説明

光学装置及びそれを備える撮像装置

【課題】撮像素子の被写体側における異物が付着した箇所を特定可能な光学装置を提供する。
【解決手段】本発明の光学装置は、撮像素子(18)の被写体側に透過性を有する発光部材(21)を備え、該発光部材(21)における異物が付着している箇所、又は該発光部材(21)の被写体側に配置された光学部材(17)における異物が付着している箇所に対応する発光部材(21)上の箇所を発光させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及びそれを備える撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像装置において、撮像素子の被写体側に配置された、例えば光学ローパスフィルタ(以下、OLPFという)の発光部材の表面にゴミなどの異物が付着すると、撮影画像にその異物が黒点として写り込んでしまう。したがって、このような異物は除去することが望ましい。異物を除去する装置としては、棒状の支持部材と、その支持部材の先端に配置された粘着性の弾性部材とを備えるクリーニング装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。このクリーニング装置により異物を除去する場合、レンズ鏡筒をカメラから取り外し、マウント部よりクリーニング装置をカメラ内部に挿入する。そして、先端の弾性部材をOLPFに表面に付着させ、OLPF表面に付着した異物を弾性部材側に転写させる。
【特許文献1】特開2007−52074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、OLPF表面に付着する除去対象の異物は小さく、またカメラ内部は暗いため、異物がOLPF上のどこに付着しているのかを目視で把握することは困難である。このため、上述のようなクリーニング装置を使用する場合、例えば撮影画像より見当をつけた箇所に弾性部材を付着させたり、また弾性部材を何度もOLPFに付着させて広い範囲にわたって異物除去作業を行ったりしている。しかし、いずれの場合も異物を除去できなかったり、また何度もクリーニング装置をOLPFに付着させることにより、異物をOLPFで拡散したり、OLPF等に損傷を与えたりする可能性もある。
【0004】
本発明の課題は、撮像素子の被写体側における異物が付着した箇所を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1に記載の発明は、撮像素子(18)の被写体側に透過性を有する発光部材(21)を備え、該発光部材(21)における異物が付着している箇所、又は該発光部材(21)の被写体側に配置された光学部材(17)における異物が付着している箇所に対応する発光部材(21)上の箇所を発光させることを特徴とする光学装置(1)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学装置(1)であって、前記発光部材(21)は、個々に発光制御が可能な複数の領域(21a、…、21b)に分割されていることを特徴とする光学装置(1)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学装置(1)であって、前記発光部材(21)は、前記分割された複数の領域(21a、…、21b)のうちの前記異物が付着している領域(21b)を発光可能なことを特徴とする光学装置(1)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置(1)を備えることを特徴とする撮像装置である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮像素子の被写体側における異物が付着した箇所を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸Aを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、通常の撮影位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、通常の撮影位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、通常の撮影位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0009】
図1は、本実施形態のカメラ1の分解断面図である。図示するカメラ1は、例えば、デジタル一眼レフカメラであり、カメラ本体2と、カメラ本体2に対して着脱される交換レンズ3とを備えている。カメラ本体2の前面にマウント部4が設けられ、交換レンズ3の背面に設けられたマウント部6がカメラ本体2のマウント部4に接続されることにより交換レンズ3がカメラ本体2に装着される。これらのマウント部4,6には、接点部4a、6aが設けられており、接点部4a、6aが接触することによりカメラ本体2から交換レンズ3に対して電力供給や制御信号供給がなされる。
【0010】
交換レンズ3は光軸方向に延びたレンズ鏡筒5を備えている。又、交換レンズ3は光軸が一致するように複数のレンズがレンズ鏡筒5内に配置されて構成されるレンズ系7と、レンズ系7を通過する光量の調整を行う絞り8とを備えている。
【0011】
カメラ本体2の内部には、レンズ系7を通過した光を反射するメインミラー11が配置されている。メインミラー11の上方には、焦点板12及びペンタプリズム13が設けられている。メインミラー11で反射された光束はピント板12及びペンタプリズム13を通過してカメラ本体2の背面側に設けられている接眼レンズ14に導かれる。これにより接眼レンズ14を通して被写体像を観察することができる。
