説明

光学部品およびその製造方法、ならびに電子装置

【課題】低コストかつ環境負荷を低減しながら製造することのできる光学部品およびその製造方法ならびに電子装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる光学部品100の製造方法は、金属層32からなる複数の凸部が周期的に設けられている反射防止構造を有する光学部品の製造方法であって、基板10上に所定のパターンの犠牲層を形成する工程と、前記基板上に触媒層を形成する工程と、無電解めっき液に前記基板を浸漬することによって、前記触媒層上に金属層を析出させる工程と、加熱することにより、前記犠牲層を除去して、前記所定のパターンの金属からなる凸部を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品およびその製造方法、ならびに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、反射防止膜は光ネットワーク・高輝度ディスプレイ・ソーラーパネル・プロジェクター等において、光の利用効率・視認性の向上等を目的として幅広く用いられている。
【0003】
反射防止膜は周期的な多層膜、あるいは周期的な突起構造(モス・アイ構造)で構成されており、この周期構造のピッチを可視光の波長レベルまで微細化することによって、反射防止効果を可視域まで広げることができる。
【0004】
反射防止膜の製造方法としては真空製膜法とドライエッチング法が主である(たとえば特許文献1を参照)が、これらの方法では、真空プロセスを経由するために装置が大型であり、かつ廃棄材料が多いため、コストが高く、環境負荷が大きいという問題があった。
【特許文献1】特開2003−222701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低コストかつ環境負荷を低減しながら製造することのできる光学部品およびその製造方法ならびに電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる光学部品の製造方法は、
金属層からなる複数の凸部が周期的に設けられている反射防止構造を有する光学部品の製造方法であって、
(a)基板上に所定のパターンの犠牲層を形成する工程と、
(b)前記基板上に触媒層を形成する工程と、
(c)無電解めっき液に前記基板を浸漬することによって、前記触媒層上に金属層を析出させる工程と、
(d)加熱することにより、前記犠牲層を除去して、前記所定のパターンの金属からなる凸部を形成する工程と、を含む。
【0007】
本発明にかかる光学部品の製造方法によれば、微細周期構造の凸部を基板上に形成することができる。この製造工程では、基板上に一旦析出させた金属のすべてを使って凸部を形成するため、金属からなる廃棄材料をなくし、環境負荷を低減することができる。また本発明にかかる光学部品の製造方法では、真空プロセスが不要であるため、装置の小型化およびコスト削減を図ることができる。
【0008】
本発明にかかる光学部品の製造方法において、
前記工程(c)では、前記基板上の全面に前記金属層を析出させ、
前記工程(d)では、加熱することにより、前記金属層を移動させて前記所定のパターンの凸部を形成する。
【0009】
本発明にかかる光学部品の製造方法において、
前記工程(d)では、加熱することにより、前記犠牲層を分解して除去することができる。
【0010】
本発明にかかる光学部品の製造方法において、
前記工程(b)は、
前記基板上の全面に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を形成する工程と、
前記触媒吸着層上に触媒層を形成する工程と、
を含むことができる。
【0011】
本発明にかかる光学部品の製造方法において、
前記犠牲層は、樹脂からなることができる。
【0012】
本発明にかかる光学部品の製造方法において、
前記工程(a)は、
基板上に流動状態の樹脂材料を塗布する工程と、
前記所定のパターンの凹部を有するナノスタンパを前記基板上に押し付けて、前記樹脂材料に前記所定のパターンを転写する工程と、
前記樹脂材料を硬化させる工程と、
を含むことができる。
【0013】
本発明にかかる光学部品の製造方法において、
前記犠牲層は、フォトレジストからなり、
前記工程(a)では、干渉露光法を用いて前記犠牲層を形成することができる。
【0014】
本発明にかかる光学部品の製造方法において、
前記基板は、可視光を透過する透過性基板であり、
前記凸部のピッチが20nm〜500nmであり、高さが10nm〜200nmであることができる。
【0015】
本発明にかかる光学部品は、
反射防止構造を有する光学部品であって、
可視光を透過する透過性基板と、
基板上に形成され、周期的に設けられている金属からなる複数の凸部と、
を含み、
前記複数の凸部は、基板上において、モス・アイ構造を有し、
前記凸部のピッチが20nm〜500nmであり、高さが10nm〜200nmである。
【0016】
本発明にかかる電子装置は、
上述した本発明にかかる光学部品の製造方法を用いて製造されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
1.光学部品の製造方法
まず、光学部品の製造方法について説明する。図1〜図13は、本実施の形態にかかる光学部品100(図14および図15参照)の製造方法を示す図である。
【0019】
(1)まず、基板10を用意する。基板10は、可視光を透過する透過性基板であることができる。
【0020】
基板10は、上述したように透過性基板であればその材質は特に限定されないが、たとえば石英ガラス等の無機系基板であることができる。基板10は、単層のみならず、多層のものも含む。また基板10の表面には、凹凸がないことが好ましく、たとえば凹凸の高さが10nm未満であることが望ましい。
【0021】
