説明

光情報記録媒体、及びその製造方法

【課題】Blu−ray方式の光情報記録媒体であって、記録特性に優れ、且つ、情報再生の経時劣化を抑制しうる光情報記録媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の光情報記録媒体は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、銀を主成分とする銀合金からなる光反射層と、有機色素を含有する記録層と、密度が5.8g/cm以上12g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により形成されてなるバリア層と、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層とをこの順に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短波長レーザー光を用いて情報の記録及び再生が可能な光情報記録媒体及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、Blu−ray方式の光情報記録媒体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、DVDを超える大容量の記録媒体としてBlu−ray方式の光情報記録媒体(以降、Blu−rayディスクと称する。)が実用化されている。
Blu−rayディスクでは、大容量を実現するために、ピックアップには、波長405nmのレーザーを用い、レーザーの集束のための対物レンズの開口数NAを0.85として、従来の記録媒体用ピックアップよりも短波長化、高NA化している。これに伴い焦点距離が短くなり、記録側入射面から記録面までの距離が約100μmとなる。これを実現するためには、CD、DVDのように基板を通して記録再生を行うのではなく、Blu−rayディスクでは、基板上に記録層からなる記録面を形成し、その上におよそ100μm厚みのカバー層を形成し、カバー層側から記録再生を行う方法がとられている。
ここで、カバー層の形成方法は、粘着材付きカバーシートを基板の記録面に貼り合わせる方法、基板の記録面とカバーシートを紫外線硬化型接着剤で貼り合わせる方法、基板の記録面に紫外線硬化樹脂にて100μm厚みのカバー層を形成する、所謂オールスピン法などがあるが、生産性及びコストの観点から、貼り合わせ法やオールスピン法が多く採用されている。
【0003】
現在、上記のようなカバー層を有するBlu−rayディスクとしては、複数回記録が可能な書き換え型の記録媒体と、一回記録可能な追記型の記録媒体が存在する。
書き換え型の記録媒体は、記録層に相変化方式を採用している。すなわち、照射するレーザー光の強度を変えることにより金属合金からなる記録層を、結晶−アモルファス状態間で相変化させ、両者の反射率差により信号の記録を行う方式である。
一方、追記型の記録媒体は、上述した相変化方式、複数の無機物層からなる記録層を溶解し両層を混合させることで反射率差を生じさせる方式、有機色素からなる記録層をレーザー照射により分解し、屈折率差を生じさせることで記録を行う色素方式等が、検討・実用化されている。
【0004】
上記に記載の方式のうち、相変化方式や、複数の無機物を用いる方式では、記録媒体を製造する際に無機物からなる層を複数層積層させる必要がある。
この無機物からなる層の形成には、一般的には、マルチチャンバー型のスパッタリング装置が用いられている。しかしながら、マルチチャンバー型スパッタリング装置は高価であること、ターゲット交換にともなう稼働率の低下があるため、記録媒体の製造コストが高くなってしまうという難点がある。
これに対し、記録層に有機色素を用いる方式では、有機溶媒に溶解した色素を、回転する基板上に滴下し塗り広げることにより記録層を形成するスピンコート方式が一般的に用いられており、マルチチャンバー型のスパッタ装置に比べ大幅に装置が安価であり、記録媒体の製造コストの点で有利である。
【0005】
従来、記録層に有機色素を用いた追記型のCDやDVDでは、記録層に照射したレーザー光を記録層の有機色素が吸収し分解することにより、分解前後での屈折率差を生じさせ記録マークを形成させていた。一方、Blu−rayディスクでは、従来のCD、DVDと信号極性が異なることから、記録層の屈折率変化のみでは十分な信号強度が得られない。そのため、記録層の分解と共にカバー層側に変形を生じることにより空隙を形成することで、屈折率差を大きくし、十分な信号強度を得ることを実現している。
その際、記録層中の有機色素の分解により生成したガスの圧力によりカバー層を変形させるが、カバー層の粘弾性が大きすぎると十分な変形をさせることができない。すなわち、有機色素の分解により発生したガスの圧力が低いとカバー層は弾性変形を生じるのみであり、変形が維持されないため、カバー層を変形させそれを維持するためには、カバー層の弾性変形領域を越え、塑性変形させることが可能な圧力を発生させる必要がある。
しかしながら、記録層は非常に薄く形成されており、そこに含まれる色素を分解したとしてもカバー層を塑性変形させるだけの十分な圧力を発生させることが困難である。そこで、カバー層自体の粘弾性を小さくすることにより、色素分解によって発生するガスによる圧力が小さい場合にも、塑性変形が可能となる。
【0006】
カバー層の粘弾性を小さくする手段として、具体的には、カバー層のガラス転移温度(Tg)を0℃以下とする方法がある。この方法によれば、カバー層の粘弾性が小さく、十分な大きさの空隙の形成及び維持が可能である。
例えば、特許文献1〜3には、カバー層のガラス転移温度0℃以下であり、且つ、記録層に有機色素を用いたBlu−ray方式の記録媒体が提案されている。
【特許文献1】特開2006−92710号公報
【特許文献2】特開2006−313612号公報
【特許文献3】特開2007−26541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カバー層の形成に一般に用いられるアクリレート系接着剤の場合、構成するオリゴマーの分子鎖の長さや一分子中に含まれる架橋部位の数の調整等により、低Tgのカバー層を実現することは可能である。しかしながら、低Tg化に伴い、接着力が低下するという問題がある。
これに対し、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることで低Tg化と高接着性とを両立することが可能であることが判明した。これは、硬化した樹脂膜中で、近傍に位置するウレタン結合同士が水素結合することによりガラス転移温度(Tg)が低い状態であっても、十分な接着性を得ることが可能になると考えられる。
【0008】
また、カバー層のガラス転移温度が0℃以下である場合、使用環境である室温前後ではカバー層のガラス転移温度を上回っているため、流動性が高い状態となる。前述した貼り合せ方式、又はオールスピン方式の場合、カバー層を紫外線硬化樹脂を用いて形成するが、硬化後の紫外線硬化樹脂のガラス転移温度を0℃以下とするためには、架橋密度を下げる必要があるため、流動性が特に高い状態となる。
一方、記録層に有機色素を用いた記録媒体では、反射率を高めるために、通常、銀合金からなる光反射層が用いられる。
このような有機色素を含有する記録層及び光反射層に対し、架橋密度の低いカバー層を適用すると、情報の再生を継続した際にエラーが生じ、再生が困難になるという問題が生じることを、本発明者らは見出した。
【0009】
そこで、本発明の目的は、Blu−ray方式の光情報記録媒体であって、記録特性に優れ、且つ、情報再生の経時劣化を抑制しうる光情報記録媒体、及び該光情報記録媒体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、カバー層に接して形成されるバリア層を、特定の密度条件を満たすスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により形成することで、記録特性が高く、また、情報再生の経時劣化が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、上記目的は、下記手段により達成される。
本発明の光情報記録媒体は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、銀を主成分とする銀合金からなる光反射層と、有機色素を含有する記録層と、密度が5.8g/cm以上12.0g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により形成されてなるバリア層と、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層と、をこの順に有する。
【0012】
本発明の光情報記録媒体において、バリア層の形成に用いるスパッタリングターゲットがSnOを40質量%以上含むことが好ましく、また、バリア層の膜厚が10nm〜30nmであることが好ましい。
また、基板が有する案内溝のトラックピッチが50nm〜500nmの範囲であることが好ましい。
更に、本発明の光情報記録媒体は、波長390nm〜440nmのレーザー光の照射により情報を記録するために使用されることが好ましい態様である。
【0013】
また、本発明の光情報記録媒体の製造方法は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、銀を主成分とする銀合金からなる光反射層を形成する工程と、該光反射層上に有機色素を含有する記録層を形成する工程と、該記録層上に、密度が5.8g/cm以上12.0g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法によりバリア層を形成する工程と、該バリア層上に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させて硬化膜を形成して、該硬化膜を含むカバー層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
