光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置
【課題】 増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 光学部品51は、活性元素が添加されるコア31と、活性元素を励起する励起光を伝播するクラッド32と、を有する増幅用光ファイバ30と、増幅用光ファイバ30の長さ方向において、互いに非連続である複数のクラッド部分32a、32b同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される光結合部61と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】 光学部品51は、活性元素が添加されるコア31と、活性元素を励起する励起光を伝播するクラッド32と、を有する増幅用光ファイバ30と、増幅用光ファイバ30の長さ方向において、互いに非連続である複数のクラッド部分32a、32b同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される光結合部61と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅用光ファイバを用いたファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高い小さなビームスポットが得られ、更に、非接触加工が可能であることから、レーザ加工分野、医療分野等、様々な分野において用いられている。特に加工分野や医療分野において用いられるファイバレーザ装置においては、高出力化がされている。
【0003】
ファイバレーザ装置に用いる増幅用光ファイバとしては、活性元素が添加されたコアと、コアの外周面を覆うクラッドとを備えている。そして、増幅用光ファイバのクラッドを伝播する励起光が活性元素に吸収されることで、活性元素が励起状態とされて、励起状態とされた活性元素の誘導放出により、コアを伝播する被増幅光が増幅されて出射されるというものである。従って、増幅用光ファイバに入射された励起光は活性元素に無駄なく吸収されることが望ましい。しかし、増幅用光ファイバにおいては、励起光の一部がクラッドのみを伝播して活性元素に吸収されないスキュー光が生じることが知られている。
【0004】
下記特許文献1には、このようなスキュー光を抑制する増幅用光ファイバが記載されている。この増幅用光ファイバにおいては、励起光が伝播するクラッド(第2コアと記載されている)の断面における外形が四角形にされたり、クラッドの一部に励起光の散乱手段が設けられたりしている。こうしてこの増幅用光ファイバは、励起光のスキュー光が散乱されて、散乱された光がコアを通過するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3479219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の増幅用光ファイバは、上記のようにクラッドを特別な形状にする必要があり、増幅用光ファイバを製造するための母材作製段階からスキュー光を抑制する特別な設計をする必要がある。このため増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成でスキュー光を低減することができ、励起光が効率良く吸収される光学部品が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学部品は、活性元素が添加されるコアと、前記活性元素を励起する励起光を伝播するクラッドと、を有する増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの長さ方向において、互いに非連続である複数のクラッド部分同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される光結合部と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
光結合部においては、クラッド部分同士が光学的に結合するように一体化されているため、光結合部においては、クラッドの光を伝播する条件が、光結合部以外におけるクラッドの光を伝播する条件と異なる。従って、クラッドを伝播する励起光は、光結合部において、一方のクラッド部分をそのまま進行する場合においても、一方のクラッド部分から他のクラッド部分に伝播する場合においても、伝播モードが大きく乱れる。従って、励起光のスキュー光の伝播モードも乱れて、スキュー光が低減される。従って、このような光学部品によれば、増幅用光ファイバの長さ方向全体にわたって、クラッドの外形を特別な形状にする必要がなく、簡易な構成でスキュー光を低減することができ、増幅用光ファイバが励起光を効率良く吸収することができる。そして、このような構成にすることにより、増幅用光ファイバの母材作成段階から特別な設計にする必要がなく、増幅用光ファイバを用いて励起光を効率良く吸収することができる光学部品を容易に製造することができる。
【0010】
なお、本明細書において、「結合」とは、特に言及する場合を除いて、光が伝播可能な状態を意味する。従って、クラッド部分同士が光学的に結合するということは、結合しているそれぞれのクラッド部分同士を光が伝播可能とされることを意味する。
【0011】
さらに、前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分は、他の少なくとも1つの前記クラッド部分と、互いに逆方向を向いて一体化されることが好ましい。
【0012】
クラッド部分同士が、互いに逆方向を向いて接続されるとは、増幅用光ファイバの一端側から他端側に向かう方向が、互いに逆の方向を向いた状態で、クラッド部分同士が接続されていることを意味する。このような光学部品によれば、増幅用光ファイバの一端側から伝播する励起光の一部が、特定のクラッド部分からこの特定のクラッド部分と逆方向を向いている他のクラッド部分に伝播することにより、励起光を増幅用光ファイバに対して双方向に伝播させることができる。
【0013】
或いは、前記光結合部において、それぞれの前記クラッド部分同士は、互いに同じ方向を向いて一体化されることが好ましい。
【0014】
クラッド部分同士が同じ方向を向いて接続されることで、励起光が、特定のクラッド部分からこの特定のクラッド部分と異なる他のクラッド部分に伝播しても、励起光は、増幅用光ファイバの一端側から他端側に向かう方向に伝播する。すなわち、増幅用光ファイバにおいて、励起光が伝播する方向は変わらない。従って、増幅用光ファイバの一端側に励起光源が配置される場合、この励起光源に励起光が戻ることを防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、前記クラッドは、長手方向に垂直な外形が非円形であり、前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分の外形と、他の少なくとも1つの前記クラッド部分の外形とが、互いに異なる向きとされることが好ましい。
【0016】
クラッドの外形が非円形であれば、クラッドの外形が円形の場合と比べて、スキュー光を低減することができる。そして、光結合部において、特定のクラッド部分と、この特定のクラッド部分と外形の向きが異なる他のクラッド部分においては光の伝播の条件が異なる。従って、特定のクラッド部分から、この特定のクラッド部分と外形の向きが異なる他のクラッド部分に伝播する励起光は、それぞれのクラッド部分における光の伝播の条件の違いにより、伝播モードがより乱れる。従って、スキュー光をより低減することができる。
【0017】
また、増幅用光ファイバにおける効率をより高くするために、光学部品は、複数の前記光結合部を備えることが好ましい。
【0018】
また、それぞれの前記クラッド部分同士は、融着により互いに一体化されることが好ましい。クラッド部分同士が融着されることにより、光結合部におけるそれぞれのクラッドの外周面は、光結合部以外におけるクラッドの外周面よりも形状が乱れる。このクラッドの外周面の形状の乱れにより、励起光の伝播モードが乱れる。このようにして、スキュー光の伝播モードを乱すことにより、スキュー光をより低減することができる。
【0019】
また、本発明の光ファイバ増幅器は、上記のいずれかに記載の光学部品と、前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0020】
このような光ファイバ増幅器によれば、光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収することができるので、同じパワーの励起光源であっても、より高い増幅率とすることができる。
【0021】
また、本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかに記載の光学部品と、前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、前記増幅用光ファイバの前記コアに入射する種光を出射する種光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
このようなファイバレーザ装置は、光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収するとこができるため、種光の増幅効率が高いMO−PA(Master Oscillator - Power Amplifier)型のファイバレーザ装置とすることができる。
【0023】
或いは、本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかに記載の光学部品と、前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部を反射するミラーと、前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ、前記第1ミラーが反射する光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーと、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
このようなファイバレーザ装置は、光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収するとこができるため、増幅効率が高い共振型のファイバレーザ装置とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図2】図1の増幅用光ファイバの長手方向に垂直な断面における構造の様子を示す図である。
【図3】図1に示す光結合部の拡大図である。
【図4】図3に示す光結合部のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図7】光学部品の第1変形例を示す図である。
【図8】図7のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。
【図9】光学部品の第2変形例を示す図である。
【図10】光学部品の第3変形例を示す図である。
【図11】光学部品の第4変形例を示す図である。
【図12】実施例1、比較例1のファイバ長を変化させたときの励起光の吸収量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、ファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0029】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、種光を出射する種光源10と、種光を増幅する光ファイバ増幅器6とを備え、光ファイバ増幅器6は、励起光を出射する励起光源20と、種光及び励起光が入射する増幅用光ファイバ30を備える光学部品51と、増幅用光ファイバ30に種光及び励起光を入射するためのコンバイナ40と、を主な構成として備える。つまり、ファイバレーザ装置1は、種光源10及び光ファイバ増幅器6によるMO−PA型のファイバレーザ装置とされる。
