説明

光沢の少ない熱成形押出しシート材

本発明は、エラストマー成分およびプロピレン成分を含む組成物であって、エラストマー成分が、任意にジエンを含有する、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンポリマーを含み、かつポリプロピレン成分が少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含む組成物に向けられる。好ましくは、エラストマー成分はパラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で約0.7〜約8のメルトタンデルタを有し;並びに「エラストマー成分のメルトタンデルタ」の「プロピレン成分のメルトタンデルタ」に対する比は0.5〜4である。本発明はまた、そのような組成物の製造方法およびそれらから調製される低光沢物品も提供する。本発明の組成物は、光沢が少ない熱成形シート材の製造に特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2005年5月12日出願の仮出願第60/680,339号の優先権を主張し、この仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は熱成形押出しシート材に適する組成物に関する。本発明は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーを含むエラストマー成分および分枝ポリプロピレンを含むプロピレン成分を含む組成物から形成される熱成形押出しシート材に関する。エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、任意に、ジエンを含むことができる。本発明の組成物は、シート材およびこれらの組成物から調製される他の物品の光沢の制御に用いることもできる。
【背景技術】
【0003】
一つ以上のエチレン/α−オレフィンエラストマーおよび一つ以上のポリプロピレンの配合物を組立物品または製品、例えば、機器パネルおよびドアパネルの製造に用いることは公知である。例えば、米国特許第6,372,847号および国際公開WO 00/26268を参照のこと。これらの配合物および製品は多くの望ましい品質、例えば、良好から優れた溶融強度並びに処理性、成型性、衝撃および擦傷耐性、モジュラス、弾性等を示す。しかしながら、幾つかの用途においては、これらの組立物品または製品が示す光沢は多すぎる。
【0004】
光沢を測定するための様々な方法が存在する。通常用いられる方法の1つは反射率計を用いる。この方法は、照射角(垂線から部品表面までの光源角度)および等価(典型的には)反射/視認角(垂線から部品表面までの検出器角度)で設置された、黒色ガラス標準(例えば、100単位光沢)に対して較正された検出器と列をなす光源を用いる。最も一般的に用いられる視認角は60度であり、これは、反射率単位が70度を超え(非常に高い光沢)、または10度以下に低下する(マット仕上げ)とき、それぞれ、20度まで減少させ、または85度まで増加させることができる。
【0005】
光沢を制御するための様々な方法が存在する。方法の1つは充填剤、例えば、タルク、雲母等を熱成形に先立って配合物に組み込む(典型的には、不均一表面の充填剤が多いほど仕上げられた製品において示される光沢が少ない)。他の方法には以下が含まれる:(1)型の表面の制御(型の表面が滑らかなほど光沢が多い)、(2)配合物への顔料の組み込み(異なる顔料は異なる光周波数を吸収する)並びに(3)エラストマー選択(例えば、エチレン/α−オレフィンコポリマー、EPDM等)および「エラストマーの結晶性またはマトリックスポリマー(例えば、ポリプロピレン)に対する」配合比。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの様々な光沢制御方法は全て多かれ少なかれ有効ではあるが、問題または不利益がないものはない。充填剤および/または顔料の使用は少なくとも1つのさらなる配合工程を必要とし、配合物の比重を増加させる。充填剤および/または顔料の添加は、分散、処理量等を促進するのに他の処理助剤の使用を必要とすることもある。これは、次に、材料および処理コストの両面で、配合物のコストを増加させる。型表面の処理は、有効性およびコストの両面で、特にはその型が異なる光沢値の製品の調製に用いられる(したがって、各々の光沢要求に別の型を必要とする)場合、問題となり得る。配合物における様々な型および量のエラストマーが、通常、充填剤および顔料の使用に好ましいものであるが、最終製品の特定の特性、例えば、モジュラス、衝撃耐性および他の機械的特性に対して重大な影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
したがって、組成物または最終製品のレオロジー、熱的および/または機械的特性を損なうことなしに、ポリマー成分の濃度を変化させて最終製品における光沢レベルを低下させることができるポリマー組成物に対する必要性が存在する。これらの必要性の幾つかおよび他のものが以下の発明によって満たされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はエラストマー成分およびプロピレン成分を含む組成物に向けられる。これらの組成物は有利なレオロジー特性を有し、低光沢値を有する物品、例えば、熱成形シート材の製造に十分適する。
【0009】
本発明の一態様において、この組成物は、任意にジエンを含有する、一つ以上のエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含むエラストマー成分、および一つ以上の分枝ポリプロピレンを含むプロピレン成分を含み、そのような組成物は、類似の条件下で形成され、かつプロピレン成分が分枝ポリプロピレンを含有しないことを除いて全ての側面で類似する組成物から形成される物品の光沢レベルよりも低い光沢レベルを有する、製造物品、例えば、熱成形押出し物品を形成する。好ましくは、その熱成形物品は160℃の熱成形温度で形成される。
【0010】
より好ましくは、本発明は、エラストマー成分およびプロピレン成分を含む組成物であって、エラストマー成分が、任意にジエンを含有する、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含み、エラストマー成分が、パラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒および190℃および15パーセント歪みでの測定で、0.7〜8のメルトタンデルタ(melt tan delta)を有し、プロピレン成分が少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含み、かつ「エラストマー成分のメルトタンデルタ」の「プロピレン成分のメルトタンデルタ」に対する比が0.5〜4である組成物を提供する。
【0011】
さらなる態様において、この組成物は、エラストマー成分およびポロプロピレン成分の合計重量を基準にして、20〜45重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含む。
【0012】
本発明の別の態様において、この組成物は110℃以上の熱機械分析装置(TMA)たわみ温度を有し、かつ以下のTMA温度たわみ関係:
TMA=3.71(PPwt%)+5.43(EAOtandel)−53(EAO/PPtandel)+7.54(EAOtandel)(EAO/PPtandel)−0.42(PPwt%)(EAOtandel)+0.49(PPwt%)(EAO/PPtandel)+19.38
(式中:
PPwt%はポリプロピレンの重量パーセントであり;
EAOtandelはエチレン/α−オレフィンのタンデルタであり;および
PPtandelはポリプロピレンのタンデルタである)
を満たす。
【0013】
本発明は:
(i)任意にジエンを含有する、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含み、かつパラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で、0.7〜8のメルトタンデルタ(melt tan delta)を有するエラストマー成分、並びに(ii)少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含むプロピレン成分を含む組成物であって、「エラストマー成分のメルトタンデルタ」の「分枝プロピレンのメルトタンデルタ」に対する比が少なくとも約0.5〜4であり、エラストマー成分およびプロピレン成分の合計重量を基準にして少なくとも20〜45重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含み、並びにエラストマー成分が5cN以上の溶融強度を有し、かつプロピレン成分が5cN以上の溶融強度を有する組成物をも提供する。
【0014】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む物品も提供する。
【0015】
上で論じられるように、本発明は以下を含む組成物を提供する:(1)任意にジエンを含有する、一つ以上のエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含むエラストマー成分、および(2)一つ以上の分枝ポリプロピレンを含むプロピレン成分。そのような組成物は、プロピレン成分が分枝ポリプロピレンを含まないことを除いて全ての側面で類似の組成物から調製される物品と比較して、光沢がより少ない熱成形押出し物品を生成する。この組成物は、典型的には、少なくとも大多数量(すなわち、50重量パーセントを超える)エラストマー成分(一つ以上のエチレン/α−オレフィンインターポリマー)、より好ましくは、少なくとも60重量パーセントのエラストマー成分;並びに、エラストマー成分およびプロピレン成分の合計重量を基準にして、少なくとも20重量パーセント、または少なくとも25重量パーセントであるが、好ましくは、40重量パーセントまたは45重量パーセント以下のポリプロピレン成分;並びに、好ましくは、エラストマー成分および分枝ポリプロピレン成分の合計重量を基準にして、25重量パーセント〜40重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含む。
【0016】
本発明の別の態様において、この組成物は(i)パラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で、0.7〜8、より好ましくは、0.9〜8のメルトタンデルタ(すなわち、粘性モジュラスの弾性モジュラスに対する比)を有するエチレン/α−オレフィンエラストマー成分;および(ii)分枝ポリプロピレンを含むことを特徴とし;ただし、(a)「エチレン/α−オレフィンエラストマーのメルトタンデルタ」の「分枝ポリプロピレンのメルトタンデルタ」に対する比は少なくとも0.5〜4であり、(b)組成物は、エラストマー成分および分枝ポリプロピレンの合計重量を基準にして、20〜45または20〜40、好ましくは、25〜45または25〜40重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含み、並びに(c)組成物は110℃以上の熱機械分析装置(TMA)たわみ温度を有し、かつ以下のTMA温度たわみ関係:
TMA=3.71(PPwt%)+5.43(EAOtandel)−53(EAO/PPtandel)+7.54(EAOtandel)(EAO/PPtandel)−0.42(PPwt%)(EAOtandel)+0.49(PPwt%)(EAO/PPtandel)+19.38
(式中:
PPwt%はポリプロピレンの重量パーセントであり;
EAOtandelはエチレン/α−オレフィンのタンデルタであり;および
PPtandelはポリプロピレンのタンデルタである)
を満たす。
【0017】
(実施例において記述される)Rheometric Scientific ARESモデル振動パラレルプレートレオメータを用いて測定されるメルトタンデルタはポリマーにおける長鎖分枝(LCB)の間接的な測定である。上記等式はエチレン/α−オレフィン(EAO)ポリマーのLCBをプロピレンポリマーのLCBに関係付ける。本発明のポリマー配合物は典型的には不均一であって、ポリプロピレンは典型的には分離または不連続相であり、かつEAOはマトリックスまたは連続相である。
【0018】
