光波長合分波器
【課題】フォトレジストを用いた加工技術により温度補償材料を挿入する溝とリッジの構造を容易に精度良く加工でき、かつ溝での回折損失や位相誤差の発生を抑えることができる波長合分波回路を提供する。
【解決手段】入出力導波路(101)、スラブ導波路(102)、アレイ導波路(103)、スラブ導波路(104)及び入出力導波路(105)を備え、スラブ導波路の少なくとも一方に、光波の進行方向に交差して導波路を分断する複数の溝(106)が配置され、溝には、上記導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料が温度補償材料として充填された波長合分波回路であって、複数の溝の光波の及ばない領域で、溝と溝の間のリッジ構造の幅が拡大することを特徴とする。
【解決手段】入出力導波路(101)、スラブ導波路(102)、アレイ導波路(103)、スラブ導波路(104)及び入出力導波路(105)を備え、スラブ導波路の少なくとも一方に、光波の進行方向に交差して導波路を分断する複数の溝(106)が配置され、溝には、上記導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料が温度補償材料として充填された波長合分波回路であって、複数の溝の光波の及ばない領域で、溝と溝の間のリッジ構造の幅が拡大することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波長合分波回路に関し、より詳細には、アレイ導波路回折格子型の光波長合分波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上に形成した石英系ガラス導波路によって構成されたプレーナ光波回路(PLC)の研究開発が盛んに行われている。このPLC技術を利用した、アレイ導波路回折格子(AWG)は、光波長合分波を実現する回路であり、光通信用の部品として重要な役割を果たしている。
【0003】
AWGは、合分波される光の透過波長に温度依存性を有する。これは、AWGを構成する石英系ガラス導波路の実効屈折率が温度依存性を有するためである。そのため通常のAWGにおいては、波長透過特性を一定に保持するために、温度調節装置を付加する必要があった。
【0004】
AWGに付加的に必要とされた温度調節装置を省略するため、AWGの透過波長の温度依存性を低減する方法が開発されている。この方法について、特許文献1に開示されている。透過波長の温度依存性を低減したAWGは、「温度無依存AWG」または「アサーマルAWG」と呼ばれる。アサーマルAWGは、AWG内の各光路の一部分断した溝を形成し、その溝に導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料(以下「温度補償材料」という。)を挿入することによって実現される。温度補償材料は、アレイ導波路において温度変化によって生ずる光路長差変化を相殺する。特にスラブ導波路に溝を形成する構成は、非アサーマルAWGと比較して、回路面積の増大が無いという長所を有する。
【0005】
図1は、スラブ導波路に溝を形成するタイプのアサーマルAWGの構成を示す平面図である。図1に示すアサーマルAWGは、第1の入出力導波路101、第1のスラブ導波路102、アレイ導波路103、及び第2のスラブ導波路104、第2の入出力導波路105、及び溝106を備える。溝106には温度補償材料が充填されている。図1(A)は第1のスラブ導波路102に溝を形成する場合、図1(B)は第2のスラブ導波路104に溝を形成する場合、図1(C)は第1及び第2のスラブ導波路の双方に溝を形成する場合を示している。
【0006】
図2は、図1(A)のアサーマルAWGの第1のスラブ導波路102のX−X’断面を示す図である。第1のスラブ導波路102は、シリコン基板108、導波路コア109、クラッド110を備える。溝106は導波路コア109およびクラッド110の一部を取り除いて形成されており、導波路コア109を分断している。図1(B)及び図1(C)に示す構成のアサーマルAWGにおいても、溝106の断面の構成は図2に示されたものと同一である。
【0007】
また、各溝は複数の溝に分割されている。これは、単一の溝よりも、放射損失を低減することが可能だからである。図1(A)〜(C)においてi番目のアレイ導波路の光路長Liは、Li=Li+(i−1)・ΔLと表され、一定量ΔLずつ順次長くなるよう設計されている。これに応じて、各アレイ導波路を通過する光波が第1のスラブ導波路102および第2のスラブ導波路104において溝によって分断される長さLi’は、Li’=Li’+(i−1)・ΔL’と表され、ΔLに比例した量ΔL’ずつ順次長くなるように溝が形成されている。これらのAWGにおける透過中心波長λ0は、
λ0={na・ΔL−ns・ΔL’+n’・ΔL’}/M
と表される。ここで、naはアレイ導波路の実効屈折率、nsはスラブ導波路の実効屈折率、n’は温度補償材料の屈折率であり、MはAWGの回折次数である。このとき、n’はnsに近く、溝における光波の屈折角は十分小さいと仮定している。アサーマルAWGではΔL’/(ΔL−ΔL’)=−α/α’すなわちΔL’=ΔL/(1−α’/α)と設計されており、透過中心波長の温度依存性が補償されている。ここでαはアレイ導波路およびスラブ導波路の実効屈折率温度係数(α=dna/dT=dns/dT)、α’は温度補償材料の屈折率温度係数(α’=dn’/dT)である。
【0008】
温度補償材料としては、特にα’がαと異符号であり、かつ|α’|が|α|に比較し
て十分大きいような材料が好ましい。このような条件の材料としては、例えば光学樹脂で
あるシリコーン樹脂があり、α’〜−35×αである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO98/36299号パンフレット
【特許文献2】特許第3498650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
波長合分波回路は実際の伝送システムで既に広く使われているが、将来に向けた伝送容量の拡大に対応した大規模かつ高集積な回路を安価に提供する必要があるため、コストの面でも更なる小型化が重要である。それは、小型化することによって、1ウエハ当たりからのチップ個取り数を増やすことができ、生産性が向上するためである。回路を小型化するためには、光導波路の比屈折率差Δnを上げることによって、光の閉じ込めを強くすることで最小曲げ半径を小さくすることが必要となる。現状では、Δnは1.5%程度のものが高Δ導波回路として認識され、最小曲げ半径は2mm程度である。例えばこのΔnを2.5%へ高Δ化した場合、最小曲げ半径は1mmとなり、同じ機能のAWGを作製した場合、サイズは1/10以下となる。このように高Δ化は、小型化にメリットがあるが、作製の面ではより細い回路を精度よく作製することが要求される。特に、アサーマル溝は、複数の溝部分に分割しており(すなわち複数の溝で構成されており)、分割した各溝においてそれぞれの放射される光波が干渉し、全体として放射損失を抑制する効果がある。これが高Δ化されると、放射損失を抑制するために、溝の分割数を増やす必要があり、結果的に溝および溝と溝の間のギャップが狭くなる。更に、近年100GHz間隔40chから、50GHz間隔88chへとAWGの大規模化が進んでおり、チャンネル間隔が半分になることで、溝の長さが2倍になるため、非常に細い溝とギャップの繰り返しが20から50本続く、高精度の回路加工が必要になる。図3(A)に、Δ2.5%の場合の分割溝間隔(図3(B)に示す)に対するスラブアサーマル溝の損失の計算結果を示す。溝106の幅は現状のレジストフォト加工プロセスで十分可能な4μmとした。