(2)ついで、基板10上に所定のパターンの犠牲層22を形成する(図4参照)。図1〜図3は、犠牲層22を形成する工程を示す図であり、図2および図3は、基板10を上からみた平面図であり、図4は、図3に示す基板10および犠牲層22のIV−IV断面を示す図である。本実施の形態において所定のパターンとは、2次元微細周期構造のモス・アイ構造である。
【0022】
犠牲層22の材質としては、容易に成形可能であって、かつ熱処理を施すことにより除去できる材質であれば特に限定されないが、条件を満たす材質としてはフォトレジスト、熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂等の樹脂であることができ、300℃〜400℃でガス化するものが好ましい。具体的には、犠牲層22の材質として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレンを用いることができる。犠牲層22を形成する方法としては、公知の方法を用いることができるが、たとえば干渉露光法やナノインプリント技術を用いることができる。本実施の形態では、干渉露光法を用いて犠牲層22を形成する場合について説明する。
【0023】
まず、図1に示すように、流動状態の樹脂材料22aを基板10上の全面に塗布する。樹脂材料22aとしては、たとえば感光部が除去されるポジ型のフォトレジストを用いることができる。塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート等の公知の方法を用いることができる。なお、基板10の材質によっては、樹脂材料22aの塗布前に、基板10上に干渉露光のための反射防止膜を形成してもよい。
【0024】
次いで、位相格子マスクを介して基板10上の領域27にレーザ光を照射する。干渉露光法では、位相格子マスクを介することで干渉縞が形成されるため、図2に示すように、ストライプパターンに露光することができ、ストライプ形状の犠牲層22bが形成される。
【0025】
次いで、基板10に対して位相格子マスクを90°回転させて、基板10上の領域28にレーザ光を照射する。上述したように干渉露光法では、位相格子マスクを介することで干渉縞が形成されるため、図3に示すように、ストライプ形状に露光することができる。このように、90°回転させて2回の露光を行うことにより、微細周期構造のモス・アイ構造の犠牲層22を形成することができる。犠牲層22のピッチは、20nm〜500nmであり、高さは、10nm〜200nm程度であることが好ましい。このような大きさにすることにより、同様の大きさの凸部34(図14参照)を形成することができる。
【0026】
(3)次に、基板10および犠牲層22の表面を洗浄する。基板10および犠牲層22の表面の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよいが、ドライ洗浄がより好ましい。ドライ洗浄にすることによって、剥離等の犠牲層22に与えるダメージを防止することができる。
【0027】
ドライ洗浄は、図5に示すように、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)18を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線20を照射して行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。
【0028】
ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。
【0029】
(4)次に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層24を基板10上に形成する。
【0030】
まず、図6に示すように、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を溶解した触媒吸着溶液14に基板10を浸漬する。基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて基板10に吸着しやすいからである。
【0031】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤や、アルキルアンモニウム系の界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。
【0032】
触媒吸着溶液14に含まれるシラン系カップリング剤としては、たとえばヘキサメチルジシラザンを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0033】
次いで、触媒吸着溶液14から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図7に示すように、触媒吸着層24を基板10に設けることができる。このとき、界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0034】
(5)次に、触媒層31を触媒吸着層24上に形成する。まず、図8に示すように、触媒溶液30に基板10を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0035】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(5a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(5b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水と過酸化水素水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(5c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0036】
