説明

光学装置

【課題】スペックルを低減するコンパクトな光学装置を提供することを課題とする。
【解決手段】コヒーレントな光を射出する光源(2)と光が照射される被照射面(7)との間の光路中に、光に大きな群遅延を発生させる群遅延発生手段(4)を配置して光学装置(1)を構成する。群遅延発生手段(4)は、物理的に過度に大きくなく、入射する光に含まれる波長に対して高いQ値を示すように作製される。これにより、群遅延発生手段(4)を透過することでコヒーレンスを低減し、それによって、スペックルを低減する、コンパクトな光学装置(1)を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関し、特にレーザ光源を用いた画像表示のための光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタ等、画像表示のための光学装置の光源としては、超高圧水銀ランプなどのランプ光源が用いられてきた。しかしながら、ランプ光源に対しては、さまざまな課題が指摘されている。例えば、寿命が短いためランプの交換の頻度が高く、メンテナンス作業の負担が大きいといった指摘がある。さらに、ランプ光源では、赤・緑・青の光は、ランプ光源から射出される白色光を波長で分離することにより取り出される。このため、光学装置内の光学系が複雑し、光学装置が大型化してしまう。また、光の利用効率や画像の色再現性の限界についても指摘されている。これを踏まえ、ランプ光源に代わる光源として発光ダイオード光源(LED光源)を用いる提案もなされているが、LED光源の場合には、光の利用効率が悪く、明るい画像を表示することが難しいことが課題となっている。
【0003】
このため、近年では、光学装置の光源として半導体レーザ光源等のレーザ光源の利用が提案されている。レーザ光源は、高い色再現性や高い光利用効率を実現することができる。さらに、ランプ光源と比べて寿命も長いため、メンテナンス作業の負担も軽減される。また、レーザ光源は表示する画像に応じてレーザ光を直接変調することができるため、光学装置の構成が簡素化され、光学装置の小型化が可能となる。このように、レーザ光源を用いることで、上記の課題の多くを改善することができる。
【0004】
その一方で、レーザ光源を光源として利用する場合、レーザ光のコヒーレンス(可干渉性)の高さにより表示画像中にいわゆるスペックルが生じることがある。コントラストの高い不規則な明暗の班点模様であるスペックルが生じると表示画像の画質は著しく損なわれる。このため、特許文献1や特許文献2のように、従来からスペックルを低減するための技術が数多く提案されている。
【0005】
図5は、特許文献1で開示された照明装置の構成を示す側面図である。図5に例示される照明装置では、半導体レーザ光源101から射出される照明光が厚さの異なる複数の領域からなる透明光学素子102を透過する。これにより、各領域を透過した光束の半導体レーザ光源101から被照射面104までの光路長を異ならせている。この光路長の異なる光束をレンズアレイ103で分割し、さらに、被照射面104上で重ね合わせることで、照明光のコヒーレンスを低下させることができる。
【0006】
図6は、特許文献2で開示された光学装置の構成を示す概略図である。図6に例示される光学装置は、偏光ビームスプリッタ(PBS)105と、集光レンズ106と、光ファイバ107と、集光レンズ108から構成されている。それらはループ状に並べられ、周回光路を形成している。この光学装置では、光ファイバ107内で繰り返される全反射と、周回光路を周回する回数の違いによって光路長差を生じさせ、それによって、射出光のコヒーレンスを低下させることができる。
【0007】
レーザ光で生じるスペックルは、コヒーレンスの高さが一要因となって生じるものである。このため、特許文献1及び特許文献2のように、光路長差を利用してレーザ光のコヒーレンスを低下させることで、スペックルを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−206449号公報
【特許文献2】特開2000−089160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、光路長差によりレーザ光のコヒーレンスを低下させるためには、レーザ光のコヒーレンス長程度の光路長差が必要となる。レーザ光源のコヒーレンス長は、光源の種類によりさまざまであるが、例えば、数百mmである。
【0010】
その一方で、上述した先行技術により生じる光路長差は、光学素子の物理的な大きさに依存する。より具体的には、特許文献1では、透明光学素子102の各領域の厚さの違いに依存し、特許文献2では、光ファイバ107の長さに依存する。このため、コヒーレンス長程度の大きな光路長差を得るためには、物理的に大きな光学素子が必要となり、光学装置が大型化してしまう。