図から、低損失化を目指した場合、溝数はより多い50本とし、分割溝間隔は6μmとすると良いことが分る。アサーマル溝の深さは、オーバークラッド厚とコアの高さ、およびアンダークラッドへのコアからの光の染み出しを考慮して十分深く掘り下げる必要がある。通常1.5%Δの場合、30〜40μmの深さが必要であり、更に高Δ化する場合においても20μm程度の深さが必要となる。その深さを加工するためには、例えばネガレジストを使用すると厚さとして20μm程度が考えられるため、上記の6μm程度の分割溝間隔で厚さ20μmの感光されたレジストが長さ数ミリに渡って数十本平行に並ぶことになる。現状のレジストを用いた加工技術では、これらのレジストが倒れたり、傾いたり、よれたりといったトラブルが起こり、アサーマル溝にて発生するAWGのクロストークの劣化、損失の劣化等の原因となる。従って、現状のレジストを用いた加工技術で精度よく作製可能なアサーマル溝構造が望まれていた。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スラブ導波路に温度補償材料を挿入する構成のアサーマルAWGにおいて、温度補償材料を挿入する溝の構造が現状のフォトレジストを用いた加工技術で容易に精度良く加工でき、かつ溝での回折損失や位相誤差の発生を抑えることができる構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、アレイ導波路と、前記アレイ導波路の両端部に接続された第1のスラブ導波路および第2のスラブ導波路と、前記第1および第2のスラブ導波路にそれぞれ接続された第1の入出力導波路および第2の入出力導波路とを備え、前記第1のスラブ導波路及び前記第2のスラブ導波路の少なくとも一方に、導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料を充填する複数の溝が配置された波長合分波回路であって、前記複数の溝は、光波の及ばない外側の端領域で、溝と溝の間のリッジ構造の幅が拡大するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光波長合分波回路であって、前記アレイ導波路、前記第1および第2のスラブ導波路、ならびに前記第1および第2の入出力導波路は石英系ガラスで構成され、前記材料は光学樹脂であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光波長合分波回路であって、前記溝の片端または両端に、前記光学樹脂を充填する液だめを有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の光波長合分波回路であって、前記光波の及ばない領域は、前記第1のスラブ導波路において前記第1の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、および/または前記第2のスラブ導波路において前記第2の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の光波長合分波回路であって、前記光波の及ばない領域において、前記リッジ構造の幅は徐々に拡大し、前記リッジ構造の最小幅は少なくとも5μmであり、前記リッジ構造の先端において幅が最小幅の1.5倍以上となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スラブ導波路に配置されたアサーマル溝のギャップ構造が、光波の進行から外れた領域で徐々に幅を広げ、最終的にアスペクト比1以上になることにより、フォトレジストの倒れ、よれ、剥がれを防ぐことができ、光学的に影響なく、安定した形状の溝構造を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】スラブ導波路に溝を形成するタイプのアサーマルAWGの構成を示す平面図である。
【図2】図1のアサーマルAWGのX−X’断面を示す図である。
【図3】(A)はΔ2.5%の場合の分割溝間隔に対するスラブアサーマル溝の損失の計算結果を示す図であり、(B)は分割溝間隔を説明するための図である。
【図4】アサーマルAWGにおける第一のスラブ導波路、アレイ導波路との接続部分とアサーマル溝部を拡大した図である。
【図5】(A)は図4におけるギャップ幅を一定とした部分のX−X’断面を示す図であり、(B)は図4におけるギャップ幅を拡大した部分の端部のY−Y’断面を示す図である。
【図6】アサーマルAWG回路の構成を示した平面図である。
【図7】(A)は、図6における第1のスラブ導波路を拡大して示す平面図であり、(B)は溝のギャップ幅を拡大した構造を示す図であり、(C)は溝のギャップ幅を一定とした構造を示す図である。
【図8】(A)及び(B)は、それぞれ図7(B)及び(C)に示した溝を作製するためのフォトレジストの断面を示す図である。
【図9】(A)は図7(B)の構造のAWGの中心チャネルの透過スペクトルを示す図であり、(B)は図7(C)の構造のAWGの中心チャネルの透過スペクトルを示す図である。
【図10】(A)は、図6における第1のスラブ導波路及び液だめを拡大して示す平面図であり、(B)は溝のギャップ幅を拡大した構造を示す図であり、(C)は溝のギャップ幅を一定とした構造を示す図である。
【図11】(A)及び(B)は、それぞれ図10(B)及び(C)に示した溝を作製するためのフォトレジストの断面を示す図である。
【図12】(A)は図10(A)及び(B)の構造のAWGの中心チャネルの透過スペクトルを示す図であり、(B)は図10(A)及び(B)の構造のAWGの中心チャネル波長の温度依存性を示す図である。
【図13】(A)は図6における第1のスラブ導波路を拡大して示す平面図であり、(B)は溝のギャップ幅の拡大が開始する地点を説明するための図である。
【図14】(A)は溝のギャップ幅の拡大開始地点が変化した場合の損失を示す図であり、(B)は溝のギャップ幅の拡大開始地点が変化した場合のクロストーク値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明では、スラブ導波路中を伝搬する光波の幅とアサーマル溝が切ってある長さに着目した。
【0021】
図4は、アサーマルAWGにおける第1のスラブ導波路、アレイ導波路との接続部分とアサーマル溝部分を拡大した図である。従来は、スラブ導波路の入力ポート401と出力ポート402を一直線に繋いだ場合の幅から十分に余裕を持った長さでアサーマル溝106が設計されてきた。この溝106のマージン部分(上記十分に余裕を持った長さの部分であり、光波の及ばない部分)はスラブの両サイドに設置した液だめ406に溝106が届くように設計したために発生した。この液だめは温度補償材料である樹脂が高粘性であっても細い溝106に行き渡るように設置されている。しかしながら溝106の終点が液だめ406と接続し、溝と溝の間のギャップ(リッジ)が細い場合にはレジストが倒れやすくなる。また、液だめが無く直ぐに終点となる場合は溝106の細い部分でレジストが抜けにくくなったり、ギャップ部分が倒れやすくなったりする。
【0022】
そこでこの溝106のマージン部分に徐々にギャップ幅(リッジ幅)を広くした部分405を設定することにより、溝を液だめ406と接続しても、あるいはそのまま溝を終端しても光学的には影響なく安定した形状の溝加工を実現できる。ギャップ幅を広げ始める点は、光波の及ばない領域である。例えば、ギャップ幅を広げ始める点は、入力ポート401と出力ポート402を一直線に結んだ線と溝103が交わった地点より外側(液だめ406側)であれば良いが、当該地点よりも内側ではアサーマル特性に影響が出てしまう。従って、図4に示す構成では、加工誤差等のマージンのため、当該地点から僅かにギャップ幅が一定となる部分404を設けている。
