説明

光定着装置及び画像形成装置

【課題】記録媒体の搬送が停止した場合の記録媒体の挙動を利用して、記録媒体に光が集束する状態を回避できるようにする。
【解決手段】光定着装置は、レーザ光を照射する光源131と、レーザ光を集束させる集光光学系132と、支持ローラ133、134とを備える。支持ローラ134は、支持ローラ133に比べ、記録媒体30の搬送が停止した場合における制動力が大きい。この構成において、記録媒体30の搬送異常が発生し、光定着装置の下流側で記録媒体30の搬送が停止すると、支持ローラ133は、停止するまでに支持ローラ134よりも多くの記録媒体30を送り出し、これによって記録媒体30に弛みを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置におけるトナーの定着方式には、光を用いる光定着方式がある。光定着方式には、閃光を利用したフラッシュ定着方式や、レーザ光を利用したレーザ定着方式がある。光定着方式は、記録媒体に熱源を接触させたり、記録媒体をニップしながら加熱したりせずにトナーを定着させることが可能である。
【0003】
特許文献1には、電子写真プリンターにおいて、回転ローラの回転状態を監視し、回転ローラが停止したときに定着部(キセノンランプ)の駆動を停止することが記載されている。また、特許文献2には、印刷装置において、紙あり検知器を備え、連続紙の有無に応じてフラッシュ定着器の動作を制御することが記載されている。これらはいずれも、センサの出力結果を利用して定着手段の動作を制御するものである。
【0004】
また、特許文献3には、記録紙を搬送する搬送ベルトを備える定着装置において、記録紙の搬送を停止した時に、搬送ベルトの表面をレーザー光の焦点位置から遠ざけるように制御することが記載されている。すなわち、特許文献3に記載された技術は、電気的な制御によって記録紙を焦点位置から遠ざけるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−185665号公報
【特許文献2】特開平1−93778号公報
【特許文献3】特開2010−160256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、記録媒体の搬送が停止した場合の記録媒体の挙動を利用して、記録媒体に光が集束する状態を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る光定着装置は、トナーが転写されたシート状の記録媒体を第1の支持位置において支持して当該記録媒体の搬送を補助する第1の支持部材と、前記第1の支持位置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側にあるあらかじめ決められた集光位置に光を集束させ、当該集光位置にある前記記録媒体を加熱する加熱手段と、前記集光位置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側にある第2の支持位置において前記記録媒体を支持して当該記録媒体の搬送を補助する第2の支持部材であって、前記記録媒体の搬送が停止した場合における制動力が前記第1の支持部材より大きい第2の支持部材とを備える構成を有する。
【0008】
本発明の請求項2に係る光定着装置は、請求項1に記載の構成において、前記第1の支持部材は、前記記録媒体の移動に対する抵抗が前記第2の支持部材よりも小さい構成を有する。
本発明の請求項3に係る光定着装置は、請求項1又は2に記載の構成において、前記第1の支持部材は、前記記録媒体を搬送するように駆動し、前記第2の支持部材は、前記記録媒体を搬送する外力に応じて前記記録媒体に従動する構成を有する。
【0009】
本発明の請求項4に係る光定着装置は、あらかじめ決められた集光位置に光を集束させ、トナーが転写されたシート状の記録媒体を当該集光位置において加熱する加熱手段と、前記記録媒体があらかじめ決められた弛み量で弛んだ状態において前記記録媒体が前記集光位置に位置するように支持して当該記録媒体の搬送を補助する補助手段であって、前記集光位置からみて前記記録媒体の搬送方向の上流側において、前記記録媒体に働く張力に応じて前記弛み量を増加させる第1の方向と前記弛み量を減少させる第2の方向とに移動しながら前記記録媒体を支持する第1の支持部材と、前記集光位置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側において、前記記録媒体に働く張力に応じて前記第1の方向と前記第2の方向とに移動しながら前記記録媒体を支持する第2の支持部材とを有する補助手段とを備える構成を有する。
【0010】
