説明

光学要素のための反射防止コーティング

【課題】反射防止コーティングを含む光学要素を提供する。
【解決手段】光学要素200は、シリコン基板202と、シリコン基板202の表面の第1の部分上に配置された反射層206と、を含む。シリコン基板202の表面の第2の部分上に反射防止層208を配置することで、反射防止層208における相殺的な干渉によって反射防止層208に入射する放射の反射を実質的に減少させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、一般にリソグラフィに関し、さらに具体的には光学要素のための反射防止コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィは、集積回路(IC)ならびに他のデバイス及び/又は構造を製造する際の重要なプロセスとして広く認識されている。リソグラフィ装置は、リソグラフィ中に用いられる機械であり、基板のターゲット部分上など、基板上に所望のパターンを適用する。リソグラフィ装置によってICを製造する間、パターニングデバイス(あるいはマスク又はレチクルと呼ばれる)が、IC内の個々の層上に形成される回路パターンを発生する。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又はいくつかのダイの部分を含む)上に転写することができる。パターンの転写は通常、基板上に設けられた放射感応性材料(例えばレジスト)の層上に結像することで行われる。一般に、単一の基板は複数のターゲット部分を含み、これらが連続的にパターニングされる。多くの場合、ICの異なる層を製造するには、異なるレチクルを用いて異なる層上に異なるパターンを結像する必要がある。従って、リソグラフィプロセス中にレチクルを変更しなければならない。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置及びそれに含まれるパターニングデバイスは、多くの場合、放射ビームを反射し方向を変えるための1つ以上のミラーを含む。例えば、かかる装置は、個別ミラーのアレイを含むMEMS(micro-electromechanical system)を含むことが多い。かかるシステム内のミラーは、シリコン基板の表面の部分上に、高反射コーティング(例えばアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化シリコン、及び様々な金属フッ化物の層)を堆積して、特定の方法で入射する放射を反射させることによって形成される。
【発明の概要】
【0004】
[0004] しかしながら、コーティングされていないシリコンは、深紫外(DUV)波長において入射する放射の60%までを反射することができる(これに比べ、溶融シリカ基板又はフッ化カルシウム(CaF2)基板では同等の波長範囲にわたって反射は5%未満である)。従って、高反射コーティングによって意図的にコーティングされていない基板の部分から反射された光は、強度において、高反射コーティングでコーティングされた部分から反射された光と同等であり得る。このため、コーティングのないシリコン基板は反射光を散乱させることがあり、これが高反射コーティングでコーティングされた部分によって反射される放射と干渉する場合がある。
【0005】
[0005] 従って、シリコン基板の表面のこれらの露出部分に反射防止コーティングを適用して、入射する放射の望ましくない反射及び散乱を実質的に軽減するか排除することが多い。しかしながら、溶融シリカ又はフッ化カルシウム基板を組込んだリソグラフィ装置において用いられる既存のミラーシステムとは異なり、効率的な単一層の反射防止コーティングは一般に、シリコン基板を組込んだMEMSのような光デバイスには不可能である。上述の欠点を克服するための方法及びシステムが必要とされている。
【0006】
[0006] 前述のことに鑑み、基板に入射する放射(例えば193nmのDUV放射)の反射を実質的に軽減又は排除するシリコン基板のための単一層の反射防止コーティングが求められている。この必要を満たすために、本発明の実施形態は、シリコン基板のための単一層の反射防止コーティングを対象とする。
【0007】
[0007] 一実施形態において、光学要素は、シリコン基板と、シリコン基板の表面の第1の部分上に配置された反射層と、を含む。シリコン基板の表面の第2の部分上に反射防止層を配置し、反射防止層における相殺的な干渉によって反射防止層に入射する放射の反射を実質的に減少させる。
【0008】
[0008] 更に別の実施形態では、照明システムからの放射ビームをパターニングするように構成されたパターニングデバイスを支持するように構成された支持構造と、光学要素を支持するように構成された光学要素支持に向けてパターニングしたビームを投影するように構成された投影システムと、を含むリソグラフィ装置を提供する。光学要素は、シリコン基板と、シリコン基板の表面の第1の部分上に配置された反射層と、を含む。シリコン基板の表面の第2の部分上に反射防止層を配置し、この反射防止層が、相殺的な干渉によって、反射防止層に入射する放射の反射を実質的に減少させる。
【0009】
更に別の実施形態では、光学要素を製造するための方法は、シリコン基板の表面の第1部分上に反射防止層を配置し、シリコン基板の表面の第2部分上に反射防止層を配置する。第2の配置ステップは、反射防止層に入射する放射の反射を実質的に減少させる相殺的な干渉を発生させるように酸化物層の組成及び酸化物層の厚さを決定することを含む。一実施携帯では、入射放射の波長は193nmである。
