説明

光情報再生装置、光情報記録再生装置

【課題】
ホログラフィを用いて情報を再生する光情報再生装置において、記録媒体の膨張収縮等の外乱により、再生時の最適な参照光角度および波長が記録時の条件と異なる場合があるが、参照光角度および波長の選択性は非常に厳しいため、高精度かつ高速に最適な条件を求めることが難しい。
【解決手段】
再生対象のホログラムの一部分のみを照射するように再生時の参照光の大きさを縮小し、再生時の参照光の角度および波長の要求精度を緩和させることで、制御に要する時間の短縮や制御ずれによる信号品質劣化の抑制が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを用いて、光情報記録媒体から情報を再生する装置、または光情報記録媒体に情報を記録再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、青紫色半導体レーザを用いたBlu−ray Disc(TM)規格により、民生用においても50GB程度の記録密度を持つ光ディスクの商品化が可能となっている。今後は、光ディスクにおいても100GB〜1TBというHDD(Hard Disc Drive)容量と同程度までの大容量化が望まれる。しかしながら、このような超高密度を光ディスクで実現するためには、従来の短波長化と対物レンズ高NA化による高密度化技術とは異なる新しい方式による高密度化技術が必要である。
【0003】
次世代のストレージ技術に関する研究が行われる中、ホログラフィを利用してデジタル情報を記録するホログラム記録技術が注目を集めている。ホログラム記録技術として、例えば特開2004−272268号公報(特許文献1)がある。本公報には、参照光の光情報記録媒体への入射角度を変えながら異なるページデータを空間光変調器に表示して多重記録を行う、いわゆる角度多重記録方式が記載されている。さらに本公報には、信号光をレンズで集光してそのビームウエストに開口(空間フィルタ)を配することにより、隣接するホログラムの間隔を短くすることが記載されている。また、ホログラム記録技術として、例えばWO2004−102542号公報(特許文献2)がある。本公報には、1つの空間光変調器において内側の画素からの光を信号光、外側の輪帯状の画素からの光を参照光として、両光束を同じレンズで光情報記録媒体に集光し、レンズの焦点面付近で信号光と参照光を干渉させてホログラムを記録するシフト多重方式を用いた例が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−272268号公報
【特許文献2】WO2004−102542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホログラムからの情報再生時は、参照光の角度や波長の選択性が非常に厳しいため、最適な条件を求めることが難しく、ホログラフィックメモリの実用化を阻害する一因となっている。
【0006】
本発明の目的は、再生時の参照光の角度および波長の制御精度を緩めても再生可能なホログラム再生技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、その一例として再生対象のホログラムの一部分のみを照射するように再生時の参照光の大きさを縮小することで解決できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、再生時の参照光の角度および波長の要求精度が緩和されることにより、再生時の参照光の角度マージンおよび波長マージンを拡大することができ、制御に要する時間の短縮や制御ずれによる信号品質劣化の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】光情報記録再生装置内のピックアップの実施例を表す図(実施例1)
【図2】光情報記録再生装置の実施例を表す構成図
【図3】光情報記録再生装置内のピックアップの実施例を表す図(記録時)
【図4】光情報記録再生装置内のピックアップの実施例を表す図(再生時)
【図5】光情報記録再生装置の動作フローの実施例を表す図
【図6】光情報記録媒体中への参照光の入射の様子を表す概略図
【図7】再生時の参照光幅による再生光強度の違いを表す概略図
【図8】通常再生時と参照光縮小再生時のシミュレーションによる再生画像
【図9】開口形状の実施例を示す概略図
【図10】光情報記録再生装置の実施例を表す構成図(実施例1)
【図11】動作を示すフローチャート(実施例1)
【図12】光情報記録再生装置内のピックアップの実施例を表す図(実施例2)
