説明

光導波路、光導波路の作製方法、及び非線形光学装置

【課題】固体媒質で構成されたコア部を有する光導波路の作製方法において、長尺化した際の固体媒質の不均一性を低減すること。
【解決手段】原版401の上にクラッド材402を塗布する(図4(a))。その上に、ラミネート法により第1のクラッドシート403を塗布する(図4(b))。ラミネート後、加熱して余分な溶媒等を除去して原版401から第1のクラッドシート403を剥離させ、凹部404Aを有するソフトスタンパ404を得る(図4(c))。ソフトスタンパ404Aに対して、第2のクラッドシート405をラミネート法により張り合わせて(図4(d))中空部406Bを有するクラッド部406Aを得る(図4(e))。最後に、中空部406Bに毛管現象によりUV樹脂を封入し、引き続き紫外線照射を行えばコア部406B’が固化され、クラッド部406A及びコア部406B’を有する光導波路400が得られる(図4(f))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光導波路の作製方法、及び非線形光学装置に関する。特に、光データ処理、情報処理、光通信システム等に用いられる光スイッチ、光メモリ、光信号演算処理装置等として有用な非線形光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非線形光学効果を利用した光スイッチ等の非線形光学装置として、例えば、光カーシャッタ型光スイッチ、マッハ・チェンダー型光スイッチ、方向性結合器型光スイッチ等が種々知られている。
【0003】
光カーシャッタ型光スイッチは、図1に模式的に示すように、偏光軸を互いに直交させたクロスニコル配置で偏光子及び検光子を配置し、非線形光学媒質(カー媒質)を偏光子と検光子との間に介在させている。入力光(プローブ光)は、ゲート光のパルスでゲーティングされ、ゲートパルスの時間波形に対応した出力光となる。この構成では、ゲート光が入射している間だけ、偏光子を通過したプローブ光の直線偏波がカー媒質内に生じた屈折率変化によって楕円偏波に変わる。そのため、プローブ光の一部が直交した検光子を通過でき、ゲート光のパルスによってプローブ光が光スイッチされる。
【0004】
検光子を通過するプローブ光の透過率は、ゲート光Pgとプローブ光Piの直線偏波のなす角がπ/4のとき最大となる。このときのプローブ光Piの透過率Tは式(1)で与えられる。
【0005】
【数1】

【0006】
但し、n2Bはカー定数と呼ばれている非線形屈折率、Lはカー媒質の長さ、Ig(=4Pg/πD2)は、ゲート光Pgのパワ密度、Dはビームのスポットサイズである。導波路媒質ではDをコア径と見做すことができる。
【0007】
従来の代表例の石英ファイバに代わって、高効率なガラスや有機材料を用いる光カーシャッタ型光スイッチが報告されており、例えば、4−(N,N−ジエチルアミノ)−β−ニトロスチレン(以下「DEANST」という。)をカー媒質に用いた光カーシャッタ実験において、ピコ秒という比較的高速な応答に加えて、比較的高効率な光スイッチング動作が実現されている(特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献1で主に示されているカー媒質は、その形態が溶液であるために、取り扱いが難しいという問題がある。また溶液材料では、光カー効果を起こす要因として、超高速な非線形分極効果に若干速度の劣る分子配向効果が加わるため、完全なフェムト秒クラスでの高速な応答の実現には分子設計等が必要になるという問題もある。そこで、カー媒質として分子長の非常に長い有機分子を溶解させた溶液を用いることにより分子配向効果を抑制させる必要があり、材料の選択の幅が狭くなっていた(特許文献2参照)。
【0009】
分子配向効果を押さえる有効な手段の一つは固体材料の適用である。しかしながら、固体材料自体の効率が十分でないので、たとえば小型レーザで駆動させるためには長尺化せざるを得ないが、従来、長尺化した固体光学媒質を作製することは困難であり、高々10センチオーダに止まっていた。
【0010】
図2は、マッハ・チェンダー型光スイッチの従来の代表例を示す図である。これは、ニオブ酸リチウムの電気光学効果を利用したものであり、コアはニオブ酸リチウム基板にチタンを熱拡散して作製される。ニオブ酸リチウムは、電気光学効果を有する光学結晶であって、電界をかけることによりその屈折率を変化させることができる。このため、図2に示すような構成をとると、コア中を伝搬する光の伝搬係数が電界による屈折率変化に伴い変化し、分岐された2つの光を合波する際に位相差が生ずる。位相差に応じて出力される光強度が干渉により変化するため、電極に加える電位を変化させることによりスイッチとして働くこととなる。
【0011】
しかしながら、このような電気光学効果を用いるスイッチは電気回路的な浮遊容量などによる制限のため、高速スイッチとして用いるには不向きであるという欠点がある。したがって、こうした制限のないマッハ・チェンダー型光スイッチが望まれているが、図1に示した光カーシャッタ型光スイッチと同様に、高効率な材料がないことが問題となっている。
【0012】