【0012】
メインミラー11は、ヒンジ軸11aを備えており、ヒンジ軸11aを中心に上下方向に回転可能となっている。メインミラー11の後方には、シャッタ15が配置され、シャッタ15の後側におけるメインミラー11の透過光束の光路上には、LPF(ローパスフィルタ)17及びCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary metal oxide semiconductor)等の撮像素子18が配置されている。OLPF17及び撮像素子18の間には、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる自発光型の自発光素子21が挟まれている。
【0013】
OLPF17の前方側には、OLPF17に光を照射するLED等の検出光源16が配置されている。検出光源16はメインミラー11の回転範囲の外側に位置しており、回転駆動するメインミラー11との干渉が防止されている。検出光源16は、OLPF17に付着している異物を検出するための光源である。
【0014】
図2は、撮像素子18、自発光素子21及びOLPF17の積層構造を示し、撮像素子18、自発光素子21及びOLPF17がZプラス方向に向かってこの順序で積層されている。したがってOLPF17は撮像素子18の被写体側に位置している。又、自発光素子21も撮像素子18の被写体側に位置している。自発光素子21としては撮像素子18の被写体側に位置していればよく、このためOLPF17の前側に配置してもよい。
【0015】
自発光素子21はOLPF17と略同じ面積を有した平板状となっており、電気を供給することにより発光する。OLPF17と自発光素子21は撮像素子18の撮像部と同等以上の面積が必要である。
【0016】
図3は、自発光素子21の平面図を示し、複数の領域(分割領域)21a,…,21bに分割されている。本実施形態では、分割領域21a、…、21bは4列4行に分割されており、全体として16分割となっている。それぞれの分割領域21a、…、21bは矩形状となっている。通常用いるクリーニング装置の粘着性弾性部材の先端面が矩形状となっていることに適合させたものである。この場合、分割領域21a、…、21bはクリーニング装置の粘着性弾性部材よりも幾分小さい面積に設定するのが好ましい。なお、粘着性弾性部材の先端面が矩形状以外の形状の場合には、自発光素子21の分割領域21a、…、21bはその形状に合わせて設定するのが好ましい。
【0017】
自発光素子21は前側のOLPF17に異物が付着している場合に、その異物の付着箇所を示すものであり、異物付着箇所に対応した分割領域21a、…、21bが発光するように作動する。異物付着箇所に対応した分割領域を示すため、分割領域21a、…、21bは個々に発光するように制御されている。図3においては、ハッチングで示すように分割領域21bが発光しているが、それ以外の分割領域21aは発光しておらず、OLPF17における分割領域21b対応した部位に異物が付着していることを示している。
【0018】
自発光素子21としては、光が透過可能な透過型自発光素子が用いられる。したがって、自発光素子21を光が透過すると、その透過光は後側の撮像素子18に入射可能である。このため、撮像素子18による被写体像の撮影に支障となることがない。又、検出光源16からの光束も撮像素子18に入射するため、撮像素子18による異物付着の有無の判別が可能である。
【0019】
図4は、本実施形態を実現するためのブロック図である。操作パネル32に検出光源駆動部33、信号処理部34、内部メモリであるRAM35、ミラー駆動部36、シャッタ駆動部37、撮像素子駆動部38、自発光素子駆動部40がCPU31に接続されている。焦点検出や測光を行う撮影手段39等もCPU31に接続されている。
【0020】
操作パネル32は図示を省略するが、カメラ本体2の後側に配置されており、本実施形態の異物検出を指示する異物検出ボタンを備えている。検出光源駆動部33は、異物検出を行う際の検出光源16を制御する。信号処理部34は撮像素子18に入射した光に基づく電気信号からOLPF17に異物が付着しているか否かを検出する。RAM35は信号処理部34のデータに基づいた異物付着箇所を記録する。ミラー駆動部36は、メインミラー11の回転制御を行い、シャッタ駆動部37はシャッタ15の駆動を制御し、撮像素子駆動部38は撮像素子18の駆動を制御する。自発光素子駆動部40は自発光素子21における発光を制御する。
【0021】
図5は、異物検出のフローチャートを示す。ステップS11は異物検出モードに移行するか否かの判断ステップであり、操作パネル32で異物検出モードを選択することにより異物検出モードとなる。これにより、カメラが異物の付着を検出する(ステップS12)。
【0022】
ステップS12における異物の検出は、以下の手順で行う。交換レンズ3にレンズキャップ等を装着させることにより交換レンズ3側からの光束の入射を遮断する。又、カメラ本体2側では、ミラー駆動部36の制御によってメインミラー11を上方に回転させて焦点板12側の光路を閉じ、接眼レンズ14からカメラ本体2内に入射する光束を遮断する。又、シャッタ駆動部37の制御によりシャッタ15が開く。その後、検出光源駆動部33の制御によって検出光源16が発光し、撮像素子18を照明する。
【0023】
撮像素子18は撮像素子駆動部38によって制御されており、入射した照明光が撮像信号に変換される。この撮像信号は信号処理部34によって画像データに変換され、OLPF17に付着している異物の付着箇所を検出する(ステップS13)。異物の付着を検出したとき、その異物付着位置情報をRAM35に記録する(S14)。
