説明

光情報記録再生装置

【課題】外部振動が加わった場合にも確実にSILと光ディスクとの衝突を防止することが可能な光情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ10とSIL11とからなる集光光学系、集光光学系を光ディスク表面に対して垂直方向に駆動するアクチュエータ、ギャップエラー信号を検出するギャップエラー生成回路、ギャップエラー信号に基づいて集光光学系と光ディスクとの間隔を制御するギャップサーボ回路、振動を検出する振動検出回路を具備する。振動検出回路により予め設定されたレベル以上の振動を検出した時、ギャップサーボをOFFすると共に、集光光学系を光ディスクから退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置等の光情報記録再生装置、特に、Solid Immersion Lens(以下SILと省略する)を用いて情報を記録又は再生する光情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの記録密度を向上させるためには、記録再生に用いる光の波長を短くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくして、光ディスク記録面上の光スポット径を小さくすることが求められる。従来より対物レンズの先玉を記録面上に記録波長の数分の1(例えば、1/2)以下に近接させて、いわゆるSILを構成し、NAを空気中においても1以上とする試みがなされて来た。それは、例えば、非特許文献1や非特許文献2等に詳しく記載されている。
【0003】
図10から図13を用いて従来の技術について説明する。図10を用いて非特許文献1に記載の近接場記録用の光ピックアップの構成を説明する。波長405nmの半導体レーザ1から出射した光束はコリメータレンズ2で平行光束とされ、ビーム整形プリズム3に入射して等方的な光量分布とされる。
【0004】
ビーム整形プリズム3からの光束は非偏光ビームスプリッタ(NBS)4を経て偏光ビームスプリッタ(PBS)7を透過し、更に1/4波長板(QWP)8を通過して直線偏光から円偏光に変換される。なお、非偏光ビームスプリッタ(NBS)4で反射された光束をレンズ5を介して受光し、半導体レーザ1の出射パワーを制御するための光検出器(LPC−PD)6が設けられている。
【0005】
1/4波長板(QWP)8を透過した光束はエキスパンダレンズ9に入射する。エキスパンダレンズ9は後述する対物レンズやSILで発生する球面収差を補正するためのレンズである。エキスパンダレンズ9は球面収差に応じて2枚のレンズのレンズ間隔を制御可能に構成されている。
【0006】
エキスパンダレンズ9からの光束は対物レンズの後玉レンズ10に入射する。対物レンズは後玉レンズ10とSIL(先玉レンズ)11からなっている。それらの集光光学系はフォーカス方向とトラッキング方向に2つのレンズを一体に駆動する2軸アクチュエータ(図示せず)上に実装されている。なお、本願明細書では後玉レンズを対物レンズ10、先玉レンズをSIL11という。
【0007】
図11は対物レンズ10により絞り込まれた光束を半球レンズのSIL11の底面に集光する様子を示すものである。光束は半球レンズの球面に垂直に入射し、半球がない場合と同じ光路を経て底面に集光されるので、半球レンズの屈折率分だけ波長が短くなるのと等価となり、光スポット径を縮小する効果がある。
【0008】
即ち、半球レンズの屈折率をN、対物レンズ10の開口数をNAとすると、光ディスク12の記録面上ではN×NA相当の光スポットが得られる。例えば、NA=0.7の対物レンズ10にN=2の半球レンズのSIL11を組み合わせれば、実効NAをNAeffとしてNAeff=1.4に達する。半球レンズ11の厚み誤差は10μm程度許容できるので量産が容易である。
【0009】
SIL底面と光ディスク12の距離が、光源の波長405nmの数分の1以下、例えば、100nm以下の近距離にある場合のみ、SIL底面からエバネッセント光として記録面に作用し、NAeffの光スポット径による記録再生が可能である。この距離を保つために後述するギャップサーボが用いられる。
【0010】
