説明

光源一体型光電変換装置

【課題】対象物に対応した光を高精度で検出することができ、しかも薄型化が可能な光源一体型光電変換装置を提供する。
【解決手段】本発明の光源一体型光電変換装置は、発光層183を含んで構成され、発光層183の一方の面を通して所定の射出方向に光を射出する発光素子と、発光層183と重ならない領域に形成された光電変換層15を含んで構成され、光電変換層15の一方の面を通った光を電気信号に変換する複数の光電変換素子と、を備える。発光素子が複数の光電変換素子と同一の基板10上に形成されているとともに、光電変換層15の一方の面が発光層183の他方の面よりも光L1の射出方向と反対側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源一体型光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォトダイオード等の光電変換素子を用いたイメージセンサーが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1のイメージセンサーは、複数の画素がマトリクス状に配置された構造になっている。複数の画素の各々には、フォトダイオードが設けられている。複数のフォトダイオードにより検出された光信号は、マトリクス回路によりフォトダイオードごとに読出すことが可能になっている。
【0003】
イメージセンサーにおいて読取対象物のパターンを正確に読取るためには、読取対象物を高照度で均一に照明することが重要である。読取対象物の表面で反射した光の強度が強くなるほどこの光がフォトダイオードにより検出されやすくなるからである。
【0004】
読取対象物を照明する薄膜発光素子を備えたイメージセンサーとして、特許文献2には光源一体型固体撮像装置が提案されている。特許文献2の光源一体型固体撮像装置は、一対の基板が透明体により貼り合わされた構造になっている。一方の基板には、フォトトランジスターにより構成される複数の固体撮像素子と、固体撮像素子の読み取り駆動回路とが形成されている。他方の基板には、エレクトロルミネッセンス膜が形成されている。
【特許文献1】特開平11−121731号公報
【特許文献2】特許第3561302号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の技術を用いれば、エレクトロルミネッセンス膜から発せられた光により原稿等の対象物を照明することができる。したがって、原稿で反射した光の強度が確保され、固体撮像素子により原稿を正確に読み取ることができると考えられる。しかしながら、特許文献2の技術には、解像度を向上させるとともに装置を薄型化する観点で、改善すべき点がある。
【0006】
特許文献2の技術では、一対の基板を透明体により貼り合せているので、基板の厚みや透明体の厚みに起因して装置を薄型化することが難しい。また、一対の基板を貼り合せる工程で、高精度な位置合わせ技術が必要になり製造コストが高くなるおそれがある。仮に一対の基板の位置合わせ精度が不足すると、一部の画素がエレクトロルミネッセンス素子と重なってしまい機能しなくなる。また、位置ずれに対するマージンを増加させると、マージンを増加させた分だけ画素サイズが小さくなり感度が低くなる不都合や、画素数が少なくなり解像度が低くなる不都合が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑み成されたものであって、対象物に対応した光を精度よく検出することができ、しかも薄型化が可能な光源一体型光電変換装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光源一体型光電変換装置は、発光層を含んで構成され、前記発光層の一方の面を通して所定の射出方向に光を射出する発光素子と、前記発光層と重ならない領域に形成された光電変換層を含んで構成され、前記光電変換層の一方の面を通った光を電気信号に変換する複数の光電変換素子と、を備え、前記発光素子が前記複数の光電変換素子と同一の基板上に形成されているとともに、前記光電変換層の一方の面が前記発光層の他方の面よりも前記射出方向と反対側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、発光素子から発せられた光は対象物の表面で反射し、光電変換層に入射して光電変換素子により電気信号に変換される。複数の光変換素子から出力される電気信号により、対象物に対応した光を検出することができる。
【0010】
前記の構成によれば、発光素子が複数の光電変換素子と同一の基板上に形成されているので、発光素子が光電変換素子と独立した基板に形成される場合に比べて、素子形成に必要な基板を減らすことができ、装置を薄型化することができる。また、発光素子が設けられた基板と、光電変換素子が設けられた基板とを貼合せる場合に比べて、基板間の接着部を省くことができ、接着部の厚みの分だけ装置を薄型化することができる。