【図13】開口の大きさ制御による参照光縮小の様子を示す概略図
【図14】干渉縞の角度による媒体収縮の影響の違いを示す概略図
【図15】光情報記録再生装置の実施例を表す構成図(実施例2)
【図16】動作を示すフローチャート(実施例2)
【図17】光情報記録再生装置内のピックアップの実施例を表す図(実施例3)
【図18】光情報記録再生装置の実施例を表す構成図(実施例3)
【図19】動作を示すフローチャート(実施例3)
【図20】光情報再生装置内のピックアップの実施例を表す図(実施例1)
【図21】光情報再生装置内のピックアップの実施例を表す図(実施例2)
【図22】光情報再生装置内のピックアップの実施例を表す図(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0011】
本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図2はホログラフィを利用してデジタル情報を記録及び/または再生する光情報記録媒体の記録再生装置の構成例を示すブロック図である。
【0013】
光情報記録再生装置10は、ピックアップ11、位相共役光学系12、ディスクCure光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14、及び回転モータ50を備えており、光情報記録媒体1は回転モータ50によって回転可能な構成となっている。
【0014】
ピックアップ11は、参照光と信号光を光情報記録媒体1に出射してホログラフィを利用してデジタル情報を光情報記録媒体に記録する役割を果たす。この際、記録する情報信号はコントローラ89によって信号生成回路86を介してピックアップ11内の空間光変調器に送り込まれ、信号光は空間光変調器によって変調される。
【0015】
光情報記録媒体1に記録した情報を再生する場合は、ピックアップ11から出射された参照光の位相共役光を位相共役光学系12にて生成する。ここで位相共役光とは、入力光と同一の波面を保ちながら逆方向に進む光波のことである。位相共役光によって再生される再生光をピックアップ11内の後述する光検出器によって検出し、信号処理回路85によって信号を再生する。
【0016】
光情報記録媒体1に照射する参照光と信号光の照射時間は、ピックアップ11内のシャッタの開閉時間をコントローラ89によってシャッタ制御回路87を介して制御することで調整できる。
【0017】
ディスクCure光学系13は、光情報記録媒体1のプリキュア及びポストキュアに用いる光ビームを生成する役割を果たす。プリキュアとは、光情報記録媒体1内の所望の位置に情報を記録する際、所望位置に参照光と信号光を照射する前に予め所定の光ビームを照射する前工程である。ポストキュアとは、光情報記録媒体1内の所望の位置に情報を記録した後、該所望の位置に追記不可能とするために所定の光ビームを照射する後工程である。
【0018】
ディスク回転角度検出用光学系14は、光情報記録媒体1の回転角度を検出するために用いられる。光情報記録媒体1を所定の回転角度に調整する場合は、ディスク回転角度検出用光学系14によって回転角度に応じた信号を検出し、検出された信号を用いてコントローラ89によってディスク回転モータ制御回路88を介して光情報記録媒体1の回転角度を制御する事が出来る。
【0019】
光源駆動回路82からは所定の光源駆動電流がピックアップ11、ディスクCure光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14内の光源に供給され、各々の光源からは所定の光量で光ビームを発光することができる。
【0020】
また、ピックアップ11、そして、ディスクCure光学系13は、光情報記録媒体1の半径方向に位置をスライドできる機構が設けられており、アクセス制御回路81を介して位置制御がおこなわれる。
【0021】
ところで、ホログラフィの角度多重の原理を利用した記録技術は、参照光角度のずれに対する許容誤差が極めて小さくなる傾向がある。
【0022】
従って、ピックアップ11内に、参照光角度のずれ量を検出する機構を設けて、サーボ信号生成回路83にてサーボ制御用の信号を生成し、サーボ制御回路84を介して該ずれ量を補正するためのサーボ機構を光情報記録再生装置10内に備えることが必要となる。
【0023】
また、ピックアップ11、ディスクCure光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14は、いくつかの光学系構成または全ての光学系構成をひとつに纏めて簡素化しても構わない。
