説明

光検出装置および紙葉類処理装置

【課題】温度環境や経年変化による励起光照射用光源の光強度変動や受光手段の感度変動等の変動要因を排除し、常に安定した残光検出あるいは蛍光・残光検出が可能となる光検出装置および紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】搬送される紙葉類P上に蛍光物質で印刷された蛍光印刷情報からの蛍光および燐光物質で印刷された燐光印刷情報からの残光を検出する光検出装置において、蛍光検出位置13から残光検出位置14にかけて存在し、紙葉類Pが存在しない状態で励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板15を設け、蛍光を検出するラインイメージセンサ16の出力信号および残光を検出するラインイメージセンサ18の出力信号を、前記基準板15から放射される光の検出信号に基づき補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、搬送される銀行券やその外の有価証券等の紙葉類上に印刷された蛍光印刷情報(第1の印刷情報)からの蛍光および燐光印刷情報(第2の印刷情報)からの残光をそれぞれ検出し、その検出結果に応じて前記搬送される紙葉類を種類ごとに区分処理する紙葉類処理装置において、搬送される紙葉類上の燐光印刷情報からの残光、あるいは、搬送される紙葉類上の蛍光印刷情報からの蛍光および燐光印刷情報からの残光を検出する光検出装置、および、この光検出装置を用いた紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、たとえば、銀行券やその外の有価証券等の紙葉類を種類ごとに区分処理する紙葉類処理装置において、搬送される紙葉類の表面に印刷された蛍光印刷情報および燐光印刷情報を取得する場合、その搬送路において励起光源からの励起光照射(たとえば、紫外線照射)により蛍光物質および燐光物質を励起し、励起状態でその発光光を検出する蛍光検出器と、搬送路の下流側に位置して励起光照射終了後の燐光物質の残光を検出する残光検出器を配置した構成の光検出装置が用いられる。
【0003】
このような光検出装置として、励起光源としての紫外線照明装置を挟んで搬送路の上流側と下流側に反射受光系を2つ配置し、紙葉類の蛍光と残光とを分別する技術が公知である(たとえば、特許文献1参照)。この公知例では、紫外線照明装置を間欠点灯し、照明が暗時に燐光特徴を、照明が明時と暗時との差で蛍光特徴を判別するようにしている。
【0004】
また、搬送路の上流側で紫外線照明装置と蛍光検出器で蛍光特徴を、搬送路の下流側で残光検出器を配置して残光特徴を検出する技術が公知である(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
これらの公知例では、いずれも、搬送路上に2つの反射方式の光検出器を配置することで、紙葉類からの蛍光および残光を検出している。
【0006】
また、一般的に蛍光印刷情報を取得する場合、読取面の近傍に配置した蛍光発光体からの蛍光の発光量をモニタして、紫外線照明装置の紫外線エネルギの変動を検出し信号補正することで、高性能な検出を可能とした技術が公知である(たとえば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、同様の目的で、紫外線照明の明るさを制御可能な紫外線照明装置を構成することで、直接、紫外線照明装置の紫外線光量を光センサで受光し、紫外線照明装置で最適化する技術が公知である(たとえば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3790931号公報
【特許文献2】実公昭62−2691号公報
【特許文献3】特許第3827792号公報
【特許文献4】特許第3961992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、紙葉類上の蛍光印刷情報からの蛍光および燐光印刷情報からの残光を検出する光検出装置において、その情報量を安定に検出する光検出装置はいまだに提供されていない。蛍光のみを検出する光検出装置では、特許文献3のような蛍光発光体の発光量を補正情報とする場合や、特許文献4のように紫外線光量モニタ信号を用いることで、温度や経年変化の影響をなくす補正が実現されている。
【0009】
しかし、蛍光および残光の双方を検出する光検出装置になると、検出位置が2箇所あり、2式の光検出器が必要であり、かつ、残光を検出する光検出装置では、励起光源が存在しない位置での検出となるため、蛍光発光体の利用ができない。
【0010】
また、蛍光検出位置での紫外線モニタ方式は実現の可能性はあるが、実際に使用している光検出器の温度や経年変化に伴う感度変動は補正できないという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、温度環境や経年変化による励起光照射用光源の光強度変動や受光手段の感度変動等の変動要因を排除し、常に安定した残光検出あるいは蛍光・残光検出が可能となる光検出装置および紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光検出装置は、搬送される紙葉類上に残光特性を有する発光物質で印刷された印刷情報からの残光を検出する光検出装置であって、前記搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、この光源による励起光の照射位置から当該照射位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する受光手段と、この受光手段による紙葉類上の印刷情報に基づく出力信号を、前記受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、この信号補正手段により補正された前記受光手段の出力信号に基づき前記残光の有無を判別する判別手段とを具備している。
【0013】