本発明の請求項5に係る光定着装置は、請求項4に記載の構成において、前記補助手段は、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の前記第1の方向への移動をあらかじめ決められた位置までに制限する制限部材を備え、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材は、前記記録媒体が前記あらかじめ決められた弛み量で弛んだ状態において、前記制限部材と接触する構成を有する。
本発明の請求項6に係る光定着装置は、請求項5に記載の構成において、前記第1の支持部材は、前記記録媒体の搬送が停止した場合における制動力が前記第2の支持部材より小さい構成を有する。
【0011】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、シート状の記録媒体にトナーを転写する転写手段と、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光定着装置と、少なくとも前記光定着装置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側において前記記録媒体を搬送する搬送手段とを備える構成を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、4、7の構成によれば、記録媒体の搬送が停止した場合の記録媒体の挙動を利用して、記録媒体に光が集束する状態を回避することができる。
請求項2の構成によれば、第1の支持部材自体が駆動しなくても記録媒体に光が集束する状態を回避することができる。
請求項3の構成によれば、第1の支持部材が駆動しない場合に比べ、記録媒体に生じる弛みを増加させることができる。
請求項5の構成によれば、制限部材を備えない場合に比べ、記録媒体があらかじめ決められた弛み量で弛んだ状態を維持しやすくすることができる。
請求項6の構成によれば、光定着装置の上流側と下流側のいずれにおいて記録媒体の搬送が停止した場合であっても、記録媒体に光が集束する状態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像形成装置の機能的構成を示すブロック図
【図2】画像形成装置の構成の具体例を示す図
【図3】光定着装置での記録媒体の挙動を示す図
【図4】画像形成装置の構成の具体例を示す図
【図5】支持ローラの移動機構を示す図
【図6】光定着装置での記録媒体の挙動を示す図
【図7】光定着装置での記録媒体の挙動を示す図
【図8】光定着装置の構成の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置10の機能的構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、電子写真方式であって、その定着方式としてレーザ定着方式を採用したプリンタである。画像形成装置10は、搬送手段11と、転写手段12と、光定着手段13と、検知手段14と、制御手段15とを少なくとも備える。
【0015】
搬送手段11は、記録媒体を搬送する手段である。記録媒体とは、トナーによって画像が形成される媒体をいい、本実施形態においては、搬送方向に長尺のいわゆる連続紙であるとする。連続紙は、ミシン目が形成されていたり、あるいは画像形成後に裁断されたりするなどして、事後的に分離される記録媒体であり、ロール紙、巻取紙、連帳紙(連続帳票用紙)などともいう。搬送手段11は、このような記録媒体を上流側から下流側へと搬送する。なお、搬送手段11は、記録媒体を下流側から引っ張るように搬送する。
【0016】
転写手段12は、記録媒体にトナーを転写する手段である。転写手段12は、帯電、露光、現像、転写といった工程によって感光体にトナー像を形成し、これを記録媒体に転写する。これらの工程は、周知のさまざまな方法が用いられてよく、特定の方法に限定されない。例えば、帯電工程は、コロトロンやスコロトロンを用いた非接触式のものであってもよいし、ローラやブラシを用いた接触式のものであってもよい。また、転写工程も、感光体から記録媒体に直接転写する方式と中間転写体を用いる方式のいずれであってもよい。なお、転写手段12は、本実施形態においてはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のトナーを用いるものであるとするが、他の色のトナーを用いるものであってもよいし、トナーを1色のみ用いるものであってもよい。すなわち、トナーの色やその色数は、本発明においては特に限定されない。
【0017】
光定着手段13は、記録媒体に転写されたトナーを定着する手段である。光定着手段13は、集束させた状態のレーザ光を記録媒体に照射し、その熱エネルギーによって記録媒体(及び記録媒体に転写されたトナー)を加熱し、トナーを溶融させて記録媒体に定着させる。また、光定着手段13は、記録媒体の搬送を補助するとともに、記録媒体の搬送異常が生じた場合に記録媒体に光が集束する状態を回避するための手段を備えている。