この製造方法において、バリア層の形成に用いるスパッタリングターゲットがSnOを40質量%以上含むことが好ましい態様である。
【0014】
前述の情報の再生を継続した際にエラーが生じ、再生が困難になるという問題は、以下のようなメカニズムにより発生するものと推測される。
即ち、架橋密度が低く、流動性のあるカバー層では、硬化後にも関わらず、紫外線硬化樹脂中の一部成分が溶出し、記録層中に拡散する現象が発生するともの考えられる。特に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いた紫外線硬化樹脂を用い場合、該オリゴマー中のエステル基は加水分解性が高く、高温高湿環境下で加水分解により酸が生じ、記録層中への拡散現象が生じやすくなる。
このようにして記録層中に酸が拡散すると、その酸の作用により、光反射層中の銀が腐食して、記録層中に溶出してしまい、更に、溶出した銀が、再生光が照射されることで記録層中にて凝集し、記録層に欠陥を生成させてしまうと考えられる。その結果として、情報の再生を継続するとエラーが生じ、再生が困難になるものと推測される。
なお、前述した特許文献1〜3に記載のように、有機色素を含有する記録層とカバー層との間に無機層からなるバリア層を形成する態様が従来より知られているものの、一般的なバリア層膜厚は数nm〜数10nmと極めて薄いことなどもあり、情報再生の経時劣化といった新たな問題を解決することはできなかった。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Blu−ray方式の光情報記録媒体であって、記録特性に優れ、且つ、情報再生の経時劣化を抑制しうる光情報記録媒体、及び該光情報記録媒体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<光情報記録媒体及びその製造方法>
本発明の光情報記録媒体は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、銀を主成分とする銀合金からなる光反射層と、有機色素を含有する記録層と、密度が5.8g/cm以上12.0g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により形成されてなるバリア層と、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層と、をこの順に有することを特徴とする。
また、本発明の光情報記録媒体の製造方法は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、銀を主成分とする銀合金からなる光反射層を形成する工程と、該光反射層上に有機色素を含有する記録層を形成する工程と、該記録層上に、密度が5.8g/cm以上12.0g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法によりバリア層を形成する工程と、該バリア層上に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させて硬化膜を形成して、該硬化膜を含むカバー層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
以下、本発明の光情報記録媒体及びその製造方法について、光情報記録媒体を構成する各要素毎に、詳細に説明する。
【0017】
[バリア層]
光情報記録媒体におけるバリア層の形成方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法が考えられるが、本発明においては、生産性において優位なスパッタリング法を採用している。
スパッタリング法は、陽極・陰極間に電圧を印加し、Ar等の不活性ガスをイオン化させ、陰極側に配置したターゲット材料に不活性ガスイオンを衝突させることにより、ターゲット材料を飛散させ、陽極側に配置した対象物に、飛散したターゲット材料を積層する方法である。本発明において、この対象物は、基板上に光反射層及び記録層が形成された積層体であって、この積層体の記録層上にターゲット材料が積層されることで、本発明におけるバリア層が形成される。
なお、スパッタリング法はスパッタリングターゲットから対象物にターゲット材料を移動させる方法に他ならず、形成されたバリア層の組成・構造は、多少の変動はあったとしても概ねターゲット材料の組成・構造を再現することが可能である。
【0018】
本発明におけるバリア層の形成には、密度が5.8g/cm以上12.0g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いることを特徴としている。このような高密度のスパッタリングターゲットを用いてバリア層を形成することで、後述する紫外線硬化型組成物中のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分解生成物等の移動を防ぐことが可能となる。
即ち、上記のような高密度のスパッタリングターゲットを用いて、高密度のバリア層が形成されれば、バリア層の両側に形成されたカバー層と光反射層との間での物質移動が抑制されることから、上記分解生成物に起因する光反射層の腐食の防止が可能となる。
【0019】
本発明において、スパッタリングターゲットの密度として好ましくは、バリア性の点から下限は5.8g/cmである。上限としては光透過性の観点から12.0g/cmであり、より好ましくは、5.8g/cm〜9.0g/cmの範囲である。
【0020】
本発明におけるバリア層の膜厚は、実用上、10nm〜30nm程度であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、バリア層の破断等が起きず、記録時に形成した記録マーク形状を維持することが容易になる。また、膜厚が30nm以下であると、記録時の変形抑制力が大きくなり過ぎず、十分な大きさの記録マークを形成することができる。
なお、前記のような高密度のスパッタリングターゲットを用いて形成されたバリア層では、上記の膜厚範囲でいずれも望む効果が得られるが、前記した範囲から外れる低密度のスパッタリングターゲットを用いて形成したバリア層では、上記の膜厚範囲のいずれにおいても望む効果が得られないことから、実用可能な10nm〜30nmの膜厚範囲においては、バリア層の膜厚よりも、その密度が物質移動抑制への寄与が大きいと考えられる。
【0021】
本発明におけるバリア層を形成するために用いるスパッタリングターゲットの組成は、前記の密度範囲を満足すれば特に限定されるものではないが、密度はスパッタリングターゲット組成に由来することから、使用できる材料は限られる。また、光情報記録媒体としての用途を考えると、記録再生波長において透明であることが重要である。それらの点から、一般に、金属の酸化物、窒化物、硫化物が用いられるが、本発明において好ましい材料としてはSnOやTaが挙げられる。製造上のコストの点を考慮すると、本発明では、Taに比べ大幅に安価なSnOを含むスパッタリングターゲットを用いることが好ましい。中でも、スパッタリングターゲット中にSnOが40質量%以上含まれていれば、前記範囲のスパッタリングターゲット密度を達成することが可能となるため、好ましい。特に、スパッタリングターゲット中にSnOが40質量%〜100質量%で含むものが最も好ましい。
【0022】
本発明のバリア層を形成する際のスパッタリング方式としては、高い製膜速度が実現可能なマグネトロンスパッタリング方式が好ましい。
用いる電源は、スパッタリングターゲットに応じて、直流(DC)電源、及び高周波(RF)電源のいずれかを用いる。即ち、スパッタリングターゲットが、金属若しくは半導体であれば直流電源を用い、スパッタリングターゲットが絶縁体であれば高周波電源を用いる。
スパッタリングパワーは、製膜速度の極端な低下が見られず、また、発生するイオンの持つエネルギーに起因するスパッタリングターゲットの損傷を抑制する点から、0.05kW〜20kWの範囲を用いることが好適である。
イオン発生源となるガスとしては、スパッタリング率の高いNe、Ar、Kr、Xe等の希ガスを用いることが好ましい。
また、スパッタリングチャンバー内での上記ガスの圧力は、プラズマの発生が抑制されず、イオンを効率よく発生するため、また、製膜速度の極端な低下を抑制する上で、0.01Pa〜10Paの範囲が良好である。
なお、最適な圧力値は、装置及びターゲット材料に依存することから、使用する装置、材料に応じて上記範囲内において好適な値を選択すればよい。
【0023】
[カバー層]
本発明の光情報記録媒体におけるカバー層は、バリア層と接する位置に紫外線硬化型組成物に硬化させてなる硬化膜を含むことを特徴としている。
この硬化膜は、記録層中の空隙形成に伴う変形を良好に行い、十分な記録特性を得るために、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましい。より優れた記録特性を得るためには、硬化膜のガラス転移温度は−10℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることが更に好ましい。また、剥離強度(接着性)との両立との点では、硬化膜のガラス転移温度は−125℃以上であることが好ましい。すなわち、本発明に用いられる硬化膜のガラス転移温度は0℃〜−125℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは−10℃〜−100℃、更に好ましくは−20℃〜−90℃である。