また、本発明の光検出装置は、搬送される紙葉類上に蛍光物質で印刷された第1の印刷情報からの蛍光および蛍光物質とは異なる発光物質であって残光特性を有する発光物質で印刷された第2の印刷情報からの残光を検出する光検出装置であって、前記搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、この光源による励起光の照射により前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光を検出するための蛍光検出位置から、当該蛍光検出位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光を検出するための残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、前記蛍光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段と、前記第1の受光手段による紙葉類上の第1の印刷情報に基づく出力信号を、前記第1の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正するとともに、前記第2の受光手段による紙葉類上の第2の印刷情報に基づく出力信号を、前記第2の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、この信号補正手段により補正された前記第1の受光手段および前記第2の受光手段の各出力信号に基づき前記蛍光および残光の有無を判別する判別手段とを具備している。
【0014】
また、本発明の紙葉類処理装置は、残光特性を有する発光物質で印刷された印刷情報を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、この搬送手段により搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、この光源による励起光の照射位置から当該照射位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する受光手段と、この受光手段による紙葉類上の印刷情報に基づく出力信号を、前記受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、この信号補正手段により補正された前記受光手段の出力信号に基づき前記残光の有無を判別する判別手段と、この判別手段の判別結果に応じて前記紙葉類を区分処理する区分処理手段とを具備している。
【0015】
また、本発明の紙葉類処理装置は、蛍光物質で印刷された第1の印刷情報および蛍光物質とは異なる発光物質であって残光特性を有する発光物質で印刷された第2の印刷情報を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、この搬送手段により搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、この光源による励起光の照射により前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光を検出するための蛍光検出位置から、当該蛍光検出位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光を検出するための残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、前記蛍光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段と、前記第1の受光手段による紙葉類上の第1の印刷情報に基づく出力信号を、前記第1の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正するとともに、前記第2の受光手段による紙葉類上の第2の印刷情報に基づく出力信号を、前記第2の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、この信号補正手段により補正された前記第1の受光手段および前記第2の受光手段の各出力信号に基づき前記蛍光および残光の有無を判別する判別手段と、この判別手段の判別結果に応じて前記紙葉類を区分処理する区分処理手段とを具備している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、温度環境や経年変化による励起光照射用光源の光強度変動や受光手段の感度変動等の変動要因を排除し、常に安定した残光検出あるいは蛍光・残光検出が可能となる光検出装置および紙葉類処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る光検出装置が適用される紙葉類処理装置について説明する。
【0018】
図10、図11は、本発明の実施の形態に係る光検出装置が適用される紙葉類処理装置の構成を模式的に示すものである。この紙葉類処理装置111は、たとえば、複数の銀行の各支店等から送られた銀行券(以降、紙葉類ともいう)を検査して、再使用可能な銀行券だけを結束して再使用に供するためのものである。
【0019】
図10、図11において、紙葉類処理装置111は、その一端部に集積状態の複数枚の銀行券をセットする供給部112を有する。供給部112の上部には、当該供給部112にセットされた銀行券をその集積方向上端のものから1枚ずつ取出す取出部113が設けられている。取出部113は、最上端の銀行券に転接して負圧を生じつつ回転する吸着ローラ114を有する。吸着ローラ114は、たとえば、1回転するごとに1枚の銀行券を取出すように機能し、銀行券を一定のピッチで取出すように動作する。
【0020】
取出部113の下流側には、吸着ローラ114によって取出された銀行券を搬送する搬送手段としての搬送路115が延設されている。搬送路115には、図示しない搬送ベルトや駆動プーリが配設され、図示しない駆動モータによって搬送ベルトを走行させることにより銀行券を一定速度で搬送するようになっている。
【0021】
取出部113から延びた搬送路115上には、搬送されている銀行券の光学的および磁気的な特徴情報を検出して銀行券の種類、汚棄損、表裏、真偽などを検査する検査部116が設けられている。検査部116は、搬送路115の両側に配設され、搬送される銀行券の両面の画像を読取るための2つの画像読取装置117,118を有する。画像読取装置117,118は、たとえば、撮像手段としてCCDカメラを有し、撮像した画像から銀行券の表面の模様画像を読取る。
【0022】
