説明

光殺菌システムとそれに用いる閃光照射装置

【課題】紫外線透過性材料で成る容器本体の口が蓋や栓で塞がれた液体入り容器に、殺菌効果のある紫外線を放射するフラッシュランプを設けた閃光照射装置で閃光を照射して、容器本体の口とその口を塞ぐ蓋又は栓との間に生ずる微小な隙間に付着した菌も確実に死滅させることができるようにする。
【解決手段】液体入り容器をその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓の内面が内容液に浸された倒立状態もしくは傾斜状態として、その側方から閃光照射装置で閃光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線透過性材料で成る容器本体の口が蓋や栓で塞がれた液体入り容器に閃光を照射してその容器の内面と内容液を殺菌処理する光殺菌システムと、それに使用する閃光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱殺菌に適さない医薬用の液体や飲料等が紫外線透過性材料で成る容器に充填された液体入り容器の内面と内容液を殺菌処理する光殺菌システムとしては、ランプ寿命が長く、殺菌効果が高いとされる波長254nmの紫外線を効率良く放射する低圧水銀ランプを用いたものが一般的であるが、低圧水銀ランプは、紫外線出力が低いために短時間で大量の液体入り容器を殺菌処理することができず、その紫外線出力を高めようとすれば、ランプの使用本数が多くなって、光殺菌システム全体の設置スペースが大きくなるという問題があり、また、液体入り容器が肉厚で光透過率が低い場合や、菌が高濃度で存在して容器の内面に重なり合って付着していたり、菌の種類が紫外線の被照射耐性が高い芽胞菌等である場合は、滅菌レベル(99.9999%以上の殺菌)の殺菌効果を得ることが困難であるという問題もあった。
【0003】
このため、近時は、低圧水銀ランプよりも高出力、高照度の紫外線を瞬間的に放射するフラッシュランプを設けた閃光照射装置による殺菌処理が徐々に普及しつつあり、例えば、紫外線透過性材料であるポリエチレンのブロー成形によって医薬用の液体を充填した複数本のバイアルビンやアンプル等の液体入り容器が横一列に並ぶように一体成形されたカードに対し、該カードの搬送路を挟んでその両側から閃光照射装置で閃光を照射して、横一列に並んだバイアルビン等の液体入り容器の内面と内容液を殺菌処理する光殺菌システムが提案されている(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特表2000−511497号公報
【特許文献2】特開2005−52294号公報
【0004】
しかし、容器全体がポリエチレンのブロー成形によって形作られたバイアルビン等の液体入り容器は、上記の光殺菌システムにより容器の内面と内容液を効果的に殺菌処理することが可能であるが、該光殺菌システムを例えば図8の如くポリエチレン製のボトルで成る容器本体2に輸液剤となるブドウ糖液や電解液、アミノ酸液等の内容液3を規定量充填して、その容器本体2の口を輸液針を刺すためのゴム5が設けられた蓋(又は栓)4で塞いで密閉する輸液ボトル1の製造ラインに試験的に導入して、内容液3の充填が完了した輸液ボトル1がラインコンベアで搬送される搬送路の両側に殺菌作用を奏する波長域の紫外線を放射する棒状フラッシュランプ32と樋型凹面反射鏡33とで成る一対の照射器31R、31Lを配置した閃光照射装置30により、輸液ボトル1に対してその側方から閃光を照射し、その照射後の輸液ボトル1の残菌数をボトル(容器本体2)のボディ部2B側とそれより上方のネック部2N側とに分けて測定したところ、図9のグラフに示すように、ボディ部2B側は、実線図示の如く閃光の照射数2回で残菌数が著しく減少するが、ネック部2N側は、破線図示の如く残菌数の減少度合いが極めて小さく、少ない照射数で滅菌レベルの殺菌効果を得ることが困難であった。
【0005】
その原因を究明すると、容器本体2のネック部2Nは、ボディ部2Bに比べて肉厚に形成されているために、光透過率が低く、該ネック部2Nを透過してその内面や容器本体2の口を塞ぐ蓋4の内面に照射される閃光が減衰されることと、容器本体2の口とその口を塞ぐ蓋4との間に生ずる微小な隙間に閃光が到達し難いために、その隙間に付着した菌を死滅させることが困難であることによるものと判明した。
【0006】
そして、万一、容器本体2の口とその口を塞ぐ蓋4との間に生じた隙間にセラチア菌等の感染症を惹き起こすおそれのある菌が付着して、その菌が殺菌されずに残存した状態で、輸液ボトル1が市場に出荷されて室温に長時間放置されると、残存した菌が内容液3であるブドウ糖液やアミノ酸液等の液中で相当数まで増殖して大量の菌の暴露源となり、敗血症等の集中発生を惹き起こすおそれがある。
