説明

光学装置

【課題】撮影者が光学部材への有機物の付着状況を適切に管理することができる光学装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学装置は、光学部材と、前記光学部材の光入射面に形成された光触媒層と、前記光触媒層へ異物が付着したか否かを判定する異物判定手段と、前記光触媒層へ入射した光のエネルギー量を測定する光エネルギー測定手段と、前記光触媒層へ入射した光の蓄積時間を測定する光蓄積時間測定手段と、前記光エネルギー測定手段により測定された光のエネルギー量及び前記光蓄積時間測定手段により測定された光の蓄積時間を記憶する記憶手段と、前記光触媒層に異物が付着してから、前記光触媒層における光触媒反応量を算出する光触媒反応量算出手段と、前記光触媒反応量に関する情報を通知可能な通知手段と、前記光触媒反応量算出手段により算出された前記光触媒反応量に関する情報を、前記通知手段により通知させる制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ交換式のデジタルカメラでは、レンズを交換した際に侵入する塵埃やカメラ内の駆動部品から発生する磨耗粉(以下、「異物」という)が、撮像素子の前面に配置された光学部材の表面に付着し、撮像素子で撮影した画像に異物が写り込んでしまうという不具合が生じていた。そこで、光学部材を圧電素子により振動させて異物を除去する、いわゆるクリーニング機構を備えたカメラが製品化されている。
【0003】
しかし、光学部材には、油脂分等の有機物が異物として付着することもある。有機物は、光学部材への付着力が強いため、クリーニング機構により除去することが難しい。これを解決するため、光学部材の表面に光触媒層を形成し、この光触媒層に光源からの光を照射することにより有機物の付着力を低下させ、クリーニング機構により有機物を効率良く除去できるようにしたカメラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−122792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記カメラにおいては、内部に光源を配置するスペースが必要となる。しかし、カメラによっては、構造的に光源の配置が難しい場合もある。一方、カメラに入射した外光を光触媒層に照射することにより有機物の付着力を低下させることも考えられる。しかし、外光を利用した場合には、光触媒反応による異物の付着状況を客観的に知ることができないため、撮影者は異物の付着状況を適切に管理することが難しい。
【0006】
本発明の課題は、撮影者が光学部材への有機物の付着状況を適切に管理することができる光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、光が入射する光入射面を有する光学部材と、前記光学部材の前記光入射面に形成された光触媒層と、前記光触媒層へ異物が付着したか否かを判定する異物判定手段と、前記光触媒層へ入射した前記光のエネルギー量を測定する光エネルギー測定手段と、前記光触媒層へ入射した前記光の蓄積時間を測定する光蓄積時間測定手段と、前記光エネルギー測定手段により測定された前記光のエネルギー量及び前記光蓄積時間測定手段により測定された前記光の蓄積時間を記憶する記憶手段と、前記異物判定手段により前記光触媒層に異物が付着したと判定されてから、前記光エネルギー測定手段により測定された前記光のエネルギー量及び前記光蓄積時間測定手段により測定された前記光の蓄積時間に基づいて、前記光触媒層における光触媒反応量を算出する光触媒反応量算出手段と、前記光触媒反応量に関する情報を通知可能な通知手段と、前記光触媒反応量算出手段により算出された前記光触媒反応量に関する情報を、前記通知手段により通知させる制御手段と、を備える光学装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮影者が光学部材への有機物の付着状況を適切に管理することができる光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るカメラ1のミラーダウン時の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1におけるカメラ1のミラーアップ時の構成を示す概略断面図である。
【図3】撮像ユニット50の分解斜視図である。
【図4】カメラ本体2の電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】カメラ1を背面から見たときの斜視図である。
【図6】カメラCPU100がファインダ撮影及びライブビュー撮影等を実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】カメラCPU100が光触媒層59の光触媒反応量を算出する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】カメラCPU100がクリーニング動作を実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】液晶モニタ8における光触媒反応量の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る光学装置を、レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラに適用した実施形態について説明する。なお、以下に示す図面には、説明と理解とを容易にするために、必要に応じてXYZの直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ位置(以下、「正位置」という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。更に、正位置において被写体に向かう方向をZ方向とする。なお、図1及び図2では、光軸OAと被写体光Aとを同じ線で示す。
【0011】
図1は、本実施形態に係るカメラ1のミラーダウン時の構成を示す概略断面図である。図2は、同じカメラ1のミラーアップ時の構成を示す概略断面図である。
【0012】
カメラ1は、図1に示すように、カメラ本体2と、カメラ本体2に対して着脱自在に装着されるレンズ鏡筒3とを備えたレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラである。
【0013】
レンズ鏡筒3は、撮影レンズ4と、絞りユニット5と、焦点調節機構(不図示)と、レンズCPU(不図示)と、通信部(不図示)とを備える。撮影レンズ4は、入射した被写体光Aを屈折させてカメラ本体2に向けて出射する光学レンズである。絞りユニット5は、撮影レンズ4を通過する被写体光Aの光量を調節する装置である。絞りユニット5は、複数の絞り羽根(不図示)と、絞り羽根駆動機構(不図示)と、を備える。
【0014】
絞りユニット5は、絞り羽根駆動機構により絞り羽根を光軸OAと直交する方向に駆動することにより、入射する被写体光Aの通過する開口の面積を変化させ、被写体光Aの光量を調整する。焦点調節機構は、撮影レンズ4の一部(フォーカスレンズ)を光軸OAの方向に移動させることにより、撮影レンズ4の焦点距離を変化させ、焦点位置を調節する。レンズCPUは、通信部を介してカメラ本体2のカメラCPU(不図示)との間でデータを送受信する機能を有する。レンズCPUは、カメラCPUの指示に従って、上述した焦点調節機構及び絞り羽根駆動機構の動作を制御する。
【0015】