【0011】
また、発光素子が複数の光電変換素子と同一の基板上に形成されているので、発光素子と光電変換素子との相対位置の精度が高くなる。したがって、発光素子と光電変換素子との相対位置の誤差に対するマージンを小さくすることができ、光電変換層の面積を大きくすることや光電変換素子の数を増やすことができる。光電変換層の面積を大きくすると光電変換素子の感度を高めることができ、光電変換素子の数を増やすと解像度を高めることができる。これにより、対象物に対応した光を精度よく検出することが可能になる。
【0012】
また、光電変換層の一方の面が発光層の他方の面がよりも射出方向と反対側に配置されているので、発光層から発せられた光が光電変換層にほとんど入射しなくなる。したがって、光電変換層に入射する光のほとんどが対象物の表面で反射した光となり、対象物に対応した光を精度よく検出することが可能になる。
【0013】
また、前記発光層の他方の面と前記光電変換層の一方の面との間に、前記発光層の他方の面の全体を覆って光吸収材料と光反射材料との少なくとも一方を含んだ形成材料からなる遮光層が設けられていることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、発光層の他方の面を通って光電変換層の一方の面に向かう光が遮光層を通らなくなる。したがって、発光層から発せられた光が対象物を経由せずに光電変換層に直接的に入射することが低減され、対象物に対応した光を精度よく検出することが可能になる。
【0015】
また、前記発光層が、光吸収材料と光反射材料との少なくとも一方を含んだ形成材料からなる隔壁の内側に形成されていることが好ましい。
このようにすれば、発光層から隔壁に向けて発せられた光が、隔壁を通らなくなる。したがって、発光層から隔壁に向けて発せられた光が光電変換層に入射することが防止され、対象物に対応した光を精度よく検出することが可能になる。
【0016】
また、前記発光素子の駆動信号をスイッチングする駆動スイッチング素子が、前記発光層の一方の面よりも、前記射出方向と反対側に配置されていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、駆動スイッチング素子が発光層の一方の面よりも射出方向と反対側に配置されているので、発光層から射出方向に発せられた光が駆動スイッチング素子により遮られることがなくなる。したがって、発光素子の開口率が実質的に高くなり、対象物を明るく照明することができる。また、駆動スイッチング素子により光が遮られないので光のムダが少なくなり、消費電力が低減される。
【0018】
また、光のムダが少なくなるので、照明に必要な光量を確保しつつ発光層の面積を小さくすることができる。これにより、発光層の面積を小さくした分だけ光電変換層の面積を大きくすることや光電変換素子の数を増やすことができ、これにより、対象物に対応した光を精度よく検出することが可能になる。
【0019】
また、前記複数の光電変換素子の各々から出力される電気信号を読出す読出回路を備え、前記読出回路が前記光電変換層の一方の面よりも、前記射出方向と反対側に配置されていることが好ましい。
【0020】
一般に、回路に用いられる配線やスイッチング素子は、光を通しにくい材質からなっている。前記の構成によれば、読出回路が光電変換層の一方の面よりも射出方向と反対側に配置されているので、光電変換層に入射する前の光が読出回路により遮られることがなくなる。したがって、光電変換層に入射する光の光量が増加するので、光電変換素子の感度が高くなる。また、光電変換層に入射する光の光量が増加する分だけ、光電変換層の面積を小さくするとともに光電変換素子の数を増やすこともできる。これにより、対象物に対応した光を高解像度で検出することが可能になる。
【0021】
前記発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、液相法等の低温プロセスを用いて形成することが可能である。本発明では発光素子と光電変換素子とが同一基板に形成されているが、前記の構成によれば、発光素子の形成時の熱による光電変換素子への悪影響が格段に低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、構造の特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造はその寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせて示す場合がある。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る第1実施形態のイメージセンサー(光源一体型光電変換装置)1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、イメージセンサー1は、対象物9と対向する対向面1Aを有している。対象物9は、例えば文字や画像が印刷された原稿等である。本実施形態の対向面1Aの平面形状が略長方形になっている。対向面1Aは、複数の発光領域A1と、多数の光検出領域A2とを含んでいる。