【0023】
図5(A)は、図4におけるギャップ幅を一定とした部分404のX−X’断面を示し、図5(B)は、図4におけるギャップ幅(リッジ幅)を広くした部分405の端部のY−Y’断面を示す。ガラスを深く加工するレジストは、フォト工程、現像工程やベーク工程で収縮したり、膨潤したりするため、図5(A)のようなアスペクト比の高い状態では、倒れたり、よれたり、剥がれたりしやすい。一方、図5(A)の状態から、徐々に図5(B)のアスペクト比に変化させることによって、上記の倒れ、よれ、剥がれを防ぐことができ、光学的には影響なく安定した形状の溝加工を実現できる。
【0024】
(第1の実施の形態)
図6乃至8を参照して、本発明の第1の実施形態に係るアサーマルAWG型の光波長合分波回路について説明する。図6は、光波長合分波回路の構成を示した平面図である。図6に示す光波長合分波回路は、アレイ導波路103と、アレイ導波路103の端部にそれぞれ接続された第1のスラブ導波路102及び第2のスラブ導波路104と、第1のスラブ導波路102に接続された第1の入出力導波路101と、第2のスラブ導波路104に接続された第2の入出力導波路105を備える。本光波長合分波回路は、第1のスラブ導波路102上に形成された溝106を備え、溝106には温度補償材料が充填されている。温度補償材料としてシリコーン樹脂である。
【0025】
アレイ導波路103のi番目の導波路の光路長Liは、Li=Li+(i−1)・ΔLと表され、一定量ΔLずつ順次長くなるように設計されている。これに応じて、各アレイ導波路を通過する光波が、第1のスラブ導波路102において溝によって分断される光路長Li’はLi’=Li’+(i−1)・ΔL’と表され、ΔLに比例した量ΔL’ずつ順次長くなるような形状をしている。各導波路は、比屈折率差2.5%、コア厚3μmの石英系ガラス導波路であり、入出力導波路101、105、およびアレイ導波路103のコア幅は4μmである。回路は波長チャネル数88、波長チャネル間隔0.4nm(50GHz)の特性を有し、アレイ導波路の本数は520本、ΔLは約25μm、ΔL’は約1μmである。
【0026】
図7(A)及び(B)は、図6における第1のスラブ導波路102とその一部を拡大して示す平面図である。本実施形態において、サーマル溝は、50本の溝106で構成されており、光波の進行方向に対して各溝は等幅で、かつ各溝の中心線の間隔が一定であるように配置されている。ここで各溝の中心線の間隔(図3(B)溝間隔)は19μmとしている。第1のスラブ導波路102の入力ポートとアレイ導波路への出力ポートを結んだ光波が伝搬する領域(光波が及ぶ領域)707とその直ぐ外側の領域708と更に外側の領域709に分けると、本実施形態では図7(B)に示すように領域708は、加工精度を考慮したマージン領域とするものであり、領域707からの距離が10μmの帯状の領域である。領域708における溝のギャップの幅は6μmで一定である。また、図7(B)に示すように領域709は、領域707からの距離が10μmから160μmまでの帯状の領域であり。領域709における溝のギャップの幅(リッジの幅)は、徐々にその幅を拡大し、領域708から150μm離れた先端では溝のギャップの幅は15μmである。
【0027】
一方、図7(C)に、比較のための、領域708のみとし、溝のギャップ幅を6μmのまま一定にした構成を示す。
【0028】
次に、AWGを作製するプロセスを示す。シリコン基板11の一面上に火炎加水分解堆積(FHD)法により、アンダークラッド層となる石英系ガラス微粒子層を堆積し、高温炉(1350℃)で溶融固化することで作製する。更に同様にFHD法でゲルマニウムを含んだ石英系ガラス微粒子を堆積した後、高温炉で溶融固化してコア層とする。このコア層を反応性イオンエッチング(以下RIE)法により、フォトマスクを用いて、コア層上に塗布したレジストを露光・現像した後、垂直エッチングする。続いて、コア・クラッドを覆うようにアンダークラッド層と同組成の石英ガラス微粒子層を同様にFHD法で堆積した後、高温炉で溶融固化することでAWGの導波路部分を作製する。
【0029】
次に、図7(B)及び(C)に示した溝を作製するプロセスを示す。上記作製したオーバークラット層の上にフォトレジストを20μm塗布し、フォトマスクを用いて露光・現像する。図8(A)及び(B)は、それぞれ図7(B)及び(C)に示した溝を作製するために、作製したフォトレジストの断面図を示す。図8(A)は、位置ズレ、倒れ、よれなど無く精度良く作製されたレジストを示し、図8(B)は、位置ズレ、倒れ、よれが生じ、精度良く作製されていないレジストを示す。この状態でRIEによって溝加工を行った。溝の深さは30μmであった。作製された溝に屈折率の温度係数が石英系ガラスと逆符号を持つシリコーン樹脂を充填し、AWGを光学測定した。溝による過剰損失は、図8(A)のレジストで作製した溝を有するAWGでは1dBであったのに対し、図8(B)のレジストで作製した溝を有するAWGでは3dBとなった。
【0030】
図9(A)及び(B)に、中心チャネルの透過スペクトルを示す。図9(A)に示すように、精度良くレジストが作製され、加工されたAWGでは、隣接クロストークが中心ピークから−28dBであったのに対し、図9(B)に示すように精度よく作製されなかったレジストを用いて溝を加工したAWGでは、隣接クロストークが中心ピークから−15dBとなり、レジスト作製と加工の精度がそのまま光学特性にも影響が表れた。
【0031】
以上説明したように本発明によれば、歩留まり率の高い製造工程を構築でき、経済性と共に光学特性の優れたアサーマルAWGを提供することができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図10乃至12を参照して、本発明の第2の実施形態に係るアサーマルAWG型の光波長合分波回路について説明する。本光波長合分波回路は、第1の実施の形態と同様にAWGの回路部分を作製した後、アサーマル溝を加工した回路である。
【0033】
図10(A)及び(B)は、図6に示した第1のスラブ導波路102とその近傍を拡大して示す平面図である。本実施形態において、溝106の構造は第1の実施の形態と同様であるが、その両端に粘性の高い光学樹脂でも容易に細い溝に充填されるように液だめ1005が備えられている点で図6に示す光波長合分波回路と異なる。図10(C)は、図7(C)に示した構造と同様の比較のための構造を示す図である。
【0034】
図10(A)に示す溝106とリッジの構造は、図10(B)に示すように領域1009で溝のギャップが最大15μmに拡大する構造であるのに対し、図10(C)では6μmで一定の構造である。次に、図10(B)及び(C)に示した溝を作製した。
【0035】
上記作製したオーバークラット層の上にフォトレジストを21μm塗布し、フォトマスクを用いて露光・現像する。図11(A)及び(B)は、それぞれ図10(B)及び(C)に示した溝を作製するために、作製したフォトレジストの断面図を示す。図11(A)のレジストは、液だめへの端面部分でも位置ズレ、倒れ、よれなどが無く精度良く作製されたレジストを示し、図11(B)は、完全に倒れて流れてしまったレジストを示す。この状態で図11(A)に示すレジストではRIEによる溝加工が問題なく可能であったが、図11(B)に示すレジストではRIEによる溝加工が不可能であった。
【0036】
作製された図10(B)の溝に粘性の高い光学樹脂を充填し、比較のために第1の実施の形態の図7(B)に示す溝にも同様な粘性の高い光学樹脂を充填して光学特性を比較した。図12(A)に中心チャネルの透過スペクトルの比較を、図12(B)に中心チャネルの温度依存性の比較を示す。
【0037】