【0018】
検知手段14は、記録媒体の搬送異常を検知する手段である。ここにおいて、搬送異常とは、ある位置において記録媒体が詰まるなどして、搬送が正常な態様で行われないことをいい、ジャムともいう。検知手段14は、記録媒体があるべき位置に記録媒体が存在すること(あるいは記録媒体があるべきでない位置に記録媒体が存在すること)や、搬送手段11の駆動中に記録媒体が移動していないこと(あるいは本来の搬送速度よりも遅い速度で移動していること)を検知することによって搬送異常を検知する。また、検知手段14は、記録媒体の搬送経路中の1又は複数の位置において検知を行う。
【0019】
制御手段15は、画像形成装置10の動作を制御する手段である。制御手段15は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの演算処理装置やメモリを備え、搬送手段11、転写手段12及び光定着手段13の動作を制御する。具体的には、制御手段15は、記録媒体の搬送タイミング、トナー像を転写するタイミング、レーザ光の照射のオン・オフなどを制御する。また、制御手段15は、通信手段を介して外部から画像データを取得し、これを転写手段12に供給する。このとき、制御手段15は、画像データに周知の画像処理を実行してもよい。
【0020】
また、制御手段15は、検知手段14による検知結果に基づき、記録媒体の搬送異常が検知された場合に、搬送異常に対処する処理を実行する。この処理は、例えば、搬送手段11による搬送を停止させる処理、転写手段12の動作を停止させる処理、光定着手段13によるレーザ光の照射を停止させる処理などである。
【0021】
図2は、画像形成装置10の構成の具体例を示す図である。図2に示す画像形成装置10は、供給装置110と、転写装置120と、光定着装置130と、巻取装置140とを備える。転写装置120は、転写手段12に対応し、光定着装置130は、光定着手段13に対応する。また、巻取装置140は、搬送手段11の一部を構成する。すなわち、巻取装置140は、本発明の搬送装置の一例に相当する。なお、図中の矢印Aは、記録媒体30の搬送方向を示す。記録媒体30は、ここではミシン目が形成された記録媒体であるとする。
【0022】
供給装置110は、支持軸111と、搬送ローラ112、113とを備える。支持軸111は、連続紙である記録媒体30を支持し、記録媒体30に働く張力に応じてこれを送り出す。搬送ローラ112、113は、搬送経路の中途に設けられ、記録媒体30の搬送を案内する。記録媒体30は、搬送ローラ112、113に沿って搬送方向を変化させ、転写装置120に供給される。
【0023】
転写装置120は、転写ユニット121Y、121M、121C、121Kと、搬送ローラ122、123とを備える。転写ユニット121Y、121M、121C、121Kは、それぞれ、感光体、帯電器、露光装置、現像器、転写ローラなどを備え、それぞれがY、M、C又はKのいずれかのトナー像を感光体に形成し、搬送されてきた記録媒体にこれを転写する。搬送ローラ122、123は、搬送経路の中途に設けられ、記録媒体30の搬送を案内する。
【0024】
光定着装置130は、光源131と、集光光学系132と、支持ローラ133、134とを備える。光源131は、レーザ光を記録媒体30に向けて照射する手段である。光源131は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)などの半導体レーザを備え、記録媒体30の幅方向(搬送方向に直交する方向であって、図2の紙面に垂直な方向)にライン状の光を照射する。集光光学系132は、光源131から出射したレーザ光をあらかじめ決められた位置(以下「集光位置」という。)に集束させる手段である。集光光学系132は、1又は複数のレンズにより構成される。なお、集光光学系132は、図2において1つの凸レンズのように記載されているが、これは概略的なものであって、実際には複数のレンズによって構成されてもよいし、凸レンズ以外のレンズを含んでもよい。光源131及び集光光学系132は、これらが協働して本発明の加熱手段を構成する。
【0025】
支持ローラ133、134は、それぞれ、記録媒体30をあらかじめ決められた位置(以下「支持位置」という。)において支持し、記録媒体30の搬送を補助する1対のローラ部材である。支持ローラ133は、集光位置よりも搬送方向の上流側にある第1の支持位置において記録媒体30を支持する。一方、支持ローラ134は、集光位置よりも搬送方向の上流側にある第2の支持位置において記録媒体30を支持する。支持ローラ133、134は、第1の支持位置と第2の支持位置とにおいて記録媒体30を支持し、記録媒体30が適当な張力を与えられて弛(たる)むことなく張られたときに、記録媒体30が集光位置を通過するように構成されている。支持ローラ133は、本発明の第1の支持部材の一例に相当し、支持ローラ134は、本発明の第2の支持部材の一例に相当する。