分枝ポリプロピレンは、典型的には、非分枝ポリプロピレンよりも低いタンデルタレオロジー(tan deltarheology)を有し、「エラストマーおよびポリプロピレンの分枝の総レベル」と押出し処理との間に関係が存在する。存在する分枝の総数が多すぎる場合、押出し配合およびシート製造は極端に困難になる(ダイヘッド圧が高すぎる、神経に障る(すなわち、粗く、または波打った表面の)シートが製造される、等)。しかしながら、驚くべきことに、本発明の低分枝エチレンα−オレフィンエラストマーおよび分枝ポリプロピレンの60/40配合物、並びに中程度分枝エチレンα−オレフィンエラストマーおよび分枝ポリプロピレンの「80/20〜60/40」配合物、より好ましくは、60/40配合物は、全て、配合およびシート押出し(表面が粗くない無縁の平滑シート)の最中に良好に処理され、両者とも、同じエラストマーおよび非分枝ポリプロピレンのみを含有するプロピレン成分を含む70/30配合物から調製される物品の光沢値と比較して、より低い光沢値を有する物品を生成する。これらのエラストマー/プロピレン配合物中のポリプロピレン含量の増加は、典型的には、光沢を増やす(これは、押出しシートをより光沢の多いものにし、したがって、あまり望ましくない)ため、このより少ない光沢は驚くべきものである。明らかに、いかなる理論によっても束縛されることなしに、他の条件が同じであるならば、溶融段階でのポリプロピレンのタンデルタが低いほど押出しシートおよびその押出しシートから製造されるあらゆる物品の光沢が少なくなるものと思われる。
【0019】
本発明の別の態様においては、任意にジエンを含む、一つ以上のエチレン/α−オレフィンエラストマーおよび一つ以上の分枝ポリプロピレンを含むポリマー組成物から製造されるシートが、4以下の60°光沢測定値を有する、グレインレザー・エンボス加工パターン化シートを生成する。本発明のさらに別の態様においては、このグレインレザー・エンボス加工パターン化シートから製造される製造部品、例えば、熱成形部品が10以上の60°光沢を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上で論じられるように、本発明はエラストマー成分およびプロピレン成分を含む組成物に向けられる。これらの組成物は有利なレオロジー特性を有し、低光沢値を有する物品、例えば、熱成形シート材の製造に十分に適する。
【0021】
本発明の一実施形態において、この組成物は、任意にジエンを含有する、一つ以上のエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含むエラストマー成分、および一つ以上の分枝ポリプロピレンを含むプロピレン成分を含有し、そのような組成物は、類似の条件下で形成され、かつプロピレン成分が分枝ポリプロピレンを含有しないことを除いて全ての側面で類似する組成物から形成される物品の光沢レベルよりも低い光沢レベルを有する、製造物品、例えば、熱成形押出し物品を形成する。好ましくは、その熱成形物品は160℃の熱成形温度で形成される。
【0022】
好ましい実施形態において、本発明は、エラストマー成分およびプロピレン成分を含む組成物であって、
エラストマー成分が、任意にジエンを含有する、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含み、およびエラストマー成分が、パラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で、0.7〜8、好ましくは0.8〜8、より好ましくは0.9〜8のメルトタンデルタを有し、
プロピレン成分が少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含み、並びに
「エラストマー成分のメルトタンデルタ」の「プロピレン成分のメルトタンデルタ」に対する比が0.5〜4、好ましくは、1〜4である組成物を提供する。
【0023】
一実施形態において、この組成物は、エラストマー成分およびポロプロピレン成分の合計重量を基準にして、20〜45重量パーセント、好ましくは、25〜45重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含む。
【0024】
別の実施形態において、この組成物は110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上の熱機械分析装置(TMA)たわみ温度を有し、かつ以下のTMA温度たわみ関係:
TMA=3.71(PPwt%)+5.43(EAOtandel)−53(EAO/PPtandel)+7.54(EAOtandel)(EAO/PPtandel)−0.42(PPwt%)(EAOtandel)+0.49(PPwt%)(EAO/PPtandel)+19.38
(式中:
PPwt%はポリプロピレンの重量パーセントであり;
EAOtandelはエチレン/α−オレフィンのタンデルタであり;および
PPtandelはポリプロピレンのタンデルタである)
を満たす。
【0025】
別の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは−6〜70のPRR値を有する。さらなる実施形態において、エチレン/α−オレフィンエラストマーは8〜70、好ましくは12〜60、より好ましくは15〜55、最も好ましくは18〜50のPRR値を有する。
【0026】
さらに別の実施形態において、エラストマー成分は0.10rad/秒で200,000ポアズを超える剪断粘度および5cNを超える、好ましくは、7cNを超える溶融強度を有する。
【0027】
別の実施形態において、少なくとも一つの分枝ポリプロピレンは0.2〜40g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1〜10g/10分(230℃/2.16kg)のメルトフローレートを有する。
【0028】
さらに別の実施形態において、少なくとも一つの分枝ポリプロピレンは、好ましくは、パラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃、15パーセント歪みでの測定で、2未満、好ましくは1.5未満のタンデルタを有する。
【0029】
本発明はまた、さらに、エラストマー成分の量がエラストマー成分およびプロピレン成分の合計重量を基準にして60〜80重量パーセント、好ましくは、60〜75重量パーセントの量で存在し、かつプロピレン成分の量がエラストマー成分およびプロピレン成分の合計重量を基準にして40〜20重量パーセント、好ましくは、40〜25重量パーセントの量で存在するような組成物も提供する。
【0030】
本発明は、
(i)任意にジエンを含有する、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含むエラストマー成分であって、パラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で、0.7〜8、好ましくは0.8〜8、より好ましくは0.9〜8のメルトタンデルタを有するエラストマー成分;および
(ii)少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含むプロピレン成分、
を含み、
「エラストマー成分のメルトタンデルタ」の「分枝ポリプロピレンのメルトタンデルタ」に対する比が少なくとも約0.5〜約4、好ましくは、1〜4であり、
エラストマー成分およびプロピレン成分の合計重量を基準にして、少なくとも20〜45、より好ましくは25〜45重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含み、並びに
エラストマー成分が5cN以上、好ましくは、8cN以上の溶融強度を有し、かつプロピレン成分が5cN以上、好ましくは、8cN以上の溶融強度を有する組成物をも提供する。
【0031】
別の実施形態において、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーのα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテンのうちの少なくとも1つである。
【0032】
さらに別の実施形態において、少なくとも一つの分枝ポリプロピレンはプロピレン並びに、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテンからなる群より選択されるα−オレフィンのコポリマーである。
【0033】
別の実施形態において、ポリプロピレン成分は分枝ポリプロピレンおよび非分枝ポリプロピレンの混合物を含む。別の実施形態において、分枝ポリプロピレンの量はプロピレン成分中で少なくとも50重量パーセントである。
【0034】
さらに別の実施形態において、エラストマー成分は分枝エチレン/α−オレフィンインターポリマーおよび非分枝エチレン/α−オレフィンインターポリマーの混合物を含む。
【0035】
別の実施形態において、組成物は、無水マレイン酸基もしくは無水コハク酸基でグラフト化された、少なくとも一つのエチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーをさらに含む。さらに別の実施形態において、組成物は少なくとも一つの充填剤をさらに含む。さらなる実施形態において、少なくとも一つの充填剤は珪灰石、炭酸カルシウムまたはタルクである。
【0036】
別の実施形態において、組成物は少なくとも一つのポリジメチルシロキサンまたは少なくとも一つの官能化ポリジメチルシロキサンをさらに含む。さらに別の実施形態において、組成物は脂肪族アミドをポリエチレン坦体中にさらに含む。
【0037】
さらに別の実施形態において、組成物は、加工油、酸化防止剤、表面張力改質剤、UV安定化剤、スクラッチ/擦傷添加物、粘着防止剤、分散剤、発泡剤、潤滑剤、架橋剤、抗菌剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、加水分解安定化剤、離型剤、増量剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される一つ以上の添加物を含む。
【0038】
別の実施形態において、組成物は、低密度ポリエチレンおよび直鎖低密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも一つのポリマーを含む。
【0039】
別の実施形態において、組成物は110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上のTMAたわみ温度を有する。
【0040】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む物品も提供する。さらなる実施形態において、その物品は10未満の60°光沢測定値を有する。
【0041】
本発明はまた、本発明の組成物から製造されるシートも提供する。さらなる実施形態において、そのようなシートは、グレインレザーでエンボス加工されるとき、4未満の60°光沢測定値を有するエンボス加工パターンを生成する。
【0042】
本発明はまた、さらに、そのようなシートから製造され、かつ10未満の60°光沢測定値を有する物品も提供する。
【0043】
本発明はまた、本発明の組成物から製造される非エンボス加工平滑表面シートも提供する。さらなる実施形態において、そのようなシートは11未満の60°光沢測定値を有する。
【0044】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む自動車ボディ部品も提供する。さらなる実施形態において、そのような部品は内装用自動車部品である。さらなる実施形態において、内装用部品は機器パネルスキン、ドアパネルスキン、座席装備品、固定ウェザストリップ(static weather strip)、グローブボックススキンまたはアームレストスキンの形態にある。
【0045】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む物品であって、ポリマーフィルム、織物コートシート、ポリマーシート、フォーム、管構造、繊維またはコーティングの形態にある物品も提供する。別の実施形態において、その物品はごみ箱、保存容器、包装容器、芝生設備のストリッピングまたはウェビング(lawn furniture stripping or webbing)、芝刈り機、庭用ホース、庭用器具部品、冷蔵庫用ガスケット、レジャー用RV部品、ゴルフカート部品、ユーティリティカート部品、玩具またはウォータークラフト部品、屋根ぶき部品、机の縁、壁基材外形(wall base profile)または履き物部品の形態にある。
【0046】