図10に戻って復路の光学系を説明する。光ディスク12で反射された光束は逆回りの円偏光となり、SIL11及び対物レンズ10に入射して平行光束に再び変換される。その平行光束はエキスパンダレンズ9、1/4波長板(QWP)8を通過し、往路とは直交する方向の直線偏光に変換される。この光束は偏光ビームスプリッタ(PBS)7で反射され、1/2波長板(HWP)13に入射する。
【0011】
1/2波長板(HWP)13で偏光面を45°回転された光束のうちS偏光成分は偏光ビームスプリッタ(PBS)14で反射され、レンズ15を経由して光検出器(PD1)16上に集光される。光検出器(PD1)16の検出信号から光ディスク12上の情報であるRF出力17が得られる。
【0012】
一方、1/2波長板(HWP)13で偏光面を45°回転された光束のうちP偏光成分は偏光ビームスプリッタ(PBS)14を透過し、非偏光ビームスプリッタ(NBS)18で反射される。その反射光束はレンズ19を経由して2分割光検出器(PD2)20上に集光される。2分割光検出器(PD2)20の受光信号から公知の方法でトラッキングエラー21が得られる。
【0013】
また、SIL11の底面で反射された光束のうち、全反射をしないNAeff<1の光束については、光ディスク12からの反射光と同様に入射と逆回りの円偏光として反射される。全反射を起こすNAefff≧1の光束については、P偏光成分とS偏光成分の間に次式で示す位相差δを生じ、円偏光からずれて楕円偏光となる。
【0014】
tan(δ/2)
=cosθi×√(N×sin2θi−1)/(N×sin2θi)…(1)式
従って、1/4波長板(QWP)8を通過すると往路と同じ方向の偏光成分を含むことになる。この偏光成分は偏光ビームスプリッタ(PBS)7を透過して非偏光ビームスプリッタ(NBS)4で反射され、レンズ26を経由して光検出器(PD3)27上に集光される。この光束の光量は近接場領域においてSIL底面と光ディスクの距離が近づくに従い単調減少するので、ギャップエラー信号28として用いることができる。
【0015】
予め目標の閾値を決めておけば、ギャップサーボを行うことにより、SIL底面と光ディスクの距離を100nm以下の所望の距離に保つことができる。ギャップサーボに関しては、上述の非特許文献1の論文に詳しい。また、この光束は光ディスク12上の記録情報による変調を受けていないので、記録情報の有無に拘わらず安定したギャップエラー信号を得ることができる。
【0016】
前述の通り、ギャップサーボを行っている時の光ディスクとSILの距離は100nm以下と非常に小さい。その為、光ディスク上の傷や汚れを要因とする外乱の影響により、SILがわずかでも振られるとSILと光ディスクが衝突し、SILまたは光ディスクの損傷を招く恐れがある。
【0017】
この問題を解決するための方法が、例えば、特開2001−76358号公報(特許文献1)で提案されている。図12は同公報の構成を示す。通常のギャップサーボを行っている場合には、まず、ギャップエラー生成回路104の出力であるギャップエラー信号が位相補償回路105に入力される。
【0018】
位相補償回路105の出力に応じた信号でアクチュエータドライバ回路106はピックアップ102内のSIL11を駆動する。この通常ギャップサーボ時において、ギャップエラー信号はコンパレータ107に入力されている。コンパレータ107の閾値に関して図13を用いて説明する。通常ギャップサーボ時の目標値がギャップ長30nmに相当するギャップエラー信号レベルがGErefとする。その場合、コンパレータ107の閾値はそれよりも大きいギャップ長50nmに相当するGEth1と小さいギャップ長10nmに相当するGEth2に設定する。
【0019】
コンパレータ107の出力はギャップエラー信号がGEth1またはGEth2を越えたらLowからHighに切り換わる。コンパレータ107の出力がLowからHighに切り換わった場合には、ギャップ制御ループ内に何らかの外乱が加わり、SILと光ディスク101の衝突の恐れがある。その場合には、スイッチ108が位相補償回路105側から加算器111側に切り換わる。
【0020】