【0010】
[0009] 本発明の更に別のフィーチャ及び利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造及び動作について、添付図面を参照して以下で詳細に説明する。本発明は、本明細書に記載する具体的な実施形態に限定されないことに留意すべきである。かかる実施形態は、例示のためだけに本明細書に提示する。本明細書に包含される教示に基づいて、他の実施形態も当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[0010] 本明細書に組込まれて本明細書の一部を成す添付図面は、本発明を例示し、記述と共に、本発明の原理を説明し、当業者による本発明の生成及び使用を可能とするのに役立つ。
【0012】
【図1A】[0011] 反射性のリソグラフィ装置を示す。
【図1B】[0011] 透過性のリソグラフィ装置を示す。
【図2A】[0012] 本発明の一実施形態による、単一層の反射防止コーティングを有する例示的な光学要素のフィーチャを概略的に示す。
【図2B】[0013] 本発明の更に別の実施形態による、単一層の反射防止コーティングを有する例示的な光学要素のフィーチャを概略的に示す。
【図3A】[0014] 図2の例示的な光学要素の反射性フィーチャを示す。
【図3B】[0014] 図2の例示的な光学要素の反射性フィーチャを示す。
【図4】[0015] ある波長範囲の入射光について、特定の組成及び厚さの反射防止コーティングの反射百分率を示すグラフである。
【図5】[0016] 本発明の一実施形態による、単一層の反射防止コーティングを有する光学要素を生成するための例示的な方法を示す。
【0013】
[0017] 本発明のフィーチャ及び利点は、図面と関連付けて以下に記載する詳細な説明から、いっそう明らかとなろう。図面全体を通して、同様の符号は対応する要素を識別する。図面において、同様の参照番号は通常、同一の、機能的に同様の、及び/又は構造的に同様の要素を示す。ある要素が最初に現れる図面は、対応する参照番号において最も左の数字によって示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.概要
[0018] 本発明は、シリコン基板のための単一層の反射防止コーティングを対象とする。本特許文書は、本発明のフィーチャを組込んだ1つ以上の実施形態を記載する。これらの実施形態は、単に本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は開示する実施形態に限定されない。本発明は特許請求の範囲によって規定される。
【0015】
[0019] 記載する実施形態、及び、本明細書における「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」などの言及は、記載する実施形態が、ある特定のフィーチャ、構造、又は特徴を含むことができるが、全ての実施形態が必ずしもその特定のフィーチャ、構造、又は特徴を含むとは限らない場合があることを示す。さらに、かかる語句は必ずしも同一の実施形態を指していない。さらに、ある特定のフィーチャ、構造、又は特徴がある実施形態に関連付けて記載された場合、明示的に記載されているにせよ記載されていないにせよ、かかるフィーチャ、構造、又は特徴を他の実施形態と関連付けて実施することが当業者の知識の範囲内であることは、理解されよう。
【0016】
[0020] かかる実施形態をさらに詳細に記載する前に、本発明の実施形態を実行可能である例示的な実施形態を提示することが有益である。
【0017】
II.例示的な反射性及び透過性のリソグラフィ・システム
[0021] 図1A及び図1Bは、リソグラフィ装置100及びリソグラフィ装置100’をそれぞれ概略的に示す。リソグラフィ装置100及びリソグラフィ装置100’は、各々、放射ビームB(例えばDUV又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク、レチクル、又は動的パターニングデバイス)MAを支持するように構成され、パターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストでコーティングされたウェーハ)Wを保持するように構成され、基板Wを正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、を含む。また、リソグラフィ装置100及び100’は、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを、基板Wのターゲット部分(例えば1つ以上のダイを含む)C上に投影するように構成された投影システムPSも有する。リソグラフィ装置100において、パターニングデバイスMA及び投影システムPSは反射性であり、リソグラフィ装置100’において、パターニングデバイスMA及び投影システムPSは透過性である。
【0018】
[0022] 照明システムILは、放射Bの方向付け、整形、又は制御を行うために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電、又は他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらのいずれかの組合せなど、様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0019】