また、検査部116は、搬送路115を搬送される銀行券の厚みを検査する厚み検査部119を有する。厚み検査部119は、銀行券の2枚取りやテープ貼りなどを検出するのに用いられる。
【0023】
さらに、検査部116は、搬送される銀行券上に印刷された蛍光印刷情報(第1の印刷情報)からの蛍光および燐光印刷情報(第2の印刷情報)からの残光をそれぞれ検出する光検出装置135を有する。光検出装置135については後で詳細を説明する。
【0024】
この他に、検査部116は、銀行券の磁気的な特徴情報を検出する少なくとも1つ以上の磁気センサ等をも備えている。
【0025】
検査部116の下流側の搬送路115上には、たとえば、6つのゲート120〜125が順次配設されている。ゲート120〜125は、検査部116における検査結果に基づいて図示しない制御部による制御にしたがって切換えられ、当該銀行券を所定の処理部へ案内する。
【0026】
検査部116の直後に配設されたゲート120は、搬送路115を排除搬送路126に分岐する位置に設けられ、検査部116を介して正規の銀行券ではないことが検出された排除券、および、検査部116において検査できなかった検査不能券等を排除搬送路126へ案内するように切換えられる。
【0027】
排除搬送路126の終端部には、取出部113にて取出した姿勢のまま、すなわち、表裏を反転しないで(実際には360°回転させて)、排除券および検査不能券をその取出し順序を変えずに集積する排除集積部(排除部)127が設けられている。
【0028】
排除集積部127には、この他に、銀行券を重ね取りした検査不能券や正規の銀行券ではないことが判定された偽券などが集積される。
【0029】
また、ゲート120の下流側の搬送路115に沿って設けられたゲート121〜124によって分岐された位置には、それぞれ第1乃至第4の集積・結束部(集積部)128〜131(以下、総称して集積・結束部132と称する場合もある)が配設されている。集積・結束部132には、ゲート120を介して導かれた排除券以外の正規の銀行券のうち再使用可能な正券だけが集積されて結束される。
【0030】
たとえば、第1および第2の集積・結束部128,129には、表面を上にした正券が100枚ずつ集積されて結束され、第3および第4の集積・結束部130,131には、裏面を上にした正券が100枚ずつ集積されて結束される。具体的には、集積・結束部128に正券を100枚集積した後、この100枚の正券を結束しているときに、もう一方の集積・結束部129に次の100枚の正券を集積する。このようにして集積・結束部132で結束された正券は、図示しないコンベア等によって機外へ排出されて再使用に供される。
【0031】
最も下流側に配設されたゲート125によって搬送路115から分岐された位置には、ゲート120を介して導かれた排除券以外の銀行券のうち、集積・結束部132へ集積されなかった損券、すなわち、正規の銀行券ではあるが汚棄損等の理由によって再使用不可能と判断された銀行券を裁断して失効させたのち収納する裁断部133が配設されている。なお、損券裁断モードが選択されていない場合、損券は裁断部133へ搬送されずに損券集積用のスタッカ134に集積される。
【0032】
また、紙葉類処理装置111は、その供給部112側にオペレータが操作する操作部136を有する。操作部136には、オペレータによる各種操作入力等を受付けるとともに、オペレータに対して各種操作案内等を表示する操作・表示パネル(表示部)137が設けられている。操作・表示パネル137は、表示したボタンにオペレータが触れることで当該ボタンの入力を検知するタッチパネルにより構成されている。この他に、操作・表示パネル137の近傍には、供給部112の銀行券投入口を開閉する取手を有するドア138、排除集積部127に集積された銀行券を取出すための取出口139、オペレータが操作するキーボード140などが設けられている。
【0033】
図12は、上記のように構成された紙葉類処理装置111の制御系統の構成を概略的に示すものである。
図12において、主制御部151は、全体的な制御を司るもので、これには前記検査部116、操作・表示パネル137およびキーボード140がそれぞれ接続されるとともに、搬送制御部152および集積・結束制御部153がそれぞれ接続される。
【0034】
主制御部151は、操作・表示パネル137からの指示や検査部116の検査結果などに基づき搬送制御部152および集積・結束制御部153をそれぞれ制御する。
検査部116は、前記画像読取装置117,118、厚み検査部119、光検出装置135、その他の銀行券のセンサ類(磁気センサ等)154、および、これらからのデータを処理することにより光学的および磁気的な特徴情報を検出して銀行券の種類、汚棄損、表裏、真偽などを判定するCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)155により構成されている。
【0035】
搬送制御部152は、主制御部151の制御に基づき前記取出部113、搬送路115、排除搬送路126およびゲート120〜125を制御することにより、銀行券の取出・搬送制御を行なう。
【0036】
集積・結束制御部153は、主制御部151の制御に基づき前記排除集積部127および集積・結束部128〜131を制御することにより、銀行券の集積・結束制御を行なう。
【0037】
以下、このように構成された紙葉類処理装置111の動作について簡単に説明する。
まず、オペレータの手作業によって1まとめの銀行券が供給部112にセットされる。この場合、オペレータは、ドア138を開けて銀行券を供給部112へセットする。この後、取出部113が駆動されることで、銀行券が最上端のものから順に1枚ずつ搬送路115上に取出される。搬送路115上に取出された銀行券は、検査部116を通過し、検査される。
【0038】
このとき、たとえば、取出部113によって複数枚の銀行券が重なった状態で取出されている場合、集積方向両端にある銀行券の表面の画像がそれぞれ画像読取装置117,118により読取られる。当然のことながら、銀行券が1枚だけ正常に取出されている場合には、当該銀行券の表裏の画像がそれぞれ読取られることになる。
【0039】