【0024】
図3は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の基本的な光学系構成の一例における記録原理を示したものである。光源201を出射した光ビームはコリメートレンズ202を透過し、シャッタ203に入射する。シャッタ203が開いている時は、光ビームはシャッタ203を通過した後、例えば2分の1波長板などで構成される光学素子204によってp偏光とs偏光の光量比が所望の比になるようになど偏光方向が制御された後、PBS(Polarization Beam Splitter)プリズム205に入射する。
【0025】
PBSプリズム205を透過した光ビームは、信号光206として働き、ビームエキスパンダ208によって光ビーム径が拡大された後、位相マスク209、リレーレンズ210、PBSプリズム211を透過して空間光変調器212に入射する。
【0026】
空間光変調器212によって情報が付加された信号光は、PBSプリズム211を反射し、リレーレンズ213ならびに空間フィルタ214を伝播する。その後、信号光は対物レンズ215によって光情報記録媒体1に集光する。
【0027】
一方、PBSプリズム205を反射した光ビームは参照光207として働き、偏光方向変換素子216によって記録時または再生時に応じて所定の偏光方向に設定された後、ミラー217ならびにミラー218を経由してガルバノミラー219に入射する。ガルバノミラー219はアクチュエータ220によって角度を調整可能のため、レンズ221とレンズ222を通過した後に光情報記録媒体1に入射する参照光の入射角度を、所望の角度に設定することができる。なお、参照光の入射角度を設定するために、ガルバノミラーに代えて、参照光の波面を変換する素子を用いても構わない。
【0028】
このように信号光と参照光とを光情報記録媒体1において、互いに重ね合うように入射させることで、光情報記録媒体内には干渉縞パターンが形成され、このパターンを光情報記録媒体に書き込むことで情報を記録する。また、ガルバノミラー219によって光情報記録媒体1に入射する参照光の入射角度を変化させることができるため、角度多重による記録が可能である。
【0029】
以降、同じ領域に参照光角度を変えて記録されたホログラムにおいて、1つ1つの参照光角度に対応したホログラムをページと呼び、同領域に角度多重されたページの集合をブックと呼ぶことにする。
【0030】
図4は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の基本的な光学系構成の一例における再生原理を示したものである。記録した情報を再生する場合は、前述したように参照光を光情報記録媒体1に入射し、光情報記録媒体1を透過した光ビームを、アクチュエータ223によって角度調整可能なガルバノミラー224にて反射させることで、その位相共役光を生成する。
【0031】
この位相共役光によって再生された信号光は、対物レンズ215、リレーレンズ213ならびに空間フィルタ214を伝播する。その後、信号光はPBSプリズム211を透過して光検出器225に入射し、記録した信号を再生することができる。
【0032】
図5は、光情報記録再生装置10における記録、再生の動作フローを示したものである。ここでは、特にホログラフィを利用した記録再生に関するフローを説明する。
【0033】
図5(a)は、光情報記録再生装置10に光情報記録媒体1を挿入した後、記録または再生の準備が完了するまでの動作フローを示し、図5(b)は準備完了状態から光情報記録媒体1に情報を記録するまでの動作フロー、図5(c)は準備完了状態から光情報記録媒体1に記録した情報を再生するまでの動作フローを示したものである。
【0034】
図5(a)に示すように媒体を挿入すると(401)、光情報記録再生装置10は、例えば挿入された媒体がホログラフィを利用してデジタル情報を記録または再生する媒体であるかどうかディスク判別を行う(402)。
【0035】
ディスク判別の結果、ホログラフィを利用してデジタル情報を記録または再生する光情報記録媒体であると判断されると、光情報記録再生装置10は光情報記録媒体に設けられたコントロールデータを再生し(403)、例えば光情報記録媒体に関する情報や、例えば記録や再生時における各種設定条件に関する情報を取得する。
【0036】
コントロールデータを再生した後は、コントロールデータに応じた各種調整やピックアップ11に関わる学習処理(404)を行い、光情報記録再生装置10は、記録または再生の準備が完了する(405)。
