説明

光学読み取り装置及び画像データ圧縮方法

【課題】 撮影画像に対する解析精度を低下させることなく、製造コストを削減し、小型化及び解析処理の高速化を達成することができる光学読み取り装置を提供する。
【解決手段】 多数の受光素子が配置され、受光量に応じて生成される画素信号を受光素子ごとに増幅して出力する撮像回路11と、各受光素子を行ごとにリセットし、リセット時における素子電圧を抽出する受光素子リセット回路12と、素子電圧に基づいて画素信号の信号電圧を補正し、画像データとして出力するオフセット補償回路13とからなる光学読み取り装置であって、画像データを量子化し、Mビットのデジタルデータに変換するA/D変換回路16と、傾きが1以下であって高受光量側の傾きが低受光量側の傾きよりも小さな折れ線44に基づいて、Mビットのデジタルデータをビット数がより小さなNビットのデジタルデータに変換する画像データ圧縮回路24とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学読み取り装置及び画像データ圧縮方法に係り、さらに詳しくは、多数の受光素子により受光量に応じて生成される画素信号を受光素子ごとに増幅して出力する撮像回路と、各受光素子を行ごとにリセットして素子電圧を抽出する受光素子リセット回路と、素子電圧に基づいて画素信号の信号電圧を補正するオフセット補償回路からなる光学読み取り装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のバーコードに比べ、情報量の大容量化が可能であり、サイズの小型化を実現できる様々な2次元コードが開発されている。その様な2次元コードには、バーコードを複数積み重ねたタイプのスタック型シンボルや、マトリックスの交点が黒または白のいずれであるかによって符号化されたマトリックス型シンボルがある。この様な2次元コードを撮影し、撮影画像から情報を読み取る読み取り装置としては、イメージセンシング方式の光学読み取り装置が用いられる。このイメージセンシング方式の光学読み取り装置では、画像データをフレームごとに解析して復号化が行われる。特に、製造コストや消費電力の低減という観点から、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサーによる光学読み取り装置が普及する傾向にある。
【0003】
一般に、CMOSイメージセンサーでは、撮影画像における高解像度化の要求によって情報量の大容量化が求められている。このため、最近では、データ出力が10ビットであるものが主流になりつつある。ところが、ハンディタイプの2次元コードリーダーとしては、製造コストの削減や小型化、画像処理の高速化という観点から、読み取り装置本体における処理能力の向上及びメモリ容量の拡大には限界がある。そこで、情報量が大容量化されたCMOSイメージセンサーを用いる光学読み取り装置であっても、製造コストを増大させることなく、小型化及び画像処理の高速化が達成できるように、出力データをビット数がより小さいデジタルデータに変換して画像データの取り込みを行う光学読み取り装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示された光学読み取り装置では、CMOSイメージセンサーによるMビットのデータ出力のうち、(M−N)ビットのデータ出力を使用せずに残りのNビットのデータ出力を有効な画像データとして取り込む動作が行われる。
【特許文献1】特開2003−6569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した様な従来のCMOSイメージセンサーによる光学読み取り装置では、一部のビットについて画像データが失われるので、撮影画像に対する解析の精度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撮影画像に対する解析精度を低下させることなく、製造コストを削減し、小型化及び解析処理の高速化を達成することができる光学読み取り装置及び画像データ圧縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光学読み取り装置は、多数の受光素子が配置され、受光量に応じて生成される画素信号を受光素子ごとに増幅して出力する撮像回路と、上記各受光素子を行ごとにリセットし、リセット時における素子電圧を抽出する受光素子リセット回路と、上記素子電圧に基づいて上記画素信号の信号電圧を補正し、画像データとして出力するオフセット補償回路とからなる光学読み取り装置であって、上記画像データを量子化し、Mビットのデジタルデータに変換する画像データ量子化手段と、傾きが1以下であって高受光量側の傾きが低受光量側の傾きよりも小さな変換特性に基づいて、上記Mビットのデジタルデータをビット数がより小さなNビットのデジタルデータに変換する画像データ圧縮手段とを備えて構成される。