カメラ本体2は、ミラーユニット10、ファインダ光学部20、測光部30、シャッタユニット40、及び撮像ユニット50を備える。また、カメラ本体2は、測距用ミラー6、測距センサ7、及び液晶モニタ8を備える。
【0016】
ミラーユニット10は、メインミラー11と、サブミラー12と、を備える。また、ミラーユニット10は、メインミラー11及びサブミラー12を動作させるミラー駆動部(不図示)を備える。メインミラー11及びサブミラー12は、撮影レンズ4から入射した被写体光Aの光路上に設けられている。ミラーユニット10は、ファインダ光学部20、又はシャッタユニット40及び撮像ユニット50に被写体光Aを入射させる。
【0017】
メインミラー11は、被写体光Aをファインダ光学部20に反射させる反射ミラーである。メインミラー11の中央部には、半透過ミラー(不図示)が形成されている。メインミラー11は、被写体光Aの一部を半透過ミラーで透過させ、被写体光Aをサブミラー12に導く。また、メインミラー11は、上述したミラー駆動部により、図1に示す観察位置(ミラーダウン)と、図2に示す退避位置(ミラーアップ)との間で回動する。
【0018】
サブミラー12は、メインミラー11を透過した被写体光Aの一部を、測距用ミラー6へ導く。測距用ミラー6へ導かれた被写体光Aは、測距センサ7へ入射する。サブミラー12は、メインミラー11に対して回動可能に取り付けられている。サブミラー12は、メインミラー11がミラーアップしたときには、メインミラー11に折り畳まれた状態となる。また、サブミラー12は、メインミラー11がミラーダウンしたときには、メインミラー11の裏側で起立した状態となる。
【0019】
測距センサ7は、測距用ミラー6と対向する位置に配置されている。測距センサ7は、撮影画面内に設定された測距エリア(不図示)において、位相差AF(オートフォーカス)により被写体像のデフォーカス量を検出する。カメラCPU100(後述)は、測距センサ7で検出されたデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズの駆動量を算出する。
【0020】
メインミラー11及びサブミラー12は、ファインダビューでは、図1に示す観察位置に固定される。そして、被写体光Aをファインダ光学部20及び測距センサ7へそれぞれ反射する。このファインダ光学部20への反射により、撮影者は、被写体像をファインダ24で観察することができる。なお、ファインダビューとは、撮影者が被写体像をファインダ24で観察することをいう。以下、撮影者が被写体像をファインダ24で観察しながら撮影する形態を「ファインダ撮影」という。
【0021】
また、ライブビュー撮影(及び動画撮影;以下、適宜に「ライブビュー撮影等」という)への切り替えが行われたとき、又は撮影のためにレリーズボタン(不図示)が全押し操作されると、図2に示すように、メインミラー11は上方に回動して光路Aから退避する。同時にサブミラー12も回動して、メインミラー11に重なるように折り畳まれる。このとき、後述するシャッタユニット40のシャッタ羽根(不図示)も走行を開始し、シャッタユニット40が開口する。これにより、被写体光Aが撮像ユニット50に入射されてライブビュー撮影又は記録のための撮影が可能となる。このように、メインミラー11を観察位置又は退避位置に回動させることにより、ファインダビューとライブビューとの切り替えが行われる。なお、ライブビュー撮影とは、被写体像を液晶モニタ8で観察しながら撮影する形態をいう。
【0022】
液晶モニタ8は、カメラ本体2の背面に設けられた表示装置である。液晶モニタ8は、主に、撮像ユニット50で撮影された被写体像(再生画像、ライブビュー画像)や操作に関連した情報等を表示する。また、液晶モニタ8は、異物の位置における光触媒反応量を表示する。
【0023】
ファインダ光学部20は、ファインダスクリーン21と、ペンタプリズム22と、接眼レンズ23と、ファインダ24と、を備える。ファインダスクリーン21は、ミラーユニット10の上方に配置されている。ミラーユニット10で反射された被写体光Aは、ファインダスクリーン21に投影されて被写体像が形成される。ファインダスクリーン21に結像した被写体像の光は、ペンタプリズム22によって接眼レンズ23に導かれ、更にファインダ24へ導かれる。これにより、撮影者はファインダ24を覗くことにより被写体像を観察することができる。一方、ファインダスクリーン21に投影された被写体像は、ペンタプリズム22を介して測光部30へも導かれる。
【0024】
測光部30は、プリズムやレンズ等からなる測光光学系31と、測光センサ32と、を備える。測光光学系31は、ペンタプリズム22からの分岐光を測光センサ32に入射させる。測光センサ32は、入射した分岐光に基づいて被写体光の光量を測定する。測光センサ32で得られた被写体光の光量は、メモリ103(後述)に記憶される。
【0025】
シャッタユニット40は、複数のシャッタ羽根(不図示)を備える。シャッタユニット40には、メインミラー11がミラーアップして撮影可能な状態となったときに、被写体光Aが入射される。シャッタユニット40は、レリーズボタンの全押し操作等による撮影指示に応じてシャッタ羽根を開閉(走行)させ、撮像ユニット50に被写体光Aを入射する。このように、撮像ユニット50へ入射する被写体光Aの入射時間は、シャッタユニット40により制御される。
【0026】
シャッタユニット40におけるシャッタ羽根の開閉時間、すなわちシャッタスピード値は、カメラCPU100により制御される。ライブビュー撮影等では、すべてのシャッタ羽根が収納され、シャッタの開口部(不図示)が開放された状態となる。
【0027】
撮像ユニット50は、撮影レンズ4により形成された被写体像を撮像する。撮像ユニット50は、撮像した被写体像を電気的な画像信号に変換し、画像処理部101(後述)へ出力する。
【0028】
次に、撮像ユニット50の構成について説明する。図3は、撮像ユニット50の分解斜視図である。撮像ユニット50は、ブラケット51と、撮像素子52と、光学的ローパスフィルタ(Optical Low Pass Filter;以下「光学LPF」という)53と、振動素子55(55X,55Y)と、PC(フレキシブルプリント基板)56と、固定板57と、押えモルト58と、を備える。光学LPF53と撮像素子52とは、被写体側からこの順で配置されている。
【0029】
ブラケット51は、撮像ユニット50のベースとなる部材である。ブラケット51は、板状に形成されている。
【0030】
撮像素子52は、撮影レンズ4を透過して表面に結像した被写体像を撮像して電気信号に変換する光電変換素子である。撮像素子52は、例えば、フォトダイオード及びCCD(Charge−Coupled Device)等で構成される。撮像素子52は、ブラケット51に保持されている。そして、撮像素子52は、ブラケット51を介して電気基板(不図示)に実装されている。撮像ユニット50から出力された画像信号は、上記電気基板を介して画像処理部101(後述)へ送られる。
【0031】
光学LPF53は、撮影レンズ4を透過した被写体光から高周波成分等を取り除く光学フィルタである。光学LPF53は、撮像素子52の前面に設けられた光学部材である。光学LPF53は、板状に形成され、枠体状に形成されたマスクゴム54を介して、ブラケット51に保持される。
【0032】
また、光学LPF53は、被写体側の最前面に、被写体光が入射する光入射面(符号省略)を有する。光入射面は、撮影画面とほぼ同じ大きさの光透過面である。光入射面(被写体側)には、透明な光触媒層59がコーティングされている。光触媒層59としては、例えば、酸化チタンを用いることができる。光触媒層59は、その表面に有機物(異物)が付着した場合に、所定量の光が照射されると、光触媒層59と有機物との界面に光触媒反応が起こり、有機物の付着力を低下させる。
