光導波路およびその製造方法
【課題】光伝送性能を損なうことなく、コア層とクラッド層の密着力を向上させた光導波路を提供すること。
【解決手段】光導波路1は、コア部21と前記コア部21より屈折率の低いクラッド部22とを有するコア層2と、前記コア層2を挟んで配置される2つのクラッド層3、4とを備え、前記コア層2と前記2つのクラッド層3、4の少なくとも一方との間に厚さが1から100nmの薄膜層5を含む。薄膜層5はコア部21よりも屈折率の高い材料からなるものであることが好ましい。薄膜層5は、コア層2とクラッド層3、4の密着力を向上させ、層間剥離を防止することができる。
【解決手段】光導波路1は、コア部21と前記コア部21より屈折率の低いクラッド部22とを有するコア層2と、前記コア層2を挟んで配置される2つのクラッド層3、4とを備え、前記コア層2と前記2つのクラッド層3、4の少なくとも一方との間に厚さが1から100nmの薄膜層5を含む。薄膜層5はコア部21よりも屈折率の高い材料からなるものであることが好ましい。薄膜層5は、コア層2とクラッド層3、4の密着力を向上させ、層間剥離を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子素子間や配線基板間の高速・高密度信号伝送において、従来の電気配線による伝送では、信号の相互干渉や減衰が障壁となり、高速・高密度化の限界が見え始めている。このため、電子素子間や配線基板間を光で接続する技術、いわゆる光インタコネクションが検討されている。光路としては、素子や基板との結合の容易さ、取り扱い易さの観点から、柔軟性を備えたフィルム状の光導波路が検討されている。
【0003】
このような光導波路の製造方法としては、例えば、反応性イオンエッチング法、フォトリソグラフィー法、フォトブリーチ法などが知られている。これらの方法では光導波路を構成する各層(コア層およびクラッド層)を逐次積層して製造を行う。このため、コア層とクラッド層の密着力をいかに向上させるかが課題となる。すなわち、密着力が低いと屈曲等の応力が加えられたときにコア層とクラッド層が剥離することがある。
【0004】
そこで、コア層とクラッド層の密着力を向上する種々の試みがなされてきた。特許文献1は、コア層とクラッド層に使用する熱可塑性樹脂の相溶性パラメータの差が一定の範囲にあるように材料を選択することで密着力を向上する光導波路を提供している。また、特許文献2は、コア層とクラッド層を感圧接着剤により接着することで密着力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−223089号公報
【特許文献2】特開2009−109920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、通常コア層およびクラッド層に要求される屈折率や耐熱性のほか相溶性パラメータも考慮する必要があり、使用する材料が制限される。この結果、密着力の向上と光伝送性能の向上が両立しないことがあった。また、特許文献2の方法でも、使用する接着剤によって光伝送性能が悪化することがあった。
【0007】
上記に鑑みて、本発明は、光伝送性能を損なうことなく、コア層とクラッド層の密着力を向上させた光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(7)に記載の本発明により達成される。
(1)コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路であって、前記コア層と前記2つのクラッド層の少なくとも一方との間に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を有する光導波路。
(2)前記薄膜層は、前記コア部よりも屈折率が高い(1)に記載の光導波路。
(3)前記薄膜層は、ダイヤモンドライクカーボン、シリコンカーバイド、チタン酸鉛のうちのいずれかである(2)に記載の光導波路。
(4)前記薄膜層を、前記コア層と前記2つのクラッド層のそれぞれとの間に有する(1)から(3)のいずれかに記載の光導波路。
(5)コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法であって、少なくとも一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記コア層に対し、その薄膜層上に前記クラッド層を積層するクラッド層積層工程、を有する光導波路の製造方法。
(6)コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法であって、一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記クラッド層に対し、その薄膜層上に前記コア層を積層するコア層積層工程、を有する光導波路の製造方法。
(7)前記薄膜層は、プラズマCVDにより形成する(5)または(6)に記載の光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光伝送性能を損なうことなく、コア層とクラッド層の密着力を向上させた光導波路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の光導波路の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の光導波路の第二実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光導波路について詳細に説明する。
図1は、本発明の光導波路の第一実施形態を示す断面図である。
【0012】
<第一実施形態>
(光導波路)
図1に示すように光導波路1は、コア部21とコア部21より屈折率の低いクラッド部22とを有するコア層2と、コア層2を挟んで配置される2つのクラッド層3、4と、を備える。コア部21は、伝送光の光路を形成する部分であり、クラッド部22は、コア層2に形成されているものの伝送光の光路を形成せず、クラッド層3、4と同様の機能を果たす部分である。さらに、コア層2とクラッド層3、4の間には薄膜層5を有する。薄膜層5は、コア層2とクラッド層3、4の密着力を向上させる機能を果たす。また、薄膜層5は、耐溶剤性を有するものであってもよい。このとき、感光性樹脂組成物を溶媒に溶かし、これを直接薄膜層5の上に塗布することでコア層2またはクラッド層3、4を形成することができ、工程の大幅な短縮を図ることができる。
【0013】
コア層2の厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、1μm以上200μm以下であるのが好ましく、5μm以上100μm以下であるのがより好ましく、10μm以上60μm以下であるのがさらに好ましい。
【0014】
コア層2の構成材料としては、光(例えば紫外線)の照射により、あるいはさらに加熱することにより屈折率が変化する材料が用いられる。このような材料の好ましい例としては、ベンゾシクロブテン系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー等の環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を主材料とするものが挙げられ、ノルボルネン系ポリマーを含む(主材料とする)ものが特に好ましい。
【0015】
このような材料で構成されたコア層2は、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、特に繰り返し湾曲変形した場合でも、コア部21とクラッド部22との剥離や、コア層2と隣接する層(クラッド層3、4)との層間剥離が生じ難く、コア部21、クラッド部22内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路1の光伝送性能が維持され、耐久性に優れた光導波路1が得られる。
【0016】
また、コア層2の構成材料には、例えば、酸化防止剤、屈折率調整剤、可塑剤、増粘剤、補強剤、増感剤、レベリング剤、消泡剤、密着助剤および難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。酸化防止剤の添加は、高温安定性の向上、耐候性の向上、光劣化の抑制という効果がある。このような酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリフェノール系等のフェノール系や、芳香族アミン系のものが挙げられる。また、可塑剤、増粘剤、補強剤の添加により、曲げに対する耐性をさらに増大させることもできる。
【0017】
酸化防止剤に代表される添加剤の含有率(2種以上の場合は合計)は、コア層2の構成材料全体に対し、0.5〜40重量%程度が好ましく、3〜30重量%程度がより好ましい。この量が少なすぎると、添加剤の機能を十分に発揮することができず、量が多すぎると、添加剤の種類や特性によっては、コア部21を伝送する光(伝送光)の透過率の低下、パターニング不良、屈折率不安定等を生じるおそれがある。
【0018】
形成されるコア部21のパターン形状としては、特に限定されず、直線状、湾曲部を有する形状、異形、光路の分岐部、合流部または交差部を有する形状、集光部(幅等が減少している部分)または光拡散部(幅等が増大している部分)、あるいはこれらのうちの2以上を組み合わせた形状等、いかなるものでもよい。光の照射パターンの設定により、いかなる形状のコア部21をも容易に形成することができる。
【0019】
クラッド層3、4の厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、1μm以上50μm以下であるのがより好ましく、5μm以上30μm以下であるのがさらに好ましい。
【0020】
クラッド層3、4の構成材料としては、コア層2のコア部21より低屈折率の材料が用いられる。例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合せて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)用いることができる。
【0021】
これらのうち、特に耐熱性に優れるという点で、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、またはそれらを含むもの(主とするもの)を用いるのが好ましく、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。
【0022】
ノルボルネン系ポリマーは、耐熱性に優れるため、これをクラッド層3、4の構成材料として使用してなる光導波路では、光導波路に導体層を形成する際、導体層を加工して配線を形成する際、光学素子を実装する際、等に加熱されたとしても、クラッド層部分が軟化して変形するのを防止することができる。
【0023】
また、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いクラッド層部分を得ることができる。
【0024】
また、ノルボルネン系ポリマーまたはその原料であるノルボルネン系モノマーは、比較的安価であり、入手が容易であることからも好ましい。
【0025】
さらに、クラッド層3、4の構成材料として、ノルボルネン系ポリマーを主とするものを用いると、曲げ等の変形に対する耐性(耐屈曲性)に優れ、繰り返し屈曲変形させた場合でも、クラッド層3、4とコア層2との層間剥離が生じ難い。このようなことから、光導波路1の光伝送性能が維持され、最終的に耐久性に優れた光導波路1が得られる。
【0026】
クラッド層3、4は、コア層2を挟んで配置されるが、それぞれのクラッド層は同種の構成材料から成ってもよいし、異なる構成材料から成ってもよい。
【0027】