【0024】
発光領域A1は、対向面1Aの短辺方向と略平行して延在しており、対向面1Aの長辺方向に並んでいる。ここでは、対向面1Aの2つの短辺付近の周縁部の各々と、対向面1Aの中央部とに、合計3つの発光領域A1が配置されている。
【0025】
対向面1Aの周縁部に配置された発光領域A1と、対向面1Aの中央部に配置された発光領域A1との間には、複数の光検出領域A2がマトリクス状に配置されている。複数の光検出領域A2は、対向面1Aの短辺方向に配列されているとともに、対向面1Aの長辺方向にも配列されている。ここでは、光検出領域A2の各々が、イメージセンサー1の1画素になっている。
【0026】
イメージセンサー1において発光領域A1と重なる部分には、後述する発光素子が配置されている。イメージセンサー1において光検出領域A2と重なる部分には、後述するフォトダイオード(光電変換素子)が配置されている。発光素子は、対向面1Aから対象物9に向かって光L1を射出するようになっている。すなわち、光L1の射出方向は、対向面1Aを通ってイメージセンサー1の内側から外側に向かう方向である。ここでは、対向面1Aは、後述する基板10(図2参照)の基板面と概略平行になっており、基板10の基板面の法線方向が射出方向になっている。
【0027】
発光領域A1から射出された光L1は、対象物9の表面に入射する。対象物9の表面に入射した光L1の一部は、対象物9の表面で反射し、光L1の一部は対象物9に吸収される。対象物9の表面で反射した光L2は、光検出領域A2からフォトダイオードに入射して電荷(電気信号)に変換される。複数の光検出領域A2の各々に対応した電気信号を読出すことにより、対象物9に対応した光を検出することができる。例えば、この電気信号により、原稿に印刷された文字や画像を含んだ画像が得られる。以下、イメージセンサー1の構成要素について詳しく説明する。
【0028】
図2は、イメージセンサー1において発光領域A1と重なる部分、及び光検出領域A2と重なる部分の断面構造を拡大して示す要部断面図である。
【0029】
図2に示すように、イメージセンサー1は、ガラス等からなる基板10を基体にして製造されている。基板10上には、光検出用TFT素子11と光源用TFT素子(駆動スイッチング素子)12とが設けられている。光検出用TFT素子11と光源用TFT素子12とを覆って、シリコン酸化物(SiO)等からなる層間絶縁膜13が設けられている。層間絶縁膜13上には、樹脂材料等からなる平坦化層14が設けられている。平坦化層14上には、フォトダイオードを構成する光電変換層15が設けられている。ここでは、光検出領域A2と重なる領域に光電変換層15が配置されている。
【0030】
光電変換層15の周縁部と平坦化層14とに連続して、シリコン酸化物等からなるパッシベーション膜16が設けられている。パッシベーション膜16上には、隔壁17が設けられている。パッシベーション膜16上において隔壁17に囲まれる領域には、発光素子を構成する有機機能層18が設けられている。有機機能層18には、発光層183が含まれている。有機機能層18は、発光領域A1と重なる領域に配置されている。ここでは、有機機能層18の全体が、光電変換層15の全体と平面的に重ならないようになっている。なお、射出方向から平面視した状態で、光電変換層15の少なくとも一部が発光層183と重ならないようになっていればよい。
【0031】
光検出用TFT素子11は、後述する読出回路の一部を構成している。光検出用TFT素子11は、半導体層111、ゲート絶縁膜112、ゲート電極113を含んでいる。本実施形態の光検出用TFT素子11は、低温ポリシリコン(LTPS)技術を用いて形成された薄膜トランジスタ(TFT)により構成されている。
【0032】
半導体層111は、例えばポリシリコンからなり、基板10上に島状に設けられている。ここでは、半導体層111の全部又は一部が光検出領域A2と重なるように、半導体層111が形成されている。ゲート絶縁膜112は、例えばシリコン酸化物からなり、半導体層111を覆って設けられている。ゲート電極113は、不純物が高濃度に注入されたポリシリコンや金属材料(例えばアルミニウム)等の導電材料からなっている。
【0033】
ゲート電極113は、ゲート絶縁膜112上において半導体層111の一部と重なる位置に配置されている。ゲート電極113と重なる部分の半導体層111は、チャネル領域になっている。半導体層111においてチャネル領域を挟んだ一方の領域がソース領域になっており、他方の領域がドレイン領域になっている。
