説明

光感作剤及び皮膚浸透エンハンサーを含有する組成物並びに光力学療法におけるそれらの使用

【課題】本発明は、皮膚に対する局所の塗布に適した安定な光感作剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、光感作剤及び皮膚浸透エンハンサーを含有する組成物を提供する。本出願における組成物では、角質層を介した光感作剤の送達が改善されている。加えて、本発明の組成物では、安定性が改善され、及び、皮膚光感受性の影響が低下されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光感作剤(photosensitizing agent)を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光力学療法(photodynamic therapy; PDT)は、多様な分野における医療である。一般に、PDTは、標的組織に対して光感作剤(photosensitizer)を送達すること、及び引き続いて該光感作剤を活性化させるために適当な波長の光を標的部位に照射することを含む。この活性化により、薬剤は標的組織を変性又は破壊する。光感作剤は、局所的に送達するために提案されたが、たいてい全身に送達される。
【0003】
局所の送達では、光感作剤が標的組織に対して直接送達され、その結果として、標的組織中に薬剤を高い濃度で与えることができるという利点がある。しかしながら、局所の送達には、いくつかの不利益もある。光感作剤は角質層の透過が容易ではない。加えて、光感作剤は、比較的に反応性であるので、安定な組成物を形成することは困難である。
【0004】
記載時に、局所用のPDTとして販売される一つの製品は、Levulan(登録商標)Kerastick(登録商標)である。これは、顔又は頭皮上の非過角化光線性角化症病斑(non-hyperkeratotic actinic keratosis lesion)の治療のために使用される。この製品中の光感作剤はプロドラッグであり、生体内原位置(in situ)において活性状態に転換される。製品は二つの封止されたガラスアンプルを含むプラスチックアプリケーターチューブに供給される。一方のアンプルは賦形剤として作用する溶液を含み、他方のアンプルは乾燥固体として光感作剤を含む。アプリケーターチューブは、保護厚紙スリーブ及びキャップ中に封入される。適用(塗布)直前に、二つのアンプルは砕かれ、溶液は光感作剤と混合される。そのとき内容物は、薬剤が溶解するまで数分間振り混ぜられる。溶解した薬剤を含む溶液は、製品の安定性が短いため、混合後2時間で廃棄されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって皮膚に対する局所の塗布に適した安定な光感作剤組成物が求められている。
【0006】
局所用の光感作剤組成物は皮膚光感受性作用を起こすことも見出された。加えて、多くの場合、角質層は、透過することが困難であるから、目的の標的組織に対して光感作剤を送達することについて問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光感作剤及び少なくとも一つの皮膚浸透エンハンサーを含有する組成物に関する。本出願における組成物は、角質層を介した光感作剤の改善された送達作用を示す。加えて、本発明の組成物では、安定性が改善されている。
【0008】
本発明の光感作剤は、角質層を浸透(透過)することが可能である。その結果、光エネルギーが加えられるときには、光感作剤は表面というよりはむしろ標的組織で活性化される。このことは、その組成物がより効果的であるということを意味する。加えて、驚いたことに、本発明の組成物を用いるときには、光の照射により実質的な皮膚光感受性が起きないことを見出した。理論によって縛られることを望まないが、真皮中というよりはむしろ表皮に対して行き渡るという事実が、皮膚光感受性がより少ないということを意味すると考えられる。
【0009】
特に指定する場合を除き、全ての参照した文献は、参照により本出願に組み込まれる。
【0010】
特に指定する場合を除き、本出願における全ての百分率は、重量%で表現される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、光感作剤及び皮膚浸透エンハンサーを含有する組成物を提供する。これらの要素について、以下に詳細に説明する。
【0012】
本発明の組成物は、好ましくは実質的に水が無い状態にある。本出願において使用されている用語「実質的に水が無い」とは、組成物が約5重量%未満、好ましくは約3重量%未満の遊離水を含むということを意味する。本出願における組成物では、全水分(水和物のいくつかの水を加えた遊離水)が約15%より多くないことが好ましく、約10%未満であることがより好ましい。
【0013】
[光感作剤]
いくつかの適当な光感作剤を本出願において使用してもよい。一般に、これらは400nm〜800nm、多くの場合600nm〜750nmの範囲内の光を吸収するであろう。