【0033】
撮像ユニット50は、振動素子55として、一対の振動素子55Xと、同じく一対の振動素子55Yと、を備える。図3に示すように、振動素子55X及び振動素子55Yは、光学LPF53の直交する二辺に配置されている。振動素子55Xは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)により長板状に形成された振動子である。振動素子55Xは、光学LPF53の被写体側表面のy方向の両縁部に、光学LPF53の被写体側表面に当接した状態で、長手方向がx方向になるように配置される。
【0034】
振動素子55Xは、鋸歯状の波形の駆動電圧が連続的に印加されることにより、繰り返し伸張して振動する。振動素子55Xは、例えば、60[kHz]〜100[kHz]程度の周波数により振動して、光学LPF53を振動させる。
【0035】
振動素子55Yは、振動素子55Xと同じ振動子である。振動素子55Yは、光学LPF53の被写体側表面のx方向の両縁部に、長手方向がy方向になるように配置される。振動素子55Yは、y方向に振動を発生し、光学LPF53を振動させる。
【0036】
このように、振動素子55X,55Yに駆動電圧を印加することにより、光学LPF53を振動させて、光学LPF53の表面(光触媒層59)に付着した異物を除去することができる。以下、振動素子55X,55Yによる異物の除去を「クリーニング動作」という。
【0037】
FPC26は、振動素子駆動回路106(図4参照)から振動素子55X,55Yへと駆動電圧を伝達する電気基板である。FPC26と振動素子55X,55Yとは、接着テープ56aにより接着される。
【0038】
固定板57は、FPC56、振動素子55X,55Y等の部品をブラケット51に固定するための部材である。これらの部品は、弾力を有する押さえモルト58により押さえ込まれ、ブラケット51にネジ止めされる。
【0039】
なお、振動素子55による振動は、光学LPF53からマスクゴム54にも伝わるが、マスクゴム54の振動は、内部のゴム部材により吸収されて減衰する。このため、振動素子55の振動は、撮像素子52やブラケット51等の外部の支持部材と共振することはない。
【0040】
次に、カメラ本体2の電気的な構成について説明する。図4は、カメラ本体2の電気的な構成を示すブロック図である。図4では、図1〜図3と同等部分を同一符号で示している。ここでは、図1〜図3に示した部分の説明を省略する。
【0041】
表示パネル9は、カメラ本体2の上面に設けられた表示装置である。表示パネル9は、主に絞り値、シャッタスピード値、撮影モード、設定感度等の撮影条件に関する情報を表示する。
【0042】
画像処理部101は、撮像ユニット50から出力された画像信号に対し、ノイズ除去、A/D変換、色補正処理、サイズ変更、符号化等の、アナログ及びデジタルの処理を行い、被写体像の画像データを作成する。この画像データは、メモリ103に一時的に記憶される。
【0043】
通信部102は、レンズ鏡筒3の通信部(不図示)との間で、データや信号の送受信を行う回路である。
【0044】
メモリ103は、EEPROM、ROM、DRAM等(不図示)の記憶媒体により構成される。EEPROM及びROMは、カメラ1の電源がオフしても記憶した情報を保持する不揮発性メモリである。EEPROMには、撮影者により設定された各種の情報(例えば、光触媒反応量を表示する設定の有効/無効、自動クリーニング動作の有効/無効等)や、光学LPF53に付着した異物に関する情報等が記憶される。これらの情報は、それぞれ割り当てられたエリアに記憶される。
【0045】
ここで、異物に関する情報とは、異物の位置データ、その異物が付着してから光触媒層59に照射された光のエネルギー量、同じく異物が付着してから光触媒層59に照射された光の蓄積時間、及び光触媒反応量である。これらの情報は、検出された異物毎にテーブルデータとして記憶される。なお、異物に関する情報としては、少なくとも異物の位置データと、その異物の光触媒反応量(積算値)があればよい。
【0046】
ROMには、カメラ1の動作や制御に必要なプログラムのほか、このプログラムの実行に必要な初期値や設定値等が記憶される。DRAMは、カメラ1の電源がオフしたときに、記憶した情報が消去される揮発性メモリである。DRAMには、画像処理部101から出力された画像データのほか、カメラCPU100や画像処理部101等が処理を行う際に必要なデータが一時的に記憶される。
【0047】
メモリカードI/F(インターフェース)部104は、メモリ103のDRAMに記憶されている画像データをメモリカード70に記録する機能を有する。また、メモリカードI/F部104は、メモリカード70に記録されている画像データを読み出す機能を有する。メモリカードI/部104のメモリカードスロット(不図示)には、外部の記録媒体であるメモリカード70が着脱自在に装着される。
【0048】
操作部60は、撮影者による操作入力を取得する操作入力手段である。操作部60は、ダイアル、ボタン等の部材で構成される。図4では、これら部材を包括的に操作部60として表している。
【0049】
ここで、カメラ1の外観と共に、操作部60の具体例について説明する。図5は、カメラ1を背面から見たときの斜視図である。カメラ本体2の上面には、表示パネル9、レリーズボタン61、撮影モードダイアル62が配置されている。また、カメラ1を背面から見たときに、カメラ本体2の右側にはユーザが撮影時にカメラ1を保持する際に使用するグリップGが形成されている。
【0050】
レリーズボタン61は、撮影者がカメラCPU100に撮影開始を指示するボタンである。本実施形態では、撮影者がレリーズボタン61を半押し操作すると、焦点調節と露出制御が行われる。また、撮影者がレリーズボタン61を全押し操作すると、ミラーユニット10やシャッタユニット40等が動作して、撮像素子52により撮像が行われる。撮影モードダイアル62は、撮影者がカメラCPU100に撮影モードを指示するダイアルである。
【0051】
一方、カメラ本体2の背面側であって、グリップGの上部には、メインダイアル63が配置されている。また、カメラ本体2の前面側であって、グリップGの上部には、サブダイアル64が配置されている。メインダイアル63及びサブダイアル64は、主に絞り値、シャッタスピード値、露出補正値等を入力するほか、他のボタンとの組み合わせにより各種機能を設定するダイアルである。
【0052】
カメラ本体2の背面には液晶モニタ8が配置されている。この液晶モニタ8の上部には、撮影者が接眼状態で被写体像を観察するファインダ24が配置されている。ファインダ24の右側には、ライブビューボタン65が配置されている。撮影者は、ライブビューボタン65を操作することにより、ファインダ撮影とライブビュー撮影等とを切り替えることができる。また、液晶モニタ8の左側には、再生ボタン66が配置されている。撮影者は、再生ボタン66を操作することにより、ファインダビューから再生モードへ切り替えることができる。
【0053】
なお、撮影者がライブビュー中にレリーズボタン61を全押し操作すると、ライブビュー撮影(静止画撮影)となる。また、撮影者がライブビュー中にOKボタン69(後述)を操作すると、動画撮影が開始される。
【0054】