【0007】
したがって、輸液ボトル1は、肉厚に形成された容器本体2のネック部2Nの内面や、容器本体2の口とその口を塞ぐ蓋4との間に生じた隙間に付着する菌を確実に死滅させる必要があるが、そのために閃光の照射数を多くすると、フラッシュランプ32が短寿命となってランニングコストが嵩むと同時に、殺菌処理の所要時間が長くなって輸液ボトル1の生産性が低下するという問題がある。また、輸液ボトル1の生産性を低下させないために、フラッシュランプ32を短時間で連発的に発光させると、該ランプ32から放射される熱線で、輸液ボトル1の内容液3である輸液剤が変質したり、容器本体2が黒化するなどの高温劣化を生ずるおそれがある。
【0008】
なお、輸液ボトル1のように容器本体2に規定量の内容液3を充填してその容器本体2の口を蓋4や栓で塞ぐ液体入り容器は、容器本体2に内容液3を充填する際にその内容液が容器本体2の口から溢れ出ないようにすると共に、蓋4や栓で口を密閉する容器本体2内に充填された内容液3の熱膨張を許容するために、容器本体2の内容積を内容液3の充填量よりも大きくして、容器本体2に充填された内容液3の液面と、容器本体2の口を塞ぐ蓋4又は栓の内面との間にヘッドスペースとなる空間6を生じさせるのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、紫外線透過性材料で成る容器本体に充填された内容液の液面とその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓との間にヘッドスペースとなる空間が生ずる液体入り容器に、殺菌効果のある紫外線を放射するフラッシュランプを設けた閃光照射装置で閃光を照射して、液体入り容器の内部を確実に殺菌できるようにし、特に、フラッシュランプの寿命低下や、液体入り容器の生産性低下を来たさないために、少ない閃光の照射数で、容器本体の口とその口を塞ぐ蓋又は栓との間に生ずる微小な隙間に付着した菌も確実に死滅させることができるようにすることを主たる技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る光殺菌システムは、紫外線透過性材料で成る容器本体に充填された内容液の液面とその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓との間にヘッドスペースとなる空間が生ずる液体入り容器に、殺菌作用を奏する波長域の紫外線を放射するフラッシュランプを設けた閃光照射装置で閃光を照射して、その液体入り容器の内面と内容液を殺菌処理する光殺菌システムであって、前記液体入り容器をその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓の内面が内容液に浸された倒立状態もしくは傾斜状態とし、該容器に対してその側方から前記閃光照射装置で閃光を照射するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体入り容器に対してその側方から照射する閃光が、液体入り容器の容器本体と内容液に直射されて、その容器本体の内面と内容液が殺菌処理されるのみならず、内容液に直射された閃光の一部が、互いの屈折率が異なる内容液と容器本体との境界面で全反射を繰り返して内容液中に閉じ込められると同時に内容液中を伝播して、内容液に浸された蓋又は栓の内面や、その蓋又は栓と容器本体の口との間に生ずる隙間に到達し、それらの箇所も確実に殺菌処理される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る光殺菌システムの最良の実施形態は、紫外線透過性材料で成る容器本体に内容液が充填されてその容器本体の口が蓋又は栓で塞がれた正立状態の液体入り容器がラインコンベア等で搬送される液体入り容器の製造ラインに、該液体入り容器を反転させてその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓の内面が内容液に浸された倒立状態もしくは傾斜状態とする反転装置と、該反転装置で倒立状態もしくは傾斜状態とした液体入り容器に対してその側方から閃光を照射する閃光照射装置とが設置されている。
【0013】