【0024】
異物の付着を検出した場合には、カメラ使用者に警告を発する(ステップS15)。警告はカメラ本体2が備えるLCDに異物が付着している旨を表示する或いはブザー音を発することにより行うことができる。その後、ステップS16では異物清掃モードに移行するか否かを選択する。異物清掃モードでは、ミラー駆動部36の制御によってメインミラー11が上方に回転すると共にシャッタ駆動部37の制御によってシャッタ15が開く(ステップS17)。なお、メインミラー11がすでに上方に回転していたり、シャッタ15が既に開いている場合には、ステップS17を行うことなくステップS18に移行する。
【0025】
ステップS18では、RAM35に記録した異物付着位置情報に基づいて自発光素子駆動部40が自発光素子21を発光させる。すなわち、自発光素子駆動部40は自発光素子21における分割領域21a、…、21bの内、異物付着位置情報に対応した箇所の分割領域21bを発光させる。これによりカメラ使用者はOLPF17における異物の付着箇所を知ることができる。
【0026】
以上により異物付着箇所が判明するため、カメラ使用者は交換レンズ3をカメラ本体2から取り外して、マウント部4からクリーニング装置をカメラ本体2に挿入する。そして、発光箇所に対してクリーニング装置を接触させてOLPF17表面から異物を除去する(ステップS20)。なお、ステップS20を行うか否かはカメラ使用者が選択できるステップである。
【0027】
ステップS18に続くステップS19は、異物清掃モードを終了するか否かを判別するステップであり、操作パネル32への操作により異物操作モードが終了する。本実施形態において、クリーニング装置による上述した清掃によって異物が除去できたか否かを確認する必要がある場合、ステップS11を繰り返すことにより可能である。
【0028】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)カメラのOLPF17に異物が付着している場合、OLPF17に積層した自発光素子21の分割領域が発光してOLPF17における異物付着箇所を表示する。このため、清掃者はOLPF17の異物付着箇所を正確に知ることができる。
(2)異物付着箇所を正確に把握できるため、清掃が必要な箇所にだけクリーニング装置を接触させることができるため、異物を確実に除去できる。又、クリーニング装置をOLPF17に何度も接触させる必要がないため、OLPF17を損傷することが抑制できる。
【0029】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、自発光素子21が異物の検出に基づいて発光する構成としている。しかし、これに限らず、異物の大きさを検出し、異物の大きさに基づいて発光色や発光強度を変更するようにしてもよい。又、点滅するようにしてもよい。
(2)又、本発明では、自発光素子21以外の照明装置を用いることができる。例えば、LED等の点光源を縦横に並べたモジュールを照明装置として用いてもよい。
(3)明るく白い無地の被写体を撮影し、撮影によって得た画像(イメージダストデータ)から例えば黒い点をコンピュータが異物として解析し、コンピュータの表示装置がOLPF17の画像における異物付着箇所を点滅表示することによって特定してもよい。
(4)本実施形態においてデジタル一眼レフカメラについて説明したが、本発明はこれに限定されず、異物検出機能を有しているものであれば、ビデオカメラ、携帯電話、PCであってもよい。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態のカメラを示す分解断面図である。
【図2】(a),(b)は本発明の一実施形態のOLPF、撮像素子の積層構造を示す分解斜視図及び斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の自発光素子の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態を実施するためのブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態の作動を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1:カメラ、2:カメラ本体、11:メインミラー、17:LPF、18:撮像素子、21:自発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の被写体側に透過性を有する発光部材を備え、該発光部材における異物が付着している箇所、又は該発光部材の被写体側に配置された光学部材における異物が付着している箇所に対応する発光部材上の箇所を発光させることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置であって、
前記発光部材は、個々に発光制御が可能な複数の領域に分割されていることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置であって、
前記発光部材は、前記分割された複数の領域のうちの前記異物が付着している領域を発光可能なことを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−147864(P2009−147864A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325842(P2007−325842)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】