また、液晶モニタ8の右側にはセレクタダイアル67が配置されている。セレクタダイアル67は、上下左右の4方向と中央に図示しない電気接点を持つダイアル形のスイッチである。撮影者が上下左右に刻印されている矢印マーク68を指で押すと、その押された矢印マーク68の方向が選択方向として入力される。また、中央に配置されたOKボタン69を操作すると、その時点での選択内容で決定したことが入力される。このセレクタダイアル67は、主に液晶モニタ8に表示された撮影条件等の変更操作や、メニュー項目、撮影済み画像の変更操作等に用いられる。
【0055】
その他、カメラ本体2には、操作部60として、カメラ1の電源をON、OFFする電源スイッチ(不図示)等が配置されている。
【0056】
再び図4に戻って説明する。シーケンス制御部105は、ミラーユニット10及びシャッタユニット40の動作タイミングを制御する回路である。シーケンス制御部105は、カメラCPU100からの動作指示に従って、ミラーユニット10及びシャッタユニット40に駆動信号を出力する。
【0057】
振動素子駆動回路106は、振動素子55X,55Yの動作を制御する回路である。振動素子駆動回路106は、カメラCPU100からの動作指示に従って、振動素子55X,55Yに駆動電圧を出力する。
【0058】
カメラCPU100は、カメラ1の全体を統括的に制御する回路であり、マイクロプロセッサにより構成されている。
【0059】
カメラCPU100は、ファインダ撮影において、レリーズボタン61が半押し操作されると、測距センサ7で検出された被写体像のデフォーカス量に基づいてレンズ駆動量を演算する。カメラCPU100は、演算したレンズ駆動量に関する情報を、レンズ鏡筒3のレンズCPU(不図示)へ送信する。これにより、レンズ鏡筒3では、レンズCPUに制御された焦点調節機構が撮影レンズ4のフォーカスレンズを移動させて焦点調節を行う。
【0060】
同時に、カメラCPU100は、測光センサ32による被写体光の光量や、レンズ鏡筒3のレンズ種類、開放F値、焦点距離等のレンズ情報のほか、設定された撮影モード、撮影感度情報等に基づいて適正な露出値を演算する。そして、カメラCPU100は、演算した露出値に応じた絞り値及びシャッタスピード値を設定すると共に、設定した絞り値及びシャッタスピード値を表示パネル9や液晶モニタ8に表示させる。なお、絞り値及びシャッタスピード値は、撮影者により手動で設定されたものでもよい。
【0061】
また、カメラCPU100は、レリーズボタン61が全押し操作されると、シーケンス制御部105を介してミラーユニット10を制御し、メインミラー11及びサブミラー12を観察位置から退避位置まで回動させる(ミラーアップ)。同時に、カメラCPU100は、レンズ鏡筒3のレンズCPU(不図示)に対し、設定した絞り値に関する信号を送信して、絞り羽根駆動機構により絞り羽根を所定位置まで駆動させる。また、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してシャッタユニット40を制御し、撮像素子52を遮光しているシャッタ羽根(不図示)を、設定したシャッタスピード値により駆動する。これにより、被写体像が撮像素子52で撮影される。そして、シャッタ羽根が撮影画面をすべて閉じることで撮影が終了する。
【0062】
カメラCPU100は、撮影が終了すると、シーケンス制御部105を介してミラーユニット10を制御し、メインミラー11及びサブミラー12を退避位置から観察位置まで回動させる(ミラーダウン)。同時に、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してシャッタユニット40を制御し、シャッタチャージを行う。更に、カメラCPU100は、レンズ鏡筒3のレンズCPU(不図示)に絞り開放の信号を送信して、絞り羽根駆動機構により絞り羽根を開放位置まで駆動させる。
【0063】
また、カメラCPU100は、光学LPF53の光触媒層59へ異物が付着したか否かを判定する。具体的には、カメラCPU100は、撮像ユニット50で撮像された画像をパターン認識の手法により解析して、撮影画面内に異物が存在するか否かを判定する。カメラCPU100は、光触媒層59に異物が存在する場合、すなわち光学LPF53の表面に異物が付着している場合は、その異物の位置を特定すると共に、その位置データをメモリ103に記憶する。なお、本実施形態では、主に有機物からなる異物の除去について説明する。
【0064】
カメラCPU100は、光触媒層59へ異物が付着したと判定してから、測光センサ32で検出された被写体光の光量と、その被写体光の実際の入射時間(以下、適宜に「蓄積時間」という)とを、メモリ103に記憶する。カメラCPU100は、被写体光の光量及び蓄積時間を、ファインダ撮影又はライブビュー撮影等により被写体光が光学LPF53に入射するたびに記憶する。このとき、被写体光の光量及び蓄積時間は、異物に関する情報として、異物毎に対応付けて記憶される。
【0065】
カメラCPU100は、光触媒層59へ異物が付着したと判定してから、測光センサ32で検出された被写体光の光量と、その被写体光の蓄積時間とに基づいて、光触媒層59における光触媒反応量を算出する。
【0066】
光触媒反応量とは、光触媒反応の進行度合いを示す値である。光触媒反応量は、下記の式(1)により演算することができる。
光触媒反応量[eV]=
単位時間当たりの光のエネルギー量[eV/s]×光の蓄積時間[s]・・(1)
【0067】
ファインダ撮影において、カメラCPU100は、光のエネルギー量を、測光センサ32で測光された被写体光の光量と、撮影時に設定された絞り値とから算出する。撮影前に測光センサ32で測光された被写体光の光量は、絞り開放の状態で測光した値となる。撮影時に光触媒層59に照射される被写体光の光量は、絞り羽根により通過する開口の面積が調節される。このため、ファインダ撮影においては、測光された被写体光の光量と、撮影時に設定された絞り値とに基づいて光のエネルギー量を算出する。また、光の蓄積時間は、シャッタユニット40に設定されたシャッタスピード値である。なお、光触媒反応量の単位は、[J](ジュール)で表すこともできる。1[eV]=1.602×E−19[J]となる。
【0068】
一方、ライブビュー撮影等において、カメラCPU100は、被写体光の光量を、撮像ユニット50(撮像素子52)により撮像され、画像処理部101から出力された被写体像の画像データに基づいて算出する。そして、カメラCPU100は、算出した被写体光の光量に基づいて、単位時間当たりの光のエネルギー量を算出する。また、光の蓄積時間は、シャッタユニット40におけるシャッタ羽根の開放時間(撮影時間)となる。なお、光の蓄積時間の単位は、[s](秒)だけでなく、[m](分)、[h](時)で表すこともできる。
【0069】
カメラCPU100は、上記式(1)に基づいて演算した光触媒反応量を、特定した異物に対応付けてメモリ103に記憶する。
【0070】
カメラCPU100は、異物の光触媒反応量を表示するように設定されている場合には、液晶モニタ8(又は表示パネル9)に、その時点での異物の光触媒反応量を表示する。また、カメラCPU100は、特定した異物毎に光触媒反応量が設定値に達したか否かを判定する。そして、光触媒反応量が設定値に達したと判定した場合には、振動素子駆動回路106を介して振動素子55X,55Yを駆動し、光学LPF53を振動させる。なお、振動素子55X,55Yの駆動は、付着したそれぞれの異物毎に実施される。
【0071】
なお、カメラCPU100の制御については、図6〜図8のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0072】