触媒溶液30に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電解めっき液に混入するのを防止することができる。
【0037】
以上の工程により、触媒層31が形成される。触媒層31は、図9に示すように、基板10および犠牲層22上の触媒吸着層24の上面に形成される。
【0038】
(6)次に、図10に示すように、金属を含む無電解めっき液36に基板10を浸漬させることによって、基板10上に金属層32をめっき析出させる。金属層32は、触媒層31が形成されている領域に形成される(図11参照)。
【0039】
ここで無電解めっき液36は、基板10上にめっき粒子として析出する際、めっき粒子の平均粒径が20nm以下になるように調整されることが好ましく、4〜6nm程度になるように調整されることがより好ましい。めっき粒子のサイズを4〜6nmにすることによって、後述する熱処理工程(7)において、金属層32を構成する金属粒を移動しやすくすることができる。このような無電解めっき液36は、pH、温度、調整時間等をかえることにより調整することができる。また無電解めっき液36への基板10の浸漬時間が一定時間以上になると、めっき粒子の平均粒径が20nmより大きくなってしまうため、浸漬時間は、一定時間以内であることが好ましい。
【0040】
金属は、たとえば白金であることができる。無電解めっき液36としては、酸性で使用するタイプとアルカリ性で使用するタイプがあるが、無電解めっき液36の一例としてはアルカリ性で使用するタイプのものを適用する。無電解めっき液36は、上述した金属と、還元剤および錯化剤等を含む。具体的には、無電解めっき液36としては、市販の白金めっき液と還元剤液とを混合し、その後硫酸を用いてpH9.5〜pH10.5に調整した混合溶液を用いることができる。この混合溶液(温度40℃〜50℃)に基板10を5分〜15分程度浸漬することによって、10nm〜40nmの厚みを有する白金層を形成することができる。ここで析出する白金層の粒径は、約4〜6nm程度であることが好ましい。
【0041】
なお、金属としては、白金に限定されず、ニッケルや銅等を適用してもよい。このようにして、粒状の金属層32を形成することができる。また、金属層32の形成後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。
【0042】
(7)次に、基板10を加熱することにより、犠牲層22を除去して、所定のパターンの凸部34を形成する(図12〜図14参照)。熱処理は、たとえば高速昇温加熱(RTA)により、大気雰囲気中、300℃〜700℃で5分〜30分間程度行われることが好ましい。まず、この熱処理工程では、図12に示すように、犠牲層22が除去される。この犠牲層22の除去とともに、金属層32を構成するそれぞれの金属粒が犠牲層22の形成領域を埋めるように集合し、図13に示すような形状の金属層33が形成される。さらに加熱を続けると、さらに金属粒は、隙間を埋めるように凝集して、図14に示すように、金属密度の高い金属層からなる凸部34が形成される。このとき、触媒吸着層24は、加熱温度によっては分解されてもよいし、基板10上に残っていてもよい。また、触媒層31を構成する触媒は、凸部34の内部に残っている。
【0043】
以上の工程により、基板10上に凸部34を形成して、光学部品100を形成することができる。本実施の形態によれば、真空装置等が必要なく、ウェットプロセスのみで凸部34を形成することができるため、製造装置を簡易化することができ、コスト削減を図ることができる。また、基板10上に塗布した金属のすべてを使って凸部34を形成することから、環境に与える負荷を低減することができる。また、凸部34は、金属からなるため、たとえば樹脂等からなる場合に比べて、耐熱性を高めることができる。また、凸部34の形状は、製造プロセスで用いる犠牲層の形状を調製することにより、容易に変更することができる。
【0044】
本実施の形態では、所定のパターン状に形成された犠牲層22の領域に金属層32を構成する金属粒が凝集する。したがって、犠牲層22の形状を凸部34に転写することができ、結果的に所定のパターン状の凸部34を形成することができる。ただし、犠牲層22の大きさと、凸部34の大きさは、いずれかが大きくなる場合があり、それは、犠牲層22の上に析出させる金属層32の厚さに依存する。具体的には、犠牲層22の上に無電解めっき法により析出される金属層32の膜厚が一定値以上の場合には、凸部34が犠牲層22より大きいサイズになり、犠牲層22の形成領域は、凸部34の形成領域に含まれる。金属層32の膜厚が一定値以下の場合には、凸部34が犠牲層22より小さいサイズになり、凸部34の形成領域は、犠牲層22の形成領域に含まれることとなる。
【0045】
次に、犠牲層22のパターンの変形例について説明する。図17〜図19は、変形例にかかる犠牲層を示す図である。具体的には以下のとおりである。
【0046】
犠牲層22を形成する干渉露光法のプロセスにおいては、位相格子マスクを90°回転させているが、90°に限定されるわけではなく、たとえば30°等であってもよい。図16(A)および図16(B)は、位相格子マスクを90°回転させて形成された犠牲層22のSEM画像を示す。これらのSEM画像によれば、複数の略円錐形状からなる犠牲層が、平面視において、縦の列と横の列とが90°の関係を示すことが確認できる。
【0047】