なお、本発明における硬化膜のガラス転移温度(Tg)とは、示差走査熱量分析(DSC)により求められるガラス転移温度(以下、「ガラス転移温度(DSC)」ともいう。)である。
硬化膜のガラス転移温度は、硬化膜形成のために使用する紫外線硬化型組成物の処方、該組成物に含有されるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー等の紫外線硬化性化合物の種類、硬化条件等により制御することができる。
【0024】
本発明におけるカバー層は、硬化膜形成に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を用いることを要する。この組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーに加え、後述する任意の成分を含む塗布液であり、これを用いることで、上記のような好ましい範囲のガラス転移温度を有する硬化膜を得ることができる。
本発明におけるカバー層は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜のみからなる層であってもよいし、硬化膜とカバーシートとからなる層であってもよい。即ち、本発明におけるカバー層は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜を有していれば、貼り合わせ法、及びオールスピン法のいずれによって形成されているものであってもよい。
以下、カバー層の形成に用いられるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとそれを含有する紫外線硬化型組成物について説明する。
【0025】
(ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー)
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー中の「(メタ)アクリレート」とは、アクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)を包含するものである。また、「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー」とは、質量平均分子量1000〜20000のウレタン(メタ)アクリレートであり、好ましくは質量平均分子量1500〜18000、より好ましくは質量平均分子量2000〜15000のウレタン(メタ)アクリレートである。
【0026】
本発明において用いられるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ジオール成分に起因する部分構造と、イソシアネート成分に起因する部分構造と、(メタ)アクリレート成分に起因する部分構造と、を分子内に含むものである。
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、下記のような市販品であってもよいし、後述する原料成分を用いて合成したものであっても構わない。
市販品としては、ダイセルサイテック株式会社製ウレタンアクリレートであるEBECRYL−230(2官能、分子量5000、Tg−55℃)、EBECRYL−270(2官能、分子量1500、Tg−27℃)、KRM8296(3官能、Tg−11℃)、根上工業株式会社製ウレタンアクリレートであるUN−7700(2官能、分子量20000)などが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0027】
以下に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを合成する際に用いられる原料成分(ジオール成分、イソシアネート成分、(メタ)アクリレート成分)と合成例を挙げるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0028】
−ジオール成分−
ジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200から9000、好ましくは1000から9000、より好ましくは2000から8000のもの)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(分子量200から9000、好ましくは1000から9000、より好ましくは2000から8000のもの)、などが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0029】
−イソシアネート成分−
イソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート(三井化学社製コスモネート(R)T65/T80/T100)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(三井化学社製コスモネート(R)PH)、ポリメリックMDI(三井化学社製コスモネート(R)M50/100/200/300)、ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学社製タケネート(R)700)、キシリレンジイソシアネート(三井化学社製タケネート(R)500)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学社製タケネート(R)600)、イソホロンジイソシアネート、4、4’−ジシクロヘキシルジイソシアネートが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0030】
−(メタ)アクリレート成分−
(メタ)アクリレート成分としては、(メタ)アクリル酸に、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200から9000、好ましくは1000から9000、より好ましくは2000から8000のもの)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(分子量200から9000、好ましくは1000から9000、より好ましくは2000から8000のもの)などの二官能性アルコール(ジオール)を反応させて得られるモノヒドロキシ(メタ)アクリレートが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0031】
−合成例−
本発明に用いるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリプロピレングリコール(分子量1000)1モルと、イソホロンジイソシアネート2モルとの反応後、ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応させて合成することができる。
【0032】
本発明においては、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとして、二官能から五官能のものが好ましい。
また、本発明に用いるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は1000〜10000が好ましい。
更に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、オリゴマー自体のガラス転移温度(Tg)が−50〜50℃のものを用いることが好ましい。
【0033】
本発明で用いる紫外線硬化型組成物中、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、低Tg化と高接着性とを両立する観点から、組成物の質量に対して、20質量%〜50質量%が好ましく、25質量%〜50質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。
上記の範囲を満たしていれば、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは1種を単独で用いてもよいし、種以上組み合わせて使用することもできる。
【0034】
(任意の成分)
本発明における紫外線硬化型組成物は、前述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーに加え、後述する任意の成分を含む塗布液である。
本発明における紫外線硬化型組成物は、任意成分として、単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレート等の重合性モノマーを含有することが好ましい。
【0035】
−重合性モノマー−
本発明では、下記一般式(1)で表されるアクリレートと下記一般式(2)で表されるメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称し、同様に、アクリル酸とメタアクリル酸とを併せて(メタ)アクリル酸と称する。
【0036】
【化1】

【0037】
上記一般式(1)及び(2)中、Rは1価の置換基を表す。
【0038】
本発明に使用可能な重合性モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
