説明

光学補償シート及びその製造方法

【課題】 光拡散層塗布液の塗布時の経時増粘を防止し、良好かつ安定な塗布性を維持することができ、また、粒子沈降を防止し、所望量の粒子を確実に塗布でき、かつ、粒子が溶解しない光学補償シートの製造方法、及び該光学補償シートの製造方法により製造され、優れた光拡散性、光透過性を有する光学補償シートの提供。
【解決手段】 少なくともバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液を、支持体上に塗布して光拡散層を形成する工程を少なくとも含んでなり、前記光拡散層塗布液を支持体上に塗布する直前に、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む架橋剤液を添加し、混合する光学補償シートの製造方法、及び該光学補償シートの製造方法により製造される光学補償シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、パソコン用モニタ、テレビ、液晶プロジェクタ等の液晶表示装置に用いられ、優れた視野角特性を有する光学補償シート及び該光学補償シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、その用途展開が急速に進んでおり、携帯電話、パソコン用モニタ、テレビ、液晶プロジェクタなどに使われている。
一般に、液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードなどの表示モードで液晶を動作させて、該液晶を通過する光を電気的に制御して明暗の違いを画面上に表すことで、文字や画像を表現する液晶表示装置である。
このような液晶表示装置としては、一般に、TFT(Thin Film Transistor)−LCDが知られており、該TFT−LCDの液晶動作モードとしてはTNモードが主流である。また、近時、液晶表示装置の用途展開が進むにつれて、高コントラスト化の要望が高まっており、VAモードの液晶表示装置の研究も盛んに行われている。
【0003】
前記TNモードの液晶表示装置は、2枚のガラス基板の間に90°ねじれたネマチック液晶が封入され、前記2枚のガラスの外側には一対の偏光板がクロスニコルで配置されている。そして、電圧無印加状態では、偏光子側の偏光板を通った直線偏光が液晶層で偏光面が90°ねじられて検光子側の偏光板を通過して白表示となる。また、電圧が十分に印加された状態では、液晶の配列方向が液晶パネルに略垂直に変化して、偏光子側の偏光板を通った直線偏光が偏光状態を変化させることなく液晶層を通り抜けて検光子側の偏光板に到達して黒表示となる。
【0004】
前記VAモードの液晶表示装置は、2枚のガラス基板の間に垂直配向あるいは垂直傾斜配向するようにネマチック液晶が封入され、前記2枚のガラスの外側には一対の偏光板がクロスニコルで配置されている。そして、電圧無印加状態では、偏光子側の偏光板を通った直線偏光が液晶層でその偏光面をほとんど変化させることなく液晶層を通り抜けて検光子側の偏光板に到達して黒表示となる。また、電圧が十分に印加された状態では、液晶の配列方向が液晶パネルに平行で、かつ90°ねじれた状態に変化して、偏光子側の偏光板を通った直線偏光が液晶層で偏光面が90°ねじられて検光子側の偏光板を通過して白表示となる。
【0005】
これらの表示モードで動作する液晶表示装置は、斜め方向から表示画面を見た場合に、コントラストの低下や階調表示で明るさが逆転する階調反転現象等による表示特性の悪化が生じるという視野角依存性の問題がある。このような視野角依存性の問題は、液晶表示装置を黒表示しようとしても、視野角によっては、完全な黒にはならず、光漏れを起こすことに起因する。
【0006】
上記問題点を解決するため、従来より、光拡散手段、例えば、光拡散層を視認側表面に設けて、視野角依存性の問題を改善する光学補償フィルムが提案されている。このような光学補償フィルムには、光拡散性が良好であるのみならず、光透過性に優れること、着色性がないことが要求される。
光透過性を向上させることを目的として、例えば、支持体の両面に、側鎖に第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂の架橋体からなるポリマー層を設け、かつ、一方のポリマー層上に、光拡散層が設けられた光学補償シートが提案されている(特許文献1参照)。また、光拡散層が、透光性樹脂と、合成樹脂粒子と、該透光性樹脂及び合成樹脂粒子の屈折率より高い屈折率を有する粒子とを含有してなり、光透過性を向上させた光学補償シートが提案されている(特許文献2参照)。
しかし、これらの光学補償シートにおいては、光拡散層に光の拡散を促進させるために微粒子を配合しているが、該微粒子の添加により透過光が着色してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、前記問題を解決するため、粒径分布が50%以下であり、かつ平均粒径の異なる粒子を2種以上組み合わせて用い、透過光の着色性を低減した光学補償フィルムが提案されている(特許文献3参照)。また、表面に微細な凹凸が形成され、この微細凹凸表面の光沢度の最大値と最小値との関係を規定し、表示画像のコントラストが良好であり、着色性を低減した光学補償シートが提案されている(特許文献4参照)。
【0008】
しかし、これらの光学補償シートであっても、光拡散層用の塗布液に含まれる微粒子は沈降が早く、塗布している間に沈降が起こり、所望量の粒子を塗布できなくなることがあるという問題があった。また、塗布液に使用される有機溶剤が、前記粒子を溶解したり、膨潤させてしまうことがあるという問題がある。
【0009】
また、特許文献5及び6には、膜質改良を目的として、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを架橋剤として添加した光拡散シートが提案されている。しかし、これらの提案では、経時により塗布液の粘度が上昇し、保存安定性に欠け、良好かつ安定な塗布を行うことができないという問題がある。
【0010】
したがって光拡散層塗布液の塗布時の経時増粘を防止し、良好かつ安定な塗布性を維持することができ、また、粒子沈降を防ぎ、所望量の粒子を確実に塗布でき、かつ、粒子が溶解しない、効率の良い光学補償シートの製造方法、及び該光学補償シートの製造方法により製造され、優れた光拡散性、光透過性を有する光学補償シートは未だ提供されておらず、更なる改良開発が望まれているのが現状である。
【0011】
【特許文献1】特許第3413273号公報
【特許文献2】特開平6−59107号公報
【特許文献3】特開平11−142618号公報
【特許文献4】特開2003−131016号公報
【特許文献5】実開平5−73601号公報