以上のような実情を踏まえ、本発明は、スペックルを低減するコンパクトな光学装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、コヒーレントな光を射出する光源と、光に大きな群遅延を発生させる群遅延発生手段と、光を群遅延発生手段に導く集光手段と、を含む光学装置を提供する。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の光学装置において、集光手段は、光を群遅延発生手段に所定の角度で入射させ、群遅延発生手段は、屈折率の異なる材料を周期的に並べた構造体からなるフォトニック結晶であり、フォトニック結晶は、光に含まれる波長に対して高いQ値を示す光学装置を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の光学装置において、フォトニック結晶は、光を遮断するフォトニックバンドギャップを有し、且つ、構造上の欠陥を含まず、光に対して光絶縁体として機能する遮断部と、構造上の欠陥を含み、光に群遅延を生じさせた上で、光を透過させる導光部と、を含む光学装置を提供する。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の光学装置において、導光部は、フォトニック結晶を横断する線欠陥と、導光部内に散在する点欠陥と、を含む光学装置を提供する。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載の光学装置において、群遅延発生手段は、光を吸収し透過させない性質を有する電磁波誘起透明化素子と、電磁波誘起透明化素子にレーザ光を照射するレーザ光源と、を含み、レーザ光を電磁波誘起透明化素子に照射することにより、電磁波誘起透明化現象を生じさせる光学装置を提供する。
本発明の第6の態様は、第1の態様1乃至第5の態様のいずれか1つに記載の光学装置において、光源は、半導体レーザ光源である光学装置を提供する。
【0016】
本発明の第7の態様は、第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つに記載の光学装置において、光源と、群遅延発生手段と、集光手段は、モノリシックな構造体を構成する光学装置を提供する。
本発明の第8の態様は、第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つに記載の光学装置において、集光手段は、レンズである光学装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スペックルを低減するコンパクトな光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る光学装置の構成を例示する概略図である。
【図2】実施形態2に係る光学装置の構成を例示する概略図である。
【図3】実施形態3に係る光学装置の構成を例示する概略図である。
【図4】実施形態4に係る光学装置の構成を例示する概略図である。
【図5】従来技術の照明装置の構成を示す側面図である。
【図6】従来技術の光学装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、各実施形態について説明する前に、フォトニック結晶について概説する。
【0020】
フォトニック結晶は、屈折率の異なる複数の光学材料を周期的に並べた構造体であり、電磁波(なお、以降では、光を例に説明する。)に対してさまざまな作用を生じさせる。なお、フォトニック結晶の周期構造は、一般に光の波長程度の周期を有する。また、光学材料の1つとして空気を用いることもできる。フォトニックス結晶は、その周期構造によりフォトニックバンド構造と呼ばれる光に対するバンド構造を有し、特定の波長領域の光の伝播を遮断するフォトニックバンドギャップを有する。このようなフォトニック結晶は、フォトニックバンドギャップに対応する波長の光に対しては、光絶縁体として機能するため、光の伝播の制御に利用できる。
【0021】
フォトニック結晶による光制御の例としては、例えば、光を閉じ込めて遅延させる制御や、光の損失を抑えながら光を伝送する制御などがある。前者の場合、フォトニック結晶は光を閉じ込める光共振器として機能とし、後者の場合、フォトニック結晶は光を伝送する光導波路として機能する。このような機能は、フォトニック結晶の周期構造に、点状や線状の欠陥を設けることで実現される。
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施形態について説明する。
<実施形態1>
【0022】
図1は、本実施形態に係る光学装置の構成を例示する概略図である。図1に例示される光学装置1は、コヒーレントな光を射出する光源2と、光源2から射出された光を集光するレンズ3と、屈折率の異なる光学材料を周期的に並べた構造体からなるフォトニック結晶4と、フォトニック結晶4から射出された光を集光するレンズ5と、レンズ5を透過した光を被照射面7に照射するレンズ6とを含んで構成されている。以下では、光源2として半導体レーザ光源を用いる場合について説明する。なお、光源2は、半導体レーザ光源に限られず、コヒーレントな光を射出する光源であればよい。