別の実施形態において、本発明の物品は、熱成形法、ブロー成型法、異形押出し法、カレンダー処理法、注型法、シート押出し法またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の製造法によって調製される。
【0047】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素および一つ以上の添加物を含む物品であって、その一つ以上の添加物が、その構成要素または物品の形成に先立って、組成物と「インライン」配合される物品も提供する。さらなる実施形態において、組成物および添加物はその構成要素または物品の直接形成において用いられるプロセス機器構成要素内で「インライン」配合される。
【0048】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素および一つ以上の添加物を含む物品であって、その一つ以上の添加物が、その構成要素または物品の形成に先立って、組成物とバッチ法または押出し法で予備配合される物品も提供する。
【0049】
本発明は本明細書に開示される本発明の組成物の製造方法であって、エラストマー成分をプロピレン成分と、反応後配合手順または反応器内配合手順を用いて配合することを含む方法も提供する。本発明の方法および組成物のさらなる実施形態は本明細書に開示される(前記または下記の本文)。
【0050】
本発明の組成物は本明細書に開示される(前記または下記の本文)2つ以上の実施形態の組み合わせを含むことができる。
【0051】
本発明の物品は本明細書に開示される(前記または下記の本文)2つ以上の実施形態の組み合わせを含むことができる。
エラストマー成分
【0052】
本発明の組成物はエラストマー成分を含み、このエラストマー成分は少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含み、このインターポリマーはジエンを任意に含むことができる。ここで用いられる「インターポリマー」は、その内部で重合した、少なくとも2種類のモノマーを有するポリマーを指す。それには、例えば、コポリマー、ターポリマーおよびテトラポリマーが含まれる。それには、特には、エチレンを少なくとも一つのコモノマー、典型的には、3〜20個の炭素原子(C3〜C20)、より好ましくは、3〜12個の炭素原子(C3〜C12)、さらにより好ましくは、3〜8個の炭素原子(C3〜C8)のアルファオレフィン(α−オレフィン)と重合させることによって調製されるポリマーが含まれる。実例となるα−オレフィンには、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、ブタジエンおよびスチレンが含まれる。α−オレフィンは、望ましくは、C3〜C10 α−オレフィンである。
【0053】
実例となるポリマーには、エチレン/プロピレン(EP)コポリマー、エチレン/ブテン(EB)コポリマー、エチレン/オクテン(EO)コポリマー、エチレン/アルファ−オレフィン/ジエン修飾(EAODM)インターポリマー、例えば、エチレン/プロピレン/ジエン修飾(EPDM)インターポリマーおよびエチレン/プロピレン/オクテンターポリマーが含まれる。好ましいコポリマーには、EP、EB、エチレン/ヘキセン−1(EH)およびEOポリマーが含まれる。
【0054】
適切なジエンモノマーには共役および非共役ジエンが含まれる。慣習的に、非共役ジオレフィンが架橋のための硬化部位として用いられる。非共役ジオレフィンは、C6〜C15直鎖、分枝鎖または環状炭化水素ジエンであり得る。実例となる非共役ジエンは、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエンおよび1,5−ヘプタジエン;分枝鎖非環式ジエン、例えば、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、5,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンおよびジヒドロミルセンの混合異性体;単環脂環式ジエン、例えば、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン;多環脂環式融合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネンおよび5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネンである。ジエンは、好ましくは、ENBおよび1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンからなる群より選択される非共役ジエン、より好ましくは、ENBである。
【0055】
適切な共役ジエンには、1,3−ペンタジエン、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエンまたは1,3−シクロペンタジエンが含まれる。EAODMジエンモノマー含量は、それが共役ジエンを含むか、非共役ジエンを含むか、または両者を含むかにかかわらず、非共役ジエンについて上で指定される限度内に入る。
【0056】
好ましいインターポリマーは、典型的にはLCBを誘導する、いかなるジエンモノマーも実質的に含まないが、コストが許容し得るものであり、かつ望ましいインターポリマー特性、例えば、処理性、引張り強さおよび伸張が許容し得ないレベルまで劣化しないのであれば、そのようなモノマーを含めることができる。そのようなジエンモノマーには、ジシクロペンタジエン、NBD、メチルノルボルナジエン、ビニル−ノルボルネン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエンおよび1,9−デカジエンが含まれる。添加されるとき、そのようなモノマーは、典型的には、インターポリマー重量を基準にして、ゼロを超え3重量パーセントまで、より好ましくは、ゼロを超え2重量パーセントまでの範囲内の重量で添加される。
【0057】
本発明のエラストマー成分(EAOインターポリマー)は、分枝または非分枝エチレン/α−オレフィンインターポリマーまたは2種類以上の分枝および/または非分枝インターポリマーの配合物を含むことができる。エチレン/α−オレフィンインターポリマーにおける分枝の存在または不在および、分枝が存在する場合には、分枝の量は広範に変化させることができ、熱成形法および配合物中の分枝ポリプロピレンの量に大きく依存する。雄型、例えば、配合物から製造されるプラスチックの平滑シートにパターンを付与するのに用いられるローラーを用いる熱成形法は、好ましくは、一つ以上の中程度から高度に分枝したエチレン/α−オレフィンインターポリマーおよび分枝ポリプロピレンの組成物からそのプラスチックシートを形成する。
【0058】
エチレン/α−オレフィン(EAO)分枝の性質は本発明の実施には重要ではなく、そのようなものとして都合よく変化させることができる。好ましくは、分枝は長鎖分枝(LCB)である。LCBをポリマー主鎖に組み込む能力は公知であり、長年にわたって実践されている。米国特許第3,821,143号においては、1,4−ヘキサジエンを分枝するモノマーとして用いてLCBを有するエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)ポリマーを調製した。そのような分枝剤(branching agent)は、時折、H分枝剤と呼ばれる。米国特許第6,300,451号および第6,372,847号もLCBを有するポリマーを調製するために様々なH型分枝剤を用いる。米国特許第5,278,272号においては、拘束幾何触媒(CGC)がビニル終止マクロモノマーをポリマー主鎖に組み込んでLCBポリマーを形成する能力を有することが発見された。そのような分枝はT型分枝と呼ばれる。これらの特許(米国特許第3,821,143号;第6,300,451号;第6,372,847号および第5,278,272号)の各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0059】
‘272号特許は、そのようなCGCが巨大不飽和分子をポリマー主鎖に組み込むそれらの能力において独自であることを教示する。これらのCGCによって組み込むことができるLCBの量は0.01 LCB/1000炭素原子〜3 LCB/1000炭素原子である。一分子内のLCBの程度を定義するのに用いることができる様々な他の方法が存在する。そのような方法の1つが米国特許第6,372,847号において教示されている。この方法はMLRA/MV比の算出にムーニー(Mooney)応力緩和データを用いる。MLRAはポリマーのムーニー緩和面積(Mooney Relaxation Area)であり、MVはムーニー粘度(Mooney viscosity)である。他の方法はPRRであり、これはポリマー中のLCBのレベルの算出にインターポリマー粘度を用いる。
【0060】
インターポリマー粘度は、ポアズ(ダイン・秒/平方センチメートル(d・秒/cm2))表示、毎秒0.1〜100ラジアン(rad/秒)の範囲内の剪断速度および190℃で、窒素雰囲気の下、動的粘弾性測定装置(dynamic mechanical spectrometer)(例えば、Rheometrics製のRMS−800またはARES)を0.1〜100rad/秒によって生成される動的掃引の下で用いて都合よく測定される。0.1rad/秒および100rad/秒での粘度は、それぞれ、V0.1およびV100と表すことができ、この2つの比はRRと呼ばれ、V0.1/V100と表される。PRRは下記式によって算出される:
PRR=RR+[[3.82−インターポリマー・ムーニー粘度(125℃でのML1+4)]×0.3]。
【0061】
本発明の一実施形態において、EAOインターポリマーは8〜70、好ましくは12〜60、より好ましくは15〜55、最も好ましくは18〜50のPRRを有する。別の実施形態においては、EAOインターポリマーは−6〜70のPRRを有する。−6〜70および8〜70(PRR値)の全ての個別の値並びに下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。現在市販されるEAO樹脂の多くは3未満のPRR値に等しいLCBのレベルを有する。基準点として、70のPRRは7.6のMLRA/MV値と等価である。
【0062】
好ましくは、本発明の実施において用いられるインターポリマー中のLCBの型は、H型分枝とは反対に、T型分枝である。T型分枝は、典型的には、エチレンまたは他のアルファオレフィンと鎖端不飽和マクロモノマーとを、拘束幾何触媒(メタロセン型またはシングルサイト触媒)の存在下、適切な反応条件、例えば、WO 00/26268(米国対応米国特許第6,680,361号、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものの下で共重合させることによって得られる。極端に高レベルのLCBが望ましい場合、T型分枝にはLCBの程度に対する実用上限があるため、H型分枝が好ましい方法である。WO 00/26268に記載されるように、T型分枝のレベルが増加するに従い、製造プロセスの効率または処理量は、製造が経済的に実施不能となる点に到達するまで大きく低下する。T型LCBポリマーは、拘束幾何触媒により、測定可能なゲルなしに非常に高いレベルのT型LCBを伴って製造することができる。生長するポリマー鎖に組み込まれるマクロモノマーが有する反応性不飽和部位は唯一つであるため、生じるポリマーは長さの異なる側鎖のみをポリマー主鎖に沿って異なる間隔で含む。
【0063】
H型分枝は、典型的には、エチレンまたは他のオレフィンを、その重合プロセスにおいて非メタロセン型の触媒と反応性である2つの二重結合を有するジエンと共重合させることによって得られる。その名称が暗示するように、ジエンは1つのポリマー分子をジエン架橋によって別のポリマー分子に結合させ、生じるポリマー分子はHに似ており、これは長鎖分枝というよりも架橋と記述することができる。H型分枝は、典型的には、極端に高レベルの分枝が望ましいときに用いられる。用いられるジエンが多すぎる場合、ポリマー分子はそのポリマー分子がもはや(溶液法における)反応溶媒に溶解しないほど多くの分枝または架橋を形成することができ、結果として、溶液から分離してポリマー中でのゲル粒子の形成を生じる。加えて、H型分枝剤の使用はメタロセン触媒を失活させ、触媒効率を低下させることがある。したがって、H型分枝剤が用いられる場合、用いられる触媒は典型的にはメタロセン触媒ではない。US 6,372,847(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)においてH型分枝ポリマーの調製に用いられる触媒は、バナジウム型触媒である。
【0064】