薄膜層5は、厚さが1nm以上100nm以下の層であり、さらに5nm以上50nm以下の範囲にあるとより好ましい。薄膜層5が厚すぎると伝送光が薄膜層5に漏出し、光導波路1の光伝播性能が悪化する。また、薄膜層5が薄すぎると十分な密着力を発揮できない。
【0028】
薄膜層5の構成材料としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)やシリコン酸化物(SiOx)、シリコン窒化物(SiNx)、アモルファスシリコン、ポリシリコン、シリコンカーバイド、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸鉛のように、コア層2とクラッド層3、4の密着力を高める材料が用いられる。特にDLC、シリコンカーバイド、チタン酸鉛のようにコア部21より屈折率の高い材料は分極率が高く、したがって高い密着力を発揮できるためより好ましい。
【0029】
なお、図1に示す光導波路1は、2つのコア部21を有するものであるが、1つの光導波路1に形成されるコア部21の数は、特に限定されるものではない。
さらに、図1では、コア層2は1層のみであるが、コア層の数は特に限定されるものではなく、コア層2が複数積層されていてもよい。
【0030】
(光導波路の製造方法)
次に、前記実施形態における光導波路1の製造方法および各部の構成材料等について説明する。
【0031】
まず、コア部21の形成方法の説明に先立って、コア部21の形成に用いられる感光性樹脂組成物について説明する。
【0032】
(感光性樹脂組成物)
本実施形態において用いる感光性樹脂組成物は、例えば、
(A)環状オレフィン樹脂と、
(B)(A)とは屈折率が異なり、かつ、環状エーテル基を有するモノマーおよび環状エーテル基を有するオリゴマーのうち少なくともいずれか一方と、
(C)光酸発生剤と、
を備える。
【0033】
このような感光性樹脂組成物は、フィルム状に成形されて光導波路形成用フィルムとされ、さらに、屈折率が異なる領域を含むフィルム、例えば、光導波路フィルムとして使用される。
【0034】
すなわち、このような感光性樹脂組成物を使用することで、光の伝搬損失の発生が抑制された光導波路フィルム等を提供することができる。なかでも、湾曲した光導波路を形成した場合において、光の伝搬損失の発生を顕著に抑制することができる。
【0035】
以下、感光性樹脂組成物の成分について順次詳述する。
((A)環状オレフィン樹脂)
成分(A)の環状オレフィン樹脂は、感光性樹脂組成物のフィルム成形性を確保するために添加されるものであり、ベースポリマーとなるものである。
【0036】
ここで、環状オレフィン樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
【0037】
環状オレフィン樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
なかでも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0039】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体、
が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0040】
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0041】
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことからも好ましい。たとえば、感光性樹脂組成物によりフィルムを形成した後、電気部品等を、半田を介して実装することがある。このような場合において、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を有することが必要となるため、付加(共)重合体が好ましい。また、感光性樹脂組成物によりフィルムを形成し、製品に組み込んだ際に、たとえば、80℃程度の環境下にて使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
【0042】
なかでも、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0043】
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
【0044】
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
【0045】
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
【0046】
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0047】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0048】
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
【0049】
以上のようなノルボルネン系樹脂は、脱離性基を有するものであることが好ましい。ここで、脱離性基とは、酸の作用により離脱するものである。
【0050】
具体的には、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。かかる酸離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
【0051】
このうち、離脱により樹脂の屈折率を低下させる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
【0052】
((B)環状エーテル基を有するモノマー、環状エーテル基を有するオリゴマー)
次に、(B)の成分について説明する。
【0053】
成分(B)は、環状エーテル基を有するモノマーおよび環状エーテル基を有するオリゴマーのうちの少なくとも一方である。この成分(B)は、成分(A)の樹脂と屈折率が異なり、かつ、成分(A)の樹脂と相溶性のあるものであればよい。成分(B)と、成分(A)の樹脂との屈折率差は、0.01以上であることが好ましい。
【0054】
なお、成分(B)の屈折率は、成分(A)の樹脂よりも高いものであってもよいが、成分(B)は、成分(A)の樹脂よりも屈折率が低いことが好ましい。
【0055】
成分(B)の環状エーテル基を有するモノマー、環状エーテル基を有するオリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。モノマー、オリゴマーの拡散性を考慮すると、このモノマーの分子量(重量平均分子量)、オリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上、400以下であることが好ましい。
【0056】
成分(B)は、たとえば、オキセタニル基あるいは、エポキシ基を有する。このような
環状エーテル基は、酸により開環しやすいため、好ましい。
【0057】
さらに、(B)の成分として、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
【0058】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0059】
この(B)成分の添加量は、(A)成分100重量部に対し、1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上、20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
【0060】
((C)光酸発生剤)
光酸発生剤としては、光のエネルギーを吸収してブレンステッド酸あるいはルイス酸を生成するものであればよく、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類などの化合物を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独、または複数を組み合わせて使用することができる。
【0061】
光酸発生剤の含有量は、(A)成分100重量部に対し0.01重量部以上、0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上、0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
【0062】
感光性樹脂組成物は、以上の(A)、(B)、(C)の成分に加えて、増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0063】
増感剤は、光に対する光酸発生剤の感度を増大して、光酸発生剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、光酸発生剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0064】
このような増感剤としては、光酸発生剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0065】
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
【0067】
(コア層の形成)
図2ないし図7は、それぞれ、光導波路1の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【0068】
ここでは、成分(B)が成分(A)の環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低いものである場合の感光性樹脂組成物を用いて光導波路を製造する方法を例にして説明する。
【0069】
まず、図2に示すように、感光性樹脂組成物を溶媒に溶かしてワニス状のコア層形成用材料23を調製し、このコア層形成用材料23を基材6上に塗布する。
【0070】
感光性樹脂組成物をワニス状に調製する溶媒としては、たとえば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)などのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドンなどの芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどの硫黄化合物系溶媒の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒が挙げられる。
【0071】
基材6には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。また、基材表面は後にコア層の剥離が容易となるように離型処理がされていてもよい。このような処理としては、具体的には、例えば、テフロン(登録商標)を表面にコーティングまたはアッシング処理してもよい。
【0072】
次に、基材6上にコア層形成用材料23を塗布した後、乾燥させて、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、図3に示すように、コア層形成用材料23は、コア層形成用フィルム24となる。このコア層形成用フィルム24は、後述する光の照射により、コア部21とクラッド部22とが形成されたコア層2となる。
【0073】
ここで、コア層形成用材料23を塗布する方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0074】
また、本実施形態ではコア層2の形成方法として塗布法を挙げたが、他の方法、例えば、別途製造されたシート材を接合する方法を採用することもできる。
【0075】