【0014】
本出願において使用されている「光感作剤("photosensitizer"又は"photosensitizing agent")」は、選択した標的組織に蓄積され、光と接触したときに、光を吸収し、標的に対する変化、又はその破壊を誘発させる化合物を意味する。実質的には、標的細胞又は組織により吸収されうる、光を吸収する化合物であれば本発明において使用することができる。投与された動物に対して無毒であるか、又は無毒な組成で処方されうる化合物が、好ましい。光によって分解された形態の化合物も無毒であり、好ましい。感光性の化学物質の一覧表が、Kreimer-Birnbaum, Sem. Hematol. 26:157-73(1989)(参照により本出願に組み込まれる)並びにRedmond、Gamlin, Photochem. Photbiol. 70(4): 391-475(1999)に見出されるであろう。
【0015】
本発明の好ましい形態において、光感作剤は、米国特許第5171749号(参照により本出願に組み込まれる)において詳細に記載されるグリーンポルフィリン(green porphyrins)として知られる光感作剤の特に効力のある群から選択される。用語「グリーンポルフィリン」とは、モノヒドロベンゾポルフィリンを得るためのDiels-Alder型反応においてポルフィリン核をアルキンと反応させることによって得られるポルフィリン誘導体をいう。そのような結果として生ずるマクロピロール化合物はベンゾポルフィリン誘導体(benzoporphyrin derivatives;BPDs)と呼ばれ、米国特許第5171749号に示されるうように、種々の構造類似物を有するクロリン様合成ポルフィリンである。一般的には、グリーンポルフィリンは、プロトポルフィリン−IX環系(環A及びB)において存在する2つの共役した非芳香族性ジエン構造のうちで唯一つの部位での反応を促進する条件下で、プロトポルフィリンとアセチレン誘導体とのDiels-Alder反応によって得られるテトラピロールポルフィリン誘導体の群から選択される。環系の中心における一つ又は二つの水素原子を金属カチオンに置換したGpの金属化した形態もまた本発明の実施に使用してもよい。本発明において有用なグリーンポルフィリン化合物の調製が、米国特許第5095030号(参照により本出願に組み込まれる)に詳細に記載される。
【0016】
好ましくは、BPDは、ベンゾポルフィリン誘導体ジエステルジアシッド(benzoporphyrin derivatives diester di-acid;BPD-DA)、ベンゾポルフィリン誘導体ジエステルモノアシッド環A(benzoporphyrin derivatives diester mono-acid ring A;BPD-MA)、ベンゾポルフィリン誘導体ジエステルモノアシッド環B(benzoporphyrin derivatives diester mono-acid ring B;BPD-MB)又はこれらの混合物である。これらの化合物は、約692nmの波長で光を吸収し、改善された組織浸透特性を有する。C環カルバルコキシエチル(carbalkoxyethyl)又はD環カルバルコキシエチルのみが加水分解された式BPD−MA及びBPD−MBの化合物は均質であってもよく、或いはC及びD環置換基加水分解物の混合物であってもよい。多数の他のBPD B−環誘導体を本発明の方法において使用してもよい。これらの誘導体は、下記一般式を有する:
【0017】

【0018】
但し;Rはビニル、R及びRはメチルであり、並びにnは2である。X、X及びXは下記表に列挙される:
【0019】
表1 親水性BPD B−環類似体

【0020】
表2 脂肪親和性BPD B−環類似体

【0021】
好ましい光感作剤は、ベンゾポルフィリン誘導体モノアシド(BPD−MA)、QLT0074(米国特許第5929105号において示される)としても知られるEA6、及びB3(米国特許第5990149号において示される)である。BPD−MAは、例えば、脂肪親和性であり、効力のある(強力な)光感作剤である。EA6及びB3は下記構造を有する:
【0022】

【0023】

【0024】
但し;Rはビニル、R及びRはメチルであり、並びにnは0、1、2又は3である。好ましくは、nは2である。
【0025】
加えて、本発明において使用される光感作剤を、ターゲッティングを容易にする種々のリガンドと結合させてもよい。これらのリガンドには、受容体特異的リガンドのみならず、免疫グロブリン及びフラグメント(断片)が含まれる。好ましいリガンドには、一般に抗体及びモノクローナル抗体、加えてそれら両方の免疫反応性フラグメントが含まれる。
【0026】