また、位相補償回路105は位相補償処理を中断する。加算器111は駆動電圧ホールド回路109と位相補償回路110の出力の加算処理を行う。駆動電圧ホールド回路109にはコンパレータ107の出力が切り換わった時の位相補償回路105の出力電圧がホールドされている。また、位相補償回路110は位相補償回路105により実現される制御帯域よりも狭い制御帯域を実現する位相補償処理を行う。
【0021】
つまり、加算器111の出力により制御駆動を行うと、駆動電圧ホールド回路109によりコンパレータ107の出力が切り換わった時のSILの位置を保ちつつ、また外乱の応答性を落とす。そうすることで不必要にSILが駆動されない様にし、SILと光ディスク101の衝突を防いでいる。
【0022】
その後、コンパレータ107の出力がHighからLowに変わったら、制御ループへの外乱は収まったものとし、スイッチ108は位相補償回路105側に切り換わり、通常のギャップサーボへと戻る。この様にギャップエラー信号レベルの変化から外乱を検出することでSILと光ディスクの衝突を防止する。
【非特許文献1】Japan Jour NA1 Applied Physics 誌 44巻(2005) P.3564−3567 に記載の“Near Field Recording on First−Surface Write−Once Media with a NA=1.9 Solid Immersion Lens”
【非特許文献2】Optical Data Storage 2004,Proceedings of SPIE 5380巻(2004)“Near Field read−out of first−surface disk with NA=1.9 and a proposal for a cover−layer incident, dual−layer near field system”
【特許文献1】特開2001−76358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述の従来技術の様に制御ループの帯域を低くして、光ディスク上の傷や汚れに対して応答できなくし、SILの不必要な駆動をなくすことで、SILと光ディスクの衝突は防止できる。しかしながらドライブ装置に外部振動が加わった時にも従来技術の様に駆動電圧をホールドし、SILの位置を固定するとSILと光ディスクが衝突する。傷や汚れの場合とは異なり、振動時には光ディスクが実際に動いている為、SILもそれに応じて移動する必要がある。
【0024】
本発明の目的は、外部振動が加わった場合にも確実にSILと光ディスクとの衝突を防止することが可能な光情報記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、光源からの光束を集光する、対物レンズとその対物レンズと光ディスクの間に配設されるSolid Immersion Lens(SIL)とからなる集光光学系と、集光光学系を光ディスク表面に対して垂直方向に駆動するアクチュエータと、集光光学系と光ディスクとの間隔量を示すギャップエラー信号を検出するギャップエラー生成回路と、検出されたギャップエラー信号に基づいてアクチュエータをサーボ制御することにより集光光学系と光ディスクとの間隔を制御するギャップサーボ回路と、振動を検出する振動検出回路とを具備する。そして、振動検出回路により予め設定されたレベル以上の振動を検出した時、ギャップサーボをOFFすると共に、アクチュエータを駆動して集光光学系を光ディスクから退避させる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ギャップエラー信号レベルから外部振動を検出し、SILを光ディスクから退避させるので、SILと光ディスクの衝突を確実に防止でき、SILや光ディスクの損傷を防ぐことができる。また、外部振動検出時はSILの集光制御をギャップサーボからフォーカスサーボに切り換え、集光制御を続けたままSILと光ディスクの衝突を防止しているので、外部振動後の復帰時間が短くて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る光情報記録再生装置の第1の実施形態を示すブロック図である。図中、従来技術の図12と同じ機能を有するブロックには同じ番号を付して説明を省略する。本発明の光情報記録再生装置は光源(半導体レーザ)からの光束を集光し、光ディスク上に情報の記録又は再生を行う。