【0008】
この様な構成によれば、高受光量側の傾きが低受光量側の傾きよりも小さな変換特性に基づいて画像データが圧縮変換されるので、Mビットの画像データについて低受光量側の圧縮率を高受光量側の圧縮率よりも小さくして画像データを取り込むことができる。具体的には、上記画像データ圧縮手段が、傾きが異なる2以上の折れ線を上記変換特性としてデジタルデータの変換処理を行うように構成される。
【0009】
本発明による光学読み取り装置は、上記構成に加え、上記画像データ圧縮手段が、低受光量側の傾きが1となる折れ線に基づいてデジタルデータの変換処理を行うように構成される。この様な構成によれば、Mビットの画像データについて低受光量側の圧縮率が1となるので、低受光量側の画像データにおいて解像度が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明による画像データ圧縮方法は、受光量に応じて生成される画素信号を受光素子ごとに増幅して出力する撮像回路と、各受光素子を行ごとにリセットし、リセット時における素子電圧を抽出する受光素子リセット回路と、上記素子電圧に基づいて上記画素信号の信号電圧を補正し、画像データとして出力するオフセット補償回路とからなる光学読み取り装置における画像データ圧縮方法であって、上記画像データを量子化し、Mビットのデジタルデータに変換する画像データ量子化ステップと、傾きが1以下であって高受光量側の傾きが低受光量側の傾きよりも小さな変換特性に基づいて、上記Mビットのデジタルデータをビット数がより小さなNビットのデジタルデータに変換するデジタルデータ変換ステップにより構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による光学読み取り装置及び画像データ圧縮方法によれば、Mビットの画像データについて低受光量側の圧縮率を高受光量側の圧縮率よりも小さくして画像データを取り込むことができるので、低受光量側の画像データにおいて解像度が低下するのを抑制することができる。従って、製造コストを削減し、小型化及び解析処理の高速化を達成しつつ、撮影画像に対する解析精度の低下を抑制させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による光学読み取り装置の一例を示した外観斜視図であり、CMOSイメージセンサーを搭載したハンディタイプの2次元コードリーダー1が示されている。本実施の形態による2次元コードリーダー1は、被写体A1上に印刷された読み取り対象A2に光を照射し、読み取り対象A2による反射光を受光することによって得られる撮影画像の解析処理を行う小型の電子機器である。読み取り対象A2としては、PDF417やQRコードなどの2次元コードの他、1次元のバーコードも用いられ、これらの各種コードを読み取ることができる。
【0013】
この2次元コードリーダー1は、イメージセンサーモジュールが配置されるヘッド部2と、読み取り装置本体となる胴部3と、外部機器と接続するためのケーブル4からなる。胴部3には、背面側に2段押しボタン型スイッチ5が設けられている。
【0014】
2段押しボタン型スイッチ5は、1段目の押下操作によってCMOSイメージセンサーへの電力供給を開始させるとともに、読み取り対象A2を位置決めするためのポインタBを点灯させ、2段目の押下操作によって読み取り対象A2を照明するメインライトを点灯させるスイッチである。つまり、このスイッチ5は、1段目が電源をオンオフするための電源スイッチとなり、2段目が画像データの取り込みを指示するためのレリーズスイッチとなっている。
【0015】
ここでは、1段目が押し込まれている期間中、電源はオン状態となっているものとし、この状態からさらにスイッチ5を押し込むと、2段目の入力が行われる。また、スイッチ5は、CMOSイメージセンサーを含む読み取り装置の主電源をオンオフするものだけでなく、主電源がオン状態であるときにCMOSイメージセンサーに対する電源のみをオンオフするようなものであっても良い。つまり、CMOSイメージセンサーがスリープ状態にあるときに、1段目の押下操作によってスリープ状態を解除するものであっても良い。
【0016】
なお、ケーブル4を介して接続される外部機器としては、撮影画像及び解析結果をリアルタイムに画面表示させるための液晶モニターや、画像データ及び解析結果を取り込んで各種制御を行うパーソナルコンピュータが用いられる。
【0017】