そこで、非線形光学効果が大きく動作に必要な光強度が小さい光学媒質が熱望され、活発な研究開発が進められた結果、半導体の微粒子を添加したガラスを素材とした光ファイバや、高効率な有機結晶を封入した光ファイバなどが開発されたものの、これらにおいても、光の透過率、光導波構造などの点に数々の問題がある。半導体の微粒子を添加したガラスを素材とした光ファイバの場合、非線形光学効果は、SiO2に比べて104〜105倍大きいのであるが、動作波長での光の吸収率が大きいために素子長は極めて短くせざるを得ず、結局のところ、大きな非線形光学効果を得るのが難しい。有機結晶を封入した光ファイバの場合には、単位長当たりの非線形光学効果が石英ガラスに比べて102以上大きく、また、動作波長での光の吸収率も小さいという利点を有するが、有機結晶の不均一性などに起因して光透過率や入射光の直線偏波保持に劣る。また、光ファイバのコア部とクラッド部との屈折率差の微細な調整を全範囲にわたり一様に行なうことが困難であり、このため、適正な光導波構造を形成して光強度を高めるのが難しい。
【0013】
図3は、方向性結合器型光スイッチの従来例を示す図である。この光スイッチは、2本の光導波路を十分に近付けたとき一方の光導波路(非線形光導波路)に入射された光波モードが他方の光導波路(通常の媒質からなる光導波路)に結合し、両モード間で伝送光エネルギーの移動が起こり、結果として出射端からの光エネルギーがオン・オフされる現象を利用している。入力光P0のパワが小さな領域では、出力P1のパワは、出力P2のパワに比べて圧倒的に大きいが、入力光P0のパワを次第に大きくしていくと、両モード間で伝送光エネルギーの移動が起こり、その結果、出力P1のパワが減少し、代わって、出力P2のパワが次第に増大していくというスイッチング動作が起こる。
【0014】
しかしながら、方向性結合器型光スイッチにおいても上述の光カーシャッタ型光スイッチ及びマッハ・チェンダー型光スイッチと同様の問題を抱えており、材料の効率が低いことから実用的でない。また、長尺化すれば材料自体の効率の低さの問題は軽減できるものの、長尺化や媒質の均一性に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平05−005909号公報
【特許文献2】特開平07−234424号公報
【特許文献3】特開2008−058531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、固体媒質で構成されたコア部を有する光導波路において、長尺化した際の固体媒質の不均一性を低減することにある。
【0017】
また、本発明の第2の目的は、固体媒質で構成されたコア部を有する光導波路の作製方法において、長尺化した際の固体媒質の不均一性を低減することにある。
【0018】
また、本発明の第3の目的は、長尺化した際の固体媒質の不均一性を低減した光導波路を備える非線形光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、樹脂性のクラッド部と、固体媒質で構成されたコア部とを有する光導波路であって、前記固体媒質は紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記紫外線硬化性樹脂に、非線形光学効果を呈する有機材料が混入していることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第3の態様は、樹脂性のクラッド部と、固体媒質で構成された第1及び第2のコア部とを有する光導波路であって、前記固体媒質は紫外線硬化性樹脂であり、前記第1のコア部の固体媒質のみに非線形光学効果を呈する有機材料が混入していることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第4の態様は、樹脂性のクラッド部と、固体媒質で構成されたコア部とを有する光導波路の作製方法であって、中空部を有する樹脂性のクラッド部を設けるステップと、前記中空部に、紫外線硬化性樹脂を毛管現象により導入するステップと、前記中空部に導入された紫外線硬化性樹脂を紫外線照射により固化してコア部を形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記紫外線硬化性樹脂に、非線形光学効果を呈する有機材料を混入することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第6の態様は、第4又は5の態様において、前記中空部を有する前記樹脂性のクラッド部を設けるステップは、原板の上に樹脂を塗布するステップと、前記樹脂の上に第1の樹脂シートをラミネート法により塗布して、凹部を有するソフトスタンパを作製するステップと、前記ソフトスタンパの前記凹部が形成された面に第2の樹脂シートを張り合わせて、前記中空部を有する前記クラッド部を設けるステップとを含むことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の第7の態様は、偏光子を介した入射光と共にゲート光が光導波路に入射され、前記光導波路を通過した前記入射光が、検光子を介して出射光として取り出される非線形光学装置において、前記光導波路は、第2の態様の光導波路であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の第8の態様は、入射したレーザ光を分波し、非線形材料を含む第1のコア部に分波された一方の光波を通過させて位相シフトを与え、非線形材料を含まない第2のコア部に分波された位相シフトを与えていない他方の光波と合波させて、入力光に変調が加わった出力光を得る非線形光学装置において、前記第1のコア部及び第2のコア部は、第3の態様の光導波路が有する第1及び第2のコア部であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の第9の態様は、近接した第1及び第2のコア部のうちの前記第1のコア部のみが非線形材料を含み、一方のコア部に入射された光波モードが他方のコア部に入射された光波モードと結合し、両モード間で起きる伝送光エネルギーの移動により出射端からの光エネルギーをオン・オフする非線形光学装置において、前記第1のコア部及び第2のコア部は、第3の態様の光導波路が有する第1及び第2のコア部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の光導波路によれば、光導波路のコア部を紫外線硬化性樹脂で構成したので、長尺化した際の固体媒質の不均一性を低減することができる。