【0029】
図2は本実施形態の動作を説明するタイミングチャートである。図1及び図2を用いて本実施形態を詳述する。なお、図1では光ディスクに情報を記録する回路、記録情報を再生する回路、トラッキングサーボ回路、フォーカスサーボ回路、光ディスクを回転駆動する回路や機構等は省略している。
【0030】
本実施形態においても、記録又は再生時のギャップサーボ動作はギャップエラー生成回路104の出力であるギャップエラー信号に対し、位相補償回路105が位相補償処理を行う。また、その出力に応じてアクチュエータドライバ回路106がピックアップ102内のSILを駆動する。
【0031】
ピックアップ102は、例えば、図10の光ピックアップと同等の構成とする。即ち、光源である半導体レーザ1からの光束を集光する、対物レンズ10とその対物レンズ10と光ディスク12との間に配設されるSolid Immersion Lens(SIL)11とからなる集光光学系を備えている。集光光学系は上述のようにフォーカス方向とトラッキング方向に2つのレンズを一体に駆動する2軸アクチュエータ(図示せず)上に実装されている。
【0032】
即ち、集光光学系を光ディスク表面に対して垂直方向に駆動するアクチュエータを備えている。本発明はその集光光学系により光源(半導体レーザ)からの光束を集光し、光ディスク上に情報の記録又は再生を行う。
【0033】
ギャップエラー生成回路104は図10の光検出器(PD3)27の出力信号から集光光学系と光ディスクとの間隔量を示すギャップエラー信号を検出する。ギャップエラー生成回路104、位相補償回路105、アクチュエータドライバ回路106等の制御ループはギャップサーボ回路を構成している。即ち、検出されたギャップエラー信号に基づいてアクチュエータをサーボ制御することにより、集光光学系と光ディスクとの間隔を制御するギャップサーボ回路を備えている。
【0034】
通常のギャップサーボ時にはギャップエラー信号がコンパレータ107に入力されている。コンパレータ107の閾値は図2に示すようにギャップサーボの目標値に相当するギャップエラー信号レベルGErefよりも大きな信号レベルGEth1と小さい信号レベルGEth2に設定されている。コンパレータ107はギャップエラー信号レベルから装置に加わる振動を検出するものであり、振動を検出する振動検出回路を備えている。
【0035】
ギャップエラー信号レベルがGEth1またはGEth2を越えたら、コンパレータ107の出力はLowからHighに変わる(図2のt0の時点)。コンパレータ107の出力が切り換わると、装置に外部振動が加わり、SIL11と光ディスク101が衝突する恐れがあるとし、コントローラ113はギャップサーボ動作を中断すべく、位相補償回路105の位相補償処理を停止させる。
【0036】
コンパレータ107が傷や光ディスク上の汚れと外部振動を正確に切り分けて検出できる様にコンパレータ107の入力であるギャップエラー信号に対し、LPF処理により帯域を制限しても良い。LPFの遮断周波数としては500Hz程度で良い。
【0037】
これは傷や光ディスク上の汚れ等によりギャップサーボ制御ループに加わる外乱の成分が比較的高い周波数(数KHz程度)であるのに対し、外部振動による外乱の周波数は数百Hz程度と低い為である。
【0038】
コンパレータ107の出力が切り換わり、ギャップサーボを中断した後、コントローラ113は退避電圧生成回路112にSILを光ディスク101から退避させる為の駆動電圧を出力させる。この信号は図2に示すようにSILが光ディスク101から離間する方向へ駆動するパルス状の信号である。
【0039】
本実施形態では、このように振動検出回路により予め設定されたレベル以上の振動を検出した時、ギャップサーボをOFFすると共に、アクチュエータを駆動して集光光学系を光ディスクから退避させる。
【0040】
このように振動検出時に直ちにギャップサーボ制御を中断し、SILを光ディスクから退避させることで振動が加わった時もSILと光ディスク101の衝突を防止できる。またギャップエラー信号を振動の検出に用いることで、正確にSILの退避タイミングを検出できる。振動を検出してSILを退避させた後、所定時間が経過したら振動はなくなったものとし、コントローラ113は再びギャップサーボ制御を開始する。ギャップサーボ制御が正常に引き込めたら記録や再生を再開する。