[0023] 支持構造MTは、パターニングデバイスMAの方位、リソグラフィ装置100及び100’の設計、ならびに、例えばパターニングデバイスMAが真空環境において保持されるか否かなどの他の条件に依存した方法で、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械、真空、静電、又は他のクランピング技法を用いてパターニングデバイスMAを保持することができる。支持構造MTは、例えば、必要に応じて固定又は移動性とすることができるフレーム又はテーブルとすることができる。支持構造MTは、例えば投影システムPSに対してパターニングデバイスが所望の位置にあることを確実とすることができる。
【0020】
[0024] 「パターニングデバイス」MAという言葉は、基板Wのターゲット部分Cにパターンを生成するなどのため、放射ビームBの断面にパターンを与えるために使用可能ないずれかのデバイスを指すものと広く解釈するべきである。放射ビームBに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分Cに生成されるデバイス内の特定の機能層に対応することができる。
【0021】
[0025] パターニングデバイスMAは、透過性(図1Bのリソグラフィ装置100’におけるように)又は反射性(図1Aのリソグラフィ装置100におけるように)とすることができる。パターニングデバイスMAの例には、レチクル、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいては周知であり、二進、レベンソン型(alternating)位相シフト、及びハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク・タイプ、ならびに様々なハイブリッドマスクタイプを含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小さいミラーのマトリクス配列を用い、その各々が入来放射ビームを異なる方向に反射するように個々に傾斜させることができる。傾斜させたミラーが、ミラー・マトリクスに反射される放射ビームBのパターンを与える。
【0022】
[0026] 「投影システム」PSという言葉は、用いる露光放射に適切な、又は液浸液の使用もしくは真空の使用などの他のファクタに適切な、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁気、及び静電光学システム、又はそれらのいずれかの組合せを含むいずれかのタイプの投影システムを包含することができる。EUV又は電子ビーム放射では、真空環境を使用可能である。なぜなら、他の気体があまりにも多くの放射又は電子を吸収する場合があるからである。従って、真空壁及び真空ポンプを用いて、ビーム経路全体に真空環境を提供することができる。
【0023】
[0027] リソグラフィ装置100及び/又はリソグラフィ装置100’は、2つの(二段)又はもっと多くの基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)WTを有するタイプとすることができる。かかる「多段」機械においては、追加の基板テーブルWTを同時に用いることができ、又は、1つ以上のテーブル上で準備ステップを実行する一方で1つ以上の他の基板テーブルWTを露光に用いることも可能である。
【0024】
[0028] 図1A及び図1Bを参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。例えば放射源SOがエキシマレーザである場合、放射源SO及びリソグラフィ装置100、100’は別個のエンティティとすることができる。かかる場合、放射源SOはリソグラフィ装置100、100’の部分を形成すると考えられず、例えば適切な方向付けミラー及び/又はビームエクスパンダを含むビームデリバリシステムBD(図1B)を利用して、放射ビームBは放射源SOからイルミネータILまで進む。他の場合、例えば放射源SOが水銀ランプである場合には、放射源SOはリソグラフィ装置100、100’の一体化した部分とすることができる。放射源SO及びイルミネータILは、ビームデリバリシステムBDと共に、必要な場合には放射システムと称する場合がある。
【0025】
[0029] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するためのアジャスタAD(図1B)を含むことができる。一般に、イルミネータの瞳平面において、強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(一般には、それぞれσ−アウタ及びσ−インナと呼ぶ)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの様々な他の構成要素(図1B)を含むことも可能である。イルミネータILを用いて、放射ビームBを調節し、その断面において所望の均一性及び強度分布を有することができる。
【0026】