図2は、図1の光学読み取り装置内における要部詳細の一構成例を示したブロック図であり、CMOSイメージセンサー10、ポインタ用LD14及び照明用LED15からなるイメージセンサーモジュールが示されている。ポインタ用LD(Laser Diode:レーザーダイオード)14は、ポインタBとなる照射光を発生させる発光素子であり、読み取り可能な矩形エリア及びその中心位置を被写体A1上に表示することができる。照明用LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)15は、被写体A1の読み取り対象A2を照明する照射光を発生させるメインライトとなる発光素子である。これらの光源は、読み取り装置本体からの制御信号に基づいて駆動される。
【0018】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサー10は、撮像回路11、受光素子リセット回路12、オフセット補償回路13及びA/D変換回路16からなる。撮像回路11は、受光量に応じた画素信号を出力する矩形の半導体チップからなり、受光素子として多数のフォトダイオードがマトリックス状に配置されている。各受光素子には、受光量に応じて生成される画素信号を受光素子ごとに電力増幅する増幅素子が配置され、受光素子及び増幅素子から1つの画素が構成される。
【0019】
受光素子リセット回路12は、各受光素子を行ごとにリセットし、リセット時における素子電圧の抽出を行っている。この各受光素子に対する初期化処理は、読み取り装置本体からの垂直同期信号及び水平同期信号に基づいて行われ、受光素子ごとのリセット値が素子電圧として抽出される。すなわち、水平同期信号によって次の行のリセットが開始され、垂直同期信号によって次の画像フレームが開始される。
【0020】
オフセット補償回路13は、画素信号における信号電圧の補正処理を行っている。この信号電圧の補正処理は、素子電圧に基づいて行われ、オフセット補償された信号電圧が画像データとして出力される。一般に、CMOSイメージセンサーでは、受光素子ごとのリセット値にバラツキが生じるため、画素信号の信号電圧及びリセット値を比較することによって、信号電圧におけるオフセット性のノイズ補償が行われる。具体的には、リセット前後における信号電圧の差分を出力するCDS(Correlated Double Sampling)回路が用いられる。
【0021】
A/D変換回路16は、オフセット補償回路13からの画像データ(アナログデータ)をMビットのデジタルデータに変換する画像データの量子化回路である。ここでは、電圧値が10ビット(bit)に量子化されるものとし、受光量が1024階調の明暗により表される。また、これらの回路11〜13及び16は、1つの基板上に一体的に形成されるものとする。
【0022】
図3は、図1の光学読み取り装置内における要部詳細の一構成例を示したブロック図であり、ユーザの操作入力によってCMOSイメージセンサー10への電力供給を開始するとともに、この電力供給の開始から所定期間が経過するまでパルス繰り返し間隔を短縮化して水平同期信号を出力する読み取り装置本体が示されている。
【0023】
この読み取り装置本体は、2段押しボタン型スイッチ21、操作入力制御部22、I/F制御部23、画像データ圧縮回路24、主制御部25、電力供給部26、同期信号生成部27、フレーム数カウント部28、ゲイン制御部29、撮影画像デコード部30及びメモリ31からなる。
【0024】
操作入力制御部22は、ユーザによる2段押しボタン型スイッチ21の操作入力に基づく入力制御を行っている。すなわち、スイッチ21における1段目の押下操作に基づいて撮像回路11への電力供給を開始させるとともに、ポインタ用LD14を点灯させるための制御信号が出力され、2段目の押下操作に基づいて照明用LED15を点灯させるための制御信号が出力される。
【0025】
I/F制御部23は、画像データや制御信号、クロック信号などの入出力におけるインターフェース制御を行っている。例えば、CMOSイメージセンサー10により出力されるクロック信号が主制御部25に入力される際や、ケーブル4を介して外部機器及び主制御部25間で伝送される画像データなどの入出力時のタイミング制御が行われる。
【0026】
画像データ圧縮回路24は、量子化後の画像データをビット数がより小さな画像データに変換する画像データの変換手段である。すなわち、CMOSイメージセンサー10におけるA/D変換回路16から入力されるMビットのデジタルデータをNビット(N<M)のデジタルデータに変換して主制御部25へ出力する動作が行われる。ここでは、10ビットの画像データをビット数がより小さい8ビットのデジタルデータに変換するものとする。つまり、1024階調の画像データは、情報量が変換前の画像データの1/4となる256階調の画像データに変換される。