LaiらはT型LCBポリマーを米国特許第5,272,236号において記述しており、そこではLCBの程度は0.01 LCB/1000炭素原子〜3 LCB/1000炭素原子であり、触媒は拘束幾何触媒(メタロセン型またはシングルサイト触媒)である。the Journal of Rheology, 47(3), pp 717-736 May/June 2003, "Separating the Effects of Sparse Long-Chain Branching on Rheology from Those Due to Molecular Weight in Polyethylenes,"におけるP. DoerpinghausおよびD. Bairdによると、フリーラジカル法、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)の調製に用いられるものは極端に高レベルのLCBを有するポリマーを生成する。例えば、DoerpinghausおよびBairdの表1における樹脂NA952はフリーラジカル法によって調製されたLDPEであり、表IIによると、3.9 LCB/1000炭素原子を含む。LCBの平均的なレベルを有すると考えられる、The Dow Chemical Companyから商業的に入手可能なエチレン・アルファオレフィン(エチレン−オクテンコポリマー)、表IおよびIIの樹脂Affinity PL1880およびAffinity PL1840は、それぞれ、0.018および0.057 LCB/1000炭素原子を含む。
【0065】
本発明の特定の実施形態において、本発明のエラストマー(EAO)成分は、現在商業的に入手可能なEAOを大きく超えるT型LCBレベルであるが、H型およびフリーラジカル分枝剤を用いることによって得ることができるものを下回るLCBレベルを有する。下記表1は様々な型のポリマーのLCBレベルを列挙する。EAO−GからEAO−JまでにおけるLCBはH型であり、他の全ての列挙されるEAOにおけるLCBはT型である。全てのEAOは、バナジウム触媒を用いて調製されるEAO−G〜EAO−Jを除いて、拘束幾何触媒を用いて調製される。
【表1】

【0066】
適切なエチレンインターポリマーには、The Dow Chemical Companyから入手可能なENGAGE(商標)およびNORDEL(商標)ポリマー並びにExxonMobil Chemical Companyから入手可能なVISTALON(商標)およびEXACT(商標)ポリマー並びにMitsui Chemicalから入手可能なTAFMER(商標)ポリマーが含まれる。
【0067】
別の実施形態において、エラストマー成分は、(1)エチレンを含む少なくとも一つのエラストマー並びに、少なくとも3個の炭素原子を有するアルファオレフィン、ジエンおよびそれらの組み合わせから選択される、少なくとも一つのコモノマー並びに(2)カップリング量の少なくとも一つのポリスルホニルアジドを含む混合物を、少なくともそのポリスルホニルアジドの分解温度まで、そのポリスルホニルアジドの少なくとも約80重量パーセントの分解に十分であり、かつ約2重量パーセント未満のゲル含有率を有するカップリングしたポリマーを生じるのに十分な時間加熱することによって調製される、カップリングしたポリマーを含む。そのようなポリマーは米国特許第6,376,623号;第6,506,848号および第6,528,136号に記載され;それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明の実施において用いられるEAOインターポリマーは、典型的には、100,000を超え、好ましくは、200,000を超える、0.1rad/秒剪断粘度(別名、低剪断粘度)を有する。この剪断粘度は、毎秒0.1ラジアン(rad/秒)の剪断速度、190℃、窒素雰囲気の下で、動的粘弾性測定装置、例えば、Rheometrics製のRMS−800またはARESを用いてポリマー粘度を測定することによって決定される。低剪断粘度はポリマーの分子量(MW)およびそのLCBの程度の影響を受ける。分子量は溶融強度によって間接的に測定される。一般的な規則として、ポリマーの分子量が大きいほど溶融強度は良好になる。しかしながら、分子量が大きくなりすぎると、ポリマーの処理は困難になる。ポリマー主鎖へのLCBの組み込みは高MWポリマーの処理性を改善する。したがって、低剪断粘度(0.1rad/秒)はポリマーにおけるMWおよびLCBのバランスの尺度である。
【0069】
本発明の実施において用いられるEAOインターポリマーは、典型的には5cN以上、好ましくは6cN以上、より好ましくは7cN以上または8cN以上の溶融強度を有する。一実施形態において、溶融強度は5cN〜50cN、好ましくは5cN〜35cN、より好ましくは5cN〜20cNである。5cN〜50cNの全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。
【0070】
溶融強度(MS)は、ここで用いられる場合、キャピラリレオメータダイから33逆秒(秒-1)の一定剪断速度で溶融押出しされるポリマーの溶融フィラメントに対して、そのフィラメントを1cm/秒の初期速度から0.24センチメートル毎秒毎秒(cm/秒2)の割合で加速する一対のニップローラーによって伸長させながら測定される、センチニュートン(cN)での最大張力である。溶融フィラメントは、好ましくは、Instronキャピラリレオメータの容器に充填されている10グラム(g)のポリマーを加熱し、ポリマーを190℃で5分(分)間平衡化した後、ポリマーを2.54cm/分のピストン速度で直径0.21cmおよび長さ4.19cmのキャピラリダイを通して押出すことによって生成する。張力は、好ましくは、フィラメントがキャピラリダイから排出される点の10cm直下にニップローラーが存在するように位置するGoettfert Rheotensで測定する。
【0071】
好ましくは、本発明の実施において用いられるEAOインターポリマーは1.5〜4.5、より好ましくは1.8〜3.8、最も好ましくは2.0〜3.4の分子量分布(MWD)を有する。1.5〜4.5の全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。本発明の実施における使用に適するEAOインターポリマーの多くは、WO 00/26268(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法によって製造することができる。
【0072】
別の実施形態において、エラストマー成分は0.84〜0.92g/cc、好ましくは0.85〜0.89g/cc、より好ましくは0.85〜0.88g/ccの密度を有する。0.84〜0.92g/ccの全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。
【0073】
別の実施形態において、エラストマー成分は0.05〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分、より好ましくは0.2〜2g/10分、または0.5〜1g/10分のメルトインデックス、I2(190℃/2.16kg)を有する。0.05〜10g/10分の全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。別の実施形態においては、エラストマー成分は2g/10分以下のメルトインデックス、I2を有する。
【0074】
別の実施形態において、エラストマー成分は少なくとも一つの均一に分枝した直鎖の、または均一に分枝した実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含む。均一ポリマーの調製方法は、米国特許第5,206,075号;米国特許第5,241,031号;およびPCT国際出願WO 93/03093に開示され;それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。均一エチレンα−オレフィンコポリマーの製造に関するさらなる詳細は米国特許第5,206,075号;米国特許第5,241,031号;PCT国際公開WO 93/03093;PCT国際公開WO 90/03414に開示され;それらの4つ全ては参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
「均一の」および「均一に分枝した」という用語は、コモノマーが所与のポリマー分子内に無作為に分布し、かつ実質的に全てのポリマー分子が同じエチレン対コモノマー比を有するエチレン/α−オレフィンポリマー(またはインターポリマー)に関して用いられる。均一に分枝したエチレンインターポリマーには、直鎖エチレンインターポリマーおよび実質的に直鎖のエチレンインターポリマーが含まれる。
【0076】
均一に分枝した直鎖エチレンインターポリマーのうちに含まれるものは、長鎖分枝を欠くものの、インターポリマーに重合されたコモノマーから誘導され、かつ同じポリマー鎖内および異なるポリマー鎖間の両方に均一に分布する短鎖分枝を有する、エチレンポリマーである。すなわち、均一に分枝した直鎖エチレンインターポリマーは、例えば、米国特許第3,645,992号においてElstonによって記述されるような均一分枝分布重合法を用いて製造される、直鎖低密度ポリエチレンポリマーまたは直鎖高密度ポリエチレンポリマーの場合とまさに同様に、直鎖分枝を欠く。均一に分枝した直鎖エチレン/α−オレフィンインターポリマーの商品例には、Mitsui Chemical Companyによって供給されるTAFMER(商標)ポリマーおよびExxonMobil Chemical Companyによって供給されるEXACT(商標)ポリマーが含まれる。
【0077】
本発明において用いられる実質的に直鎖のエチレンインターポリマーは米国特許第5,272,236号;第5,278,272号;第6,054,544号;第6,335,410号および第6,723,810号に記載され;各々の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。上で論じられるように、実質的に直鎖のエチレンインターポリマーは、コモノマーが所与のインターポリマー分子内に無作為に分布し、かつ実質的に全てのインターポリマー分子がそのインターポリマー内に同じエチレン/コモノマー比を有するものである。実質的に直鎖のエチレンインターポリマーは拘束幾何触媒を用いて調製される。拘束幾何触媒の例は米国特許第5,272,236号および第5,278,272号に記載される。
【0078】
加えて、実質的に直鎖のエチレンインターポリマーは長鎖分枝を有する均一に分枝したエチレンポリマーである。長鎖分枝はポリマー主鎖と同じコモノマー分布を有し、ポリマー主鎖の長さとほぼ同じ長さを有することができる。「実質的に直鎖」は、典型的には、平均で合計1000個の炭素(須佐および分枝炭素の両者を含む)あたり0.01の長鎖分枝から合計1000個の炭素あたり3つの長鎖分枝で置換されているポリマーに関するものである。
【0079】
実質的に直鎖のポリマーの商品例には、ENGAGE(商標)ポリマー(The Dow Chemical Company)およびAFFINITY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Company)が含まれる。
【0080】
実質的に直鎖のエチレンインターポリマーは均一に分枝したエチレンポリマーの独自のクラスを形成する。それらは米国特許第3,645,992号においてElstonによって記載される従来の均一に分枝したエチレンインターポリマーの周知クラスとは実質的に異なり、さらに、従来の不均一チーグラー・ナッタ触媒重合直鎖エチレンポリマー(例えば、米国特許第4,076,698号においてAndersonらによって開示される技術を用いて製造される、例えば超低密度ポリエチレン(ULDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE))と同じクラスでも;高圧フリーラジカル開始高度分枝ポリエチレン、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマーおよびエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマーと同じクラスでもない。
プロピレン成分
【0081】
本発明の配合物のプロピレン成分は少なくとも一つの分枝プロピレンホモポリマーまたは少なくとも一つの分枝プロピレンインターポリマーを含む。他の適切なプロピレン系ポリマーには、プロピレンと少なくとも一つのα−オレフィンとの分枝コポリマー;または分枝ホモポリマーおよび/または分枝コポリマーの配合物;並びに/または有核ホモポリマー(ncleated homopolymer)、有核コポリマーまたは分枝ホモポリマーおよび分枝コポリマーの有核配合物が含まれる。