即ち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記一般式(1)及び前記一般式(2)における1価の置換基のRが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、ノニルフェノキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル基、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、又はジシクロペンテニロキシエチル基等である(メタ)アクリレート等に加え、更に、(メタ)アクリル酸が好ましいものとして挙げられる。
上記の中でも、好ましい1価の置換基Rとしては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、又はドデシル基が挙げられる。
【0039】
単官能(メタ)アクリレートの更に好ましい例としては、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ドデシルメタクリレートが挙げられる。
【0040】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール1モルに6モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
中でも、好ましくは、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール1モルに6モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たポリ(メタ)アクリレートである。
より好ましくは、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ又はテトラ(メタ)アクリレートである。
【0042】
また、重合性モノマーとしては、前記単官能又は多官能(メタ)アクリレートに加え、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、又はN−ヒドロキシエチルアクリルアミド、及びそれらのアルキルエーテル化合物等も使用できる。
【0043】
上述の重合性モノマーの選択や紫外線硬化型組成物中の含有量は、求められる硬化膜のガラス転移温度(Tg)に応じて、適宜、決定すればよい。
例えば、紫外線硬化型組成物100質量部中、単官能(メタ)アクリレートが20質量部〜99質量部で、且つ、多官能(メタ)アクリレートが1質量部〜80質量部であることが好ましく、単官能(メタ)アクリレートが30質量部〜99質量部で、且つ、多官能(メタ)アクリレートが1〜70質量部であることがより好ましく、単官能(メタ)アクリレートが40質量部〜99質量部で、且つ、多官能(メタ)アクリレートが1質量部〜60質量部であることが更に好ましい。
特に好ましくは、前記多官能(メタ)アクリレートのうち3官能以上の(メタ)アクリレートが5質量部未満であることである。
【0044】
−その他の重合性オリゴマー−
更に、紫外線硬化型組成物には、上述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーに加え、発明の硬化を損なわない範囲において、その他の重合性オリゴマーを併用することができる。その他の重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記のように、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとその他の重合性オリゴマーとを併用する場合、全重合性オリゴマー中にウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが20質量%以上含まれることが好ましく、25質量%以上含まれることがより好ましく、30質量%以上含まれることがより好ましい。
【0045】
−光重合開始剤−
本発明における紫外線硬化型組成物には、一般に光重合開始剤が添加される。
光重合開始剤は、用いる重合性オリゴマーや重合性モノマーに代表される紫外線硬化性化合物が硬化できるものであればよく、特に限定されるものではない。光重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型のものが本発明に好適である。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンジル、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が好適であり、更に、これら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン等を用いてもよいし、更に、水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタロフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフイド等も用いることができる。
【0046】
光重合開始剤として、上記の中でも好ましくは、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、4−フェニルベンゾフェノンであり、より好ましくは2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、4−フェニルベンゾフェノンである。
【0047】
光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化型組成物100質量部に対して、0.1質量部〜15質量部が好ましく、0.3質量部〜10質量部がより好ましい。
【0048】
−増感剤−
また、本発明における紫外線硬化型組成物は、前記光重合開始剤に対応する増感剤を含有していてもよい。
増感剤として、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述紫外線硬化性化合物と付加重合反応を起こさないアミン類が挙げられる。
勿論、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化性化合物との相溶性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
増感剤の含有量は、紫外線硬化型組成物100質量部に対して、0.05質量部〜10質量部が好ましく、0.1質量部〜5質量部がより好ましい。
【0049】
−その他の添加剤−
紫外線硬化型組成物としては、常温〜40℃において、液状であるものを用いることが好ましい。溶媒は用いないことが好ましく、用いたとしても極力少量に留めることが好ましい。
また、紫外線硬化型組成物の塗布をスピンコーターで行う場合には、粘度は、好ましくは20mPa・s〜1000mPa・sであり、より好ましくは30mPa・s〜700mPa・sであり、更に好ましくは40〜500mPa・sである。
このような粘度調整のために、増粘剤として、質量平均分子量1万以上のポリマーを用いることができる。少量の添加で所望の粘度とするためには、より高分子量のポリマー、すなわち質量平均分子量10万以上のポリマーが好ましく、質量平均分子量100万以上のポリマーを用いると更に好ましい。
【0050】
また、紫外線硬化型組成物には、必要であれば、更にその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤、及びエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。
これらは、紫外線硬化性化合物との相溶性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0051】
(硬化膜の形成)
本発明における硬化膜形成のために使用される紫外線硬化型組成物の詳細は、先に説明した通りである。
この硬化膜の形成方法は特に限定されないが、カバー層の態様によって、適宜、選択されればよい。
即ち、本発明におけるカバー層が硬化膜のみからなる態様であれば、バリア層の表面(被貼り合わせ面)上に、紫外線硬化型組成物を所定量塗布し、スピンコートにより該組成物を、被貼り合わせ面上に均一になるように広げた後、その塗布面側から紫外線を照射して硬化処理を施すことが好ましい(オールスピン法)。
なお、このオールスピン法の場合には、オリジン電気株式会社等から市販されている光ディスク貼り合わせ装置を用いてもよい。
また、本発明におけるカバー層が硬化膜とカバーシートからなる態様であれば、バリア層の表面(被貼り合わせ面)上に、紫外線硬化型組成物を所定量塗布し、その上にカバーシートを載せた後、スピンコートにより接着剤を、被貼り合わせ面とカバーシートとの間に均一になるように広げた後、カバーシート側から紫外線を照射して硬化処理を施すことが好ましい(貼り合わせ法)。
なお、この貼り合わせ法の場合には、芝浦メカトロニクス株式会社等から市販されている光ディスク貼り合わせ装置を用いてもよい
【0052】
紫外線硬化型組成物を硬化させるための紫外線の照射量は、200mJ/cm以上とすることが好ましい。より好ましくは200mJ/cm〜2000mJ/cmの範囲である。
硬化に使用するUVランプとしては、例えば、Xenon Corporation社製4.2inch−SPIRAL LAMPを用いることができる。
また、紫外線照射時のランプ面と被照射面との間の距離は、適宜、設定することが好ましい。
【0053】
