わりに)他の操作を行うためのボタンが設けられているようにしてもよい。
【0020】
[調光セル22の詳細構成]
図3に示したように、鏡筒装置2はレンズ群21と調光セル22とを含み、調光セル22はレンズ群21と撮像素子3との間に配置される。本実施の形態の光学装置5は、この調光セル22および後述の制御処理部4の一部により構成されて一連の調光動作を行うものである。以下、図4を用いて調光セル22について説明する。なお、図4は調光セル22の構造を模式的に表したものであり、実際の寸法、形状とは異なる。
【0021】
図4(A)は、調光セル22の平面構成を表し、図4(B)は断面構成例(Y−Z断面構成例)を表すものである。調光セル22は、撮像光の光量を調整する素子であり、電気的に光量調整(調光)を行うようになっている。調光セル22のうち、レンズ群21と撮像素子3とを結ぶ光軸L上に配置される部分が調光部22Lである(図3)。調光セル22は、セル殻220の内部に収容層221を有するものであり、収容層221には光透過率の異なる第1領域22Aと第2領域22Bとが設けられている。第1領域22Aと第2領域22Bとは、調光セル22内で光軸Lに対して交差する方向(例えば、直交方向)の隣り合う位置に配置されている。第1領域22Aには電圧に応じて光透過率を変化させることのできる透過率可変部、具体的には液晶部221a、第2領域22Bには光透過率が一定の透過率固定部、具体的には透明部221bがそれぞれ設けられている。液晶部221aと透明部221bとの間には仕切り部222が設けられている。第1領域22Aの幅(Y方向の距離)と第2領域22Bの幅との比は限定されるものではないが、この調光セル22では例えば同じ幅を有している。セル殻220の外側に取り付けられた電極223は制御処理部4(後述の液晶駆動部47)に接続される。
【0022】
図4(B)に示したように、調光セル22は、透明基板228a(第2透明基板)、透明電極227a、配向膜224a、液晶部221aおよび透明部221bからなる収容層221、配向膜224b、透明電極227bおよび透明基板228b(第1透明基板)がこの順に配置された積層構造を有している。即ち、収容層221は透明基板228aと透明基板228bとの間に配置されている。透明基板228a,228bの外側(透明電極227a,227bの反対側)には、それぞれ反射防止膜229a,229bが設けられている。配向膜224aと配向膜224bとの間にはスペーサ225が設けられ、これにより液晶部221aと透明部221bとの厚み(積層方向の厚み)が実質的に等しくなっている。シール剤226は、液晶部221aおよび透明部221bを調光セル22内に封止するものであり、これらの側面を覆うように設けられている。レンズ群21からの入射光は、透明基板228b側の面(入射面)から調光セル22に垂直に入射し、液晶部221aまたは透明部221bを通過して、透明基板228bと対向する透明基板228a側の面(出射面)から撮像素子3へと出射される。つまり、液晶部221aと透明部221bとは、光の入射方向から見て異なる領域、具体的には仕切り部222を間にして隣り合う領域に配置されている。
【0023】
液晶部221aは液晶分子を含有する層であり、ここでは液晶分子に加えて所定の二色性染料分子を含有している(図4(B)では図示の簡略化のため、液晶分子および二色性染料分子をまとめて「分子M」として示している)。すなわち、液晶部221aは、二色性色素を含有するGH型の液晶を用いて構成されている。
【0024】
このようなGH型液晶は、電圧印加時における液晶分子の長軸方向の相違により、ネガ型のものとポジ型のものとに大別される。ポジ型のGH型液晶は、電圧無印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となり、電圧印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となるものである。一方、ネガ型のGH型液晶は、逆に、電圧無印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となり、電圧印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となるものである。ここで、色素分子は液晶分子と同じ方向(向き)に配向するため、ポジ型の液晶をホストとして用いた場合には、電圧無印加時には光透過率が相対的に低くなり(光出射側が相対的に暗くなり)、電圧印加時には光透過率が相対的に高くなる(光出射側が相対的に明るくなる)。一方、ネガ型の液晶をホストとして用いた場合には、逆に、電圧無印加時には光透過率が相対的に高くなり(光出射側が相対的に明るくなり)、電圧印加時には光透過率が相対的に低くなる(光出射側が相対的に暗くなる)。液晶部221aは、上記のようなポジ型およびネガ型のいずれの液晶によって構成されていても、電圧印加量により光透過率を所定の範囲で変更することができる。