[0030] 図1Aを参照すると、放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えばマスク)MA上に入射し、パターニングデバイスMAによってパターニングされる。リソグラフィ装置100において、放射ビームBはパターニングデバイス(例えばマスク)MAから反射される。パターニングデバイス(例えばマスク)から反射された後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、このシステムPSが放射ビームBを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPW及び位置センサIF2(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダ、又は容量センサ)を利用して、例えば放射ビームBの経路内に異なるターゲット部分Cを位置決めするように基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPM及び別の位置センサIF1を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイス(例えばマスク)MA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板位置あわせマークP1、P2を用いてアライメントすることができる。
【0027】
[0031] 図1Bを参照すると、放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブルMT)上に保持された、マスクパターンMPを有するパターニングデバイス(例えばマスクMA)上に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。マスクMAを横断した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、このシステムPSがビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。投影システムPSは、瞳PPU及び開口デバイスPDを含む。PDは、例えばプログラマブルLCDアレイとすることができる。第2のポジショナPW及び位置センサIF(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダ、又は容量センサ)を利用して、例えば放射ビームBの経路内に異なるターゲット部分Cを位置決めするように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPM及び別の位置センサ(これは図1Bに明示的に図示していない)を用いて、例えばマスクライブラリからの機械的検索後又はスキャン中に、放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。
【0028】
[0032] 一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1のポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗い位置決め)及びショートストロークモジュール(微細な位置決め)を用いて実現することができる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現することができる。(スキャナに対して)ステッパの場合は、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定することができる。マスクMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントすることができる。基板アライメントマークは、図示するように、専用のターゲット部分を占めるが、それらはターゲット位置間の空間に配置することも可能である(スクライブラインアライメントマークとして既知である)。同様に、マスクMA上に2つ以上のダイを設ける状況では、ダイ間にマスクアライメントマークを配置することができる。
【0029】
[0033] 図示のリソグラフィ装置100及び100’は以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち1回の静止露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。
2.スキャンモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する(つまり1回の動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。
3.別のモードでは、支持構造MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0030】
[0034] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0031】
[0035] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0032】
III.シリコン基板のための例示的な単一層の反射防止コーティング
[0036] 効率的な単一層の反射防止コーティングをいずれかの材料上に形成するために、コーティング材料の屈折率は、基板材料の平方根にほぼ同等でなければならない。フッ化金属、二酸化シリコン、酸化アルミニウムなどの従来の反射防止化合物は、例えば193nmのようなDUV放射範囲内のある波長範囲にわたってこの光学的な制約を満足しない。このため、シリコン基板のための従来の反射防止コーティングは、一般に、フッ化金属、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、及び酸窒化シリコンなどの従来のコーティング材料の2つ以上の個別層を組込む。本明細書に提示する実施形態は、反射防止層上に入射する放射を実質的に排除するために必要な厚さ及び組成の単一層の反射防止コーティングを提供する。