【0082】
本発明の分枝ポリプロピレンポリマー成分は、アジドカップリングによって分枝および/またはレオロジー改変されているポリプロピレンインパクトコポリマーを含み、分枝および/またはカップリングしているポリプロピレンインパクトコポリマーをもたらすこともできる。ポリプロピレンインパクトコポリマーは、WO 01/58970(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように調製することができる。この‘970参考文献は、反応器が生成する、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーを含有するプロピレンインパクトコポリマー並びに20重量パーセント〜70重量パーセントのエチレン、ブテン、ヘキセンおよび/またはオクテンコモノマーを含有するプロピレンコポリマーを記載する。
【0083】
適切な分枝ポリプロピレンには、架橋助剤の存在の有無に関わらず、放射線、例えば、e−ビームまたはガンマ線によって形成される分枝および/またはカップリングしたポリプロピレンも含まれる。そのような分枝反応は、典型的には、不活性雰囲気下で行われる。
【0084】
他の適切なポリプロピレンポリマーには、米国特許第6,552,129号(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるようなカップリングポリマーが含まれる。米国特許第6,552,129号に記載されるように、ポリスルホニルアジドカップリングポリマーは以下の工程によって形成される:(a)第1ポリマーおよびポリスルホニルアジドの第1混合物を形成し;(b)次に、第1混合物と第2量の少なくとも一つの第2ポリマーとの第2混合物を形成し;並びに(c)第2混合物を、少なくともカップリング剤の分解温度まで、ポリマー鎖のカップリングが生じるのに十分な時間加熱する。さらなるプロピレンポリマーは、少なくとも一つのエチレン系エラストマー、カップリング量の少なくとも一つのポリスルホニルアジドおよびプロピレン系ポリマーの反応生成物または配合生成物から形成することができる。
【0085】
ここで用いられる場合、「分枝ポリプロピレン」、「分枝プロピレンホモポリマー」、「プロピレンおよび一つ以上のα−オレフィンの分枝コポリマー」または類似の用語は、1つ以上の(EAOインターポリマーについて前述される)H型またはT型分枝を含むポリプロピレンを意味する。アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーまたはLCBを有するコポリマーがT型分枝ポリプロピレンを例示するものである。H型分枝を有する分枝ポリプロピレンは、米国特許第6,472,473号および第6,841,620号に記載されるような反応性押出し、または米国特許第5,514,761号に記載されるような照射を用いて製造することができる。これら3つの特許の各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
適切な分枝ポリプロピレンには、米国特許第6,750,307号(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような、ポリプロピレン主鎖に組み込まれたポリエチレン分枝を含むポリマーも含まれる。ここで、アイソタクチックポリプロピレン主鎖を有する分枝オレフィンコポリマーはポリエチレン分枝および、任意に、一つ以上のコモノマーを含む。典型的には、分枝オレフィンコポリマーの総コモノマー含有率は0〜20モルパーセントである。その上、アイソタクチックポリプロピレンのポリエチレンに対する質量比は、典型的には、99.9:0.1〜50:50の範囲をとる。そのような分枝プロピレンコポリマーは、米国特許第6,750,307号に記載されるように、以下の工程によって調製することができる:a)エチレンを、任意に一つ以上の共重合性モノマーと共に、40%を超える鎖末端基不飽和を有するコポリマーを形成するのに十分な条件下での重合反応で共重合させ;b)a)の生成物をプロピレンおよび、任意に、一つ以上の共重合性モノマーと、重合反応器内、適切なポリプロピレン重合条件下で、アイソタクチックポリプロピレンを生成することが可能なキラル立体剛性(stereorigid)遷移金属触媒を用いて重合させ;並びにc)分枝オレフィンコポリマーを回収する。
【0087】
分枝プロピレンコポリマー中にα−オレフィンは、好ましくは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセンまたは4−メチル−1−ペンテンであり、エチレンがより好ましい。プロピレンコポリマー中のα−オレフィンは、好ましくは、エチレンである。コポリマーはランダムコポリマーであっても、ブロックコポリマーであっても、ランダムコポリマーおよびブロックコポリマーの配合物であってもよい。
【0088】
ポリマー配合物のプロピレン成分は、望ましくは、0.1〜150、好ましくは0.3〜60g/10分、より好ましくは0.4〜40g/10分、さらにより好ましくは0.5〜25g/10分または0.8〜25g/10分、最も好ましくは0.8〜10g/10分または0.8〜5g/10分のメルトフローレート(MFR)(230℃/2.16kg重)を有する。0.1〜150g/10分の全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。この成分は、望ましくは、145℃を超える融点をも有する。別の実施形態において、プロピレン成分は130℃〜180℃、好ましくは、140℃〜170℃の融点、Tmを有する。
【0089】
別の実施形態において、分枝ポリプロピレンは0.1〜150、好ましくは0.2〜40g/10分、より好ましくは0.5〜30g/10分のメルトフローレート(MFR)(230℃/2.16kg重)を有する。0.1〜150g/10分の全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。この成分は、望ましくは、145℃を超える融点をも有する。
【0090】
一実施形態において、ポリプロピレン成分は5cN〜50cN、好ましくは5cN〜35cN、より好ましくは5cN〜20cNの溶融強度を有する。5cN〜50cNの全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。
【0091】
ここで用いられる場合、「有核」は成核剤、例えば、Millikenから商業的に入手可能なジベンジルソルビトールであるMillad(登録商標)の添加によって修飾されているポリマーを指す。他の通常の成核剤を用いることもできる。
【0092】
分枝ポリプロピレンの調製は、Cecchin、米国特許第4,177,160号(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によって記述されるように、チーグラー触媒、例えば、アルミニウムジエチルモノクロライドと組み合わせたチタントリクロライドの使用を含むことができる。そのような高融点ポリマー(high melting polymer)の生成に用いられる重合法には、約50〜90℃および0.5〜1.5MPa(5〜15arm)で行うスラリー法、並びに非晶質ポリマーの除去に余分の手間をかけなければならない気相および液体モノマー法の両者が含まれる。α−オレフィンコポリマーを反応物に加えてブロックコポリマーを形成することができる。ポリプロピレンは、様々なメタロセン、シングルサイトおよび拘束幾何触媒のいずれかをそれらが関係する方法と共に用いることによって調製することもできる。
【0093】
適切な分枝ポリプロピレンには、Basellから入手可能なPROFAX(商標)分枝ポリプロピレン、Borealis製のDAPLOY(商標)およびThe Dow Chemical Company製のINSPIRE(商標)が含まれる。
組成物
【0094】
本発明の組成物はエラストマー成分およびポリプロピレン成分を含む。好ましい実施形態において、エラストマー成分は、任意にジエンを含有する、少なくとも一つのEAOインターポリマーを含み、プロピレン成分は少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含む。別の実施形態において、エラストマー成分(EAOインターポリマー)は50を超え75または80重量パーセントまでの量で存在し、50〜80重量パーセントの全ての個別の値は本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。別の実施形態において、プロピレン成分は50未満〜25または20重量パーセントの量で存在し、50〜20重量パーセントの全ての個別の値および下位範囲は本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。両成分の重量パーセントはエラストマー成分およびプロピレン成分の合計重量を基準とする。
【0095】
好ましい実施形態において、プロピレン成分は分枝ポリプロピレンを含み、これはエラストマーおよび分枝ポリプロピレンの合計重量を基準にして50未満から25または20重量パーセントまでの量で存在する。50〜20重量パーセントの全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。これらの量は、好ましくは、60〜75または80重量パーセントのエラストマー成分(EAO)および40〜25または20重量パーセントの分枝ポリプロピレン、より好ましくは、65〜75重量パーセントのエラストマー成分(EAO)および35〜25または20重量パーセントの分枝ポリプロピレンである。これらの量は合計で100重量パーセントなるように選択される。エラストマー成分(EAO)が50重量パーセント未満である場合、ポリプロピレンポリマーの物理特性効果が優勢となり始め(ポリプロピレンポリマーが連続相となる)、そのような組成物は、その物質の曲げモジュラスが不適切であるためにカレンダー処理、押出し、フォーム形成、ブロー成型または熱成形操作に不利益であるだけではなく、それらがより多くの光沢を示すために不利益でもある。
【0096】
配合物のエラストマー成分(EAO)および分枝ポリプロピレン成分の両者は、それぞれ、EAOおよび分枝ポリプロピレンの混合物であってもよい。さらに、配合物の各成分は非分枝ポリマーを含むことができ、すなわち、配合物のEAO成分は非分枝EAOを含むことができ、かつ配合物のポリプロピレン成分は非分枝ポリプロピレンを含むことができる。プロピレン(プロピレン)成分に関しては、非分枝ポリプロピレンは、配合物のEAOおよびポリプロピレン成分の合計重量の15パーセント以下、好ましくは10パーセント以下、より好ましくは5パーセント以下を構成する。好ましくは、分枝ポリプロピレンの量はプロピレン成分中に少なくとも50重量パーセントである。
【0097】
一実施形態において、組成物は5cN〜30cN、好ましくは5cN〜25cN、より好ましくは5cN〜20cNの溶融強度を有する。5cN〜30cNの全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。
【0098】
別の実施形態において、組成物は0.05〜20g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.5〜3g/10分のメルトインデックス、I2(190℃/2.16kg)を有する。0.05〜20g/10分の全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。別の実施形態において、エラストマー成分は2g/10分以下のメルトインデックス、I2を有する。
【0099】
別の実施形態において、組成物は90℃〜150℃、好ましくは100℃〜145℃、より好ましくは110℃〜140どの結晶化温度、Tcを有する。90℃〜150℃の全ての個別の値および下位範囲が本発明に含まれ、かつ本明細書に開示される。
【0100】
分枝ポリプロピレン成分の分枝性が最終組成物に固有の核形成をもたらし得るか、または寄与し得ることが想定されている。この特徴は準備時間の減少を可能にし、本発明の組成物から形成される物品、例えば、押出された外形およびブロー成型部品における形状保持を改善するはずである。
【0101】
