説明

光学部品ホルダ、光学装置および光学部品取り外し方法

【課題】光学部品の接着強度を下げることがなく、また、光学部品の分解作業時には容易に硬化接着剤の剥離除去をすることができる光学部品ホルダを提供する。
【解決手段】光学部品ホルダ1には、光学部品6を載置するための載置部5と、載置部5の全周のうちの少なくとも一部分に連なる一対の凹部8とが設けられている。それぞれの凹部8は、光学部品6を載置部5に固定するために接着剤7を溜めて硬化させる部分である。それぞれの凹部8には、その底面から光学部品ホルダ1の外部に抜ける1つの貫通孔9が設けられている。それぞれの貫通孔9は、凹部8の底面から外部へかけて先細になるテーパ状のものであって、凹部8に溜められた接着剤が未硬化状態において流出しないように、かつ、外部から硬化接着剤剥離用治具(図示略)を挿入して剥離作業をすることができるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクなどの光学的記録媒体を用いてデータ(信号)の記録・再生・消去を光学的に行うための光学部品ホルダ、このような光学部品ホルダを備えてなる光学装置、およびこのような光学部品ホルダを使用する光学部品取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の光学部品ホルダを備えた光学装置の一例として、図4に、CD(コンパクトディスク)・DVD(デジタル多用途ディスク)の両方あるいはいずれか一方の記録媒体の記録・再生・消去に受発光一体型素子が利用されている光ピックアップ装置を示す。
【0003】
受発光一体型素子11から放射された光は、ダイクロイックプリズム12で反射するかまたはダイクロイックプリズム12を透過し、コリメートレンズ13で平行光にされた後に、反射ミラー14で光ディスク18の方向へ反射される。反射された光はその後、液晶素子16を透過することによって、光ディスク18の傾きや厚さのバラツキなどに起因して発生する収差が液晶素子16による液晶の複屈折を利用して補正される。
【0004】
補正された光は次いで、駆動制御可能なレンズ設置台15に取り付けられた対物レンズ17を通過することで平行光から収束光となり、ディスク18上の信号面の一点で収束し、その後に反射される。
【0005】
図4に示す光ピックアップ装置においては、レンズ設置台15の調整を行うことにより光学的収差(コマ収差)の除去を行っている。ディスク18上の一点で反射された光は、再び対物レンズ18を通過する際に平行光となり、反射ミラー14で反射されてコリメートレンズ13を通過し、ダイクロイックプリズム12で反射されるかまたはダイクロイックプリズム12を透過して、往路と逆の順路で受発光一体型素子11に戻る。
【0006】
戻り光は、受発光一体型素子11の表面における回折格子で分光されて受光部に至り、光信号から電気信号へと変換される。この電気信号は、情報の記録・再生・消去やサーボ信号として利用される。
【0007】
図4に示す光ピックアップ装置において、受発光一体型素子11、ダイクロイックプリズム12、コリメートレンズ13および反射ミラー14などの光学部品2(図5に記載)は、接着剤を用いて光学部品ホルダ1の内面に固定されているのが普通である。
【0008】
これについて、図5に基づいて説明する。図5は、従来から一般に行われる接着技術を示す図であって、光学部品ホルダ1の底部内面と光学部品2との接着部のxz平面(図4に示す)における断面図である。
【0009】
光学部品ホルダ1の底部内面に、光学部品2を載置するための載置部5と、この載置部5の周囲における接着剤保持用凹部4とが設けられている。光学部品2の接着固定位置は、他の光学部品2との相対的な位置関係によって決まるため、その光学的な調整が必要となる。
【0010】
接着固定位置が決定すると、凹部4に接着剤3を滴下して溜めておき、接着剤3により光学部品2の少なくとも側面下部と凹部4とを接着させる。接着剤3が硬化する間は、光学部品2はその光学的な位置がずれないよう仮固定しておく必要がある。なお、図5では、光学部品ホルダ1が光学部品2の下方部分でくり抜かれているが、必要がなければこの部分は塞がっていてもかまわない。
【0011】
図4および図5に示す光ピックアップ装置の他に、光学部品を固定しあるいは接着するための構造としては、特許文献1および特許文献2に記載されたものが知られている。
【0012】
【特許文献1】特開平9−325289号公報
【特許文献2】特開2001−228387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図4および図5に示す光ピックアップ装置では、光学系の性能を重視する観点から、光学部品2の組み立て(接着)時にゴミや塵などの汚れが光学部品2に付着したときには、光学部品2を交換する必要がある。また、光学部品2の精度のばらつきによって、組み立て後の光学系の調整が不可能になることもある。これらの場合には、組み立てた光ピックアップ装置を分解して再び組み立てるリワーク(rework)の際に、使用可能な光学部品2の再利用を図る必要度が高い。
【0014】
このようなリワークなどの要請により、組み立てた光ピックアップ装置を分解して光学部品2を取り外した後にその再組み立てを行う場合には、次のような問題がある。
【0015】