まず、光源2から射出されたコヒーレントな光であるレーザ光は、レンズ3により集光され、フォトニック結晶4へ導かれる。
【0023】
本実施形態のフォトニック結晶4は、フォトニック結晶4を含む光学系の光軸の方向に伸びた導光部4aと、光軸に対して垂直な側面を除いて導光部4aを取り囲む遮断部4bと、から構成されている。導光部4aと遮断部4bは、いずれも光源2から射出されるレーザ光の伝播を遮断するフォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶である。しかし、遮断部4bには構造上の欠陥がないのに対して、導光部4aには構造上の欠陥が含まれている点が異なっている。
【0024】
導光部4aには、フォトニックバンドギャップによって生じる光絶縁体としての機能を損なう線欠陥が、フォトニック結晶4を光軸方向に横断するように形成されている。これにより、導光部4aは光絶縁体として機能せず、導光部4aに入射したレーザ光は、線欠陥を通って導光部4a内部を進行し、レンズ5まで導かれる。つまり、導光部4aは、光導波路として機能する。なお、導光部4aはレーザ光が特定の角度で入射した場合にのみ、その光導波路としての機能を発揮する。このため、レンズ3は、導光部4aが光導波路として機能する角度でレーザ光を導光部4aに入射させるように、予め設計されている。
【0025】
また、導光部4aには、光を閉じ込めて遅延させる機能を有する点欠陥も形成されている。点欠陥は、導光部4a内部に散在しているため、線欠陥と重なって存在することもある。このため、線欠陥を通るレーザ光は、点欠陥も通過することになり、その結果、フォトニック結晶4で群遅延が生じることになる。つまり、フォトニック結晶4は、群遅延発生手段として機能する。
【0026】
群遅延量は波長によって異なるため、フォトニック結晶4で生じる群遅延量は、レーザ光に含まれる波長毎に異なることになる。レーザ光源から射出されるレーザ光は、一般に高い単色性を有しているが、それでもレーザ光に含まれる波長には数nm程度の幅がある。このため、フォトニック結晶4では、この波長の違いによってレーザ光に含まれる波長毎に群遅延量に違いが生じる。
【0027】
以上から、フォトニック結晶4を透過するレーザ光は、フォトニック結晶4を透過することで生じる群遅延量の違いによって位相がばらつき、コヒーレンスが低減されることになる。
【0028】
このように、フォトニック結晶4の特性は、波長によって変化する。このため、フォトニック結晶4は、予め光源2から射出されるレーザ光に対して最適化して作製される。具体的には、フォトニック結晶4は、レーザ光に対して大きな群遅延が発生するように作製される。さらに具体的には、フォトニック結晶4は、少なくともレーザ光に含まれる波長に対して、その伝播を遮断するフォトニックバンドギャップを有するとともに、高いQ値を示す結晶構造を有している。ここで、大きな群遅延とは、レーザ光のコヒーレンス長程度、またはそれ以上の群遅延のことである。また、Q値とは、光の閉じ込めの強さを示す指標であり、高いQ値とは、レーザ光のコヒーレンス長程度、またはそれ以上の群遅延を生じさせるQ値のことである。
【0029】
その一方で、フォトニック結晶4の特性は、その構造に大きく依存し、その物理的な大きさに対する依存は小さい。このため、フォトニック結晶4は、その物理的な大きさを過度に大きくすることなく、所望の特性を実現することができる。
そして、フォトニック結晶4を透過しコヒーレンスが低減されたレーザ光は、その後、レンズ5で集光され、レンズ6によって被照射面7に照射される。
【0030】
以上、本実施形態の光学装置1では、光源2と被照射面7の間の光路中に、光源2から射出される光の波長に対して高いQ値を示すフォトニック結晶4が配置される。その上で、光源2から射出された光を、フォトニック結晶4を介して被照射面7へ照射する。これにより、被照射面7で光のコヒーレンスを低減することができる。また、光学装置1では、コヒーレンスを低減するためにフォトニック結晶4を過度に大きくする必要はない。このため、本実施形態によれば、スペックルを低減するコンパクトな光学装置を提供することができる。
【0031】
また、本実施形態では、光源2から出射された光をフォトニック結晶4に集光させる手段としてレンズを用いたが、これに限られるものではない。集光手段としては、凹面鏡や回折レンズ等を用いることもできる。
【0032】
なお、光源2、レンズ3、フォトニック結晶4、レンズ5、及びレンズ6は、同一基板上にモノリシックな構造体として構成されてもよい。これにより、さらにコンパクトに光学装置を構成することができる。また、例えば、シリコン基板上に構成する場合など、半導体プロセスが利用できる場合には、製造コストも低減できる。
<実施形態2>
【0033】