そして、閃光照射装置は、倒立状態もしくは傾斜状態とした液体入り容器を一列に並べて搬送する搬送路を挟んでその両側から対向するように配置されて互いに接近・離反する方向に進退せられる一対の照射器で構成され、これら両照射器は、両者が互いに接近せられたときに両者間に到来した複数個の液体入り容器に対してその側方から閃光を一括照射する棒状フラッシュランプと樋型凹面反射鏡とで構成されると共に、両照射器が互いに接近せられたときに、両者の樋型凹面反射鏡によって棒状フラッシュランプの閃光を閉じ込める筒型チャンバが形成されるように構成され、その樋型凹面反射鏡は、赤外線を透過する石英や硼珪酸ガラス等の硬質ガラスで樋型の形状に成形された反射鏡基材の凹面に、400nm以上の可視光及び赤外線を透過し、殺菌作用を奏する波長240〜290nmの紫外線を反射する紫外線反射膜が形成された構成となっている。
【0014】
また、液体入り容器の容器本体がネック部を有するボトルで成る場合は、両照射器の棒状フラッシュランプが、両照射器が互いに接近せられたときに前記ネック部と至近距離から対峙する位置に配設されている。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明に係る光殺菌システムの一例を概略的に示す斜視図、図2はその光殺菌システムに用いる閃光照射装置の動作を示す斜視図、図3はその閃光照射装置の正面図、図4はその閃光照射装置による閃光の照射数と残菌数との関係を示すグラフ、図5は液体入り容器を倒立状態として閃光照射装置へ搬送する機構を示す側面図、図6は倒立状態とした液体入り容器を搬送するための搬送用冶具を示す斜視図である。
【0016】
本例の光殺菌システムは、ポリエチレン等の紫外線透過性材料でボトル型に成形された容器本体2に輸液剤となる内容液3を充填して、容器本体2の口を蓋4で塞いで密閉する工程を経て製造された正立状態の輸液ボトル1がラインコンベア7によって搬送される輸液ボトルの製造ラインに、その正立状態の輸液ボトル1を一定個数ずつ180°反転させて倒立状態とする反転装置8と、該反転装置8で倒立状態とした一定個数の輸液ボトル1、1…に対してその側方から閃光を一括照射する閃光照射装置9とが設置されている。
【0017】
反転装置8は、ラインコンベア7で一列に並べて搬送される正立状態の輸液ボトル1の搬送間隔を狭めるワークストッパー(図示せず)によって一定個数ずつ(例えば4個ずつ)ストレージされた輸液ボトル1、1…を一括把持して180°反転させる回動腕で構成されている。また、閃光照射装置9は、反転装置8で180°反転させて倒立状態とした一定個数の輸液ボトル1、1…が一列に並べて間欠的に搬送されて来る搬送路を挟んでその両側から対向するように配置されてシリンダを用いた直動機構(図示せず)等で互いに接近・離反する方向に進退せられる一対の照射器10R、10Lで構成され、これら両照射器10R、10Lは、両者が互いに接近せられたときに両者間に倒立状態となって到来した一定個数の輸液ボトル1、1…に対してその側方から閃光を一括照射する棒状フラッシュランプ11と樋型凹面反射鏡12とで構成されている。
【0018】
また、照射器10R、10Lは、両者が図2(a)及び図3破線図示の如く互いに離反した状態から、図2(b)及び図3実線図示の如く互いに接近せられた状態となったときに、両者の樋型凹面反射鏡12、12によって棒状フラッシュランプ11、11の閃光を閉じ込める筒型チャンバCが形成されるように構成されており、両者の棒状フラッシュランプ11は、両者が互いに接近せられたときに倒立状態とした輸液ボトル1の容器本体2のネック部2Nと至近距離から対峙する位置に配設されている。
【0019】
棒状フラッシュランプ11は、ランプ発光管13の外側に、冷却水が循環供給される透明な円筒管で成る水冷ジャケット14が装着された構成となっており、樋型凹面反射鏡12は、石英や、主成分の珪酸に少量の硼酸を添加した硬質ガラス等の赤外線透過性材料によって樋型の形状に成形された反射鏡基材15の凹面に、赤外線透過特性を有する紫外線反射膜16が形成された構成となっている。なお、該反射膜16は、例えば波長220nm〜400nmの光を反射し、波長400nm以上の可視光及び赤外線を透過する光学薄膜蒸着材料で製膜されて、フラッシュランプ11の閃光に含まれる200nmから800nm以上の広範囲の波長域に及ぶ光の中から、殺菌に有効とされる波長240nm〜290nmの光を輸液ボトル1等の液体入り容器に向かって反射し、赤外域となる波長780nm以上の光を透過して反射鏡12の外方へ放出させるようになっている。
【0020】