【0030】
種光源10は、例えば、レーザダイオードから成るレーザ光源や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。この種光源10から出射される種光は、特に制限されるものではないが、例えば、後述のように増幅用光ファイバ30にイッテルビウム(Yb)が添加される場合、波長が1070nmのレーザ光とされる。また、種光源10は、コア、及び、コアを取り囲むクラッドから構成される種光用ファイバ15に接続されており、種光源10から出射される種光は、種光用ファイバ15のコアを伝播する。種光用ファイバ15としては、例えば、シングルモードファイバが挙げられ、この場合、種光は種光用ファイバ15をシングルモード光として伝播する。
【0031】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成される。それぞれのレーザダイオード21から出射される励起光は、特に制限されるものではないが、例えば、後述のように増幅用光ファイバ30にYbが添加される場合、波長が915nmのレーザ光とされる。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は、励起光用ファイバ22に接続されており、レーザダイオード21から出射される励起光は、励起光用ファイバ22を伝播する。励起光用ファイバ22としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、励起光は励起光用ファイバ22をマルチモード光として伝播する。
【0032】
図2は、増幅用光ファイバ30の長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ30は、コア31と、コア31を取り囲むクラッド32と、クラッド32を取り囲む外側クラッド33と、外側クラッド33を被覆する被覆層34とから構成される。また、本実施形態において、コア31、及び、外側クラッド33、及び、被覆層34の断面における外形は円形とされるが、クラッド32の外形は、非円形とされ、本実施形態においては、略正多角形とされる。
【0033】
クラッド32の屈折率はコア31の屈折率よりも低く、外側クラッド33の屈折率はクラッド32の屈折率よりもさらに低くされている。このような、コア31を構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等の元素、及び、励起光源20から出射される励起光により励起されるYb等の活性元素が添加された石英が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等を挙げることができる。また、クラッド32を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英を挙げることができる。なお、クラッド32の材料には、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素を添加してもよい。また、外側クラッド33を構成する材料としては、樹脂または石英が挙げられ、例えば、樹脂としては、紫外線硬化樹脂が挙げられ、石英としては、クラッド32よりもさらに屈折率が低くなるように、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素を添加された石英が挙げられる。また、被覆層34を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられ、外側クラッド33が樹脂の場合、外側クラッドを構成する樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂とされる。
【0034】
更に図1に示すように光学部品51は、増幅用光ファイバ30の複数の部分が一体化された光結合部61を備える。図3は、光結合部61の拡大図であり、図4は、図3に示す光結合部61のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。図3、4に示すように、光結合部61においては、増幅用光ファイバ30の外側クラッド33と被覆層34とがそれぞれ除去されており、クラッド32の一部であるクラッド部分32a、及び、クラッド32の他の一部であり、クラッド部分32aと長手方向に非連続であるクラッド部分32bが、それぞれ露出されている。外側クラッド33が樹脂から成る場合は、外側クラッド33を剥離により除去すれば良く、外側クラッド33が石英から成る場合は、外側クラッド33をエッチングにより除去すれば良い。また、図1、図3に示すように、光結合部61においては、クラッド部分32aと、クラッド部分32bとが、互いに逆側を向いている。つまり、クラッド部分32aとクラッド部分32bとは、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向が、互いに逆の方向を向いた状態とされている。さらに、図4に示すように、クラッド部分32aの外形と、クラッド部分32bの外形とが、互いに異なる向きとされている。つまり、光結合部61において、クラッド部分32aの外形、及び、クラッド部分32bの外形を互いに重ね合わせようとしても、それぞれの外形は互いに一致しない向きとされている。
【0035】
そして、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、互いに長手方向に沿って並べられた状態で、融着されて一体化されている。従って、クラッド部分32aとクラッド部分32bとの間で光の伝播が可能とされており、クラッド部分32aとクラッド部分32bとは互いに結合している。このクラッド部分32a、32bが一体化される長さLは特に限定されないが、例えば、5mm〜50mmとされる。
【0036】
なお、光結合部61のクラッド部分32aとクラッド部分32bとが一体化されている部分は、樹脂69により被覆されている。樹脂69の屈折率は、クラッド32の屈折率よりも低くされ、このような樹脂69としては、例えば、外側クラッド33を樹脂で構成する場合と同様の樹脂を挙げることができる。
【0037】
このように光結合部61において、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが長手方向に沿って一体化されることにより、増幅用光ファイバ30の一部は、クラッド部分32aからクラッド部分32bまでループ部71とされる。このループ部71の両端は、上述のように、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、互いに逆側を向いているため、光結合部61の一方に接続されている。
【0038】
また、コンバイナ40は、増幅用光ファイバ30の一端36において、種光用ファイバ15及びそれぞれの励起光用ファイバ22と、増幅用光ファイバ30とを接続している。具体的には、コンバイナ40において、種光用ファイバ15のコアが、増幅用光ファイバ30のコア31に端面接続され、さらに、それぞれの励起光用ファイバ22のコアが、クラッド32に端面接続されている。従って、種光源10から出射する種光、及び、励起光源20から出射する励起光は、増幅用光ファイバ30の一端36側からそれぞれ、コア31及びクラッド32に入射する。
【0039】
そして、増幅用光ファイバ30の他端37は、出射端とされている。
【0040】
このようにファイバレーザ装置1は、増幅用光ファイバ30における種光の入射側から励起光が入射する、いわゆる前方励起型のファイバレーザ装置とされている。
【0041】
次にファイバレーザ装置1の動作について説明する。
【0042】
まず、種光源10から被増幅光としての種光が出射されると共に、励起光源20から励起光が出射される。このとき種光源10から出射される種光は、上述のように、例えば、波長が1070nmとされる。種光源10から出射された種光は、種光用ファイバ15のコアを伝播して、コンバイナ40において、増幅用光ファイバ30の一端36からコア31に入射して、コア31を伝播する。
【0043】
一方、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から出射される励起光は、上述のように、例えば、波長が915nmとされる。そして、それぞれのレーザダイオード21から出射された励起光は、励起光用ファイバ22を伝播しコンバイナ40に入射し、増幅用光ファイバ30の一端36からクラッド32に入射して、クラッド32を主に伝播する。このクラッド32を伝播する励起光には、一般的にスキュー光が含まれている。
【0044】
そして、クラッド32を伝播する励起光は、コア31に添加される活性元素に吸収されながら光結合部61に到達する。上述のように、光結合部61においては、クラッド部分32a、32b同士が光学的に結合して一体化されているため、クラッド32の光を伝播する条件が、光結合部61以外におけるクラッド32の光を伝播する条件と異なっている。特に本実施形態においては、クラッド部分32a及びクラッド部分32bが融着により一体化されることによる、光結合部61におけるクラッド32の外周面の形状の乱れにより、光結合部61におけるクラッド32の光を伝播する条件は、光結合部61以外におけるクラッド32の光を伝播する条件と更に異なっている。このため、光結合部61におけるクラッド部分32aを伝播する励起光の一部は、クラッド部分32aを伝播しながら、伝播モードが乱され、更に増幅用光ファイバ30の一端36側(励起光源20側)から他端37(出射端)側に向けて、クラッド部分32aを伝播し、光結合部61をクラッド部分32a側から出射する。このとき、スキュー光として光結合部61に到達する光は、上記の伝播モードの乱れにより、通常の励起光として光結合部61から出射する。そして、クラッド部分32a側から光結合部61を通過した励起光の一部は、ループ部71を増幅用光ファイバの一端36側から他端37側に伝播する。
【0045】
また、クラッド部分32a、及び、クラッド部分32bが結合しているため、光結合部61におけるクラッド部分32aを伝播する励起光の他の一部は、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する。このとき、励起光の他の一部は、クラッド部分32a、32b間を伝播することにより、伝播モードが乱れて伝播する。さらに、上述のように、光結合部61において、クラッド部分32aの外形の向きと、クラッド部分32bの外形の向きが異なっている。従って、クラッド部分32aにおける光の伝播の条件と、クラッド部分32bにおける光の伝播の条件とが異なり、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する励起光は、クラッド部分32aとクラッド部分32bとの光の伝播の条件の違いにより、さらに伝播モードが乱れる。このようにクラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する励起光は、伝播モードが乱れて、光結合部61をクラッド部分32b側から出射する。このとき、スキュー光として光結合部61に到達する光は、上記の伝播モードの乱れにより、通常の励起光として光結合部61から出射する。そして、光結合部61をクラッド部分32b側から出射した励起光の他の一部は、上述のようにクラッド部分32aとクラッド部分32bとが互いに逆側を向いているため、ループ部71を増幅用光ファイバ30の他端37側から一端36側に伝播する。
【0046】