【0041】
以上の様に本実施形態では、ギャップサーボ時にギャップエラー信号レベルにより外部振動を検出し、外部振動を検出したら直ちにギャップサーボを中断してSILを光ディスクから退避させる。この処理を行うことでSILを用いた光情報記録再生装置においてSILと光ディスクの衝突を確実に防止できる。
【0042】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。図中、図1や図12と同じ機能を持つブロックには同じ番号を付して説明を省略する。なお、図3では光ディスクに情報を記録する回路、記録情報を再生する回路、トラッキンクサーボ回路、光ディスクを回転駆動する回路や機構等は省略している。
【0043】
図3から図9を用いて本実施形態を説明する。まず、本実施形態の光学系の構成を図4に示す。図4では従来技術の図10と同一部分には同じ番号を付して説明を省略するが、図4では図10に対して破線で囲まれた部分を追加している点が異なる。この光学系の特徴は図4の点線で囲まれた部分であり、その構成を以下に説明する。その他は図10と同様の構成である。
【0044】
非偏光ビームスプリッタ18を透過した光束は開口22を通過して光束の外周部を遮光され、センサレンズ23を経由して光検出器(PD4)24上に集光される。光検出器PD4(24)の出力は図3のフォーカスエラー生成回路114に入力され、フォーカスエラー信号が生成される。
【0045】
破線で囲まれた部分について図5及び図6を用いて詳述する。図5において、光ディスクからの反射光束は、瞳径周縁部ではNA=1.4(NA>1)となる。開口22はその中心部のNA<1、例えば、NA=0.85程度の光束を透過し、外周部のNA>1となる光束を遮光する。透過光束をNA=1よりも10%程度小さくするのは、対物レンズ10及びSIL11が光ディスクの偏芯に伴い、光ディスク半径方向に移動した場合、外周部のNA>1となる光束が混入しないためである。
【0046】
フォーカスエラー信号の生成方法としては、センサレンズ23が、例えば、トーリックレンズであり、光検出器PD4が、例えば、4分割センサである場合には、公知の非点収差法により検出することができる。NA<1以下の光束には光ディスクの記録層からの反射光が多く含まれていて、精度良くフォーカスエラー信号を検出できる。
【0047】
次に、本実施形態の動作を図3及び図7を用いて詳述する。まず、先述の実施形態と同様に記録や再生時のギャップサーボ動作時は、ギャップエラー信号はコンパレータ107に入力されている。コンパレータ107の閾値は同様に通常ギャップサーボ時の目標値に相当する信号レベルよりも大きい値GEth1と小さい値GEth2に設定されている。コンパレータ107は同様に振動を検出する振動検出回路である。
【0048】
ギャップエラー信号レベルの変化により外部振動を検出すると、コンパレータ107の出力がLowからHighに切り換わる(図7のステップ1)。コントローラ113はコンパレータ107の出力変化を検出すると、SILの集光制御を通常のギャップサーボから先述のNA<1の光束から生成したフォーカスエラー信号によるフォーカスサーボへと切り換える(ステップ2)。
【0049】
つまり、振動検出回路により予め決められたレベル以上の振動を検出した時、ギャップエラー信号に基づくギャップサーボからフォーカスエラー信号に基づくフォーカスサーボへ切り換える。その場合、フォーカスサーボ回路はフォーカスエラー信号に基づいて上述のアクチュエータをサーボ制御することによりフォーカスサーボを行う。フォーカスエラー信号は上述のように光ディスクからの反射光束のうちSILによる実効開口数が1未満に相当する光束から生成する。
【0050】
具体的には、スイッチ116を位相補償回路105側から位相補償回路115側へと切り換える。ここで、記録又は再生時におけるギャップエラー信号とNA<1の光束から生成したフォーカスエラー信号の合焦点は図8(a)に示す関係となっている。つまりギャップサーボの目標値であるSIL−光ディスク間距離が30nmにフォーカスエラー信号の合焦点が一致している。