光学部品ホルダ1から光学部品2を取り外す場合について説明する。この場合、接着剥離剤を使用すると光学部品2を比較的容易に剥離することができるが、光学部品ホルダ1に残った硬化接着剤を除去するには、硬化接着剤の表面(図5の上方)から接着剤を削り取る工程が必要になるため、接着剤の削りカスが発生してそれが光学部品ホルダ1に残ってしまう。そして、この光学ホルダ1を再利用して新たにピックアップ装置を組み立てると、前記の削りカスが新たな光学部品2に付着するおそれが増える。また、光学部品ホルダ1に硬化接着剤が残ることで、リサイクル後の接着強度が落ちる場合もある。
【0016】
特許文献1に記載された光学部品の固定構造は、光学部品のリサイクル性を確保しようとするものであるが、硬化接着剤を除去する際に発生する接着剤カスの抑制については言及がなく、また、リサイクル時に接着強度低下の原因になる接着面の接着剤残りを減らすための対策もない。
【0017】
特許文献2に記載された光学部品の接着構造は、生産効率を下げることなく光学部品の接着強度を向上させることを目的としている。しかしながら、この接着構造では、接着部位が光学部品の底面にある場合には、光学部品と支持部とを空中で位置固定しながら接着剤を接着面の下方から塗布する必要があり、仮固定をしないときには位置ずれを起こしやすいという問題がある。
【0018】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、光学部品の接着強度を下げることがなく、また、光学部品の取り外し作業時には容易に硬化接着剤の剥離除去をすることができる光学部品ホルダを提供すること、このような光学部品ホルダを備えてなる光学装置を提供すること、およびこのような光学部品ホルダを使用する光学部品取り外し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1つの観点によれば、光学部品を載置するための載置部と、この載置部に連なるように設けられかつ前記光学物品を載置部に固定するために接着剤を溜めて硬化させる凹部と、この凹部から外部へ抜けるように設けられかつ硬化接着剤剥離用治具を外部から挿入することのできる貫通孔とを備えてなることを特徴とする光学部品ホルダが提供される。
【0020】
凹部は、光学部品を載置部に固定するために接着剤を溜めて硬化させる部分である。凹部には、その一部(例えば底面部分あるいは側壁部分)から光学部品ホルダの外部に抜ける貫通孔が設けられている。貫通孔は、凹部に溜められた接着剤が硬化することで光学部品が載置部に接着固定された後にその光学部品を光学部品ホルダから取り外す必要が生じた場合に、硬化接着剤剥離用治具を外部から挿入して硬化接着剤を剥離する作業をするための孔である。貫通孔は、凹部の一部から外部へかけて同一孔径を有するものであってもよく、凹部の一部から外部へかけて先細になるものであってもよい。
【0021】
接着剤としては、光学物品を載置部に固定することができるものであれば、その種類は特に限定されないが、例えば、変性アクリレート系接着剤、ウレタンアクリレート系接着剤、変性エポキシアクリレート系接着剤などであって、凹部に設けられた貫通孔から未硬化状態において流出しない程度の粘度を有するものが適宜選択される。
【0022】
本発明の別の観点によれば、本発明の1つの観点による光学部品ホルダを備えてなることを特徴とする光学装置が提供される。
【0023】
本発明のさらに別の観点によれば、本発明の1つの観点による光学部品ホルダを使用してその載置部に固定された光学部品を、外部から貫通孔に硬化接着剤剥離用治具を挿入して硬化接着剤を凹部から押し出し状に剥離することで取り外すことを特徴とする光学部品取り外し方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の1つの観点による光学部品ホルダにあっては、光学部品の接着強度を下げることがなく、また、光学部品の取り外し作業時には容易に硬化接着剤の剥離除去をすることができる。
【0025】
本発明の別の観点による光学装置にあっては、光ピックアップ装置などの光学装置における光学部品の接着強度を下げることがなく、また、光学部品の取り外し作業時には容易に硬化接着剤の剥離除去をすることができる。
【0026】
本発明のさらに別の観点による光学部品取り外し方法にあっては、光学部品の取り外し作業時に容易に硬化接着剤の剥離除去をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図3に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の1実施形態に係る光ピックアップ装置の概略構成図であって、この光ピックアップ装置の基本的構成は、図4のそれと実質的に同一である。図2は、光学部品ホルダ1の内面(上面)と、図1に示された受発光一体型素子11、ダイクロイックプリズム12、コリメートレンズ13および反射ミラー14などの光学部品6との接着部を上方(図1における−x方向)から見た図である。図3はその接着部のxz平面(図1に示す;xy平面でも可)での断面図である。
【0029】
図2および図3に示されたように、光学部品ホルダ1には、光学部品6を載置するための載置部5と、載置部5の全周のうちの少なくとも一部分に連なる一対の凹部8とが設けられている。それぞれの凹部8は、平面形状が半楕円状であって深さが光学部品ホルダ1の厚さの約2分の1のものである。
【0030】
それぞれの凹部8は、側壁部分と光学部品ホルダ1の上面とで形成されるコーナー部分8aも、側壁部分と底面部分とで形成されるコーナー部分8bも、直線で囲まれた角形状のない湾曲状(R形状)に構成されている。
【0031】