また、ラインコンベア7で搬送される正立状態の輸液ボトル1を反転装置8で倒立状態として閃光照射装置9へ搬送する機構は、図5に示すように、反転装置8で倒立状態とした一定個数の輸液ボトル1、1…を収容してその倒立状態で搬送するための搬送用冶具17と、該冶具17を反転装置8で倒立状態とした輸液ボトル1、1…が受け取れる位置に供給する昇降装置18と、リフトアンドキャリィ運動を行う一対のビームで輸液ボトル1、1…が収容された搬送用冶具17を昇降装置18から持ち上げて閃光照射装置9の照射器10R、10L間へ搬送するウォーキングビーム19とで構成されている。
【0021】
なお、搬送用冶具17は、反転装置8で倒立状態とした輸液ボトル1、1…を収容してその倒立状態に保持させるために、輸液ボトル1、1…を倒立状態で一列に並べて載せる基台20の上面に、輸液ボトル1、1…の蓋4の頂部を嵌め入れる凹部21、21…と、それら輸液ボトル1、1…を囲い込むワイヤ製のフェンス22が形成されている。
【0022】
以上が、実施例1の光殺菌システムとそれに用いる閃光照射装置9の構成であり、次に、それらの一連の動作について説明する。まず、容器本体2に内容液3を充填してその容器本体2の口を蓋4で塞ぐ輸液充填工程を経てラインコンベア7により正立状態で一列に並べて搬送される輸液ボトル1が、その搬送路に設けたワークストッパー等で搬送間隔を狭められて一定の単位個数すつストレージされ、そのストレージされた輸液ボトル1、1…が回動腕で成る反転装置8によって図1及び図5(a)の如く一括把持される。
【0023】
次いで、反転装置8が、図5(a)実線図示の状態から同図鎖線図示のように回動して図5(b)の如く180°反転し、該反転装置8に把持された輸液ボトル1、1…が倒立状態とされると共に、その反転位置に昇降装置18で搬送用冶具17が供給されて、該搬送用冶具17に反転装置8で倒立状態とした輸液ボトル1、1…が収容される。
【0024】
そして、輸液ボトル1、1…を倒立状態で収容した搬送用冶具17が、ウォーキングビーム19で、図5(c)の如く昇降装置18から持ち上げられて、図5(d)の如く閃光照射装置9の照射器10R、10L間へと搬送され、照射器10R、10Lが、図2(a)及び図3破線図示の如く互いに離反した状態から、図2(b)及び図3実線図示の如く互いに接近せられた状態となって、両照射器10R、10Lの棒状フラッシュランプ11、11が、両照射器10R、10L間に倒立状態で介在する輸液ボトル1、1…の容器本体2のネック部2Nに対して至近距離から対峙せられると同時に、両照射器10R、10Lの樋型凹面反射鏡12、12によって棒状フラッシュランプ11、11の閃光を閉じ込める筒型チャンバCが形成された状態となる。
【0025】
この状態で、両照射器10R、10Lの棒状フラッシュランプ11、11を点灯させて、倒立状態の輸液ボトル1、1…に閃光を照射すると、その閃光がこれを閉じ込める筒型チャンバC内で反射して輸液ボトル1、1…の各部位に対して隈なく照射されると共に、その容器本体2の肉厚なネック部2Nに対して至近距離から閃光が照射され、更に、容器本体2を透過して内容液3に照射された閃光の一部が、内容液3と屈折率が異なる容器本体2との境界面で全反射を繰り返して内容液3中を伝播し、内容液3に浸された蓋4の内面や、その蓋4と容器本体2の口との間に生ずる隙間に照射され、また、容器本体2のネック部2Nの内面にも当然照射される。
【0026】
これにより、輸液ボトル1、1…は、容器本体2のボディ部2Bの内面や内容液3のみならず、容器本体2の口とその口を塞ぐ蓋4との間に生ずる隙間や、外部から閃光が透過し難い蓋4の内面、肉厚なネック部2Nの内面等も、フラッシュランプ11、11の閃光によって効果的に殺菌され、各輸液ボトル1のボディ部2Bとネック部2Nの残菌数を測定したところ、図4のグラフに示すように、何れの部位も閃光の照射数2回で滅菌レベルの殺菌効果が得られることが確認された。
【0027】
また、照射器10R、10Lが互いに接近せられたときに両者の樋型凹面反射鏡12、12で棒状フラッシュランプ11、11の閃光を閉じ込める筒型チャンバCが形成されることによって、輸液ボトル1の殺菌効果が高まるのみならず、周辺設備がフラッシュランプ11、11の閃光を浴びて紫外線劣化を生ずる被害も抑制される。
【0028】
また、筒型チャンバCを形成する樋型凹面反射鏡12、12は、反射鏡基材15の凹面に可視光・赤外線透過特性を有する紫外線反射膜16が形成された構成となっているため、フラッシュランプ11、11の点灯によって生ずる熱線が輸液ボトル1側に反射されてその熱線による高熱の影響で輸液ボトル1の内容液3が変質することが防止され、更に、反射鏡基材15が赤外線透過性材料で成るため、筒型チャンバC内が高温となって内容液3に悪影響を及ぼすおそれもない。
【0029】