図2は、本実施形態に係る光学装置の構成を例示する概略図である。本実施形態の光学装置8は、レンズ5とレンズ6の間に、開口絞り9が備えられている点が実施形態1の光学装置1と異なっている。その他の構成は、実施形態1の光学装置1と同様である。このため、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0034】
本実施形態の光学装置8においても、光源2から射出されたレーザ光に対してフォトニック結晶4が実施形態1と同様に作用するため、スペックルを低減するコンパクトな光学装置を提供することができる。また、光学装置8では、開口絞り9を調整することで、被照射面7に照射される光の明るさを調整することもできる。
【0035】
なお、図2に例示されるように、フォトニック結晶4と被照射面7の間の光学系の構成は、任意に変更することができる。また、光源2とフォトニック結晶4の間の光学系の構成も、フォトニック結晶4に入射するレーザ光の入射角が維持される限り、変更することができる。このため、例えば、光路中にロッドインテグレータなどの光学素子を設けて、照明の均一性を向上させてもよい。
【0036】
また、光源2、レンズ3、フォトニック結晶4、レンズ5、開口絞り9、及びレンズ6は、同一基板上にモノリシックな構造体として構成されてもよい。これにより、さらにコンパクトに光学装置を構成することができる。また、例えば、シリコン基板上に構成する場合など、半導体プロセスが利用できる場合には、製造コストも低減できる。
<実施形態3>
【0037】
図3は、本実施形態に係る光学装置の構成を例示する概略図である。本実施形態の光学装置10では、光源2からレンズ5までの間の構成は、実施形態1の光学装置1と同様である。このため、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0038】
ところで、実施形態1では、被照射面7上に一度に画像全体を投影する光学装置の構成を例示している。つまり、被照射面7上にレーザ光が集光しない構成である。これに対して、本実施形態の光学装置10は、フォトニック結晶4と被照射面7の間に、フォトニック結晶4から射出されたレーザ光を被照射面7に集光させるレンズ5と、レーザ光で被照射面7を走査する走査手段11とからなるスキャン光学系を含んで構成されている。
【0039】
スキャン光学系は、走査手段11により被照射面7を2次元(つまり、縦方向と横方向)に走査することで2次元の画像を投影することができる。なお、ここでは、走査手段11が2次元に走査可能な1つ構成要素からなる場合を例示しているが、走査手段11はそれぞれ1次元に走査する2つの走査手段から構成されても良い。走査手段11としては、例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、音響光学素子などを用いることができる。
【0040】
本実施形態の光学装置10においても、光源2から射出されたレーザ光に対してフォトニック結晶4が実施形態1と同様に作用するため、スペックルを低減するコンパクトな光学装置を提供することができる。
【0041】
なお、光源2、レンズ3、フォトニック結晶4、及びレンズ5は、同一基板上にモノリシックな構造体として構成されてもよい。これにより、さらにコンパクトに光学装置を構成することができる。また、例えば、シリコン基板上に構成する場合など、半導体プロセスが利用できる場合には、製造コストも低減できる。
<実施形態4>
【0042】
図4は、本実施形態に係る光学装置の構成を例示する概略図である。本実施形態の光学装置12は、電磁波誘起透明化(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象を利用してレーザ光に群遅延を生じさせる点が、実施形態1の光学装置1と異なっている。
【0043】
具体的には、光学装置12は、フォトニック結晶4の代わりに、電磁波誘起透明化現象を生じさせるための素子13(以降、電磁波誘起透明化素子と記す。)と、EIT現象を生じさせるために電磁波誘起透明化素子13にレーザ光(以降、制御光と記す。)を照射する光源14を含んでいる。なお、電磁波誘起透明化素子13としては、例えば、希土類イオン分散結晶(Pr3+:Y2SiO5)が知られている。
【0044】
EIT現象とは、不透明な、つまり、光を吸収し透過させない性質を有する物質に一定の波長の光を照射すると、量子力学的な干渉効果によって特定の光に対して物質が透明、つまり光を透過させるようになる現象のことである。
【0045】
この現象を利用することで、光源1から射出されるレーザ光(以降、照明光と記す。)に対して不透過な電磁波誘起透明化素子13は、特定の条件に合致した制御光が照射されることにより、照明光を吸収することなく透過させることができる。このとき、電磁波誘起透明化素子13は、さまざまな光学特性が大きく変化する。例えば、屈折率が波長に対して急激に変化する。これによって、電磁波誘起透明化素子13を透過する照明光では、電磁波誘起透明化素子13内で大きな群遅延が生じることになる。また、このときに生じる群遅延量も波長毎に異なる。このため、電磁波誘起透明化素子13から射出された照明光は、電磁波誘起透明化素子13内で生じる群遅延量の違いによって位相がばらつき、コヒーレンスが低減されることになる。つまり、電磁波誘起透明化素子13及び光源14は、群遅延発生手段として機能する。