【特許文献6】特許第3516976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光拡散層塗布液の塗布時の経時増粘を防止し、良好かつ安定な塗布性を維持することができ、また、粒子沈降を防止し、所望量の粒子を確実に塗布でき、かつ、粒子が溶解しない、効率のよい光学補償シートの製造方法、及び該光学補償シートの製造方法により製造され、優れた光拡散性、及び光透過性を有する光学補償シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくともバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液を、支持体上に塗布して光拡散層を形成する工程を少なくとも含む光学補償シートの製造方法であって、
前記光拡散層塗布液を支持体上に塗布する直前に、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む架橋剤液を添加し、混合することを特徴とする光学補償シートの製造方法である。
<2> イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかの添加量が、バインダー100質量部に対し30質量部以上である前記<1>に記載の光学補償シートの製造方法である。
<3> 架橋剤液を添加した後60分間以内の光拡散層塗布液の粘度が、25℃で、10〜200mPa・sである前記<1>から<2>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<4> 光拡散層塗布液が、粒子沈降防止剤を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<5> 光拡散層塗布液と架橋剤液との混合が、スタチックミキサーを用いて行われる前記<1>から<4>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<6> 粒子沈降防止剤が、有機物である前記<4>から<5>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<7> 粒子沈降防止剤が、脂肪酸アミド及び酸化ポリエチレンの少なくともいずれかである前記<4>から<6>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<8> 粒子沈降防止剤の添加量が、有機粒子1質量部に対して、0.005〜0.3質量部である前記<4>から<7>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<9> 有機粒子が、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、及びシリコーン樹脂粒子から選択される少なくとも1種である前記<1>から<8>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<10> バインダーが、(メタ)アクリル樹脂である前記<1>から<9>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<11> 光拡散層塗布液中に散乱剤を含有し、かつ該散乱剤が無機粒子である前記<1>から<10>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法により製造されることを特徴とする光学補償シートである。
<13> 光拡散シートとして使用される前記<12>に記載の光学補償シートである。
【0014】
本発明の光学補償シートの製造方法は、少なくともバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液を、支持体上に塗布して光拡散層を形成する工程を少なくとも含み、前記光拡散層塗布液が、該光拡散層塗布液を支持体上に塗布する直前に、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む架橋剤液を添加し、混合する。その結果、本発明の光学補償シートの製造方法によれば、光拡散層塗布液の塗布時の経時増粘を防止し得、良好かつ安定な塗布性を維持することができ、また、粒子沈降を防止し、所望量の粒子を確実に塗布でき、かつ、粒子が溶解しないので、効率よく高品質な光学補償シートを製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来における前記問題を解決し、光拡散層塗布液の塗布時の経時増粘を防止し、良好かつ安定な塗布性を維持することができ、また、粒子沈降を防止し、所望量の粒子を確実に塗布でき、かつ、粒子が溶解することのない、効率の良い光学補償シートの製造方法、及び該光学補償シートの製造方法により製造され、優れた光拡散性、及び光透過性を有する光学補償シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(光学補償シート及びその製造方法)
本発明の光学補償シートの製造方法は、少なくともバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液を、支持体上に塗布して光拡散層を形成する工程を少なくとも含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記光拡散層形成工程では、前記光拡散層塗布液を支持体上に塗布する直前に、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む架橋剤液を添加し、混合する。
また、本発明の光学補償シートは、本発明の前記光学補償シートの製造方法により製造される。
以下、本発明の光学補償シートの製造方法の説明を通じて、本発明の前記光学補償シートの詳細についても明らかにする。
【0017】
ここで、前記光拡散層塗布液を支持体上に塗布する直前とは、少なくともバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液中にイソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む架橋剤液を添加し、混合した後、すぐに支持体上に塗布すること(塗布のすぐ前にバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液と架橋剤液とを混合すること)を意味し、具体的には、少なくともバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液中に架橋剤液を添加し、混合した後、60分間以内に塗布することを意味する。混合後、60分間を過ぎると、増粘が進行し、送液性、塗り付け性、塗布面状が悪化することがある。
【0018】
前記光拡散層塗布液と架橋剤液との直前混合は、例えば、スタチックミキサーを用いて行うことが、簡便に既存配管内に設置ができ、高粘度液体との混合が良好に行うことができる点から好ましい。
【0019】
前記光拡散層塗布液(架橋剤液を添加後)の粘度(25℃)は、架橋剤液を添加後60分間以内では、10〜200mPa・sが好ましく、15〜150mPa・sがより好ましい。前記粘度が10mPa・s未満であると、粒子沈降性が維持できなくなることがあり、200mPa・sを超えると、送液性、及び塗布性が悪化し、面状が悪化することがある。
