説明

光学部品、光学部品の製造方法及びカメラモジュール

【課題】リフローによってはんだ付けを行う際の空気の膨張による問題を、大型化や構造の複雑化を招くことなく解決する光学部品を提供する。
【解決手段】2枚のガラス基板2,3のうちの少なくとも1枚のガラス基板2,3にレンズL1〜L2,L3〜L4が形成されており、ガラス基板2,3が、互いに対向し且つガラス基板2,3の間に中空部4を有するようにして、少なくとも一部に多孔質材料5を用いた材料を介して接続(接着)されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、互いに対向する2枚のガラス基板の少なくとも一方にレンズを形成した光学部品、この光学部品の製造方法及びこの光学部品を用いたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機,スマートフォンといったような、カメラ機能を有する携帯型の電子機器が普及している。そうした電子機器では、機器の小型化や薄型化の要求に合わせて、カメラの光学系についても小型化や薄型化を図る必要がある。しかし、光学系を構成する複数枚のレンズを、鏡筒に保持することによって配置するという方法では、鏡筒が占める容積が大きくなるので小型化や薄型化は困難である。
【0003】
そこで、そうした電子機器では、従来から、カメラの光学系を構成する複数枚のレンズを、次のような半導体製造技術によって配置する方法が採られている。
・2枚のガラス基板の両方または一方にレンズを形成し、それらのガラス基板を、互いに対向し且つそれらの間に閉空間である中空部を有するようにして接着した構造の光学部品を製造する。
・この光学部品を、1個用いるか、または複数個積み重ねて用いることにより、複数枚のレンズを配置する。
【0004】
こうした光学部品と撮像素子とで構成したカメラモジュールを、電子機器のプリント配線基板にはんだ付けする工程では、フローまたはリフローといった方法が用いられる。ところが、リフローによってはんだ付けを行う場合には、プリント配線基板に加えられる熱により、光学部品の中空部内の空気が膨張する。この空気の膨張によって光学部品の接着層に裂け目が生じると、防塵性が低下してしまう。そのため、従来こうした光学部品は、空気の膨張に耐えるような重厚な構造にする必要があった。
【0005】
なお、半導体装置の分野において、空気の膨張による問題を解決する技術としては、次のようなものも提案されている。(例えば、特許文献1を参照。)
・固体撮像素子の主面と透光性の覆部とを接着すると共に、これらの間に中空部を構成する接着部を有し、接着部は、中空部側に第1開口端部と、外部側に第2開口端部と、水を補足する捕捉部とが形成されている。
・第1開口端部、捕捉部及び第2開口端部により通気路が構成される。
・通気路の形状は、第1開口端部及び第2開口端部を一直線に連結するのではなく、これらの形状より大きい形状の捕捉部を介して接着部内で連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−322809号公報(段落0006、要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、空気の膨張に耐えるように光学部品を重厚な構造にすることは、光学部品の大型化を招いてしまうので、小型化や薄型化の要求に反することになる。また、特許文献1に記載の技術は、通気路の占める容積が大きくなるのでやはり大型化を招くとともに、構造が複雑になってしまう。
【0008】
本開示は、上述のようなリフローによってはんだ付けを行う際の空気の膨張による問題を、大型化や構造の複雑化を招くことなく解決する光学部品、光学部品の製造方法及びカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示に係る光学部品は、
2枚のガラス基板のうちの少なくとも1枚のガラス基板にレンズが形成されており、
前記2枚のガラス基板が、互いに対向し且つ前記2枚のガラス基板の間に中空部を有するようにして、少なくとも一部に多孔質材料を用いた材料を介して接続されていることを特徴とする。
【0010】
また、本開示に係る光学部品の製造方法は、
複数のレンズを配列して形成したガラス基板の個々の前記レンズの周囲の領域にシリコーン樹脂を塗布し、前記ガラス基板と別のガラス基板との2枚のガラス基板を、互いに対向し且つ前記2枚のガラス基板の間に個々の前記レンズの領域毎に中空部を有するようにして、前記シリコーン樹脂を介して接着する第1の工程と、
前記接着した前記2枚のガラス基板を、個々の前記レンズの周囲の領域の前記シリコーン樹脂を分割線として分割することにより個片化する第2の工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本開示に係るカメラモジュールは、
撮像素子と、
被写体像を前記撮像素子に入射させる光学系とを備え、
前記光学系は、