【0033】
[0037] 図2Aは、本発明の一実施形態に従った例示的な光学要素200を示す。光学要素200は、シリコン基板202、反射コーティング206、及び反射防止コーティング208を含む。反射コーティング206及び反射防止コーティング208は、シリコン基板202の表面202a上に堆積されている。一実施形態において、光学要素200はMEMSデバイスであり、反射コーティング206が形成するミラー表面は、これに入射する全ての光を実質的に反射する。反射コーティング206は、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化シリコン、又はフッ化金属などの反射性材料を堆積することによって形成することができる。反射表面206を形成するために用いる材料の種類は、設計要求に基づいて任意とすることができることは、当業者には認められよう。
【0034】
[0038] 本発明の一実施形態によれば、シリコン基板202の表面202aから反射/散乱した光が反射コーティング206から反射した光と干渉することを防ぐため、特定の組成及び厚さを有する単一層の反射防止コーティング208を、反射コーティング206で覆われていないシリコン基板202の表面202aの部分上に適用する。多くの場合、反射防止コーティングは、反射コーティング206が覆っていない表面202aの全ての部分に適用される。他の場合、反射防止コーティングは、反射コーティング206が覆っていない表面202aの全ての部分には適用されない。本発明の一実施形態によれば、反射防止コーティング208上に入射する光の反射を実質的に最小限に抑えるため、反射防止コーティング208の屈折率は、下にあるシリコン基板202の屈折率の平方根にほぼ等しくなければならない。このため、シリコン基板の屈折率がnならば、反射防止コーティングの屈折率は√nにほぼ等しくなければならない。この屈折率においては、反射防止コーティング208から反射された光は下にある表面202aから反射された光と相殺的に干渉し、これによって反射防止コーティング208上に入射する光の反射を実質的に排除する。反射を最小限に抑えるための反射防止コーティング208の組成及び厚さは、部分的に、入射する放射の波長に基づいている。
【0035】
[0039] 本発明の一実施形態によれば、酸化ハフニウムの反射防止コーティング208の10nmの単一層を、シリコン基板202の表面202a上に堆積して、193nmの波長を有する光の反射を最小限に抑える。所望の厚さ及び組成の酸化ハフニウムの単一層は、例えばイオンアシスト電子ビーム(ion assisted electron beam)(Eビーム)堆積を用いて堆積することができる。イオンアシスト電子ビーム堆積は、堆積チャンバ内で電子ビームを用いてハフニウムを蒸発させながら、堆積チャンバ内に制御された量の酸素を投入するステップを含む。酸化ハフニウムの組成を制御するために、堆積チャンバ内に投入される酸素のレベルと共にイオンの補助を用いる。酸素含有量を制御することによって、酸化ハフニウムの屈折率を√nに調整することが可能となる。ここで、nはシリコン基板202の屈折率である。反射コーティング206は、スパッタリング、化学気相蒸着(CVD)、又は物理気相蒸着(PVD)などの技法を用いて、シリコン基板202上に堆積することができる。反射防止コーティング208の組成及び厚さは、シリコン基板202の屈折率の平方根であるという反射防止コーティング208の屈折率の光学的な制約を満足させる単一の層コーティングを発生するように構成されている。一実施形態において、反射防止コーティング208の厚さ及び組成は、反射防止コーティング208から反射された光と下にある基板202から反射された光との間の相殺的な干渉を引き起こして、この相殺的な干渉の結果として反射防止コーティング208上に入射する光の反射が実質的に無視できるほどであるように構成されている。代替的な実施形態では、適切な厚さの、他のハフニウムの酸化物、タンタル酸化物、ニオブ、チタンの酸化物、及びシリコン窒化物を用いて、反射防止コーティング208を形成することができる。
【0036】
[0040] 図2Bは、本発明の一実施形態に従った例示的な光学要素220を示す。光学要素220は、シリコン基板202、反射コーティング206、及び反射防止コーティング208を含む。本実施形態において、反射防止コーティング208は基板202の全表面202a上に堆積されている。反射コーティング206は、反射防止コーティング208の上に堆積されている。表面202aの全体に反射防止コーティング208を堆積することは、光学要素202を製造するのに必要なプロセスステップの数を減らすという利点がある。なぜなら、反射防止コーティングを、図2Aにおけるように表面202a上の選択的な部分上に堆積する必要がないからである。反射防止コーティング208は通常、極めて薄く、反射コーティング206の性能の妨げとならない。
【0037】
[0041] 例えば上述のようなイオンアシスト電子ビーム(Eビーム)堆積を用いて、所望の厚さ及び組成の単一層の酸化ハフニウムを堆積することができる。一実施形態においては、酸化ハフニウムの反射防止コーティング208の10nmの単一層を、シリコン基板202の表面202a全体の上に堆積して、193nmの波長を有する光の反射を最小限に抑える。反射コーティング206は、スパッタリング、化学気相蒸着(CVD)、又は物理気相蒸着(PVD)などの技法を用いて、反射防止コーティング208上に堆積することができる。