グリーンポルフィリンの二量体の形態、及びグリーンポルフィリン/ポルフィリンの二量体又は多量体(多重結合体)の形態を使用することができる。本発明の二量体及びオリゴマー化合物を、ポルフィリンそれ自体の二量化及び低重合のための反応と類似の反応を用いて調製することができる。グリーンポルフィリン又はグリーンポルフィリン/ポルフィリン結合を直接生じさせることができ、或いはポルフィリンを結合させ、次いでどちらかの又は双方の末端ポルフィリンを対応するグリーンポルフィリンに転換する末端ポルフィリンのDiels-Alder反応をさせてもよい。本発明の実施においては、当然、2又はそれ以上の光感作剤の組み合わせを使用してもよい。
【0027】
上記説明した好ましい光感作剤に加え、本発明において有用な光感作剤のその他の例には、米国特許第5283255号、第4920143号、第4883790号、第5095030号及び第5171749号において開示されるグリーンポルフィリン;並びに米国特許第5880145号及び第5990149号において論ぜられるグリーンポルフィリン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。化合物の製造のための詳細な説明も提供する上記引用した特許において、典型的なグリーンポルフィリンのいくつかの構造が、示される。
【0028】
本出願における光感作剤の使用量は、PSの特定のタイプ及び活性エネルギー源のタイプ等種々の要因に依存するであろう。しかしながら、本出願における組成物は、重量で、好ましくは約0.0001%〜約50%、より好ましくは約0.001%〜約5%、更に好ましくは約0.1%〜約2%、最も好ましくは約0.1%〜約1%の光感作剤を含む。
【0029】
[皮膚浸透エンハンサー(skin-penetration enhancer)]
本発明の組成物は、皮膚浸透エンハンサーを含まなければならない。本明細書において使用されている用語「皮膚浸透エンハンサー(skin-penetration enhancer)」とは、皮膚の角質層(Stratum Corneum)を介した光感作剤の送達の助けになる物質又は物質の混合物を意味する。
【0030】
光感作剤の送達を助けることに適したいくつかの皮膚浸透エンハンサーを本発明において使用することができる。皮膚浸透エンハンサーの一覧表が、Walters, K.A.編;Hadgraft, J.,編“Pharmaceutical Skin Penetration Enhancement”New York, N.Y.Marcel Dekker(1993)及びOsbourne, D.W.“Skin Penetration Enhancers cited in the Technical Literature” Pharmaceutical Technology, pp 59-65, November 1997(双方とも参照により本出願に組み込まれる)に見出すことができる。本出願における組成中に使用するために非常に好ましいのは、疎水性皮膚浸透エンハンサーである。
【0031】
好ましくは、皮膚浸透エンハンサーは、グリコールエーテル類、脂肪酸、脂肪酸エステル類、グリコールエステル類、グリセリド類、アゾン類(azones)、ポリソルベート類、アルコール類、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合物から選択される。
【0032】
本出願において使用する好ましい皮膚浸透エンハンサーには、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標))、オレイルアルコール(Oleyl alcohol)、オレイン酸(Oleic acid)、アゾン(Azone)(ラウロカプラム(Laurocapram)又は1-n-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(1-n-Dodecyl azacycloheptan-2-one))、脂肪及び脂肪酸のプロピレングリコールモノ−及びジ−エステル(Propylene glycol mono- and diesters)(例えば、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート)、トリグリセリド類(Triglycerides)及び脂質(例えば、リノール酸)、マクロゴールグリセリド類(Macrogolglycerides)又はポリエチレングリコールグリセリド類(Polyethylene glycol glycerides)及び脂肪族エステル類(例えば、ステアロイルマクロゴールグリセリド、オレオイルマクロゴールグリセリド、ラウロイルマクロゴールグリセリド、オレイルマクロゴール-6-グリセリド、ラウロイルマクロゴール-6グリセリド)、ポリエチレングリコールのグリセリド類及び脂肪酸エステル類(例えば、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、カプリル−カプロイルマクロゴールグリセリド、オレオイルマクロゴールグリセリド)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Polyoxyl 40 Hydrogenated Castor Oil)、ポリソルベート80(Polysorbate 80;Tween 80)、ドデシルアザシクロヘプタノン(Dodecylazacycloheptanone)、米国特許第4,861,764号に記載されたようなSEPA(登録商標)(例えば、2-n-ノニル-1,3-ジオキソラン(2-n-nonyl-1,3-dioxolane))、並びにこれらの混合物が含まれるが、それらに制限されない。