2枚のガラス基板のうちの少なくとも1枚のガラス基板にレンズが形成されており、前記2枚のガラス基板が、互いに対向し且つ前記2枚のガラス基板の間に中空部を有するようにして、少なくとも一部に多孔質材料を用いた材料を介して接続されている光学部品
を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る光学部品によれば、リフローによってはんだ付けを行う際に、熱によって膨張した中空部内の空気は、中空部を外部と隔てている材料(接続部)のうちの多孔質材料の部分を通して外部に排出される。
これにより、大型化や構造の複雑化を招くことなく、中空部内の空気の膨張によって接着部に裂け目が生じることを防止できる。
【0013】
本開示に係る光学部品の製造方法によれば、大型化や構造の複雑化を招くことなく、中空部内の空気の膨張によって接着層に裂け目が生じることを防止できる光学部品を製造することができる。
【0014】
本開示に係るカメラモジュールによれば、被写体像を撮像素子に入射させる光学系として、上述のような本開示に係る光学部品を用いた。これにより、大型化や構造の複雑化を招くことなく、リフローによってはんだ付けを行う際に光学部品の中空部内の空気の膨張によって光学部品の接着部に裂け目が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る光学部品の構造を示す図である。
【図2】本開示の第1の実施の形態に係る光学部品の製造方法を示す図である。
【図3】本開示の第2の実施の形態に係るカメラモジュールの構造を示す図である。
【図4】本開示の第3の実施の形態に係る光学部品の構造を示す図である。
【図5】本開示の第3の実施の形態に係る光学部品の構成要素の構造を示す図である。
【図6】本開示の第3の実施の形態に係る光学部品の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示を実施するための形態の例について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0017】
説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(光学部品:シリコーン樹脂を使用した例)
2.第2の実施の形態(カメラモジュール:上記光学部品を用いた例)
3.第3の実施の形態(光学部品:多孔質フィルムを使用した例)
4.変形例
【0018】
〔1.第1の実施の形態〕
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る光学部品の構造を示しており、図1Aは断面図、図1Bは外観を略示した斜視図である。この光学部品1は、例えば携帯電話機,スマートフォン等の電子機器に搭載されるカメラモジュールの光学系に用いられるものである。
【0019】
図1Aに示すように、光学部品1には、2枚のガラス基板2,3にそれぞれ透明樹脂製の第1レンズ群G1,第2レンズ群G2が形成されている。第1レンズ群G1は、ガラス基板2の被写体側の基板面(図の上側の基板面)に形成されたレンズL1と、ガラス基板2の像側の基板面(図の下の基板面)に形成されたレンズL2とで構成されている。第2レンズ群G2は、ガラス基板3の被写体側の基板面に形成されたレンズL3と、ガラス基板3の像側の基板面に形成されたレンズL4とで構成されている。
【0020】
これらのガラス基板2,3は、互いに対向し、且つガラス基板2とガラス基板3との間に閉空間である中空部4を有するようにして、シリコーンRTV(Room Temperature Vulcanizing:室温硬化)樹脂5を介して接着されている。シリコーンRTV樹脂5は、本開示において接続部として用いられるシリコーンの一例である。シリコーンRTV樹脂5としては、例えば信越シリコーン社製の「KE−348T」が用いられている。また、ガラス基板2の被写体側の基板面の外周部近傍にはレンズL1を保護するためのスペーサ6が接着され、ガラス基板3の像側の基板面の外周部近傍にはレンズL4を保護するためのスペーサ7が接着されている。なお、図1Bでは、スペーサ6,7の図示を省略するとともに、第1レンズ群G1,第2レンズ群G2についてもレンズL1,L4の中央部分の形状を除いて図示を省略している。
【0021】
シリコーンは、酸素を溶かしやすく(溶解係数が大きく)、且つ多孔質の(拡散係数が大きい)材料である。これは、ケイ素原子に酸素原子及びメチル基が結合したシリコーンの分子構造に由来している。したがって、シリコーンの一例であるシリコーンRTV樹脂5は、物体の酸素の通しやすさを示す酸素透過係数(=溶解係数×拡散係数)が大きいので、通気性が高いという特性を有している。また、シリコーンRTV樹脂5は、撥水性が高く、水を通さないという特性を有している。
【0022】