【0037】
準備完了状態から情報を記録するまでの動作フローは図5(b)に示すように、まず記録するデータを受信して(411)、該データに応じた情報をピックアップ11内の空間光変調器に送り込む。
【0038】
その後、光情報記録媒体に高品質の情報を記録できるように、必要に応じて各種学習処理を事前に行い(412)、シーク動作(413)によりピックアップ11ならびにディスクCure光学系13の位置を光情報記録媒体の所定の位置に配置する。
【0039】
その後、ディスクCure光学系13から出射する光ビームを用いて所定の領域をプリキュアし(414)、ピックアップ11から出射する参照光と信号光を用いてデータを記録する(415)。
【0040】
データを記録した後は、必要に応じてデータをベリファイし(416)、ディスクCure光学系13から出射する光ビームを用いてポストキュアを行う(417)。
【0041】
準備完了状態から記録された情報を再生するまでの動作フローは図5(c)に示すように、光情報記録媒体から高品質の情報を再生できるように、必要に応じて各種学習処理を事前に行う(421)。その後、シーク動作(422)によりピックアップ11ならびに位相共役光学系12の位置を光情報記録媒体の所定の位置に配置する。
【0042】
その後、ピックアップ11から参照光を出射し、光情報記録媒体に記録された情報を再生する(423)。本発明はこの情報を再生する際の信号品質を向上させるための手段として適用される。
【実施例1】
【0043】
本発明における第1の実施例について図1および図6から図11を用いて説明する。
【0044】
図1は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の光学系構成の第1の実施例の一例を示したものである。なお、図中では再生時の光路のみを示している。図3、図4に示した通常のピックアップの構成例と異なる点は、アクチュエータ226と開口227が追加されている点である。本実施例では、情報の再生時のみに開口227により参照光207の幅を縮小させるようにアクチュエータ226を動作させることを特徴としている。すなわち、情報の記録時にはアクチュエータ226を動作させることで開口227を参照光207の光路外に移動し、情報の再生時には開口227が参照光207の光路を覆い参照光207の幅を縮小させるようにアクチュエータ226を動作させる。以上のようにアクチュエータ226を動作させることで、再生時は参照光207の幅が縮小されるため、後述する理由から,図4の光学系で示されるような通常の再生を行った場合より回折光発生の為の要求条件が緩和され、再生時の参照光207の角度マージンおよび波長マージンを拡大することができ、制御に要する時間の短縮や制御ずれによる信号品質劣化の抑制が可能となる。また、参照光が縮小されることにより隣接ブック部への入射光量も減少するため、隣接ブックからのノイズを低減させることも可能となる。なお、アクチュエータ226および開口227の位置は、図1に示した位置に限定されるものではなく、参照光の大きさを縮小可能であればどの位置に配置しても構わない。また、図1では記録再生装置の光学系構成の例を示したが、再生装置として使用する場合は図20に示すように記録に使用する部品であるビームエキスパンダ208、フェーズマスク209、リレーレンズ210、空間光変調器212を光学系から削除した構成で例えば実現できる。
【0045】
図6は本実施例における情報再生時の光情報記録媒体1中での参照光207の様子を模式的に示したものであり,図7は通常再生時と参照光縮小再生時の再生光強度を模式的に表したものである。図6(a)に示される通常の再生時には、記録部全体に参照光207が照射され、図6(b)に比べて相対的に多くの干渉縞を再生に使用しており、再生に使用している実効的なメディア厚みは大きい値と考えることが出来る。ブラッグ選択性のピーク幅はメディア厚みに反比例するため再生光強度は図7(a)に示すように参照光角度に対して非常にシャープなものとなる。このとき、再生光強度の半値幅が狭いため1ブック中に多くのページを記録することができる反面、再生時に最適な角度を見積もることが難しいという問題がある。一方、図6(b)に示すように再生時に開口227により参照光207を縮小した場合、図6(a)に比べて相対的に再生に使用する干渉縞の数を少なくしているため、再生に使用している実効的なメディア厚みを薄くしていると考えることができる。このとき、図7(b)に示すように回折強度は若干減少するが、前述したようにブラッグ選択性のピーク幅はメディア厚みに反比例するため参照光角度に対して広がりを持ち半値幅は広がるため、再生時の参照光角度マージンを拡大することが可能である。