【0027】
特に、傾きが常に1以下であって高受光量側の傾きが低受光量側の傾きよりも小さな変換特性に基づいて、デジタルデータの変換処理が行われる。
【0028】
読み取り対象A2は、通常、黒または白のいずれであるかによって符号化されるシンボルと、その周囲の白地領域からなり、撮影画像における2値化された明暗パターンに基づいて解析処理、すなわち、復号化のための処理が行われる。従って、黒が集積している領域は画素ごとの受光量が低くなるので、2次元コードなどのコードパターンの解読という観点では、受光量が低い画像データにおける階調の方が受光量が高い画像データにおける階調よりも重要となる。そこで、本実施の形態では、低受光量側における傾きが高受光量側における傾きよりも大きな曲線または折れ線によって、0から(2−1)までの整数をそれぞれ0から(2−1)までの整数に対応付ける画像データの圧縮変換が行われる。
【0029】
具体的には、傾きが異なる2以上の折れ線によって、1024階調の画像データが256階調の画像データに変換される。例えば、次の折れ線Y=F(X)によって、画像データ(X)を画像データ(Y)に変換することが考えられる。
Y=X,(0≦X<128)
Y=1/2×(X−128)+128,(128≦X<256)
Y=1/8×(X−256)+192,(256≦X<512)
Y=1/16×(X−512)+224,(512≦X<1024)
【0030】
上記折れ線Y=F(X)では、最も低い受光量側が傾き1の直線、高受光量側が傾き1未満の直線となっており、特に、0から128までは1対1で変換される。さらに詳しくは、受光量が低い側から順に傾きが1、1/2、1/8及び1/16である4つの直線からなる。
【0031】
この様な折れ線または曲線により、10ビットの画像データのうち、低受光量側の重みを高受光量側の重みよりも高くして画像データを圧縮変換することができるので、解析精度の低下を効果的に抑制することができる。すなわち、画像データの圧縮率を受光量に応じて変化させることによって、2次元コードの解読に必要な画像データが失われることなく、撮影画像における高受光量側の解像度を適切に下げることができるので、撮影画像におけるSN比を向上させることができる。
【0032】
電力供給部26は、イメージセンサーモジュール各部への電力供給を行っている。特に、ユーザによる2段押しボタン型スイッチ21における1段目の押下操作によって、撮像回路11の増幅素子への電力供給が開始される。フレーム数カウント部28は、垂直同期信号に基づいて画像データの出力フレーム数をカウントする画像フレームの計数手段である。
【0033】
同期信号生成部27は、水平同期信号及び垂直同期信号の生成を行っている。これらの同期信号の生成は、ユーザによる2段押しボタン型スイッチ21の1段目の押下操作によって開始される。特に、撮像回路11への電力供給の開始から所定フレーム数の画像データの出力終了までの期間、パルス繰り返し間隔を短縮化して水平同期信号の生成が行われる。すなわち、上記期間中、水平同期信号のパルス繰り返し間隔を短縮化することによって、垂直同期信号におけるフレーム周期を短期間化することができる。
【0034】
具体的には、撮像回路11への電力供給の開始から所定フレーム数の画像データの出力終了までの期間内に、スイッチ21の2段目の押下操作が行われなければ、2段目の押下操作が行われるまで水平同期信号のパルス繰り返し間隔が短縮化される。つまり、上記期間中に2段目の押下操作が行われた場合には、その2段目の押下操作による入力は無効化され、当該期間が経過するまで水平同期信号の短縮化が行われる。一方、上記期間中に2段目の押下操作が行われなかった場合には、2段目の押下操作によって水平同期信号及び垂直同期信号の短縮化が解除され、画像データの取り込みが開始される。
【0035】
画像データの取り込みを主制御部25に対して指示するための操作入力をスイッチ21の2段目の押下操作に割り当てたことによって、撮像回路11への電力供給の開始から所定フレーム数の画像データの出力終了までの期間内に2段目の押下操作が行われない場合、押下操作から撮影画像の解析終了までの期間を短縮化することができる。特に、所定フレーム数の画像データの出力終了までの期間中に2段目の押下操作が行われた場合であっても、所定フレーム数の画像データの出力終了までフレーム周期が短期間化されるので、オフセット補償回路13の出力を安定化させつつ、画像データの取り込みに要する期間を効果的に短縮することができる。
【0036】