シリコーンRTV樹脂5がこうした特性を有することから、光学部品1では、中空部4内の空気や水蒸気(分子直径0.0004μm程度)は、シリコーンRTV樹脂5を通って外部に排出される。しかし、光学部品1の外部の水などの液体(分子直径100〜3000μm程度)は、シリコーンRTV樹脂5を通らないので中空部4内に浸入しない。
【0023】
こうした構造の光学部品1によれば、リフローによってはんだ付けを行う際に、熱によって膨張した中空部4内の空気は、シリコーンRTV樹脂5を通して外部に排出される。これにより、大型化や構造の複雑化を招くことなく、中空部4内の空気の膨張によって接着層(シリコーンRTV樹脂5や、ガラス基板2,3とシリコーンRTV樹脂5との境界部分)に裂け目が生じることを防止できる。
【0024】
また、光学部品1の製造工程において切削用や洗浄用に水を使用する場合にも、中空部4内に水が浸入することを防止できる。
【0025】
図2は、図1に示した光学部品1の製造方法を示すものであり、図1と共通する部分には同一符号を付している。
図2Aに示すように、複数の第2レンズ群G2を配列して形成したガラス基板12の被写体側の個々の第2レンズ群G2(図1のレンズL3)の周囲の領域に、シリコーンRTV樹脂5を所定の厚さで塗布する。また、ガラス基板12の被写体側の基板面のうち第2レンズ群G2を配列していない領域(例えば基板面の端の領域)には、紫外線硬化樹脂(図示略)を塗布する。
また、複数の第1レンズ群G1を配列して形成したガラス基板11を、ガラス基板12と対向させ、個々の第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との光軸を一致させるように位置合わせする。そして、ガラス基板11を、ガラス基板12上の前述のシリコーンRTV樹脂5及び紫外線硬化樹脂の上に載置する。
【0026】
なお、図2A〜図2Dでは説明の便宜上、ガラス基板12及びガラス基板11の外周部近傍に配置されているシリコーンRTV樹脂5のみを太く記載し、それ以外に配置されているシリコーンRTV樹脂5は細く記載している。
【0027】
続いて、紫外線UVを均一に照射して紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、ガラス基板11とガラス基板12とを互いに仮固定する。そして、シリコーンRTV樹脂5を室温(常温)で硬化させる。これにより、ガラス基板11とガラス基板12が、ガラス基板11とガラス基板12(図1のガラス基板2とガラス基板3に対応)との間に個々の第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2の領域毎に閉空間である中空部4を有するようにして、シリコーンRTV樹脂5を介して接着される。なお、紫外線硬化樹脂を用いて仮固定を行うのは、シリコーンRTV樹脂5が硬化するのにはある程度の時間がかかり、その間に第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との光軸がずれることを防止するためである。
【0028】
次に、図2Bに示すように、ガラス基板11の被写体側の基板面において、個々の第1レンズ群G1の周囲の領域に、紫外線硬化樹脂(図示略)を塗布してその上にスペーサ6を載置し、紫外線UVを均一に照射することによってスペーサ6を接着する。同様にして、図2Cに示すように、ガラス基板12の像側の基板面において、個々の第2レンズ群G2の周囲の領域にスペーサ7を接着する。
【0029】
次に、このようにして接着したガラス基板11及び12を、図2Dに示すように、個々の第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2の周囲の領域のシリコーンRTV樹脂5を分割線としてダイサー13で分割することによって個片化する。これにより、図2Eに外観を略示したような光学部品1(図1に示したのと同じ構造のもの)が、複数個同時に製造される。なお、図2Dに示したダイサー13で分割する工程ではガラス基板11及び12に切削水をかけるが、前述のように水などの液体はシリコーンRTV樹脂5を通らないので、中空部4内に水が浸入することを防止できる。本実施形態では、個片化後の光学部品1を上側又は下側からみた形状は四角形であるが、円形でもよい。
【0030】
〔2.第2の実施の形態〕
図3は、本開示の第2の実施の形態に係るカメラモジュールの構造を示す。このカメラモジュール21は、本開示の第1の実施の形態に係る光学部品1を光学系に用いたものであり、例えば携帯電話機,スマートフォン等の電子機器に搭載される。光学部品1のスペーサ7に撮像素子(例えばC−MOSまたはCCD)22が接着されており、光学部品1の第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2からこの撮像素子22に被写体像が入射される。
【0031】