図17(A)および図17(B)は、位相格子マスクを30°回転させて形成された犠牲層のSEM画像を示す。これらのSEM画像によれば、平面視において楕円形状を有する犠牲層が、横の列に対して縦方向が60°の方向に配列されている。このような犠牲層を形成することにより、同様の平面形状の凸部34を形成することができる。このような形状の凸部34を形成することにより、たとえば特定の偏波面および波長を有する光のみを反射する等の機能を有することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、基板面を位相格子マスクに対して水平に配置している場合について説明したが、基板面を位相格子マスクに対して斜めに配置して、露光してもよい。図18は、基板面を位相格子マスクに対して斜めに配置して形成された犠牲層のSEM画像である。図18に示す犠牲層は、軸が一方向に傾斜したブレーズ状に形成されている。図19は、図18に示す犠牲層を用いて形成された光学部品200を模式的に示す断面図である。ブレーズ状の凸部134を形成することにより、光学部品200は、たとえば、所定の方向からの特定の波長の光のみを反射する等の機能を有することができる。
【0049】
また、上述した犠牲層22の形成工程においては、位相格子マスクの位置を固定させて、基板10を回転させてもよいし、基板の位置を固定して、位相格子マスクを回転させてもよい。
【0050】
また、犠牲層22の形成方法としては、上述したようにナノインプリント技術でもよい。ナノインプリント技術を用いた場合には、たとえば、以下の手順で犠牲層22を形成することができる。
【0051】
まず、図1に示すように、樹脂材料22aを基板10上に塗布し、その後に、ナノスタンパを基板10方向に押圧することにより、樹脂材料に所定のパターンを転写する。樹脂材料22aが光硬化性樹脂の場合には、ナノスタンパ12は、光透過性のものを用いてもよい。
【0052】
次いで、樹脂材料22aを硬化させる。その後、ナノスタンパ12を硬化させた樹脂材料22aから剥離する。このようにして、所定のパターンを有する犠牲層22を形成することができる。この時点で、犠牲層22の隙間に樹脂材料が残ってしまっている場合には、所定のパターンの隙間の犠牲層22の一部をエッチバック等により除去してもよい。犠牲層22がフォトレジストからなる場合には、アッシングにより一部を除去してもよい。
【0053】
2.光学部品
図14および図15は、本実施の形態にかかる光学部品100を模式的に示す図であり、図14は、本実施の形態にかかる光学部品100を模式的に示す断面図であり、図15は、本実施の形態にかかる光学部品100を模式的に示す斜視図である。図14は、図1及び図4〜図13に対応した断面図である。
【0054】
光学部品100は、基板10と、当該基板10上に設けられた凸部34とを含む。光学部品100は、複数の凸部34を有することによって、基板面において反射防止機能を有する。
【0055】
複数の凸部34は、図15に示すように、基板上において2次元方向に周期的に設けられている、いわゆるモス・アイ構造を有する。凸部34の各々は、側面がテーパー状になっており、基板面と平行に切断したときの断面が、底面が最も広く高さ方向に徐々に狭くなっている略円錐形状であることが好ましい。凸部34のピッチPは、20nm〜500nmであり、高さHは、10nm〜500nm程度であることが好ましく、10nm〜200nmであることがより好ましい。これにより、光学部品100は、可視光の基板面における反射を効率よく低下させることができる。
【0056】
3.実施例
次に、本実施の形態にかかる実施例について説明する。実施例では、凸部としての白金層を基板上に形成した。製造工程は以下のとおりである。
【0057】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約140nmピッチで約70nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状のフォトレジストパターンを形成した。
【0058】
(2)ガラス基板を90°回転させて、工程(1)と同様に直描方式により約140nmピッチで約70nm幅の直線状に露光、現像することにより、モス・アイ構造のフォトレジストパターンを形成した。図20(A)は、モス・アイ構造のフォトレジストパターンのSEM画像を示す。図20(A)により、140nmピッチのモス・アイ構造のフォトレジストパターンが形成されていることが確認された。
【0059】
(3)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬し、触媒層を形成した。
【0060】
(4)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、40℃の白金無電解めっき液に15分程度浸漬し、約30nm程度の厚みの白金層を触媒層の形成されている領域に形成した。白金無電解めっき液としては、市販の白金めっき液(大研化学工業社製)と還元剤液(大研化学工業社製)とを混合して、硫酸によりpH10程度に調整したものを用いた。
【0061】
(5)その後、室温の純水を用いて水洗した。
【0062】
(6)次に、RTAにて熱処理を行った。熱処理は、大気雰囲気中で行い、熱処理温度は、600℃とし、熱処理時間は、10分とした。
【0063】
以上の工程により形成した光学部品のSEM画像を図20(B)に示す。図20(B)により、ガラス基板上に140nmピッチのモス・アイ構造を有する白金層からなる複数の凸部が形成されていることが確認された。
【0064】
4.電子装置
本実施の形態にかかる光学部品100は、様々な電子装置に適用することができ、たとえば図21に示すように、液晶ディスプレイの反射防止膜として機能することもできる。図21は、電子装置の一例としての液晶ディスプレイ1000を模式的に示す断面図である。液晶ディスプレイ1000は、上述した光学部品100と、偏光板80,82と、透明電極84,86と、ガラス基板88,90と、液晶層92と、筐体基板94と、を含む。光学部品100は、凸部34および基板10を有し、基板10は、たとえば液晶ディスプレイ1000のフロントガラスとして機能することができる。液晶ディスプレイ1000は、モス・アイ構造の凸部34を有することにより、外光の影響を受けにくく、明るい場所においても、視認性を向上させることができる。