ここで、前記光拡散層塗布液の粘度は、光拡散層塗布液と架橋剤液とを混合した後、60分間以内の各塗布液について、東京計器株式会社製E型粘度計(ELD型)を用いて、25℃で測定することができる。
前記光拡散層塗布液の溶媒の固形分濃度としては、特に制限はなく、塗布方式や乾燥条件に応じて適宜選択することができるが、10〜40質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。
【0020】
<支持体>
前記支持体としては、透明であり、ある程度の強度を有するシートであれば、特に制限はなく、通常支持体として使用されているプラスチック又はガラスを、目的に応じて適宜選択して使用することができる。
前記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどが好適に挙げられる。前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。更に、前記ポリメタクリル酸エステルの好ましい具体例として、メタクリル樹脂が好適に挙げられる。
前記支持体の厚みとしては、支持体として通常採用される範囲の厚みであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.02〜4.0mmが好ましい。
前記支持体の表面には、光拡散層との密着性を向上させるため、放電処理をしてもよく、後述するその他の層を設けてもよい。
【0021】
<光拡散層塗布液>
前記光拡散層塗布液は、バインダー、及び有機粒子を少なくとも含有してなり、塗布直前に架橋剤、粒子沈降防止剤、溶媒、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0022】
−バインダー−
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機ポリマーバインダーが好ましい。
前記有機ポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくともいずれかをモノマーの一成分として含む、単独重合体又は共重合体などが好適に挙げられる。
前記単独重合体又は共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ニトロセルロース、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ロジン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、有機粒子を溶解したり、膨潤させたりするおそれが少ない点から、(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。
【0023】
前記バインダーの酸価としては、5以下が好ましい。これは、光拡散層を有する部材や該光拡散層を有する部材を設けた面光源装置を取り扱う作業中には、前記光拡散層のごみ等の汚れを除くために、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類のような適当な有機溶剤で前記光拡散層の表面を洗浄することがあるが、このときに、前記バインダーの酸価が5より大きいと、光拡散層が、前記アルコール類による洗浄で白化することがある。このように光拡散シートが白化現象を起こすと、透過光量が減少したり、光の均一さが悪くなり、面光源装置として使用できなくなることがある。前記バインダーの酸価が5以下であると、光拡散層が、前記アルコール類での洗浄により白化現象を起こすことはない。
【0024】
−有機粒子−
前記有機粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記有機粒子は、架橋構造を有するものが好ましく、特に、架橋構造を有するポリメチルメタクリレート樹脂粒子が好ましい。
前記有機粒子は、透過した光を拡散させる光拡散剤としての機能を果たすので、前記有機粒子の質量平均粒子径は、100μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。前記質量平均粒子径が100μmを超えると、光拡散剤としての機能を果たせなくなることがある。
前記有機粒子の添加量としては、前記バインダー100質量部に対して、100〜500質量部が好ましく、200〜400質量部がより好ましい。前記添加量が100質量部未満であると、光拡散剤としての機能を果たせなくなることがあり、500質量部を超えると、有機粒子が分散しにくくなることがある。
【0025】
前記バインダーと、前記有機粒子との配合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜調製することができるが、25℃で測定したD(n25)線の屈折率の、両者の値の差が、0.20以下となるように配合するのが好ましい。前記バインダーと有機粒子とを含む光拡散層は、一般に両者を適当な溶剤中に添加混合して調製した光拡散層塗布液を、支持体上に塗布し、乾燥することによって形成されるが、前記光拡散層塗布液の調製の際に有機粒子が膨潤したり溶解しないようにする必要があり、前記屈折率の差が0.20を超えると、有機粒子が、前記光拡散層塗布液に使用する溶媒に対して膨潤したり溶解することがあるからである。したがって、前記有機粒子は、前記光拡散層塗布液に対して、膨潤したり溶解したりしない粒子の中から適宜選択するのが好ましく、後述する光拡散層塗布液の溶媒も、有機粒子を膨潤したり溶解したりしないものを適宜選択するのが好ましい。
【0026】
−架橋剤液−
前記架橋剤液における架橋剤としては、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかが好適である。
【0027】
前記イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも2個の、好ましくは3個以上の官能基を有する脂肪族イソシアネート化合物、環状脂肪族イソシアネート化合物、及び芳香族の多官能イソシアネート化合物の少なくともいずれかが用いられる。
前記分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタンー4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポロピレンー1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、などが挙げられる。
上記以外の多官能イソシアネート化合物としては、上記イソシアネート化合物を主原料とし、これらの3量体、トリメチロールプロパンなどのポリオールと2官能イソシアネート化合物の付加体として多官能としたもの、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエテルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物重合体、リジントリイソシアネート等も用いることができる。これらの中でも、キシレンジイソシアネート又はその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物を主原料とし、これらの3量体の他、トリメチロールプロパンとのアダクト体として多官能としたものが特に好ましい。