このカメラモジュール21によれば、電子機器のプリント配線基板にリフローによってはんだ付けを行う際に、熱によって膨張した光学部品1の中空部4内の空気は、シリコーンRTV樹脂5を通して外部に排出される。これにより、大型化や構造の複雑化を招くことなく、光学部品1の中空部4内の空気の膨張によって光学部品1の接着層に裂け目が生じることを防止できる。
【0032】
〔3.第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、第1の実施の形態に係る光学部品の接続部の一部に、フィルム状に成形された多孔質材料を用いた例である。
【0033】
図4は、本開示の第3の実施の形態に係る光学部品の構造を示しており、図4Aは全体の断面図、図4Bは図4Aの右側の部分を拡大した断面図である。また、図5は、この光学部品の構成要素の構造を示しており、図5A−Cは上側,下側がそれぞれ個々の構成要素の平面図,断面図、図5Dは図5A−Cの全ての構成要素の断面図である。本実施の形態に係る光学部品も図1に示したのと同様のスペーサを有するが、図4及び図5ではその記載を省略している。この光学部品31は、例えば携帯電話機,スマートフォン等の電子機器に搭載されるカメラモジュールの光学系に用いられるものである。
【0034】
図4A,Bに示すように、光学部品31には、2枚のガラス基板32,33にそれぞれ透明樹脂製の第1レンズ群G11,第2レンズ群G12が形成されている。第1レンズ群G11は、ガラス基板32の被写体側の基板面(図の上側の基板面)に形成されたレンズL11と、ガラス基板32の像側の基板面(図の下の基板面)に形成されたレンズL12とで構成されている。第2レンズ群G12は、ガラス基板33の被写体側の基板面に形成されたレンズL13と、ガラス基板33の像側の基板面に形成されたレンズL14とで構成されている。
【0035】
図5Bに示すように、レンズL13は、例えば四角形の4つの辺に沿って被写体側の面に突部L13aを有している。図5Aに示すように、レンズL12も、四角形の基板の4つの辺に沿って像側の面に突部L12aを有しているが、少なくとも1つの辺(図5Aの右側の辺)だけは他の辺よりも突部L12aが辺(端部)から内側に離れて位置している。
【0036】
図4A,Bに示すように、レンズL12の突部L12aとレンズL13の突部L13aとは、互いに対向するようにして、フッ素樹脂多孔質フィルム35を介して接着剤(紫外線硬化樹脂)36で接着されている。フッ素樹脂多孔質フィルム35は、図5Cに示すように、薄いシート状で四角い枠の形状をしており、且つ、図5C及びDに示すように、前述の突部L12aが内側に位置している辺では、突部L12aの位置に合わせるように枠の幅が広くなっている。したがって、突部L12aが内側に位置している辺では、図4に示すように、フッ素樹脂多孔質フィルム35が突部L12aと突部L13aとをつなぐようにして介在している。これにより、ガラス基板32,33は、ガラス基板32とガラス基板33との間に閉空間である中空部34を有するようにして、フッ素樹脂多孔質フィルム35を介して接着されている。フッ素樹脂多孔質フィルム35としては、例えば日東電工社製の「TEMISH(登録商標)」が用いられている。
【0037】
フッ素樹脂多孔質フィルム35は、多孔質の材料を用いたフィルムの一例であり、通気性が高いという特性を有している。フッ素樹脂多孔質フィルム35がこうした特性を有することから、光学部品31では、中空部34内の空気や水蒸気(直径0.0004μm程度)は、フッ素樹脂多孔質フィルム35(特に前述の内側に位置している突部L12aと突部L13aとをつないでいる部分)を通って外部に排出される。
【0038】
こうした構造の光学部品31によれば、リフローによってはんだ付けを行う際に、熱によって膨張した中空部34内の空気は、フッ素樹脂多孔質フィルム35を通して外部に排出される。これにより、大型化や構造の複雑化を招くことなく、中空部4内の空気の膨張によって接続部(フッ素樹脂多孔質フィルム35や接着剤36)に裂け目が生じることを防止できる。
【0039】
図6は、図4に示した光学部品31の製造方法を示すものであり、図4,図5と共通する部分には同一符号を付している。
図6Aに示すように、ガラス基板41,42に、それぞれ複数の第1レンズ群G11,第2レンズ群G12を配列して形成する。また、図5Cに示したフッ素樹脂多孔質フィルム35を複数つなげて配列したような形状、すなわち一枚のフッ素樹脂多孔質フィルムの個々の光学部品に対応する位置に複数の孔35aを設けたフッ素樹脂多孔質フィルム43を形成する。
【0040】
次に、図6Bに示すように、ガラス基板41とガラス基板42とを、フッ素樹脂多孔質フィルム43を挟んで対向させて位置合わせする。また、第1レンズ群G11,第2レンズ群G12の各突部(図4,図5の突部L12a,L13a)に紫外線硬化樹脂(図示は省略しているが、図4における接着剤36)を塗布する。そして、紫外線UVを均一に照射して紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、ガラス基板41とガラス基板42とをフッ素樹脂多孔質フィルム43を介して接着させる。