次に、コア層形成用フィルム24に対し、選択的に光(たとえば、紫外線)を照射する。この際、図4に示すように、コア層形成用フィルム24の上方に開口611が形成されたマスク61を配置する。このマスク61の開口611を介して、コア層形成用フィルム24に対し、光を照射する。
【0076】
用いられる光としては、可視光、紫外光、赤外光、レーザー等の活性エネルギー光線が挙げられる。また、光を用いるのではなく、X線等の電磁波や、電子線等の粒子線を用いるようにしても良い。特に、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものを用いることで、光酸発生剤の組成にもよるが、光酸発生剤を比較的容易に活性化させることができる。
【0077】
また、光の照射量は、特に限定されないが、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
【0078】
なお、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク61の使用を省略することもできる。
【0079】
コア層形成用フィルム24において、光が照射された部位は、その屈折率が低下し、光が照射されなかった部位との間で屈折率の差が生じる。したがって、コア層形成用フィルム24の光が照射された部位がクラッド部22となり、照射されなかった部位がコア部21となる。クラッド部22の屈折率は、クラッド層3、4の屈折率とほぼ等しい。
【0080】
コア層形成用フィルム24のうち、光が照射された領域では、光酸発生剤から酸が発生することとなる。発生した酸により、成分(B)が重合する。
【0081】
光が照射されていない領域では、光酸発生剤から酸が発生しないため、成分(B)は重合しない。照射部分では、成分(B)が重合しポリマーとなるため、成分(B)量が少なくなる。これに応じて、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散し、これにより、照射部分と未照射部分とで屈折率差が生じる。
【0082】
ここで、成分(B)が、環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低い場合には、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散することで、未照射部分の屈折率が高くなるとともに、照射部分の屈折率は低くなる。
【0083】
なお、成分(B)が重合したポリマーと、環状エーテル基を有するモノマーとの屈折率差は、0以上0.001以下程度であり、屈折率は略同じであると考えられる。
【0084】
このように上述した感光性樹脂組成物を使用した場合には、光酸発生剤から発生する酸により、成分(B)の重合を開始させることが可能である。
【0085】
さらに、本発明に用いられる環状オレフィン樹脂は必ずしも脱離性基を有していなくてもよいが、成分(A)として、脱離性基を有する環状オレフィン樹脂を使用している場合には、以下の作用が生じる。
【0086】
光を照射した部分では、光酸発生剤から発生した酸により、環状オレフィン樹脂の脱離性基が脱離することとなる。−Si−アリール構造、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造等の脱離性基の場合、離脱により樹脂の屈折率が低下することとなる。そのため、照射部分の屈折率は脱離性基の脱離前に比べてさらに低下することとなる。
【0087】
さらに、コア層2に対し光を所定パターンで照射した後、加熱することにより、コア部21を形成することもできる。この加熱工程を付加することにより、コア部21とクラッド部22との屈折率の差がより大きくなるので好ましい。
【0088】
詳細には、コア層形成用フィルム24を加熱する工程において、光を照射した照射部分の成分(B)がさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射部分の成分(B)は揮発することとなる。これにより、未照射部分では、成分(B)が少なくなり、環状オレフィン樹脂に近い屈折率となる。
【0089】
このコア層形成用フィルム24においては、図5に示すように、光が照射された領域がクラッド部22となり、未照射領域がコア部21となる。コア部21における前記成分(B)由来の構造体濃度と、クラッド部22における前記成分(B)由来の構造体濃度とが異なる。具体的には、コア部21における成分(B)由来の構造体濃度は、クラッド部22における成分(B)由来の構造体濃度より低い。
【0090】
また、クラッド部22は、コア部21よりも屈折率が低くなり、クラッド部22とコア部21との屈折率差は、0.01以上となる。以上のようにして、フィルム24には、コア部21とクラッド部22が形成され、コア層2が得られる。
【0091】
この加熱工程における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0092】
また、加熱時間は、光を照射した照射部分の成分(B)の重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0093】
続いて、コア層2を基材6から剥離する。
【0094】
(薄膜層の形成)
次に、コア層2の表面にプラズマCVDにより薄膜層5を形成する工程を図6に基づいて説明する。まず、コア層2をステージ電極73に固定し、これをプラズマCVD装置7の成膜室72内に設置する。
【0095】
次いで、成膜室72内を排気機構で真空排気した後、原料ガス供給機構77から原料ガスを供給する。原料ガスはガスシャワー電極74内の導入路を経由して成膜室72に供給される。原料ガスの供給量と排気のバランスにより、圧力、原料ガスの流量などの条件が調整される。成膜時の圧力としては1Pa以上100Pa以下が好ましい。
【0096】
なお、原料ガスとしては、種々の気体を用いることができる。例えば、炭化水素系ガス、ケイ素化合物ガス及び酸素などを用いることが可能である。ケイ素化合物ガスとしては、取り扱いの容易で低温での成膜が可能なヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサン(これらを総称してHMDSともいう)を用いることが好ましい。
【0097】
次いで、高周波電源76により成膜室72内に高周波(RF)を印加する。これにより、ステージ電極73とガスシャワー電極74との間の放電によってコア層2の表面にプラズマを発生させ、コア層2上に薄膜層5を成膜する。印加する高周波の周波数は100kHz以上300MHz以下であり、特に好ましくは100kHz以上60MHz以下である。
【0098】
次いで、コア層2を表裏反転させてステージ電極73に固定し、上記工程を繰り返すことで、コア層2の両面に薄膜層5を1nm以上100nm以下の厚さで形成することができる(図7)。
【0099】
なお、上記の説明では薄膜層5をプラズマCVD法により形成したが、イオンビームデポジションやイオンプレーティング法,スパッタリング法,電子ビーム蒸着法などのPVD法により形成してもよい。
【0100】
(クラッド層の形成)
その後、コア層2に形成した薄膜層5上に、クラッド層3、4のフィルムを貼り付ける。クラッド層3、4としては、コア部21よりも屈折率が低いシートが使用され、たとえば、ノルボルネン系樹脂と、エポキシ樹脂とを含むシートが使用される。
【0101】
なお、クラッド層3、4は、フィルム状のものを貼り付けるのではなく、薄膜層5上に液状材料を塗布し硬化(固化)させる方法によっても形成することができる。このとき、コア層2の表面が薄膜層5でコーティングされていることにより、液状材料によるコア層2の劣化を防止することができる。
以上の工程により、図1に示す光導波路1が得られる。
【0102】
なお、上記実施形態では、コア層2の両面に薄膜層5を形成する場合について説明したが、薄膜層5をコア層2の一方の面にのみ形成してもよい。
【0103】
<第二実施形態>
(光導波路)
図8に示すように、本実施形態の光導波路8は、薄膜層5がコア層2とクラッド層(下部クラッド層)3の間にのみ存在する。コア層2、クラッド層3、4、薄膜層5の構成材料等は第一実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、薄膜層5がコア層2とクラッド層(下部クラッド層)3の間にのみ存在する構造を説明するが、薄膜層5がコア層2とクラッド層(上部クラッド層)4の間にのみ存在する構造でもよい。
【0104】
(光導波路の製造方法)
次に、前記実施形態における光導波路8の製造方法について説明する。なお、構成材料は第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0105】
図9ないし14は、それぞれ、光導波路8の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【0106】
(薄膜層の形成)
まず、図9、10に示すように、下部クラッド層3の一方の面に薄膜層5を形成する。まず、クラッド層3をステージ電極73に固定し、これをプラズマCVD装置7の成膜室72内に設置する。
【0107】
次いで、成膜室72内を排気機構で真空排気した後、原料ガス供給機構77から原料ガスを供給する。原料ガスはガスシャワー電極74内の導入路を経由して成膜室72に供給される。原料ガスの供給量と排気のバランスにより、圧力、原料ガスの流量などの条件が調整される。成膜時の圧力としては1Pa以上100Pa以下が好ましい。
【0108】
なお、原料ガスとしては、種々の気体を用いることができる。例えば、炭化水素系ガス、ケイ素化合物ガス及び酸素などを用いることが可能である。ケイ素化合物ガスとしては、取り扱いの容易で低温での成膜が可能なヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンを用いることが好ましい。
【0109】
次いで、高周波電源76により成膜室72内に高周波(RF)を印加する。これにより、ステージ電極73とガスシャワー電極74との間の放電によって下部クラッド層3の表面にプラズマを発生させ、下部クラッド層3上に薄膜層5を1nm以上100nm以下の厚さで成膜する。印加する高周波の周波数は100kHz以上300MHz以下であり、特に好ましくは100kHz以上60MHz以下である。
【0110】
なお、上記の説明では薄膜層5をプラズマCVD法により形成したが、イオンビームデポジションやイオンプレーティング法,スパッタリング法,電子ビーム蒸着法などのPVD法により形成してもよい。
【0111】
(コア層の形成)
その後、図11に示すように、下部クラッド層3に形成した薄膜層5の上に、第一実施形態と同様のコア層形成用材料23を塗布する。
【0112】
薄膜層5上にコア層形成用材料23を塗布した後、乾燥させて、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、図12に示すように、コア層形成用材料23は、コア層形成用フィルム24となる。このコア層形成用フィルム24は、後述する光の照射により、コア部21とクラッド部22とが形成されたコア層2となる。
【0113】
ここで、コア層形成用材料23を塗布する方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0114】
また、本実施形態ではコア層2の形成方法として塗布法を挙げたが、他の方法、例えば、第一実施形態にあるようにコア層を別途形成し、貼り合わせる方法を採用することもできる。
【0115】
次に、コア層形成用フィルム24に対し、選択的に光(たとえば、紫外線)を照射する。この際、図13に示すように、コア層形成用フィルム24の上方に開口611が形成されたマスク61を配置する。このマスク61の開口611を介して、コア層形成用フィルム24に対し、光を照射する。
【0116】