上述のように、光結合部61をクラッド部分32a側から出射した励起光は増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に伝播し、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する励起光は、増幅用光ファイバ30の他端37側から一端36側に伝播する。従って、少なくとも増幅用光ファイバ30のループ部71おいては、励起光が双方向で伝播する。
【0047】
更にループ部71から光結合部61のクラッド部分32bに伝播する励起光は、一部がクラッド部分32bを伝播し、他の一部がクラッド部分32bからクラッド部分32aに伝播する。また、ループ部71から光結合部61のクラッド部分32aに伝播する励起光は、一部がクラッド部分32aを伝播し、他の一部がクラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する。ループ部71から光結合部61に伝播する光についても、上記説明と同様にして、励起光の伝播モードが乱されて、スキュー光が低減される。
【0048】
こうして、増幅用光ファイバ30において、スキュー光が低減された励起光がコア31を通過するときに、コア31に添加されている活性元素に吸収されて、活性元素を励起する。励起された活性元素は、誘導放出を起こし、この誘導放出によりコア31を伝播する種光が増幅されて、出射光として増幅用光ファイバ30の他端37から出射される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の光学部品51によれば、光結合部61において、クラッド部分32a、32b同士が光学的に結合するように一体化されているため、光結合部61におけるクラッド32の励起光の伝播条件が、光結合部61以外におけるクラッドの励起光の伝播条件と異なる。従って、クラッド32を伝播する励起光は、光結合部61において、クラッド部分32aのみを進行する場合においても、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する場合においても、伝播モードが大きく乱れる。このため、励起光のスキュー光の伝播モードも乱れて、スキュー光が低減される。従って、このような光学部品51によれば、増幅用光ファイバ30の長さ方向全体にわたって、クラッド32の外形を特別な形状にする必要がなく、簡易な構成でスキュー光を低減することができ、励起光を効率良く吸収することができる。
【0050】
また、光学部品51においては、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバ30が効率よく励起光を吸収することができるので、光ファイバ増幅器6は、同じパワーの励起光源20であっても、より高い増幅率とすることができ、ファイバレーザ装置1は、種光の増幅効率を高くすることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図5は、本発明の第2実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0052】
本実施形態のファイバレーザ装置2においては、第1実施形態の光ファイバ増幅器6の代わりに光ファイバ増幅器7を備える点において、第1実施形態のファイバレーザ装置1と異なり、光ファイバ増幅器7は、第1実施形態の光学部品51に代わり光学部品52を備える点において、第1実施形態の光ファイバ増幅器6と異なる。
【0053】
光学部品52は、第1実施形態と同様の増幅用光ファイバ30を備える。そして、光学部品52は、第1実施形態の増幅用光ファイバ30における光結合部61の代わりに光結合部62を備える。第1実施形態の光結合部61においては、クラッド部分32aと、クラッド部分32bとが、互いに逆側を向いて一体化されているのに対し、本実施形態の光結合部62においては、クラッド部分32a、32bが互いに同じ方向を向いて一体化されている。つまり、第1実施形態の光結合部61においては、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向が、互いに逆の方向を向いた状態で長手方向に揃えられて、一体化されているのに対し、本実施形態の光結合部62においては、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向が、互いに同じ方向を向いた状態で長手方向に揃えられて、一体化されている。
【0054】
なお、光結合部62におけるクラッド部分32a、32bの一体化の状態は、第1実施形態の光結合部61におけるクラッド部分32a、32bの一体化の状態と同様である。従って、光結合部62を拡大すると、第1実施形態の光結合部61と異なりクラッド部分32a、32bが互いに同じ向きを向いているものの、図3に示す状態と同様に見え、光結合部62の断面における構造は、図4に示す光結合部61の断面における構造と同様に見える。
【0055】
そして、光結合部61において、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが長手方向に沿って一体化されることにより、増幅用光ファイバ30の一部は、クラッド部分32aからクラッド部分32bまでループ部72とされる。ただし、第1実施形態の増幅用光ファイバ30のループ部71は、光結合部61の一端36側に接続されているのに対して、本実施形態の増幅用光ファイバ30のループ部72は、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、互いに同じ方向を向いているため、光結合部62を挟むようにして接続されている。
【0056】
本実施形態による増幅用光ファイバ30によれば、クラッド部分32a、32b同士が同じ方向を向いて接続されることで、励起光が、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播しても、励起光は、ループ部72において、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向に伝播する。すなわち、増幅用光ファイバ30として、励起光が伝播する方向は変わらない。従って、増幅用光ファイバ30の一端36側に配置される励起光源20に励起光が戻ることを防止することができる。このため、増幅用光ファイバ30を備える光ファイバ増幅器7及びファイバレーザ装置2は、優れた信頼性とすることができる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図6は、本発明の第3実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0058】
図6に示すように、本実施形態のファイバレーザ装置3は、第1実施形態における光ファイバ増幅器6と同様の光ファイバ増幅器6と、増幅用光ファイバ30の一端36側に接続される第1共振用ファイバ16と、第1共振用ファイバ16に設けられる第1ミラーとしての第1FBG(Fiber Bragg Grating)81と、増幅用光ファイバ30の他端37側に接続される第2共振用ファイバ17と、第2共振用ファイバ17に設けられる第2ミラーとしての第2FBG82とを主な構成として備える。このように、本実施形態のファイバレーザ装置3は、共振型のファイバレーザ装置とされる。
【0059】
第1共振用ファイバ16は、例えば、第1実施形態における種光用ファイバ15と同様の構成とされ、一端が種光用ファイバ15と同様にして、コンバイナ40で増幅用光ファイバ30に接続されている。また、第1共振用ファイバ16の他端には、無反射終端19が設けられている。さらに、第1共振用ファイバ16のコアには、第1FBG81が形成されている。こうして第1FBG81は、増幅用光ファイバ30の一端36側に設けられている。第1FBG81は、第1共振用ファイバ16の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG81は、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ30の活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長を反射するように構成されている。第1FBG81は、上述のように活性元素がYbである場合、例えば1070nmにおいて反射率が100%とされる。
【0060】
また、増幅用光ファイバ30の他端37には、第2共振用ファイバ17が接続されている。第2共振用ファイバ17は、例えば、第1共振用ファイバと同様の構成とされ、第2共振用ファイバ17のコアが増幅用光ファイバ30のコアと結合している。第2共振用ファイバ17のコアには、第2FBG82が設けられている。こうして第2FBG82は、増幅用光ファイバ30の他端37側に設けられている。第2FBG82は、第2共振用ファイバ17の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG81が反射する光と同じ波長の光を第1FBG81よりも低い反射率で反射するように構成され、例えば、第1FBG81が反射する光と同じ波長の光が50%の反射率で反射されるように構成されている。
【0061】
このようなファイバレーザ装置3においては、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出射されると、この励起光がコンバイナ40において、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入射する。そして、第1実施形態と同様にして、増幅用光ファイバ30のコア31に添加されている活性元素を励起状態とする。そして励起状態とされた活性元素は、特定の波長の自然放出光を放出する。このときの自然放出光は、例えば、中心波長が1070nmで一定の帯域を有する光である。この自然放出光は、増幅用光ファイバ30のコア31を伝播して、第1共振用ファイバ16のコアに形成さている第1FBG81により反射され、反射された光が、増幅用光ファイバ30のコア31を介して、第2共振用ファイバ17に形成されている第2FBG82まで伝播し、第2FBG82で反射されて、光の共振が生じる。そして、光が、増幅用光ファイバ30のコア31を伝播するときに増幅されて、一部の光が第2FBG82を透過して、第2共振用ファイバ17から出射される。
【0062】
本実施形態のファイバレーザ装置3によれば、光学部品51においては、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバ30が効率よく励起光を吸収するとこができるため、増幅効率が高い共振型のファイバレーザ装置とすることができる。
【0063】
なお、本実施形態において、第1ミラー、第2ミラーとして、第1FBG81、だい2FBG82を例に説明したが、第1ミラー、第2ミラーは、FBGに限定されない。
【0064】
以上、本発明について、第1〜第3実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、それぞれ異なる光学部品を示したが、本発明の光学部品は、光結合部において、互いに非連続である複数のクラッド部分同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される限りにおいて第1実施形態及び第2実施形態の例に限らない。ここで、光学部品の変形例について説明する。以下の変形例は、第1、第2実施形態で説明した、MO−PA型のファイバレーザ装置、及び、第3実施形態で説明した共振型のファイバレーザ装置のどちらにも適用可能である。
【0066】