【0033】
最も好ましいのは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名TranscutolでGattefosseから入手できる)である。
【0034】
本出願における組成物は、重量で、好ましくは約0.1%〜約99%、より好ましくは約0.1%〜約90%、更に好ましくは約5%〜約90%、最も好ましくは約15%〜約75%の皮膚浸透エンハンサーを含む。
【0035】
光感作剤と皮膚浸透エンハンサーとの比は、全組成の重量パーセントに基づいて、好ましくは約1:20から約1:10000まで、より好ましくは約1:60から約1:300までである。
【0036】
本発明の組成物は、20℃で、好ましくは約50cps〜約50000cps、より好ましくは約500cps〜約40000cps、更に好ましくは約5000cps〜約30000cpsの粘度を有する。
【0037】
[溶解補助剤]
本出願における組成物は、溶解補助剤を含むことが好ましい。このことは、光感作剤が疎水性である場合に特に適当である。溶解補助剤の中にも浸透エンハンサーであるものがある。本出願における組成物は、光感作剤用の溶解補助剤でもある浸透エンハンサーを含むことが好ましい。
【0038】
好ましくは、溶解補助剤は、グリコールエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体、プロピレングリコール、プロピレングリコール誘導体、脂肪族アルコール類、芳香族アルコール類、プロピレングリコール、グリセロール類、油類、界面活性剤、グルコシド類、及びこれらの混合物から選択される。
【0039】
より好ましくは、溶解補助剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標))、平均分子量100〜5000のポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、セプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、プロピレングリコール、脂肪及び脂肪酸のプロピレングリコールモノ−及びジ−エステル類(propylene glycol mono- and diesters)(例えば、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート)、ベンジルアルコール、グリセロール、オレイルアルコール、鉱油、ラノリン/ラノリン誘導体、皮膚への塗布に適したワセリン(petrolatum)又は他の石油製品、脂肪及び脂肪酸のプロピレングリコールモノ−及びジ−エステル類、マクロゴール類、マクロゴールグリセリド類(macrogolglycerides)又はポリエチレングリコールグリセリド類(polyethylene glycol glycerides)及び脂肪族エステル類(例えば、ステアロイルマクロゴールグリセリド、オレオイルマクロゴールグリセリド、ラウロイルマクロゴールグリセリド、リノーレオイルマクロゴールグリセリド)、エトキシル化したヒマシ油(例えば、クレモフォル−ポリオキシル硬化ヒマシ油(Cremophor-a polyoxyl hydrogenated caster oil))、C6-C30のトリグリセリド類、天然油類、グルコシド類(例えば、セテアリルグルコシド(cetearyl glucoside))、界面活性剤、並びにこれらの混合物から選択される。
【0040】
更に好ましい溶解補助剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標))、PEG−200、オレイルアルコール、及びこれらの混合物から選択される。
【0041】
本出願における組成物は、重量で、好ましくは約0.1%〜約99%、より好ましくは約1%〜約75%の溶解補助剤を含む。
【0042】
[粘度改良剤(Viscosity Modifying Agents)]
本出願における組成物は、好ましくは粘度改良剤を含む。好ましくは、粘度改良剤は、ポリエチレングリコール、アクリル酸ベースポリマー(カーボポルポリマー又はカーボマー)、アリルスクロース又はアリルペンタエリトリトールと架橋したアクリル酸ポリマー(カーボポルホモポリマー)、長鎖(C10−C30)アルキルアクリレートにより修飾され及びアリルペンタエリトリトールと架橋したアクリル酸ポリマー(カーボポルコポリマー)、プルロニクス(pluronics)としても知られるポロキサマー(poloxamers)(ブロックポリマー;例えば、Poloxamer 124、188、237、338、407)、ロウ類(パラフィン、グリセリルモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノステアレート、グリコールステアレート)、硬質脂肪(hard fats)(例えば、飽和C8-C18脂肪酸グリセリド)、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、固体アルコール類、並びにこれらの混合物から選択される。より好ましくは、粘度改良剤は、高分子量ポリエチレングリコールから選択され、特にPEG−3350が好ましい。