次に、上記のように構成されたカメラ1の動作について説明する。図6は、カメラCPU100がファインダ撮影及びライブビュー撮影等を実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。図7は、カメラCPU100が光触媒層59の光触媒反応量を算出する場合の処理手順を示すフローチャートである。図8は、カメラCPU100がクリーニング動作を実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0073】
まず、カメラCPU100がファインダ撮影及びライブビュー撮影等を実施する場合の処理手順を図6のフローチャートを参照しながら説明する。このフローチャートの処理は、カメラ本体2の電源がオンし、レリーズボタン61が半押し操作されることでスタートする。
【0074】
ステップS101において、カメラCPU100は、撮影の形態がファインダ撮影かライブビュー撮影かを判定する。カメラCPU100は、ステップS101の判定がファインダ撮影であれば、ステップS102へ移行する。一方、カメラCPU100は、ステップS101の判定がライブビュー撮影であれば、ステップS119へ移行する。撮影の形態がファインダ撮影かライブビュー撮影かは、撮影者の操作部60に対する操作により判定することができる。
【0075】
ステップS102において、カメラCPU100は、測光センサ32で測光された被写体光の光量等に基づいて、適正な露出値を演算する。更に、カメラCPU100は、演算した露出値に応じた絞り値及びシャッタスピード値を設定する(測光処理)。
【0076】
ステップS103において、カメラCPU100は、測距センサ7で検出された被写体像のデフォーカス量に基づいて、レンズ駆動量を演算する(測距処理)。
【0077】
ステップS104において、カメラCPU100は、演算したレンズ駆動量に関する情報をレンズ鏡筒3のレンズCPUへ送信して、撮影レンズ4の焦点調節を行う。
【0078】
ステップS105において、カメラCPU100は、レリーズボタン61の全押し操作を検出すると、ステップS106へ移行する。
【0079】
ステップS106において、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してミラーユニット10を制御し、メインミラー11及びサブミラー12を観察位置から退避位置まで回動させる(ミラーアップ)。同時に、カメラCPU100は、レンズ鏡筒3のレンズCPUに対し、ステップS102で設定した絞り値に関する信号を送信して、絞り羽根駆動機構により絞り羽根を所定位置まで駆動させる(絞り制御)。
【0080】
ステップS107において、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してシャッタユニット40を制御し、ステップS102で設定したシャッタスピード値によりシャッタ羽根の走行を開始する。
【0081】
ステップS108において、カメラCPU100は、被写体像を撮像ユニット50(撮像素子52)で撮像する。また、カメラCPU100は、撮像した被写体像の画像データをメモリ103に一時的に記憶する。
【0082】
ステップS109において、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してシャッタユニット40を制御し、シャッタ羽根の走行を停止する。
【0083】
ステップS110において、カメラCPU100は、メモリ103に異物に関する情報が記憶されているか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS110の判定がYESであれば、ステップS111へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS110の判定がNOであれば、ステップS111をスキップしてステップS112へ移行する。
【0084】
ステップS111において、カメラCPU100は、ステップS102で測定した被写体光の光量と、絞り値及びシャッタスピード値とをメモリ103に記憶する。
【0085】
ステップS112において、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してミラーユニット10を制御し、メインミラー11及びサブミラー12を退避位置から観察位置まで回動させる(ミラーダウン)。同時に、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してシャッタユニット40を制御し、シャッタチャージを行う。更に、カメラCPU100は、レンズ鏡筒3のレンズCPUに対し、絞り開放の信号を送信して、絞り羽根駆動機構により絞り羽根を開放位置まで駆動させる(絞り制御)。
【0086】
ステップS113において、カメラCPU100は、ステップS108の撮像により得られた画像データをメモリカードI/F部104を介してメモリカード70へ記録する(記録処理)。
【0087】
ステップS114において、カメラCPU100は、ステップS108の撮像により得られた画像データをパターン認識の手法により解析する(画像解析)。
【0088】
ステップS115において、カメラCPU100は、撮影画面内に異物が存在するか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS115の判定がYESであれば、ステップS116へ移行し、後述する光触媒反応量算出処理(サブルーチン)を実行する。
【0089】
また、カメラCPU100は、ステップS115の判定がNOであれば、ステップS117へ移行し、メモリ103に記憶している異物に関する情報をリセットする。なお、メモリ103には、検出された異物毎に異物に関する情報が記憶されている。カメラCPU100は、ステップS115で撮影画面内に存在しなくなった異物について、メモリ103に記憶している異物に関する情報をリセットする。
【0090】
ステップS118は、カメラCPU100は、撮影モードが継続しているか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS118の判定がYESであれば、ステップS101へリターンする。また、カメラCPU100は、ステップS118の判定がNOであれば、本フローチャートの処理を終了する。
【0091】
次に、ステップS101の判定がライブビュー撮影であった場合の処理手順について説明する。
【0092】
ステップS101(判定NO)から移行したステップS119において、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してミラーユニット10を制御し、メインミラー11及びサブミラー12を観察位置から退避位置まで回動させる(ミラーアップ)。
【0093】
ステップS120において、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してシャッタユニット40を制御し、シャッタを開放状態とする。
【0094】
ステップS121において、カメラCPU100は、画像処理部101から出力された被写体像の画像データに基づいて、液晶モニタ8にライブビュー画像を表示する。
【0095】
ステップS122において、カメラCPU100は、画像処理部101から出力された被写体像の画像データに基づいて、被写体光の光量を測定する(測光処理)。
【0096】
ステップS123において、カメラCPU100は、画像処理部101から出力された被写体像の画像データに基づいて、撮影レンズ4の焦点調節を行う。
【0097】
ステップS124において、カメラCPU100は、レリーズボタン61の全押し操作を検出すると、ステップS125へ移行する。
【0098】