【0025】
図5は、横軸を最大光透過率(%)、縦軸を最小光透過率(%)としてGH型液晶の調光範囲の一例を示したものである。セル構成、ホスト液晶あるいは色素性能等により調光範囲を示す数値は変動してくるが、図5に示した曲線の傾向は共通する。このGH型液晶では、最小光透過率が0.5%以下になるように調製した場合の最大光透過率は50%程度であった。このような広い調光範囲を示すGH型液晶を撮像装置1に用いると、7段以上絞ることが可能となる。例えば、F値が1.8相当の明るいレンズでもF値22相当の明るさまで絞ることができ、あらゆる明るいシーンでも露光時間を変えることなく解像度のよい画の撮影が可能となる。勿論、GH型液晶の調製によってはF値30以上の非常に明るいシーンの撮影も可能である。しかしながら、このような最大光透過率の比較的低いGH型液晶を撮像装置1に使用すると、例えば最大光透過率が50%のものであれば、はじめから50%減光するフィルタが入っているのと同様であるため、レンズの明るさを落とすこととなる。詳細は後述するが、本実施の形態では調光セル22に透明部221bが設けられているため、例えばF値が1.8〜2.6程度のレンズ(明るいレンズ)においてもその明るさを維持しつつ最大光透過率の低いGH型液晶を用いることが可能となる。
【0026】
透明部221bは、液晶部221aの光透過率が相対的に高くなっている場合(ポジ型では電圧印加時、ネガ型では電圧無印加時)よりも、更に高い光透過率を有するものであり、その光透過率は100%に近いことが好ましい。液晶部221aと透明部221bとの光路長が実質的に同じになるよう、透明部221bの屈折率(Nc)は、液晶部221の屈折率と実質的に同じになっている。具体的には、透明部221bの屈折率Ncが、液晶部221aの光透過率の変化に応じて変化する、液晶部221aの屈折率の最大値Neと最小値Noとの間の値(No≦Nc≦Ne)であることが好ましい。例えば、液晶部221aの屈折率の最大値Neは、分子Mの長軸方向の分子分極率由来の屈折率であり、最小値Noは、分子Mの短軸方向の分子分極率由来の屈折率である。透明部221bは、例えば、屈折率調整のために添加物を加えた樹脂材料からなる。樹脂材料には、レンズの接合に使用される接着剤、例えばエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂またはポリウレタン等を使用することが可能である。
【0027】
仕切り部222は、液晶部221aと透明部221bとが混在することを防止するものであり、液晶部221aと透明部221bとの間に、配向膜224aから配向膜224bにかけて設けられている。本実施の形態では、この仕切り部222の断面(縦断面)は矩形状であり、その向きは光軸Lと平行となっている。つまり、液晶部221aの透明部221bとの仕切られた面(対向面)は光軸Lに対して平行になる。仕切り部222は、例えば後述の配向膜224a,224bまたはシール剤226と同様の材料により構成される。仕切り部222の幅(Y軸方向の距離)は、調光部22Lの幅よりも小さく、例えば50μmである。
【0028】
透明電極227a,227bはそれぞれ、液晶部221aに対して電圧(駆動電圧)を印加するための電極であり、例えば酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなる。この透明電極227a,227bは電極223に接続されている。なお、電極223の配置位置は、図4(A)に示した箇所に限らない。
【0029】
透明基板228aは、透明電極227aおよび配向膜224aを支持し、透明基板228bと共に液晶部221a,透明部221bを封止するための基板である。透明電極227bおよび配向膜224bは、透明基板228bに支持されている。透明基板228a,228bは例えば無アルカリガラスからなる。
【0030】
シール剤226は、液晶部221a,透明部221bを側面側から封止するための部材であり、例えばエポキシ接着剤やアクリル接着剤等の接着剤からなる。スペーサ225は、液晶部221a,透明部221bにおけるセルギャップ(厚み)を一定に保持するための部材であり、例えば所定の樹脂材料やガラスからなる。液晶部221a,透明部221bの厚みは例えば3μm〜10μm程度である。
【0031】
[制御処理部4のブロック構成]
続いて、前述した制御処理部4の構成について説明する。図6は、この制御処理部4のブロック構成を、鏡筒装置2および撮像素子3とともに表わしたものである。
【0032】
制御処理部4は、以下説明するように、撮像素子3において得られた撮像信号に対して所定の信号処理を行うと共に、鏡筒装置2内の調光セル22に対して所定のフィードバック制御を行うものである。この制御処理部4は、S/H・AGC回路41、A/D変換部42、撮像信号処理部43、検波部44、マイコン(マイクロコンピュータ)45、温度センサー46、液晶駆動部47、調光セル移動制御部48および調光セル移動動力源49を有している。