【0038】
[0042] 図3Aは、本発明の一実施形態に従った反射コーティング206の反射特性を示す。基板表面202a上に堆積された反射コーティング206によって、入射光320aは、ビーム322として実質的に全てが反射され、ほぼ無視できる量の光が反射コーティング206を通って基板202aに達する。反射防止コーティング206を用いて、表面202aから反射された光が反射コーティング206から反射された光と干渉することを防ぐ。
【0039】
[0043] 図3Bは、本発明の一実施形態に従った反射防止コーティング208の反射特性を概略的に示す。反射防止コーティング208の表面208aに入射する光ビーム325は、ビーム326として反射する。また、ビーム325は、部分的に反射防止コーティング208を通過して、ビーム324として表面202aから反射する。本発明の一実施形態によれば、反射防止コーティング208の組成及び厚さによって、ビーム326及びビーム324の山及び谷が相殺的に干渉し、これによって入射光325の反射は無視できる程度となる。ビーム326は、山326a、谷326b、及び山326cを含む。ビーム324は、谷324a、山324b、及び谷324cを含む。図3Bに示すように、ビーム326及びビーム324の山及び谷は逆の位相を有し、このため相殺的な干渉が生じる。山326a及び谷324aは相殺的に干渉する。同様に、山324b及び谷326b、ならびに山326c及び谷324cは相殺的に干渉し、これによって入射光325の反射は実質的になくなる。一実施形態においては、入射光325の波長が193nmであり、下にある基板202がシリコンである場合、酸化ハフニウムの反射防止コーティング208の10ナノメートル(nm)の層によって生じる反射は0.2パーセント未満である。
【0040】
[0044] 図4は、波長範囲が185nmから210nmである入射光について、厚さが10ナノメートルの酸化ハフニウムの反射防止コーティングからの反射百分率を示す。図4に見られるように、反射防止コーティングからの反射百分率は、10nmの厚さの酸化ハフニウムの特定の組成では、約193nmで最低である。特定の波長における反射百分率は、反射防止コーティング及び下にある基板を形成するために用いる材料の組成及び厚さに基づいており、実施の要件に基づいて変更可能であることは、当業者には認められよう。
【0041】
[0045] 図5は、本発明の一実施形態に従った、入射光の反射を実質的に排除する反射防止コーティングを生成するために実行されるステップを示す例示的なフローチャート500を示す。フローチャート500は、図2から図3に示した例示的な実施形態を引き続き参照して説明する。しかしながら、フローチャート500はこれらの実施形態に限定されない。フローチャート500に示したいくつかのステップは、必ずしも図示した順序で実行されるわけではない。
【0042】
[0046] ステップ502において、シリコン基板の部分上に高反射金属層を堆積する。例えば、基板202の表面202a上に、アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化シリコンの高反射コーティングを堆積する。
【0043】
[0047] ステップ504において、反射防止材料の表面及び下にある基板から反射された特定の波長の放射の相殺的な干渉を引き起こす反射防止材料の組成及び厚さを決定する。例えば、反射防止コーティング208の組成及び厚さは、表面208aから反射されたビーム325が基板202の表面202aから反射されたビーム324と相殺的に干渉するように決定する。一実施形態では、193nmの入射光の相殺的な干渉を引き起こす厚さ10nmの酸化ハフニウムの組成を用いる。
【0044】
[0048] ステップ506において、ステップ502で記載した金属層によって覆われていないシリコン基板の部分上に、決定した組成及び厚さの反射防止層を堆積する。例えば、反射コーティング206によって覆われていないシリコン基板202の部分202a上に、決定した厚さ(10nm)及び組成(酸化ハフニウム)の反射防止層208を堆積する。決定した厚さ及び組成の酸化ハフニウムの反射防止コーティングを形成するように、堆積チャンバ内でハフニウムを蒸発させ、堆積チャンバ内に制御された量の酸素を投入することによって、酸化ハフニウムを堆積することができる。酸化ハフニウムの組成を制御するためにイオンの補助を用いる場合がある。スパッタリング、CVD、又はPVDなどの技法を用いることで、表面上に高反射金属層を堆積することができる。反射層は、アルミニウム、アルミニウムの酸化物、シリコンの酸化物、及びフッ化金属化合物の1つ以上を含むことができる。反射層は、例えば193nmのような所定の入射放射に対して実質的に反射性である。
【0045】
IV.結論
[0049] 課題を解決するための手段及び要約の項でなく、詳細な説明の項は、特許請求の範囲を解釈するための使用が意図されていることは認められよう。課題を解決するための手段及び要約の項は、本発明者(ら)によって想定されるような本発明の1つ以上の例示的な実施形態を明示するが、全ての例示的な実施形態を明示するわけではなく、従って、本発明及び特許請求の範囲を限定することは何ら意図していない。
【0046】
[0050] 本発明について、その明記した機能及び関係の実施を示す機能構築ブロックを利用して上述した。説明の便宜のため、本明細書において、これらの機能構築ブロックの境界を任意に画定した。明記した機能及び関係が適切に実行される限り、代替的な境界を画定することも可能である。