【0026】
なお、支持ローラ133、134は、その制動力が上流側の支持ローラ133よりも下流側の支持ローラ134の方が大きくなるように構成されている。ここにおいて、制動力とは、記録媒体30の搬送方向への移動を妨げるように作用する力をいう。例えば、制動力が大きいと、記録媒体30が搬送した状態から(搬送する力を失って)停止した状態になるまでに要する時間が短くなる。つまり、巻取装置140が記録媒体30の搬送を停止させた場合、制動力が小さい支持ローラ133は、制動力が大きい支持ローラ134よりも多くの記録媒体30を送り出すように作用する。
【0027】
本実施形態において、制動力は、記録媒体30の移動に対する抵抗(すなわち、記録媒体30の移動を妨げるように作用する力)を支持ローラ133と支持ローラ134とで異ならせることによって調整される。例えば、支持ローラ133と支持ローラ134とに軸受けを設ける場合、支持ローラ133の軸受けを支持ローラ134の軸受けよりも回転しやすいものにすれば、支持ローラ133の制動力が支持ローラ134の制動力よりも小さくなる。記録媒体30の移動に対する抵抗の調整方法は、これに限らず、例えば支持ローラ133と支持ローラ134の表面の材質や組成を変えて摩擦力を異ならせるようにしてもよいし、支持ローラ133と支持ローラ134のニップ圧(1対のローラ部材を押し付ける圧力)を異ならせてもよい。また、支持ローラ133と支持ローラ134の径や重量を異ならせてもよい。
【0028】
巻取装置140は、駆動ローラ141と、支持軸142と、搬送ローラ143とを備える。駆動ローラ141は、駆動ローラ141は、モータなどの駆動手段により駆動力を与えられ、自ら回転するローラ部材である。支持軸142は、記録媒体30を巻き取って支持する軸である。支持軸142も、駆動ローラ141と同様に、駆動手段により駆動力を与えられて自ら回転する。搬送ローラ143は、搬送経路の中途に設けられ、記録媒体30の搬送を案内して搬送方向を変化させる。
【0029】
なお、支持軸111、搬送ローラ112、113、122、123は、巻取装置140が記録媒体30を搬送する力(すなわち外力)に応じて記録媒体30とともに回転するものであってもよいが、その少なくともいずれかが駆動力を与えられて自ら回転するものであってもよい。つまり、これらの部材は、自らの駆動力で回転するもの(すなわち自転するもの)でも、外力に従って回転するものでもよい。外力に従って動くこと(すなわち、それ自体が駆動手段によって直接駆動されることなく動くこと)を、以下においては「従動」ともいう。また、記録媒体30を搬送するためのローラ部材は、図2に示した数より多くても少なくてもよい。
【0030】
ただし、支持軸111、搬送ローラ112、113、122、123のいずれかの部材が自ら回転する場合、その部材による搬送速度は、巻取装置140による搬送速度以下(より望ましくは巻取装置140による搬送速度未満)に制限される。なぜならば、上流側の搬送速度が下流側の搬送速度よりも大きく(すなわち速く)なると、記録媒体30に弛みが生じてしまうからである。
【0031】
また、画像形成装置10は、記録媒体30の搬送経路に沿って、ジャムセンサ150を備える。ジャムセンサ150は、記録媒体30の有無を光学的に検知することによって搬送異常を検知するセンサである。なお、ジャムセンサ150の数は、図2に示した数に限定されず、これより多くても少なくてもよい。また、ジャムセンサ150を設ける位置も、図2に示した位置と異なっていてもよい。ジャムセンサ150は、検知手段14の一部を構成する。なお、検知手段14は、ジャムセンサ150に加え、ジャムセンサ150による検知結果に対してソフトウェア処理を実行する手段(CPUなど)を含んだ構成であってもよい。
【0032】
画像形成装置10の構成は、以上のとおりである。この構成のもと、画像形成装置10は、外部から供給される画像データに応じた画像を記録媒体30に形成する。画像形成装置10は、記録媒体30の搬送を停止させる工程を経ることなく、複数の画像を連続的に形成する。画像が形成された記録媒体30は、巻取装置140から取り出された後に、ミシン目に沿って分断される。
【0033】
画像形成装置10は、このように画像を連続的に形成していると、何らかの不具合により記録媒体30の搬送異常を生じることがある。画像形成装置10は、ジャムセンサ150の少なくともいずれかによって搬送異常が検知されると、記録媒体30の搬送に係る駆動を停止するように巻取装置140などを制御する。また、画像形成装置10は、記録媒体30の搬送に係る駆動に加え、転写装置120によるトナー像の形成や光定着装置130によるレーザ光の照射に係る駆動も停止する。