【0033】
S/H・AGC回路41は、撮像素子3から出力される撮像信号に対してS/H(サンプル・ホールド)処理を行うと共に、AGC(Automatic Gain Control)機能を用いた所定の信号増幅処理を行う回路である。
【0034】
A/D変換部42は、S/H・AGC回路41から出力される撮像信号に撮像信号に対してA/D変換(アナログ/デジタル変換)処理を行うことにより、デジタル信号からなる撮像信号を生成するものである。
【0035】
撮像信号処理部43は、A/D変換部42から出力される撮像信号(デジタル信号)に対して、所定の信号処理(画質改善処理等)を行うものである。このようにして信号処理がなされた後の撮像信号は、制御処理部4の外部(図示しない半導体記録メディア等)へ出力されるようになっている。
【0036】
検波部44は、A/D変換部42から出力される撮像信号(デジタル信号)について所定のAE検波を行い、そのときの検波値を出力するものである。
【0037】
温度センサー46は、調光セル22の近傍(周辺領域)に配置されており、この調光セル22の温度を検出するためのセンサーである。なお、このようにして検出された調光セル22の温度情報は、マイコン45へ出力されるようになっている。
【0038】
マイコン45は、液晶駆動部47に対して液晶部221aへの電圧印加量についての制御信号を供給すると共に、調光セル移動制御部48に対して調光セル22の移動方向・移動量についての制御信号を供給するものである。具体的には、液晶駆動部47および調光セル移動制御部48は、検波部44から供給される検波値に基づき、調光セル22に対する調光動作を設定するようになっている。また、マイコン45は、図示しない記憶部(メモリ)上に予め保持された「温度と透過光量との対応関係」を示すデータを用いて、温度センサー46から出力される調光セル22の温度情報を利用した所定の温度補正(電圧印加量の温度補正)を行う機能も有している。
【0039】
液晶駆動部47は、マイコン46から供給される電圧印加量についての制御信号に基づいて、液晶部221aの駆動動作を行うものである。具体的には、電極223を介して、調光セル22内の透明電極227a,227b間に設定された電圧を印加するようになっている。調光セル移動制御部48は、マイコン46からの信号に基づいて調光部22Lに液晶部221a,透明部221bまたは液晶部221aと透明部221bとの境界近傍領域のいずれかが配置されるように調光セル22の移動方向・移動量についての制御信号を調光セル移動動力源49へと供給し、調光セル移動動力源49が調光セル22を適宜最適な位置へと移動させる。本実施の形態の光学装置5は、調光セル22と、この制御処理部4の液晶駆動部47,調光セル移動制御部48および調光セル移動動力源49により構成されている。
【0040】
[撮像装置1の作用・効果]
(1.撮像動作)
この撮像装置1では、図1に示した操作ボタン14がユーザ(使用者)によって操作されることにより被写体の撮像動作が行われ、撮像画像(撮像データ)が得られる。具体的には、図1〜図3に示したように、まず、撮像光がレンズ部11を介して鏡筒装置2へ入射し、光軸Lに沿ってレンズ群21および調光セル22を通過した後、撮像素子3へと出射され検出される。このようにして撮像素子3において取得された撮像信号に対して、制御処理部4は、所定の信号処理を行う。また、この制御処理部4は、取得された撮像信号に基づいて、鏡筒装置2内の調光セル22に対して、前述した所定のフィードバック制御を行う。
【0041】
このとき、調光セル22では、液晶部221aと透明部221bとの並び方向(Y軸方向)の移動が行われ、撮影シーンの明るさに応じて図7に示したように調光部22Lに透明部221b(図7(A)),透明部221bと液晶部221aとの境界近傍領域(図7(B))あるいは液晶部221a(図7(C))のいずれかが配置される。ここでは、調光部22Lに透明部221bが配置された状態をP1、調光部22Lに透明部221bと液晶部221aとの境界近傍領域が配置された状態をP2、調光部22Lに液晶部221aが配置された状態をP3として説明する。P1,P2またはP3の状態のいずれかに配置された後、反射防止膜229b側から入射した撮像光が液晶部221a,透明部221bを通過して反射防止膜229a側から出射される。また、P2またはP3の状態で、液晶部221aに対して所定の電圧(駆動電圧)が印加されると、分子M(液晶分子および色素分子)の配向方向(長軸方向)が変化し、それに応じて液晶部221aを通過する撮像光の光量も変化する。つまり、調光セル22の配置位置および駆動電圧を調整することにより、調光セル22全体を通過する撮像光の光量が調整可能となる。このようにして、鏡筒装置2内で撮像光に対する光量調整(調光)が行われる。