同期信号の周期を短縮化させる期間を決定する出力フレーム数は、オフセット補償回路13などのCMOSイメージセンサー内回路の出力が安定化するのに要する期間から定められる。また、撮像回路11の起動直後に出力される画像データは、受光期間が定まらないので、解析処理には適さない。従って、所定フレーム数としては、2以上であることが好ましい。ここでは、オフセット補償回路13の出力が安定化するのに2フレーム分の期間を要するものとし、3以上の画像フレームの出力が終了するまで同期信号の短縮化が行われる。
【0037】
ゲイン制御部29は、画像データに基づいて画素信号に対する増幅率の調整を行っている。すなわち、ゲイン制御部29は、画素全体のS/N(信号対ノイズ比)向上並びにダイナミックレンジの最適化のため、全画素一律の増幅率(ゲイン)の制御を行っている。具体的には、最も明るい画素から最も暗い画素までが10ビットまたは8ビットの画像データに収まるようにゲイン調整が行われる。
【0038】
撮影画像デコード部30は、符号化された読み取り対象A2を解読するために、画像データに対して復号化処理を行っている。この復号化処理は、メモリ31に取り込んだ画像データに基づいて行われ、特に、水平同期信号におけるパルス繰り返し間隔の短縮化期間が経過してから2フレーム目に出力された画像データについて解析される。
【0039】
具体的には、まず、水平同期信号の短縮化期間が経過してから1フレーム目に出力される画像データを準備フレームとして、準備フレームにおける画像データに基づいてゲイン調整が行われる。準備フレームは、水平同期信号の周期を元の周期に戻してから最初に出力される画像フレームとなるので、受光量が行ごとに異なっている。このような準備フレームの画像データを用いてゲイン調整が行われる。なお、ゲイン調整のための受光量の演算処理は、行ごとに行われる。
【0040】
次に、水平同期信号の短縮化期間が経過してから2フレーム目に出力されるゲイン調整後の画像データを本撮像フレームとして、この本撮像フレームにおける画像データについて解析処理が行われる。
【0041】
2次元コードを読み取る場合には、撮影画像におけるパターン認識、位置決め、各種コードのうちのいずれであるかの識別及びデコードの各処理が行われる。パルス繰り返し間隔の短縮化期間が経過してから2フレーム目に出力される画像データは、各受光素子の露光期間が全ての行について一定となる最初の画像データであるので、撮影画像の解析が終了するまでに要する期間を短縮化しつつ復号化処理を適切に行うことができる。
【0042】
図4は、図1の光学読み取り装置における読み取り動作の一例を示した図であり、スイッチ21の1段目の押下操作によってCMOSイメージセンサー10が起動してから、撮影画像のデコードが成功するまでの様子が時系列に示されている。まず、ユーザによって2段押しボタン型スイッチ21の1段目が押下されると、この操作入力に基づいてCMOSイメージセンサー10が起動し、ポインタ用LD14が点灯する。
【0043】
このとき、水平同期信号及び垂直同期信号が生成され、水平同期信号に同期して1行目からm行目までの垂直走査が開始される。この垂直走査では、水平同期信号のパルス繰り返し間隔が短縮化されるので、行ごとの走査間隔が短縮され、画像データの出力数が削減される。ここでは、水平同期信号の短縮期間中、1列目の画像データのみ出力される。
【0044】
次に、センサー起動から所定フレーム数の画像データの出力終了までの期間中に、スイッチ21の2段目の押下操作が行われると、この操作入力に基づいてポインタ用LD14が消灯するとともに、照明用LED15が点灯する。このとき、水平同期信号の短縮化は、所定フレーム数の画像データの出力終了に基づいて解除され、準備フレームの画像データの出力が開始される。
【0045】
準備フレームにおける画像データは全画素分、すなわち、1列目からn列目までの画像データが順次に出力され、行ごとに受光量の演算処理が行われる。この受光量演算の処理結果に基づいてゲイン調整が行われ、次の本撮像フレームにおける画像データの取り込みが開始される。
【0046】
本撮像フレームにおける画像データの取り込みが終了すると、照明用LED15が消灯するとともに、ポインタ用LD14が点灯する。このとき、再度、水平同期信号の短縮化が開始されるとともに、CPUにおいて本撮像フレームの画像データに対するデコード処理が開始される。
【0047】
デコード処理において、読み取りエラーが生じると、CPUによって再撮像命令が出力され、この再撮像命令に基づいて再撮像が開始される。すなわち、再撮像命令によって照明用LED15が点灯するとともに、ポインタ用LD14が消灯し、照明用LED15の点灯開始時に出力された画像データの出力が終了すると、水平同期信号の短縮化が解除されて準備フレームの画像データの出力が開始される。撮影された画像データのデコード処理が成功し、2次元コードが解読されれば、この読み取り処理は終了する。
【0048】