用いられる光としては、可視光、紫外光、赤外光、レーザー等の活性エネルギー光線が挙げられる。また、光を用いるのではなく、X線等の電磁波や、電子線等の粒子線を用いるようにしても良い。特に、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものを用いることで、光酸発生剤の組成にもよるが、光酸発生剤を比較的容易に活性化させることができる。
【0117】
また、光の照射量は、特に限定されないが、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
【0118】
なお、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク61の使用を省略することもできる。
【0119】
コア層形成用フィルム24において、光が照射された部位は、その屈折率が低下し、光が照射されなかった部位との間で屈折率の差が生じる。したがって、コア層形成用フィルム24の光が照射された部位がクラッド部22となり、照射されなかった部位がコア部21となる。クラッド部22の屈折率は、クラッド層3、4の屈折率とほぼ等しい。
【0120】
コア層形成用フィルム24のうち、光が照射された領域では、光酸発生剤から酸が発生することとなる。発生した酸により、成分(B)が重合する。
【0121】
光が照射されていない領域では、光酸発生剤から酸が発生しないため、成分(B)は重合しない。照射部分では、成分(B)が重合しポリマーとなるため、成分(B)の量が少なくなる。これに応じて、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散し、これにより、照射部分と未照射部分とで屈折率差が生じる。
【0122】
ここで、成分(B)が、環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低い場合には、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散することで、未照射部分の屈折率が高くなるとともに、照射部分の屈折率は低くなる。
【0123】
なお、成分(B)が重合したポリマーと、環状エーテル基を有するモノマーとの屈折率差は、0以上0.001以下程度であり、屈折率は略同じであると考えられる。
【0124】
このように上述した感光性樹脂組成物を使用した場合には、光酸発生剤から発生する酸により、成分(B)の重合を開始させることが可能である。
【0125】
さらに、本発明に用いられる環状オレフィン樹脂は必ずしも脱離性基を有していなくてもよいが、成分(A)として、脱離性基を有する環状オレフィン樹脂を使用している場合には、以下の作用が生じる。
【0126】
光を照射した部分では、光酸発生剤から発生した酸により、環状オレフィン樹脂の脱離性基が脱離することとなる。−Si−アリール構造、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造等の脱離性基の場合、離脱により樹脂の屈折率が低下することとなる。そのため、照射部分の屈折率は脱離性基の脱離前に比べてさらに低下することとなる。
【0127】
その後、コア層2上に、上部クラッド層4のフィルムを貼り付ける。上部クラッド層4としては、コア部21よりも屈折率が低いシートが使用され、たとえば、ノルボルネン系樹脂と、エポキシ樹脂とを含むシートが使用される。
以上の工程により、図8に示す光導波路8が得られる。
【0128】
なお、上記実施形態では、下部クラッド層3に薄膜層5を形成する場合について説明したが、上部クラッド層4に薄膜層5を形成してもよい。また、下部クラッド層3および上部クラッド層4の双方に薄膜層5を形成してもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、コア層2に上部クラッド層4を直接貼り付ける場合について説明したが、コア層2上に薄膜層5を形成し、その後上部クラッド層4を貼り付けてもよい。この場合においてもフィルム状のものを貼り付ける方法に限られず、薄膜層5上に液状材料を塗布し硬化(固化)させる方法によってもよい。
【0130】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0131】
次に、本発明の実施例について説明する。
A.光導波路の製造
(実施例1)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
【0132】
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
【0133】
このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
【0134】
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン
交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を
上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
【0135】
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマーを得た。ポリマーの分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。また屈折率はメトリコンにより1.55(測定波長;633nm)であった。
【0136】
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、光酸発生剤 Rhodorsil Photoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36×10−2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスを得た。
【0137】
(3)光導波路フィルムの製造
(コア層の形成)
離型処理PETフィルム上に感光性樹脂組成物ワニスをドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。その後、コア層をPETフィルムから剥離した。
【0138】
(薄膜層の形成)
高周波プラズマCVD製膜装置を用い、原料ガスとしてアセチレンガスを使用して、前記コア層の片面に厚さ10nmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜層を形成した。さらに同じ条件でコア層の裏面にも同じく厚さ10nmのDLC薄膜層を形成した。
【0139】
(クラッド層の形成)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記薄膜層を形成したコア層の両面に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、クラッド層を形成させ、光導波路を得た。このとき、クラッド層は、無色透明であり、その屈折率は1.52であった。
【0140】
(実施例2)
薄膜層の厚さが100nmである以外は実施例1と同様である。
【0141】
(実施例3)
薄膜層の厚さが1nmである以外は実施例1と同様である。
【0142】
(実施例4)
薄膜層の形成以外は実施例1と同様である。
【0143】
(薄膜層の形成)
実施例1と同様にして、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサンガス(HMDSO)および酸素ガスを使用して、コア層の両面にそれぞれ厚さ10nmのSiOx薄膜層を形成した。
【0144】
(比較例1)
薄膜層を形成しない以外は実施例1と同様である。
【0145】
(比較例2)
【0146】
薄膜層の厚さが150nmである以外は実施例1と同様である。
【0147】
B.光導波路の評価
各実施例および比較例で得られた光導波路について、以下の評価を行った。評価項目を内容とともに示す。得られた結果を表1に示す。
【0148】
1.光伝搬損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して上記光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用し、導波路長を横軸、挿入損失を縦軸にプロットしていったところ、測定値はきれいに直線上に並び、その傾きから光伝搬損失を算出した。
【0149】
2.密着力
上記光導波路を厚さ2mmのステンレス板に両面テープで貼り付け、1cmの幅となるよう両サイドをカットしサンプルを作製した。このサンプルについてJIS K6854に記載の方法にて90度ピール強度を測定した。
【0150】
【表1】
【0151】
表1から明らかなように、実施例1から実施例4では、いずれも光伝搬損失を悪化させることなく、密着力を向上させることができた。これは、薄膜層の厚みが伝搬光の波長よりはるかに小さな値であり、薄膜層材料の屈折率にかかわらず伝搬光が薄膜層へ進入することが出来ないためである。
【0152】
一方、比較例2で得られた光導波路では、密着力は向上したものの、光伝搬損失が悪化した。これはコア部より高屈折率な材料である薄膜層が厚いため、伝搬光が薄膜層に漏出したためである。
【符号の説明】
【0153】
1 光導波路
2 コア層
21 コア部
22 クラッド部
23 コア層形成用材料
24 コア層形成用フィルム
3 (下部)クラッド層
4 (上部)クラッド層
5 薄膜層
6 基材
61 マスク
611 開口
62 活性放射線
63 照射領域
64 未照射領域
7 プラズマCVD装置
71 成膜チャンバー
72 成膜室
73 ステージ電極
74 ガスシャワー電極
75 排気口
76 高周波電源
77 原料ガス供給機構
8 光導波路
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子素子間や配線基板間の高速・高密度信号伝送において、従来の電気配線による伝送では、信号の相互干渉や減衰が障壁となり、高速・高密度化の限界が見え始めている。このため、電子素子間や配線基板間を光で接続する技術、いわゆる光インタコネクションが検討されている。光路としては、素子や基板との結合の容易さ、取り扱い易さの観点から、柔軟性を備えたフィルム状の光導波路が検討されている。
【0003】
このような光導波路の製造方法としては、例えば、反応性イオンエッチング法、フォトリソグラフィー法、フォトブリーチ法などが知られている。これらの方法では光導波路を構成する各層(コア層およびクラッド層)を逐次積層して製造を行う。このため、コア層とクラッド層の密着力をいかに向上させるかが課題となる。すなわち、密着力が低いと屈曲等の応力が加えられたときにコア層とクラッド層が剥離することがある。
【0004】
そこで、コア層とクラッド層の密着力を向上する種々の試みがなされてきた。特許文献1は、コア層とクラッド層に使用する熱可塑性樹脂の相溶性パラメータの差が一定の範囲にあるように材料を選択することで密着力を向上する光導波路を提供している。また、特許文献2は、コア層とクラッド層を感圧接着剤により接着することで密着力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−223089号公報
【特許文献2】特開2009−109920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、通常コア層およびクラッド層に要求される屈折率や耐熱性のほか相溶性パラメータも考慮する必要があり、使用する材料が制限される。この結果、密着力の向上と光伝送性能の向上が両立しないことがあった。また、特許文献2の方法でも、使用する接着剤によって光伝送性能が悪化することがあった。
【0007】