【0034】
図3は、記録媒体30の搬送が停止した直後における光定着装置130での記録媒体30の挙動を示す図であり、図3(a)が停止前、図3(b)が停止後をそれぞれ示す。ここでは、第2の支持位置よりも下流側のいずれかの位置において紙詰まりが発生し、その位置において記録媒体30の搬送が停止した場合を想定している。このとき、当該位置において記録媒体30の搬送は停止するが、巻取装置140など、記録媒体30の搬送に係る構成の駆動自体はまだ停止していないものとする。
【0035】
記録媒体30は、正常に(すなわちあらかじめ決められた搬送速度で)搬送されている状態では、図3(a)に示すように、支持ローラ133と支持ローラ134の間で弛むことなく張られた状態になっており、この結果、集光位置P1を通過するようになっている。一方、記録媒体30に紙詰まりが生じ、記録媒体30を引っ張る力が失われると、紙詰まりが生じた位置よりも上流側の記録媒体30は、やがて停止した状態になるものの、直ちには停止しない。特に、記録媒体30のうちローラ部材などによって支持されていない部分においては、搬送異常が生じた直後は、慣性によりそれまでの運動を続けようとする。
【0036】
一方、記録媒体30のうち支持ローラ133又は支持ローラ134において支持されている部分においては、これらのローラ部材の制動力により、記録媒体30の搬送を妨げる力が生じるため、記録媒体30の搬送速度が低下し、記録媒体30の停止を促進する。このとき、支持ローラ133と支持ローラ134の制動力の相違に起因して、支持ローラ133が停止するまでに記録媒体30を送り出す量と支持ローラ134が停止するまでに記録媒体30を送り出す量とに差異が生じる。具体的には、上流側の支持ローラ133は、下流側の支持ローラ134が停止するまでに送り出す量よりも多くの記録媒体30を送り出す。
【0037】
支持ローラ133及び支持ローラ134がこのように動作することで、記録媒体30には弛みが生じる。すなわち、記録媒体30のうちの第1の支持位置と第2の支持位置とでニップされている部分の長さは、第1の支持位置から第2の支持位置までの最短距離よりも長くなる。そうすると、記録媒体30は、自重によって下方へと垂れ下がり、図3(b)に示す状態となる。すなわち、記録媒体30は、集光位置P1を外れた位置へと移動する。
【0038】
集光位置P1は、レーザ光が照射される位置のうちの他の位置(すなわち、集光位置P1よりも光源131に近い位置や遠い位置)と比べ、光が最も集束し、単位面積当たりの熱エネルギーが大きくなる位置である。すなわち、集光位置P1は、記録媒体30が存在した場合に記録媒体30の温度を上昇させる度合い(速さ)が他の位置よりも大きい位置である。換言すると、記録媒体30が集光位置P1に存在しない場合には、記録媒体30が集光位置P1に存在する場合よりも緩やかに温度が上昇するということである。したがって、図3(b)に示す状態になると、記録媒体30が集光位置P1に存在する場合よりも記録媒体30の温度上昇が抑制され、記録媒体30が同じ温度になるまでに要する時間が長くなる。
【0039】
つまり、支持ローラ133及び支持ローラ134が図3に示すように動作すると、支持ローラ133の制動力が支持ローラ134の制動力よりも大きいか、あるいはこれらの制動力が同じになる場合に比べ、記録媒体30の表面温度の上昇が緩やかになるため、記録媒体30の表面温度が発火点に達するまでに要する時間が長期化する。支持ローラ133及び支持ローラ134の動作は、自らの性質(制動力)に起因するものであって、ジャムセンサ150の検知結果によるものではない。
【0040】
このように、支持ローラ133及び支持ローラ134は、電気的な制御によらずに動作し、記録媒体30をいわばひとりでに弛ませる。したがって、支持ローラ133及び支持ローラ134の動作は、電気的な制御による動作(巻取装置140や光源131の駆動停止)よりも早く行われる。すなわち、本実施形態の支持ローラ133及び支持ローラ134の動作によれば、特許文献3に記載された技術に電気的な制御による動作に比べ、記録媒体30を集光位置(特許文献3でいうところの焦点位置)からずらすまでに要する時間が短くなる。
【0041】
[第2実施形態]
本実施形態は、光定着手段13の具体的な構成を除き、上述した第1実施形態と共通する構成を有する。本実施形態の構成に関しては、第1実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、重複する説明が適宜省略される。
【0042】