図5及び図6は、図4の読み取り動作における要部詳細を示したタイミングチャートであり、図5には、センサー起動直後における水平同期信号及びデータ出力の様子が示され、図6には、水平同期信号の短縮化期間が経過後の様子が示されている。CMOSイメージセンサー10の起動直後は、露光時間が不定であるため、画素出力の内容も不定となるものの、水平同期信号に同期して、データ出力準備期間となる最初の所定期間C2の経過後に、第1列目の画像データの出力が開始される。
【0049】
水平同期信号のパルス繰り返し間隔(C2+C3)において、初めの所定期間C2は、データ出力準備期間となっており、この期間内に画素信号のサンプリング、各受光素子のリセット及びリセット値のサンプリングがこの順で逐次に行われる。そして、リセット値のサンプリング終了後、次の出力期間C3において1列目の画像データの出力が行われる。
【0050】
1列目の画像データの出力期間C3が終了すると、次の行のデータ出力準備期間が開始される。なお、画像データは、センサー内で生成されるクロック信号(ドットクロック)に同期して出力される。
【0051】
水平同期信号の短縮化期間の経過後は、行ごとのデータ出力期間C4に全ての列について画像データが出力される。具体的には、480行×640列の画素からなるCMOSイメージセンサーの場合、C2=150クロック、C4=640クロックに対し、C3=1クロックとなり、行ごとの走査間隔が1/5程度に短縮化される。ここでは、水平走査及び垂直走査におけるブランキング期間の短縮化も行われるものとし、水平同期信号におけるパルス繰り返し間隔の短縮化及びブランキング期間の短縮化、或いは、削除によって、センサー起動直後のフレーム周期(6ms)は、通常時におけるフレーム周期(33ms)の1/5.5程度に短縮される。
【0052】
図7のステップS101〜S110は、図1の光学読み取り装置における読み取り動作の一例を示したフローチャートである。まず、2段押しボタン型スイッチ21における1段目の押下操作が行われると、この操作入力に基づいてイメージセンサーモジュール各部への電力供給が開始され、CMOSイメージセンサー10が起動する(ステップS101,S102)。
【0053】
このとき、ポインタ用LD14が点灯し、水平同期信号及び垂直同期信号が生成される(ステップS103,S104)。センサー起動から所定フレーム数の画像データの出力終了までの期間中に、スイッチ21の2段目の押下操作が行われると、この操作入力に基づいてポインタ用LD14が消灯するとともに、照明用LED15が点灯する。この場合、水平同期信号の短縮化は所定フレーム数の画像データの出力終了時に解除される(ステップS105,S110)。
【0054】
一方、センサー起動から所定フレーム数の画像データの出力終了までの期間中に、スイッチ21の2段目の押下操作が行われなかった場合には、2段目の押下操作が行われるまで継続される(ステップS106)。水平同期信号における短縮化の解除後、準備フレームにおける画像データが順次に出力され、行ごとに受光量の演算処理が行われる。この受光量演算の処理結果に基づいてゲイン調整が行われ、次の本撮像フレームにおける画像データの取り込みが開始される(ステップS107)。
【0055】
本撮像フレームにおける画像データの取り込みが終了すると、照明用LED15が消灯するとともに、ポインタ用LD14が点灯する。このとき、再度、水平同期信号の短縮化が開始されるとともに、CPUにおいて本撮像フレームの画像データに対するデコード処理が開始される(ステップS108)。
【0056】
デコード処理において、読み取りエラーが生じると、CPUによって再撮像命令が出力され、ステップS107,S108の処理が繰り返される(ステップS109)。撮影された画像データのデコード処理が成功し、2次元コードが解読されれば、この読み取り処理は終了する。
【0057】
図8は、図1の光学読み取り装置内における要部詳細の一例を示した図であり、CMOSイメージセンサー41から入力される10ビットの画像データを圧縮変換し、8ビットの画像データとしてCPU43へ出力する画像データ圧縮回路としてのFPGA42が示されている。このFPGA(Field Programming Gate Array)42は、回路構成を容易に変更することができる論理回路であり、ハードウェア的に1024階調の画像データを256階調の画像データに変換する動作を行っている。これにより、変換テーブルを用いてソフトウェア的に処理するのに比べ、画像データの圧縮処理に要する時間を短縮化することができる。
【0058】