本発明の組成物はエラストマー成分およびプロピレン成分を組み合わせることにより、好ましくは、一つ以上のエチレン/α−オレフィンEAOエラストマーを一つ以上の分枝ポリプロピレンと組み合わせることにより調製することができる。そのような組成物は幾つかの異なる方法のうちのいずれか1つによって調製することができるが、一般には、これらの方法は2つの範疇、すなわち、反応器後(post-reactor)配合および反応器内(in-reactor)配合のうちの一方に入る。前者の実例は、2種類以上の固体ポリマーを供給し、物理的に混合して実質的に均一な組成物とする溶融押出機および、並列に配置され、かつ各々からの出力を互いに配合して実質的に均一な組成物を形成し、最終的にはそれを固体形態で回収する、複数の溶液、スラリーまたは気相反応器である。後者の実例は、直列に接続された複数の反応器および2種類以上の触媒が投入される1つの反応器である。
【0102】
EAOおよびポリプロピレンポリマーに加えて、本発明の組成物は、有利には、ポリマーまたはポリマー組成物に通常添加されるタイプの少なくとも一つの添加物をさらに含むことができる。これらの添加物には、例えば、加工油;酸化防止剤;表面張力改質剤;UV安定化剤;スクラッチ/擦傷添加物、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)または官能化ポリジメチルシロキサンまたはIRGASURF(登録商標)SR 100(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)またはエルカミドを含有するスクラッチ擦傷配合物;ブロッキング防止剤;分散剤;発泡剤;直鎖または実質的直鎖EAO;LDPE;LLDPE;潤滑剤;架橋剤、例えば、過酸化物;抗菌剤、例えば、有機金属類、イソチアゾロン、有機イオウおよびメルカプタン;酸化防止剤、例えば、フェノール類、二級アミン、亜リン酸塩およびチオエステル;帯電防止剤、例えば、四級アンモニウム化合物、アミンおよびエトキシル化、プロポキシル化またはグリセロール化合物;充填剤および補強剤、例えば、珪灰石、カーボンブラック、ガラス、金属炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム、金属硫酸塩、例えば、硫酸カルシウム、タルク、粘度、雲母またはグラファイト繊維が含まれる。官能化ポリジメチルシロキサンには、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシ官能化ポリジメチルシロキサン、アミン官能化ポリジメチルシロキサン、ビニル官能化ポリジメチルシロキサン、アリール官能化ポリジメチルシロキサン、アルキル官能化ポリジメチルシロキサン、カルボキシ官能化ポリジメチルシロキサン、メルカプタン官能化ポリジメチルシロキサンおよびそれらの誘導体が含まれる。
【0103】
さらなる添加物には、加水分解安定化剤;潤滑剤、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、エステル、脂肪アミド、金属ステアリン酸塩、パラフィンおよび微結晶ワックス、シリコーン並びにオルトリン酸エステル;離型剤、例えば、微粒子または粉末化固体、石けん、ワックス、シリコーン、ポリグリコールおよび複合エステル、例えば、トリメチロールプロパントリステアレートまたはペンタエリスリトールテトラステアレート;顔料、染料および着色剤;可塑剤、例えば、二塩基酸(またはそれらの無水物)と一水酸基アルコールとのエステル、例えば、o−フタレート、アジペートおよびベンゾエート;熱安定化剤、例えば、有機スズメルカプチド、チオグリコール酸のオクチルエステルおよびバリウムまたはカドミウムカルボキシレート;ヒンダートアミン、o−ヒドロキシ−フェニルベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ、4−アルコキシベンゾフェノン、サリチレート、シアノアクリレート、ニッケルキレートおよびベンジリデンマロネートおよびオキサラニリドとして用いられる紫外光安定化剤;並びにゼオライト、モレキュラーシーブ、静電防止剤および他の公知防臭剤が含まれる。
【0104】
好ましいヒンダードフェノール酸化防止剤はCiba−Geigy Corpから入手可能なIrganox(登録商標)1076酸化防止剤である。当業者は、添加物のあらゆる適切な組み合わせおよび添加物量に加えて添加物を組成物に組み込む方法を、過度の実験なしに、容易に選択することができる。典型的には、上記添加物の各々は、用いられるのであれば、全組成物重量を基準にして45重量パーセントを超えることがなく、有利には約0.001〜約20重量パーセント、好ましくは0.01〜15重量パーセント、より好ましくは0.1〜10重量パーセントである。
【0105】
本発明のEAO/ポリプロピレン組成物から調製される、そのような添加物を含むシート、押出し外形、押出しブロー成型物品および熱成形品は、同じポリマーではあるが非分枝ポリプロピレンを含むものから調製されるシート、押出し外形およびブロー成型物品および熱成形品よりも光沢が少ない。シート、押出し外形、ブロー成型物品および熱成形品は、ポリプロピレン、EAOおよび、幾らかでも存在するのであれば、他の添加物(典型的には、濃縮物形態)をシート押出し、外形押出しまたはブロー成型の最中に配合するインライン配合;またはEAO/ポリプロピレンの化合物を添加物の有無に関わりなく用いる通常の押出しのいずれかを用いて製造することができる。
【0106】
粘度、硬度、モジュラスおよび組成物のコストのいずれか1つ以上を低減するのにしばしば用いられる加工油が好ましい添加物である。最も一般的な加工油は、それらがパラフィン、ナフテンまたは芳香族油のいずれに分類されるのかに依存して、特定のASTM名を有する。エラストマーの加工一般における当業者はどのタイプの油が最も有益であるのかを識別するであろう。加工油は、用いられる場合、望ましくは、全組成物重量を基準にして5〜50重量パーセントの範囲内の量で存在する。
【0107】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、生じる生成物のスクラッチ擦傷耐性を改善するため、少なくとも一つのポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。ポリジメチルシロキサンは、典型的には、ポリマー組成物の重量を基準にして0.1〜10重量パーセント存在する。適切なポリジメチルシロキサンには、25℃で100,000センチストークスを超え、より好ましくは1×106〜2.5×106センチストークスの粘度を有するものが含まれる。さらなる実施形態において、組成物は無水マレイン酸または無水コハク酸基でグラフト化されたエチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーをも含み、好ましくは、このグラフト化エチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーは該組成物の20パーセント未満を構成する。さらなる実施形態において、組成物は少なくとも一つの添加物、例えば、可塑剤、顔料または着色料、UV安定化剤、または充填剤をも含む。充填剤には焼成または非焼成充填剤が含まれ得る。適切な充填剤には、これらに限定されるものではないが、炭酸カルシウムおよび珪灰石が含まれる。スクラッチ擦傷耐性配合物に適する成分は米国特許第5,902,854号により詳細に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
本発明の組成物において有用であるさらなるスクラッチ擦傷配合物は、IRGASURF(登録商標)SR 100をここに記載される一つ以上の添加物と共に含む。特に適切な配合物は、ポリエチレン坦体中の脂肪酸アミド、例えば、一つ以上の充填剤、例えば、珪灰石および無水マレイン酸または無水コハク酸基でグラフト化されたエチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーを伴うIRGASURF(登録商標)SR 100を含む。他のスクラッチ耐性ポリオレフィン配合物は米国公開第2006009554号(WO 2006/003127に対応)に記載され、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0109】
特に好ましい実施形態において、組成物はスクラッチ擦傷濃縮物を含み、またそれは10〜30重量パーセントの少なくとも一つの着色料および/またはUV安定化剤、5〜15重量パーセントの少なくとも一つのポリジメチルシロキサン、30〜50重量パーセントの少なくとも一つの充填剤、および10〜35重量パーセントの、無水マレイン酸または無水コハク酸基でグラフト化された少なくとも一つのエチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーを含む。これらの重量パーセンテージはスクラッチ擦傷濃縮物の総重量を基準にする。
【0110】
本発明の組成物から調製されるポリマー配合物は好ましくはゲルを含まないが、最終用途に依存して、そのように望むのであれば、過酸化物によってさらに修飾してゲルを様々な量で導入することができる。本発明のポリマー組成物中の不溶性ゲルの存在および、望ましい場合には、量を検出するため、ASTM D 2765−90、方法Bに記載されるように、組成物を適切な溶媒、例えば、還流キシレンに12時間浸漬する。その後、組成物のあらゆる不溶性部分を単離し、乾燥させて秤量することで、その組成物の知識に基づき、適切な矯正を施す。例えば、溶媒に可溶である非ポリマー性成分の重量を初期重量から差し引き、溶媒に不溶である非ポリマー性成分の重量を初期および最終重量の両者から差し引く。回収される不溶性ポリマーはゲル・パーセント(%ゲル)含有率として報告する。本発明の目的上、「実質的にゲルを含まない」は、キシレンを溶媒として用いるとき、好ましくは約0.5%未満、より好ましくは検出可能限界を下回ることを意味する。
【0111】
本発明の組成物は、あらゆる通常の押出し、カレンダー処理、ブロー成型、フォーム形成または熱成形法を用いて、部品、シートまたは他の製造物品に加工することができる。そのような方法の具体的な例には、シート押出し、外形押出しおよび注型が含まれる。そのような方法は平滑またはエンボス加工表面を有する物品または製品を製造することができる。組成物の成分は予備混合してその方法に供給することができ、または、好ましい実施形態においては、組成物が押出し、カレンダー処理、ブロー成型、フォーム形成または熱成形法において形成されるように、組成物を処理装置、例えば、変換押出機内に直接供給することができる。組成物は、物品の加工に先立ち、他のポリマーと配合することもできる。そのような配合は様々な通常の技術のいずれかによって行うことができ、そのうちの1つは本発明の熱可塑性エラストマー組成物のペレットと他のポリマーのペレットとの乾燥配合である。
【0112】
シート押出し法に加えて、本発明の組成物はブロー成型物品を形成する押出しブロー成型法において用いることもできる。加えて、本発明の組成物を押出して様々な外形を形成することができる。本発明の組成物はカレンダー処理物品の形成に用いることもできる。本発明の組成物から調製される物品は、好ましくは、低い光沢値を有する。
【0113】
本発明の組成物から製造することができる物品の、網羅とは全く違う、部分的なリストには、自動車車体部品、例えば、機器パネル、機器パネルスキン、機器パネルフォーム、バンパファシア(bumper fascia)、車体側部成型品、内装ピラー、外装備品、内装備品、ウェザストリップ、エアダム(air dams)、エアダクトおよびホィールカバー、並びに非自動車用途、例えば、ポリマーフィルム、織物コートシート、ポリマーシート、フォーム、管類、繊維、コーティング、ごみ箱、保存または包装容器、芝生設備のストリッピングまたはウェビング、芝刈り機、庭用ホースおよび他の庭用器具部品、冷蔵庫用ガスケット、レジャー用RV部品、ゴルフカート部品、ユーティリティカート部品、机の縁、玩具およびウォータークラフト部品が含まれる。これらの組成物は屋根ぶき用途、例えば、屋根ぶきメンブランにおいて用いることもできる。これらの組成物は、さらに、履き物の構成要素、例えば、ブーツ、特には、工業用作業ブーツのシャフトの製造において用いることができる。当業者は、過度の実験なしに、このリストを容易に増強することができる。さらなる物品には押出し外形および壁基材外形が含まれる。
定義
【0114】