このようにして銀行券から読取られた画像は、検査部116内の図示しないメモリに一時記憶され、必要に応じて操作・表示パネル137を介してオペレータに対して表示される。本実施の形態では、取出部113で取出された銀行券のうち、排除集積部127へ集積される銀行券の画像のみをメモリに記憶するようにしている。なお、メモリに記憶した画像は、操作・表示パネル137における所定の操作により切換え表示可能となっている。
【0040】
検査部116は、画像読取装置117,118により読取られた画像や厚み検査部119の検査結果、光検出装置135の検出結果等に基づいて、当該銀行券が正規の銀行券であるか否かを判定する。この判定の結果、正規の銀行券である場合、当該銀行券は再使用可能な正券であるか否かを判定する。
【0041】
この判定の結果、当該銀行券が再使用可能な正券である場合、ゲート120が集積・結束部132に向かう搬送路115の方向に切換えられる。そして、ゲート121〜124のうちいずれか1つのゲートが集積・結束部132方向に切換えられ、ゲート120を介して導かれた当該正券がいずれかの集積・結束部132に集積される。
【0042】
本実施の形態では、たとえば、一方の画像読取装置117で表の模様が検出された正券、すなわち、表面を上にした状態で搬送された正券を第1、第2の集積・結束部128,129のいずれか一方に集積し、他方の画像読取装置118で表の模様が検出された正券、すなわち、裏面を上にした状態で搬送された正券を第3、第4の集積・結束部130,131のいずれか一方に集積するようにしている。
【0043】
これにより、正券の表裏を取り揃えるようにしている。たとえば、第1の集積・結束部128に表面が上の正券を集積していき、第1の集積・結束部128の正券が100枚に達した時点で、100枚の正券を結束するとともに、第2の集積・結束部129に対する正券の集積を開始し、2つの集積・結束部に100枚ずつ交互に集積して結束するようにしている。
【0044】
上記判定の結果、当該銀行券が再使用不可能な損券である場合、ゲート125が切換えられて搬送中の当該損券が裁断部133へ導かれ、当該損券が裁断されて失効される。なお、集積・結束した正券の枚数、および、裁断して失効した損券の枚数は、主制御部151で計数されて、集計される。
【0045】
上記判定の結果、当該銀行券が正規の銀行券でない場合、ゲート120が切換えられて搬送路115が排除搬送路126に接続される。そして、検査部116は、当該被処理媒体が他の媒体であるか否かを判定する。この判定の結果、当該被処理媒体は他の媒体でない場合、すなわち、2つの画像読取装置117,118で読取ったいずれの画像からも当該被処理媒体が他の媒体ではないことが判定されると、当該被処理媒体が正規の銀行券ではない例えば偽造された排除券であることが判断され、あるいは、2枚以上の銀行券の重ね取りが判断され、排除搬送路126に導かれた当該被処理媒体がそのまま排除集積部127へ集積される。
【0046】
上記判定の結果、当該被処理媒体は他の媒体である場合、たとえば異物であることが判断され、当該被処理媒体の搬送が停止されて排除搬送路126上に停止される。このようにして、排除搬送路126上に停止された当該被処理媒体は、オペレータによって取出されて確認され、手作業によって処理される。
【0047】
次に、前記光検出装置135について詳細に説明する。
図1、図2は、光検出装置135の光学系部分を模式的に示すものである。図1、図2において、紙葉類(たとえば、銀行券)Pは、その表面に蛍光物質で印刷された蛍光印刷情報(第1の印刷情報)、および、蛍光物質とは異なる発光物質であって残光特性を有する発光物質、たとえば、燐光物質で印刷された燐光印刷情報(第2の印刷情報)をそれぞれ有していて、図示しない搬送手段(前記搬送路115に相当)により図示矢印a方向に搬送される。
【0048】
紙葉類P上に励起光を照射する光源としての紫外線照明装置11は、搬送される紙葉類P上にその搬送方向aと直交する方向に設定された帯状の照明エリア12に対して紫外線(励起光)を照射し、紙葉類P上の蛍光印刷情報(蛍光物質)および燐光印刷情報(燐光物質)を励起するように構成されている。
【0049】
なお、紫外線照明装置11は、たとえば、紫外線を出力する蛍光灯や冷陰極管を使用することが可能で、高周波点灯することで時間的に連続的に紫外線を照射することができる。また、最近の発光ダイオード(LED)による照明装置の高輝度化の流れを受け、LEDをライン方向にアレイ状に並べた照明装置も使用できる。もちろん、水銀ランプ等の紫外線を有する光源を使用し、検出位置に合わせてライン上の配光に変換した照明装置も利用できる。
【0050】
照明エリア12に対応する部位には、紙葉類P上の蛍光印刷情報から放射される蛍光を検出するための蛍光検出位置13が設定されているとともに、この蛍光検出位置13よりも紙葉類Pの搬送方向aの下流側に所定距離L離れた部位には、紙葉類P上の燐光印刷情報からの残光を検出するための残光検出位置14が設定されている。ここに、上記所定距離Lは、検出対象である燐光物質の残光特性と搬送手段の搬送速度(紙葉類Pの移動速度)により決定される。
【0051】
蛍光検出位置13および残光検出位置14に相対向し搬送される紙葉類Pの裏側に位置する部位で、紙葉類Pの搬送方向aと直交する幅方向のほぼ中央部には、蛍光検出位置13から残光検出位置14にかけて存在し、搬送される紙葉類Pが存在しない状態で紫外線照明装置11による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板15が設けられている。基準板15については後で詳細を説明する。
【0052】
蛍光検出位置13と相対向する上方部位には、第1の受光手段としてのラインイメージセンサ16が紙葉類Pの搬送方向aと直交する方向に配設されている。ラインイメージセンサ16は、紙葉類Pの搬送方向aと直交する方向に走査方向bを有していて、その受光面に対して結像レンズ17により蛍光検出位置13の受光光軸13aを結像させるように構成されている。
【0053】
残光検出位置14と相対向する上方部位には、第2の受光手段としてのラインイメージセンサ18が紙葉類Pの搬送方向aと直交する方向に配設されている。ラインイメージセンサ18は、紙葉類Pの搬送方向aと直交する方向に走査方向bを有していて、その受光面に対して結像レンズ19により残光検出位置14の受光光軸14aを結像させるように構成されている。
【0054】