図9は、図8の画像データ圧縮回路における画像データの圧縮動作の一例を示した図である。10ビットの入力データは、前述した折れ線Y=F(X)に基づいて、FPGA42により8ビットの画像データに変換される。具体的には、(1)0から127までの受光量としての各整数値が0から127までの整数値に、(2)128から255までの各整数値が128から191までの整数値にそれぞれ対応付けられる。また、(3)256から511までの各整数値が192から223までの整数値に、(4)512から1023までの各整数値が224から255までの整数値にそれぞれ対応付けられる。
【0059】
上記各区間(1)〜(4)における画像データの圧縮率は、順に1,1/2,1/8,1/16となっている。この様に、低受光量側の圧縮率を高受光量側の圧縮率よりも低くすることによって、低受光量側における解像度の低下を抑制させることができる。特に、最も低い受光量区間(1)の解像度は、最も高い受光量区間(4)の解像度の16倍となっており、画像データにおいて高受光量側に生じるノイズを効果的に除去することができる。
【0060】
図10は、図8の画像データ圧縮回路における画像データの変換特性の一例を示した図であり、入力データ(X)に対する出力データ(Y)を表す折れ線Y=F(X)44が示されている。この折れ線Y=F(X)44は、次に示す曲線Dと近似的に一致するものとなっている。
Y=X,(0≦X<128)
Y=40.865×ln(X−87.135)−23.7,(128≦X<1024)
【0061】
上記した曲線Dは、0から128までは傾き1の直線、128から1024までは対数曲線となっている。この様な曲線に近似的に一致する折れ線Y=F(X)44により、画像データに対して擬似的な対数変換(略ログ変換)が行われる。これにより、画像データの圧縮を効果的に行うことができる。
【0062】
図11は、図8の画像データ圧縮回路から出力される画像データによる撮影画像の一例を示した図である。また、図12は、図11の撮影画像における線分E−E上の受光量分布を画像データの圧縮変換の前後で比較して示した図である。読み取り対象A2から得られる撮影画像45は、筋状の暗部46a、及び、筋状の暗部46aの間に位置する比較的に幅の狭い明部46bからなるコード領域と、このコード領域の両側に位置し、前記明部46bよりも比較的に幅の広い明部46cを含むコード領域の周囲の白地領域により構成されている。
【0063】
ゲイン制御部29では、折れ線Y=F(X)44における傾きが1である領域(区間(1))内に画像データが存在するように増幅率の調整が行われる。このため、撮影画像45における白地領域に対し、コード領域における受光量(輝度)が相対的に低くなるので、読み取り対象a2の解析には、低受光量側の解像度を高受光量側の解像度よりも高くして画像データの圧縮変換を行うのが効果的である。
【0064】
言い換えれば、一例ではあるが、前記明部46cは、図9に示す入力値データ1023近傍の値となるため、1/16の圧縮率が適用され、一方、前記明部46bは、明部46cに比べて幅が狭いことから、その入力値データは511以下となり、1/8または1/2の圧縮率が適用されることになる。筋状の暗部46aについては、その中で比較的に幅の広いものが入力値データ0近傍となり、1/1の圧縮率(非圧縮)が適用される。また、その他の比較的に幅の狭い筋状暗部46aは、その入力値データが255から127の間に位置することになるため、1/2の圧縮率が適用されることが、図12に示す受光量分布データの圧縮変換前と後の値から理解することができる。
【0065】
これにより、変換前の画像データにおける明部46cに生じるノイズ47が圧縮変換によって平坦化されるので、撮影画像45の解析精度を向上させることができる。すなわち、所定の閾値によって画像データにおける輝度を2値化することでコードパターンを解析する画像処理では、高輝度部分が平坦化されることにより、読み取りエラーを低減することができる。
【0066】
本実施の形態によれば、10ビットの画像データについて低受光量側の圧縮率を高受光量側の圧縮率よりも小さくして画像データを取り込むことができるので、低受光量側の画像データにおいて解像度が低下するのを抑制することができる。従って、製造コストを削減し、小型化及び解析処理の高速化を達成しつつ、撮影画像に対する解析精度の低下を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1による光学読み取り装置の一例を示した外観斜視図である。
【図2】図1の光学読み取り装置内における要部詳細の一構成例を示したブロック図である。
【図3】図1の光学読み取り装置内における要部詳細の一構成例を示したブロック図である。
【図4】図1の光学読み取り装置における読み取り動作の一例を示した図である。
【図5】図4の読み取り動作における要部詳細を示したタイミングチャートである。