通常、バリア層の表面(被貼り合わせ面)に紫外線硬化型組成物が塗布された後は、その積層体(基板上に、光反射層、記録層、バリア層、及び紫外線硬化型組成物の塗膜が設けられたもの)を紫外線照射位置へと移動させる(例えば、スピンテーブルから紫外線照射テーブルへの移動させる)。その移動の際には、積層体の外周部分又は内周部分で基板を保持して持ち上げて移動させることが望ましい。吸着などの方法で塗布面上から積層体を支持して持ち上げると、紫外線硬化型組成物が未硬化であるために積層体が変形したり、硬化膜に気泡が混入したりして、硬化膜の膜厚変動や欠陥の原因となる可能性がある。なお、積層体の外周部を保持して移動する場合においては、保持部材を定期的に清掃することが好ましい。外周部にはスピンコート時に振切られた未硬化の紫外線硬化型組成物が付着していることがあり、それが保持部材に付着することがあるためである。その結果、繰り返し同じ保持部材で積層体を移動すると、保持部材から積層体へと紫外線硬化型組成物が再付着して欠陥を生じる可能性がある。
【0054】
また、紫外線照射位置(例えば紫外線照射テーブル上)では、積層体を保持する部位として、積層体の内周部、外周部、又は中周部などの中から一つの部位、或いは複数の部位が選択される。また、プレート状の保持部材で積層体の全面を均一に支持してもよい。複数の部位を保持する場合には、各々の部位の保持高さを変更することができる。これは、例えば、内周のみを保持した場合に、保持されていない積層体外周部が自重で下に垂れ、その形状で硬化されることで、硬化後の積層体に反りが生じる場合に、積層体の外周部も保持して垂れを抑制することで硬化後の反りを抑制するような場合であり、各保持部材の高さを調整して硬化後の積層体の形状を調整する効果が期待できる。
【0055】
紫外線硬化型組成物の紫外線による硬化処理は、硬化塗膜のゲル分率が90%以上となるように行うことが好ましい。硬化塗膜のゲル分率は、より好ましくは92%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは100%である。
ゲル分率は、硬化の程度を示す指標であり、数値が高いほど硬化が進行していることを示し、90%以上であれば硬化が十分に進行したと判断することができる。ゲル分率は、以下の方法により求めることができる。
硬化処理済みの塗膜からテストピースを切り取り、ゲル分率測定用試料とする。試料の質量(以下、W1と記す)を測定し、W1の100倍の質量のメチルエチルケトン液中に浸漬した後、80℃の加熱炉で8時間加熱し、未硬化成分を溶出させる。加熱終了後、10分以内に溶液の上澄み液を除去し、25℃50%の環境で48時間以上自然乾燥させた後、100℃の加熱炉で3時間加熱乾燥して未硬化成分溶出後のサンプルを得て、未硬化成分溶出後の質量(以下、W2と記す)を測定する。上澄み液は、静置させた状態でスポイトなどを用いて吸取る形で除去することができる。上澄み液は8割〜9割を除去し、残りは自然乾燥、加熱乾燥で揮発させる。上記W1、W2から以下の式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=100−(W1−W2)/W1×100
【0056】
本発明において、紫外線硬化型組成物を硬化してなる硬化膜の膜厚は、カバー層の態様によって、適宜、選択されればよい。
即ち、本発明におけるカバー層が硬化膜のみからなる態様であれば、硬化膜の厚さ=カバー層との厚みとなるため、70μm〜130μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは90μm〜110μmの範囲、更に好ましくは95μm〜105μmの範囲である。
また、本発明におけるカバー層が硬化膜とカバーシートからなる態様であれば、硬化膜の膜厚は、0.1μm〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜50μmの範囲、更に好ましくは1μm〜30μmの範囲である。
【0057】
(カバーシート)
本発明におけるカバー層が硬化膜とカバーシートからなる態様の場合に用いられるカバーシートとしては、透明な材質のフィルムからなるものであれば、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;三酢酸セルロース等を使用することが好ましく、中でも、ポリカーボネート又は三酢酸セルロースを使用することがより好ましい。
なお、「透明」とは、記録及び再生に用いられる光に対して、透過率80%以上であることを意味する。
また、カバーシートを用いた態様のカバー層を形成する際には、該カバーシートを介して紫外線を照射することによって硬化処理が施されるため、カバーシートは紫外線透過性を有するものであることが好ましい。具体的には、紫外線硬化型組成物の硬化のために照射される紫外線に対して80%以上の透過率を有することが好ましい。
【0058】
また、カバーシートは、本発明の効果を妨げない範囲において、種々の添加剤が含有されていてもよい。
例えば、波長400nm以下の光をカットするためのUV吸収剤及び/又は500nm以上の光をカットするための色素が含有されていてもよい。
更に、カバーシートの表面物性としては、表面粗さが2次元粗さパラメータ及び3次元粗さパラメータのいずれも5nm以下であることが好ましい。
また、記録及び再生に用いられる光の集光度の観点から、カバーシートの複屈折は10nm以下であることが好ましい。
【0059】
カバーシートの厚さは、0.01mm〜0.5mmの範囲内であることが好ましく、0.05mm〜0.12mmの範囲であることがより好ましい。
なお、カバーシートと硬化膜との厚みの総和が、前述のカバー層の厚みの範囲にとなるように、適宜、決定されればよい。
【0060】
[基板]
本発明に用いられる基板としては、従来の光情報記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料からなる基板を任意に選択して使用することができる。基板としては、透明な円盤状基板を用いることが好ましい。
基板材料として、具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
前記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
これらの樹脂を用いた場合、射出成型を用いて基板を作製することができる。
また、基板の厚さは、一般に0.7mm〜2mmの範囲であり、0.9mm〜1.6mmの範囲であることが好ましく、1.0mm〜1.3mmとすることがより好ましい。
なお、後述する光反射層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することもできる。
【0061】
基板の記録層が形成される面には、複数のグルーブ及び隣接するグルーブの間に位置するランドからなるプリグルーブ(案内溝)が形成されている。このプリグルーブは以下に示す態様であることが、CD−RやDVD−Rに比べてより高い記録密度を達成するために好ましく、以下に示す態様のプリグルーブは、例えば、本発明の光情報記録媒体を、青紫色レーザーに対応する媒体(Blu−rayディスク)とする場合に好適である。
【0062】
プリグルーブのトラックピッチは、好ましくは50nm〜500nmの範囲である。上限は420nm以下であることがより好ましく、370nm以下であることが更に好ましく、330nm以下であることが特に好ましい。また、下限は、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることが更に好ましく、260nm以上であることが特に好ましい。トラックピッチが50nm以上であれば、プリグルーブを正確に形成することができる上に、クロストークの発生を回避することができ、500nm以下であれば、高密度記録を行うことができる。
特に、プリグルーブのトラックピッチは、100nm〜420nmの範囲であることが好ましく、200nm〜370nmの範囲であることがより好ましく、260nm〜330nmの範囲であることが更に好ましい。
【0063】
プリグルーブの溝幅(半値幅)は、25nm〜250nmの範囲であることが好ましい。上限は240nm以下であることが好ましく、230nm以下であることがより好ましく、220nm以下であることが更に好ましい。また、下限は、50nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。プリグルーブの溝幅が25nm以上であれば、成型時に溝を十分に転写することができ、更に記録時のエラーレート上昇を抑制することができ、250nm以下であれば、同じく成型時に溝を十分に転写することができ、更に記録時に形成されるピットの広がりによりクロストークが発生することを回避することができる。
特に、プリグルーブの溝幅(半値幅)は、50nm〜240nmの範囲であることが好ましく、80nm〜230nmの範囲であることがより好ましく、100nm〜220nmの範囲であることが更に好ましい。
【0064】
プリグルーブの溝深さは、5nm〜150nmの範囲であることが好ましい。上限は85nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが更に好ましい。また、下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、28nm以上であることが更に好ましい。プリグルーブの溝深さが5nm以上であれば十分な記録変調度を得ることができ、150nm以下であれば、高い反射率を得ることができる。
特に、プリグルーブの溝深さは、10nm〜85nmの範囲であることが好ましく、20nm〜80nmの範囲であることがより好ましく、28nm〜75nmの範囲であることが更に好ましい。
【0065】
また、プリグルーブの溝傾斜角度は、上限が80°以下であることが好ましく、75°以下であることがより好ましく、70°以下であることが更に好ましく、65°以下であることが特に好ましい。また、下限は、20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることが更に好ましい。
プリグルーブの溝傾斜角度が20°以上であれば、十分なトラッキングエラー信号振幅を得ることができ、80°以下であれば成型性が良好である。