それぞれの凹部8は、光学部品6を載置部5に固定するために接着剤(変性アクリレート系接着剤、ウレタンアクリレート系接着剤、変性エポキシアクリレート系接着剤など)7を溜めて硬化させる部分である。それぞれの凹部8には、その底面から光学部品ホルダ1の外部に抜ける1つの貫通孔9が設けられている。
【0032】
それぞれの貫通孔9は、凹部8の底面から外部へかけて先細になるテーパ状のものであって、凹部8に溜められた接着剤が未硬化状態において流出しないように、かつ、外部から硬化接着剤剥離用治具(図示略)を挿入して剥離作業をすることができるように構成されている。
【0033】
以上のように構成された光学部品ホルダ1によれば、光学部品6を載置部5に接着固定した後にリワークする必要が生じた際は、貫通孔9に、例えば金属でできた棒状の接着剤剥離用治具を図3の下方から挿入することによって、硬化接着剤を押し出し状に剥離して取り除くことができる。このとき、必要であれば、貫通孔9のより小さい孔径の側が上になるように、かつ、より大きい孔径の側が下になるようにして、貫通孔9に接着剥離剤をあらかじめ滴下しておくことで、より効果的に硬化接着剤を剥離することができる。
【0034】
これにより、接着強度を低下させることなく、硬化接着剤の剥離除去作業を簡単に行い、光学ホルダ1に硬化接着剤を残すことなく、リサイクル性を改善することができる。このような構造であれば、光学部品ホルダ1と接着剤との界面が剥離面になるので、光学部品ホルダ1の表面における接着剤残りが大幅に抑えられるからである。
【0035】
この場合、必ずしも光学部品6を載置部5から先に外す必要はなく、工程削減の効果もある。また、貫通孔9は、光学部品6の搭載される側である上側(凹部8の底面側)がより大きい孔径を有し、下側(光学部品ホルダ1の外部側)へ行くほどより小さい孔径を有しているテーパ状構造である。従って、光学部品6の固定時に塗布により溜められる接着剤が貫通孔9を通して流出することを抑制する効果を有するとともに、光学部品6を取り外す必要が生じたときは前記治具による硬化接着剤剥離作業を行うことにより、テーパ状構造でない場合に比べて硬化接着剤残りをさらに抑制することができる。
【0036】
さらに、凹部8の形状は、図2および図3に示されたように、側壁部分と光学部品ホルダ1の上面とで形成されるコーナー部分8aも、側壁部分と底面部分とで形成されるコーナー部分8bも、直線で囲まれた角形状のない湾曲状(R形状)に構成されている。従って、硬化した接着剤を剥離する際にこれらのコーナー部分8a,8bに剥離カスが残るおそれも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は本発明の1実施形態に係る光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図2】図2は図1の光ピックアップ装置における要部を拡大して示す拡大平面図である。
【図3】図3は図1の光ピックアップ装置における要部を拡大して示す拡大側面断面図である。
【図4】図4は従来の光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図5】図5は図4の光ピックアップ装置における接着剤溜まり部分の側面断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1……光学部品ホルダ
5……載置部
6……光学部品
7……接着剤
8……凹部
8a……コーナー部分
8b……コーナー部分
9……貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品を載置するための載置部と、この載置部に連なるように設けられかつ前記光学物品を載置部に固定するために接着剤を溜めて硬化させる凹部と、この凹部から外部へ抜けるように設けられかつ硬化接着剤剥離用治具を外部から挿入することのできる貫通孔とを備えてなることを特徴とする光学部品ホルダ。
【請求項2】
凹部は、載置部の全周のうちの少なくとも一部分に連なるように設けられている請求項1に記載の光学部品ホルダ。
【請求項3】
凹部は、そのコーナー部分が湾曲状に構成されている請求項1または2に記載の光学部品ホルダ。
【請求項4】
貫通孔は、凹部に溜められた接着剤が未硬化状態において流出しないように構成されている請求項1に記載の光学部品ホルダ。
【請求項5】
貫通孔は、凹部の底面から外部へかけて先細になるテーパ状のものである請求項1に記載の光学部品ホルダ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光学部品ホルダを備えてなることを特徴とする光学装置。
【請求項7】
光学装置が光ピックアップ装置である請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光学部品ホルダを使用してその載置部に固定された光学部品を、外部から貫通孔に硬化接着剤剥離用治具を挿入して硬化接着剤を凹部から押し出し状に剥離することで取り外すことを特徴とする光学部品取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−109331(P2007−109331A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300416(P2005−300416)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】