【0046】
図8は再生時に0.1%の媒体収縮がある場合の再生像をシミュレーションにより求めた結果を示している。一般に媒体収縮が起きている場合、媒体中の干渉縞の角度により収縮の影響が異なるため、ページ中の位置により再生品質が異なる。図8(a)の参照光を縮小させない通常の再生の場合では、中央部の品質が外周部に比べて低く結果として信号品質は低い。一方、再生領域を70%に縮小して再生した場合ブラッグ選択性の条件が通常再生の(a)の場合より緩和され、ページ中の中央部、外周部共に品質良く再生できていることが分かる。なお、本実施例では、参照光による再生領域を70%とした場合の例を示したが、この再生領域は本実施例に限られるものではなく、隣接するページとのクロストークが発生しない程度の大きさまで縮小することができる。
【0047】
図9は開口227の形状の例を示したものである。例えば、図9(a)に示すように中央部を通過させ外周部を遮断するような開口形状にしても良い。このとき、ブラッグ選択性を全方向で等しく緩和することが可能なため、再生時の参照光の角度マージンや波長マージンを広げることが可能である。また、本形状は干渉縞の角度により影響が異なる媒体収縮にも効果的である。開口形状としては、図9(b)のように開口中心が参照光の中心以外に来るような形状としても良い。本場合の開口中心の位置の決め方としては、例えば再生光強度の大きさがページ全体で均一となるように調整する方法などが考えられる。図9(c)、(d)のようにx方向およびそれと直交するy方向で縮小率を変えた形状としても構わない。ここで、図9中でのx方向、y方向はそれぞれ、図1中でのx方向とy方向に対応しているものとする。図9(c)のようにx方向の参照光の幅を縮小する場合は、特に参照光角度のマージンを拡大したい場合に有効である。図9(d)のようにy方向に縮小した場合は、本方向での角度マージンを拡大することが可能である。本形状は、y方向にアクチュエータ等の角度制御機構を持たないドライブ構成の場合に有効である。
【0048】
図10は第1の実施例におけるドライブ構成の例を示したものである。図2との違いは、開口部のアクチュエータ制御回路90が追加されている点である。本アクチュエータ制御回路90はコントローラによりピックアップ11中の開口の位置を変えるアクチュエータを制御する。動作は前述した通り、情報記録時には参照光の光路上から開口を取り除き、情報再生時には参照光の光路上に開口を配置させる。なお、開口は再生中常に参照光の光路上に配置させても良いし、再生品質が悪い場合のみ参照光の光路上に配置させても良い。再生品質としては、例えば再生光量の大きさを使用しても良いし、下記の(1)や(2)で表されるSNRを使用しても構わない。ここで、μONはONピクセルの平均値、μOFFはOFFピクセルの平均値、σONはONピクセルの標準偏差、σOFFはOFFピクセルの標準偏差を示している。
SNR=(μON+μOFF)/(σON+σOFF)・・・(1)
SNR=(μON+μOFF)/(σON+σOFF0.5・・・(2)
図11は本実施例における動作の一例を示している。まず501により再生処理か記録処理かの判断を行う。再生処理では無く、記録処理の場合は参照光の縮小は行わないように506により開口を参照光経路から除去する。その後、507により記録処理を実行する。501において再生処理の場合は、参照光の大きさを縮小するため、502により開口を参照光経路に配置する。その後、503により参照光を記録媒体に照射し再生光を発生させる。504により検出器により再生光を検出し、505により再生信号を信号処理することで再生処理を行う。
【0049】
本発明を使用することにより、再生時の参照光の角度および波長の要求精度が緩和され、再生時の参照光の角度マージンおよび波長マージンを拡大することができ、制御に要する時間の短縮や制御ずれによる信号品質劣化の抑制が可能となる。なお、本実施例では角度多重方式のホログラフィックメモリを例にとり記述したが、本発明は角度多重方式に限定されるものではなく、シフト多重方式のホログラフィックメモリにおいても同様に参照光を縮小することにより実現可能である。
【0050】
以下の実施例において実施例1と重複する部分については説明を省略する。
【実施例2】
【0051】
本発明における第2の実施例について図12から図16を用いて説明する。
【0052】