図7は、光学部品の第1変形例を示す図であり、図8は、図7のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。図7、図8に示すように、本変形例の光学部品53は、光結合部63において、互いに非連続である4カ所のクラッド部分32a、32b、32c、32dが、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って融着により一体化されている。従って、それぞれのクラッド部分32a〜32dは、互いに結合している。そして、この光結合部63により、ループ部73a〜73cが形成されている。ループ部73aの両端は、クラッド部分32a及びクラッド部分32bであり、光結合部63の一方側に接続されている。従って、光結合部63において、クラッド部分32bは、クラッド部分32aと逆方向を向いている。また、ループ部73bの両端は、クラッド部分32b及びクラッド部分32cであり、光結合部63の一方側に接続されている。従って、光結合部63において、クラッド部分32cは、クラッド部分32bと逆方向を向いている。また、ループ部73cの両端は、クラッド部分32c及びクラッド部分32dであり、光結合部63の一方側に接続されている。従って、光結合部63において、クラッド部分32dは、クラッド部分32cと逆方向を向いている。このように光結合部63において、クラッド部分32aとクラッド部分32cとが同じ方向を向き、クラッド部分32bとクラッド部分32dとが同じ方向を向き、クラッド部分32a、32cと、クラッド部分32b、32dとが、互いに逆の方向を向いている。このような光学部品によれば、光結合部63において、少なくとも1つのクラッド部分32a、32cが、他の少なくとも1つのクラッド部分32b、32dと、互いに逆方向を向いて一体化されるため、増幅用光ファイバ30の一端側から伝播する励起光の一部が、互いに逆方向を向いたクラッド部分に伝播することにより、励起光を増幅用光ファイバ30に対して双方向に伝播させることができる。このような変形例によれば、1つの光結合部を設けることにより、複数の光結合部を設ける場合と同様の効果を得ることができる。従って、光結合部の数を減らすことができ、光学部品53を容易に製造することができると共に光学部品52全体として、コンパクトに収納することができる。
【0067】
また、図9は、光学部品の第2変形例を示す図である。本変形例の光学部品54は、光結合部64において、互いに非連続である4カ所のクラッド部分32a、32b、32c、32dが、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化されている。具体的には、光結合部64において、クラッド部分32a〜32dが同じ方向を向いて、互いに融着により一体化されている。従って、それぞれのクラッド部分32a〜32dは、互いに結合している。こうして増幅用光ファイバ30において、クラッド部分32aとクラッド部分32bとの間がループ部74aとされ、クラッド部分32bとクラッド部分32cとの間がループ部74bとされ、クラッド部分32cとクラッド部分32dとの間がループ部74cとされる。このような光学部品によれば、クラッド部分32a〜クラッド部分32dが同じ方向を向いて接続されることで、励起光が、クラッド部分同士を励起光が伝播しても、励起光は、ループ部74a〜74cにおいて、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向に伝播する。すなわち、増幅用光ファイバ30として、励起光が伝播する方向は変わらない。従って、増幅用光ファイバ30の一端36側に配置される励起光源に励起光が戻ることを防止することができる。本変形例の光学部品54によれば、上記第1変形例と同様の効果を有することができ、さらに、信号光の入射方向と出射方向とが揃うため、増幅用光ファイバ30を同一方向で巻き取ることができ、よりコンパクトに収納することができる。また、このような光学部品を図1に示すファイバレーザ装置1に適用する場合において、種光源10へ励起光が伝播することを防止することができる。
【0068】
また、図10は、光学部品の第3変形例を示す図である。本変形例の光学部品55は、互いに逆方向を向いた一組のクラッド部分が一体化された光結合部が複数設けられ、光結合部65a〜65dとされている。この構成は、第1実施形態における光学部品51のループ部71に更に複数の光結合部が形成された構成とされ、図10の光結合部65aを図1に示す光結合部61とすれば、図1に示すループ部71に光結合部65b〜65cが設けられた構成となる。このような光学部品によれば、複数の光結合部65a〜65dを設けることにより、より多くのスキュー光を乱すことができ、増幅用光ファイバ30による励起光の吸収効率をより高くすることができる。
【0069】
また、図11は、光学部品の第4変形例を示す図である。図11に示すように、光学部品56は、第2実施形態における光学部品52の光結合部62と同様の光結合部が複数設けられ、光結合部66a〜66cとされ、複数のループ部76a〜76cとされている。このような光学部品によれば、上記の第3変形例と同様の効果を有することができ、さらに、信号光の入射方向と出力方向が揃うため、増幅用光ファイバ30を同一方向で巻き取ることができ、よりコンパクトに収納することができる。また、このような光学部品を図1に示すファイバレーザ装置1に適用する場合において、種光源10へ励起光が伝播することを防止することができる。
【0070】
また、上記実施形態、及び、上記変形例においては、各光結合部において、それぞれのクラッド部分同士が、融着されることで、光学的に結合するように、一体化されていた。しかし本発明はこれに限らない。
【0071】
また、上記実施形態、及び、上記変形例においては、クラッド32の外形が互いに異なるものとしたが、クラッド32の外形は、互いに同じ方向を向いていても良い。また、クラッド32の外形が非円形とされる例で説明したが、本発明はこれに限らず、コア31の外形が円形であっても良い。
【0072】
また、第2実施形形態の光学部品52を第3実施形態の共振型のファイバレーザ装置に適用しても良い。
【0073】
また、上記実施形態において、励起光は、増幅用光ファイバ30の一端36から入射されて、他端に伝播するとしたが、励起光が増幅用光ファイバ30の他端37側から入射する後方励起型としても良く、励起光が増幅用光ファイバの一端及び他端から入射する双方励起型としても良い。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0075】
(実施例1)
長さが10mの増幅用光ファイバを準備した。この増幅用光ファイバは、直径が10μmでありYbが添加されたコアと、コアの外周面を囲み外径が125μmのクラッドと、外径が250μmの樹脂からなる外側クラッドとを備えていた。この増幅用光ファイバを両端部からそれぞれ3mの場所において、外側クラッドを約15mm剥離した。次に、増幅用光ファイバの両端部を揃えて、外側クラッドが剥離されたそれぞれのクラッド部分を長さ10mmに渡って、長手方向に沿って融着し、長さ10mmにわたる光結合部とした。このとき光結合部におけるコア間距離は、約100μmであった。こうして、第1実施形態の光学部品と同様の光学部品を作製した。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様の増幅用光ファイバを準備した。次に、増幅用光ファイバの一端から4mの場所を起点として、そこから直径60cmの円状に1周巻いた。次に、先の起点の場所、及び、1周巻いた後に先の起点の場所と重なる場所の外側クラッドを第1実施形態と同様に剥離し、外側クラッドが剥離されたそれぞれのクラッド部分を第1実施形態と同じようにして融着した。こうして、第2実施形態の光学部品と同様の光学部品を作製した。
【0077】
(比較例1)
実施例1と同様の増幅用光ファイバを準備し、特に光結合部を設けなかった。
【0078】
次に実施例1、2、比較例1の増幅用光ファイバの一端から波長が915nmの励起光を入射し、励起光の吸収量を調べた。その結果、実施例1の励起光の吸収量は20dBであり、実施例2の励起光の吸収量は19dBであり、比較例の励起光の吸収量は、11dBであった。従って、実施例1、実施例2は励起光の吸収率が高いことが分かった。
【0079】
次に実施例1のファイバ長と比較例1のファイバ長を変化させたときの励起光の吸収量を調べた。その結果を図12に示す。図12に示すように、増幅用光ファイバのファイバ長を変化させても、励起光の吸収量が然程変わらなくなった長さにおいて、実施例1の光学部品は、比較例1の光学部品よりも励起光の吸収量が大きいことが分かった。従って、実施例1の光学回路においては、比較例1の光学部品よりも、スキュー光が低減されていることが分かった。
【0080】
このことから、本発明の光学部品によれば、スキュー光が低減され、増幅用光ファイバで励起光を効率的に吸収することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明によれば、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置が提供される。
【符号の説明】
【0082】
1、2、3・・・ファイバレーザ装置
6、7・・・光ファイバ増幅器
10・・・種光源
15・・・種光用ファイバ
16・・・第1共振用ファイバ
17・・・第2共振用ファイバ
20・・・励起光源
21・・・レーザダイオード
22・・・励起光用ファイバ
30・・・増幅用光ファイバ
31・・・コア
32・・・クラッド
32a、32b、32c、32d・・・クラッド部分
33・・・外側クラッド
34・・・被覆層
37・・・他端
40・・・コンバイナ
51、52、53、54、55、56・・・光学部品
61、62、63、64、65a〜65d、66a〜66d・・・光結合部
69・・・樹脂
71、72、73a〜73c、74a〜74c、76a〜76c・・・ループ部
81・・・第1FBG
82・・・第2FBG
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅用光ファイバを用いたファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高い小さなビームスポットが得られ、更に、非接触加工が可能であることから、レーザ加工分野、医療分野等、様々な分野において用いられている。特に加工分野や医療分野において用いられるファイバレーザ装置においては、高出力化がされている。
【0003】
ファイバレーザ装置に用いる増幅用光ファイバとしては、活性元素が添加されたコアと、コアの外周面を覆うクラッドとを備えている。そして、増幅用光ファイバのクラッドを伝播する励起光が活性元素に吸収されることで、活性元素が励起状態とされて、励起状態とされた活性元素の誘導放出により、コアを伝播する被増幅光が増幅されて出射されるというものである。従って、増幅用光ファイバに入射された励起光は活性元素に無駄なく吸収されることが望ましい。しかし、増幅用光ファイバにおいては、励起光の一部がクラッドのみを伝播して活性元素に吸収されないスキュー光が生じることが知られている。
【0004】
下記特許文献1には、このようなスキュー光を抑制する増幅用光ファイバが記載されている。この増幅用光ファイバにおいては、励起光が伝播するクラッド(第2コアと記載されている)の断面における外形が四角形にされたり、クラッドの一部に励起光の散乱手段が設けられたりしている。こうしてこの増幅用光ファイバは、励起光のスキュー光が散乱されて、散乱された光がコアを通過するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3479219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の増幅用光ファイバは、上記のようにクラッドを特別な形状にする必要があり、増幅用光ファイバを製造するための母材作製段階からスキュー光を抑制する特別な設計をする必要がある。このため増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成でスキュー光を低減することができ、励起光が効率良く吸収される光学部品が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学部品は、活性元素が添加されるコアと、前記活性元素を励起する励起光を伝播するクラッドと、を有する増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの長さ方向において、互いに非連続である複数のクラッド部分同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される光結合部と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