ここに挙げられるあらゆる数値範囲は、あらゆる下側の値とあらゆる上側の値との間に少なくとも2単位の隔たりが存在するのであれば、1単位の増分で、下側の値から上側の値までの全ての値を含む。例として、組成物の物理的または他の特性、例えば、分子量、メルトインデックス等が100〜1,000であると述べられている場合、全ての個別の値、例えば、100、101、102等および下位範囲、例えば、100〜144、155〜170、197〜200等が本明細書において明瞭に列挙されることが意図される。1未満の値を含むか、または1を超える分数(例えば、1.1、1.5等)を含む範囲については、1単位は、適宜、0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。10未満の1桁の数を含む範囲(例えば、1〜5)については、1単位は、典型的には、0.1とみなされる。これらは具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙される最低値および最高値の間の数値のすべての可能な組み合わせが本願において明瞭に述べられているものとみなされるべきである。数値範囲は、ここで論じられるように、密度、成分の重量パーセント、タンデルタ、溶融強度および他の特性に関して挙げられている。
【0115】
「組成物」という用語は、ここで用いられる場合、その組成物を構成する物質の混合物に加えて、その組成物の物質から形成される反応生成物および分解生成物を含む。
【0116】
「ポリマー」という用語は、ここで用いられる場合、同じタイプであろうと異なるタイプであろうと、モノマーを重合させることによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、一般用語のポリマーは、通常ただ1つのタイプのモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられるホモポリマーという用語および以下で定義されるインターポリマーという用語を包含する。
【0117】
上で論じられるように、「インターポリマー」という用語は、ここで用いられる場合、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーを重合させることによって調製されるポリマーを指す。したがって、一般用語のインターポリマーは、通常2つの異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられるコポリマーおよび3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0118】
「エチレンポリマー」という用語は、ここで用いられる場合、主として(50モルパーセントを超える)エチレンモノマー単位から形成されるポリマーを指す。モルパーセンテージは重合性モノマーの総モルを基準とする。
【0119】
「配合物」または「ポリマー配合物」という用語は、ここで用いられる場合、2種類以上のポリマーの組成物を意味する。そのような配合物は混和性であってもなくてもよい。そのような配合物は相分離してもしなくてもよい。そのような配合物は、透過型電子顕微鏡から決定される、1つ以上のドメイン配置を含んでいてもいなくてもよい。
【0120】
以下の例は本発明を説明するが、明示的または暗示的のいずれであっても、本発明を限定するものではない。他に明言されない限り、全ての部およびパーセンテージは総重量に基づく重量基準である。
【実施例】
【0121】
本発明を代表する2つ(実施例1〜2)および7つの比較(比較例A〜G)の9つの組成物を2種類の異なるEAOポリマーから以下の手順を用いて調製した。9つの組成物は、全て、成分を一緒に回転配合した後、その配合物をCoperion ZSK−25同時回転二軸スクリュー押出機でペレットに加工することによって製造した。次に、それらのペレット化化合物を、24インチ幅シーティングダイ(sheeting die)および3ロール冷却スタックが取り付けられた1.75”Killion単軸スクリュー押出機でシート材に加工した。冷却ロール温度は29.4℃に設定した。中央エンボス加工ロールはMT2985として記載されるグレインレザー・パターンを含んでいた。0.050インチ圧のシート材を製造し、試験した。
【0122】
これらの実施例において用いられるEAOインターポリマーは:EAO−1、190℃で10キログラム重を用いて2.9dg/分の公称メルトインデックス、パラレルプレートレオメータにより0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みで測定される930,000ポアズの公称粘度並びに0.875g/ccの公称密度を有するエチレン/1−プロペンコポリマー(高度分枝)(The Dow Chemical Companyから入手可能);EAO−2、190℃で2.16キログラム重を用いて0.5dg/分の公称メルトインデックス、パラレルプレートレオメータにより0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みで測定される130,000ポアズの公称粘度並びに0.868g/ccの公称密度を有する公称分枝エチレン/1−オクテンコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能);並びにEAO−3、48の公称ムーニー粘度、パラレルプレートレオメータにより0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みで測定される450,000ポアズの公称粘度並びに0.870g/ccの公称密度を有する実験用エチレン/1−ブテン(高MWおよび中程度分枝)であった。これらのEAOインターポリマーは、各々、拘束幾何触媒を用いて調製された。
【0123】
これらの実施例において用いられるポリプロピレン(PP)は、PP−1、230℃で2.16キログラム重を用いて2.8dg/分の公称メルトフローインデックスを有する分枝ポリプロピレンホモポリマー(Basellから入手可能)およびPP−2、230℃で2.16キログラム重を用いて2dg/分の公称メルトフローインデックスを有するランダムポリプロピレンコポリマー(Basellから入手可能)であった。PP−3は、230℃で2.16キログラム重を用いて0.5dg/分のメルトフローインデックスおよび164℃の融点を有する分枝インパクトコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)である。
【0124】
これらの実験用ポリマーを下記表2にまとめる。
【表2】

【0125】
上記成分を、メルトタンデルタ測定のため、受容したペレットとして、「直径25mm」×「厚み2mm」の型における圧縮成型によって調製した。圧縮成型機は水圧Carverプレスであった。圧縮成型条件は、9090kg重、190℃、4分間、次いで9090kg重、15℃で4分間の冷却であった。(実施例Gにおいて用いられる)PP−1およびPP−2の「1/1配合物」比は、ローラーブレードが取り付けられたHaake 300cc容量混合ボウルにおいて成分を溶融混合することによって調製した。混合条件は、最初の流動後、温度190℃、50rpmで3分間の混合時間であった。配合組成物を前述のように圧縮成型した。個々のポリマー成分および配合組成物を、Rheometric Scientific ARESモデル振動パラレルプレートレオメータを用いて、190℃、0.1ラジアン/秒の周波数および15パーセント歪みでメルトタンデルタについて試験した。
【0126】
比較例A〜Hは、より好ましい組成物(実施例1〜5)の特性との比較における、それらの相対的特性:熱成形前後のレオロジー特性、TMAたわみ温度および光沢レベルの点で「比較」と示される。しかしながら、これらの比較例のほとんどは本発明のより広範な範囲に入る。組成物の最終用途に依存して、主張される熱的および光沢特性の全てが必要とされることはないかもしれないが、高い熱的特性および低い光沢特性は最適である。
実施例1〜2および比較例A〜G
【0127】
表3は実施例1〜2および実施例A〜Gの組成物のデータをまとめたものである。表3では、EAOポリマーおよびPPポリマーを特定し、各成分の重量パーセントが指定される。
【表3】

【0128】
これらの実施例および比較例の組成物の特性を決定した。それらを下記表4に報告する。組成物の熱歪み耐性の試験にはTA Instruments モデル# TMA2940熱機械分析装置(TMA)を用いた。「直径1mm」×「長さ2mm」チップを有し、かつ1ニュートン負荷を有する石英プローブをシート試料上に配置した。直径1センチメートルの検体をシートから切断した。3つの検体を各組成物ごとに積み重ねた。22.5℃の初期温度から、TMAチャンバを5℃/分の速度で200℃まで加熱した。μmでのプローブの偏向を測定した。プローブが組成物内に900μm偏向した温度をTMAたわみ点と定義した。
【0129】
組成物からのシート材を「幅56cm」×「長さ64cm」の検体に切断し、9つの個別に制御される石英ヒーター、頂部および底部を備えるLamco熱成形機を用いて熱成形した。ヒーターは最大出力の60%に設定した。底部ヒーターのうちの1つに埋め込まれた赤外パイロメータを用いて表面シート温度を監視した。シートは、それらを空気圧作動枠に固定した後、その枠をオーブン内に空気圧でインデックス(index)することによって熱成形した。赤外パイロメータによる測定で望ましい表面温度に到達した後、シート材をオーブンの外にインデックスし、半長円体形状を有し、かつ幅25.5cm、長さ38.1cmおよび半長円体頂端で高さ15.2cmの寸法を有するアルミニウム型をそのシートまでインデックスした。型の真空孔を介して真空を直ちに適用し、シート材を型全体にわたって形成した。
【0130】
光沢測定能力を有するHunterlab Colorquest II比色計を用いて60°測定角での光沢を決定した。光沢は、熱成形の前後に調製されたシート材に対して、160℃のシート指標温度で測定した。EAOタンデルタ、EAO/PPタンデルタ比、TMAたわみ点および60°光沢の結果を表4に示す。
【表4】

【0131】
エラストマー濃度および溶融弾性の上方作業温度に対する効果を図1の等高線プロットに示す。エラストマー濃度および溶融弾性の初期光沢および熱成形後光沢に対する効果を、それぞれ、図2および4の等高線プロットに示す。エラストマー濃度および相対PP/エラストマー溶融弾性の初期光沢および熱成形後光沢に対する効果を、それぞれ、図3および5の等高線プロットに示す。
【0132】
本発明の組成物は、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、最も好ましくは130℃以上のTMAたわみ温度を有する。好ましくは、本発明の組成物は、好ましくは4未満の、エンボス加工シート材「60°光沢値」を有する。本発明の組成物は、さらに、好ましくは10未満、より好ましくは6未満の「160℃熱成形仕上げ部品60°光沢値」を有する。実施例1および2がこれらの特性を示すことに注意されたい。実施例AおよびFはTMAたわみ基準(T≧110℃)を満たすが、160℃で熱成形後に望ましくなく大きい光沢を示す。比較例D、EおよびGは光沢基準を満たすが、適切なTMAたわみを有していない。実施例BおよびCは低いTMAたわみ温度および高い光沢値を有する。
実施例3〜5および比較例H
【0133】
EAO−2およびEAO−3をこれらの実施例において用いた。この実施例の組において用いられるPPであるPP−3は、230℃で2.16キログラム重を用いて0.5dg/分メルトフローインデックスおよび164℃の融点を有する分枝インパクトコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)である。PP−3を、前述のように、タンデルタについて0.1rad/s、190℃で測定した。これらの実施例の成分は前述のように配合した。これらの実施例およびそれらの組成を表5に示す。
【表5】

【0134】
これらの配合例を、中央ロールがエンボス加工ロールではなくクロム艶出しであることを除いて、前述のものと同じ押出しシートラインを用いてシート材に加工した。このシート材を前述のように60°光沢について測定した。このシート材のエラストマータンデルタ、エラストマー/PPタンデルタ比および60°光沢の結果を表6に示す。
【表6】

【0135】
本発明の組成物は、実施例3〜5にみられるように、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、最も好ましく130℃以上のTMAたわみ温度を有する。本発明の組成物は、実施例3〜5にみられるように、好ましくは、11未満の非エンボス加工シート材60°光沢値をも有する。本発明の組成物は、実施例3〜5にみられるように、好ましくは、熱成形後にそれらの「11未満の60°光沢値」を維持する。比較例Hは11未満の「熱成形後の60°光沢値」を有し、したがって3つの確立された基準(TMAたわみ温度、60°光沢レベル非エンボス加工シートおよび熱成形後の60°光沢レベル)のうちの1つを満たし、それに対して実施例3〜5は3つの特性全てを満たす。