これらの化合物については、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行、1987年)に記載されている。これらの中でも、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンとキシリレン−1,4−ジイソシアネート又はキシリレン−1,3−ジイソシアネートとの付加物が好ましく、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンとキシレン−1.4−ジイソシアネート又は、キシリレン−1,3−ジイソシアネートとの付加物が特に好ましい。
これらの多官能イソシアネート化合物は単独で、または2種以上混合して用いてもよい。
【0028】
前記エポキシ樹脂としては、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の炭素数2〜20のアルコールのグリシジルエーテル類;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリオールのポリグリシジルエーテル類;2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド等の環式脂肪族エポキシ化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロキシフタル酸ジグリシジルエステル、ソルビン酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル等の不飽和酸グリシジルエステル類;ブチルグリシジルエステル、オクチルグリシジルエステルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のアルキルカルボン酸グリシジルエステル類;安息香酸グリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル等の芳香族カルボン酸グリシジルエステル類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ化合物;ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドオキシアルキルヒダントイン、トリグリシジジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ化合物等が挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、東都化成製エポトートYD128、YD8125、大日本インキ化学工業社製エピクロン840S、850S、1050、830が含まれる。
【0029】
前記架橋剤としてのイソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかの前記光拡散層塗布液における添加量は、バインダー100質量部に対し30質量部以上が好ましく、50〜400質量部がより好ましい。前記塗布量が30質量部未満であると、塗布膜が傷つきやすくなることがある。
【0030】
−粒子沈降防止剤−
前記粒子沈降防止剤は、有機粒子を含む前記光拡散層塗布液に含有することにより、静止状態では、チキソトロピー現象により、該光拡散層塗布液の粘度を高くして、有機粒子の沈降を防ぐ作用を担い、支持体上に光拡散層塗布液を塗布することにより、せん断力が生じると、該光拡散層塗布液の粘度を著しく低下させて、前記光拡散層塗布液の濾過や、均一な厚みによる支持体上への塗布を可能とするように作用する。
前記粒子沈降防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機粒子を塗布液中に均一に安定して分散させ得る性能が高い物質が、前記有機粒子が均一に分散された光拡散層塗布液により、有機粒子の含有率の均一な光拡散層を安定に形成できることから好ましい。
また、前記粒子沈降防止剤は、光拡散層塗布液中でそれ自体が一部析出して、立体的な網目構造を示すことが多いため、針状又は層状の結晶となりやすい物質が好ましい。
【0031】
上記の観点から、前記粒子沈降防止剤としては、有機物が好ましい。
前記有機物の粒子沈降防止剤としては、例えば、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレン、金属石鹸類、有機ベントナイト、水添ヒマシ油ワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレンが特に好ましい。
【0032】
前記脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ミリステン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどが挙げられ、高いチキソトロピー性を示すことから、一価よりも二価以上の多価アミドが特に好ましい。
前記酸化ポリエチレンとしては、例えば、分子量が300〜50,000のものが好適に挙げられる。
前記金属石鹸類としては、例えば、ステアリン酸、パルチミン酸等の金属塩が挙げられる。前記金属塩における金属としては、特に制限はなく、通常使用される金属塩を適宜選択して使用することができるが、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウムなどが好適に挙げられる。
前記有機ベントナイトとしては、例えば、スメクタイトなどが好適に挙げられる。
【0033】
前記粒子沈降防止剤の前記光拡散層塗布液における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機粒子1質量部に対して、0.005〜0.3質量部が好ましい。前記添加量が0.005質量部未満であると、有機粒子の沈降防止効果が小さく、有機粒子を均一に分散でき、維持できないことがあり、0.3質量部を超えると、結晶化しにくくなったり、粘度が高くなりすぎて塗布液を塗布できないことがある。
前記粒子沈降防止剤を添加することにより、有機粒子を均一に分散でき、かつ維持し、光拡散層の成分の均一化、前記有機粒子の均一化を図ることができる。更に、前記有機粒子を分散した塗布液を製造過程で濾過するときにも、目詰まりを生じ難く、容易に処理可能となる。
【0034】
前記光拡散層塗布液中には、その他の粒子として、例えば、無機粒子からなる散乱剤などを添加してもよい。
前記散乱剤は、上述した有機粒子と同様に、光拡散剤としての機能を果たすので、光拡散性を更に向上させることができる。
前記散乱剤としては、特に制限はなく、通常使用される物質を目的に応じて適宜選択して分散させることができるが、例えば、粒子径が1〜5μmであるシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。