光結合部においては、クラッド部分同士が光学的に結合するように一体化されているため、光結合部においては、クラッドの光を伝播する条件が、光結合部以外におけるクラッドの光を伝播する条件と異なる。従って、クラッドを伝播する励起光は、光結合部において、一方のクラッド部分をそのまま進行する場合においても、一方のクラッド部分から他のクラッド部分に伝播する場合においても、伝播モードが大きく乱れる。従って、励起光のスキュー光の伝播モードも乱れて、スキュー光が低減される。従って、このような光学部品によれば、増幅用光ファイバの長さ方向全体にわたって、クラッドの外形を特別な形状にする必要がなく、簡易な構成でスキュー光を低減することができ、増幅用光ファイバが励起光を効率良く吸収することができる。そして、このような構成にすることにより、増幅用光ファイバの母材作成段階から特別な設計にする必要がなく、増幅用光ファイバを用いて励起光を効率良く吸収することができる光学部品を容易に製造することができる。
【0010】
なお、本明細書において、「結合」とは、特に言及する場合を除いて、光が伝播可能な状態を意味する。従って、クラッド部分同士が光学的に結合するということは、結合しているそれぞれのクラッド部分同士を光が伝播可能とされることを意味する。
【0011】
さらに、前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分は、他の少なくとも1つの前記クラッド部分と、互いに逆方向を向いて一体化されることが好ましい。
【0012】
クラッド部分同士が、互いに逆方向を向いて接続されるとは、増幅用光ファイバの一端側から他端側に向かう方向が、互いに逆の方向を向いた状態で、クラッド部分同士が接続されていることを意味する。このような光学部品によれば、増幅用光ファイバの一端側から伝播する励起光の一部が、特定のクラッド部分からこの特定のクラッド部分と逆方向を向いている他のクラッド部分に伝播することにより、励起光を増幅用光ファイバに対して双方向に伝播させることができる。
【0013】
或いは、前記光結合部において、それぞれの前記クラッド部分同士は、互いに同じ方向を向いて一体化されることが好ましい。
【0014】
クラッド部分同士が同じ方向を向いて接続されることで、励起光が、特定のクラッド部分からこの特定のクラッド部分と異なる他のクラッド部分に伝播しても、励起光は、増幅用光ファイバの一端側から他端側に向かう方向に伝播する。すなわち、増幅用光ファイバにおいて、励起光が伝播する方向は変わらない。従って、増幅用光ファイバの一端側に励起光源が配置される場合、この励起光源に励起光が戻ることを防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、前記クラッドは、長手方向に垂直な外形が非円形であり、前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分の外形と、他の少なくとも1つの前記クラッド部分の外形とが、互いに異なる向きとされることが好ましい。
【0016】
クラッドの外形が非円形であれば、クラッドの外形が円形の場合と比べて、スキュー光を低減することができる。そして、光結合部において、特定のクラッド部分と、この特定のクラッド部分と外形の向きが異なる他のクラッド部分においては光の伝播の条件が異なる。従って、特定のクラッド部分から、この特定のクラッド部分と外形の向きが異なる他のクラッド部分に伝播する励起光は、それぞれのクラッド部分における光の伝播の条件の違いにより、伝播モードがより乱れる。従って、スキュー光をより低減することができる。
【0017】
また、増幅用光ファイバにおける効率をより高くするために、光学部品は、複数の前記光結合部を備えることが好ましい。
【0018】
また、それぞれの前記クラッド部分同士は、融着により互いに一体化されることが好ましい。クラッド部分同士が融着されることにより、光結合部におけるそれぞれのクラッドの外周面は、光結合部以外におけるクラッドの外周面よりも形状が乱れる。このクラッドの外周面の形状の乱れにより、励起光の伝播モードが乱れる。このようにして、スキュー光の伝播モードを乱すことにより、スキュー光をより低減することができる。
【0019】
また、本発明の光ファイバ増幅器は、上記のいずれかに記載の光学部品と、前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0020】
このような光ファイバ増幅器によれば、光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収することができるので、同じパワーの励起光源であっても、より高い増幅率とすることができる。
【0021】
また、本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかに記載の光学部品と、前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、前記増幅用光ファイバの前記コアに入射する種光を出射する種光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
このようなファイバレーザ装置は、光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収するとこができるため、種光の増幅効率が高いMO−PA(Master Oscillator - Power Amplifier)型のファイバレーザ装置とすることができる。
【0023】
或いは、本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかに記載の光学部品と、前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部を反射するミラーと、前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ、前記第1ミラーが反射する光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーと、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
このようなファイバレーザ装置は、光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収するとこができるため、増幅効率が高い共振型のファイバレーザ装置とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図2】図1の増幅用光ファイバの長手方向に垂直な断面における構造の様子を示す図である。
【図3】図1に示す光結合部の拡大図である。
【図4】図3に示す光結合部のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図7】光学部品の第1変形例を示す図である。
【図8】図7のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。
【図9】光学部品の第2変形例を示す図である。
【図10】光学部品の第3変形例を示す図である。
【図11】光学部品の第4変形例を示す図である。
【図12】実施例1、比較例1のファイバ長を変化させたときの励起光の吸収量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、ファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0029】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、種光を出射する種光源10と、種光を増幅する光ファイバ増幅器6とを備え、光ファイバ増幅器6は、励起光を出射する励起光源20と、種光及び励起光が入射する増幅用光ファイバ30を備える光学部品51と、増幅用光ファイバ30に種光及び励起光を入射するためのコンバイナ40と、を主な構成として備える。つまり、ファイバレーザ装置1は、種光源10及び光ファイバ増幅器6によるMO−PA型のファイバレーザ装置とされる。
【0030】
種光源10は、例えば、レーザダイオードから成るレーザ光源や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。この種光源10から出射される種光は、特に制限されるものではないが、例えば、後述のように増幅用光ファイバ30にイッテルビウム(Yb)が添加される場合、波長が1070nmのレーザ光とされる。また、種光源10は、コア、及び、コアを取り囲むクラッドから構成される種光用ファイバ15に接続されており、種光源10から出射される種光は、種光用ファイバ15のコアを伝播する。種光用ファイバ15としては、例えば、シングルモードファイバが挙げられ、この場合、種光は種光用ファイバ15をシングルモード光として伝播する。
【0031】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成される。それぞれのレーザダイオード21から出射される励起光は、特に制限されるものではないが、例えば、後述のように増幅用光ファイバ30にYbが添加される場合、波長が915nmのレーザ光とされる。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は、励起光用ファイバ22に接続されており、レーザダイオード21から出射される励起光は、励起光用ファイバ22を伝播する。励起光用ファイバ22としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、励起光は励起光用ファイバ22をマルチモード光として伝播する。
【0032】
図2は、増幅用光ファイバ30の長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ30は、コア31と、コア31を取り囲むクラッド32と、クラッド32を取り囲む外側クラッド33と、外側クラッド33を被覆する被覆層34とから構成される。また、本実施形態において、コア31、及び、外側クラッド33、及び、被覆層34の断面における外形は円形とされるが、クラッド32の外形は、非円形とされ、本実施形態においては、略正多角形とされる。
【0033】
クラッド32の屈折率はコア31の屈折率よりも低く、外側クラッド33の屈折率はクラッド32の屈折率よりもさらに低くされている。このような、コア31を構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等の元素、及び、励起光源20から出射される励起光により励起されるYb等の活性元素が添加された石英が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等を挙げることができる。また、クラッド32を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英を挙げることができる。なお、クラッド32の材料には、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素を添加してもよい。また、外側クラッド33を構成する材料としては、樹脂または石英が挙げられ、例えば、樹脂としては、紫外線硬化樹脂が挙げられ、石英としては、クラッド32よりもさらに屈折率が低くなるように、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素を添加された石英が挙げられる。また、被覆層34を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられ、外側クラッド33が樹脂の場合、外側クラッドを構成する樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂とされる。
【0034】
更に図1に示すように光学部品51は、増幅用光ファイバ30の複数の部分が一体化された光結合部61を備える。図3は、光結合部61の拡大図であり、図4は、図3に示す光結合部61のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。図3、4に示すように、光結合部61においては、増幅用光ファイバ30の外側クラッド33と被覆層34とがそれぞれ除去されており、クラッド32の一部であるクラッド部分32a、及び、クラッド32の他の一部であり、クラッド部分32aと長手方向に非連続であるクラッド部分32bが、それぞれ露出されている。外側クラッド33が樹脂から成る場合は、外側クラッド33を剥離により除去すれば良く、外側クラッド33が石英から成る場合は、外側クラッド33をエッチングにより除去すれば良い。また、図1、図3に示すように、光結合部61においては、クラッド部分32aと、クラッド部分32bとが、互いに逆側を向いている。つまり、クラッド部分32aとクラッド部分32bとは、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向が、互いに逆の方向を向いた状態とされている。さらに、図4に示すように、クラッド部分32aの外形と、クラッド部分32bの外形とが、互いに異なる向きとされている。つまり、光結合部61において、クラッド部分32aの外形、及び、クラッド部分32bの外形を互いに重ね合わせようとしても、それぞれの外形は互いに一致しない向きとされている。
【0035】
そして、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、互いに長手方向に沿って並べられた状態で、融着されて一体化されている。従って、クラッド部分32aとクラッド部分32bとの間で光の伝播が可能とされており、クラッド部分32aとクラッド部分32bとは互いに結合している。このクラッド部分32a、32bが一体化される長さLは特に限定されないが、例えば、5mm〜50mmとされる。
【0036】
なお、光結合部61のクラッド部分32aとクラッド部分32bとが一体化されている部分は、樹脂69により被覆されている。樹脂69の屈折率は、クラッド32の屈折率よりも低くされ、このような樹脂69としては、例えば、外側クラッド33を樹脂で構成する場合と同様の樹脂を挙げることができる。
【0037】
このように光結合部61において、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが長手方向に沿って一体化されることにより、増幅用光ファイバ30の一部は、クラッド部分32aからクラッド部分32bまでループ部71とされる。このループ部71の両端は、上述のように、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、互いに逆側を向いているため、光結合部61の一方に接続されている。
【0038】
また、コンバイナ40は、増幅用光ファイバ30の一端36において、種光用ファイバ15及びそれぞれの励起光用ファイバ22と、増幅用光ファイバ30とを接続している。具体的には、コンバイナ40において、種光用ファイバ15のコアが、増幅用光ファイバ30のコア31に端面接続され、さらに、それぞれの励起光用ファイバ22のコアが、クラッド32に端面接続されている。従って、種光源10から出射する種光、及び、励起光源20から出射する励起光は、増幅用光ファイバ30の一端36側からそれぞれ、コア31及びクラッド32に入射する。
【0039】
そして、増幅用光ファイバ30の他端37は、出射端とされている。
【0040】
このようにファイバレーザ装置1は、増幅用光ファイバ30における種光の入射側から励起光が入射する、いわゆる前方励起型のファイバレーザ装置とされている。
【0041】
次にファイバレーザ装置1の動作について説明する。
【0042】
まず、種光源10から被増幅光としての種光が出射されると共に、励起光源20から励起光が出射される。このとき種光源10から出射される種光は、上述のように、例えば、波長が1070nmとされる。種光源10から出射された種光は、種光用ファイバ15のコアを伝播して、コンバイナ40において、増幅用光ファイバ30の一端36からコア31に入射して、コア31を伝播する。
【0043】
一方、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から出射される励起光は、上述のように、例えば、波長が915nmとされる。そして、それぞれのレーザダイオード21から出射された励起光は、励起光用ファイバ22を伝播しコンバイナ40に入射し、増幅用光ファイバ30の一端36からクラッド32に入射して、クラッド32を主に伝播する。このクラッド32を伝播する励起光には、一般的にスキュー光が含まれている。
【0044】
そして、クラッド32を伝播する励起光は、コア31に添加される活性元素に吸収されながら光結合部61に到達する。上述のように、光結合部61においては、クラッド部分32a、32b同士が光学的に結合して一体化されているため、クラッド32の光を伝播する条件が、光結合部61以外におけるクラッド32の光を伝播する条件と異なっている。特に本実施形態においては、クラッド部分32a及びクラッド部分32bが融着により一体化されることによる、光結合部61におけるクラッド32の外周面の形状の乱れにより、光結合部61におけるクラッド32の光を伝播する条件は、光結合部61以外におけるクラッド32の光を伝播する条件と更に異なっている。このため、光結合部61におけるクラッド部分32aを伝播する励起光の一部は、クラッド部分32aを伝播しながら、伝播モードが乱され、更に増幅用光ファイバ30の一端36側(励起光源20側)から他端37(出射端)側に向けて、クラッド部分32aを伝播し、光結合部61をクラッド部分32a側から出射する。このとき、スキュー光として光結合部61に到達する光は、上記の伝播モードの乱れにより、通常の励起光として光結合部61から出射する。そして、クラッド部分32a側から光結合部61を通過した励起光の一部は、ループ部71を増幅用光ファイバの一端36側から他端37側に伝播する。
【0045】
また、クラッド部分32a、及び、クラッド部分32bが結合しているため、光結合部61におけるクラッド部分32aを伝播する励起光の他の一部は、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する。このとき、励起光の他の一部は、クラッド部分32a、32b間を伝播することにより、伝播モードが乱れて伝播する。さらに、上述のように、光結合部61において、クラッド部分32aの外形の向きと、クラッド部分32bの外形の向きが異なっている。従って、クラッド部分32aにおける光の伝播の条件と、クラッド部分32bにおける光の伝播の条件とが異なり、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する励起光は、クラッド部分32aとクラッド部分32bとの光の伝播の条件の違いにより、さらに伝播モードが乱れる。このようにクラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する励起光は、伝播モードが乱れて、光結合部61をクラッド部分32b側から出射する。このとき、スキュー光として光結合部61に到達する光は、上記の伝播モードの乱れにより、通常の励起光として光結合部61から出射する。そして、光結合部61をクラッド部分32b側から出射した励起光の他の一部は、上述のようにクラッド部分32aとクラッド部分32bとが互いに逆側を向いているため、ループ部71を増幅用光ファイバ30の他端37側から一端36側に伝播する。
【0046】
上述のように、光結合部61をクラッド部分32a側から出射した励起光は増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に伝播し、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する励起光は、増幅用光ファイバ30の他端37側から一端36側に伝播する。従って、少なくとも増幅用光ファイバ30のループ部71おいては、励起光が双方向で伝播する。
【0047】
更にループ部71から光結合部61のクラッド部分32bに伝播する励起光は、一部がクラッド部分32bを伝播し、他の一部がクラッド部分32bからクラッド部分32aに伝播する。また、ループ部71から光結合部61のクラッド部分32aに伝播する励起光は、一部がクラッド部分32aを伝播し、他の一部がクラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する。ループ部71から光結合部61に伝播する光についても、上記説明と同様にして、励起光の伝播モードが乱されて、スキュー光が低減される。
【0048】
こうして、増幅用光ファイバ30において、スキュー光が低減された励起光がコア31を通過するときに、コア31に添加されている活性元素に吸収されて、活性元素を励起する。励起された活性元素は、誘導放出を起こし、この誘導放出によりコア31を伝播する種光が増幅されて、出射光として増幅用光ファイバ30の他端37から出射される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の光学部品51によれば、光結合部61において、クラッド部分32a、32b同士が光学的に結合するように一体化されているため、光結合部61におけるクラッド32の励起光の伝播条件が、光結合部61以外におけるクラッドの励起光の伝播条件と異なる。従って、クラッド32を伝播する励起光は、光結合部61において、クラッド部分32aのみを進行する場合においても、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播する場合においても、伝播モードが大きく乱れる。このため、励起光のスキュー光の伝播モードも乱れて、スキュー光が低減される。従って、このような光学部品51によれば、増幅用光ファイバ30の長さ方向全体にわたって、クラッド32の外形を特別な形状にする必要がなく、簡易な構成でスキュー光を低減することができ、励起光を効率良く吸収することができる。
【0050】
また、光学部品51においては、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバ30が効率よく励起光を吸収することができるので、光ファイバ増幅器6は、同じパワーの励起光源20であっても、より高い増幅率とすることができ、ファイバレーザ装置1は、種光の増幅効率を高くすることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図5は、本発明の第2実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0052】
本実施形態のファイバレーザ装置2においては、第1実施形態の光ファイバ増幅器6の代わりに光ファイバ増幅器7を備える点において、第1実施形態のファイバレーザ装置1と異なり、光ファイバ増幅器7は、第1実施形態の光学部品51に代わり光学部品52を備える点において、第1実施形態の光ファイバ増幅器6と異なる。
【0053】