上記に鑑みて、本発明は、光伝送性能を損なうことなく、コア層とクラッド層の密着力を向上させた光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(7)に記載の本発明により達成される。
(1)コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路であって、前記コア層と前記2つのクラッド層の少なくとも一方との間に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を有する光導波路。
(2)前記薄膜層は、前記コア部よりも屈折率が高い(1)に記載の光導波路。
(3)前記薄膜層は、ダイヤモンドライクカーボン、シリコンカーバイド、チタン酸鉛のうちのいずれかである(2)に記載の光導波路。
(4)前記薄膜層を、前記コア層と前記2つのクラッド層のそれぞれとの間に有する(1)から(3)のいずれかに記載の光導波路。
(5)コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法であって、少なくとも一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記コア層に対し、その薄膜層上に前記クラッド層を積層するクラッド層積層工程、を有する光導波路の製造方法。
(6)コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法であって、一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記クラッド層に対し、その薄膜層上に前記コア層を積層するコア層積層工程、を有する光導波路の製造方法。
(7)前記薄膜層は、プラズマCVDにより形成する(5)または(6)に記載の光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光伝送性能を損なうことなく、コア層とクラッド層の密着力を向上させた光導波路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の光導波路の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の光導波路の第一実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の光導波路の第二実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の光導波路の第二実施形態の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光導波路について詳細に説明する。
図1は、本発明の光導波路の第一実施形態を示す断面図である。
【0012】
<第一実施形態>
(光導波路)
図1に示すように光導波路1は、コア部21とコア部21より屈折率の低いクラッド部22とを有するコア層2と、コア層2を挟んで配置される2つのクラッド層3、4と、を備える。コア部21は、伝送光の光路を形成する部分であり、クラッド部22は、コア層2に形成されているものの伝送光の光路を形成せず、クラッド層3、4と同様の機能を果たす部分である。さらに、コア層2とクラッド層3、4の間には薄膜層5を有する。薄膜層5は、コア層2とクラッド層3、4の密着力を向上させる機能を果たす。また、薄膜層5は、耐溶剤性を有するものであってもよい。このとき、感光性樹脂組成物を溶媒に溶かし、これを直接薄膜層5の上に塗布することでコア層2またはクラッド層3、4を形成することができ、工程の大幅な短縮を図ることができる。
【0013】
コア層2の厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、1μm以上200μm以下であるのが好ましく、5μm以上100μm以下であるのがより好ましく、10μm以上60μm以下であるのがさらに好ましい。
【0014】
コア層2の構成材料としては、光(例えば紫外線)の照射により、あるいはさらに加熱することにより屈折率が変化する材料が用いられる。このような材料の好ましい例としては、ベンゾシクロブテン系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー等の環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を主材料とするものが挙げられ、ノルボルネン系ポリマーを含む(主材料とする)ものが特に好ましい。
【0015】
このような材料で構成されたコア層2は、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、特に繰り返し湾曲変形した場合でも、コア部21とクラッド部22との剥離や、コア層2と隣接する層(クラッド層3、4)との層間剥離が生じ難く、コア部21、クラッド部22内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路1の光伝送性能が維持され、耐久性に優れた光導波路1が得られる。
【0016】
また、コア層2の構成材料には、例えば、酸化防止剤、屈折率調整剤、可塑剤、増粘剤、補強剤、増感剤、レベリング剤、消泡剤、密着助剤および難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。酸化防止剤の添加は、高温安定性の向上、耐候性の向上、光劣化の抑制という効果がある。このような酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリフェノール系等のフェノール系や、芳香族アミン系のものが挙げられる。また、可塑剤、増粘剤、補強剤の添加により、曲げに対する耐性をさらに増大させることもできる。
【0017】
酸化防止剤に代表される添加剤の含有率(2種以上の場合は合計)は、コア層2の構成材料全体に対し、0.5〜40重量%程度が好ましく、3〜30重量%程度がより好ましい。この量が少なすぎると、添加剤の機能を十分に発揮することができず、量が多すぎると、添加剤の種類や特性によっては、コア部21を伝送する光(伝送光)の透過率の低下、パターニング不良、屈折率不安定等を生じるおそれがある。
【0018】
形成されるコア部21のパターン形状としては、特に限定されず、直線状、湾曲部を有する形状、異形、光路の分岐部、合流部または交差部を有する形状、集光部(幅等が減少している部分)または光拡散部(幅等が増大している部分)、あるいはこれらのうちの2以上を組み合わせた形状等、いかなるものでもよい。光の照射パターンの設定により、いかなる形状のコア部21をも容易に形成することができる。
【0019】
クラッド層3、4の厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、1μm以上50μm以下であるのがより好ましく、5μm以上30μm以下であるのがさらに好ましい。
【0020】
クラッド層3、4の構成材料としては、コア層2のコア部21より低屈折率の材料が用いられる。例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合せて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)用いることができる。
【0021】
これらのうち、特に耐熱性に優れるという点で、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、またはそれらを含むもの(主とするもの)を用いるのが好ましく、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。
【0022】
ノルボルネン系ポリマーは、耐熱性に優れるため、これをクラッド層3、4の構成材料として使用してなる光導波路では、光導波路に導体層を形成する際、導体層を加工して配線を形成する際、光学素子を実装する際、等に加熱されたとしても、クラッド層部分が軟化して変形するのを防止することができる。
【0023】
また、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いクラッド層部分を得ることができる。
【0024】
また、ノルボルネン系ポリマーまたはその原料であるノルボルネン系モノマーは、比較的安価であり、入手が容易であることからも好ましい。
【0025】
さらに、クラッド層3、4の構成材料として、ノルボルネン系ポリマーを主とするものを用いると、曲げ等の変形に対する耐性(耐屈曲性)に優れ、繰り返し屈曲変形させた場合でも、クラッド層3、4とコア層2との層間剥離が生じ難い。このようなことから、光導波路1の光伝送性能が維持され、最終的に耐久性に優れた光導波路1が得られる。
【0026】
クラッド層3、4は、コア層2を挟んで配置されるが、それぞれのクラッド層は同種の構成材料から成ってもよいし、異なる構成材料から成ってもよい。
【0027】
薄膜層5は、厚さが1nm以上100nm以下の層であり、さらに5nm以上50nm以下の範囲にあるとより好ましい。薄膜層5が厚すぎると伝送光が薄膜層5に漏出し、光導波路1の光伝播性能が悪化する。また、薄膜層5が薄すぎると十分な密着力を発揮できない。
【0028】
薄膜層5の構成材料としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)やシリコン酸化物(SiOx)、シリコン窒化物(SiNx)、アモルファスシリコン、ポリシリコン、シリコンカーバイド、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸鉛のように、コア層2とクラッド層3、4の密着力を高める材料が用いられる。特にDLC、シリコンカーバイド、チタン酸鉛のようにコア部21より屈折率の高い材料は分極率が高く、したがって高い密着力を発揮できるためより好ましい。
【0029】
なお、図1に示す光導波路1は、2つのコア部21を有するものであるが、1つの光導波路1に形成されるコア部21の数は、特に限定されるものではない。
さらに、図1では、コア層2は1層のみであるが、コア層の数は特に限定されるものではなく、コア層2が複数積層されていてもよい。
【0030】
(光導波路の製造方法)
次に、前記実施形態における光導波路1の製造方法および各部の構成材料等について説明する。
【0031】
まず、コア部21の形成方法の説明に先立って、コア部21の形成に用いられる感光性樹脂組成物について説明する。
【0032】
(感光性樹脂組成物)
本実施形態において用いる感光性樹脂組成物は、例えば、
(A)環状オレフィン樹脂と、
(B)(A)とは屈折率が異なり、かつ、環状エーテル基を有するモノマーおよび環状エーテル基を有するオリゴマーのうち少なくともいずれか一方と、
(C)光酸発生剤と、
を備える。
【0033】
このような感光性樹脂組成物は、フィルム状に成形されて光導波路形成用フィルムとされ、さらに、屈折率が異なる領域を含むフィルム、例えば、光導波路フィルムとして使用される。
【0034】
すなわち、このような感光性樹脂組成物を使用することで、光の伝搬損失の発生が抑制された光導波路フィルム等を提供することができる。なかでも、湾曲した光導波路を形成した場合において、光の伝搬損失の発生を顕著に抑制することができる。
【0035】
以下、感光性樹脂組成物の成分について順次詳述する。
((A)環状オレフィン樹脂)
成分(A)の環状オレフィン樹脂は、感光性樹脂組成物のフィルム成形性を確保するために添加されるものであり、ベースポリマーとなるものである。
【0036】
ここで、環状オレフィン樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
【0037】
環状オレフィン樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