【0046】
EIT現象も、電磁波誘起透明化素子13の物理的な大きさに対する依存は小さい。このため、電磁波誘起透明化素子13の物理的な大きさを過度に大きくすることなく、所望の特性を実現することができる。
以上により、本実施形態の光学装置12においても、実施形態1と同様に、スペックルを低減するコンパクトな光学装置を提供することができる。
【0047】
なお、光源2、レンズ3、レンズ5、レンズ6、電磁波誘起透明化素子13、及び光源14は、同一基板上にモノリシックな構造体として構成されてもよい。これにより、さらにコンパクトに光学装置を構成することができる。また、例えば、シリコン基板上に構成する場合など、半導体プロセスが利用できる場合には、製造コストも低減できる。
【0048】
また、光源2と電磁波誘起透明化素子13の間や電磁波誘起透明化素子13と被照射面7の間の光学系の構成は、任意に変更することができる。例えば、電磁波誘起透明化素子13と被照射面7の間には、実施形態3に例示されるようなスキャン光学系を含んで光学系を構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、8、10、12・・・ 光学装置
2、14 ・・・ 光源
3、5、6 ・・・ レンズ
4 ・・・ フォトニック結晶
4a ・・・ 導光部
4b ・・・ 遮断部
7 ・・・ 被照射面
9 ・・・ 開口絞り
11 ・・・ 走査手段
13 ・・・ 電磁波誘起透明化素子
101 ・・・ 半導体レーザ光源
102 ・・・ 透明光学素子
103 ・・・ レンズアレイ
104 ・・・ 被照射面
105 ・・・ PBS
106、108 ・・・ 集光レンズ
107 ・・・ 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレントな光を射出する光源と、
前記光に大きな群遅延を発生させる群遅延発生手段と、
前記光を前記群遅延発生手段に導く集光手段と、を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記集光手段は、前記光を前記群遅延発生手段に所定の角度で入射させ、
前記群遅延発生手段は、屈折率の異なる材料を周期的に並べた構造体からなるフォトニック結晶であり、
前記フォトニック結晶は、前記光に含まれる波長に対して高いQ値を示すことを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置において、
前記フォトニック結晶は、
前記光を遮断するフォトニックバンドギャップを有し、且つ
構造上の欠陥を含まず、前記光に対して光絶縁体として機能する遮断部と、
構造上の欠陥を含み、前記光に群遅延を生じさせた上で、前記光を透過させる導光部と、を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学装置において、
前記導光部は、
前記フォトニック結晶を横断する線欠陥と、
前記導光部内に散在する点欠陥と、を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光学装置において、
前記群遅延発生手段は、
前記光を吸収し透過させない性質を有する電磁波誘起透明化素子と、
前記電磁波誘起透明化素子にレーザ光を照射するレーザ光源と、を含み、
前記レーザ光を前記電磁波誘起透明化素子に照射することにより、電磁波誘起透明化現象を生じさせることを特徴とする光学装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光学装置において、
前記光源は、半導体レーザ光源であることを特徴とする光学装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の光学装置において、
前記光源と、前記群遅延発生手段と、前記集光手段は、モノリシックな構造体を構成することを特徴とする光学装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の光学装置において、
前記集光手段は、レンズであることを特徴とする光学装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−2571(P2011−2571A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144374(P2009−144374)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】