図12は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の光学系構成の第2の実施例の一例を示したものである。なお、図中では再生時の光路のみを示している。図3、図4に示した通常のピックアップの構成例と異なる点は、開口部の大きさを調整可能なサイズ可変開口229とサイズ可変開口229の大きさを制御する開口サイズ制御機構230が参照光207の光路上に配置されている点である。本開口229の構成としては、例えばL字型の遮断板を2枚組み合わせて、その位置をアクチュエータ等で制御するものなどが考えられる。本実施例は、情報記録時は参照光207の大きさを縮小しないように開口229の開口部の大きさは十分に大きく保ち、情報再生時には参照光の大きさを縮小するように開口部の大きさを縮小するように開口サイズ制御機構230で制御することを特徴とする。本実施例でも、実施例1と同様、再生時の参照光の角度マージンと波長マージンの拡大による制御時間の短縮や制御ずれによる信号品質の劣化の抑制、および隣接ブックからのノイズの低減が可能である。さらに、本実施例では開口部の大きさが可変に調整可能なため、トレードオフの関係にある再生光強度と参照光マージンの割合を必要に応じて調整可能である。これにより、後述する光情報記録媒体の膨張収縮等の影響で参照光の角度により再生品質が異なる場合等に本実施例は特に有効である。なお、実施例1の場合と同様に開口の位置は図12の位置に限定されるものではなく、参照光207の大きさを調整可能な位置であればどの位置に配置しても構わない。図12では、記録再生装置の光学系構成の例を示したが、再生装置として使用する場合は図21に示すように記録に使用する部品であるビームエキスパンダ208、フェーズマスク209、リレーレンズ210、空間光変調器212を光学系から削除した構成で例えば実現できる。
【0053】
図13は本実施例における情報再生時の光情報記録媒体1中での参照光207の様子を模式的に示したものである。本実施例では開口サイズ制御機構230により開口229の開口部の大きさが制御可能となっており、参照光の入射角度に応じて開口の大きさを変化させることが可能である。これは、特に媒体収縮が起きた場合に再生品質を向上可能という利点がある。一般に媒体収縮は図14に示すように媒体面に垂直な方向で生じ易い傾向があり、図14(a)に示すように干渉縞の傾きが媒体面に対して小さな場合は干渉縞の間隔や角度の変化が大きく、媒体収縮の影響を強く受けやすい。一方、図14(b)に示すように干渉縞の傾きが媒体面に対して大きな場合は干渉縞の間隔や角度の変化が相対的に小さく、媒体収縮の影響は小さい。本差異に対応するためには、例えば参照光と媒体面の成す角度が小さく媒体収縮の影響を受けやすい場合には開口の大きさを小さくしブラッグ選択性を緩和させ、参照光と媒体面の成す角度が大きい場合には開口の大きさは前者に比べて大きくする等、参照光の角度に応じて開口の大きさを調整する方法が有効であると考えられる。
【0054】
図15は第2の実施例におけるドライブ構成の例を示したものである。図2との違いは、開口大きさ制御回路91が追加されている点である。本開口大きさ制御回路91はコントローラによりピックアップ11中の開口の大きさを制御する。動作は前述した通り、情報記録時には参照光を縮小させず、情報再生時には参照光の大きさを縮小させるように開口の大きさを制御する。なお、開口は再生中常に同じ大きさに統一しても良いし、参照光の角度に応じて大きさを調整しても良い。また、参照光の角度による最適な開口大きさをあるブックで最初に学習し、その結果を他ブックで使用して、開口の大きさを制御させても構わない。
【0055】
図16は本実施例における動作の一例を示している。まず601により再生処理か記録処理かの判断を行う。再生処理では無く、記録処理の場合は参照光の縮小は行わないように606により開口サイズを拡大する。その後、607により記録処理を実行する。601において再生処理の場合は、参照光の大きさを縮小するため、602により開口サイズを縮小する。このとき、参照光の入射角度に応じて開口サイズを変化させた動作を行う。その後、603により参照光を記録媒体に照射し再生光を発生させる。604により検出器により再生光を検出し、605により再生信号を信号処理することで再生処理を行う。
【0056】
本実施例では、実施例1で記述した利点に加えて、再生ページ毎に開口のサイズを調整可能なため、媒体収縮等のページ毎に影響度合いが異なる外乱に対してページ毎に個別に対応できるという利点がある。なお、本実施例でも角度多重方式のホログラフィックメモリを例にとり記述したが、本発明は角度多重方式に限定されるものではなく、シフト多重方式のホログラフィックメモリにおいても同様に参照光を縮小することにより実現可能である。