なかでも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0039】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体、
が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0040】
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0041】
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことからも好ましい。たとえば、感光性樹脂組成物によりフィルムを形成した後、電気部品等を、半田を介して実装することがある。このような場合において、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を有することが必要となるため、付加(共)重合体が好ましい。また、感光性樹脂組成物によりフィルムを形成し、製品に組み込んだ際に、たとえば、80℃程度の環境下にて使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
【0042】
なかでも、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0043】
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
【0044】
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
【0045】
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
【0046】
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0047】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0048】
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
【0049】
以上のようなノルボルネン系樹脂は、脱離性基を有するものであることが好ましい。ここで、脱離性基とは、酸の作用により離脱するものである。
【0050】
具体的には、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。かかる酸離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
【0051】
このうち、離脱により樹脂の屈折率を低下させる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
【0052】
((B)環状エーテル基を有するモノマー、環状エーテル基を有するオリゴマー)
次に、(B)の成分について説明する。
【0053】
成分(B)は、環状エーテル基を有するモノマーおよび環状エーテル基を有するオリゴマーのうちの少なくとも一方である。この成分(B)は、成分(A)の樹脂と屈折率が異なり、かつ、成分(A)の樹脂と相溶性のあるものであればよい。成分(B)と、成分(A)の樹脂との屈折率差は、0.01以上であることが好ましい。
【0054】
なお、成分(B)の屈折率は、成分(A)の樹脂よりも高いものであってもよいが、成分(B)は、成分(A)の樹脂よりも屈折率が低いことが好ましい。
【0055】
成分(B)の環状エーテル基を有するモノマー、環状エーテル基を有するオリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。モノマー、オリゴマーの拡散性を考慮すると、このモノマーの分子量(重量平均分子量)、オリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上、400以下であることが好ましい。
【0056】
成分(B)は、たとえば、オキセタニル基あるいは、エポキシ基を有する。このような
環状エーテル基は、酸により開環しやすいため、好ましい。
【0057】
さらに、(B)の成分として、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
【0058】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0059】
この(B)成分の添加量は、(A)成分100重量部に対し、1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上、20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
【0060】
((C)光酸発生剤)
光酸発生剤としては、光のエネルギーを吸収してブレンステッド酸あるいはルイス酸を生成するものであればよく、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類などの化合物を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独、または複数を組み合わせて使用することができる。
【0061】
光酸発生剤の含有量は、(A)成分100重量部に対し0.01重量部以上、0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上、0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
【0062】
感光性樹脂組成物は、以上の(A)、(B)、(C)の成分に加えて、増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0063】
増感剤は、光に対する光酸発生剤の感度を増大して、光酸発生剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、光酸発生剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0064】
このような増感剤としては、光酸発生剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0065】
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
【0067】
(コア層の形成)
図2ないし図7は、それぞれ、光導波路1の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【0068】
ここでは、成分(B)が成分(A)の環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低いものである場合の感光性樹脂組成物を用いて光導波路を製造する方法を例にして説明する。
【0069】
まず、図2に示すように、感光性樹脂組成物を溶媒に溶かしてワニス状のコア層形成用材料23を調製し、このコア層形成用材料23を基材6上に塗布する。
【0070】
感光性樹脂組成物をワニス状に調製する溶媒としては、たとえば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)などのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドンなどの芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどの硫黄化合物系溶媒の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒が挙げられる。
【0071】
基材6には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。また、基材表面は後にコア層の剥離が容易となるように離型処理がされていてもよい。このような処理としては、具体的には、例えば、テフロン(登録商標)を表面にコーティングまたはアッシング処理してもよい。
【0072】
次に、基材6上にコア層形成用材料23を塗布した後、乾燥させて、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、図3に示すように、コア層形成用材料23は、コア層形成用フィルム24となる。このコア層形成用フィルム24は、後述する光の照射により、コア部21とクラッド部22とが形成されたコア層2となる。
【0073】
ここで、コア層形成用材料23を塗布する方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0074】
また、本実施形態ではコア層2の形成方法として塗布法を挙げたが、他の方法、例えば、別途製造されたシート材を接合する方法を採用することもできる。
【0075】
次に、コア層形成用フィルム24に対し、選択的に光(たとえば、紫外線)を照射する。この際、図4に示すように、コア層形成用フィルム24の上方に開口611が形成されたマスク61を配置する。このマスク61の開口611を介して、コア層形成用フィルム24に対し、光を照射する。
【0076】
用いられる光としては、可視光、紫外光、赤外光、レーザー等の活性エネルギー光線が挙げられる。また、光を用いるのではなく、X線等の電磁波や、電子線等の粒子線を用いるようにしても良い。特に、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものを用いることで、光酸発生剤の組成にもよるが、光酸発生剤を比較的容易に活性化させることができる。
【0077】
また、光の照射量は、特に限定されないが、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
【0078】
なお、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク61の使用を省略することもできる。
【0079】
コア層形成用フィルム24において、光が照射された部位は、その屈折率が低下し、光が照射されなかった部位との間で屈折率の差が生じる。したがって、コア層形成用フィルム24の光が照射された部位がクラッド部22となり、照射されなかった部位がコア部21となる。クラッド部22の屈折率は、クラッド層3、4の屈折率とほぼ等しい。
【0080】
コア層形成用フィルム24のうち、光が照射された領域では、光酸発生剤から酸が発生することとなる。発生した酸により、成分(B)が重合する。
【0081】
光が照射されていない領域では、光酸発生剤から酸が発生しないため、成分(B)は重合しない。照射部分では、成分(B)が重合しポリマーとなるため、成分(B)量が少なくなる。これに応じて、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散し、これにより、照射部分と未照射部分とで屈折率差が生じる。
【0082】
ここで、成分(B)が、環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低い場合には、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散することで、未照射部分の屈折率が高くなるとともに、照射部分の屈折率は低くなる。
【0083】
なお、成分(B)が重合したポリマーと、環状エーテル基を有するモノマーとの屈折率差は、0以上0.001以下程度であり、屈折率は略同じであると考えられる。
【0084】
このように上述した感光性樹脂組成物を使用した場合には、光酸発生剤から発生する酸により、成分(B)の重合を開始させることが可能である。
【0085】
さらに、本発明に用いられる環状オレフィン樹脂は必ずしも脱離性基を有していなくてもよいが、成分(A)として、脱離性基を有する環状オレフィン樹脂を使用している場合には、以下の作用が生じる。