図12(A)から、液だめの無いアサーマル溝を持つAWGでは、液だめのあるものより、損失が3dB高くなっており、隣接クロストークも劣化していることが分る。また、図12(B)から、液だめのないものでは、中心波長の最短波長温度が室温よりも低温側にずれたことが分かる。
【0038】
以上の二つの光学特性から、液だめがないことにより、細い溝に粘性の高い光学樹脂が十分に充填されていないことを示していることが分かる。
【0039】
(第3の実施の形態)
図13及び14を参照して、本発明の第3の実施形態に係るアサーマルAWG型の光波長合分波回路について説明する。本光波長合分波回路は、第1の実施の形態と同様にAWGの回路部分を作製した後、アサーマル溝を加工した回路である。
【0040】
図13(A)及び(B)は、図6に示した第1のスラブ導波路102とその近傍を拡大して示す平面図である。本実施形態において、溝106の構造は第1の実施の形態と同様であり、図10(A)に示したように液だめはないものとする。これは粘性の低い光学樹脂を用いたために、溝に十分に光学樹脂を充填することができるからである。
【0041】
アサーマル溝は、50本の溝106で構成されており、光波の進行方向に対して各溝は等幅で、かつ各溝の中心線の間隔が一定であるように配置されている。ここで各溝の中心線の間隔は19μmとしている。第1のスラブ導波路102の入力ポートとアレイ導波路への出力ポートを結んだ光波が伝搬する領域(光波が及ぶ領域)1307とその直ぐ外側の領域1308と更に外側の領域1309に分けると、本実施形態では図13(B)に示すようにギャップ(リッジ)の幅が拡大し始める地点を評価するために、マージン(領域1308の幅)を−50μmから+50μmまで10μm刻みで変化させた。ここで、マージンが負の場合では領域1307から溝のギャップの幅の拡大が開始していることを意味する。また、このマージンが0μmの場合(領域1308が無い場合)の溝のギャップの最小幅を6μmとし、領域1309では徐々にその幅を拡大し、領域1307から160μm離れた先端では溝のギャップの幅を17μmとした。
【0042】
図14(A)に領域1308の開始地点(すなわち、マージンの幅、あるいは溝のギャップの幅が拡大し始める地点)の変化に対する最端ポートの損失を示し、図14(B)に領域1308の開始地点の変化に対する最端ポートのクロストークを示す。これらの図14から、マージンの幅が+5μm以上で劣化の無い定常値へ落ち着くことが分る。
【0043】
次に、領域1308の幅を60μmとし、溝のギャップの幅が拡大し始める地点における溝のギャップの幅を2μmから1μm刻みで8μmまで変化させ、領域1309における溝のギャップの拡大倍率(開始地点における溝のギャップの幅に対する終端における溝のギャップの幅の比)を1.2倍から1.8倍まで0.1倍刻みで変化させて評価用マスクで導波回路を作製した。その結果、表1に示すように、溝のギャップの拡大が開始する地点における溝のギャップの幅が4μm以下では厚さ20μmのレジストがよれたり、倒れたり、剥がれたりしたため、アサーマル溝を精度良く作製できなかった。一方、溝のギャップの拡大が開始する地点における溝のギャップの幅が5μm以上では、拡大倍率が1.5倍以上であれば、レジストを精度良く作製することができた。
【0044】
【表1】
【0045】
以上、3つの実施形態から、本発明の光波長合分波回路では、精度の良いレジスト加工が可能になり、これに続くエッチングプロセスにおいても精度の良い加工ができるため、低損失でクロストークなどの光学特性に問題のないアサーマルAWGが歩留まり良く作製することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、第1のスラブ導波路に溝を形成し温度補償材料を充填する構成を示したが、本発明の適用領域は、この構成に限定されるものではなく、溝を第2のスラブ導波路に形成する構成、および第1および第2のスラブ導波路の双方に形成する構成においても、同様に効果を得ることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、導波路の比屈折率差、コア幅およびコア厚について特定の値を用いて説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。しかしながら、通常用いられる比屈折率差1%を越えるような導波回路で、その比屈折率差が高くなればなるほど効果を著しく発揮するものである。
【0048】
さらに、上記実施形態では、溝の分割数を特定の値を用いて説明したが、本発明の適用範囲はこの数に限定されるものではない。しかしながら、その効果は、分割数が増えて、リッジ幅が狭くなるほどその効果を発揮するものである。
【0049】
さらにまた、上記実施形態では、温度補償材料としてシリコーン樹脂を使用する例を説明したが、本発明の適用範囲は、この材料に限定されるものではなく、導波路の実効屈折率温度依存性と異なる屈折率温度依存性を有する材料を適用したアサーマルAWGにおいて、同様に効果を得ることができる。温度補償材料として、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の光学樹脂を使用してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、回路作製のガラス堆積技術として、FHD法を用いる例を説明したが、本発明の適用範囲は、この堆積方法に限定されるものではなく、どのような堆積技術を用いても同様の効果を得ることができる。他の堆積技術として、スパッタ法、CVD法などを用いてもよい。
【0051】
さらに、上記実施形態では、回路作製のレジストプロセスとして、i線やg線などを用いる露光法を使用する例を示したが、本発明の適用範囲は、この方法に限定されるものではなく、どのようなレジストプロセスを用いても同様の効果を得ることができる。他のレジストプロセスとして、電子ビーム法、X線ビーム法などを使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
101,105 入出力導波路
102,104 スラブ導波路
103 アレイ導波路
106 溝
108 基板
109 コア
110 クラッド
406,1005 液だめ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波長合分波回路に関し、より詳細には、アレイ導波路回折格子型の光波長合分波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上に形成した石英系ガラス導波路によって構成されたプレーナ光波回路(PLC)の研究開発が盛んに行われている。このPLC技術を利用した、アレイ導波路回折格子(AWG)は、光波長合分波を実現する回路であり、光通信用の部品として重要な役割を果たしている。
【0003】
AWGは、合分波される光の透過波長に温度依存性を有する。これは、AWGを構成する石英系ガラス導波路の実効屈折率が温度依存性を有するためである。そのため通常のAWGにおいては、波長透過特性を一定に保持するために、温度調節装置を付加する必要があった。
【0004】
AWGに付加的に必要とされた温度調節装置を省略するため、AWGの透過波長の温度依存性を低減する方法が開発されている。この方法について、特許文献1に開示されている。透過波長の温度依存性を低減したAWGは、「温度無依存AWG」または「アサーマルAWG」と呼ばれる。アサーマルAWGは、AWG内の各光路の一部分断した溝を形成し、その溝に導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料(以下「温度補償材料」という。)を挿入することによって実現される。温度補償材料は、アレイ導波路において温度変化によって生ずる光路長差変化を相殺する。特にスラブ導波路に溝を形成する構成は、非アサーマルAWGと比較して、回路面積の増大が無いという長所を有する。