前記散乱剤の前記光拡散層塗布液中における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜20質量%が好ましい。
【0035】
−溶媒−
前記光拡散層塗布液に使用される溶媒としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択して使用することができるが、最適な比重を有する観点から有機溶媒が好ましい。ここで、前記比重とは、4℃の水に対する比重を意味する。
前記有機溶媒(以下、「第一溶媒」と称することもある)としては、例えば、ケトン類、エーテル類、アルコール類、エステル類、多価アルコール誘導体類、カルボン酸類などが挙げられる。
前記溶媒の比重としては、塗布時の有機粒子沈降性を制御しつつ、バインダーを充分に溶解させることができ、かつ、光透過性を向上させ、視野角依存性を改良させる観点から、好ましい具体例について、比重(かっこ内に表示)と共に列挙すると、前記ケトン類としては、例えば、アセチルアセトン(0.975)、シクロヘキサノン(0.945)、メチルシクロヘキサノン(0.921)などが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、1,4−ジオキサン(1.039)、テトラヒドロフラン(0.889)、などが挙げられる。
前記アルコール類としては、例えば、シクロヘキサノール(0.949)、3−ペンタノール(1.046)、2−メチルシクロヘキサノール(0.925)、などが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、ギ酸イソアミル(0.877)、ギ酸イソブチル(0.885)、ギ酸エチル(0.917)、ギ酸ブチル(0.892)、ギ酸プロピル(0.901)、ギ酸ヘキシル(0.990)、ギ酸ベンジル(1.081)、ギ酸メチル(0.987)、酢酸アリル(0.927)、酢酸イソアミル(0.871)、酢酸イソブチル(0.873)、酢酸イソプロピル(0.877)、酢酸エチル(0.901)、酢酸2−エチルヘキシル(0.872)、酢酸シクロヘキシル(0.97)、酢酸n−ブチル(0.876)、酢酸s−ブチル(0.875)、酢酸プロピル(0.887)、酢酸メチル(0.934)、ポロピオン酸エチル(0.896)、プロピオン酸ブチル(0.877)、プロピオン酸メチル(0.916)、などが挙げられる。
前記多価アルコール誘導体類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(0.975)、エチレングリコールモノメチルエーテル(0.964)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1.009)、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル(1.04)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(0.898)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(0.923)、などが挙げられる。
前記カルボン酸類としては、例えば、イソ酪酸(0.948)、カプロン酸(1.049)、などが挙げられる。
これらの中でも、塗布後に乾燥しやすい観点から、沸点150℃以下の有機溶媒が好ましく、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0036】
また、上記列挙した有機溶媒に混合して使用可能な有機溶媒(以下、「第二溶媒」と称することもある)としては、例えば、イソプロピルアルコール(0.785)、エタノール(0.791)、n−ブタノール(0.810)、t−ブタノール(0.787)、1−プロパノール(0.804)、メタノール(0.792)などのアルコール類、アセトン(0.791)、ジエチルケトン(0.816)、メチルエチルケトン(0.805)、メチル−n−ブチルケトン(0.821)、メチル−n−プロピルケトン(0.806)などのケトン類、アセトニトリル(0.788)などが挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0037】
前記第一溶媒と第二溶媒との組合せとしては、特に制限はなく、適宜選択して組み合わせることができるが、塗布時の有機粒子沈降性を制御しつつ、バインダーを充分に溶解させることができ、かつ、光透過性を向上させ、視野角依存性の改善を図る観点から、第一溶媒の比重と、第二溶媒の比重とに一定の関係を有することが好ましい。なお、有機粒子沈降性を制御するとは、前記有機粒子が、光拡散層塗布液の塗布後3分間以上、好ましくは5分間以上、沈降しないようにすることを意味する。
前記一定の関係としては、下記数式1で表されるdaveの値が、0.85以上1未満であることが好ましく、0.85〜0.95がより好ましい。前記daveの値が、0.85未満であったり、1以上であると、塗布時の有機粒子沈降性を制御しにくくなることがある。
<数式1>
ave=d×w+d×w
ただし、dは第一溶媒の比重、wは第一溶媒の含有量(質量%)、dは第二溶媒の比重、wは第二溶媒の比重をそれぞれ表す。
【0038】
また、前記有機粒子が、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子であるときには、塗布時の有機粒子沈降性を制御する観点から、該ポリメチルメタクリレート樹脂粒子の比重と前記dave値との比(ポリメチルメタクリレート樹脂粒子/dave)が、1.4以下であることが好ましく、1.2〜1.4であることがより好ましい。前記ポリメチルメタクリレート樹脂粒子の比重と前記dave値との比が、1.4を超えると、塗布時の有機粒子沈降性を制御できないことがある。
前記第二溶媒を使用するときの、第一溶媒の含有量としては、前記daveの値が前記数値範囲内となるようにするために、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0039】
−光拡散層塗布液の塗布及び乾燥方法−
前記光拡散層は、支持体上に前記光拡散層塗布液を塗布した後、乾燥することにより形成される。前記光拡散層は1層のみ設けてもよいし、2層以上設けてもよい。
前記光拡散層塗布液の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター等の通常使用される塗布手段により行うことができる。
前記光拡散層塗布液の乾燥方法としては、特に制限はなく、通常使用される方法を適宜選択することができるが、例えば、乾燥温度として、短時間であり、かつ材質に損傷を与えずに行える点から、90〜130℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。前記乾燥温度が90℃未満であると、乾燥に長時間を要することがあり、130℃を超えると、材質に損傷を与えることがある。また、前記乾燥時間としては、例えば、10秒間〜5分間が好ましく、1〜2分間がより好ましい。
【0040】