【0034】
光源用TFT素子12は、半導体層121、ゲート絶縁膜122、ゲート電極123を含んでいる。光源用TFT素子12のゲート電極123は、発光素子の駆動回路と電気的に接続されている。
【0035】
発光素子の駆動回路は、所定のタイミングで光源用TFT素子12をオンオフするようになっている。所定のタイミングとしては、発光素子の配置や数、イメージセンサー1の用途等に応じて、適宜設定することができる。例えば、フォトダイオードの動作と同期して、光源用TFT素子12をオンオフするように所定のタイミングを設定してもよい。また、イメージセンサー1の動作中に常時、光源用TFT素子12がオンになるように所定のタイミングを設定してもよい。
【0036】
本実施形態の光源用TFT素子12は、光検出用TFT素子11と同一のプロセスにより一括して形成されている。すなわち、基板10上に成膜されたポリシリコン膜をパターニングすることにより、半導体層111、121が一括して形成されている。ここでは、半導体層121の全部又は一部が発光領域A1と重なるように、半導体層121が形成されている。ゲート絶縁膜112、122は、半導体層111、121を覆って形成されており、実質的に一体のものである。ゲート電極113、123は、ゲート絶縁膜112、122上に成膜された導電膜をパターニングすることにより、一括して形成されている。
【0037】
層間絶縁膜13、及びゲート絶縁膜112、122を貫通して、導電部131、132、133、134が設けられている。導電部131、132は、層間絶縁膜13、及びゲート絶縁膜112を貫通するコンタクトホールの内側と、層間絶縁膜13上とに連続して設けられている。導電部133、134は、層間絶縁膜13、及びゲート絶縁膜122を貫通するコンタクトホールの内側と、層間絶縁膜13上とに連続して設けられている。
【0038】
導電部131、132、133、134は、同一のプロセスにより一括して形成されている。例えば、層間絶縁膜13とゲート絶縁膜112とを貫通して、半導体層111のソース領域、ドレイン領域、半導体層121のソース領域、ドレイン領域をそれぞれ露出させるコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホールの内側と層間絶縁膜13上とに連続して導電材料を成膜し、この導電膜をパターニングすることにより、導電部131、132、133、134を一括して形成することができる。
【0039】
導電部131は、光検出用TFT素子11の半導体層111のドレイン領域と導電接続されている。導電部132は、光検出用TFT素子11の半導体層111のソース領域と導電接続されている。導電部133は、光源用TFT素子12の半導体層121のソース領域と導電接続されているとともに、図示略の電源と電気的に接続されている導電部134は、光源用TFT素子12の半導体層121のドレイン領域と導電接続されている。
【0040】
平坦化層14を貫通して、導電部141、142が設けられている。導電部141、142は、それぞれ、平坦化層14に設けられたコンタクトホールの内側と平坦化層14上とに連続して設けられている。導電部141は、導電部132と導通接続されており、導電部132を介して半導体層111のソース領域と電気的に接続されている。導電部141は、平坦化層14上において光検出領域A2と重なる領域まで延設されている。導電部142は、導電部134と導通接続されており、導電部134を介して半導体層121のドレイン領域と電気的に接続されている。
【0041】
本実施形態の導電部141は、光検出用TFT素子11の全体を覆って設けられている。導電部141は、光を反射させる光反射材料と、光を吸収する光吸収材料との少なくとも一方を含んだ導電材料からなっている。これにより、導電部141側から光検出用TFT素子11に光が入射しないようになっており、光の入射による光検出用TFT素子11の誤動作が防止されている。
【0042】
ここでは、導電部141、142が、いずれもアルミニウム(光反射材料)からなっており、一括して形成されている。例えば、平坦化層14を貫通するとともに、層間絶縁膜13上に引き出された部分の導電部132、134を露出させるコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホールの内側と、平坦化層14上とに連続してアルミニウムを成膜する。次いで、このアルミニウム膜をパターニングすることにより、導電部141、142が得られる。
【0043】
平坦化層14上に延設された部分の導電部141上に、光電変換層15が設けられている。光電変換層15は、導電部141上に設けられたp型半導体層151、p型半導体層151上に設けられたi型半導体層152、i型半導体層152上に設けられたn型半導体層153からなっている。本実施形態では、p型半導体層151、i型半導体層152、n型半導体層153は、いずれも微結晶シリコンからなっている。p型半導体層151には、第III族の不純物(例えばボロン)がドープされている。n型半導体層153には、第V族の不純物(例えばリン)がドープされている。