【実施例3】
【0057】
本発明における第3の実施例について図17から図19を用いて説明する。
【0058】
図17は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の光学系構成の第3の実施例の一例を示したものである。なお、図中では再生時の光路のみを示している。図3、図4に示した通常のピックアップの構成例と異なる点は、偏光方向変換素子に代えて透過型の空間光変調器228が追加されている点である。本実施例では、情報記録時は空間光変調器228による参照光の偏光方向の変更は行わず偏光ビームスプリッタを反射するs偏光とし、情報再生時には開口部に相当する部分のみ偏光ビームスプリッタを透過するp偏光とし、遮断部に相当する部分は偏光ビームスプリッタで反射するs偏光方向のままに設定することを特徴とする。再生時の参照光に上述したような開口に相当する偏光パターンを与えることにより、光情報記録媒体1から再生された回折光の内、開口の遮断部に相当する部分のs偏光の参照光により再生された回折光は偏光ビームスプリッタ211で空間光変調器212の方向に反射し、開口部に相当するp偏光の参照光により再生された回折光は偏光ビームスプリッタ211を透過して光検出器225によって検出される。本実施例においても、検出される回折光を生成する参照光は縮小されている為、再生時の参照光の角度マージンと波長マージンの拡大による制御時間の短縮や制御ずれによる信号品質の劣化の抑制、および隣接ブックからのノイズの低減が可能である。さらに、実施例2と同様、開口部の大きさが可変に調整可能なため、再生時の参照光の角度により開口部の大きさを調整することが可能となり、トレードオフの関係にある再生光強度と参照光マージンの割合を必要に応じて調整可能である。なお、空間光変調器228の位置は図17の位置に限定されるものではなく、参照光207に所望の偏光パターンを付加可能な位置であればどの位置に配置しても構わない。図17では、記録再生装置の光学系構成の例を示したが、再生装置として使用する場合は図22に示すように記録に使用する部品であるビームエキスパンダ208、フェーズマスク209、リレーレンズ210、空間光変調器212を光学系から削除した構成で例えば実現できる。
【0059】
図18は第3の実施例におけるドライブ構成の例を示したものである。図2との違いは、参照光の偏光情報生成回路92が追加されている点である。本偏光情報生成回路92はコントローラによりピックアップ11中の空間光変調器228により参照光に与える偏光パターンの形状を制御する。動作は前述した通り、情報記録時には参照光には偏光の変化を与えず、情報再生時には参照光に開口に相当する偏光パターンを与えるように空間光変調器228を制御する。なお、偏光パターンの形状は、再生中常に同じ形状に統一しても良いし、参照光の角度に応じて形状を調整しても良い。また、参照光の角度による最適な偏光パターンの形状をあるブックで最初に学習し、その結果を他ブックで使用して、偏光パターンの形状を制御させても構わない。なお、空間光変調器228としては、液晶素子やデジタル・マイクロミラー・デバイスなどを用いることが出来る。
【0060】
図19は本実施例における動作の一例を示している。まず701により再生処理か記録処理かの判断を行う。再生処理では無く、記録処理の場合は参照光に特別な偏光成分の変調は行わず、参照光全体で同一の偏光成分とする。このとき、偏光成分の方向は記録媒体に照射する信号光と干渉させるため本信号光と同一な方向とする。その後、708により記録処理を実行する。701において再生処理の場合は、実施例1、実施例2の参照光の大きさを開口により縮小した際と同一の効果を実現するため、702により開口部に相当する部分と遮断部に相当する部分で偏光成分を変えることで、参照光に偏光情報を付加する。その後、703により参照光を記録媒体に照射し再生光を発生させる。704により偏光ビームスプリッタ等を利用し、特定の偏光成分のみを検出器の方向に照射させ、705により再生光を検出する。最後に、706により再生信号を信号処理することで再生処理を行う。
【0061】
本実施例においては、実施例1及び実施例2で記述した利点に加えて、空間光変調器による偏光成分の変調により参照光の大きさを設定するため、より自由に参照光の大きさ及び形状を規定できるという利点がある。なお、本実施例でも角度多重方式のホログラフィックメモリを例にとり記述したが、本発明は角度多重方式に限定されるものではなく、シフト多重方式のホログラフィックメモリにおいても同様に参照光を縮小することにより実現可能である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・光情報記録媒体、10・・・光情報記録再生装置、11・・・ピックアップ、