【0042】
(2.調光セル22の作用)
調光セル22の特徴的部分の作用について、比較例を用いつつ以下、詳細に説明する。
【0043】
図8は、比較例に係る撮像装置100の構成を表したものであり、この撮像装置100はGH型の液晶部のみからなる調光セル122を備えている。撮像装置100では、明るいシーン等の調光が必要な場合に、図8(A)に示したように光軸L上に調光セル122が置かれ、暗いシーンの撮影時等の調光が不要な場合(低照度撮影時)には、図8(B)に示したように光軸Lから調光セル122が完全に外される。このような調光セル122の移動により、最大光透過率の低いGH型液晶によりレンズの明るさが落ちることは防止できる。しかし、調光セル122の液晶部と空気との屈折率差により、撮像装置100では図8(A)に示した場合の光路長と図8(B)に示した場合の光路長とは異なるものとなる。このため、調光セル122を移動させる度に光路長を設定し直す作業が必要となり、レンズの配置や露光制御が複雑になる。また、光軸L上から調光セル122が逃れた状態(図8(B))から、光軸L上に調光セル122が入ってくる(図8(A))と、その瞬間に光の回折が生じるため、解像度が劣化する。このようなエッジ部分による回折は、移動動作の速度を上げることで抑えることも可能だが、この場合アクチュエータが大きくなる。
【0044】
光路長を変化させずに調光を行うためには、図8(B)の時に調光セル122とは別にダミーガラスを差し込んで使用することも考えられる。しかしながら、このような構成では調光セル122とダミーガラスとの2つの部品を使用して動作を行うことになるため、制御はより複雑になり、コスト面でも不利になる。また、駆動用アクチュエータを設置するためのスペースも増えてしまう。
【0045】
これに対し、本実施の形態の光学装置5では一つの調光セル22内に液晶部221aと、液晶部221aよりも光透過率の高い透明部221bとが設けられている。これら液晶部221aと透明部221bとの光路長(厚みおよび屈折率)は実質的に同じである。これにより、光路長を変化させずに、撮影シーンの明るさに応じて幅広く調光を行うことができる。
【0046】
調光セル22では、図7に示したように、調光セル移動制御部48からの制御信号に基づき、調光が不要な低照度撮影時には、調光セル移動動力源49がP1のように調光部22Lに透明部221bを配置して(図7(A))撮像光が透明部221bを通過するようにし、調光が必要な場合にはP2(図7(B))またはP3(図7(C))のように撮像光が液晶部221aを通過するように配置する。一つの調光セル22内での液晶部221aと透明部221bとの厚みおよび屈折率は実質的に同じであるため、P1乃至P3のいずれの状態においても光路長は変化しない。また、一つの調光セル22内に液晶部221a,透明部221bが設けられているため、セルのエッジ部分による回折によって解像度が劣化する虞もなく、移動速度をあげるための大きなアクチュエータも不要である。更に、一の部品(調光セル22)のみを制御すればよいため、メカおよび制御機構の設計が容易となり、コストおよびアクチュエータの設置スペースを抑えることができる。
【0047】
以上のように本実施の形態の撮像装置1では、調光セル22内に液晶部221aと、透明部221b(第2領域22B)とを隣り合わせて設けるようにしたので、低照度撮影時には調光セル22を移動させて調光部22Lに光透過率が100%近い透明部221bを配置することができる。よって、液晶部221aに最大光透過率の低いGH型液晶を用いても、レンズの明るさを維持すると共に、光路長を変えることなく低照度撮影を行うことができる。
【0048】
以下、他の実施の形態および変形例について説明するが、上記第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
<第2の実施の形態>
図9(A)は、第2の実施の形態に係る光学装置(光学装置5)を構成する調光セル(調光セル23)の平面構成例、図9(B)は断面構成例(Y−Z断面構成例)を模式的に表したものである。この調光セル23は、液晶部221aの透明部221bとの仕切られた面が光軸Lに対して傾斜している点において上記第1の実施の形態と異なるものである。
【0050】
調光セル23では、液晶部221aが第2領域22B側に層厚変化領域22A−1を有している。層厚変化領域22A−1以外の液晶部221aでは、その厚みが均一であるのに対し、層厚変化領域22A−1では、透明部221bに近づくにつれて小さくなる。この液晶部221aの厚みの差によって液晶部221aの透明部221bとの仕切られた面が光軸Lに対して傾斜する。層厚変化領域22A−1の幅(Y軸方向の距離)および傾斜角度は、自由に設計することが可能であるが、層厚変化領域22A−1の幅が極端に小さい(例えば、数十μm)と、後述の層厚変化領域22A−1による効果が充分に得られないため、セル有効エリア幅(数mm)程度であることが望ましい。セル有効エリア幅は、イメージャーのサイズや配置箇所によるが、例えば16MイメージャーのDSC(Digital Still Camera)では7mm程度である。