【0066】
[光反射層]
本発明における光反射層は、銀を主成分とする銀合金からなる層である。
ここで、「銀を主成分とする銀合金」とは、銀の含有量が70質量%以上、好ましくは90質量%以上である合金を意味する。
銀合金中の銀以外の金属は、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Nd等の金属、又は半金属を挙げることができ、中でも、Pd、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Bi、Ndが好ましい。これらの銀以外の金属は、1種単独で用いてもよいし、或いは二種以上であってもよい。
銀合金として、特に好ましくは、Nd、Bi、Pdを含有するものである。
【0067】
本発明における光反射層は、例えば、真空蒸着、スパッタリング、又はイオンプレーティングの各方法を用いて基板上に形成することができる。
光反射層の層厚は、一般的には10nm〜300nmの範囲とし、20nm〜200nmの範囲とすることが好ましい。
なお、前記反射率は、70%以上であることが好ましい。
【0068】
[記録層]
本発明における記録層は、記録用の色素として、有機色素を含有する層である。
ここで、記録層に用いる有機色素としては、フタロシアニン系化合物、アゾ化合物、並びにアゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素、)、トリアジン色素、ベンゾトリアゾール色素、ベンゾオキサゾール色素、アミノブタジエン、アゾメチン色素、ピリドポルフィラジン色素、ピラドポルフィラジン色素、ポルフィリン色素、ポルフィラジン色素が挙げられ、好ましくはフタロシアニン系化合物、アゾ化合物、並びにアゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素、)、トリアジン色素、ベンゾトリアゾール色素が挙げられる。
中でも、前述のカバー層との組み合わせにおいて、特に、短波長レーザー光(好ましくは、波長390nm〜440nmのレーザー光))照射により優れた記録特性を発揮し得るものとして、フタロシアニン系化合物、アゾ化合物、並びにアゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素)が好ましいものとして挙げることができる。
【0069】
有機色素の使用量は、記録層の全質量に対して、例えば、1質量%〜100質量%の範囲であり、好ましくは50質量%〜100質量%、より好ましくは75質量%〜100質量%の範囲である。
記録用の色素としては、前述の有機色素を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
次に記録層の形成について説明する。
記録層は、有機色素を、結合剤等と共に、又は結合剤を用いないで適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、前述の光反射層上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成することができる。
ここで、記録層は、単層でも重層でもよい。塗布液を塗布する工程を複数回行うことにより、重層構造の記録層を形成することができる。
塗布液中の有機色素の濃度は、一般に0.01質量%〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1質量%〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5質量%〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5質量%〜3質量%の範囲である。
【0071】
塗布液の調製に用いる溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、塗布液中には、更に、結合剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等の各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0072】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
塗布の際、塗布液の温度は23℃〜50℃の範囲であることが好ましく、24℃〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、23℃〜38℃の範囲であることが特に好ましい。
【0073】
記録層の厚さは、ランド(基板においての凸部)上で1nm〜100nmの範囲であることが好ましく、グルーブ上で5nm〜150nmの範囲であることが好ましい。ランド上での厚さの上限としては、70nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。また、下限は、5nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。
【0074】
また、記録層の厚さは、グルーブ上(基板においての凹部)で、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
【0075】
更に、ランド上の記録層の厚さとグルーブ上の記録層の厚さの比[(ランド上の記録層の厚さ)/(グルーブ上の記録層の厚さ)]は、0.1以上であることが好ましく、0.13以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.17以上であることが特に好ましい。また、上限としては、1以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.85以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
【0076】
更に、記録層には、記録層の耐光性を向上させるために種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、有機酸化剤や一重項酸素クエンチャーを挙げることができる。
褪色防止剤として用いられる有機酸化剤としては、特開平10−151861号公報に記載されている化合物が好ましい。
また、一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号、同59−81194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同63−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、及び同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁などに記載のものを挙げることができる。
好ましい一重項酸素クエンチャーの例としては、下記の一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。
【0077】
【化2】

【0078】
一般式(I)中、R21は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Qはアニオン
を表す。
【0079】
一般式(I)において、R21は置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、無置換の炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例、F,Cl)、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基)、アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基)、アシル基(例、アセチル基、プロピオニル基)、アシルオキシ基(例、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、アルケニル基(例、ビニル基)、アリール基(例、フェニル基、ナフチル基)を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基が好ましい。Qのアニオンの好ましい例としては、ClO、AsF、BF、及びSbFを挙げることができる。
【0080】
一般式(I)で表される化合物例(化合物番号I−1〜I−8)を下記表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
前記一重項酸素クエンチャーなどの褪色防止剤の使用量は、有機色素の量に対して、通常、0.1質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5質量%〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3質量%〜40質量%の範囲、特に好ましくは5質量%〜25質量%の範囲である。
【0083】
[その他の層]
本発明の光情報記録媒体は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の必須の層に加え、他の任意の層を有していてもよい。
他の任意の層としては、例えば、基板の裏面(記録層が形成された側と逆側の非形成面側)に形成される、所望の画像を有するレーベル層や、光反射層と記録層との間に設けられる界面層、更に、カバー層上に設けられるハードコート層などが挙げられる。
ここで、前記レーベル層は、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱乾燥樹脂などを用いて形成することができる。