また、本例の樋型凹面反射鏡12に代えて、一般的なアルミ反射鏡を使用した場合は、フラッシュランプ11の閃光照射数が例えば4回のときに、その閃光エネルギーが1200J以下であればポリエチレン製のボトルで成る容器本体2に目視で確認できる黒化などの高温劣化は生じないが、1200Jを超えると黒化の発生が視認できるようになり、輸液ボトル1の商品価値が損なわれるから、アルミ反射鏡は輸液ボトル1の光殺菌に使用することができない。これに対し、可視光・赤外線透過特性を有する紫外線反射膜16が形成された樋型凹面反射鏡12を使用した場合は、上記と同じ条件でも黒化などの高温劣化は生じないことが確認された。なお、上記のような高温劣化を防止するためには、紫外線反射膜16は、少なくとも赤外線透過特性を有するものであればよく、また、反射鏡基材15の凹面全体に形成する場合に限らず、例えばフラッシュランプ11に近接した部位にだけ局部的に形成する場合であってもよい。また、反射鏡基材15が赤外線透過性材料で成るものでなくとも、その凹面に赤外線透過特性を有する紫外線反射膜16が形成されていれば、フラッシュランプ11、11の点灯によって生ずる熱線が輸液ボトル1側に反射されることは防止できるので、反射鏡基材15は必ずしも赤外線透過性材料で成るものに限定されない。
【実施例2】
【0030】
図7は本発明に係る光殺菌システムに用いる閃光照射装置の他の例を示す正面図であり、該装置は、実施例1の閃光照射装置9では倒立状態とした輸液ボトル1の容器本体2のネック部2Nと対峙させるように配置されていた棒状フラッシュランプ11、11を、容器本体2のボディ部2Bと対峙させる配置に変更すると共に、そのフラッシュランプ11、11の配置に適合するように樋型凹面反射鏡12、12の形状を改変したもので、その他の構成は実施例1の装置9と異なるところはないから、対応箇所に同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0031】
図7の閃光照射装置9は、照射器10R、10Lの棒状フラッシュランプ11、11が、両照射器10R、10Lが互いに接近せられたときに輸液ボトル1の容器本体2のボディ部2Bと対峙する位置に配設されているから、実施例1の如く棒状フラッシュランプ11、11が輸液ボトル1の容器本体2のネック部2Nと対峙する位置に配設された閃光照射装置と比べれば、そのネック部2Nの殺菌効果は若干劣るものの、実施例1の閃光照射装置と同様に、互いに接近せられた照射器10R、10Lの樋型凹面反射鏡12、12が、棒状フラッシュランプ11、11の閃光を閉じ込める筒型チャンバCを形成して、その閃光が輸液ボトル1、1…の各部位に対して隈なく照射されると共に、輸液ボトル1の容器本体2を透過して内容液3に照射された閃光の一部が、内容液3と屈折率が異なる容器本体2との境界面で全反射を繰り返して内容液3中を伝播し、内容液3に浸された蓋4の内面や、その蓋4と容器本体2の口との間に生ずる隙間、肉厚なネック部2Nの内面等に照射されるから、少ない閃光の照射数で滅菌レベルの殺菌効果を得ることができる。
【0032】
なお、本発明に係る光殺菌システムは、輸液ボトルに限らず、紫外線透過性材料で成る容器本体に充填された内容液の液面とその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓との間にヘッドスペースとなる空間が生ずる液体入り容器の殺菌処理に適用することができる。
【0033】
また、上記の如く、互いに対向するように配置されて互いに接近・離反する方向に進退せられる一対の照射器10R、10Lが、両者が互いに接近せられたときに閃光を照射する棒状フラッシュランプ11、11と樋型凹面反射鏡12、12とで構成されると共に、両照射器10R、10Lが互いに接近せられたときに、両者の樋型凹面反射鏡12、12によって棒状フラッシュランプ11、11の閃光を閉じ込める筒型チャンバCが形成されるように構成された閃光照射装置9は、輸液ボトルのように容器本体の口が蓋や栓で塞がれた液体入り容器に限らず、バイアルビンやアンプルのように容器全体がポリエチレン等の紫外線透過性材料でブロー成形される液体入り容器の殺菌処理にも有用である。
【0034】
なお、照射器10R、10Lが図3及び図7実線図示の如く接近した状態で、その照射器10R、10L間に輸液ボトル1等の液体入り容器を搬入出させることが可能な構成となっていれば、両照射器10R、10Lは、必ずしも互いに接近・離反する方向に進退せられる構成とせずとも、図3及び図7実線図示の状態で固定された構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、液体入り容器にフラッシュランプの閃光を照射してその容器の内面と内容液を殺菌処理する光殺菌システムの機能向上と信頼性向上に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る光殺菌システムの一例を概略的に示す斜視図