【0047】
[0051] 前述した具体的な実施形態の説明によって、本発明の全体的な性質が充分に明らかになろう。この全体的な性質は、当技術分野の知識を適用することによって、必要以上の実験を行うことなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、他の者によって、かかる具体的な実施形態を様々な用途のために容易に変更及び/又は適合することができる。従って、本明細書に提示した教示及び指導に基づいて、かかる適合及び変形は、開示した実施形態の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書における用語及び専門語は記述のためのものであって限定ではなく、本明細書の用語及び述語は、その教示及び指導に鑑みて当業者によって解釈されることは理解されよう。
【0048】
[0052] 本発明の広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれにも限定されることはなく、特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ規定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の表面の第1の部分上に配置された反射層と、
前記シリコン基板の前記表面の第2の部分上に配置された反射防止層であって、前記反射防止層から反射された光と前記下にあるシリコン基板から反射された光とが相殺的に干渉して前記反射防止層に入射する所定波長の放射の反射を実質的に排除するように構成及び配置されている、前記反射防止層と、
を含む、光学要素。
【請求項2】
前記反射防止層が前記シリコン基板の屈折率の平方根にほぼ同等な屈折率を有する、請求項1に記載の光学要素。
【請求項3】
前記反射防止層が、約193nmの波長の放射の相殺的な干渉を発生するように決定された組成及び厚さの1つ以上を有する、請求項1に記載の光学要素。
【請求項4】
前記反射防止層がハフニウムの酸化物を含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項5】
前記反射防止層が酸化ハフニウム(HfOx)を含み、
前記反射防止層の厚さが約10nmである、
請求項4に記載の光学要素。
【請求項6】
前記反射防止層が約193nmの波長の入射放射の約0.2%未満を反射する、請求項1に記載の光学要素。
【請求項7】
前記反射防止層が、酸化タンタル、酸化チタニウム、酸化ニオブ及び窒化シリコンの1つ以上を含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項8】
前記反射層が約193nmの波長の放射に対して実質的に反射性である、請求項1に記載の光学要素。
【請求項9】
前記反射層の層が、アルミニウム、アルミニウムの酸化物、シリコンの酸化物及びフッ化金属化合物の1つ以上を含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかによる光学要素を含むリソグラフィ装置。
【請求項11】
光学要素を製造するための方法であって、
シリコン基板の表面上に反射防止層を配置するステップであって、前記反射防止層が、前記反射防止層から反射された光と前記下にあるシリコン基板から反射された光とが相殺的に干渉して前記反射防止層に入射する所定波長の放射の反射を実質的に排除するように構成及び配置されている、前記ステップと、
前記反射防止層の表面の部分上に反射層を配置するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記配置するステップが、所定波長の入射放射の反射を実質的に排除する相殺的な干渉を生じるように前記反射防止層の組成及び前記反射防止層の厚さを決定することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記決定するステップが、前記反射防止層の屈折率が前記シリコン基板の屈折率の平方根にほぼ同等であるように前記反射防止層の前記組成及び前記厚さを決定することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反射防止層を配置するステップが、前記シリコン基板の前記表面上に酸化ハフニウムの層を配置することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化物層を配置するステップが、前記シリコン基板の前記表面上に約10nmの厚さで酸化ハフニウムの層を配置することを更に含む、請求項14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図5】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−102337(P2010−102337A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−236755(P2009−236755)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(503195263)エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ. (232)
【Fターム(参考)】