ステップS125において、カメラCPU100は、被写体像を撮像ユニット50(撮像素子52)で撮像する。このとき、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してミラーユニット10及びシャッタユニット40を制御し、ファインダ撮影時と同様に動作させる。
【0099】
ステップS126において、カメラCPU100は、メモリ103に異物に関する情報があるか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS126の判定がYESであれば、ステップS127へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS126の判定がNOであれば、ステップS127をスキップしてステップS128へ移行する。
【0100】
ステップS127において、カメラCPU127は、ステップS122で測定した被写体光の光量と、撮影時間とをメモリ103に記憶する。
【0101】
ステップS128において、カメラCPU100は、シーケンス制御部105を介してミラーユニット10を制御し、メインミラー11及びサブミラー12を退避位置から観察位置まで回動させる(ミラーダウン)。続いて、カメラCPU100は、ステップS113へ移行する。
【0102】
次に、ステップS116における光触媒反応算出処理を、図7を参照しながら説明する。図7は、カメラCPU100が光触媒層における光触媒反応量を算出する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0103】
ステップS201において、カメラCPU100は、ステップS114における画像解析の結果から、撮影画面内における異物の位置を特定する。
【0104】
ステップS202において、カメラCPU100は、ファインダ撮影の場合には、測光センサ32で測光された被写体光の光量と、絞り値及びシャッタスピード値とに基づいて、特定した異物の位置における光触媒層59の光触媒反応量を演算する。また、カメラCPU100は、ライブビュー撮影の場合には、画像データに基づいて算出した被写体光の光量と、撮影時間とに基づいて、特定した異物の位置における光触媒層59の光触媒反応量を演算する。光触媒反応量は、先に説明した式(1)を用いて演算する。
【0105】
ステップS203において、カメラCPU100は、撮影画面内の同じ位置に異物が特定されているか否かを判定する。撮影画面内の同じ位置に異物が特定されている場合には、ステップS203の判定はYESとなる。また、撮影画面内の同じ位置に異物が特定されていない場合、すなわち、新たな異物が特定された場合には、ステップS203の判定はNOとなる。カメラCPU100は、ステップS203の判定がYESであれば、ステップS204へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS203の判定がNOであれば、ステップS205へ移行する。
【0106】
ステップS204において、カメラCPU100は、今回演算した光触媒反応量を、すでにメモリ103に記憶されている前回演算した光触媒反応量に加算する。そして、カメラCPU100は、加算した光触媒反応量を、その異物に関する情報としてメモリ103に記憶する。
【0107】
一方、ステップS203(判定NO)から移行したステップS205において、カメラCPU100は、今回演算した光触媒反応量を、新たな異物に関する情報としてメモリ103に記憶する。
【0108】
ステップS206において、カメラCPU100は、撮影画面内のすべての異物の位置における光触媒層59の光触媒反応量を演算したか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS206の判定がYESであれば、図6に示すメインフローにリターンする。一方、カメラCPU100は、ステップS206の判定がNOであれば、ステップS202へリターンする。このように、カメラCPU100は、撮影画面内に異物が複数存在する場合には、それぞれの異物について、ステップS201〜ステップS205の処理を実施する。
【0109】
次に、カメラCPU100が光学LPF53のクリーニング動作を実施する場合の処理手順を図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0110】
ステップS301において、カメラCPU100は、カメラ本体2の電源がONになったことを検出すると、ステップS302へ移行する。
【0111】
ステップS302において、カメラCPU100は、メモリ103を参照して、光触媒反応量を表示する設定が有効か否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS302の判定でYESであれば、ステップS303へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS302の判定でNOであれば、ステップS305へ移行する。
【0112】
ステップS303において、カメラCPU100は、メモリ103に、異物に関する情報が記憶されているか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS303の判定でYESであれば、ステップS304へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS303の判定でNOであれば、ステップS305へ移行する。
【0113】
ステップS304において、カメラCPU100は、メモリ103に記憶されている異物に関する情報を参照して、その異物の位置における光触媒反応量を液晶モニタ8に表示する。
【0114】
ここで、異物の位置における光触媒反応量の表示形態について説明する。図9は、液晶モニタ8における光触媒反応量の表示例を示す説明図である。液晶モニタ8の表示画面には、光学LPF53の光入射面と同じ比率の表示枠80が表示されている。表示枠80は、撮影者がカメラ1を正位置に保持して、横長の画像を撮影した場合の画面と略一致する。
【0115】
表示枠80は、複数の領域81に分割されている。光学LPF53の表面(光触媒層59)に付着した異物の位置は、その異物の付着している領域で示されている。図9に示す例では、領域81a、81b、81cに異物が付着している。異物の付着している領域81a〜81cは、光触媒反応量の大きさに応じた模様が表示されている。一方、異物の付着していない領域は、無地で表示されている。本実施形態では、光触媒反応量の大きさを3段階で示している。領域81aは、光触媒反応量が最も小さいレベル1を示す。領域81bは、光触媒反応量が最も中程度のレベル2を示す。領域81cは、光触媒反応量が最も大きいレベル3を示す。
【0116】
このうち、レベル3は、光の照射により光触媒層59の光触媒反応が進行し、有機物(異物)の付着力が最も低下していることを示す。異物の位置における光触媒反応量がレベル3であれば、クリーニング動作を実施することにより異物を除去できる可能性が高い。このため、撮影者は、液晶モニタ8に表示された表示枠80を参照することにより、異物が付着している位置、及びその異物がクリーニング動作を実施することにより除去可能かどうかを判断することができる。
【0117】
なお、表示枠80における光触媒反応量は、メモリ103に記憶されている異物に関する情報に基づいて表示される。このため、光学LPF53の表面から異物が除去され、メモリ103に記憶している異物に関する情報がリセットされると、その領域は無地で表示される。また、光学LPF53の表面に異物が付着すると、該当する領域が対応するレベルの模様で表示される。