なお、第1、第2の受光手段16,18は、本実施の形態ではラインイメージセンサを用いているが、たとえば、色分解を目的とする場合はカラーラインイメージセンサ等のアレイ型センサを用いる。また、色分解の必要がない場合は、モノクロイメージセンサやフォトダイオードアレイ、単一の受光素子等も使用できる。
【0055】
さらに、第1、第2の受光手段16,18として、アレイ状センサとしての高感度の裏面入射型イメージセンサなどや、紙葉類の搬送方向に蓄積機能を内蔵したTDI(Time Delay Integration)動作可能で高感度を実現したデバイス等が使用可能である。単一の受光素子としてはフォトダイオード以外に、高感度センサとしてアバランシェフォトダイオードや光電子増倍管(フォトマル)などが使用できる。
【0056】
紫外線照明装置11よりも紙葉類Pの搬送方向aの上流側には、搬送されてくる紙葉類Pを光学的に検知する検知手段としての検知器20が配設されている。後で詳細を説明するが、この検知器20の出力信号に基づき、蛍光検出位置13、残光検出位置14における紙葉類あり、なしを示す蛍光検出タイミング信号T1、残光検出タイミング信号T2が生成されるようになっている。
【0057】
また、図2に示すように、上述した光学系部分の読取面から、ラインイメージセンサ16,18の受光面までを遮光手段としての遮光部材(暗箱)で囲い、外部からの光の進入を制限するように構成されている。
【0058】
すなわち、蛍光検出位置13と対応する上部には、蛍光検出位置13上から結像レンズ17を含みラインイメージセンサ16の受光面までの部分を囲う暗箱21が設けられているとともに、残光検出位置14と対応する上部には、残光検出位置14上から結像レンズ19を含みラインイメージセンサ18の受光面までの部分を囲う暗箱22が設けられている。
【0059】
このような遮光手段を設ける目的は、紙葉類Pからの蛍光や残光は微弱な光のため、外部の光が検出光に与える影響が大きく、これを制限することで、紙葉類Pの蛍光・燐光発光物質による発光量を安定に検出するものである。外光の種類としては、たとえば、光検出装置外部の環境光、紫外線照明装置から漏れる光、蛍光検出位置からの蛍光と残光検出位置からの残光の相互干渉等が挙げられる。
【0060】
次に、基準板15について詳細を説明する。
本実施の形態で使用する基準板15としては、たとえば、蛍光発光体として長期に亘り発光量が安定な蛍光ガラス(具体的には、200〜400nmの紫外線領域の励起光の照射により、R,G,Bの各色の波長域の光を発生する、(株)住田光学ガラス社製の機能性蛍光ガラス「ルミラス(登録商標)」など)を用いるものとする。
【0061】
以下、この蛍光ガラスを用いた基準板15の構成とその発光動作を図3を用いて説明する。
基準板15は、紙葉類Pの搬送面と反対に位置する面(図3において下面)15aを拡散面に加工し、その他の5面(図3において前後左右の各側面と上面)15b〜15fは光学研磨面とするとともに、紫外線照明装置11から照射される紫外線(励起光)のうち検出媒体の励起に寄与しない紫外線の入射を防止するための遮光板23,24を有した構成になっている。
【0062】
このような構成において、蛍光検出位置13において上面15fの一部(図3の例では上面15fの左端部)に紫外線を照射されると、基準板(蛍光ガラス)15の内部にある物質が特定波長の光を発光する。発光した光は、図3に破線cで示すように、基準板15の内部で、光学研磨面15b〜15fでは全反射をし、拡散面15aでは拡散反射をする。この働きにより、基準板15の一部(図3の例では上面15fの左端部)に照射された紫外線のエネルギに応じて、内面反射と拡散反射とを繰り返す「ライトガイド効果」により、蛍光検出位置13と残光検出位置14の両方(図3の例では上面15fの左端部、右端部)で、励起光源である紫外線照明装置11からの紫外線の強度に対応した光量の発光光を得ることができるようになっている。
【0063】
したがって、検出媒体である紙葉類Pが受光光軸の位置に存在しない状態では、基準板15から発光する光を検出し、紙葉類Pが受光光軸の位置に存在する状態では、紫外線照射により励起された蛍光・燐光の発光が検出可能となる。
【0064】
この状態を図4の検出信号の例に示す。蛍光受光光軸13aに配置されたラインイメージセンサ16で得られた蛍光検出信号の波形を図4(a)に示し、残光受光光軸14aに配置されたラインイメージセンサ18で得られた残光検出信号の波形を図4(b)に示す。図4において、横軸は時間軸で、縦軸が発光光量の軸である。
【0065】
図4の波形のように、検出媒体である紙葉類Pが検出位置に存在しない状態で、基準板15からの光を検出した検出信号V1,V2が観測され、紙葉類Pが検出位置に存在する状態では、紙葉類Pからの蛍光・残光を検出した検出信号を得ることができる。
【0066】
また、基準板15は、図2および図3に示すように、基準板15の残光検出位置14と対応する上面15fと紙葉類Pの搬送面との間、本例では基準板15の残光検出位置14と対応する上面15fには、当該基準板15から放射される光の量を減衰させるための減光手段としての減光フィルタ(たとえば、NDフィルタ、ND:Neutral Density)25が配設されている。
【0067】
ここで、減光フィルタ25の設置目的について説明する。
一般的な蛍光物質と燐光物質の紫外線による励起と発光の関係を図5に示す。蛍光物質も燐光物質も紫外線が照射され励起された状態では、物質固有の発光波長を持った光を発する。図5(a)に示すように、紫外線の励起を停止すると直ぐに発光が停止する蛍光物質に比べ、図5(b)に示すように、燐光物質はその発光光量は減衰しながら除々に低下して行く。この様子が残光特性である。残光は時間とともに減衰してゆくため、蛍光発光量に比べ光量が小さくなる。
【0068】
図1〜図3の構成で、減光フィルタ25を設置する理由は、紙葉類Pからの残光に比べ基準板15からの光の光量が大きすぎる場合、基準板15からの光の光量と紙葉類Pからの残光の光量とを同程度に合わせることで、検出信号のレンジを有効に利用できることから検出性能を向上させることが可能となる。なお、減光フィルタ25は検出媒体の特性にあわせ最適化することが望ましい。
【0069】