【0043】
[任意成分]
本出願における組成物は、種々の任意成分を含んでもよい。いくつかの適当な成分を使用してもよいが、一般に、これらの任意成分が組成物をより化粧用に良好なものとし又は補助的な用法で利益をもたらすであろう。好ましい任意成分のいくつかの例には、乳化剤、希釈剤、緩和剤、界面活性剤、油類、ロウ類、脂肪族アルコール類、分散剤、皮膚用薬剤(skin-benefit agent)、pH調整剤、染料/色素、鎮痛剤、香料、防腐剤、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0044】
適当な防腐剤の例には、パラベン類、ベンジルアルコール、クオータニウム15(quaternium 15)、イミダゾリジル尿素、EDTA二ナトリウム、メチルイソチアゾリン、アルコール類、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。適当な乳化剤の例には、ロウ類、ソルビタンエステル類、ポリソルベート類、エトキシル化したヒマシ油、エトキシル化した脂肪族アルコール類、マクロゴールグリセリド類又はポリエチレングリコールグリセリド類及び脂肪族エステル類(例えば、ステアロイルマクロゴールグリセリド類、オレオイルマクロゴールグリセリド類、ラウロイルマクロゴールグリセリド類)、飽和脂肪酸のエステル類(例えば、ジエチレングリコールパルミトステアレート)、セトステアリルエーテル(cetostearyl ether)のマクロゴール類(例えば、マクロゴール−6−セトステアリルエーテル)、高分子量のポリマー、架橋したアクリル酸−ベースポリマー(カーボポル若しくはカーボマー)、並びにこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。適当な緩和剤の例には、プロピレングリコールジペラルゴネート、2−オクチルドデシルミリステート、非極性エステル類、トリグリセリド類及びエステル類(動物及び植物油)、ラノリン、ラノリン誘導体、コレステロール、グルコシド類(例えば、セテアリルグルコシド)、ペギル化したラノリン(pegylated lanolin)、エトキシル化したグリセリド類、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。適当な界面活性剤の例には、ソルビタンエステル類、ポリソルベート類、サルコシネート類、タウレート、エトキシル化したヒマシ油、エトキシル化した脂肪族アルコール類、エトキシル化したグリセリド類、カプリロカプリルマクロゴール−8グリセリド類、ポリグリセリル−6ジオレアート、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。適当な油類の例には、プロピレングリコールモノカプリレート、中鎖トリグリセリド類(medium chain trigrycerides;MCT)、2−オクチル-ドデシルミリステート、セテアリルエチルヘキサノエート、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。適当な脂肪族アルコール類の例には、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0045】
また、本出願における組成物において有用なものは、脂質及びトリグリセリド類(例えば、種子油脂(Seed Oil Lipids)の濃縮物、魚油脂(Marine Oil Lipids)の濃縮物、高純度トリグリセリド類及びエステル類)、硫酸アルキルエーテル、アルキルポリグリコシド類、アルキルスルフェート類、両性クリームベース(amphoterics cream bases)、及びこれらの混合物である。
【0046】
本発明の好ましい形態として、グリーンポルフィリン光感作剤、PEG200、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標))等の低分子量PEG、PEG3350等の高分子量PEG及びオレイルアルコール等の脂肪族アルコールが含まれる。理論によって縛られることを望まないが、PEG3350は粘度改良剤として作用する一方、Transcutol、PEG200、及びオレイルアルコールは角質層を介して光感作剤を送達するために作用すると考えられる。
【0047】
[使用方法]
本発明はまた前記記載した組成物を使用する方法にも関する。当該方法は下記を含む:
(i)光感作剤と、皮膚浸透エンハンサーを含む担体とを含有する組成物を皮膚に塗布
すること、
(ii)前記光感作剤の少なくとも一部について、角質層を介して浸透させるための時間
を見込むこと、
(iii)前記組成物が塗布された皮膚を洗浄すること、並びに
(iv)前記光感作剤を活性化させるために適当な波長で活性化エネルギーを照射するこ
と。
【0048】
前記洗浄工程を、いくつかの適当な物質で行うことができる。
【0049】
前記洗浄工程を、担体成分の少なくとも1つを含む組成物を用いて行うことができる。洗浄組成物は、好ましくは2又はそれ以上の、より好ましくは全ての担体成分を含む。洗浄組成物における成分の水準は、担体におけるものと同一又は類似の水準であることが好ましい。
【0050】
理論によって縛られることを望まないが、前記洗浄工程は、活性化エネルギーが標的に達することを防いで標的を別な方法で覆うかもしれない過剰な光感作剤を取り除くと考えられる。担体と類似する組成物の利用は、濃度勾配の作成により光感作組成物の浸透について助けると考えられる。
【0051】
[プロセス]
本発明の組成物を、いくつかの適当なプロセスによって製造することができる。好ましくは、光感作剤は凍結乾燥される。本発明の組成物の製造のための好ましいプロセスは、下記工程を含む:
a)凍結乾燥した光感作剤の調製、
b)皮膚浸透エンハンサー及び、任意に溶解補助剤を含むベース組成物の製造、並びに
c)撹拌しながらのベース組成物への光感作剤の添加。
【0052】
代替のプロセスにおいて、光感作剤は、まず加熱したまま溶解補助剤に溶解される。上述したように、溶解補助剤は皮膚浸透エンハンサーでもあることが好ましい。冷却後、いくつかの残存成分が添加される。
【0053】
[治療方法]
本発明の組成物を、育毛を促進するために使用してもよい。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用(塗布)すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【0054】
本発明の組成物を雄性発生脱毛症の治療のために使用することができる。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【0055】
本発明の組成物を円形脱毛症の治療のために使用することができる。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【0056】
本発明の組成物を皮膚癌の治療のために使用することができる。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【0057】
本発明の組成物を座瘡の治療のために使用することができる。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【0058】
本発明の組成物を乾癬の治療のために使用することができる。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【0059】
本発明の組成物をアトピー性皮膚炎の治療のために使用することができる。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【0060】
本発明の組成物を子宮内膜剥離の治療のために使用することができる。本発明の方法は、本発明の組成物を適当な標的に対して適用すること及び光感作剤を活性化することを含む。一般に、約0.1g〜約50g、好ましくは約1g〜約10g、の組成物が標的に対して適用される。活性化エネルギーを適当なエネルギー源からのものにすることができる。
【実施例】
【0061】
本発明の下記の形態は、可能な応用又は原理の一部の実例となることを意味することが理解されるであろう。本発明の真意及び目的からはずれない限り、種々の改良が、当業者によってなされてもよい。
【0062】
表3


Gattefosse Canada社(Baie D'Urfe, Quebec、 H9X 2T3、 Canada)から入手可能なジエチレングリコールモノエチルエーテル
【0063】
上記組成物は、下記方法で調製された:
a)凍結乾燥した光感作剤の調製
QLT0074を氷酢酸に溶解した。その後、溶液をドライアイス/イソプロパノール浴中で凍結させ、酢酸を凍結乾燥により除去した。結果として生じた物質は、容易に局所用溶液に溶解する微細な軽い粉末であった。
b)ベースの製造
PEG200を撹拌しながら80〜90℃まで温めた。PEG3.35Kを撹拌しながら加え、次いでオレイルアルコールを加えた。そのときそこでtranscutol(登録商標)を与えた。撹拌は、溶液が透き通るまで続けられた。
c)光感作剤の添加
ベース組成物を約50℃まで冷却し、光感作剤を撹拌しながら加えた。撹拌は均一なペーストが得られるまで冷却しながら続けられた。結果として生じた調製物について、位相差顕微鏡により溶解していない光感作剤の結晶の不在を確認した。