【0118】
また、光触媒層59に付着しているすべての異物について光触媒反応量を表示する必要はない。少なくともレベル3の異物が付着している領域のみを表示すれば、撮影者はクリーニング動作を実施すべきか否かを判断することができる。
【0119】
再び図8に戻って説明する。ステップS305において、カメラCPU100は、自動クリーニング動作の設定として、カメラ本体2の電源がONした時にクリーニング動作を実行する設定が有効か否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS305の判定でYESであれば、ステップS306へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS305の判定でNOであれば、ステップS308へ移行する。
【0120】
ステップS306において、カメラCPU100は、対象となる異物の位置における光触媒反応量が設定値(レベル3)に達しているか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS306の判定でYESであれば、ステップS307へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS306の判定でNOであれば、ステップS310へ移行する。
【0121】
ステップS307において、カメラCPU100は、クリーニング動作を実行する。すなわち、カメラCPU100は、振動素子駆動回路106を介して振動素子55X,55Yを駆動し、光学LPF53を振動させる。
【0122】
一方、ステップS305(判定NO)から移行したステップS308において、カメラCPU100は、手動クリーニング動作の設定が有効か否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS308の判定でYESであれば、ステップS309へ移行する。また、カメラCPU100は、ステップS308の判定でNOであれば、ステップS310へ移行する。
【0123】
ステップS309において、カメラCPU100は、撮影者による手動クリーニング動作開始の指示を検出すると、ステップS307へ移行し、クリーニング動作を実行する。
【0124】
ステップS310において、カメラCPU100は、カメラ本体2の電源がOFFか否かを判定する。カメラCPU100は、ステップS310の判定でYESであれば、本フローチャートの処理を終了する。また、カメラCPU100は、ステップS310の判定でNOであれば、ステップS302へリターンする。
【0125】
上述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)カメラCPU100は、光触媒層59に付着した異物について光触媒反応量を演算すると共に、この光触媒反応量を液晶モニタ8に表示する。このため、撮影者は、光触媒反応により異物の付着力がどのくらい低下したかを客観的に知ることができる。従って、撮影者は、光触媒反応による異物の付着状況を適切に管理することができる。
【0126】
(2)カメラCPU100は、演算した光触媒反応量が設定値に達した場合には、光触媒反応量を液晶モニタ8に表示する。このため、撮影者は、光触媒反応により付着力が低下した異物を容易に判断することができる。
【0127】
(3)カメラ本体2の内部に、光触媒反応を促進させるための光源を配置する必要がない。このため、ボディサイズの小さなカメラにも適用することができる。
【0128】
(4)撮影者は、異物の付着状況を考慮したうえで、手動によりクリーニング動作を実施することにより、異物として付着した有機物を効率良く除去することができる。
【0129】
(5)カメラCPU100は、演算した光触媒反応量が設定値に達した場合には、クリーニング動作を実施する。このため、撮影者の手を煩わせることなしに、異物として付着した有機物を除去することができる。
【0130】
(6)カメラCPU100は、撮像ユニット50で撮像された画像に基づいて、光触媒層59に異物が存在するか否かを判定する。このため、光触媒層59に異物が付着したか否かを正確に判別することができる。
【0131】
(7)カメラCPU100は、光触媒層59に異物が付着した場合には、その異物の位置を特定して、異物毎に光触媒反応量を液晶モニタ8に表示する。このため、撮影者は、付着した異物毎に光触媒反応による付着状況を客観的に管理することができる。
【0132】
(8)カメラCPU100は、光触媒層59に異物が付着した場合には、その異物の位置を特定すると共に、演算した光触媒反応量が設定値に達した異物について、その光触媒反応量を液晶モニタ8に表示する。このため、撮影者は、光触媒層59に複数の異物が付着した場合でも、光触媒反応により付着力が低下した異物を容易に見分けることができる。
【0133】
(9)カメラCPU100は、特定した異物毎に、演算した光触媒反応量が設定値に達した場合にはクリーニング動作を実施する。このため、それぞれの異物の付着状況に応じて、効率良くクリーニング動作を実施することができる。
【0134】
(10)カメラCPU100は、光触媒層59に入射する被写体光の光量を測光センサ32により取得する。これによれば、被写体光の光量を測定する際に被写体光の光路を遮ることがないので、撮影者は、被写体像を観察しながらファインダ撮影を行うことができる。また、光触媒層59に入射する被写体光の光量を測定するための専用の測光手段が不要となるため、コスト増を抑えることができる。
【0135】
(11)カメラCPU100は、光触媒層59に入射する被写体光の光量を撮像素子52で撮像した被写体像の画像データから取得することができる。このため、撮影者は、被写体像を液晶モニタ8で観察しながらライブビュー撮影等を行なうことができる。また、光触媒層59に入射する被写体光の光量を測定するための専用の測光手段が不要となるため、コスト増を抑えることができる。
【0136】
(12)カメラ本体2では、光触媒層59への被写体光の入射時間をシャッタユニット40により測定する。このため、光触媒層59への被写体光の入射時間を計測する専用の計測手段が不要となり、コスト増を抑えることができる。
【0137】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明は以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)光触媒層59には、その種類により光触媒反応が促進しやすい波長域がある。このため、カメラ1を特定の光源(例えば、太陽光、蛍光灯等)下で撮影する場合には、その光源の波長域に適した光触媒層59を選択すればよい。しかしながら、不特定の光源下で撮影する場合、光源によっては光触媒反応が促進されないため、演算した光触媒反応量が不正確になることが考えられる。
【0138】
そこで、カメラ本体2に、光触媒層59へ入射する被写体光の波長域を特定する波長域特定手段を設けてもよい。この場合、カメラCPU100は、光のエネルギー量を、測光センサ32により測定した被写体光の光量と、撮影時に設定された絞り値と、前記波長域特定手段で特定された光の波長域とに基づいて算出する。これにより、カメラCPU100は、光触媒層59の種類に応じて、正確な光触媒反応量を演算することができる。
【0139】