なお、図3の例では、基準板15の残光検出位置14と対応する上面15fと紙葉類Pの搬送面との間に減光フィルタ25を配設したが、これに限定されるものではなく、たとえば、図6に示すように、基準板15の残光検出位置14と対応する下面15aに減光手段としての減光部材26を配設してもよい。その場合、減光部材26としては、たとえば、光反射率の低い黒色の板などを用いることができる。このようにしても、図3の例の場合と同様な作用効果が得られる。
【0070】
図7は、光検出装置135の構成を概略的に示すものである。ラインイメージセンサ16,18からの各信号は、それぞれゲイン可変可能な増幅器31,32で増幅された後、A/D変換・信号補正部33に送られ、その出力は判別処理部34に送られ、判別処理部34において蛍光・残光の有無が判別される。
【0071】
A/D変換・信号補正部33には、センサ信号の補正情報を格納し提供する補正情報メモリ35が接続され、判別処理部34には、判別処理における基準情報や判別閾値等を格納する判定基準メモリ36が接続されている。
【0072】
また、増幅器31,32およびA/D変換・信号補正部33にはタイミング制御部37が接続され、このタイミング制御部37には前記検知器20が接続されている。タイミング制御部37は、検知器20の出力信号に基づき、図4(a)に示すような蛍光検出位置13における紙葉類あり、なしを示す蛍光検出タイミング信号T1、および、図4(b)に示すような残光検出位置14における紙葉類あり、なしを示す残光検出タイミング信号T2を生成する。生成された蛍光検出タイミング信号T1は増幅器31およびA/D変換・信号補正部33に送られ、生成された残光検出タイミング信号T2は増幅器32およびA/D変換・信号補正部33に送られる。
【0073】
これにより、タイミング信号T1,T2の紙葉類なしの期間に信号補正を行ない、紙葉類ありの期間は信号補正を行なわず直前の補正内容を保持するようになっており、それについては後で詳細を説明する。
【0074】
次に、このように構成された光検出装置135の動作について説明する。
紙葉類Pが図示しない搬送手段により図示矢印a方向に搬送され、照明エリア12(蛍光検出位置13)に到達すると、紫外線照明装置11から紙葉類P上に励起光として紫外線が照射され、紙葉類P上の蛍光印刷情報(蛍光物質)および燐光印刷情報(燐光物質)がそれぞれ励起される。
【0075】
紫外線照射により励起された蛍光印刷情報および燐光印刷情報はそれぞれ発光し、その発光光は結像レンズ17を介してラインイメージセンサ16の受光面に結像され、電気信号に変換される。
【0076】
搬送される紙葉類Pが照明エリア12を通過すると、紫外線照明装置11による紫外線照射が停止されるので、蛍光印刷情報からの発光は図5(a)のように直ぐに停止するのに対し、燐光印刷情報はその残光特性により図5(b)のように発光光量は減衰しながら除々に低下して行く。
【0077】
その後、搬送される紙葉類Pが残光検出位置14に到達すると、紙葉類P上の燐光印刷情報からの残光は結像レンズ19を介してラインイメージセンサ18の受光面に結像され、電気信号に変換される。
【0078】
ラインイメージセンサ16,18から得られる各信号は、増幅器31,32を介してA/D変換・信号補正部33に送られ、ここでA/D変換された後、ラインイメージセンサ16,18の走査方向の感度ばらつきや紫外線照明装置11のライン方向の明るさむらや結像レンズ17,19等に起因するひずみ成分が電気的に補正される。これらの補正情報は内部で生成して補正情報メモリ35に保存し、補正処理を行なう。
【0079】
補正処理された信号は判別処理部34に送られ、ここで蛍光・残光の有無が判別される。蛍光・残光の有無判別は、たとえば、図5(a)に示すような波形の蛍光情報が得られた場合は蛍光有りと判別され、図5(b)に示すような波形の残光情報が得られた場合は残光有りと判別される。
【0080】
判別処理部34では、紙葉類Pの種類に応じて時間方向や走査方向に検出位置を任意に設定したり、カラー情報の演算処理(カラーラインイメージセンサを用いている場合)や検出エリア間の演算など必要な判別処理を行なうことで、高精度な蛍光・残光検出性能を実現している。また、判別のためのエリア分割処理の指定情報や演算処理式や判別のための基準データや判定レベルなど様々な環境データや判定パラメータ等を判定基準メモリ36に対し格納したり、抽出したりすることで高性能を実現している。
【0081】
判別処理部34の判別結果は検査部116のCPU155に送られ、紙葉類Pの種類判定や真偽判定等を行なうためのパラメータの1つとして用いられる。
【0082】
図8は、紙葉類P上の蛍光印刷情報および燐光印刷情報の具体例を示し、図9は、上記した動作により図8の紙葉類Pから取得された画像の具体例を示していて、図9(a)はラインイメージセンサ16から得られる蛍光情報を、図9(b)はラインイメージセンサ18から得られる残光情報を示している。なお、図中の矢印dはラインイメージセンサ16,18の画像に対する走査方向を示している。
【0083】
図8の紙葉類Pは、たとえば、燐光物質による燐光印刷情報(第2の印刷情報)41を中央にして、その搬送方向aの両側部にそれぞれ蛍光物質による蛍光印刷情報(第1の印刷情報)42,43が存在する例を示していて、この紙葉類Pが図示矢印a方向に搬送されるケースで、蛍光検出位置13と残光検出位置14とが距離Lだけ離れているものとする。この例では、蛍光情報と残光情報で距離L相当だけ搬送方向aに位置ずれした画像が取得される。
【0084】
次に、基準板15を用いた信号補正処理について詳細を説明する。
基準板15は、前述したように、蛍光検出位置13および残光検出位置14に相対向し搬送される紙葉類Pの裏側に位置する部位で、紙葉類Pの搬送方向aと直交する幅方向のほぼ中央部に、蛍光検出位置13から残光検出位置14にかけて存在するように設けられていて、搬送される紙葉類Pが存在しない状態で、紫外線照明装置11からの紫外線照射を受けて特定波長の光を発光する。この様子を図9(a)(b)の取得画像例において斜線を付した帯状部15a,15bで示している。
【0085】
ラインイメージセンサ16,18から得られる各信号は図4(a)(b)に示したようになり、検出媒体である紙葉類Pが検出位置に存在しない状態で、基準板15からの光を検出した検出信号V1,V2が観測され、紙葉類Pが検出位置にある状態では、紙葉類Pからの蛍光・残光を検出した検出信号が得られる。
【0086】