【0136】
本発明を前述の説明および実施例によりかなり詳細に説明したが、この詳細は説明のためのものであり、添付の請求の範囲に記述される本発明の精神および範囲に対する限定と解釈されるべきではない。本明細書において引用される全ての米国特許および公開出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】最終組成物の上方作業温度に対するエラストマー濃度および溶融弾性の効果を示す等高線プロット。
【図2】本発明の組成物から調製されるシートの初期光沢に対するエラストマー濃度および溶融弾性の効果を示す等高線プロット。
【図3】本発明の組成物から調製されるシートの初期光沢に対するエラストマー濃度および相対エラストマー/PP溶融弾性の効果を示す等高線プロット。
【図4】本発明の組成物から調製されるシートの熱成形後の光沢に対するエラストマー濃度および溶融弾性の効果を示す等高線プロット。
【図5】本発明の組成物から調製されるシートの熱成形後の光沢に対するエラストマー濃度および相対エラストマー/PP溶融弾性の効果を示す等高線プロット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー成分およびプロピレン成分を含む組成物であって、
該エラストマー成分が、任意にジエンを含有する、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含み、該エラストマー成分が、パラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で、0.7〜8のメルトタンデルタを有し、並びに
該プロピレン成分が少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含み、並びに
「該エラストマー成分のメルトタンデルタ」の「該プロピレン成分のメルトタンデルタ」に対する比が0.5〜4である、組成物。
【請求項2】
前記エラストマー成分およびプロピレン成分の合計重量を基準にして、20〜45重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
110℃以上の熱機械分析装置(TMA)たわみ温度を有し、かつ以下のTMA温度たわみ関係:
TMA=3.71(PPwt%)+5.43(EAOtandel)−53(EAO/PPtandel)+7.54(EAOtandel)(EAO/PPtandel)−0.42(PPwt%)(EAOtandel)+0.49(PPwt%)(EAO/PPtandel)+19.38
(式中:
PPwt%はポリプロピレンの重量パーセントであり;
EAOtandelはエチレン/α−オレフィンのタンデルタであり;および
PPtandelはポリプロピレンのタンデルタである)
を満たす、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが−6〜70のPRR値を有する、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記エチレン/α−オレフィンエラストマーが8〜70のPRR値を有する、請求項1または請求項3の組成物。
【請求項6】
前記エラストマー成分が0.10rad/秒で200,000ポアズを超える剪断粘度および7cNを超える溶融強度を有する、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一つの分枝ポリプロピレンが、パラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で、2未満のタンデルタを有する、請求項1の組成物。
【請求項8】
前記エラストマー成分の量が前記エラストマー成分および前記プロピレン成分の合計重量を基準にして60〜80重量パーセントの量で存在し、かつ前記プロピレン成分が前記エラストマー成分および前記プロピレン成分の合計重量を基準にして40〜20重量パーセントの量で存在する、請求項1の組成物。
【請求項9】
110℃以上のTMAたわみ温度を有する、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも一つの分枝ポリプロピレンが0.2〜40g/10分(230℃/2.16kg)のメルトフローレートを有する、請求項1の組成物。
【請求項11】
(i)任意にジエンを含有する、少なくとも一つのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含み、かつパラレルプレートレオメータによる0.1rad/秒、190℃および15パーセント歪みでの測定で、0.7〜8のメルトタンデルタを有するエラストマー成分、並びに
(ii)少なくとも一つの分枝ポリプロピレンを含むプロピレン成分、
を含む組成物であって、
「該エラストマー成分のメルトタンデルタ」の「該分枝ポリプロピレンのメルトタンデルタ」に対する比が0.5〜4であり、並びに
該エラストマー成分および該プロピレン成分の合計重量を基準にして20〜45重量パーセントの分枝ポリプロピレンを含み、並びに
該エラストマー成分が5cN以上の溶融強度を有し、かつ該プロピレン成分が5cN以上の溶融強度を有する、組成物。
【請求項12】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのα−オレフィンがプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテンのうちの少なくとも1つである、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも一つの分枝ポリプロピレンがプロピレン並びに、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテンからなる群より選択されるα−オレフィンのコポリマーである、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項14】
前記プロピレン成分が分枝ポリプロピレンおよび非分枝ポリプロピレンの混合物を含む、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項15】
分枝ポリプロピレンの量が前記プロピレン成分中に少なくとも50重量パーセントである、請求項14の組成物。
【請求項16】
前記エラストマー成分が分枝エチレン/α−オレフィンインターポリマーおよび非分枝エチレン/α−オレフィンインターポリマーの混合物を含む、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項17】
加工油、酸化防止剤、表面張力改質剤、UV安定化剤、スクラッチ/擦傷添加物、粘着防止剤、分散剤、発泡剤、潤滑剤、架橋剤、抗菌剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、加水分解安定化剤、離型剤、増量剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される一つ以上の添加物をさらに含む、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項18】
低密度ポリエチレンおよび直鎖低密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも一つのポリマーをさらに含む、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項19】
少なくとも一つの、無水マレイン酸もしくは無水コハク酸基でグラフト化されたエチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーをさらに含む、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項20】
少なくとも一つの充填剤をさらに含む、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項21】
少なくとも一つの充填剤が珪灰石、炭酸カルシウムおよびタルクからなる群より選択される、請求項20の組成物。
【請求項22】
少なくとも一つのポリジメチルシロキサンまたは少なくとも一つの官能化ポリジメチルシロキサンをさらに含む、請求項21の組成物。
【請求項23】
ポリエチレン担体中に脂肪族アミドをさらに含む、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項24】
請求項1または請求項11の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む、物品。
【請求項25】
10未満の60°光沢測定値を有する、請求項24の物品。
【請求項26】
請求項1または請求項11の組成物から製造されるシートであって、グレインレザーでエンボス加工されて4未満の60°光沢測定値を有するエンボス加工パターンが生成される、シート。
【請求項27】
請求項26のシートから製造され、かつ10未満の60°光沢測定値を有する、物品。
【請求項28】
請求項1または請求項11の組成物から製造され、かつ11未満の60°光沢測定値を有する、非エンボス加工平滑表面シート。
【請求項29】
請求項1または請求項11の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む、自動車車体部品。
【請求項30】
内装自動車部品である、請求項29の自動車車体部品。
【請求項31】
内装用部品が機器パネルスキン、ドアパネルスキン、座席装備品、固定ウェザストリップ、グローブボックススキンまたはアームレストスキンの形態にある、請求項30の自動車内装部品。
【請求項32】
請求項1または請求項11の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む物品であって、ポリマーフィルム、織物コートシート、ポリマーシート、フォーム、管構造、繊維またはコーティングの形態にある、物品。
【請求項33】
請求項1または請求項11の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む物品であって、ごみ箱、保存容器、包装容器、芝生設備のストリッピングまたはウェビング(lawn furniture stripping or webbing)、芝刈り機部品、庭用ホース、庭用器具部品、冷蔵庫用ガスケット、レジャー用RV部品、ゴルフカート部品、ユーティリティカート部品、玩具またはウォータークラフト部品、屋根ぶき部品、机の縁、壁基材外形(wall base profile)または履き物部品の形態にある、物品。
【請求項34】
請求項1または請求項11の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む物品であって、熱成形法、ブロー成型法、異形押出し法、カレンダー処理法、注型法、シート押出し法またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の製造法によって調製される、物品。
【請求項35】
請求項1または請求項11の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素および一つ以上の添加物を含む物品であって、前記一つ以上の添加物が、前記構成要素の形成に先立って、前記組成物と「インライン」配合される、物品。
【請求項36】
請求項1または請求項11の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素および一つ以上の添加物を含む物品であって、前記一つ以上の添加物が、前記構成要素の形成に先立って、前記組成物とバッチ法または押出し法で予備配合される、物品。
【請求項37】
請求項1または請求項11の組成物の製造方法であって、前記エラストマー成分を前記プロピレン成分と、反応後配合手順または反応器内配合手順を用いて配合することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−540769(P2008−540769A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511240(P2008−511240)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017728
【国際公開番号】WO2006/124369
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】