【0005】
図1は、スラブ導波路に溝を形成するタイプのアサーマルAWGの構成を示す平面図である。図1に示すアサーマルAWGは、第1の入出力導波路101、第1のスラブ導波路102、アレイ導波路103、及び第2のスラブ導波路104、第2の入出力導波路105、及び溝106を備える。溝106には温度補償材料が充填されている。図1(A)は第1のスラブ導波路102に溝を形成する場合、図1(B)は第2のスラブ導波路104に溝を形成する場合、図1(C)は第1及び第2のスラブ導波路の双方に溝を形成する場合を示している。
【0006】
図2は、図1(A)のアサーマルAWGの第1のスラブ導波路102のX−X’断面を示す図である。第1のスラブ導波路102は、シリコン基板108、導波路コア109、クラッド110を備える。溝106は導波路コア109およびクラッド110の一部を取り除いて形成されており、導波路コア109を分断している。図1(B)及び図1(C)に示す構成のアサーマルAWGにおいても、溝106の断面の構成は図2に示されたものと同一である。
【0007】
また、各溝は複数の溝に分割されている。これは、単一の溝よりも、放射損失を低減することが可能だからである。図1(A)〜(C)においてi番目のアレイ導波路の光路長Liは、Li=Li+(i−1)・ΔLと表され、一定量ΔLずつ順次長くなるよう設計されている。これに応じて、各アレイ導波路を通過する光波が第1のスラブ導波路102および第2のスラブ導波路104において溝によって分断される長さLi’は、Li’=Li’+(i−1)・ΔL’と表され、ΔLに比例した量ΔL’ずつ順次長くなるように溝が形成されている。これらのAWGにおける透過中心波長λ0は、
λ0={na・ΔL−ns・ΔL’+n’・ΔL’}/M
と表される。ここで、naはアレイ導波路の実効屈折率、nsはスラブ導波路の実効屈折率、n’は温度補償材料の屈折率であり、MはAWGの回折次数である。このとき、n’はnsに近く、溝における光波の屈折角は十分小さいと仮定している。アサーマルAWGではΔL’/(ΔL−ΔL’)=−α/α’すなわちΔL’=ΔL/(1−α’/α)と設計されており、透過中心波長の温度依存性が補償されている。ここでαはアレイ導波路およびスラブ導波路の実効屈折率温度係数(α=dna/dT=dns/dT)、α’は温度補償材料の屈折率温度係数(α’=dn’/dT)である。
【0008】
温度補償材料としては、特にα’がαと異符号であり、かつ|α’|が|α|に比較し
て十分大きいような材料が好ましい。このような条件の材料としては、例えば光学樹脂で
あるシリコーン樹脂があり、α’〜−35×αである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO98/36299号パンフレット
【特許文献2】特許第3498650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
波長合分波回路は実際の伝送システムで既に広く使われているが、将来に向けた伝送容量の拡大に対応した大規模かつ高集積な回路を安価に提供する必要があるため、コストの面でも更なる小型化が重要である。それは、小型化することによって、1ウエハ当たりからのチップ個取り数を増やすことができ、生産性が向上するためである。回路を小型化するためには、光導波路の比屈折率差Δnを上げることによって、光の閉じ込めを強くすることで最小曲げ半径を小さくすることが必要となる。現状では、Δnは1.5%程度のものが高Δ導波回路として認識され、最小曲げ半径は2mm程度である。例えばこのΔnを2.5%へ高Δ化した場合、最小曲げ半径は1mmとなり、同じ機能のAWGを作製した場合、サイズは1/10以下となる。このように高Δ化は、小型化にメリットがあるが、作製の面ではより細い回路を精度よく作製することが要求される。特に、アサーマル溝は、複数の溝部分に分割しており(すなわち複数の溝で構成されており)、分割した各溝においてそれぞれの放射される光波が干渉し、全体として放射損失を抑制する効果がある。これが高Δ化されると、放射損失を抑制するために、溝の分割数を増やす必要があり、結果的に溝および溝と溝の間のギャップが狭くなる。更に、近年100GHz間隔40chから、50GHz間隔88chへとAWGの大規模化が進んでおり、チャンネル間隔が半分になることで、溝の長さが2倍になるため、非常に細い溝とギャップの繰り返しが20から50本続く、高精度の回路加工が必要になる。図3(A)に、Δ2.5%の場合の分割溝間隔(図3(B)に示す)に対するスラブアサーマル溝の損失の計算結果を示す。溝106の幅は現状のレジストフォト加工プロセスで十分可能な4μmとした。図から、低損失化を目指した場合、溝数はより多い50本とし、分割溝間隔は6μmとすると良いことが分る。アサーマル溝の深さは、オーバークラッド厚とコアの高さ、およびアンダークラッドへのコアからの光の染み出しを考慮して十分深く掘り下げる必要がある。通常1.5%Δの場合、30〜40μmの深さが必要であり、更に高Δ化する場合においても20μm程度の深さが必要となる。その深さを加工するためには、例えばネガレジストを使用すると厚さとして20μm程度が考えられるため、上記の6μm程度の分割溝間隔で厚さ20μmの感光されたレジストが長さ数ミリに渡って数十本平行に並ぶことになる。現状のレジストを用いた加工技術では、これらのレジストが倒れたり、傾いたり、よれたりといったトラブルが起こり、アサーマル溝にて発生するAWGのクロストークの劣化、損失の劣化等の原因となる。従って、現状のレジストを用いた加工技術で精度よく作製可能なアサーマル溝構造が望まれていた。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スラブ導波路に温度補償材料を挿入する構成のアサーマルAWGにおいて、温度補償材料を挿入する溝の構造が現状のフォトレジストを用いた加工技術で容易に精度良く加工でき、かつ溝での回折損失や位相誤差の発生を抑えることができる構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、アレイ導波路と、前記アレイ導波路の両端部に接続された第1のスラブ導波路および第2のスラブ導波路と、前記第1および第2のスラブ導波路にそれぞれ接続された第1の入出力導波路および第2の入出力導波路とを備え、前記第1のスラブ導波路及び前記第2のスラブ導波路の少なくとも一方に、導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料を充填する複数の溝が配置された波長合分波回路であって、前記複数の溝は、光波の及ばない外側の端領域で、溝と溝の間のリッジ構造の幅が拡大するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光波長合分波回路であって、前記アレイ導波路、前記第1および第2のスラブ導波路、ならびに前記第1および第2の入出力導波路は石英系ガラスで構成され、前記材料は光学樹脂であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光波長合分波回路であって、前記溝の片端または両端に、前記光学樹脂を充填する液だめを有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の光波長合分波回路であって、前記光波の及ばない領域は、前記第1のスラブ導波路において前記第1の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、および/または前記第2のスラブ導波路において前記第2の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の光波長合分波回路であって、前記光波の及ばない領域において、前記リッジ構造の幅は徐々に拡大し、前記リッジ構造の最小幅は少なくとも5μmであり、前記リッジ構造の先端において幅が最小幅の1.5倍以上となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スラブ導波路に配置されたアサーマル溝のギャップ構造が、光波の進行から外れた領域で徐々に幅を広げ、最終的にアスペクト比1以上になることにより、フォトレジストの倒れ、よれ、剥がれを防ぐことができ、光学的に影響なく、安定した形状の溝構造を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】スラブ導波路に溝を形成するタイプのアサーマルAWGの構成を示す平面図である。