【0051】
ギャップサーボ時に外部振動を検出し、コントローラ113がギャップサーボからフォーカスサーボに切り換えた後、制御目標位置を図8に示す制御目標位置Aから制御目標位置Bへと変更する。この時点では制御目標位置A及びBにおけるSIL−光ディスク間距離はほぼ同じである。
【0052】
制御目標位置を切り換えた後、コントローラ113はエキスパンダ駆動回路117を制御してピックアップ102内のエキスパンダレンズ9を駆動する。エキスパンダレンズ9は図8に示すようにボイスコイルモータ29により駆動され、その位置により光スポットの合焦点とSILとの間隔を変更することができる。
【0053】
つまり、フォーカスエラー信号の合焦位置を変更する。外部振動を検出し、SILの集光制御をギャップサーボからフォーカスサーボに切り換えた後、フォーカスサーボを行ったままエキスパンダレンズ9を駆動してフォーカスエラー信号の合焦位置を変更する(ステップ3)。
【0054】
このようにフォーカスサーボへ切り換えた際に、光束の合焦位置を移動させて、光束の合焦点とSILとの間隔を広げている。
【0055】
合焦位置を変更した後は、フォーカスエラー信号の合焦位置は図8(b)に示すようにSIL−光ディスク間距離が1μm程度離れた位置(図8(b)の制御目標位置C)となる。合焦位置をSILと光ディスク間が大きくなる方向へ移動させることで、外部振動により光ディスクが動いても、SILと光ディスクの衝突を防止できる。SILの集光制御を切り換えた後の処理を図9を用いて詳述する。
【0056】
フォーカスサーボを行ったまま合焦位置を変更した後、フォーカスエラー信号はコンパレータ118に入力されている。コンパレータ107と同様にコンパレータ118の閾値は図9に示すようにフォーカスサーボの目標値FErefを中心とした、所定範囲を持つ±FEthに設定してある。
【0057】
コンパレータ118の出力はフォーカスエラー信号レベルが所定時間以上、所定範囲内にあれば出力が切り換わる。SILの集光制御を切り換え、合焦位置を移動した直後である図7のステップ3の実行時は外部振動の影響が残っている為、コンパレータ118の出力はHighのままである。
【0058】
合焦位置を移動させた後にフォーカスエラー信号レベルが所定時間以上、所定範囲内になるまで、コントローラ113はコンパレータ118の出力を監視し続ける(ステップ4)。ステップ4でフォーカスエラー信号レベルが所定範囲内に所定時間以上入れば、コンパレータ118の出力はHighからLowへ切り換わり、コントローラ113はギャップサーボ時に検出した外部振動は収まったものと判断する。
【0059】
外部振動が収まったと判断したら、SILの集光制御をギャップサーボに戻し、記録や再生を再開する制御を行う。即ち、コントローラ113はエキスパンダレンズ駆動回路117を制御してエキスパンダレンズ9を駆動し、フォーカスエラー信号の合焦位置を移動させる(ステップ5)。つまりフォーカスサーボを行ったままエキスパンダレンズ9を駆動し、合焦位置を図8の制御目標位置Cから制御目標位置Bまで移動させる。
【0060】
合焦位置の移動が終了したら、SILの集光制御をフォーカスサーボからギャップサーボに切り換える(ステップ6)。ギャップサーボへの切り換えが完了したら、記録や再生を再開する。
【0061】
以上の様に外部振動検出時にSILの集光制御をギャップサーボからフォーカスサーボに切り換えた上で、フォーカスエラー信号の合焦位置をSILと光ディスク間の距離が大きくなる方向へ移動させる。
【0062】
こうすることで、外部振動時にSILと光ディスク間のマージンが増える為、外部振動時にもSILと光ディスクの衝突を防ぐことが可能となる。また外部振動時にSILの集光制御を中断せず、フォーカスサーボに切り換えているので、外部振動が収まった後はエキスパンダレンズ9を移動させるだけで、ギャップサーボを再開できるので、復帰時間が短くて済む。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る光情報記録再生装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態のピックアップ光学系を示す構成図である。