【図2】本発明に係る光殺菌システムに用いる閃光照射装置の動作を示す斜視図
【図3】閃光照射装置の正面図
【図4】図2及び図3に示す閃光照射装置による閃光の照射数と残菌数との関係を示すグラフ
【図5】液体入り容器を倒立状態として閃光照射装置へ搬送する機構を示す側面図
【図6】倒立状態とした液体入り容器を搬送するための搬送用冶具を示す斜視図
【図7】本発明に係る光殺菌システムに用いる閃光照射装置の他の例を示す正面図
【図8】従来の閃光照射装置を用いて液体入り容器を殺菌処理する図
【図9】図8に示す閃光照射装置による閃光の照射数と残菌数との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0037】
1 液体入り容器(輸液ボトル)
2 容器本体
2B ボディ部
2N ネック部
3 内容液
4 蓋(又は栓)
6 ヘッドスペースとなる空間
8 反転装置
9 閃光照射装置
10R 照射器
10L 照射器
11 棒状フラッシュランプ
12 樋型凹面反射鏡
C 筒型チャンバ
15 反射鏡基材
16 紫外線反射膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過性材料で成る容器本体に充填された内容液の液面とその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓との間にヘッドスペースとなる空間が生ずる液体入り容器に、殺菌作用を奏する波長域の紫外線を放射するフラッシュランプを設けた閃光照射装置で閃光を照射して、その液体入り容器の内面と内容液を殺菌処理する光殺菌システムであって、前記液体入り容器をその容器本体の口を塞ぐ蓋又は栓の内面が内容液に浸された倒立状態もしくは傾斜状態とし、該容器に対してその側方から前記閃光照射装置で閃光を照射するように構成されていることを特徴とする光殺菌システム。
【請求項2】
前記閃光照射装置が、前記倒立状態もしくは傾斜状態とした液体入り容器を一列に並べて搬送する搬送路を挟んでその両側から対向するように配置された一対の照射器で構成され、両照射器が、両者間に到来した複数個の液体入り容器に対してその側方から閃光を一括照射する棒状フラッシュランプと樋型凹面反射鏡とで構成されている請求項1記載の光殺菌システム。
【請求項3】
前記両照射器が、互いに接近・離反する方向に進退せられるように構成されると共に、両者が互いに接近せられたときに両者の樋型凹面反射鏡によって棒状フラッシュランプの閃光を閉じ込める筒型チャンバが形成されるように構成されている請求項2記載の光殺菌システム。
【請求項4】
前記搬送路に、正立状態で搬送される液体入り容器を反転させて前記倒立状態もしくは傾斜状態とする反転装置が設置され、該反転装置の後段側に前記閃光照射装置が設置されている請求項2又は3記載の光殺菌システム。
【請求項5】
前記液体入り容器の容器本体が、ネック部を有するボトルで成り、前記両照射器の棒状フラッシュランプが、両者間に到来した液体入り容器の容器本体のネック部と至近距離から対峙する位置に配設されている請求項2、3又は4記載の光殺菌システム。
【請求項6】
前記樋型凹面反射鏡が、樋型の形状に成形された反射鏡基材の凹面に赤外線透過特性を有する紫外線反射膜が形成された構成となっている請求項2、3、4又は5記載の光殺菌システム。
【請求項7】
互いに対向するように配置されて互いに接近・離反する方向に進退せられる一対の照射器が、両者が互いに接近せられたときに閃光を照射する棒状フラッシュランプと樋型の形状に成形した反射鏡基材の凹面に赤外線透過特性を有する紫外線反射膜が形成された樋型凹面反射鏡とで構成されると共に、両照射器が互いに接近せられたときに、両者の樋型凹面反射鏡によって棒状フラッシュランプの閃光を閉じ込める筒型チャンバが形成されるように構成されている光殺菌システム用の閃光照射装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−126189(P2007−126189A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321148(P2005−321148)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】