図4は、本実施形態の画像形成装置20の構成の具体例を示す図である。画像形成装置20は、光定着装置130に代えて光定着装置230を備える点が第1実施形態の画像形成装置10と異なるが、機能的構成(図1参照)自体は画像形成装置10と同じである。光定着装置230は、光源231と、集光光学系232と、支持ローラ233、234、235、236とを備える。なお、光源231及び集光光学系232は、第1実施形態の光源131、集光光学系132とは位置が異なるが、構成や機能の面では共通している。支持ローラ234、235は、これらが協働して本発明の補助手段を構成する。支持ローラ234は、本発明の第1の支持部材の一例に相当し、支持ローラ235は、本発明の第1の支持部材の一例に相当する。
【0043】
支持ローラ233、234、235、236は、それぞれ、記録媒体30を支持し、記録媒体30の搬送を補助するローラ部材である。支持ローラ233及び236は、その位置が固定されている一方、支持ローラ234及び235は、あらかじめ決められた方向に移動するように構成されている。支持ローラ234及び235は、記録媒体30があらかじめ決められた搬送速度で搬送される場合にあらかじめ決められた位置(以下「基準位置」という。)に存在し、記録媒体30が集光位置P2を通過するように構成されている。また、記録媒体30は、支持ローラ234及び235が基準位置にある場合に、あらかじめ決められた弛み量で弛んだ状態になるようになされている。
【0044】
ここにおいて、弛み量とは、記録媒体30が支持ローラ234及び支持ローラ235により弛められている程度を示す数値である。弛み量は、記録媒体30の弛みの程度を表すことができればどのような値であってもよいが、ここでは、記録媒体30の支持ローラ233との接点から支持ローラ236との接点までの長さとする。
【0045】
図5は、支持ローラ234及び235の移動機構を示す図である。光定着装置230は、支持ローラ234、235の移動を案内するための案内部材237、238を備える。支持ローラ234は、ローラ部材2341、2342を有し、支持ローラ235は、ローラ部材2351、2352を有する。案内部材237は、ローラ部材2341、2342の軸部2341a、2342aが挿入される長穴237aを有し、長穴237aに沿って支持ローラ234を移動させる。また、案内部材238は、ローラ部材2351、2352の軸部2351a、2352aが挿入される長穴238aを有し、長穴238aに沿って支持ローラ235を移動させる。案内部材237、238は、これら自体が移動することがないように、例えば光定着装置230の筐体に支持されている。
【0046】
支持ローラ234及び235の移動方向は、図中の矢印A1の方向(以下「第1の方向」という。)か、その逆方向である矢印A2の方向(以下「第2の方向」という。)である。第1の方向A1及び第2の方向A2は、ここでは重力が作用する鉛直方向(下方)とその反対方向(上方)であるとするが、必ずしもそうである必要はない。支持ローラ234及び235の移動方向は、記録媒体30の弛み量を増加させる方向と減少させる方向であればよい。
【0047】
なお、支持ローラ233、234、236は、自転するローラ部材であってもよいし、従動するローラ部材であってもよい。一方、支持ローラ235は、従動するローラ部材である。また、支持ローラ234と支持ローラ235とには、第1実施形態のように制動力に差を設けなくてもよいが、制動力に差があってはならないわけではない。
【0048】
画像形成装置20の構成は、以上のとおりである。画像形成装置20は、画像を形成するときの動作は第1実施形態と共通するが、記録媒体30の搬送が停止した場合における動作が第1実施形態と相違する。具体的には、画像形成装置20は、記録媒体30の紙詰まりが生じた位置に応じて支持ローラ234及び235を上下動させて記録媒体30の弛み量を変化させ、記録媒体30を集光位置P2から移動させる。
【0049】
図6は、光定着装置230よりも搬送方向の上流側で紙詰まりが発生して記録媒体30の搬送が上流側で停止した場合における光定着装置230での記録媒体30の挙動を示す図であり、図6(a)が停止前、図6(b)が停止後をそれぞれ示す。光定着装置230よりも上流側の位置で紙詰まりが発生し、当該位置で記録媒体30の搬送が強制的に停止した場合、画像形成装置20は、検知手段14によってこれを検知するまでは記録媒体30の搬送を停止しない。したがって、巻取装置140は、検知手段14により搬送異常が検知され、制御手段15によって駆動が停止されるまでは、記録媒体30の巻き取りを継続する。
【0050】
そうすると、記録媒体30は、上流側の動きが阻止されている一方で、下流側の動きが妨げられていない状態となる。この結果、光定着装置230における記録媒体30の弛み量は、紙詰まりが発生する前よりも減少する。記録媒体30の弛み量の減少に伴い、支持ローラ234及び235は、図6(b)に示すように、第2の方向A2、すなわち上方に移動する。したがって、記録媒体30は、集光位置P2よりも光源231に近い位置へと移動し、フォーカスされたレーザ光が照射される状態が回避される。