【0051】
仕切り部222Aは、本実施の形態ではその断面形状が台形状であり、液晶部221aの層厚が均一の部分に向かうにつれてその厚みが小さくなっていく。この仕切り部222の厚みの変化に対応するように層厚変化領域22A−1では液晶部221aの厚みが変化する。つまり、液晶部221aの厚みの変化は、仕切り部222Aの厚みによって調整されている。この仕切り部222Aの断面形状は、液晶部221aの厚みを徐々に変化させるものであれば、台形状に限定されるものではなく、例えば、図10(A)および図10(B)に示したように、二次曲線状に変化するものであってもよく、あるいは図10(C)に示したように、段階的(階段状)に変化するものであってもよい。層厚変化領域22A−1の液晶部221aを所望の状態に配向させるため、仕切り部222Aは配向膜により構成されていることが好ましい。このような仕切り部222Aは、配向膜を削って厚みを調整することにより形成することができる。
【0052】
また、層厚変化領域22A−1は、仕切り部222Aの厚みの差によって形成されるものに限らない。例えば、図11(A)に示したように、透明部221bの、液晶部221aとの仕切られた面を光軸Lに対して傾斜するように形成し、この透明部221bと液晶部221aとの間に厚みが均一の仕切り部222Aを設けるようにしてもよい。更に、図11(B)に示したように仕切り部222Aを設けずに調光セル23を構成してもよい。
【0053】
本実施の形態の調光セル23においても、調光セル22と同様の調光動作を行うことが可能である。図12に示したように撮影シーンの明るさに応じて調光部22Lに第2領域22B(図12(A)),層厚変化領域22A−1(図12(B))あるいは液晶部221aの層厚が均一な部分の第1領域22A(図12(C))が配置される。図7と同様に、調光部22Lに第2領域22Bが配置された状態をP1、調光部22Lに層厚変化領域22A−1が配置された状態をP2、調光部22Lに液晶部221aの層厚が均一な部分の第1領域22Aが配置された状態をP3とする。P1,P2またはP3のいずれかに配置された後、反射防止膜229b側から入射した撮像光が液晶部221a,透明部221bを通過して反射防止膜229a側から出射される。また、P2またはP3の状態で、液晶部221aに対して所定の電圧(駆動電圧)が印加されると、分子M(液晶分子および色素分子)の配向方向(長軸方向)が変化し、それに応じて液晶部221aを通過する撮像光の光量も変化する。
【0054】
本実施の形態では、P2の状態での調光が上記第1の実施の形態(図7(B))と異なるものとなる。図13は、P1乃至P3の状態での上記第1の実施の形態の調光セル22の光透過率とMTF(Modulation Transfer Function)の変化を模式的に表したものである。MTFは解像度の良さの指標となるものであり、MTFの数値が大きくなるほど解像度が良好であることを示す。調光セル22の光透過率は、P1の状態では100%近く(約98%)であり、P3の状態では、例えば図5に示した最大光透過率が50%のGH型液晶を用いて液晶部221aを構成した場合には、液晶部221aの光透過率が高い状態(分子Mがネガ型であれば電圧印加時、分子Mがポジ型であれば電圧無印加時)になっていたとしても、50%である。つまり、P1の状態からP3の状態へと調光セル22を移動させると、調光セル22を通過する光の透過率は100%近くから50%まで急激に落ちるため、調光セル22の光透過率を100%と50%との間に調整することができない。また、調光セル22をP1の状態からP2の状態に移動させると撮像装置1のシャッター速度は一度2倍になるため画に違和感が生じる虞がある。更に、P1の状態からP3の状態へと移動させる途中のP2の状態で撮影された画、即ち、この液晶部221aと透明部221bとの境界近傍領域を通過した撮像光によって撮影された画は、その明暗差(光透過率の差)により不自然なものとなる虞があり、特に動画撮影時にこれが顕著となる。加えて、調光セル22におけるP2の状態の撮影ではこの明暗差によってMTFも数%以上低下する。
【0055】