また、本発明の光導波路の作製方法によれば、クラッド部の中空部に紫外線硬化性樹脂を毛管現象により導入することにより、長尺化した際の固体媒質の不均一性を低減することができる。また、本発明の非線形光学装置によれば、コア部の固体媒質が紫外線硬化性樹脂であり、少なくとも一部のコア部に非線形材料が混入した光導波路を用いることにより、長尺化した際の固体媒質の不均一性を低減した光導波路を備える非線形光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】光カーシャッタ型光スイッチの従来例を示す図である。
【図2】マッハ・チェンダー型光スイッチの従来例を示す図である。
【図3】方向性結合器型光スイッチの従来例を示す図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明の実施形態にかかる光導波路の作製方法を示す図である。
【図5】図4を参照して説明した作製方法により作製した直線状の光導波路を示す図である。
【図6】実施例1−1による光カーシャッタ型光スイッチを示す図である。
【図7】実施例1−1による光カーシャッタ型光スイッチのプローブ光通過率とゲート光パワとの関係を示す図である。
【図8】実施例1−2に係る光導波路を示す図である。
【図9】実施例2−1によるマッハ・チェンダー型光スイッチ用の2層光導波路を説明するための図である。
【図10】(a)は実施例2−1に係る2層光導波路の導波路1の下面図であり、(b)は実施例2−1の2層光導波路の側面図である。
【図11】(a)は実施例2−1に係る2層光導波路の導波路2の上面図であり、(b)は実施例2−1の2層光導波路の側面図である。
【図12】実施例2−1に係る2層光導波路におけるビームの伝搬の様子を3次元的に示す図である。
【図13】実施例2−1によるマッハ・チェンダー型光スイッチの光スイッチング実験の結果を示す図である。
【図14】(a)は実施例2−2に係る2層光導波路の導波路1の下面図であり、(b)は実施例2−2の2層光導波路の側面図である。
【図15】(a)は実施例2−2に係る2層光導波路の導波路2の上面図であり、(b)は実施例2−2の2層光導波路の側面図である。
【図16】(a)は実施例3−1に係る2層光導波路の導波路1の下面図であり、(b)は実施例3−1の2層光導波路の側面図である。
【図17】(a)は実施例3−1に係る2層光導波路の導波路2の上面図であり、(b)は実施例3−1の2層光導波路の側面図である。
【図18】実施例3−1に係る2層光導波路におけるビームの伝搬の様子を3次元的に示す図である。
【図19】実施例3−1による方向性結合器型光スイッチの出力光パワと入力光パワとの関係を示す図である。
【図20】(a)は実施例3−2に係る2層光導波路の導波路1の下面図であり、(b)は実施例3−2の2層光導波路の側面図である。
【図21】(a)は実施例3−2に係る2層光導波路の導波路2の上面図であり、(b)は実施例3−2の2層光導波路の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図4(a)〜(f)は、本発明の実施形態にかかる光導波路の作製方法を示しており、図4(f)が最終的な光導波路の構造である。光導波路400は、樹脂性のクラッド部406Aの中に、紫外線硬化性樹脂(以下「UV樹脂」ともいう。)で構成されたコア部406B’が埋め込まれている構造である。コア部406B’を構成するUV樹脂には、非線形光学効果を持たせるために非線形光学効果を呈する有機材料(以下「非線形材料」ともいう。)を混入させてもよい。
【0031】
本発明の実施形態にかかる作製方法は以下の通りである。まず、原版401の上にクラッド材402を塗布する(図4(a))。その上に、ラミネート法により第1のクラッドシート403(「第1の樹脂シート」に対応)を塗布する(図4(b))。ラミネート法とは一般に、ローラーによって加圧することによって、導波路を張り合わせる導波路の作製方法をいう。第1のクラッドシート403は、例えば、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる高分子フィルム)403A上に原版401に塗布したのと同じクラッド材403Bを、ブレードコート法等により予め塗布したものからなる。クラッドシート403は、透明なシートであればよく、PETに限定されない。ラミネート後、加熱して余分な溶媒等を除去し、原版401から第1のクラッドシート403を剥離させると、光導波路のコア部に相当する部分が凹部404Aとなったソフトスタンパ404が作製される(図4(c))。本明細書において「ソフトスタンパ」とは、シリコン原版等を始めとするハード(文字通り硬い)スタンパではなく、柔らかい、つまりソフトであることを特徴とするスタンパをいう。ソフトスタンパ法は、導波路パターン転写時に押圧分布の影響を受けにくく導波路の大面積化が容易である。また、ソフトスタンパ法は工程が簡易であるという特長を有する。ソフトスタンパ法の詳細は、特許文献3に開示されている。