前記光学補償シートには、その他の層として、例えば、支持体と光拡散層とをより密着させるために、下塗り層を設けてもよく、光拡散層をロール状に巻き取ったときに、該光拡散層の上下が接着するのを防ぐために、バック層を設けてもよい。
【0041】
前記下塗り層及びバック層は、いずれも、側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂の架橋体を含むことが好ましい。
前記側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂としては、特に制限がなく、通常知られている樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、反応させやすいことから、カチオン性第四級アンモニウム塩基を有し、かつ末端に重合性二重結合を有するビニル化合物と、水酸基を有するビニル化合物と、必要に応じて含まれるその他のビニル化合物との混合物の水溶性共重合体などが好適に挙げられる。
【0042】
前記カチオン性第四級アンモニウム塩基を有し、かつ末端に重合性二重結合を有するビニル化合物としては、例えば、カチオン性第四級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリレート化合物が好適に挙げられる。
前記(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート四級化物、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、ジエチルアミノエチルアクリレート四級化物、ジエチルアミノエチルメタクリレート四級化物、メチルエチルアミノエチルアクリレート四級化物、メチルエチルアミノエチルメタクリレート四級化物などが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記水酸基を有するビニル化合物としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物などが好適に挙げられる。
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリグリセロールジアクリレート、ポリグリセロールジメタクリレートなどが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記その他の化合物としては、例えば、上記2種のビニル化合物と共重合可能な化合物などが挙げられる。
前記共重合可能な化合物としては、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルなどが好適に挙げられる。これらの中でも特に、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記水溶性共重合体の合成方法としては、例えば、前記ビニル化合物の混合物を、水性媒体中で乳化重合反応させることにより得ることができる。
【0043】
前記側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂の架橋体は、例えば、側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂と熱架橋性化合物との混合物を架橋反応させることにより好適に得ることができる。
前記熱架橋性化合物としては、例えば、2〜4個のグリシジル基を有するエポキシ化合物が好適に挙げられる。
前記2〜4個のグリシジル基を有するエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテルなどが好適に挙げられる。
前記前記熱架橋性化合物の、側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂と熱架橋性化合物との混合物における含有量としては、例えば、3〜30質量%が好ましい。
前記側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂と熱架橋性化合物との混合物には、架橋反応を促進するために、アルカリ性化合物を添加するのが好ましい。
前記アルカリ性化合物としては、例えば、アミン、ポリアミン、アミドアミン、ポリアミドアミン、イミダゾール、アルカリ金属炭酸塩などが好適に挙げられる。
前記側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂の架橋体としては、例えば、特開平4−220649号公報に記載されている架橋体などが好適に挙げられる。
【0044】
前記下塗り層及びバック層は、前記側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂と熱架橋性化合物とを含む混合物を、必要に応じて水、アルコール等で希釈して調製した下塗り層塗布液及びバック層塗布液を、支持体シートの表面上に塗布し、60130℃の温度に加熱して溶媒を蒸発除去させると共に、前記側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂及び熱架橋性化合物を、前記イオン導電性樹脂が有する水酸基により架橋反応させて形成することができる。
【0045】
前記下塗り層及びバック層の厚みは、光透過性及びブロッキングによる故障防止の観点から、いずれも、0.05〜5μmが好ましく、0.5〜4.5μmがより好ましい。前記厚みが0.05μm未満であると、ブロッキングによる故障が発生することがあり、5μmを超えると、光透過性が悪くなることがある。
前記下塗り層及びバック層にも、光透過性を向上させ、視野角依存性を改善させる観点から、前記光拡散層が含む有機粒子を添加することが好ましい。
前記有機粒子の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記側鎖にカチオン性第四級アンモニウム塩基を有するイオン導電性樹脂100質量部に対して250質量部以下が好ましく、0.01〜200質量部がより好ましい。
【0046】
−光学補償シートの構造―
前記光学補償シートの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図1に示す光学補償シート11が好適に挙げられる。
この図1に示す光学補償シート11は、支持体12の一方面上に、下塗り層13、光拡散層15をこの順で備え、他方の面上にバック層14を備えてなる。
【0047】
−用途−
前記光学補償シートの製造方法は、光拡散層塗布液の塗布時の経時増粘を防止し、良好かつ安定な塗布性を維持することができ、また、粒子沈降を防ぎ、所望量の粒子を確実に塗布でき、かつ、粒子が溶解等しないため、例えば、優れた光拡散性、光透過性を有する光学補償シートの製造に好適に使用することができる。
該製造方法により製造される光学補償シートは、その利点により、携帯電話、パソコン用モニタ、テレビ、液晶プロジェクタ等の液晶表示装置に好適に使用することができる。より具体的には、前記光学補償シートは、該液晶表示装置のバックライトとして使用されるエッジライト式面光源装置の導光板の上面に、光拡散層を上にして設けて、好適に使用することができる。