そこで、A/D変換・信号補正部33では、ラインイメージセンサ16,18から得られる基準板15からの光を検出した検出信号V1,V2に基づき、当該検出信号V1,V2が常に一定値になるように、増幅器31,32の各ゲインを可変制御することで補正する。
【0087】
その場合、A/D変換・信号補正部33は、タイミング制御部37で生成されたタイミング信号T1,T2に基づき上記信号補正処理を行なうもので、タイミング信号T1,T2の紙葉類なしの期間に上記信号補正処理を行ない、紙葉類ありの期間は上記信号補正処理を行なわず直前の補正内容を保持するようにしている。
【0088】
なお、上記信号補正処理の他の方法として、A/D変換・信号補正部33において、信号演算処理を行なうことで補正処理することもできる。すなわち、基準板15の検出信号V1,V2と紙葉類Pからの蛍光検出信号、残光検出信号との比を算出することにより、基準板15の検出信号V1,V2に対比した蛍光検出信号、残光検出信号を得ることが可能となる。
【0089】
上記したような基準板15を用いることで、紫外線照明装置11の経時変化による光量低下や、環境温度変動に対する光量変動等の影響を除去し、さらに、ラインイメージセンサ16,18の温度変動などに対する感度変動なども除去できる。その結果、蛍光・燐光の発光量の絶対値を安定に得られるようになる。
【0090】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、蛍光検出位置13から残光検出位置14にかけて存在し、紙葉類Pが存在しない状態で励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板15を設け、蛍光を検出するラインイメージセンサ16の出力信号および残光を検出するラインイメージセンサ18の出力信号を、前記基準板15から放射される光の検出信号に基づき補正することにより、温度環境や経年変化による紫外線照明装置11の光強度変動やラインイメージセンサ16,18の感度変動等の変動要因を排除し、常に安定した残光検出あるいは蛍光・残光検出が可能となる。
【0091】
なお、前記実施の形態では、紙葉類上に印刷された蛍光印刷情報からの蛍光および燐光印刷情報からの残光をそれぞれ検出する光検出装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、紙葉類上に印刷された燐光印刷情報からの残光のみを検出する光検出装置にも同様に適用可能である。
【0092】
また、前記実施の形態では、第2の印刷情報が燐光印刷情報である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、蛍光物質以外の発光物質であって残光特性を有する発光物質で印刷された印刷情報であれば同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態に係る光検出装置の光学系部分を模式的に示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係る光検出装置の光学系部分を一部断面して模式的に示す側面図。
【図3】基準板の構成を一部断面して模式的に示す側面図。
【図4】ラインイメージセンサで得られた蛍光検出信号、残光検出信号の一例を示す波形図。
【図5】一般的な蛍光物質と燐光物質の紫外線による励起と発光の関係を示す波形図。
【図6】基準板の他の構成を一部断面して模式的に示す側面図。
【図7】本発明の実施の形態に係る光検出装置の構成を概略的に示すブロック図。
【図8】紙葉類上の蛍光印刷情報および燐光印刷情報の具体例を示す模式図。
【図9】図8の紙葉類から取得された画像の具体例を示す模式図。
【図10】本発明の実施の形態に係る光検出装置が適用される紙葉類処理装置の外観を模式的に示す斜視図。
【図11】紙葉類処理装置の内部構成を模式的に示す構成図。
【図12】紙葉類処理装置の制御系統の構成を概略的に示すブロック図。
【符号の説明】
【0094】
P…紙葉類、11…紫外線照明装置(光源)、12…照明エリア、13…蛍光検出位置、14…残光検出位置、15…基準板、16…ラインイメージセンサ(第1の受光手段)、17…結像レンズ、18…ラインイメージセンサ(第2の受光手段)、19…結像レンズ、20…検知器(検知手段)、21,22…暗箱(遮光手段)、23,24…遮光板、25…減光フィルタ(減光手段)、26…減光部材(減光手段)、31,32…増幅器、33…A/D変換・信号補正部(信号補正手段)、34…判別処理部(判別手段)、37…タイミング制御部、41…燐光印刷情報(第2の印刷情報)、42,43…蛍光印刷情報(第1の印刷情報)、111…紙葉類処理装置、112…供給部、113…取出部、115…搬送路(搬送手段)、116…検査部、120〜125ゲート、126…排除搬送路、127…排除集積部、128〜131…集積・結束部、135…光検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類上に残光特性を有する発光物質で印刷された印刷情報からの残光を検出する光検出装置であって、
前記搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、
この光源による励起光の照射位置から当該照射位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、
前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する受光手段と、
この受光手段による紙葉類上の印刷情報に基づく出力信号を、前記受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、
この信号補正手段により補正された前記受光手段の出力信号に基づき前記残光の有無を判別する判別手段と、
を具備したことを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
搬送される紙葉類上に蛍光物質で印刷された第1の印刷情報からの蛍光および蛍光物質とは異なる発光物質であって残光特性を有する発光物質で印刷された第2の印刷情報からの残光を検出する光検出装置であって、
前記搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、