【0032】
ソフトスタンパ404Aに対して、第2のクラッドシート405(「第2の樹脂シート」に対応)をラミネート法により張り合わせれば(図4(d))、中空部406Bを有するクラッド部406Aが出来上がることとなる(図4(e))。最後に、中空部406Bを有するクラッド部406Aの一端を、UV樹脂を満たした溶液に浸しておけば、毛管現象により自動的にUV樹脂が中空部406Bに封入されるので、溶液の封入完了後、この状態のまま紫外線照射を行えば、コア部406B’の固化が行われ、クラッド部406A及びコア部406B’を有する光導波路400が得られる(図4(f))。
【0033】
光導波路400の端面処理については、通常の研磨加工により端面研磨を行うことが可能である。この方法により作製されたコア部の媒質は光学的な均一性が得られ、従来の有機結晶を用いた光導波路と比較して格段に光学特性が向上している。コア部に導入するUV樹脂に非線形光学効果を呈する有機材料を混入することにより、コア部に非線形光学効果を持たせることができる。
【0034】
UV樹脂としては、UV硬化性の樹脂であれば基本的にはいかなるものでもよく、市販のUV硬化樹脂、例えば、NTTアドバンストテクノロジ社のエポキシ樹脂、スリーボンド社の可視光硬化性樹脂、日立化成工業社のUV硬化樹脂、デュポン社あるいは三菱レイヨン社のUV樹脂等を用いることができる。これらのどれを用いても、毛管現象を利用すれば満遍なくクラッド部406Aの中空部406Bに材料を封入できることが可能である。材料選択の自由度が増すということも本発明に係る作製方法の大きな利点である。
【0035】
非線形光学効果を有する有機材料としては、上述のDEANSTのほか、イオン性結晶材料である4’−ジメチルアミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウムのメトスルホネート塩(以下「DMSM」という。)、三環系のベンジリデンアニリン誘導体であるテレフタル−ビス[(p−ジエチルアミノ)アニリン](以下「SBAC」という。)を用いることができる。さらに、分子性結晶材料である、4−ニトロアニリン(p−NA)、4−(N,N−ジエチルアミノ)ニトロベンゼン(p−DEANB)、2−メチル−4−ニトロアニリン(MNA)、4−ニトロフェニルプロリノール(NPP)、4−シクロオクチルアミノニトロベンゼン(COANB)、N−シアノメチル−N−メチル−4−ニトロアニリン(CMMNA)などのニトロアニリンおよびその誘導体、4−シクロオクチルアミノニトロピリジン(COANP)、4−アダマンタンアミノニトロピリジン(AANP)、2−(N−プロピノール)−5−ニトロピリジン(PNP)などのニトロピリジン誘導体、4−メトキシ−4’−ニトロスチルベン(MNS)、4−ブロモ−4’−ニトロスチルベン(BNS)、4−(N,N−ジメチルアミノ)−4’−ニトロスチルベン(DMANS0、4−(N,N−ジエチルアミノ)−4’−ニトロスチルベン(DEANS)、4−(N,N−ジプロピルアミノ)−4’−ニトロスチルベン(DPANS)、3−メチル−4−メトキシ−4’−ニトロスチルベン(MMNS)などのニトロスチルベン誘導体、4−(N,N−ジメチルアミノ)−4’−ニトロアゾベンゼン(DMANAB)、4−(N,N−ジエチルアミノ)−4’−ニトロアゾベンゼン(DEANAB)などのパラアミノニトロアゾベンゼ導体、5−ニトロインドール(5NIN)やクロロニトロベンゾオキサジアゾール(NBD−CI)などのベンゾ複素環誘導体、あるいは、イオン性結晶材料である4’−ジエチルアミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウムのメトスルホネート塩(DESM)、4’−ジエチルアミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウムのヨウ素塩(DESI)などのジアルキルアミノスチルバゾリウム誘導体、および表1に示す構造式で表されるピリジニウム誘導体、アズレニウム誘導体、キノリウム誘導体、あるいは、π電子共役系ポリマー材料であるポリジアセチレン誘導体、ポリ(パラフェニレンビニレン)やポリ(2,5−チェニレンビニレン)に代表されるポリアリレンビニレンなど、およびこれらのポリマーの基本単位を構成成分とするオリゴマー材料など、および、これらの分子を構成する水素を重水素化あるいはフッ素化したものを用いることが可能である。
【0036】
光カーシャッタ型光スイッチ、マッハ・チェンダー型光スイッチおよび方向性結合器型光スイッチにおいて本実施形態の光導波路400を使えば、光導波路の大面積化・長尺化が容易に行え、かつ、コア部406B’の媒質は均一性に優れるので、従来の問題であった長尺化および光学媒質の均一化という2つの問題を同時に解決することができることとなる。
【0037】
【表1】

【0038】