また、前記光学補償シートは、光拡散性に特に優れるため、上述の液晶表示装置において、液晶パネルの全面をムラなく光らせることができ、該液晶表示装置の輝度ムラを抑制できる光拡散シートとして、より好適に使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
[光学補償シートの作製]
支持体上に、下塗り層、バック層、及び光拡散層の順に、以下の方法により形成することにより、光学補償シートを作製した。
【0050】
−下塗り層の形成−
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)の片面に、下記組成の下塗り層塗布液を、ワイヤーバー#20で塗布し、120℃にて2分間乾燥させて、厚みが1.5μmの下塗り層を形成した。
<下塗り層塗布液の組成>
・メタノール・・・4165g
・ジュリマーSP−50T(日本純薬株式会社製)・・・1495g
・シクロヘキサノン・・・339g
・ジュリマーMB−1X(日本純薬株式会社製)・・・1.85g
(有機粒子;ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、質量平均粒子径6.2μmの球状超微粒子)
【0051】
−バック層の形成−
前記支持体の下塗り層を塗布した反対側の面に、下記組成のバック層塗布液を、ワイヤーバー#20で塗布し、120℃にて2分間乾燥させて、厚みが2.0μmのバック層を形成した。
<バック層塗布液の組成>
・メタノール・・・4171g
・ジュリマーSP−65T(日本純薬株式会社製)・・・1487g
・シクロヘキサノン・・・340g
・ジュリマーMB−1X(日本純薬株式会社製)・・・2.68g
(有機粒子;ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、質量平均粒子径6.2μmの球状超微粒子)
【0052】
−光拡散層の形成−
上記で作製した塗布物の下塗り層側に、下記組成の光拡散層塗布液及び下記組成の架橋剤液を、それぞれの流量を光拡散層塗布液100ccに対し、架橋剤液10ccとなるようにポンプで送液し、両者の液をスタチックミキサー(φ3.4−N60S−523−F、ノリタケカンパニーリミテッド社製)にて混合し、5分間後にワイヤーバー#22で塗布し、120℃で2分間乾燥させて、厚み28μmの光拡散層を形成した。
<光拡散層塗布液の組成>
・シクロヘキサノン・・・825g
・ディスパロンPFA−230・・・25.9g
(粒子沈降防止剤;脂肪酸アミド、楠本化成株式会社製、固形分濃度20質量%)
・アクリル樹脂(ダイヤナールBR−117、三菱レーヨン株式会社製)20質量%メチルエチルケトン溶液・・・599g
・ジュリマーMB−20X(日本純薬株式会社製)・・・469g
(有機粒子;ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、質量平均粒子径18μmの球状超微粒子)
・F780F(大日本インキ化学工業株式会社製)・・・1.25g
(メチルエチルケトンの30質量%溶液)
<架橋剤液の組成>
・メチルエチルケトン(MEK)・・・40g
・イソシアネート化合物(タケネートD110N、三井武田ケミカル株式会社製)・・・160g
【0053】
(実施例2)
実施例1において、光拡散層の形成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
−光拡散層の形成−
上記で作製した塗布物の下塗り層側に、下記組成の光拡散層塗布液及び下記組成の架橋剤液を、それぞれの流量を光拡散層塗布液100ccに対し、架橋剤液18ccとなるようにポンプで送液した以外は、実施例1と同様にして、光拡散層を形成した。
<光拡散層塗布液の組成>
・シクロヘキサノン・・・1125g
・ディスパロンPFA−230・・・25.9g
(粒子沈降防止剤;脂肪酸アミド、楠本化成株式会社製、固形分濃度20質量%)
・アクリル樹脂(ダイヤナールBR−117、三菱レーヨン株式会社製)20質量%メチルエチルケトン溶液・・・300g
・ジュリマーMB−20X(日本純薬株式会社製)・・・469g
(有機粒子;ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、質量平均粒子径18μmの球状超微粒子)
・F780F(大日本インキ化学工業株式会社製)・・・1.25g
(メチルエチルケトンの30質量%溶液)
<架橋剤液の組成>
・メチルエチルケトン(MEK)・・・40g
・イソシアネート化合物(タケネートD110N、三井武田ケミカル社製)・・・160g
【0054】
(実施例3)
実施例1において、架橋剤液の組成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
<架橋剤液の組成>
・メチルエチルケトン(MEK)・・・80g
・エポキシ樹脂(エピクロン850S、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・120g
【0055】
(実施例4)
実施例1において、光拡散層塗布液のディスパロンPFA−230をディスパロン6900−20X(脂肪酸アミド、楠本化成株式会社製)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
【0056】
(実施例5)
実施例1において、光拡散層塗布液のディスパロンPFA−230をディスパロン4200−20(酸化ポリエチレン、楠本化成株式会社製)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
【0057】
(実施例6)
実施例1において、光拡散層塗布液のジュリマーMB−20XをエポスターM05(メラミン樹脂粒子、日本触媒株式会社製)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
【0058】
(比較例1)
実施例1において、光拡散層塗布液と架橋剤液とを混合してから、1時間半後に塗布を実施した以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
【0059】
(比較例2)
実施例1において、光拡散層塗布液と架橋剤液とを混合してから、24時間後に塗布を実施した以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
【0060】
(実施例7)
実施例1において、光拡散層の形成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
−光拡散層の形成−
上記で作製した塗布物の下塗り層側に、下記組成の光拡散層塗布液及び架橋剤液を、それぞれの流量を光拡散層塗布液100ccに対し、架橋剤液5ccとなるようにポンプで送液した以外は、実施例1と同様にして、光拡散層を形成した。
<光拡散層塗布液の組成>
・シクロヘキサノン・・・465g
・ディスパロンPFA−230・・・25.9g
(粒子沈降防止剤;脂肪酸アミド、楠本化成株式会社製、固形分濃度20質量%)