光学部品52は、第1実施形態と同様の増幅用光ファイバ30を備える。そして、光学部品52は、第1実施形態の増幅用光ファイバ30における光結合部61の代わりに光結合部62を備える。第1実施形態の光結合部61においては、クラッド部分32aと、クラッド部分32bとが、互いに逆側を向いて一体化されているのに対し、本実施形態の光結合部62においては、クラッド部分32a、32bが互いに同じ方向を向いて一体化されている。つまり、第1実施形態の光結合部61においては、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向が、互いに逆の方向を向いた状態で長手方向に揃えられて、一体化されているのに対し、本実施形態の光結合部62においては、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向が、互いに同じ方向を向いた状態で長手方向に揃えられて、一体化されている。
【0054】
なお、光結合部62におけるクラッド部分32a、32bの一体化の状態は、第1実施形態の光結合部61におけるクラッド部分32a、32bの一体化の状態と同様である。従って、光結合部62を拡大すると、第1実施形態の光結合部61と異なりクラッド部分32a、32bが互いに同じ向きを向いているものの、図3に示す状態と同様に見え、光結合部62の断面における構造は、図4に示す光結合部61の断面における構造と同様に見える。
【0055】
そして、光結合部61において、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが長手方向に沿って一体化されることにより、増幅用光ファイバ30の一部は、クラッド部分32aからクラッド部分32bまでループ部72とされる。ただし、第1実施形態の増幅用光ファイバ30のループ部71は、光結合部61の一端36側に接続されているのに対して、本実施形態の増幅用光ファイバ30のループ部72は、クラッド部分32aとクラッド部分32bとが、互いに同じ方向を向いているため、光結合部62を挟むようにして接続されている。
【0056】
本実施形態による増幅用光ファイバ30によれば、クラッド部分32a、32b同士が同じ方向を向いて接続されることで、励起光が、クラッド部分32aからクラッド部分32bに伝播しても、励起光は、ループ部72において、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向に伝播する。すなわち、増幅用光ファイバ30として、励起光が伝播する方向は変わらない。従って、増幅用光ファイバ30の一端36側に配置される励起光源20に励起光が戻ることを防止することができる。このため、増幅用光ファイバ30を備える光ファイバ増幅器7及びファイバレーザ装置2は、優れた信頼性とすることができる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図6は、本発明の第3実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0058】
図6に示すように、本実施形態のファイバレーザ装置3は、第1実施形態における光ファイバ増幅器6と同様の光ファイバ増幅器6と、増幅用光ファイバ30の一端36側に接続される第1共振用ファイバ16と、第1共振用ファイバ16に設けられる第1ミラーとしての第1FBG(Fiber Bragg Grating)81と、増幅用光ファイバ30の他端37側に接続される第2共振用ファイバ17と、第2共振用ファイバ17に設けられる第2ミラーとしての第2FBG82とを主な構成として備える。このように、本実施形態のファイバレーザ装置3は、共振型のファイバレーザ装置とされる。
【0059】
第1共振用ファイバ16は、例えば、第1実施形態における種光用ファイバ15と同様の構成とされ、一端が種光用ファイバ15と同様にして、コンバイナ40で増幅用光ファイバ30に接続されている。また、第1共振用ファイバ16の他端には、無反射終端19が設けられている。さらに、第1共振用ファイバ16のコアには、第1FBG81が形成されている。こうして第1FBG81は、増幅用光ファイバ30の一端36側に設けられている。第1FBG81は、第1共振用ファイバ16の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG81は、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ30の活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長を反射するように構成されている。第1FBG81は、上述のように活性元素がYbである場合、例えば1070nmにおいて反射率が100%とされる。
【0060】
また、増幅用光ファイバ30の他端37には、第2共振用ファイバ17が接続されている。第2共振用ファイバ17は、例えば、第1共振用ファイバと同様の構成とされ、第2共振用ファイバ17のコアが増幅用光ファイバ30のコアと結合している。第2共振用ファイバ17のコアには、第2FBG82が設けられている。こうして第2FBG82は、増幅用光ファイバ30の他端37側に設けられている。第2FBG82は、第2共振用ファイバ17の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG81が反射する光と同じ波長の光を第1FBG81よりも低い反射率で反射するように構成され、例えば、第1FBG81が反射する光と同じ波長の光が50%の反射率で反射されるように構成されている。
【0061】
このようなファイバレーザ装置3においては、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出射されると、この励起光がコンバイナ40において、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入射する。そして、第1実施形態と同様にして、増幅用光ファイバ30のコア31に添加されている活性元素を励起状態とする。そして励起状態とされた活性元素は、特定の波長の自然放出光を放出する。このときの自然放出光は、例えば、中心波長が1070nmで一定の帯域を有する光である。この自然放出光は、増幅用光ファイバ30のコア31を伝播して、第1共振用ファイバ16のコアに形成さている第1FBG81により反射され、反射された光が、増幅用光ファイバ30のコア31を介して、第2共振用ファイバ17に形成されている第2FBG82まで伝播し、第2FBG82で反射されて、光の共振が生じる。そして、光が、増幅用光ファイバ30のコア31を伝播するときに増幅されて、一部の光が第2FBG82を透過して、第2共振用ファイバ17から出射される。
【0062】
本実施形態のファイバレーザ装置3によれば、光学部品51においては、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバ30が効率よく励起光を吸収するとこができるため、増幅効率が高い共振型のファイバレーザ装置とすることができる。
【0063】
なお、本実施形態において、第1ミラー、第2ミラーとして、第1FBG81、だい2FBG82を例に説明したが、第1ミラー、第2ミラーは、FBGに限定されない。
【0064】
以上、本発明について、第1〜第3実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、それぞれ異なる光学部品を示したが、本発明の光学部品は、光結合部において、互いに非連続である複数のクラッド部分同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される限りにおいて第1実施形態及び第2実施形態の例に限らない。ここで、光学部品の変形例について説明する。以下の変形例は、第1、第2実施形態で説明した、MO−PA型のファイバレーザ装置、及び、第3実施形態で説明した共振型のファイバレーザ装置のどちらにも適用可能である。
【0066】
図7は、光学部品の第1変形例を示す図であり、図8は、図7のV−V線を通る断面における構造の様子を示す図である。図7、図8に示すように、本変形例の光学部品53は、光結合部63において、互いに非連続である4カ所のクラッド部分32a、32b、32c、32dが、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って融着により一体化されている。従って、それぞれのクラッド部分32a〜32dは、互いに結合している。そして、この光結合部63により、ループ部73a〜73cが形成されている。ループ部73aの両端は、クラッド部分32a及びクラッド部分32bであり、光結合部63の一方側に接続されている。従って、光結合部63において、クラッド部分32bは、クラッド部分32aと逆方向を向いている。また、ループ部73bの両端は、クラッド部分32b及びクラッド部分32cであり、光結合部63の一方側に接続されている。従って、光結合部63において、クラッド部分32cは、クラッド部分32bと逆方向を向いている。また、ループ部73cの両端は、クラッド部分32c及びクラッド部分32dであり、光結合部63の一方側に接続されている。従って、光結合部63において、クラッド部分32dは、クラッド部分32cと逆方向を向いている。このように光結合部63において、クラッド部分32aとクラッド部分32cとが同じ方向を向き、クラッド部分32bとクラッド部分32dとが同じ方向を向き、クラッド部分32a、32cと、クラッド部分32b、32dとが、互いに逆の方向を向いている。このような光学部品によれば、光結合部63において、少なくとも1つのクラッド部分32a、32cが、他の少なくとも1つのクラッド部分32b、32dと、互いに逆方向を向いて一体化されるため、増幅用光ファイバ30の一端側から伝播する励起光の一部が、互いに逆方向を向いたクラッド部分に伝播することにより、励起光を増幅用光ファイバ30に対して双方向に伝播させることができる。このような変形例によれば、1つの光結合部を設けることにより、複数の光結合部を設ける場合と同様の効果を得ることができる。従って、光結合部の数を減らすことができ、光学部品53を容易に製造することができると共に光学部品52全体として、コンパクトに収納することができる。
【0067】
また、図9は、光学部品の第2変形例を示す図である。本変形例の光学部品54は、光結合部64において、互いに非連続である4カ所のクラッド部分32a、32b、32c、32dが、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化されている。具体的には、光結合部64において、クラッド部分32a〜32dが同じ方向を向いて、互いに融着により一体化されている。従って、それぞれのクラッド部分32a〜32dは、互いに結合している。こうして増幅用光ファイバ30において、クラッド部分32aとクラッド部分32bとの間がループ部74aとされ、クラッド部分32bとクラッド部分32cとの間がループ部74bとされ、クラッド部分32cとクラッド部分32dとの間がループ部74cとされる。このような光学部品によれば、クラッド部分32a〜クラッド部分32dが同じ方向を向いて接続されることで、励起光が、クラッド部分同士を励起光が伝播しても、励起光は、ループ部74a〜74cにおいて、増幅用光ファイバ30の一端36側から他端37側に向かう方向に伝播する。すなわち、増幅用光ファイバ30として、励起光が伝播する方向は変わらない。従って、増幅用光ファイバ30の一端36側に配置される励起光源に励起光が戻ることを防止することができる。本変形例の光学部品54によれば、上記第1変形例と同様の効果を有することができ、さらに、信号光の入射方向と出射方向とが揃うため、増幅用光ファイバ30を同一方向で巻き取ることができ、よりコンパクトに収納することができる。また、このような光学部品を図1に示すファイバレーザ装置1に適用する場合において、種光源10へ励起光が伝播することを防止することができる。