【0051】
一方、図7は、光定着装置230よりも搬送方向の下流側で紙詰まりが発生して記録媒体30の搬送が下流側で停止した場合における光定着装置230での記録媒体30の挙動を示す図であり、図7(a)が停止前、図7(b)が停止後をそれぞれ示す。このとき、記録媒体30は、紙詰まりが発生した位置においてその搬送が強制的に停止するが、当該位置より上流側における搬送は妨げられない。よって、上流側の記録媒体30は、慣性や上流側にある自転するローラ部材の作用により、下流側へと移動しようとする。
【0052】
その結果、光定着装置230における記録媒体30の弛み量は、紙詰まりが発生する前よりも増加する。弛み量が増加すると、支持ローラ234及び支持ローラ235は、図7(b)に示すように、第1の方向A1、すなわち下方に移動する。したがって、記録媒体30は、集光位置P2よりも光源231に遠い位置へと移動し、フォーカスされたレーザ光が照射される状態が回避される。
【0053】
以上のとおり、本実施形態の支持ローラ234及び支持ローラ235も、電気的な制御による動作よりも早く動作する。したがって、支持ローラ234及び支持ローラ235によれば、電気的な制御による動作に比べ、記録媒体30を集光位置からずらすまでに要する時間が短くなる。
【0054】
[変形例]
本発明の実施の形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す形態であってもよい。また、これらの形態は、必要に応じて、併用したりその一部を置き換えたりすることによって、互いに組み合わされてもよい。
【0055】
(1)上述した第1実施形態において、支持ローラ133及び支持ローラ134は、いずれも従動するローラ部材であった。しかし、支持ローラ133は、自転するローラ部材であってもよい。支持ローラ133が自転する場合、その駆動力は、制動力を弱めるように作用する。したがって、支持ローラ133が自転する場合には、支持ローラ133と支持ローラ134とで材質、組成、ニップ圧などを変えなくても、支持ローラ133の制動力が支持ローラ134の制動力よりも小さくなる。
【0056】
なお、本変形例の構成は、上述した実施形態の構成との併用を妨げるものではない。つまり、支持ローラ133は、自転するローラ部材であるとともに、支持ローラ134よりも制動力が小さくなるように材質、組成、ニップ圧などを支持ローラ134とは異ならせたものであってもよい。
【0057】
(2)図8は、上述した第2実施形態の構成の変形例を示す図である。同図に示す構成は、第2実施形態の光定着装置230(図4、図5参照)に加え、制限部材239をさらに備える。制限部材239は、支持ローラ2342、2352の軸部2342a、2352aと接触し、支持ローラ234、235の下方への移動をあらかじめ決められた位置までに制限する部材である。
【0058】
支持ローラ234及び235が下方への移動を停止させる位置は、具体的には、記録媒体30が搬送されている状態において記録媒体30が集光位置P2を通過するようになっている位置であり、換言すれば、上述した基準位置である。すなわち、支持ローラ234及び235が制限部材239に接触した状態になると、記録媒体30は、正常に搬送された状態においてあらかじめ決められた弛み量で弛むようになる。
【0059】
なお、本構成の場合には、支持ローラ234と支持ローラ235の制動力に差を設け、記録媒体30の搬送が停止した場合における制動力が支持ローラ234の方が小さくなっていることが望ましい。このように制動力に差があると、上流側での紙詰まりと下流側での紙詰まりの双方に対応して動作する。ただし、支持ローラ234と支持ローラ235の制動力に差がなくても、下流側での紙詰まりに対応した動作は行われる。
【0060】
(3)本発明は、搬送異常の検知結果に基づく電気的な制御によらないで第1の支持部材(支持ローラ133、234)や第2の支持部材(支持ローラ134、235)が動作することを特徴とするものであるが、電気的な制御を併用することを妨げるものではない。ここにおいて、電気的な制御とは、例えば、搬送異常が検知された場合に、光源(131、231)が照射する光の強度を低下させたり、光源の位置を移動させたりするものである。また、ここでいう搬送異常とは、記録媒体が完全に停止した場合だけでなく、記録媒体の搬送速度があらかじめ決められた速度よりも閾値以上遅くなったり、あるいは閾値以上速くなったりする場合をも含み得る。
【0061】
(4)本発明の画像形成装置は、光定着方式であればよく、レーザ定着方式に限定されない。本発明の画像形成装置は、光を集束した状態で記録媒体に照射するものであればよく、その照射する光がレーザ光である必要はない。また、本発明の画像形成装置は、電子写真方式に限定されず、例えば、トナーに代えてインクなどを色材に用い、これを光によって定着させるものであってもよい。