【図6】図4の読み取り動作における要部詳細を示したタイミングチャートである。
【図7】図1の光学読み取り装置における読み取り動作の一例を示したフローチャートである。
【図8】図1の光学読み取り装置内における要部詳細の一例を示した図である。
【図9】図8の画像データ圧縮回路における画像データの圧縮動作の一例を示した図である。
【図10】図8の画像データ圧縮回路における画像データの変換特性の一例を示した図である。
【図11】図8の画像データ圧縮回路から出力される画像データによる撮影画像の一例を示した図である。
【図12】図11の撮影画像における線分E−E上の受光量分布を画像データの圧縮変換の前後で比較して示した図である。
【符号の説明】
【0068】
1 2次元コードリーダー
2 ヘッド部
3 胴部
4 ケーブル
5,21 2段押しボタン型スイッチ
10 CMOSイメージセンサー
11 撮像回路
12 受光素子リセット回路
13 オフセット補償回路
14 ポインタ用LD
15 照明用LED
16 A/D変換回路
22 操作入力制御部
23 I/F制御部
24 画像データ圧縮回路
25 主制御部
26 電力供給部
27 同期信号生成部
28 フレーム数カウント部
29 ゲイン制御部
30 撮影画像デコード部
31 メモリ
41 CMOSイメージセンサー
42 FPGA
43 CPU
44 折れ線
45 撮影画像
46 明暗パターン
46a 暗部
46b,46c 明部
47 ノイズ
A1 被写体
A2 読み取り対象
B ポインタ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の受光素子が配置され、受光量に応じて生成される画素信号を受光素子ごとに増幅して出力する撮像回路と、
上記各受光素子を行ごとにリセットし、リセット時における素子電圧を抽出する受光素子リセット回路と、
上記素子電圧に基づいて上記画素信号の信号電圧を補正し、画像データとして出力するオフセット補償回路とからなる光学読み取り装置において、
上記画像データを量子化し、Mビットのデジタルデータに変換する画像データ量子化手段と、
傾きが1以下であって高受光量側の傾きが低受光量側の傾きよりも小さな変換特性に基づいて、上記Mビットのデジタルデータをビット数がより小さなNビットのデジタルデータに変換する画像データ圧縮手段とを備えたことを特徴とする光学読み取り装置。
【請求項2】
上記画像データ圧縮手段は、傾きが異なる2以上の折れ線を上記変換特性としてデジタルデータの変換処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の光学読み取り装置。
【請求項3】
上記画像データ圧縮手段は、低受光量側の傾きが1となる折れ線に基づいて、デジタルデータの変換処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の光学読み取り装置。
【請求項4】
黒または白のいずれであるかによって符号化された読み取り対象から得られる上記Nビットの画像データに基づいて、解析処理を行う画像解析手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光学読み取り装置。
【請求項5】
上記Nビットの画像データに基づいて、傾きが1である領域内に画像データが存在するように、画素信号に対する増幅率の調整を行うゲイン制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光学読み取り装置。
【請求項6】
受光量に応じて生成される画素信号を受光素子ごとに増幅して出力する撮像回路と、各受光素子を行ごとにリセットし、リセット時における素子電圧を抽出する受光素子リセット回路と、上記素子電圧に基づいて上記画素信号の信号電圧を補正し、画像データとして出力するオフセット補償回路とからなる光学読み取り装置における画像データ圧縮方法において、
上記画像データを量子化し、Mビットのデジタルデータに変換する画像データ量子化ステップと、
傾きが1以下であって高受光量側の傾きが低受光量側の傾きよりも小さな変換特性に基づいて、上記Mビットのデジタルデータをビット数がより小さなNビットのデジタルデータに変換するデジタルデータ変換ステップとを備えたことを特徴とする画像データ圧縮方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−72624(P2006−72624A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254366(P2004−254366)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】