以上に説明したように、本発明の光導波路は、フレキシブルスタンパ技術に加えて、新たに毛管現象を利用した作製プロセスを経て作製されることから、従来にない長尺化のみならず、固体媒質で構成されたコア部において十分な光学均一性を獲得している。また、フレキシブルスタンパ技術によれば、大面積で多彩なパターンを描くことが可能であるが、毛管現象を利用すれば、いかなる形状の光導波路であっても満遍なくUV樹脂が中空部に封入されるという特長も有する。しかも45度ミラーを設置すれば2層化あるいはそれ以上の多層化も可能であり、三次元導波路への可能性も開くものである。なお、「長尺」とは一般に使用される用語であり厳密な定義はないが、たとえば、ポリマ導波路の場合10cm以上であれば長尺の領域に属する。
【0039】
本発明の光導波路を用いた非線形光学装置は、高能率に動作することは勿論、良好な光学特性等を備えていることから光情報処理や光通信分野で重用される。また、平面型の光導波路であることから、光ファイバ型と異なり、PLC(Planar Lightwave Circuit)との接続等、広い展開を図ることも可能である。しかも、本発明に従った非線形光学装置は、純粋な電子分極効果による非線形メカニズムを利用しているので、通信波長帯を含む広い波長範囲でフェムト秒での高速動作を実現できる。更に、本発明の光導波路及びこれを用いた非線形光学装置は、前述したような純粋な三次非線形光学効果を利用する光デバイスだけではなく、他の非線形光学効果、たとえば二次の非線形光学効果を用いた光スイッチ等にも転用できる。
【0040】
以下、実施例を示す。
【実施例1】
【0041】
実施例1として、光カーシャッタ型光スイッチを示す。
【0042】
実施例1−1
図5は、図4を参照して説明した作製方法により作製した直線状の光導波路を示している。導波路長は25cm、コアサイズは5μm×5μmとした。光導波路500はシングルモード導波路とすべく、屈折率の調整を行った。クラッド部500Aの材料には、NTTアドバンストテクノロジ社のUV硬化性エポキシ樹脂を用いた。コア部500Bの材料には、UV樹脂にDEANSTを徐々に混入したものを用い、シングルモードになる濃度となるものを用いることとした。DEANST濃度を種々変えて導波パターンを詳細に調べた結果、DEANSTの濃度が13.5重量%のときに最も特性が良くなることが判明した。光導波路500のコア部500BはUV照射による固化後も、十分は光学特性を有していることが確認できた。直線偏波の偏光保持率は、光カーシャッタ実験に必要な20dB以上を確保できていた。
【0043】
図6は、光カーシャッタ型光スイッチの光学系を示す。ゲート光には、OPA(optical parametric amplifier)を通過した波長0.78μmのチタンサファイアレーザ光(150fs,1kHz)を使用し、プローブ光には、ゲート光パルスに同期させた波長0.83μm、パルス幅10nsの半導体レーザ光を用いた。プローブ光は、λ/2波長板により直線偏波の偏光方向をゲート光の直線偏波の偏光方向に対してπ/4だけ傾けられ、偏光子、ミラー、レンズを通過して光導波路に至らしめた。
【0044】
この光学系では、ミラーによりゲート光とプローブ光がコリニア系(共軸系)になっているので、光導波路の媒体をカー媒質として使用することが可能となる。プローブ光は、光導波路を通過した後、更にレンズ、フィルタ、検光子を経て検出器に送られる。検出器には、光電子増倍管やフォトダイオード等を使用した。ゲート光は、フィルタで遮られ、検出器まで達しなかった。ゲート光の遮断には、フィルタに替えて分光器を使用することもできる。ゲート光のパワを調整しスイッチング動作を調査したところ、プローブ光の通過率Tが式(1)に従った挙動を示し、図7にみられるように正しく光カーシャッタ動作を示していることが確認された。位相変化量πも実現され、この結果から本実施例1−1で使用したDEANSTからなるコア材のカー定数n2Bが2×10-15 cm2 /Wと算出された。本実施例1−1の実験での波長帯には大きな吸収がなく、また、二光子吸収の影響もみられなかった。
【0045】
通信波長帯(1.3μm、1.5μm)での使用については、材料の重水素化やフッ素化を行えば、吸収を効果的に低減したスイッチングが可能となる(本実施例の波長域でも重水素化やフッ素化はより吸収を下げる効果がある)。繰り返し周波数も、本実施例1では熱効果の混入を考慮して十分な低繰り返し(=1kHz)としたが、これ以上の高繰り返しの周波数で実験することも十分可能である。
【0046】
実施例1−2
実施例1−1では、大型のチタンサファイアレーザのOPAを経たレーザ光を光源とした。しかし、これに拘束されることなく、大面積化が可能なフレキシブルスタンパ技術を用いれば、小型レーザをゲート光として駆動させることも可能である。本実施例1−2では、図8に示すパターンの光導波路を作製した。コアサイズは5μm×5μm、導波路長は本発明の特長を活かして長尺の1mとした。ゲート光には、市販の半導体レーザ(波長0.83μm、出力100mW、パルス幅10ns、繰返し周波数1kHz)を用い、プローブ光にも、その出力をゲート光の1/100倍とした半導体レーザを用いた。非線形材料およびUV樹脂は、実施例1−1と同じとした。
【0047】
本実施例1−2でも、光カーシャッタ動作が確認され、位相変化量π/4が達成され、光学系が大幅にコンパクト化された。本発明に従った光カーシャッタ型光スイッチでは、DEANSTの他、DMSMあるいは、SBAC等を用いても、同様の結果が得られることが判明した。図8に示す通り、光導波路は直線だけでなく大きなカーブも有しているが、ビームがそこを通過しても、導波特性が劣化することはなかった。
【0048】