【図2】図1のアサーマルAWGのX−X’断面を示す図である。
【図3】(A)はΔ2.5%の場合の分割溝間隔に対するスラブアサーマル溝の損失の計算結果を示す図であり、(B)は分割溝間隔を説明するための図である。
【図4】アサーマルAWGにおける第一のスラブ導波路、アレイ導波路との接続部分とアサーマル溝部を拡大した図である。
【図5】(A)は図4におけるギャップ幅を一定とした部分のX−X’断面を示す図であり、(B)は図4におけるギャップ幅を拡大した部分の端部のY−Y’断面を示す図である。
【図6】アサーマルAWG回路の構成を示した平面図である。
【図7】(A)は、図6における第1のスラブ導波路を拡大して示す平面図であり、(B)は溝のギャップ幅を拡大した構造を示す図であり、(C)は溝のギャップ幅を一定とした構造を示す図である。
【図8】(A)及び(B)は、それぞれ図7(B)及び(C)に示した溝を作製するためのフォトレジストの断面を示す図である。
【図9】(A)は図7(B)の構造のAWGの中心チャネルの透過スペクトルを示す図であり、(B)は図7(C)の構造のAWGの中心チャネルの透過スペクトルを示す図である。
【図10】(A)は、図6における第1のスラブ導波路及び液だめを拡大して示す平面図であり、(B)は溝のギャップ幅を拡大した構造を示す図であり、(C)は溝のギャップ幅を一定とした構造を示す図である。
【図11】(A)及び(B)は、それぞれ図10(B)及び(C)に示した溝を作製するためのフォトレジストの断面を示す図である。
【図12】(A)は図10(A)及び(B)の構造のAWGの中心チャネルの透過スペクトルを示す図であり、(B)は図10(A)及び(B)の構造のAWGの中心チャネル波長の温度依存性を示す図である。
【図13】(A)は図6における第1のスラブ導波路を拡大して示す平面図であり、(B)は溝のギャップ幅の拡大が開始する地点を説明するための図である。
【図14】(A)は溝のギャップ幅の拡大開始地点が変化した場合の損失を示す図であり、(B)は溝のギャップ幅の拡大開始地点が変化した場合のクロストーク値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明では、スラブ導波路中を伝搬する光波の幅とアサーマル溝が切ってある長さに着目した。
【0021】
図4は、アサーマルAWGにおける第1のスラブ導波路、アレイ導波路との接続部分とアサーマル溝部分を拡大した図である。従来は、スラブ導波路の入力ポート401と出力ポート402を一直線に繋いだ場合の幅から十分に余裕を持った長さでアサーマル溝106が設計されてきた。この溝106のマージン部分(上記十分に余裕を持った長さの部分であり、光波の及ばない部分)はスラブの両サイドに設置した液だめ406に溝106が届くように設計したために発生した。この液だめは温度補償材料である樹脂が高粘性であっても細い溝106に行き渡るように設置されている。しかしながら溝106の終点が液だめ406と接続し、溝と溝の間のギャップ(リッジ)が細い場合にはレジストが倒れやすくなる。また、液だめが無く直ぐに終点となる場合は溝106の細い部分でレジストが抜けにくくなったり、ギャップ部分が倒れやすくなったりする。
【0022】
そこでこの溝106のマージン部分に徐々にギャップ幅(リッジ幅)を広くした部分405を設定することにより、溝を液だめ406と接続しても、あるいはそのまま溝を終端しても光学的には影響なく安定した形状の溝加工を実現できる。ギャップ幅を広げ始める点は、光波の及ばない領域である。例えば、ギャップ幅を広げ始める点は、入力ポート401と出力ポート402を一直線に結んだ線と溝103が交わった地点より外側(液だめ406側)であれば良いが、当該地点よりも内側ではアサーマル特性に影響が出てしまう。従って、図4に示す構成では、加工誤差等のマージンのため、当該地点から僅かにギャップ幅が一定となる部分404を設けている。
【0023】
図5(A)は、図4におけるギャップ幅を一定とした部分404のX−X’断面を示し、図5(B)は、図4におけるギャップ幅(リッジ幅)を広くした部分405の端部のY−Y’断面を示す。ガラスを深く加工するレジストは、フォト工程、現像工程やベーク工程で収縮したり、膨潤したりするため、図5(A)のようなアスペクト比の高い状態では、倒れたり、よれたり、剥がれたりしやすい。一方、図5(A)の状態から、徐々に図5(B)のアスペクト比に変化させることによって、上記の倒れ、よれ、剥がれを防ぐことができ、光学的には影響なく安定した形状の溝加工を実現できる。
【0024】
(第1の実施の形態)
図6乃至8を参照して、本発明の第1の実施形態に係るアサーマルAWG型の光波長合分波回路について説明する。図6は、光波長合分波回路の構成を示した平面図である。図6に示す光波長合分波回路は、アレイ導波路103と、アレイ導波路103の端部にそれぞれ接続された第1のスラブ導波路102及び第2のスラブ導波路104と、第1のスラブ導波路102に接続された第1の入出力導波路101と、第2のスラブ導波路104に接続された第2の入出力導波路105を備える。本光波長合分波回路は、第1のスラブ導波路102上に形成された溝106を備え、溝106には温度補償材料が充填されている。温度補償材料としてシリコーン樹脂である。
【0025】
アレイ導波路103のi番目の導波路の光路長Liは、Li=Li+(i−1)・ΔLと表され、一定量ΔLずつ順次長くなるように設計されている。これに応じて、各アレイ導波路を通過する光波が、第1のスラブ導波路102において溝によって分断される光路長Li’はLi’=Li’+(i−1)・ΔL’と表され、ΔLに比例した量ΔL’ずつ順次長くなるような形状をしている。各導波路は、比屈折率差2.5%、コア厚3μmの石英系ガラス導波路であり、入出力導波路101、105、およびアレイ導波路103のコア幅は4μmである。回路は波長チャネル数88、波長チャネル間隔0.4nm(50GHz)の特性を有し、アレイ導波路の本数は520本、ΔLは約25μm、ΔL’は約1μmである。
【0026】
図7(A)及び(B)は、図6における第1のスラブ導波路102とその一部を拡大して示す平面図である。本実施形態において、サーマル溝は、50本の溝106で構成されており、光波の進行方向に対して各溝は等幅で、かつ各溝の中心線の間隔が一定であるように配置されている。ここで各溝の中心線の間隔(図3(B)溝間隔)は19μmとしている。第1のスラブ導波路102の入力ポートとアレイ導波路への出力ポートを結んだ光波が伝搬する領域(光波が及ぶ領域)707とその直ぐ外側の領域708と更に外側の領域709に分けると、本実施形態では図7(B)に示すように領域708は、加工精度を考慮したマージン領域とするものであり、領域707からの距離が10μmの帯状の領域である。領域708における溝のギャップの幅は6μmで一定である。また、図7(B)に示すように領域709は、領域707からの距離が10μmから160μmまでの帯状の領域であり。領域709における溝のギャップの幅(リッジの幅)は、徐々にその幅を拡大し、領域708から150μm離れた先端では溝のギャップの幅は15μmである。