【0044】
光電変換層15の周縁部と、平坦化層14上とに連続してパッシベーション膜16が設けられている。パッシベーション膜16には、光電変換層15のn型半導体層153を露出させる開口が設けられている。この開口の内側に露出したn型半導体層153上と、パッシベーション膜16上とに連続して、インジウム錫酸化物(ITO)等の透光性を有する導電材料からなる導電部162が設けられている。
【0045】
導電部141、光電変換層15、及び導電部162によりフォトダイオードが構成されている。光電変換層15の一方の面から光L2が入射すると、光電変換層15に光L2の光量に応じた数のキャリアが発生する。このキャリアは、導電部141、162を介して電気信号として取り出すことが可能になっている。このように導電部141、162は、フォトダイオードの電極として機能する。
【0046】
パッシベーション膜16上において発光領域A1と重ね合わされる領域には、遮光層161が設けられている。遮光層161は、前記の光反射材料(例えば、アルミニウム)と光吸収材料(例えばニッケルクロム)との少なくとも一方を含んだ形成材料からなっている。遮光層161の形成材料は、導電材料や半導体材料、絶縁材料のいずれであってもよい。本実施形態の遮光層161は、アルミニウムからなっている。
【0047】
パッシベーション膜16を貫通して、透光性を有する導電材料からなる導電部163が設けられている。導電部163は、平坦化層14上に引き出された部分の導電部142を露出させ、かつパッシベーション膜16を貫通するコンタクトホールの内側に設けられている。導電部163は、コンタクトホールの内側と、パッシベーション膜16上と、遮光層161上とに連続して設けられている。導電部163は、パッシベーション膜16上や遮光層161上において発光領域A1と重なる領域まで延設されている。導電部163は、導電部142と導通接続されており、導電部142、導電部134を介して光源用TFT素子12のドレイン領域と電気的に接続されている。
【0048】
本実施形態の導電部163は、インジウム錫酸化物からなっており、導電部162と一括して形成されている。例えば、光電変換層15を形成した後に、光電変換層15と平坦化層14上とに連続してパッシベーション膜16を形成する。次いで、パッシベーション膜16を開口して光電変換層15を露出させるとともに、パッシベーション膜16を貫通して導電部142を露出させるコンタクトホールを形成する。また、パッシベーション膜16上に遮光層161を形成する。次いで、遮光層161上と、パッシベーション膜16上と、開口の内側と、コンタクトホールの内側とに一括してインジウム錫酸化物を成膜する。このインジウム錫酸化物膜をパターニングすることにより、導電部162、163を一括して形成することができる。
【0049】
パッシベーション膜16上に隔壁17が設けられている。隔壁17は、透光性の樹脂材料からなっている。隔壁17は、光電変換層15と重ならないように配置されている。隔壁17は、発光領域A1と重なる部分に、導電部163を露出させる開口を有している。この開口の内側には、有機機能層18が設けられている。なお、隔壁17の形成材料としては、遮光性を有する形成材料、例えば光反射材料を含んだ無機材料や黒色顔料(光吸収材料)を含んだ樹脂材料を用いてもよい。
【0050】
本実施形態の有機機能層18は、導電部163上に設けられた正孔注入層181と、正孔注入層181上に設けられた正孔輸送層182と、正孔輸送層182上に設けられた発光層183を含んでいる。正孔注入層181、正孔輸送層182は、公知の形成材料からなるものである。発光層183は、公知の有機エレクトロルミネッセンス材料からなるものである。有機機能層18は、液滴吐出法等の低温プロセスにより形成されている。これにより、有機機能層18によりも先に形成された光電変換層15や光検出用TFT素子11、光源用TFT素子12等が、有機機能層18の形成時の熱により劣化あるいは損傷しないようになっている。
【0051】
隔壁17上と発光層183上とに連続して導電部171が設けられている。導電部171は、例えば銀マグネシウム等の透光性を有する導電材料からなっている。導電部163、有機機能層18、及び導電部171により発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)が構成されている。導電部163は、陽極として機能するようになっており、導電部171は陰極として機能するようになっている。
【0052】