本実施例1−2で用いた光電子増倍管又はフォトダイオードでは、それ自体の応答速度がナノ秒で止まってしまう。そこで、プローブ光パルスをゲート光パルスに対して遅延を掛ける一般的な測定手法により、光カーシャッタ型光スイッチの応答速度を調査した。測定の結果、スイッチング速度は、入射したゲート光のパルス幅と同程度以下であり、固体媒質の特長である高速な電子分極効果により光スイッチングが生じていることが確認された。また、二光子吸収や熱効果による低速化、群遅延分散による低速化等も排除されていた。本実施例1−2で採用した光カーシャッタスイッチは、サブピコ秒以下のスイッチングスピードをもつため、信号光に100GHz以上の変調をかける変調機能、100GHz以上の繰返し周波数をもつ信号光パルス列から任意の信号パルスを取り出し、低繰返しのパルス列に変換するデマルチプレクシング機能,幾つかの低繰返し光パルス列を100GHz以上の光パルス列に多重化するマルチプレクシング機能等を備えた光カーシャッタ型光スイッチとなる。
【実施例2】
【0049】
実施例2として、マッハ・チェンダー型光スイッチを示す。
【0050】
実施例2−1
本発明の作製方法によって作られた光導波路は、光学接着剤によって、容易に張り合わせて2層化することが可能であることから、この2層光導波路を用いれば、マッハツェンダー型光スイッチを高効率に行うことが可能となる。
【0051】
図9に、マッハ・チェンダー型光スイッチ用の2層光導波路の作製工程を示す。図4に示した手順に従ってマッハ・チェンダー型光スイッチ用のコアパターンを設けた光導波路を2つ用意するが、このうち一方には、実施例1−1と同じUV樹脂のみを封入し(これを光導波路1とする。)、もう一方にはUV樹脂にDEANST等の非線形材料を混合させた溶液を封入する(これを光導波路2とする。)。その後、図9に示す位置にダイシング技術等によって2つの光導波路1及び2に45度ミラーを設け、その光導波路を張り合わせることで完成する。ただし、各々の光導波路に封入する材料と45度ミラーの位置は異なっている。ここで、45度ミラーとは、その全反射機能よって、ビームの層間移動を可能にするために設けたものである。
【0052】
図10(a)及び11(a)に、光導波路のパターン、45度ミラーの設置の位置および封入する材料を光導波路1及び2についてそれぞれ示した。図10(b)及び11(b)は、本実施例2−1の2層光導波路の側面図である。光導波路2では、2本のコア部を設けるが一方にのみ非線形材料を封入する。光導波路1にビームを入力させると、図10(b)に示すように導波する。この構成では、光導波路2でのみ、非線形屈折率変化を起こさせ、それによって生じる屈折率変化により、2つの分岐された光を合波する際に起こる位相差を得ている。光導波路1のコア部は、いわば単なる伝送路だけの役割を担っている。
【0053】
ビームの伝搬の様子を3次元的に図示したのが図12である。光導波路1のコア部に導入したビームは、暫く光導波路1の中を導波した後、二手に分波し、一方は、45度ミラーによって光導波路2に移ったのち非線形材料の中を導波し、再び光導波路1に戻る(ビームA)。もう一方は、45度ミラーによって光導波路2に移るが通常のUV樹脂のみを通過した後、再び光導波路1に戻り(ビームB)、ビームAとビームBは再び合波する。当然、ビームAとビームBとには位相差が生じているので、これを起因として光スイッチング動作が起こることとなる。
【0054】
本実施例2−1では、マッハ・チェンダー型光スイッチ用光導波路について、非線形光学効果を起こす光導波路2内の光導波路長は10cm、コアサイズは5μm×5μmとした。クラッド材およびコア材には、実施例1−1と同じものを用いた。本実施例2−1でも、導波パターンを詳細に調べた結果、DEANSTの濃度が13.5重量%のときに最も特性が良くなることが判明した。UV光照射による固化を行ったコア部を有する光導波路であっても、十分は光学特性を有していることも確認できた。直線偏波の偏光保持率はマッハ・チェンダースイッチ実験に必要な20dB以上を確保できていた。45度ミラーも必要な全反射機能を備えており、ビームの層間移動も実験に十分なレベルを得ることができた。
【0055】
本実施例2−1では、OPA(optical parametric amplifier)を通過した波長0.78μmのチタンサファイアレーザ光(150fs,1kHz)を用い、光電子増倍管又はフォトダイオードを検出器として使用した。図13に光スイッチング実験の結果を示したが、図13にみられるように、当初80%であった出力光が三次の非線形光学効果によって変調を受けた結果、20%まで変化しており、光スイッチング動作が実現されていることが分かった。実験の波長帯には大きな吸収がなく、二光子吸収の影響もみられなかった。
【0056】
通信波長帯(1.3μm、1.5μm)での使用については、材料の重水素化やフッ素化を行えば、吸収を効果的に低減したスイッチングが可能となる(本実施例2−1の波長域でも重水素化やフッ素化はより吸収を下げる効果がある。)。繰り返し周波数も、本実施例2−1では熱効果の混入を考慮して十分な低繰り返し(=1kHz)としたが、これ以上の高繰り返しの周波数で実験することも十分可能である。
【0057】
なお、本実施例2−1で示した45度ミラーを設けるという技術を使えば、2層に限らず3層以上の多層化も可能である。即ち、光導波路のコア部に45度ミラーを設けた単層の光導波路を用意しておき、これらを光学接着剤によって張り合わせて行けば、次々とビームが層間移動できる3次元光導波路への展開を図ることが可能である。この多層化は、光導波路長の長さを層の数だけ倍々に増やせるので、材料自体の効率を長尺化によって補う場合に特に有効な手法となる。