【0086】
光を照射した部分では、光酸発生剤から発生した酸により、環状オレフィン樹脂の脱離性基が脱離することとなる。−Si−アリール構造、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造等の脱離性基の場合、離脱により樹脂の屈折率が低下することとなる。そのため、照射部分の屈折率は脱離性基の脱離前に比べてさらに低下することとなる。
【0087】
さらに、コア層2に対し光を所定パターンで照射した後、加熱することにより、コア部21を形成することもできる。この加熱工程を付加することにより、コア部21とクラッド部22との屈折率の差がより大きくなるので好ましい。
【0088】
詳細には、コア層形成用フィルム24を加熱する工程において、光を照射した照射部分の成分(B)がさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射部分の成分(B)は揮発することとなる。これにより、未照射部分では、成分(B)が少なくなり、環状オレフィン樹脂に近い屈折率となる。
【0089】
このコア層形成用フィルム24においては、図5に示すように、光が照射された領域がクラッド部22となり、未照射領域がコア部21となる。コア部21における前記成分(B)由来の構造体濃度と、クラッド部22における前記成分(B)由来の構造体濃度とが異なる。具体的には、コア部21における成分(B)由来の構造体濃度は、クラッド部22における成分(B)由来の構造体濃度より低い。
【0090】
また、クラッド部22は、コア部21よりも屈折率が低くなり、クラッド部22とコア部21との屈折率差は、0.01以上となる。以上のようにして、フィルム24には、コア部21とクラッド部22が形成され、コア層2が得られる。
【0091】
この加熱工程における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0092】
また、加熱時間は、光を照射した照射部分の成分(B)の重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0093】
続いて、コア層2を基材6から剥離する。
【0094】
(薄膜層の形成)
次に、コア層2の表面にプラズマCVDにより薄膜層5を形成する工程を図6に基づいて説明する。まず、コア層2をステージ電極73に固定し、これをプラズマCVD装置7の成膜室72内に設置する。
【0095】
次いで、成膜室72内を排気機構で真空排気した後、原料ガス供給機構77から原料ガスを供給する。原料ガスはガスシャワー電極74内の導入路を経由して成膜室72に供給される。原料ガスの供給量と排気のバランスにより、圧力、原料ガスの流量などの条件が調整される。成膜時の圧力としては1Pa以上100Pa以下が好ましい。
【0096】
なお、原料ガスとしては、種々の気体を用いることができる。例えば、炭化水素系ガス、ケイ素化合物ガス及び酸素などを用いることが可能である。ケイ素化合物ガスとしては、取り扱いの容易で低温での成膜が可能なヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサン(これらを総称してHMDSともいう)を用いることが好ましい。
【0097】
次いで、高周波電源76により成膜室72内に高周波(RF)を印加する。これにより、ステージ電極73とガスシャワー電極74との間の放電によってコア層2の表面にプラズマを発生させ、コア層2上に薄膜層5を成膜する。印加する高周波の周波数は100kHz以上300MHz以下であり、特に好ましくは100kHz以上60MHz以下である。
【0098】
次いで、コア層2を表裏反転させてステージ電極73に固定し、上記工程を繰り返すことで、コア層2の両面に薄膜層5を1nm以上100nm以下の厚さで形成することができる(図7)。
【0099】
なお、上記の説明では薄膜層5をプラズマCVD法により形成したが、イオンビームデポジションやイオンプレーティング法,スパッタリング法,電子ビーム蒸着法などのPVD法により形成してもよい。
【0100】
(クラッド層の形成)
その後、コア層2に形成した薄膜層5上に、クラッド層3、4のフィルムを貼り付ける。クラッド層3、4としては、コア部21よりも屈折率が低いシートが使用され、たとえば、ノルボルネン系樹脂と、エポキシ樹脂とを含むシートが使用される。
【0101】
なお、クラッド層3、4は、フィルム状のものを貼り付けるのではなく、薄膜層5上に液状材料を塗布し硬化(固化)させる方法によっても形成することができる。このとき、コア層2の表面が薄膜層5でコーティングされていることにより、液状材料によるコア層2の劣化を防止することができる。
以上の工程により、図1に示す光導波路1が得られる。
【0102】
なお、上記実施形態では、コア層2の両面に薄膜層5を形成する場合について説明したが、薄膜層5をコア層2の一方の面にのみ形成してもよい。
【0103】
<第二実施形態>
(光導波路)
図8に示すように、本実施形態の光導波路8は、薄膜層5がコア層2とクラッド層(下部クラッド層)3の間にのみ存在する。コア層2、クラッド層3、4、薄膜層5の構成材料等は第一実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、薄膜層5がコア層2とクラッド層(下部クラッド層)3の間にのみ存在する構造を説明するが、薄膜層5がコア層2とクラッド層(上部クラッド層)4の間にのみ存在する構造でもよい。
【0104】
(光導波路の製造方法)
次に、前記実施形態における光導波路8の製造方法について説明する。なお、構成材料は第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0105】
図9ないし14は、それぞれ、光導波路8の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【0106】
(薄膜層の形成)
まず、図9、10に示すように、下部クラッド層3の一方の面に薄膜層5を形成する。まず、クラッド層3をステージ電極73に固定し、これをプラズマCVD装置7の成膜室72内に設置する。
【0107】
次いで、成膜室72内を排気機構で真空排気した後、原料ガス供給機構77から原料ガスを供給する。原料ガスはガスシャワー電極74内の導入路を経由して成膜室72に供給される。原料ガスの供給量と排気のバランスにより、圧力、原料ガスの流量などの条件が調整される。成膜時の圧力としては1Pa以上100Pa以下が好ましい。
【0108】
なお、原料ガスとしては、種々の気体を用いることができる。例えば、炭化水素系ガス、ケイ素化合物ガス及び酸素などを用いることが可能である。ケイ素化合物ガスとしては、取り扱いの容易で低温での成膜が可能なヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンを用いることが好ましい。
【0109】
次いで、高周波電源76により成膜室72内に高周波(RF)を印加する。これにより、ステージ電極73とガスシャワー電極74との間の放電によって下部クラッド層3の表面にプラズマを発生させ、下部クラッド層3上に薄膜層5を1nm以上100nm以下の厚さで成膜する。印加する高周波の周波数は100kHz以上300MHz以下であり、特に好ましくは100kHz以上60MHz以下である。
【0110】
なお、上記の説明では薄膜層5をプラズマCVD法により形成したが、イオンビームデポジションやイオンプレーティング法,スパッタリング法,電子ビーム蒸着法などのPVD法により形成してもよい。
【0111】
(コア層の形成)
その後、図11に示すように、下部クラッド層3に形成した薄膜層5の上に、第一実施形態と同様のコア層形成用材料23を塗布する。
【0112】
薄膜層5上にコア層形成用材料23を塗布した後、乾燥させて、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、図12に示すように、コア層形成用材料23は、コア層形成用フィルム24となる。このコア層形成用フィルム24は、後述する光の照射により、コア部21とクラッド部22とが形成されたコア層2となる。
【0113】
ここで、コア層形成用材料23を塗布する方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0114】
また、本実施形態ではコア層2の形成方法として塗布法を挙げたが、他の方法、例えば、第一実施形態にあるようにコア層を別途形成し、貼り合わせる方法を採用することもできる。
【0115】
次に、コア層形成用フィルム24に対し、選択的に光(たとえば、紫外線)を照射する。この際、図13に示すように、コア層形成用フィルム24の上方に開口611が形成されたマスク61を配置する。このマスク61の開口611を介して、コア層形成用フィルム24に対し、光を照射する。
【0116】
用いられる光としては、可視光、紫外光、赤外光、レーザー等の活性エネルギー光線が挙げられる。また、光を用いるのではなく、X線等の電磁波や、電子線等の粒子線を用いるようにしても良い。特に、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものを用いることで、光酸発生剤の組成にもよるが、光酸発生剤を比較的容易に活性化させることができる。
【0117】
また、光の照射量は、特に限定されないが、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
【0118】
なお、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク61の使用を省略することもできる。
【0119】
コア層形成用フィルム24において、光が照射された部位は、その屈折率が低下し、光が照射されなかった部位との間で屈折率の差が生じる。したがって、コア層形成用フィルム24の光が照射された部位がクラッド部22となり、照射されなかった部位がコア部21となる。クラッド部22の屈折率は、クラッド層3、4の屈折率とほぼ等しい。
【0120】
コア層形成用フィルム24のうち、光が照射された領域では、光酸発生剤から酸が発生することとなる。発生した酸により、成分(B)が重合する。
【0121】
光が照射されていない領域では、光酸発生剤から酸が発生しないため、成分(B)は重合しない。照射部分では、成分(B)が重合しポリマーとなるため、成分(B)の量が少なくなる。これに応じて、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散し、これにより、照射部分と未照射部分とで屈折率差が生じる。
【0122】
ここで、成分(B)が、環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低い場合には、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散することで、未照射部分の屈折率が高くなるとともに、照射部分の屈折率は低くなる。
【0123】
なお、成分(B)が重合したポリマーと、環状エーテル基を有するモノマーとの屈折率差は、0以上0.001以下程度であり、屈折率は略同じであると考えられる。
【0124】
このように上述した感光性樹脂組成物を使用した場合には、光酸発生剤から発生する酸により、成分(B)の重合を開始させることが可能である。
【0125】
さらに、本発明に用いられる環状オレフィン樹脂は必ずしも脱離性基を有していなくてもよいが、成分(A)として、脱離性基を有する環状オレフィン樹脂を使用している場合には、以下の作用が生じる。
【0126】