【0064】
実施例1〜3では角質層を介したQLT0074の良好な浸透性が示されたが、一方、比較例では示されなかったことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)光感作剤、
b)皮膚浸透エンハンサー
を、含有する組成物。
【請求項2】
前記光感作剤は、ポリピロール大環状物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記光感作剤は、グリーンポルフィリンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記光感作剤は、0.0001%〜50%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記皮膚浸透エンハンサーは、グリコールエーテル類、脂肪酸、脂肪酸エステル類、グリコールエステル類、グリセリド類、アゾン類(azones)、ポリソルベート類、アルコール類、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記皮膚浸透エンハンサーは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、平均分子量200〜4000のポリエチレングリコール、オレイルアルコール、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記皮膚浸透エンハンサーは、0.1%〜90%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記皮膚浸透エンハンサーは、光感作剤用の溶解補助剤でもある、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ジエチレングリコールモノエチルエーテル、平均分子量200〜4000のポリエチレングリコール、オレイルアルコール、及びこれらの混合物から選択される溶解補助剤を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
20℃で凡そ50cps〜凡そ50000cpsの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
グリーンポルフィリン光感作剤、低分子量ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、高分子量ポリエチレングリコール、及び脂肪族アルコールを含有する組成物。
【請求項12】
光力学療法の目的として皮膚に対して塗布するための、請求項1〜11の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
雄性発生脱毛症、円形脱毛症、皮膚癌、座瘡、乾癬、アトピー性皮膚炎、子宮内膜剥離の光力学治療のため又は育毛を促進するための、請求項1〜11の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
雄性発生脱毛症、皮膚癌、若しくは座瘡を治療し、又は育毛を促進するための方法であって、
請求項1〜11の何れか一項に記載の組成物を標的組織に対して適用すること、及び標的組織に光感作剤を活性化するために適当な波長の活性化エネルギーを照射することを含む方法。
【請求項15】
(i)光感作剤と、皮膚浸透エンハンサーを含む担体とを含有する組成物を皮膚に塗布
すること、
(ii)前記光感作剤の少なくとも一部について、角質層を介して浸透させるための時間
を見込むこと、
(iii)前記組成物が塗布された皮膚を洗浄すること、及び
(iv)前記光感作剤を活性化させるために適当な波長で活性化エネルギーを照射すること、を含む光力学療法。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物の製造プロセスであって、
(a)凍結乾燥した光感作剤を調製すること、
(b)皮膚浸透エンハンサー及び、任意に溶解補助剤を含むベース組成物を製造すること、並びに
(c)撹拌しながらベース組成物へ凍結乾燥した光感作剤を添加すること
を含むプロセス。

【公開番号】特開2010−77164(P2010−77164A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6521(P2010−6521)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願2003−541888(P2003−541888)の分割
【原出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(502254176)キュー エル ティー インク. (13)
【氏名又は名称原語表記】QLT Inc.
【住所又は居所原語表記】887 Great Northern Way, Vancouver,British Columbia, Canada V5T 4T5
【Fターム(参考)】