12・・・位相共役光学系、13・・・ディスクCure光学系、
14・・・ディスク回転角度検出用光学系、50・・・回転モータ、
81・・・アクセス制御回路、82・・・光源駆動回路、83・・・サーボ信号生成回路、
84・・・サーボ制御回路、85・・・信号処理回路、86・・・信号生成回路、
87・・・シャッタ制御回路、88・・・ディスク回転モータ制御回路、
89・・・コントローラ、
201・・・光源、202・・・コリメートレンズ、203・・・シャッタ、
204・・・1/2波長板、205・・・偏光ビームスプリッタ、
206・・・信号光、207・・・参照光、
208・・・ビームエキスパンダ、209・・フェーズ(位相)マスク、
210・・・リレーレンズ、211・・・偏光ビームスプリッタ、
212・・・空間光変調器、213・・・リレーレンズ、214・・・空間フィルタ、
215・・・対物レンズ、216・・・偏光方向変換素子、217・・・ミラー、
218・・・ミラー、219・・・ミラー、220・・・アクチュエータ、
221・・・レンズ、222・・・レンズ、223・・・アクチュエータ、
224・・・ミラー、225・・・光検出器、
226・・・アクチュエータ、227・・・開口、228・・・空間光変調器、
229・・・サイズ可変開口、230・・・開口サイズ制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィを利用して情報を記録および再生する光情報記録再生装置であって、
情報の再生時に参照光の大きさを記録時の大きさよりも縮小する参照光縮小機構と、
前記参照光縮小機構を通過した参照光により回折された再生光を検出する検出器と、
前記検出器で得た信号を処理し情報を再生する信号処理回路と、
を具備する光情報記録再生装置。
【請求項2】
前記参照光縮小機構は、
情報の再生時に参照光の大きさを縮小する開口と、
再生時に参照光の光路に前記開口を配置させるアクチュエータと、
で構成される請求項1に記載の光情報記録再生装置。
【請求項3】
前記参照光縮小機構は、
情報の再生時に参照光の大きさを記録時の大きさよりも縮小する開口と、
前記参照光の入射角度に応じて前記開口の大きさを制御する制御機構と、
で構成される請求項1に記載の光情報記録再生装置。
【請求項4】
ホログラフィを利用して情報を再生する光情報再生装置であって、
情報の再生時に参照光が再生対象のホログラムの一部のみに照射するように参照光の大きさを縮小する参照光縮小機構と、
前記参照光縮小機構を通過した参照光により回折された再生光を検出する検出器と、
前記検出器で得た信号を処理し情報を再生する信号処理回路と、
を具備する光情報再生装置。
【請求項5】
前記参照光縮小機構は、
情報の再生時に参照光の大きさを縮小する開口と、
再生時に参照光の光路に前記開口を配置させるアクチュエータと、
で構成される請求項4に記載の光情報再生装置。
【請求項6】
前記参照光縮小機構は、
情報の再生時に参照光が再生対象のホログラムの一部のみに照射するように参照光の大きさを縮小する開口と、
前記参照光の入射角度に応じて前記開口の大きさを制御する制御機構と、
で構成される請求項4に記載の光情報再生装置。
【請求項7】
ホログラフィを利用して情報を記録および再生する光情報記録再生装置、または光情報再生装置であって、
情報の再生時に参照光に所望の偏光情報を付加する空間光変調器と、
前記参照光により回折された再生光を検出する検出器と、
前記再生光の特定の偏光成分のみを前記検出器上に照射させるビームスプリッタと、
前記検出器で得た信号を処理し情報を再生する信号処理回路と
を具備する光情報記録再生装置、または光情報再生装置。
【請求項8】
前記空間光変調器は前記参照光の入射角度に応じて前記参照光に与える偏光情報の形状を制御すること特徴とする請求項7に記載の光情報記録再生装置、または光情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−221520(P2012−221520A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84164(P2011−84164)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】