なお、波長域特定手段としては、測光センサ32を用いることができる。この場合は、測光センサ32で測定した被写体光の色温度から光源を特定し、更に、この光源から波長域を特定することにより、光触媒層59へ入射する被写体光の波長域を取得することができる。このように、波長域特定手段として測光センサ32を用いた場合には、光触媒層59に入射する被写体光の波長域を測定するための専用の測定手段が不要となるため、コスト増を抑えることができる。
【0140】
(2)ファインダ撮影において、光触媒層59に入射する被写体光の光量を、撮像素子52で撮像した被写体像の画像データから取得するようにしてもよい。これによれば、測光センサ32を持たないレンズ交換式のデジタルカメラにも適用することができる。
【0141】
(3)図8に示すフローチャートでは、カメラ本体2の電源がONした時にクリーニング動作を実行する例を示している。しかし、これに限らず、カメラ本体2の電源がOFFした時にクリーニング動作を実行するようにしてもよい。また、他のタイミングでクリーニング動作を実行するようにしてもよい。
【0142】
(4)図8に示すフローチャートでは、一つの異物について、その異物の位置における光触媒反応量が設定値に達したときにクリーニング動作を実行する例を示している。しかし、これに限らず、同時に複数の異物の位置における光触媒反応量が設定値に達したときにのみクリーニング動作を実行するようにしてもよい。これによれば、クリーニング動作の回数を極力少なくすることができる。
【0143】
(5)複数回のクリーニングを実行しても異物が除去できない場合には、液晶モニタ8又は表示パネル9に、サービスセンターでの清掃を促すメッセージを表示するようにしてもよい。これによれば、不要なクリーニング動作の実行を抑制することができる。
【0144】
(6)光触媒層59への異物の付着は、撮像ユニット50で撮像された画像をパターン認識により解析する手法だけでなく、他の手法により検出してもよい。
【0145】
(7)本発明は、レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラに限らず、ミラーユニット10を備えていない、レンズ交換式のデジタルカメラにも適用することができる。
【0146】
また、上記実施形態及び変形形態は適宜に組み合わせて用いることができるが、各実施形態の構成は図示と説明により明らかであるため、詳細な説明を省略する。更に、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0147】
1:カメラ、2:カメラ本体、3:レンズ鏡筒、4:撮影レンズ、8:液晶モニタ、32:測光センサ、40:シャッタユニット、52:撮像素子、53:光学LPF、55:振動素子、59:光触媒層、60:操作部、100:カメラCPU、103:メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する光入射面を有する光学部材と、
前記光学部材の前記光入射面に形成された光触媒層と、
前記光触媒層へ異物が付着したか否かを判定する異物判定手段と、
前記光触媒層へ入射した前記光のエネルギー量を測定する光エネルギー測定手段と、
前記光触媒層へ入射した前記光の蓄積時間を測定する光蓄積時間測定手段と、
前記光エネルギー測定手段により測定された前記光のエネルギー量及び前記光蓄積時間測定手段により測定された前記光の蓄積時間を記憶する記憶手段と、
前記異物判定手段により前記光触媒層に異物が付着したと判定されてから、前記光エネルギー測定手段により測定された前記光のエネルギー量及び前記光蓄積時間測定手段により測定された前記光の蓄積時間に基づいて、前記光触媒層における光触媒反応量を算出する光触媒反応量算出手段と、
前記光触媒反応量に関する情報を通知可能な通知手段と、
前記光触媒反応量算出手段により算出された前記光触媒反応量に関する情報を、前記通知手段により通知させる制御手段と、
を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記制御手段は、前記光触媒反応量算出手段により算出された前記光触媒反応量が設定値に達した場合には、前記通知手段により前記光触媒反応量に関する情報を通知させること、
を特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学装置において、
前記光学部材を振動させて当該光学部材に付着した異物を除去する異物除去手段を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学装置において、
前記制御手段は、前記光触媒反応量算出手段により算出された前記光触媒反応量が設定値に達した場合には、前記異物除去手段により前記光学部材を振動させて当該光学部材に付着した異物を除去すること、
を特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の光学装置において、
前記光学部材へ入射した前記光の像を撮像して画像データを取得する撮像手段を備え、
前記異物判定手段は、前記撮像手段で取得された画像データに基づいて、前記光触媒層へ異物が付着したか否かを判定すること、
を特徴とする光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学装置において、
前記異物判定手段は、前記撮像手段で取得された画像データに基づいて、前記光触媒層へ異物が付着したか否かを判定すると共に、前記光触媒層へ異物が付着している場合には、前記光触媒層に付着した異物の前記光学部材における位置を特定し、
前記制御手段は、前記異物判定手段で特定された異物毎に、前記通知手段により前記光触媒反応量に関する情報を通知させること、
を特徴とする光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光学装置において、
前記制御手段は、前記光触媒反応量算出手段により算出された前記光触媒反応量が設定値に達した場合には、前記通知手段により前記光触媒反応量に関する情報を通知させること、
を特徴とする光学装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の光学装置において、
前記制御手段は、前記異物判定手段で特定された異物毎に、前記光触媒反応量算出手段により算出された前記光触媒反応量が設定値に達した場合には、前記異物除去手段により前記光学部材を振動させて当該光学部材に付着した異物を除去すること、
を特徴とする光学装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記光エネルギー測定手段は、前記光触媒層へ入射した光の光量を測定する測光センサであること、
を特徴とする光学装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記光エネルギー測定手段は、前記光学部材へ入射前記光の像を撮像して画像データを取得する撮像手段であること、
を特徴とする光学装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記光学部材へ入射する前記光の入射時間を制御するシャッタ駆動手段を備え、
前記光蓄積時間測定手段は、前記シャッタ駆動手段における前記光の入射時間を前記光触媒層へ入射した前記光の蓄積時間として測定すること、
を特徴とする光学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−95077(P2012−95077A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240474(P2010−240474)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】