また、前記ハードコート層としては、例えば、カバー層上に、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、硬化させることで形成してもよい。
なお、上記した必須及び任意の層はいずれも、単層でも、多層構造でもよい。
【0084】
以上のようにして、案内溝を表面に有する基板上に、光反射層、記録層、バリア層、カバー層、及び必要に応じて、他の任意の層が設けられ、本発明の光情報記録媒体が得られる。
また、本発明の光情報記録媒体では、特定の密度のスパッタリングターゲットを用いて形成されたバリア層を有するため、銅合金からなる光反射層の腐食、及びそれに伴う情報再生時の欠陥増加を抑制することができる。また、カバー層において低Tg化と高接着性との両立が達成されているため、本発明の光情報記録媒体が、短波長レーザー光(特に、好ましくは波長390〜440nmのレーザー光)の照射により情報が記録される際に、良好な記録特性を得ることができる。
そのため、本発明の光情報記録媒体は、短波長レーザー光(特に、好ましくは波長390〜440nmのレーザー光)の照射により情報を記録するために使用されることが好ましい。
更に、前述のように、本発明の光情報記録媒体を構成する各要素は、従来のCD−R、DVD−R等と同様の方法で形成することができるため、製造が容易であるといった利点を有する。
【0085】
<光情報記録方法>
光情報記録媒体に対する情報の記録は、記録層のレーザー光を照射された部分がその光学的特性を変えることによって行われる。光学的特性の変化は、記録層のレーザー光が照射された部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的又は化学的変化(例えば、ピットの生成)を生じることによってもたらされると考えられる。記録層に記録された情報の読み取り(再生)は、例えば、記録用のレーザー光と同様の波長のレーザー光を照射することにより、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部位)と変化しない部位(未記録部位)との反射率等の光学的特性の違いを検出することにより行うことができる。
本発明では、情報の記録は、好ましくは、レーザー光照射により記録に含まれる有機色素が熱分解し、それにより発生した気体によりピット内に空隙が形成されることによって行われる。より好ましくは、記録層中の有機色素がレーザー光を吸収することによって発熱し、それにより生じた熱によって該有機色素中の置換基又は色素骨格が分解して気体を発生する。これにより記録層中に空隙が形成され、また、その空隙が隣接するバリア層及び硬化膜を変形させることで、レーザー光照射により空隙が形成された部分とレーザー光未照射部との間に大きな屈折率差を生じさせることができ、記録特性を高めることができると考えられる。
本発明の光情報記録媒体に照射されるレーザー光の波長は、390nm〜440nmであることが好ましい。
本発明の光情報記録媒体への情報の記録及び再生方法の詳細は後述する。
【0086】
本発明の光情報記録方法は、本発明の光情報記録媒体へ、カバー層側から波長390〜440nmのレーザー光を照射することにより、記録層へ情報を記録する方法である。
情報の記録に、波長390nm〜440nmのレーザー光が用いられ、具体的には、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。好ましい光源としては、390nm〜440(更に好ましくは390nm〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。特に、記録密度の点で390nm〜415nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光を用いることが好ましい。
上記のように記録された情報の再生は、光情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながらレーザー光(好ましくは、情報の記録の際に用いたレーザー光と同様の波長のもの)をカバー層側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0087】
具体的には、光情報記録媒体に対する情報の記録は、例えば、次のように行われる。
まず、光情報記録媒体を一定の線速度(例えば0.5〜10m/秒)、又は一定の角速度にて回転させながら、カバー層側から半導体レーザー光等の記録用のレーザー光を、第一対物レンズ(例えば、開口数NAが0.85)を介して照射する。このレーザー光の照射により、記録層がレーザー光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的又は化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録されると考えられる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
[光情報記録媒体の作製]
射出成形にて、ポリカーボネート樹脂を、スパイラル状のプリグルーブ(深さ40nm、溝幅180nm、トラックピッチ0.32μm)を有する厚さ1.1mm、直径120mmの基板に成形した。
続いて、基板のプリグルーブが設けられている面に対し、銀合金ターゲットGD02(株式会社コベルコ科研製、銀98.7質量%含有)を、スパッタリング装置Cube(OC Oerlikon Holdings AG製)にてスパッタリングし膜厚50nmの光反射層を形成した。
その後、下記式(a)で示されるアゾ金属錯体(色素A)0.7gを2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(ダイキン工業株式会社製)100mlに溶解した塗布液を調整し、この塗布液をスピンコート法により上記基板の反射層上に塗布して、溝部(グルーブ上)の膜厚16nmの記録層を形成した。
【0090】
続いて、バリア層ターゲットNS−2(日鉱金属株式会社製)を用い、スパッタリング装置Cube(OC Oerlikon Holdings AG製)にて、DCパワー2kW、スパッタリングガスとしてArを用い、流量5sccm、チャンバー内圧力0.2Paの条件にてスパッタリングし、記録層上に膜厚20nmのバリア層を形成した。
その後、得られたバリア層上に、2−エチルヘキシルアクリレート56質量%、脂肪族ウレタンアクリレートEBECRYL230(ダイセルサイテック株式会社製)40質量%、IRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物を用いて、光ディスク貼り合わせ装置(芝浦メカトロニクス株式会社製)にて、厚さ92μmのポリカーボネートシートであるパンライト(帝人化成株式会社製)と貼りあわせた後、このポリカーボネートシート側から紫外線を照射した。これにより、厚さ100μmのカバー層を形成した。
更に、カバー層上に、ハードコート樹脂(TDK株式会社製)をポリカーボネートシート上に、乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布し、その後、紫外線を照射し硬化させた。
以上のようにして、実施例1の光情報記録媒体を得た。
【0091】
【化3】

【0092】
[光情報記録媒体の評価1]
得られた実施例1の光情報記録媒体に対し、光ディスク記録再生装置DDU−1000及びマルチシグナルジェネレータ(パルステック株式会社製、レーザー波長:405nm、対物レンズ開口数:0.85)を用いて、線速度を4.92m/sとして、Blu−Ray規格に準拠した1−7pp変調信号を記録した。DDU−1000の波形等化後の出力信号及びクロック信号出力、並びにタイムインターバルアナライザーTA520(横河電機株式会社製)を用い、記録トラックのData To Clock Jitterを、波形等化後の出力信号のポジティブエッジ(Leadingエッジ)、及びネガティブエッジ(Trailingエッジ)の双方について測定した。
【0093】
(高温高湿下での保存)
得られた実施例1の光情報記録媒体を、恒温槽PR−3K(エスペック株式会社製)に入れ、60℃90%RH環境下で168時間放置した。
【0094】
[光情報記録媒体の評価2]
上記の条件で高温高湿保存した後の光情報記録媒体を、光ディスク記録再生装置DDU−1000及びマルチシグナルジェネレータ(パルステック株式会社製、レーザー波長:405nm、対物レンズ開口数:0.85)を用いて、線速度を4.92m/sとして、Blu−Ray規格に準拠した1−7pp変調信号を記録した。
記録トラックのR−SERをDDU−1000にて測定した。その後、同トラックを20分間(約23000回)、DDU−1000にてレーザーパワー0.3mWにて連続再生し、その後、再度R−SERを測定した。
【0095】
上記の評価の結果、高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0096】
(実施例2)
実施例1において、記録層を形成する際に用いた「式(a)で示されるアゾ金属錯体(色素A)」を、「下記式(2)で示されるアゾ金属錯体(色素B)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0097】
【化4】

【0098】
(実施例3)
実施例1において、バリア層を形成する際に用いたスパッタリングターゲット「NS−2」を、NS−2N(日鉱金属株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した
【0099】
(実施例4)