【0058】
実施例2−2
本発明のマッハ・チェンダー型光スイッチにおいても、実施例1−2と同様の考えを進めれば、小型レーザでの駆動が可能である。本実施例2−2では、図14及び15に示すような構造の光導波路を作製したビームの伝搬は実施例2−1と同様であるが、実施例1−2と同様にフレキシブルスタンパ技術の特長を活かして長尺化を行った。光導波路2のポート1には実施例1−1と同じUV樹脂にDEANSTを混入させた溶液を封入し、ポート1にはUV樹脂のみを封入してある。DENAST等からなる非線形光導波路の実効的な導波長は、本発明の特長を活かして1mとした。光導波路1には全てUV樹脂のみを封入した。光源は、市販の半導体レーザ(波長0.83μm、出力100mW、パルス幅10ns、繰返し周波数1kHz)を用いた。本実施例2−2の光導波路においては、直線偏波の偏光保持率はマッハ・チェンダースイッチ実験に必要な20dB以上を確保できていた。
【0059】
本実施例2−2でも、マッハ・チェンダースイッチ動作が確認され、光学系が大幅にコンパクト化されることが分かった。本発明に従ったマッハ・チェンダー型光スイッチでも、DEANSTの他、DMSMあるいは、SBAC等を用いても、同様の結果が得られることが判明した。本実施例2−2も、固体化の特長を活かし、二光子吸収や熱効果による低速化や群遅延分散による低速化等が排除された純粋な電子分極効果による高速応答が可能であった。図15(a)に示す通り、光導波路は直線だけでなく大きなカーブも有しているが、ビームがそこを通過しても、導波特性が劣化することはなかった。
【実施例3】
【0060】
実施例3として、方向性結合器型光スイッチを示す。
【0061】
実施例3−1
方向性結合器型光スイッチにおいても、2層光導波路を用いれば、高効率なスイッチング行うことが可能となる。方向性結合器型光スイッチでも、図4に示した手順に従って、方向性結合器型光スイッチ用のコアパターンを設けた光導波路を2つ用意し、このうち一方には、UV樹脂のみを封入し(これを光導波路1とする。)、もう一方にはUV樹脂にDEANST等の非線形材料を混合させた溶液を封入する(これを光導波路2とする。)。その後、図5に示す位置にダイシング技術等によって二つの光導波路に45度ミラーを設け、その光導波路を張り合わせることで完成する。ただし、各々の光導波路に封入する材料と45度ミラーの位置は異なっている。
【0062】
図16(a)及び17(a)に、光導波路のパターン、45度ミラーの設置位置および封入する材料を光導波路1及び2についてそれぞれ示した。光導波路2では、2本のコア部を設けるが一方にのみ非線形材料を封入する。光導波路1にビームを入力させると、図図16(b)に示すように導波する。この構成では、光導波路2でのみ、非線形屈折率変化を起こさせ、それによって光波モードを他方に結合させ、両モード間で伝送光エネルギーの移動を起こしている。光導波路1のコアは、いわば単なる伝送路としての役割を担っている。
【0063】
ビームの伝搬の様子を3次元的に図示したのが図18である。光導波路1のポート1からコア部に導入したビームは、暫く光導波路1内を導波した後、45度ミラーによって光導波路2に移ったのち非線形材料の中を導波し、再び光導波路1に戻る(ビームA)。光導波路1のポート2からコア部に導入したビームは、暫く光導波路1内を導波した後、45度ミラーによって光導波路2に移り通常のUV樹脂のみを通過した後、再び光導波路1に戻る(ビームB)。光導波路2内での非線形光導波路の存在により、光波モードの結合による両モード間で伝送光エネルギーの移動を起こり、これを起因として光スイッチング動作が起こることとなる。
【0064】
本実施例3−1では、方向性結合器型光スイッチ用光導波路について、非線形光学効果を起こす光導波路2内の光導波路長は10cm、コアサイズは5μm×5μmとした。クラッド材およびコア材には、実施例1−1と同じものを用いた。本実施例3−1でも、導波パターンを詳細に調べた結果、DEANSTの濃度が13.5重量%のときに最も特性が良くなることが判明した。UV光照射による固化を行ったコア部を有する光導波路であっても、十分は光学特性を有していることも確認できた。直線偏波の偏光保持率はマッハ・チェンダースイッチ実験に必要な20dB以上を確保できていた。
【0065】
本実施例3−1では、OPA(optical parametric amplifier)を通過した波長0.78μmのチタンサファイアレーザ光(150fs,1kHz)を用い、光電子増倍管又はフォトダイオードを検出器として使用した。図19に示す実験結果にみられるように、非線形光導波路ポート3における出力は当初67%であったが、三次の非線形光学効果によって結合が起こった結果、53%にまで減少した。逆に、他方のポート4における出力は当初33%であったが、結合によって47%に増加した。これらの出力の変化は、方向性結合器型の光スイッチング動作が起こっていることを示している。実験の波長帯には大きな吸収がなく、二光子吸収の影響もみられなかった。
【0066】
通信波長帯(1.3μm、1.5μm)での使用については、材料の重水素化やフッ素化を行えば、吸収を効果的に低減したスイッチングが可能となる(本実施例3−1の波長域でも重水素化やフッ素化はより吸収を下げる効果がある。)。繰り返し周波数も、本実施例3−1では熱効果の混入を考慮して十分な低繰り返し(=1kHz)としたが、これ以上の高繰り返しの周波数で実験することも十分可能である。