【0027】
一方、図7(C)に、比較のための、領域708のみとし、溝のギャップ幅を6μmのまま一定にした構成を示す。
【0028】
次に、AWGを作製するプロセスを示す。シリコン基板11の一面上に火炎加水分解堆積(FHD)法により、アンダークラッド層となる石英系ガラス微粒子層を堆積し、高温炉(1350℃)で溶融固化することで作製する。更に同様にFHD法でゲルマニウムを含んだ石英系ガラス微粒子を堆積した後、高温炉で溶融固化してコア層とする。このコア層を反応性イオンエッチング(以下RIE)法により、フォトマスクを用いて、コア層上に塗布したレジストを露光・現像した後、垂直エッチングする。続いて、コア・クラッドを覆うようにアンダークラッド層と同組成の石英ガラス微粒子層を同様にFHD法で堆積した後、高温炉で溶融固化することでAWGの導波路部分を作製する。
【0029】
次に、図7(B)及び(C)に示した溝を作製するプロセスを示す。上記作製したオーバークラット層の上にフォトレジストを20μm塗布し、フォトマスクを用いて露光・現像する。図8(A)及び(B)は、それぞれ図7(B)及び(C)に示した溝を作製するために、作製したフォトレジストの断面図を示す。図8(A)は、位置ズレ、倒れ、よれなど無く精度良く作製されたレジストを示し、図8(B)は、位置ズレ、倒れ、よれが生じ、精度良く作製されていないレジストを示す。この状態でRIEによって溝加工を行った。溝の深さは30μmであった。作製された溝に屈折率の温度係数が石英系ガラスと逆符号を持つシリコーン樹脂を充填し、AWGを光学測定した。溝による過剰損失は、図8(A)のレジストで作製した溝を有するAWGでは1dBであったのに対し、図8(B)のレジストで作製した溝を有するAWGでは3dBとなった。
【0030】
図9(A)及び(B)に、中心チャネルの透過スペクトルを示す。図9(A)に示すように、精度良くレジストが作製され、加工されたAWGでは、隣接クロストークが中心ピークから−28dBであったのに対し、図9(B)に示すように精度よく作製されなかったレジストを用いて溝を加工したAWGでは、隣接クロストークが中心ピークから−15dBとなり、レジスト作製と加工の精度がそのまま光学特性にも影響が表れた。
【0031】
以上説明したように本発明によれば、歩留まり率の高い製造工程を構築でき、経済性と共に光学特性の優れたアサーマルAWGを提供することができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図10乃至12を参照して、本発明の第2の実施形態に係るアサーマルAWG型の光波長合分波回路について説明する。本光波長合分波回路は、第1の実施の形態と同様にAWGの回路部分を作製した後、アサーマル溝を加工した回路である。
【0033】
図10(A)及び(B)は、図6に示した第1のスラブ導波路102とその近傍を拡大して示す平面図である。本実施形態において、溝106の構造は第1の実施の形態と同様であるが、その両端に粘性の高い光学樹脂でも容易に細い溝に充填されるように液だめ1005が備えられている点で図6に示す光波長合分波回路と異なる。図10(C)は、図7(C)に示した構造と同様の比較のための構造を示す図である。
【0034】
図10(A)に示す溝106とリッジの構造は、図10(B)に示すように領域1009で溝のギャップが最大15μmに拡大する構造であるのに対し、図10(C)では6μmで一定の構造である。次に、図10(B)及び(C)に示した溝を作製した。
【0035】
上記作製したオーバークラット層の上にフォトレジストを21μm塗布し、フォトマスクを用いて露光・現像する。図11(A)及び(B)は、それぞれ図10(B)及び(C)に示した溝を作製するために、作製したフォトレジストの断面図を示す。図11(A)のレジストは、液だめへの端面部分でも位置ズレ、倒れ、よれなどが無く精度良く作製されたレジストを示し、図11(B)は、完全に倒れて流れてしまったレジストを示す。この状態で図11(A)に示すレジストではRIEによる溝加工が問題なく可能であったが、図11(B)に示すレジストではRIEによる溝加工が不可能であった。
【0036】
作製された図10(B)の溝に粘性の高い光学樹脂を充填し、比較のために第1の実施の形態の図7(B)に示す溝にも同様な粘性の高い光学樹脂を充填して光学特性を比較した。図12(A)に中心チャネルの透過スペクトルの比較を、図12(B)に中心チャネルの温度依存性の比較を示す。
【0037】
図12(A)から、液だめの無いアサーマル溝を持つAWGでは、液だめのあるものより、損失が3dB高くなっており、隣接クロストークも劣化していることが分る。また、図12(B)から、液だめのないものでは、中心波長の最短波長温度が室温よりも低温側にずれたことが分かる。
【0038】
以上の二つの光学特性から、液だめがないことにより、細い溝に粘性の高い光学樹脂が十分に充填されていないことを示していることが分かる。
【0039】
(第3の実施の形態)
図13及び14を参照して、本発明の第3の実施形態に係るアサーマルAWG型の光波長合分波回路について説明する。本光波長合分波回路は、第1の実施の形態と同様にAWGの回路部分を作製した後、アサーマル溝を加工した回路である。
【0040】
図13(A)及び(B)は、図6に示した第1のスラブ導波路102とその近傍を拡大して示す平面図である。本実施形態において、溝106の構造は第1の実施の形態と同様であり、図10(A)に示したように液だめはないものとする。これは粘性の低い光学樹脂を用いたために、溝に十分に光学樹脂を充填することができるからである。
【0041】
アサーマル溝は、50本の溝106で構成されており、光波の進行方向に対して各溝は等幅で、かつ各溝の中心線の間隔が一定であるように配置されている。ここで各溝の中心線の間隔は19μmとしている。第1のスラブ導波路102の入力ポートとアレイ導波路への出力ポートを結んだ光波が伝搬する領域(光波が及ぶ領域)1307とその直ぐ外側の領域1308と更に外側の領域1309に分けると、本実施形態では図13(B)に示すようにギャップ(リッジ)の幅が拡大し始める地点を評価するために、マージン(領域1308の幅)を−50μmから+50μmまで10μm刻みで変化させた。ここで、マージンが負の場合では領域1307から溝のギャップの幅の拡大が開始していることを意味する。また、このマージンが0μmの場合(領域1308が無い場合)の溝のギャップの最小幅を6μmとし、領域1309では徐々にその幅を拡大し、領域1307から160μm離れた先端では溝のギャップの幅を17μmとした。
【0042】
図14(A)に領域1308の開始地点(すなわち、マージンの幅、あるいは溝のギャップの幅が拡大し始める地点)の変化に対する最端ポートの損失を示し、図14(B)に領域1308の開始地点の変化に対する最端ポートのクロストークを示す。これらの図14から、マージンの幅が+5μm以上で劣化の無い定常値へ落ち着くことが分る。
【0043】
次に、領域1308の幅を60μmとし、溝のギャップの幅が拡大し始める地点における溝のギャップの幅を2μmから1μm刻みで8μmまで変化させ、領域1309における溝のギャップの拡大倍率(開始地点における溝のギャップの幅に対する終端における溝のギャップの幅の比)を1.2倍から1.8倍まで0.1倍刻みで変化させて評価用マスクで導波回路を作製した。その結果、表1に示すように、溝のギャップの拡大が開始する地点における溝のギャップの幅が4μm以下では厚さ20μmのレジストがよれたり、倒れたり、剥がれたりしたため、アサーマル溝を精度良く作製できなかった。一方、溝のギャップの拡大が開始する地点における溝のギャップの幅が5μm以上では、拡大倍率が1.5倍以上であれば、レジストを精度良く作製することができた。