【0065】
なお、液晶ディスプレイ1000は、上述した構成に限定されるわけではなく、たとえば配向膜、カラーフィルタ層、反射板等の他の部材を含んでもよい。
【0066】
また電子装置は、液晶ディスプレイ1000の他に、プラズマディスプレイ、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置、プロジェクター、光通信装置、ソーラーパネル等であってもよく、光学部品100は、これらの電子装置に好適に用いることができる。
【0067】
5.本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、さらなる種々の変形が可能である。また本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図12】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図13】本実施の形態にかかる光学部品の製造方法を示す図。
【図14】本実施の形態にかかる光学部品を模式的に示す断面図。
【図15】本実施の形態にかかる光学部品を模式的に示す斜視図。
【図16】本実施の形態にかかる犠牲層22の一例を示す図。
【図17】変形例にかかる犠牲層22の一例を示す図。
【図18】変形例にかかる犠牲層22の一例を示す図。
【図19】変形例にかかる犠牲層22の一例を示す図。
【図20】実施例にかかる光学部品を示す図。
【図21】本実施の形態にかかる光学部品を適用した電子装置の一例を示す図。
【符号の説明】
【0069】
10 基板、14 触媒吸着溶液、18 光源、20 光、22、22b 犠牲層、22a 樹脂材料、24、74 触媒吸着層、30 触媒溶液、31、81 触媒層、32、33 金属層、34 凸部、36 無電解めっき液、80,82 偏光板、84,86 透明電極、88,90 ガラス基板、92 液晶層、94 筐体基板、100 光学部品、1000 電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層からなる複数の凸部が周期的に設けられている反射防止構造を有する光学部品の製造方法であって、
(a)基板上に所定のパターンの犠牲層を形成する工程と、
(b)前記基板上に触媒層を形成する工程と、
(c)無電解めっき液に前記基板を浸漬することによって、前記触媒層上に金属層を析出させる工程と、
(d)加熱することにより、前記犠牲層を除去して、前記所定のパターンの金属からなる凸部を形成する工程と、
を含む、光学部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(c)では、前記基板上の全面に前記金属層を析出させ、
前記工程(d)では、加熱することにより、前記金属層を移動させて前記所定のパターンの凸部を形成する、光学部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記工程(d)では、加熱することにより、前記犠牲層を分解して除去する、光学部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記工程(b)は、
前記基板上の全面に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を形成する工程と、
前記触媒吸着層上に触媒層を形成する工程と、
を含む、光学部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記犠牲層は、樹脂からなる、光学部品の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記工程(a)は、
基板上に流動状態の樹脂材料を塗布する工程と、
前記所定のパターンの凹部を有するナノスタンパを前記基板上に押し付けて、前記樹脂材料に前記所定のパターンを転写する工程と、
前記樹脂材料を硬化させる工程と、
を含む、光学部品の製造方法。
【請求項7】
請求項5において、
前記犠牲層は、フォトレジストからなり、
前記工程(a)では、干渉露光法を用いて前記犠牲層を形成する、光学部品の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記干渉露光法は、少なくとも2回以上行う、光学部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記基板は、可視光を透過する透過性基板であり、
前記凸部のピッチが20nm〜500nmであり、高さが10nm〜200nmである、光学部品の製造方法。
【請求項10】
反射防止構造を有する光学部品であって、
可視光を透過する透過性基板と、
基板上に形成され、周期的に設けられている金属からなる複数の凸部と、
を含み、
前記複数の凸部は、基板上において、モス・アイ構造を有し、
前記凸部のピッチが20nm〜500nmであり、高さが10nm〜200nmである、光学部品。
【請求項11】
請求項1〜9に記載の光学部品の製造方法を用いて製造された、電子装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図19】
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【図21】
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【図2】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−256785(P2008−256785A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96430(P2007−96430)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】