【0067】
実施例3−2
本発明の方向性結合器型光スイッチにおいても、実施例1−2および実施例2−2と同様の考えを進めれば、小型レーザでの駆動が可能である。本実施例3−2では、図20及び21に示すような構造の光導波路を作製した。ビームの伝搬は実施例3−1と同様であるが、実施例1−2および実施例2−2と同様にフレキシブルスタンパ技術の特長を活かして長尺化を行った。光導波路2のポート1には実施例1−1と同じUV樹脂にDEANSTを混入させた溶液を封入し、ポート1にはUV樹脂のみを封入してある。DENASTからなる非線形光導波路の実効的な導波長は、本発明の特長を活かして1mとした。光導波路1には全てUV樹脂のみを封入した。光源は、市販の半導体レーザ(波長0.83μm、出力100mW、パルス幅10ns、繰返し周波数1kHz)を用いた。本実施例3−2の光導波路においては、直線偏波の偏光保持率はマッハ・チェンダースイッチ実験に必要な20dB以上を確保できていた。
【0068】
本実施例3−2でも、方向性結合器型スイッチ動作が確認され、光学系が大幅にコンパクト化されることが分かった。本発明に従った方向性結合器型光スイッチでも、DEANSTの他、DMSMあるいは、SBAC等を用いても、同様の結果が得られることが判明した。本実施例3−2も、固体化の特長を活かし、二光子吸収や熱効果による低速化や群遅延分散による低速化等が排除された純粋な電子分極効果による高速応答が可能であった。
【符号の説明】
【0069】
400 光導波路
401 原版
402 クラッド材
403 第1のクラッドシート(「第1の樹脂シート」に対応)
403A PETフィルム
403B クラッド材
404 ソフトスタンパ
405 第2のクラッドシート(「第2の樹脂シート」に対応)
406A クラッド部
406B 中空部
406B’ コア部
500、800 光導波路
500A、800A クラッド部
500B、800B コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂性のクラッド部と、固体媒質で構成されたコア部とを有する光導波路であって、前記固体媒質は紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記紫外線硬化性樹脂に、非線形光学効果を呈する有機材料が混入していることを特徴とする請求項1に記載に光導波路。
【請求項3】
樹脂性のクラッド部と、固体媒質で構成された第1及び第2のコア部とを有する光導波路であって、
前記固体媒質は紫外線硬化性樹脂であり、前記第1のコア部の固体媒質のみに非線形光学効果を呈する有機材料が混入していることを特徴とする光導波路。
【請求項4】
樹脂性のクラッド部と、固体媒質で構成されたコア部とを有する光導波路の作製方法であって、
中空部を有する樹脂性のクラッド部を設けるステップと、
前記中空部に、紫外線硬化性樹脂を毛管現象により導入するステップと、
前記中空部に導入された紫外線硬化性樹脂を紫外線照射により固化してコア部を形成するステップと
を含むことを特徴とする作製方法。
【請求項5】
前記紫外線硬化性樹脂に、非線形光学効果を呈する有機材料を混入することを特徴とする請求項4に記載の作製方法。
【請求項6】
前記中空部を有する前記樹脂性のクラッド部を設けるステップは、
原板の上に樹脂を塗布するステップと、
前記樹脂の上に第1の樹脂シートをラミネート法により塗布して、凹部を有するソフトスタンパを作製するステップと、
前記ソフトスタンパの前記凹部が形成された面に第2の樹脂シートを張り合わせて、前記中空部を有する前記クラッド部を設けるステップと
を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の作製方法。
【請求項7】
偏光子を介した入射光と共にゲート光が光導波路に入射され、前記光導波路を通過した前記入射光が、検光子を介して出射光として取り出される非線形光学装置において、前記光導波路は、請求項2に記載の光導波路であることを特徴とする非線形光学装置。
【請求項8】
入射したレーザ光を分波し、非線形材料を含む第1のコア部に分波された一方の光波を通過させて位相シフトを与え、非線形材料を含まない第2のコア部に分波された位相シフトを与えていない他方の光波と合波させて、入力光に変調が加わった出力光を得る非線形光学装置において、前記第1のコア部及び第2のコア部は、請求項3に記載の光導波路が有する第1及び第2のコア部であることを特徴とする非線形光学装置。
【請求項9】
近接した第1及び第2のコア部のうちの前記第1のコア部のみが非線形材料を含み、一方のコア部に入射された光波モードが他方のコア部に入射された光波モードと結合し、両モード間で起きる伝送光エネルギーの移動により出射端からの光エネルギーをオン・オフする非線形光学装置において、前記第1のコア部及び第2のコア部は、請求項3に記載の光導波路が有する第1及び第2のコア部であることを特徴とする非線形光学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2011−2793(P2011−2793A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148096(P2009−148096)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】