【0062】
(5)本発明において用いられる記録媒体は、搬送異常により搬送が停止したときに十分な弛みを生じさせるものであれば、必ずしも連続紙である必要はなく、決められたサイズにあらかじめ裁断されている記録媒体(いわゆるカット紙、枚葉紙など)であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10、20…画像形成装置、11…搬送手段、12…転写手段、13…光定着手段、14…検知手段、15…制御手段、110…供給装置、120…転写装置、130、230…光定着装置、131、231…光源、132、232…集光光学系、133、134、233、234、235、236…支持ローラ、237、238…案内部材、239…制限部材、140…巻取装置、150…ジャムセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーが転写されたシート状の記録媒体を第1の支持位置において支持して当該記録媒体の搬送を補助する第1の支持部材と、
前記第1の支持位置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側にあるあらかじめ決められた集光位置に光を集束させ、当該集光位置にある前記記録媒体を加熱する加熱手段と、
前記集光位置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側にある第2の支持位置において前記記録媒体を支持して当該記録媒体の搬送を補助する第2の支持部材であって、前記記録媒体の搬送が停止した場合における制動力が前記第1の支持部材より大きい第2の支持部材と
を備える光定着装置。
【請求項2】
前記第1の支持部材は、前記記録媒体の移動に対する抵抗が前記第2の支持部材よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の光定着装置。
【請求項3】
前記第1の支持部材は、前記記録媒体を搬送するように駆動し、
前記第2の支持部材は、前記記録媒体を搬送する外力に応じて前記記録媒体に従動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光定着装置。
【請求項4】
あらかじめ決められた集光位置に光を集束させ、トナーが転写されたシート状の記録媒体を当該集光位置において加熱する加熱手段と、
前記記録媒体があらかじめ決められた弛み量で弛んだ状態において前記記録媒体が前記集光位置に位置するように支持して当該記録媒体の搬送を補助する補助手段であって、
前記集光位置からみて前記記録媒体の搬送方向の上流側において、前記記録媒体に働く張力に応じて前記弛み量を増加させる第1の方向と前記弛み量を減少させる第2の方向とに移動しながら前記記録媒体を支持する第1の支持部材と、
前記集光位置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側において、前記記録媒体に働く張力に応じて前記第1の方向と前記第2の方向とに移動しながら前記記録媒体を支持する第2の支持部材とを有する補助手段と
を備える光定着装置。
【請求項5】
前記補助手段は、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の前記第1の方向への移動をあらかじめ決められた位置までに制限する制限部材を備え、
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材は、前記記録媒体が前記あらかじめ決められた弛み量で弛んだ状態において、前記制限部材と接触する
ことを特徴とする請求項4に記載の光定着装置。
【請求項6】
前記第1の支持部材は、前記記録媒体の搬送が停止した場合における制動力が前記第2の支持部材より小さい
ことを特徴とする請求項5に記載の光定着装置。
【請求項7】
シート状の記録媒体にトナーを転写する転写手段と、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光定着装置と、
少なくとも前記光定着装置からみて前記記録媒体の搬送方向の下流側において前記記録媒体を搬送する搬送手段と
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−64838(P2013−64838A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203019(P2011−203019)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】