光を照射した部分では、光酸発生剤から発生した酸により、環状オレフィン樹脂の脱離性基が脱離することとなる。−Si−アリール構造、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造等の脱離性基の場合、離脱により樹脂の屈折率が低下することとなる。そのため、照射部分の屈折率は脱離性基の脱離前に比べてさらに低下することとなる。
【0127】
その後、コア層2上に、上部クラッド層4のフィルムを貼り付ける。上部クラッド層4としては、コア部21よりも屈折率が低いシートが使用され、たとえば、ノルボルネン系樹脂と、エポキシ樹脂とを含むシートが使用される。
以上の工程により、図8に示す光導波路8が得られる。
【0128】
なお、上記実施形態では、下部クラッド層3に薄膜層5を形成する場合について説明したが、上部クラッド層4に薄膜層5を形成してもよい。また、下部クラッド層3および上部クラッド層4の双方に薄膜層5を形成してもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、コア層2に上部クラッド層4を直接貼り付ける場合について説明したが、コア層2上に薄膜層5を形成し、その後上部クラッド層4を貼り付けてもよい。この場合においてもフィルム状のものを貼り付ける方法に限られず、薄膜層5上に液状材料を塗布し硬化(固化)させる方法によってもよい。
【0130】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0131】
次に、本発明の実施例について説明する。
A.光導波路の製造
(実施例1)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
【0132】
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
【0133】
このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
【0134】
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン
交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を
上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
【0135】
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマーを得た。ポリマーの分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。また屈折率はメトリコンにより1.55(測定波長;633nm)であった。
【0136】
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、光酸発生剤 Rhodorsil Photoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36×10−2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスを得た。
【0137】
(3)光導波路フィルムの製造
(コア層の形成)
離型処理PETフィルム上に感光性樹脂組成物ワニスをドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。その後、コア層をPETフィルムから剥離した。
【0138】
(薄膜層の形成)
高周波プラズマCVD製膜装置を用い、原料ガスとしてアセチレンガスを使用して、前記コア層の片面に厚さ10nmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜層を形成した。さらに同じ条件でコア層の裏面にも同じく厚さ10nmのDLC薄膜層を形成した。
【0139】
(クラッド層の形成)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記薄膜層を形成したコア層の両面に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、クラッド層を形成させ、光導波路を得た。このとき、クラッド層は、無色透明であり、その屈折率は1.52であった。
【0140】
(実施例2)
薄膜層の厚さが100nmである以外は実施例1と同様である。
【0141】
(実施例3)
薄膜層の厚さが1nmである以外は実施例1と同様である。
【0142】
(実施例4)
薄膜層の形成以外は実施例1と同様である。
【0143】
(薄膜層の形成)
実施例1と同様にして、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサンガス(HMDSO)および酸素ガスを使用して、コア層の両面にそれぞれ厚さ10nmのSiOx薄膜層を形成した。
【0144】
(比較例1)
薄膜層を形成しない以外は実施例1と同様である。
【0145】
(比較例2)
【0146】
薄膜層の厚さが150nmである以外は実施例1と同様である。
【0147】
B.光導波路の評価
各実施例および比較例で得られた光導波路について、以下の評価を行った。評価項目を内容とともに示す。得られた結果を表1に示す。
【0148】
1.光伝搬損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して上記光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用し、導波路長を横軸、挿入損失を縦軸にプロットしていったところ、測定値はきれいに直線上に並び、その傾きから光伝搬損失を算出した。
【0149】
2.密着力
上記光導波路を厚さ2mmのステンレス板に両面テープで貼り付け、1cmの幅となるよう両サイドをカットしサンプルを作製した。このサンプルについてJIS K6854に記載の方法にて90度ピール強度を測定した。
【0150】
【表1】
【0151】
表1から明らかなように、実施例1から実施例4では、いずれも光伝搬損失を悪化させることなく、密着力を向上させることができた。これは、薄膜層の厚みが伝搬光の波長よりはるかに小さな値であり、薄膜層材料の屈折率にかかわらず伝搬光が薄膜層へ進入することが出来ないためである。
【0152】
一方、比較例2で得られた光導波路では、密着力は向上したものの、光伝搬損失が悪化した。これはコア部より高屈折率な材料である薄膜層が厚いため、伝搬光が薄膜層に漏出したためである。
【符号の説明】
【0153】
1 光導波路
2 コア層
21 コア部
22 クラッド部
23 コア層形成用材料
24 コア層形成用フィルム
3 (下部)クラッド層
4 (上部)クラッド層
5 薄膜層
6 基材
61 マスク
611 開口
62 活性放射線
63 照射領域
64 未照射領域
7 プラズマCVD装置
71 成膜チャンバー
72 成膜室
73 ステージ電極
74 ガスシャワー電極
75 排気口
76 高周波電源
77 原料ガス供給機構
8 光導波路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、
前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、
を備える光導波路であって、
前記コア層と前記2つのクラッド層の少なくとも一方との間に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を有する光導波路。
【請求項2】
前記薄膜層は、前記コア部よりも屈折率が高い請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記薄膜層は、ダイヤモンドライクカーボン、シリコンカーバイド、チタン酸鉛のうちのいずれかである請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記薄膜層を、前記コア層と前記2つのクラッド層のそれぞれとの間に有する請求項1から3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、
前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、
を備える光導波路の製造方法であって、
少なくとも一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記コア層に対し、その薄膜層上に前記クラッド層を積層するクラッド層積層工程、
を有する光導波路の製造方法。
【請求項6】
コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、
前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法であって、
一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記クラッド層に対し、その薄膜層上に前記コア層を積層するコア層積層工程、
を有する光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜層は、プラズマCVDにより形成する請求項5または6に記載の光導波路の製造方法。
【請求項1】
コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、
前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、
を備える光導波路であって、
前記コア層と前記2つのクラッド層の少なくとも一方との間に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を有する光導波路。
【請求項2】
前記薄膜層は、前記コア部よりも屈折率が高い請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記薄膜層は、ダイヤモンドライクカーボン、シリコンカーバイド、チタン酸鉛のうちのいずれかである請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記薄膜層を、前記コア層と前記2つのクラッド層のそれぞれとの間に有する請求項1から3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、
前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、
を備える光導波路の製造方法であって、
少なくとも一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記コア層に対し、その薄膜層上に前記クラッド層を積層するクラッド層積層工程、
を有する光導波路の製造方法。
【請求項6】
コア部と前記コア部より屈折率の低いクラッド部とを有するコア層と、
前記コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法であって、
一方の面に厚さが1nm以上100nm以下の薄膜層を形成した前記クラッド層に対し、その薄膜層上に前記コア層を積層するコア層積層工程、
を有する光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜層は、プラズマCVDにより形成する請求項5または6に記載の光導波路の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−128072(P2012−128072A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278094(P2010−278094)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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