これに対して、本実施の形態の調光セル23は、層厚変化領域22A−1により液晶部221aの厚みが透明部221bに近づくにつれて徐々に小さくなっているので、図14に示したように、P2の状態でも光透過率の変化は緩やかである。液晶部221aが光透過率の高い状態(例えば光透過率50%)であれば、P1からP3に移動する途中の状態(P2の状態)で光透過率は98%から50%まで徐々に変化していくため、調光セル23の光透過率を98%と50%との間に調整することも可能となる。この液晶部221aと透明部221bとの間の光透過率のシームレスな変化により、液晶部221aと透明部221bとの間の明暗差も生じず、シャッター速度を変えずにP2の状態においても動画撮影に適した自然な画を撮影することができる。また、P2の状態になった瞬間、物性上、位相のずれと光量差が組み合わさり、MTFは僅かに低下するものの、図13に示した調光セル22におけるMTFの低下率よりも小さく抑えることができる。
【0056】
勿論、調光セル23ではP2の状態で光透過率を変更することも可能である。図15は、P1乃至P3の状態での調光範囲を示したものである。例えば、P2の状態のうち、最大透過率80%程度の位置では、最小光透過率を15%程度まで落とすことが可能となる。これは、撮影者が明るさの異なる場所に移動し、調光セル23の移動を待つことなく撮影したい場合等に有用である。例えば、撮影者が暗い場所から、明るい場所に移った直後に撮影を行いたい場合に、P1の状態からP3の状態に移動する途中のP2の状態で調光セル23の移動を止め、電圧印加量の調整により液晶部221aの光透過率をできるだけ抑えた状態で撮影を開始する。露光時間を可能な範囲で短くすることで、光量を更に落とすことができる。このような状況では分子Mの倒れ変化の方が、調光セル23の移動よりも早いため、MTFの低下をできる限り抑えて撮影を行うことができる。
【0057】
一方、上記のような液晶を用いた調光セル(調光セル22,23)に代えて、透明部を有するグラデーションND(Neutral Density)フィルタ101(図16参照)を使用して調光を行うことも考えられる。しかし、グラデーションNDフィルタでは、液晶部221aとは異なり、図17に示したようにP2およびP3の状態で光透過率を変化させることができない。機械式アイリスを併用すれば、P2およびP3の状態で光透過率を変化させることも可能であるが、MTFは大きく低下する。また、露光速度をできる限り落とすことにより光量を調整して撮影することも可能であるが、露光の破綻した画になる可能性が高い。更に、グラデーションNDフィルタ101では、光透過率の調製を全て位置の制御により行わなければならないため、細かな調光が困難であり、GH型液晶と同等の最小光透過率が0.5%以下となるグラデーションNDフィルタ101を製造することも実用上難しい。
【0058】
以上のように第2の実施の形態に係る調光セル23では、層厚変化領域22A−1を設けたことにより、P1の状態とP3の状態との間の状態(P2の状態)で光透過率の変化が緩やかになる。これにより、例えば最大光透過率が50%、最小光透過率が0.5%以下のGH型液晶を液晶部221aに用いると、電圧印加のタイミングおよび調光セル23の移動のタイミングを調整することにより光透過率が100%から0.5%以下の無限段階の光量調整を調光セル23で行うことが可能となる。また、P2の状態での撮影時に、液晶部221aと透明部221bとの明暗差に起因する画の不自然さ、およびMTFの低下を抑えることができる。
【0059】
<変形例>
図18は、上記第2の実施の形態の変形例に係る調光セル23Aの断面構成例を、模式的に表したものである。この調光セル23Aでは、液晶部および透明部が1層(単層)構造(液晶部221aおよび透明部221b)であった調光セル23とは異なり、液晶部および透明部が2層(複数層)構造となっている。
【0060】
具体的には、調光セル23Aは、透明基板228a、透明電極227a、配向膜224a、液晶部221aまたは透明部221b(収容層221)、配向膜224b、透明電極227b、透明基板228、透明電極227a、配向膜224a、液晶部221aまたは透明部221b、配向膜224b、透明電極227bおよび透明基板228bがこの順に配置された積層構造を有している。すなわち、調光セル23Aでは、光軸Lの進行方向に液晶部221aおよび透明部221b(収容層221)がそれぞれ複数(2つ)配列されている。調光セル23と同様に、調光セル23Aでも、液晶部221aと透明部221bとが断面が台形状の仕切り部222Aで区切られ、液晶部221aは層厚変化領域22A−1を有している。液晶部221a,透明部221bの側面側にはそれぞれシール剤226およびスペーサ225が設けられている。
【0061】
調光セル22と同様に、液晶部221aは2層ともに、二色性色素を含有するゲスト−ホスト型液晶を用いて構成され、透明部221bの光透過率は2層ともに、実質的に100%近くである。この調光セル23Aにおいても、調光セル23と同様の調光動作を行うことが可能である。
【0062】