【0041】
なお、図6B〜図6Dでは説明の便宜上、ガラス基板41及びガラス基板42の外周部近傍に形成されている突部L12a,L13aのみを太く記載し、それ以外に形成されている突部L12a,L13aは細く記載している。
【0042】
次に、図6Cに示すように、ガラス基板41の被写体側の基板面において個々の第1レンズ群G11の周囲の領域に、紫外線硬化樹脂(図示略)を塗布してレンズ保護用のスペーサ44を載置し、紫外線UVを均一に照射することによってスペーサ44を接着する。同様にして、ガラス基板42の像側の基板面において個々の第2レンズ群G12の周囲の領域に、スペーサ45を接着する。
【0043】
次に、このようにして接着したガラス基板41及び42を、図6Dに示すように、個々の第1レンズ群G11及び第2レンズ群G12の周囲の領域のフッ素樹脂多孔質フィルム43を分割線としてダイサー46で分割することによって個片化する。これにより、図6Eに外観を略示したような光学部品31(図4に示したのと同じ構造のもの)が、複数個同時に製造される。なお、図6Eでは、図6C及びDに示したスペーサ44,45は図示を省略している。
【0044】
〔4.変形例〕
(変形例1)
上述した第1の実施の形態では、ガラス基板2,3を、シリコーンRTV樹脂5を介して接着している。しかし、変形例として、ガラス基板2,3を、一部にシリコーンRTV樹脂を用いた材料を介して接着してもよい。そうした場合にも、リフローによってはんだ付けを行う際に、熱によって膨張した中空部4内の空気が、中空部4を外部と隔てている材料のうちのシリコーンRTV樹脂の部分を通して外部に排出される。したがって、やはり、大型化や構造の複雑化を招くことなく、中空部4内の空気の膨張によって接着層に裂け目が生じることを防止できる。
同様にして、第3の実施の形態についても、変形例として、2枚のガラス基板32,33を、一部にフッ素樹脂多孔質フィルムを用いた材料を介して接着してもよい。
【0045】
(変形例2)
上述した第1の実施の形態では、ガラス基板2,3にそれぞれレンズを形成している。しかし、変形例として、ガラス基板2,3のうちのいずれか1枚のガラス基板にのみレンズを形成してもよい。
同様にして、第3の実施の形態についても、変形例として、2枚のガラス基板32,33のうちのいずれか1枚のガラス基板にのみレンズを形成してもよい。
【0046】
(変形例3)
上述した第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係る光学部品1を1個用いている。しかし、変形例として、第1の実施の形態に係る光学部品1(レンズの形状は役割等に応じて様々な形状のもの)を、複数個積み重ねて用いてもよい。また、第3の実施の形態に係る光学部品31を、1個用いるかまたは複数個積み重ねて用いてもよい。また、第1の実施の形態に係る光学部品1と第3の実施の形態に係る光学部品31とを組み合わせて複数個積み重ねて用いてもよい。
【0047】
(変形例4)
上述した第3の実施の形態では、薄いシート状のフッ素樹脂多孔質フィルム35を介してガラス基板32とガラス基板33とを接着している。しかし、変形例として、厚みのあるブロック状のフッ素樹脂多孔質材料を介してガラス基板32とガラス基板33とを接着してもよい。
【0048】
(変形例5)
上述した第1の実施の形態,第3の実施の形態では、多孔質材料としてシリコーンRTV樹脂,フッ素樹脂多孔質フィルムを用いている。しかし、変形例として、シリコーンRTV樹脂やフッ素樹脂多孔質フィルム以外の多孔質材料を用いてもよい。また、シリコーンRTV樹脂,フッ素樹脂多孔質フィルムのうちの少なくとも一方を含むとともにそれ以外の材料も含んでいる多孔質材料を用いてもよい。
【0049】
また、本開示は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本開示の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例や変形例を取り得ることは勿論である。
【0050】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向する第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板又は前記第2のガラス基板の少なくとも一方に形成されたレンズと、
前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板の間に中空部を有するようにして2つのガラス基板の間に介在し、少なくとも一部に多孔質材料を含む材料を用いて構成された接続部と、を備える
光学部品。
(2)前記多孔質材料はシリコーン樹脂を含み、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板が前記接続部を介して接着されている