【0068】
また、図10は、光学部品の第3変形例を示す図である。本変形例の光学部品55は、互いに逆方向を向いた一組のクラッド部分が一体化された光結合部が複数設けられ、光結合部65a〜65dとされている。この構成は、第1実施形態における光学部品51のループ部71に更に複数の光結合部が形成された構成とされ、図10の光結合部65aを図1に示す光結合部61とすれば、図1に示すループ部71に光結合部65b〜65cが設けられた構成となる。このような光学部品によれば、複数の光結合部65a〜65dを設けることにより、より多くのスキュー光を乱すことができ、増幅用光ファイバ30による励起光の吸収効率をより高くすることができる。
【0069】
また、図11は、光学部品の第4変形例を示す図である。図11に示すように、光学部品56は、第2実施形態における光学部品52の光結合部62と同様の光結合部が複数設けられ、光結合部66a〜66cとされ、複数のループ部76a〜76cとされている。このような光学部品によれば、上記の第3変形例と同様の効果を有することができ、さらに、信号光の入射方向と出力方向が揃うため、増幅用光ファイバ30を同一方向で巻き取ることができ、よりコンパクトに収納することができる。また、このような光学部品を図1に示すファイバレーザ装置1に適用する場合において、種光源10へ励起光が伝播することを防止することができる。
【0070】
また、上記実施形態、及び、上記変形例においては、各光結合部において、それぞれのクラッド部分同士が、融着されることで、光学的に結合するように、一体化されていた。しかし本発明はこれに限らない。
【0071】
また、上記実施形態、及び、上記変形例においては、クラッド32の外形が互いに異なるものとしたが、クラッド32の外形は、互いに同じ方向を向いていても良い。また、クラッド32の外形が非円形とされる例で説明したが、本発明はこれに限らず、コア31の外形が円形であっても良い。
【0072】
また、第2実施形形態の光学部品52を第3実施形態の共振型のファイバレーザ装置に適用しても良い。
【0073】
また、上記実施形態において、励起光は、増幅用光ファイバ30の一端36から入射されて、他端に伝播するとしたが、励起光が増幅用光ファイバ30の他端37側から入射する後方励起型としても良く、励起光が増幅用光ファイバの一端及び他端から入射する双方励起型としても良い。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0075】
(実施例1)
長さが10mの増幅用光ファイバを準備した。この増幅用光ファイバは、直径が10μmでありYbが添加されたコアと、コアの外周面を囲み外径が125μmのクラッドと、外径が250μmの樹脂からなる外側クラッドとを備えていた。この増幅用光ファイバを両端部からそれぞれ3mの場所において、外側クラッドを約15mm剥離した。次に、増幅用光ファイバの両端部を揃えて、外側クラッドが剥離されたそれぞれのクラッド部分を長さ10mmに渡って、長手方向に沿って融着し、長さ10mmにわたる光結合部とした。このとき光結合部におけるコア間距離は、約100μmであった。こうして、第1実施形態の光学部品と同様の光学部品を作製した。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様の増幅用光ファイバを準備した。次に、増幅用光ファイバの一端から4mの場所を起点として、そこから直径60cmの円状に1周巻いた。次に、先の起点の場所、及び、1周巻いた後に先の起点の場所と重なる場所の外側クラッドを第1実施形態と同様に剥離し、外側クラッドが剥離されたそれぞれのクラッド部分を第1実施形態と同じようにして融着した。こうして、第2実施形態の光学部品と同様の光学部品を作製した。
【0077】
(比較例1)
実施例1と同様の増幅用光ファイバを準備し、特に光結合部を設けなかった。
【0078】
次に実施例1、2、比較例1の増幅用光ファイバの一端から波長が915nmの励起光を入射し、励起光の吸収量を調べた。その結果、実施例1の励起光の吸収量は20dBであり、実施例2の励起光の吸収量は19dBであり、比較例の励起光の吸収量は、11dBであった。従って、実施例1、実施例2は励起光の吸収率が高いことが分かった。
【0079】
次に実施例1のファイバ長と比較例1のファイバ長を変化させたときの励起光の吸収量を調べた。その結果を図12に示す。図12に示すように、増幅用光ファイバのファイバ長を変化させても、励起光の吸収量が然程変わらなくなった長さにおいて、実施例1の光学部品は、比較例1の光学部品よりも励起光の吸収量が大きいことが分かった。従って、実施例1の光学回路においては、比較例1の光学部品よりも、スキュー光が低減されていることが分かった。
【0080】
このことから、本発明の光学部品によれば、スキュー光が低減され、増幅用光ファイバで励起光を効率的に吸収することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明によれば、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置が提供される。
【符号の説明】
【0082】
1、2、3・・・ファイバレーザ装置
6、7・・・光ファイバ増幅器
10・・・種光源
15・・・種光用ファイバ
16・・・第1共振用ファイバ
17・・・第2共振用ファイバ
20・・・励起光源
21・・・レーザダイオード
22・・・励起光用ファイバ
30・・・増幅用光ファイバ
31・・・コア
32・・・クラッド
32a、32b、32c、32d・・・クラッド部分
33・・・外側クラッド
34・・・被覆層
37・・・他端
40・・・コンバイナ
51、52、53、54、55、56・・・光学部品
61、62、63、64、65a〜65d、66a〜66d・・・光結合部
69・・・樹脂
71、72、73a〜73c、74a〜74c、76a〜76c・・・ループ部
81・・・第1FBG
82・・・第2FBG
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性元素が添加されるコアと、前記活性元素を励起する励起光を伝播するクラッドと、を有する増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバの長手方向において、互いに非連続である複数のクラッド部分同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される光結合部と、
を備える
ことを特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分は、他の少なくとも1つの前記クラッド部分と、互いに逆方向を向いて一体化されることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記光結合部において、それぞれの前記クラッド部分同士は、互いに同じ方向を向いて一体化されることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項4】
前記クラッドは、長手方向に垂直な外形が非円形であり、
前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分の外形と、他の少なくとも1つの前記クラッド部分の外形とが、互いに異なる向きとされる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項5】
複数の前記光結合部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項6】
それぞれの前記クラッド部分同士は、融着により互いに一体化されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、
を備えることを特徴とする光ファイバ増幅器。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、
前記増幅用光ファイバの前記コアに入射する種光を出射する種光源と、
を備えることを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、
前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部を反射するミラーと、
前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ、前記第1ミラーが反射する光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーと、
を備えることを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項1】
活性元素が添加されるコアと、前記活性元素を励起する励起光を伝播するクラッドと、を有する増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバの長手方向において、互いに非連続である複数のクラッド部分同士が、互いに光学的に結合するように、長手方向に沿って一体化される光結合部と、
を備える
ことを特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分は、他の少なくとも1つの前記クラッド部分と、互いに逆方向を向いて一体化されることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記光結合部において、それぞれの前記クラッド部分同士は、互いに同じ方向を向いて一体化されることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項4】
前記クラッドは、長手方向に垂直な外形が非円形であり、
前記光結合部において、少なくとも1つの前記クラッド部分の外形と、他の少なくとも1つの前記クラッド部分の外形とが、互いに異なる向きとされる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項5】
複数の前記光結合部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項6】
それぞれの前記クラッド部分同士は、融着により互いに一体化されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、
を備えることを特徴とする光ファイバ増幅器。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、
前記増幅用光ファイバの前記コアに入射する種光を出射する種光源と、
を備えることを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記増幅用光ファイバの前記クラッドに入射する前記励起光を出射する励起光源と、
前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部を反射するミラーと、
前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ、前記第1ミラーが反射する光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーと、
を備えることを特徴とするファイバレーザ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−209431(P2012−209431A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74071(P2011−74071)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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