この光源による励起光の照射により前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光を検出するための蛍光検出位置から、当該蛍光検出位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光を検出するための残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、
前記蛍光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、
前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段と、
前記第1の受光手段による紙葉類上の第1の印刷情報に基づく出力信号を、前記第1の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正するとともに、前記第2の受光手段による紙葉類上の第2の印刷情報に基づく出力信号を、前記第2の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、
この信号補正手段により補正された前記第1の受光手段および前記第2の受光手段の各出力信号に基づき前記蛍光および残光の有無を判別する判別手段と、
を具備したことを特徴とする光検出装置。
【請求項3】
前記基準板の前記残光検出位置と対応する部分に当該基準板から放射される光の量を減衰させる減光手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光検出装置。
【請求項4】
前記減光手段は、前記基準板の前記残光検出位置に対応する上面と前記紙葉類の搬送面との間に配設されていることを特徴とする請求項3記載の光検出装置。
【請求項5】
前記減光手段は、前記基準板の前記残光検出位置に対応する下面に配設されていることを特徴とする請求項3記載の光検出装置。
【請求項6】
前記基準板は、1つの面を光拡散面とし、その他の5つの面をそれぞれ光学研磨面としたことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の光検出装置。
【請求項7】
前記基準板は、前記光源から照射される励起光のうち紙葉類の第1および第2の印刷情報の励起に寄与しない励起光の入射を防止するための遮光板を有することを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれかに記載の光検出装置。
【請求項8】
残光特性を有する発光物質で印刷された印刷情報を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段により搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、
この光源による励起光の照射位置から当該照射位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、
前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する受光手段と、
この受光手段による紙葉類上の印刷情報に基づく出力信号を、前記受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、
この信号補正手段により補正された前記受光手段の出力信号に基づき前記残光の有無を判別する判別手段と、
この判別手段の判別結果に応じて前記紙葉類を区分処理する区分処理手段と、
を具備したことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項9】
蛍光物質で印刷された第1の印刷情報および蛍光物質とは異なる発光物質であって残光特性を有する発光物質で印刷された第2の印刷情報を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段により搬送される紙葉類上に励起光を照射する光源と、
この光源による励起光の照射により前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光を検出するための蛍光検出位置から、当該蛍光検出位置よりも前記紙葉類の搬送方向の下流側である前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光を検出するための残光検出位置にかけて設けられ、前記搬送される紙葉類が存在しない状態で前記光源による励起光の照射を受けて特定波長の光を放射する基準板と、
前記蛍光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第1の印刷情報から放射される蛍光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、
前記残光検出位置に対応して設けられ、前記搬送される紙葉類上の第2の印刷情報からの残光、あるいは、前記搬送される紙葉類が存在しない状態での前記基準板から放射される光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段と、
前記第1の受光手段による紙葉類上の第1の印刷情報に基づく出力信号を、前記第1の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正するとともに、前記第2の受光手段による紙葉類上の第2の印刷情報に基づく出力信号を、前記第2の受光手段から得られる前記基準板から放射される光の検出信号に基づき補正する信号補正手段と、
この信号補正手段により補正された前記第1の受光手段および前記第2の受光手段の各出力信号に基づき前記蛍光および残光の有無を判別する判別手段と、
この判別手段の判別結果に応じて前記紙葉類を区分処理する区分処理手段と、
を具備したことを特徴とする紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−39897(P2010−39897A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204023(P2008−204023)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】