前記(1)に記載の光学部品。
(3)前記多孔質材料はフッ素樹脂多孔質フィルムを含み、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板が前記接続部を介して接着されている
前記(1)または(2)に記載の光学部品。
(4)
複数のレンズを配列して形成したガラス基板の個々の前記レンズの周囲の領域にシリコーン樹脂を塗布し、前記ガラス基板と別のガラス基板との2枚のガラス基板を、互いに対向し且つ前記2枚のガラス基板の間に個々の前記レンズの領域毎に中空部を有するようにして、前記シリコーン樹脂を介して接着する第1の工程と、
前記接着した前記2枚のガラス基板を、個々の前記レンズの周囲の領域に塗布した前記シリコーン樹脂を分割線として分割することにより個片化する第2の工程とを有する
光学部品の製造方法。
(5)
撮像素子と、
被写体像を前記撮像素子に入射させる光学系とを備え、
前記光学系は、
第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向する第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板又は前記第2のガラス基板の少なくとも一方に形成されたレンズと、
前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板の間に中空部を有するようにして2つのガラス基板の間に介在し、少なくとも一部に多孔質材料を含む材料を用いて構成された接続部と、を含んで構成される
カメラモジュール。
【符号の説明】
【0051】
1…光学部品、 2,3…ガラス基板、 4…中空部、 5…シリコーンRTV樹脂、 11,12…ガラス基板、 21…カメラモジュール、 22…撮像素子、 31…光学部品、 32,33…ガラス基板、 34…中空部、 35…フッ素樹脂多孔質フィルム、 36…接着剤、 41,42…ガラス基板、 43…フッ素樹脂多孔質フィルム、 G1,G11…第1レンズ群、 G2,G12…,第2レンズ群、 L1〜L4,L11〜L14…レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向する第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板又は前記第2のガラス基板の少なくとも一方に形成されたレンズと、
前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板の間に中空部を有するようにして2つのガラス基板の間に介在し、少なくとも一部に多孔質材料を含む材料を用いて構成された接続部と、を備える
光学部品。
【請求項2】
前記多孔質材料はシリコーン樹脂を含み、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板が前記接続部を介して接着されている
請求項1記載の光学部品。
【請求項3】
前記多孔質材料はフッ素樹脂多孔質フィルムを含み、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板が前記接続部を介して接着されている
請求項1記載の光学部品。
【請求項4】
複数のレンズを配列して形成したガラス基板の個々の前記レンズの周囲の領域にシリコーン樹脂を塗布し、前記ガラス基板と別のガラス基板との2枚のガラス基板を、互いに対向し且つ前記2枚のガラス基板の間に個々の前記レンズの領域毎に中空部を有するようにして、前記シリコーン樹脂を介して接着する第1の工程と、
接着した前記2枚のガラス基板を、個々の前記レンズの周囲の領域に塗布した前記シリコーン樹脂を分割線として分割することにより個片化する第2の工程とを有する
光学部品の製造方法。
【請求項5】
撮像素子と、
被写体像を前記撮像素子に入射させる光学系とを備え、
前記光学系は、
第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向する第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板又は前記第2のガラス基板の少なくとも一方に形成されたレンズと、
前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板の間に中空部を有するようにして2つのガラス基板の間に介在し、少なくとも一部に多孔質材料を含む材料を用いて構成された接続部と、を含んで構成される
カメラモジュール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−97110(P2013−97110A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238717(P2011−238717)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】