【0044】
【表1】
【0045】
以上、3つの実施形態から、本発明の光波長合分波回路では、精度の良いレジスト加工が可能になり、これに続くエッチングプロセスにおいても精度の良い加工ができるため、低損失でクロストークなどの光学特性に問題のないアサーマルAWGが歩留まり良く作製することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、第1のスラブ導波路に溝を形成し温度補償材料を充填する構成を示したが、本発明の適用領域は、この構成に限定されるものではなく、溝を第2のスラブ導波路に形成する構成、および第1および第2のスラブ導波路の双方に形成する構成においても、同様に効果を得ることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、導波路の比屈折率差、コア幅およびコア厚について特定の値を用いて説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。しかしながら、通常用いられる比屈折率差1%を越えるような導波回路で、その比屈折率差が高くなればなるほど効果を著しく発揮するものである。
【0048】
さらに、上記実施形態では、溝の分割数を特定の値を用いて説明したが、本発明の適用範囲はこの数に限定されるものではない。しかしながら、その効果は、分割数が増えて、リッジ幅が狭くなるほどその効果を発揮するものである。
【0049】
さらにまた、上記実施形態では、温度補償材料としてシリコーン樹脂を使用する例を説明したが、本発明の適用範囲は、この材料に限定されるものではなく、導波路の実効屈折率温度依存性と異なる屈折率温度依存性を有する材料を適用したアサーマルAWGにおいて、同様に効果を得ることができる。温度補償材料として、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の光学樹脂を使用してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、回路作製のガラス堆積技術として、FHD法を用いる例を説明したが、本発明の適用範囲は、この堆積方法に限定されるものではなく、どのような堆積技術を用いても同様の効果を得ることができる。他の堆積技術として、スパッタ法、CVD法などを用いてもよい。
【0051】
さらに、上記実施形態では、回路作製のレジストプロセスとして、i線やg線などを用いる露光法を使用する例を示したが、本発明の適用範囲は、この方法に限定されるものではなく、どのようなレジストプロセスを用いても同様の効果を得ることができる。他のレジストプロセスとして、電子ビーム法、X線ビーム法などを使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
101,105 入出力導波路
102,104 スラブ導波路
103 アレイ導波路
106 溝
108 基板
109 コア
110 クラッド
406,1005 液だめ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ導波路と、前記アレイ導波路の両端部に接続された第1のスラブ導波路および第2のスラブ導波路と、前記第1および第2のスラブ導波路にそれぞれ接続された第1の入出力導波路および第2の入出力導波路とを備え、前記第1のスラブ導波路及び前記第2のスラブ導波路の少なくとも一方に、導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料を充填する複数の溝が配置された波長合分波回路であって、
前記複数の溝は、光波の及ばない外側の端領域で、溝と溝の間のリッジ構造の幅が拡大するように配置されていることを特徴とする光波長合分波回路。
【請求項2】
前記アレイ導波路、前記第1および第2のスラブ導波路、ならびに前記第1および第2の入出力導波路は石英系ガラスで構成され、前記材料は光学樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光波長合分波回路。
【請求項3】
前記溝の片端または両端に、前記光学樹脂を充填する液だめを有することを特徴とする請求項2に記載の光波長合分波回路。
【請求項4】
前記光波の及ばない領域は、前記第1のスラブ導波路において前記第1の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、および/または前記第2のスラブ導波路において前記第2の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光波長合分波回路。
【請求項5】
前記光波の及ばない領域において、前記リッジ構造の幅は徐々に拡大し、前記リッジ構造の最小幅は少なくとも5μmであり、前記リッジ構造の先端において幅が最小幅の1.5倍以上となることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光波長合分波回路。
【請求項1】
アレイ導波路と、前記アレイ導波路の両端部に接続された第1のスラブ導波路および第2のスラブ導波路と、前記第1および第2のスラブ導波路にそれぞれ接続された第1の入出力導波路および第2の入出力導波路とを備え、前記第1のスラブ導波路及び前記第2のスラブ導波路の少なくとも一方に、導波路の実効屈折率の温度係数とは異なる屈折率温度係数を有する材料を充填する複数の溝が配置された波長合分波回路であって、
前記複数の溝は、光波の及ばない外側の端領域で、溝と溝の間のリッジ構造の幅が拡大するように配置されていることを特徴とする光波長合分波回路。
【請求項2】
前記アレイ導波路、前記第1および第2のスラブ導波路、ならびに前記第1および第2の入出力導波路は石英系ガラスで構成され、前記材料は光学樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光波長合分波回路。
【請求項3】
前記溝の片端または両端に、前記光学樹脂を充填する液だめを有することを特徴とする請求項2に記載の光波長合分波回路。
【請求項4】
前記光波の及ばない領域は、前記第1のスラブ導波路において前記第1の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、および/または前記第2のスラブ導波路において前記第2の入出力導波路と前記アレイ導波路を結ぶ2つの直線に囲まれた領域外の領域、であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光波長合分波回路。
【請求項5】
前記光波の及ばない領域において、前記リッジ構造の幅は徐々に拡大し、前記リッジ構造の最小幅は少なくとも5μmであり、前記リッジ構造の先端において幅が最小幅の1.5倍以上となることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光波長合分波回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−225995(P2012−225995A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91110(P2011−91110)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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