ただし、この調光セル23Aは、2層の液晶部221aが2層積層されていることにより、以下の効果も得られる。まず、一般にGH型液晶では、ホストとしての液晶に溶ける色素の種類や溶解量には限界があるため、調光セルにおける調光範囲もある程度限られたものとなることが知られている。ここで、ある一定濃度のGH型液晶を用いた場合、液晶部のセルギャップを増加させる(厚みを大きくする)ことによって調光範囲を増加させることが可能であるものの、セルギャップの増大は液晶の応答速度に悪影響を及ぼしてしまう(液晶の応答速度が低下してしまう)。
【0063】
これに対して本変形例の調光セル23Aでは、上記した2層構造の液晶部221aからなることにより、液晶部自体のセルギャップ(厚み)はそのままで(変化させることなく)、液晶の応答速度も保持しつつ(低下させることなく)、調光範囲を増加させることが可能となる。
【0064】
液晶部221a,透明部221bがそれぞれ重なるように積層されていれば、液晶部221aの、透明部221bとの仕切られた面の傾斜はいずれの方向にあってもよい。例えば、図19(A), 図19(B)に示したように2つの液晶部221aの傾斜の向きが同じであってもよく、図18,図19(C)に示したように逆であってもよい。また、図20(A)に示したように複数の液晶部221aの層厚変化領域22A−1の幅がそれぞれ異なっていてもよく、図20(B)に示したように複数の液晶部221aの層厚変化領域22A−1の位置がそれぞれ異なっていてもよい。更に、全ての層に層厚変化領域22A−1を設ける必要はなく、図20(C)に示したように層厚変化領域22A−1のない液晶部221aと、層厚変化領域22A−1が設けられた液晶部221aとを積層させてもよい。
【0065】
なお、本実施の形態では液晶部221a,透明部221bが2層構造となっている場合について説明したが、この場合には限られず、調光セル内において液晶部221a,透明部221bが3層以上の積層構造となっているようにしてもよい。
【0066】
<その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば図18では、図9に示した層厚変化領域22A−1が設けられた液晶部221aが積層された構成を示したが、図4に示した厚みの均一な液晶部221a(調光セル22)が光軸Lの方向に複数積層された構成としてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態等では、調光セル22内で液晶部221aと透明部221bとが仕切り部222を間にして隣り合うように配置された例を示したが、液晶部221aと透明部221bとの間に更に別の層が設けられていてもよい。
【0068】
更に、例えば、上記実施の形態等では、GH型の液晶を用いた調光セルを例に挙げて説明したが、この場合には限られず、GH型の液晶以外の液晶、例えば高分子分散型液晶(ポリマー分散液晶)等を用いた液晶部221aを用いるようにしてもよい。更に、液晶以外で光透過率を変更可能な素子、例えばエレクトロクロミック素子、サーモクロミック素子またはフォトクロミック素子等を用いるようにしてもよい。
【0069】
加えて、上記実施の形態等では、鏡筒装置や撮像装置等の各構成要素(光学系)を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。なお、上記実施の形態等においては、撮像装置としてデジタルスチルカメラを例示したが、本技術はビデオカメラやテレビカメラなどの撮像装置やライトバルブ、反射型表示体あるいは光スイッチ素子など調光セルを有する種々の装置に適用可能である。
【0070】
なお、本技術は以下のような構成をとることも可能である。
(1)光の入射側に配置される第1透明基板と、前記第1透明基板と対向すると共に光
の出射側に配置される第2透明基板との間に収容層を有するセルと、前記収容層の第1領域に設けられ、光透過率を所定の範囲で変更可能な透過率可変部と、光が入射する方向から見て前記第1領域と異なる第2領域に設けられ、前記透過率可変部よりも高い光透過率を有する透過率固定部とを備えた光学装置。
(2)前記透過率可変部は液晶部、前記透過率固定部は透明部によりそれぞれ構成され
ている前記(1)に記載の光学装置。
(3)前記液晶部の、前記透明部との仕切られた面は光軸に対して平行である前記
(2)に記載の光学装置。
(4)前記液晶部の、前記透明部との仕切られた面は光軸に対して傾斜している前記
(2)または(3)に記載の光学装置。
(5)前記第1領域と前記第2領域とは仕切り部によって仕切られる前記(1)乃至
(4)のうちいずれか1つに記載の光学装置。
(6)前記仕切り部は、配向膜からなる前記(5)に記載の光学装置。
(7)前記セルを前記液晶部と前記透明部との並び方向に移動させ、光軸上に前記液晶部 ,
前記透明部またはこれらの境界近傍領域を配置するためのセル移動制御部を備えた前記
(2)乃至(6)のうちいずれか1つに記載の光学装置。
(8)前記液晶部と前記透明部とは実質的に同じ屈折率を有する前記(2)乃至(7)の うちいずれか1つに記載の光学装置。