実施例3において、記録層を形成する際に用いた「式(a)で示されるアゾ金属錯体(色素A)」を、「前記式(2)で示されるアゾ金属錯体(色素B)」に代えた以外は、実施例3と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0100】
(実施例5)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「2−エチルヘキシルアクリレート56質量%、ウレタンアクリレートUN−7700(根上工業株式会社製)40質量%、IRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0101】
(実施例6)
実施例2において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「紫外線硬化樹脂として、2−エチルヘキシルアクリレート56質量%、ウレタンアクリレートUN−7700(根上工業株式会社製)40質量%、IRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例2と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した
【0102】
(実施例7)
実施例3において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「紫外線硬化樹脂として、2−エチルヘキシルアクリレート56質量%、ウレタンアクリレートUN−7700(根上工業株式会社製)40質量%、IRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例3と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した
【0103】
(実施例8)
実施例4において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「2−エチルヘキシルアクリレート56質量%、ウレタンアクリレートUN−7700(根上工業株式会社製)40質量%、IRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例4と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0104】
(実施例9)
実施例1において、バリア層の膜厚を10nmに代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0105】
(実施例10)
実施例1において、バリア層の膜厚を30nmに代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0106】
(実施例11)
実施例3において、バリア層の膜厚を30nmに代えた以外は、実施例3と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0107】
(実施例12)
実施例3において、バリア層の膜厚を30nmに代えた以外は、実施例3と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して増加が見られず、規格(≦2.0×10−4)を満足した。
【0108】
(比較例1)
実施例1において、バリア層を形成する際に用いたスパッタリングターゲット「NS−2」を、Nb(株式会社豊島製作所製)とした以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して大幅に増加し、規格(≦2.0×10−4)を外れた。
【0109】
(比較例2)
実施例2において、バリア層を形成する際に用いたスパッタリングターゲット「NS−2」を、バリア層ターゲットをNb(株式会社豊島製作所製)に代えた以外は、実施例2と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して大幅に増加し、規格(≦2.0×10−4)を外れた。
【0110】
(比較例3)
比較例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「2−エチルヘキシルアクリレート56質量%、ウレタンアクリレートUN−7700(根上工業株式会社製)40質量%、IRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、比較例1と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して大幅に増加し、規格(≦2.0×10−4)を外れた。
【0111】
(比較例4)
比較例2において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「2−エチルヘキシルアクリレート56質量%、ウレタンアクリレートUN−7700(根上工業株式会社製)40質量%、IRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、比較例2と同様にして、光情報記録媒体を作製し、評価を実施した。
高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitterは規格(≦7%)を満足し、良好な記録特性が得られた。また、高温高湿保存後の光情報記録媒体における20分再生後のR−SERは、記録直後に測定したR−SERに対して大幅に増加し、規格(≦2.0×10−4)を外れた。
【0112】
前述の各実施例及び比較例において、カバー層の形成に用いたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、バリア層の形成に用いたスパッタリングターゲットの種類、その組成、及び密度、並びに、記録層に用いた有機色素の種類については、下記表2にまとめて記した。
また、各実施例及び比較例の光情報記録媒体の評価結果、即ち、高温高湿保存前の光情報記録媒体におけるLeading Jitter及びTrailing Jitter、高温高湿保存後の光情報記録媒体における初期のR−SER、及び20分再生後のR−SERの数値も、下記表2に示した。
【0113】
【表2】

【0114】
上記表2に明らかなように、実施例1〜12の光情報記録媒体は、初期のR−SERの数値と20分再生後のR−SERの数値との間に変化がないことが分かる。この結果から、情報再生の経時劣化が抑制されていることが分かり、情報の再生時に記録層中で欠陥が増加することが防止されているものと推測することができる。また、実施例1〜12の光情報記録媒体は、Leading Jitter及びTrailing Jitterの数値から、記録特性が良好であることも分かる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の光情報記録媒体は、短波長レーザー光を照射することにより情報を記録するためのBlu−ray方式の光情報記録媒体として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内溝を表面に有する基板の該表面上に、
銀を主成分とする銀合金からなる光反射層と、
有機色素を含有する記録層と、
密度が5.8g/cm以上12.0g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により形成されてなるバリア層と、
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層と、
をこの順に有する光情報記録媒体。
【請求項2】
前記バリア層の形成に用いるスパッタリングターゲットがSnOを40質量%以上含む請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
前記バリア層の膜厚が10nm〜30nmである請求項1又は請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
前記案内溝のトラックピッチが50nm〜500nmの範囲である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
波長390nm〜440nmのレーザー光の照射により情報を記録するために使用される請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
案内溝を表面に有する基板の該表面上に、銀を主成分とする銀合金からなる光反射層を形成する工程と、
該光反射層上に有機色素を含有する記録層を形成する工程と、
該記録層上に、密度が5.8g/cm以上12.0g/cm以下であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法によりバリア層を形成する工程と、
該バリア層上に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する紫外線硬化型組成物を硬化させて硬化膜を形成して、該硬化膜を含むカバー層を形成する工程と、
を有する光情報記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記バリア層の形成に用いるスパッタリングターゲットがSnOを40質量%以上含む請求項6に記載の光情報記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2010−86576(P2010−86576A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252602(P2008−252602)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】