【図5】第2の実施形態のフォーカスエラー信号を検出する光学系の説明図である。
【図6】第2の実施形態のフォーカスエラー信号を検出する光学系の開口を透過する光束の説明図である。
【図7】第2の実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図8】第2の実施形態の制御目標位置の変更方法を説明する図である。
【図9】第2の実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】従来の近接場記録用の光ピックアップを示す図である。
【図11】半球SILを説明する図である。
【図12】SILを用いた従来の光情報記録再生装置を示すブロック図である。
【図13】従来技術において外乱を検出するためのギャップエラー信号に対する閾値の設定を説明する図である。
【符号の説明】
【0064】
1 半導体レーザ(光源)
2 コリメータレンズ
3 ビーム整形プリズム
4、18 非偏光ビームスプリッタ(NBS)
5、15、19、23、26 レンズ
6 LPC−PD
7、14 偏光ビームスプリッタ(PBS)
8 1/4波長板(QWP)
9 エキスパンダレンズ
10 対物レンズ(後玉レンズ)
11 SIL(先玉レンズ)
12、101 光ディスク(記録媒体)
13 1/2波長板(HWP)
16、20、24、27 光検出器
17 RF出力
21 トラッキングエラー
22 開口
28 ギャップエラー
29 ボイスコイルモータ
102 ピックアップ
103 スピンドルモータ
104 ギャップエラー生成回路
105 位相補償回路
106 アクチュエータドライバ回路
107、118 コンパレータ
108、116 スイッチ
109 駆動電圧ホールド回路
110、115位相補償回路
111 加算回路
112 退避電圧生成回路
113 コントローラ
114 フォーカスエラー生成回路
117 エキスパンダレンズ駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光束を光ディスク上に集光し、情報の記録又は再生を行う光情報記録再生装置において、
前記光源からの光束を集光する、対物レンズと前記対物レンズと前記光ディスクの間に配設されるSolid Immersion Lens(SIL)とからなる集光光学系と、
前記集光光学系を前記光ディスク表面に対して垂直方向に駆動するアクチュエータと、
前記集光光学系と前記光ディスクとの間隔量を示すギャップエラー信号を検出するギャップエラー生成回路と、
前記検出されたギャップエラー信号に基づいて前記アクチュエータをサーボ制御することにより前記集光光学系と前記光ディスクとの間隔を制御するギャップサーボ回路と、
振動を検出する振動検出回路とを備え、
前記振動検出回路により予め設定されたレベル以上の振動を検出した時、前記ギャップサーボをOFFすると共に、前記アクチュエータを駆動して前記集光光学系を前記光ディスクから退避させることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項2】
前記振動検出回路により予め設定されたレベル以上の振動を検出した時、前記ギャップエラー信号に基づくギャップサーボからフォーカスエラー信号に基づくフォーカスサーボに切り換えることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録再生装置。
【請求項3】
前記フォーカスエラー信号は前記光ディスクからの反射光束のうち前記SILによる実効開口数が1未満に相当する光束から生成することを特徴とする請求項2に記載の光情報記録再生装置。
【請求項4】
前記フォーカスサーボへ切り換えた際に、光束の合焦位置を移動させて、光束の合焦点と前記SILとの間隔を広げることを特徴とする請求項2又は3に記載の光情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−217866(P2008−217866A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51366(P2007−51366)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】