・アクリル樹脂(ダイヤナールBR−117、三菱レーヨン株式会社製)20質量%メチルエチルケトン溶液・・・960g
・ジュリマーMB−20X(日本純薬株式会社製)・・・469g
(有機粒子;ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、質量平均粒子径18μmの球状超微粒子)
・F780F(大日本インキ化学工業株式会社製)・・・1.25g
(メチルエチルケトンの30質量%溶液)
<架橋剤液の組成>
・メチルエチルケトン(MEK)・・・40g
・イソシアネート化合物(タケネートD110N、三井武田ケミカル株式会社製)・・・160g
【0061】
(比較例3)
実施例1において、架橋剤液を混合しなかった以外は、実施例1と同様にして、光学補償シートを作製した。
【0062】
次に、作製した実施例及び比較例について、以下のようにして、塗布液の粘度(取り扱い性)、光学的特性、及び膜質を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
<塗布液の粘度(取り扱い性)の測定>
各実施例及び比較例における光拡散層塗布液と架橋剤液とを混合した後、60分間以内の各塗布液について、東京計器株式会社製E型粘度計(ELD型)で粘度(mPa・s)を測定した。なお、粘度が高いと取り扱い性が劣ることを意味する。
【0064】
<光学的特性の評価>
光拡散層を形成した各光学補償シートのそれぞれについて、C光源(波長7105K)における、全光線透過率、ヘイズ値、拡散光透過率、輝度、及び半値角を測定して、光学的特性の評価を行った。
【0065】
<膜質の評価>
光拡散層を形成した各光学補償シートについて、JIS K5600−5−4に準じて鉛筆硬度を測定した。
【0066】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜6では、架橋剤の添加により、光学特性を維持し、鉛筆硬度が硬くなり、特に取り扱い性に優れる光学補償シートが得られることが判る。これに対し、比較例1〜2では、架橋剤液を混合してからの時間が経過することで、鉛筆硬度が柔らかくなることが認められる。比較例3は架橋剤を添加していないので、鉛筆硬度が劣るものである。
また、実施例7は、架橋剤の添加量が少ないため、鉛筆硬度の結果はやや劣るが、実用的には問題のないレベルである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の光学補償シートの製造方法は、光拡散層塗布液の塗布時の経時増粘を防止し、良好かつ安定な塗布性を維持することができ、また、粒子沈降を防止し、所望量の粒子を確実に塗布でき、かつ、粒子が溶解しないため、例えば、優れた光拡散性、及び光透過性を有する光学補償シートの製造に好適に使用することができる。
本発明の製造方法により製造される光学補償シートは、その利点により、携帯電話、パソコン用モニタ、テレビ、液晶プロジェクタなどに使われる液晶表示装置に好適に使用することができる。また、前記光学補償シートは、光拡散性に特に優れるため、上述の液晶表示装置において、光拡散シートとして、より好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の光学補償シートの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
11 光学補償シート
12 支持体
13 下塗り層
14 バック層
15 光拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバインダー、及び有機粒子を含有する光拡散層塗布液を、支持体上に塗布して光拡散層を形成する工程を少なくとも含む光学補償シートの製造方法であって、
前記光拡散層塗布液を支持体上に塗布する直前に、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む架橋剤液を添加し、混合することを特徴とする光学補償シートの製造方法。
【請求項2】
イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかの添加量が、バインダー100質量部に対し30質量部以上である請求項1に記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項3】
架橋剤液を添加した後60分間以内の光拡散層塗布液の粘度が、25℃で、10〜200mPa・sである請求項1から2のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項4】
光拡散層塗布液が、粒子沈降防止剤を含有する請求項1から3のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項5】
光拡散層塗布液と架橋剤液との混合が、スタチックミキサーを用いて行われる請求項1から4のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項6】
粒子沈降防止剤が、有機物である請求項4から5のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項7】
粒子沈降防止剤が、脂肪酸アミド及び酸化ポリエチレンの少なくともいずれかである請求項4から6のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項8】
粒子沈降防止剤の添加量が、有機粒子1質量部に対して、0.005〜0.3質量部である請求項4から7のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項9】
有機粒子が、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、及びシリコーン樹脂粒子から選択される少なくとも1種である請求項1から8のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項10】
バインダーが、(メタ)アクリル樹脂である請求項1から9のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項11】
光拡散層塗布液中に散乱剤を含有し、かつ該散乱剤が無機粒子である請求項1から10のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の光学補償シートの製造方法により製造されることを特徴とする光学補償シート。
【請求項13】
光拡散シートとして使用される請求項12に記載の光学補償シート。

【図1】
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【公開番号】特開2007−65057(P2007−65057A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247870(P2005−247870)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】