(9)前記透明部の屈折率は、前記液晶部の光透過率の変化に応じて変化する、前記液晶部の屈折率の最大値と最小値との間の値である前記(2)乃至(8)のうちいずれか1つに記載の光学装置。
(10)光軸に沿って前記液晶部および前記透明部がそれぞれ複数配列された前記(2)乃至(9)のいずれか1つに記載の光学装置。
(11)前記液晶部は、二色性色素を含有するゲスト−ホスト(GH)型の液晶を用いて
構成されている前記(2)乃至(10)のいずれか1つに記載の液晶調光素子。
(12)撮像素子と光学装置とを備え、前記光学装置は、光の入射側に配置される第1透明基板と、前記第1透明基板と対向すると共に光の出射側に配置される第2透明基板との間に収容層を有するセルと、前記収容層の第1領域に設けられ、光透過率を所定の範囲で変更可能な透過率可変部と、光が入射する方向から見て前記第1領域と異なる第2領域に設けられ、前記透過率可変部よりも高い光透過率を有する透過率固定部とを備えた撮像装置。
【符号の説明】
【0071】
1…撮像装置、10…本体部、11…レンズ部、2…鏡筒装置、20…鏡筒部材、21…レンズ群、22,23,23A…調光セル、22A…第1領域、22A−1…層厚変化領域、22B…第2領域、22L…調光部、220…セル殻、221…収容層、221a…液晶部,221b…透明部,222…仕切り部、223…電極、224a,224b…配向膜、225…スペーサ、226…シール剤、227a,227b…透明電極、228a,228b…透明基板、229a,229b…反射防止膜、3…撮像素子、4…制御処理部、5…光学装置、L…光軸、M…分子(液晶分子・色素分子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の入射側に配置される第1透明基板と、前記第1透明基板と対向すると共に光の出射側に配置される第2透明基板との間に収容層を有するセルと、
前記収容層の第1領域に設けられ、光透過率を所定の範囲で変更可能な透過率可変部と、
光が入射する方向から見て前記第1領域と異なる第2領域に設けられ、前記透過率可変部よりも高い光透過率を有する透過率固定部と
を備えた光学装置。
【請求項2】
前記透過率可変部は液晶部、前記透過率固定部は透明部によりそれぞれ構成されている
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記液晶部の、前記透明部と仕切られた面は光軸に対して平行である
請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記液晶部の、前記透明部と仕切られた面は光軸に対して傾斜している
請求項2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第1領域と前記第2領域とは仕切り部によって仕切られる
請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記仕切り部は、配向膜からなる
請求項5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記セルを前記液晶部と前記透明部との並び方向に移動させ、光軸上に前記液晶部,前
記透明部または前記液晶部と前記透明部との境界近傍領域を配置するためのセル移動制御
部を備えた
請求項2に記載の光学装置。
【請求項8】
前記液晶部と前記透明部とは実質的に同じ屈折率を有する
請求項2に記載の光学装置。
【請求項9】
前記透明部の屈折率は、
前記液晶部の光透過率の変化に応じて変化する、前記液晶部の屈折率の最大値と最小値との間の値である
請求項8に記載の光学装置。
【請求項10】
光軸に沿って前記液晶部および前記透明部がそれぞれ複数配列された
請求項2に記載の光学装置。
【請求項11】
前記液晶部は、二色性色素を含有するゲスト−ホスト(GH)型の液晶を用いて構成されている
請求項2記載の液晶調光素子。
【請求項12】
撮像素子と光学装置とを備え、
前記光学装置は、
光の入射側に配置される第1透明基板と、前記第1透明基板と対向すると共に光の出射側に配置される第2透明基板との間に収容層を有するセルと、
前記収容層の第1領域に設けられ、光透過率を所定の範囲で変更可能な透過率可変部と、
光が入射する方向から見て前記第1領域と異なる第2領域に設けられ、前記透過率可変部よりも高い光透過率を有する透過率固定部とを備えた
撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−212078(P2012−212078A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78494(P2011−78494)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】