以上のような構成の発光素子において、前記発光素子の駆動回路により光源用TFT素子12がオンになると、前記電源から導電部133、光源用TFT素子12のチャネル領域、導電部134、142、163を介して、導電部163と導電部171との間に電圧が印加される。すると、導電部163から正孔注入層181に正孔が供給され、導電部171から発光層183に電子が供給される。導電部163は、仕事関数が高い材質であるインジウム錫酸化物からなっており、導電部163から正孔注入層181に効率よく正孔が供給される。正孔注入層181に供給された正孔は、正孔輸送層182を介して発光層183に輸送される。発光層183に輸送された正孔が、導電部171から供給された電子と発光層183の内部で結合することにより、結合エネルギーが生じる。この結合エネルギーにより、発光層183に含まれる有機エレクトロルミネッセンス材料が励起され、光が生じる。
【0053】
発光層183から導電部171に向けて発せられた光は、導電部171を通って射出される。導電部163に向けて発せられた光は、アルミニウムからなる遮光層161で反射して折り返され、導電部171を通って射出される。隔壁17を光吸収材料、または光反射材料を含んだ材料により形成した場合には、隔壁17に向けて発せられた光は隔壁17に吸収され、隔壁17の外部に射出されない。このように、発光素子から発光領域A1を通して、光L1が射出されるようになっている。
【0054】
図3は、イメージセンサー1において、フォトダイオードからの出力を読み出す読出回路の構成を示す模式図である。
図3に示すように読出回路は、互いに平行して延在する複数の走査線191と、走査線191に平行して延在する複数の容量線192とを含んでいる。読出回路は、走査線191と直交して延在する複数のデータ線193と、データ線193に平行して延在する複数の定電位線194とを含んでいる。走査線191とデータ線193とに囲まれる領域が光検出領域A2に対応している。なお、発光領域A1の延在方向は、走査線191の延在方向と略一致しており、発光領域A1は複数のデータ線193をまたいで配置されている。
【0055】
走査線191の一端は、走査線駆動回路195と電気的に接続されている。走査線駆動回路195は、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチ等を有している。走査線駆動回路195は、複数の走査線191に線順次で走査信号を供給する。データ線193の一端は、データ線駆動回路196と電気的に接続されている。
【0056】
光検出領域A2において走査線191がデータ線193と交差する領域付近には、光検出用TFT素子11が配置されている。光検出用TFT素子11のゲート電極113(図2参照)は、走査線191と電気的に接続されている。本実施形態の走査線191は、ゲート電極113と一体に形成されている。例えば、ゲート電極113、123の形成時に走査線191の形成領域に導電膜を残して、導電膜をパターニングすることにより、ゲート電極113と一体の走査線191をゲート電極123と一括して形成することができる。
【0057】
光検出用TFT素子11のドレイン領域は、データ線193と電気的に接続されている。光検出用TFT素子11のソース領域は、フォトダイオードの一方の電極である導電部141と電気的に接続されているとともに、保持容量197の一端と電気的に接続されている。保持容量197の他端は、容量線192と電気的に接続されている。フォトダイオードの他方の電極である導電部162は、定電位線194と電気的に接続されている。定電位線194を介して導電部162が一定の電位に保持され、光電変換層15に逆バイアスの電圧が印加されるようになっている。
【0058】
図2に示した光電変換層15に光L2が入射すると、光電変換層15に電荷が生じる。光電変換層15に逆バイアスの電圧が印加されており、光電変換層15に生じた電荷により保持容量197が充電される。走査線駆動回路195から走査線191に走査信号が供給されると、この走査線191に接続された複数の光検出用TFT素子11がオンになる。光検出用TFT素子11がオンになると、保持容量197からデータ線193に電流が流れ、この電流が電気信号としてデータ線駆動回路196に読出される。これにより、1つの走査線191に接続された複数の光検出用TFT素子11から電気信号が並行して読出される。
【0059】
1つの走査線191に対応する光検出用TFT素子11から電気信号が読出された後に、複数のデータ線193は放電されて所定の電位に保持される。複数のデータ線193が所定の電位になった後に、次の走査線191に走査線駆動回路195から走査信号が供給される。以下、同様にして複数の光電変換層15に生じた電荷の各々に対応した電気信号が順に読出される。
【0060】
以上のような構成のイメージセンサー1にあっては、光電変換層15において光が入射する面が、発光層183よりも光L1の射出方向と反対側に配置されているので、光L1が光電変換層15にほとんど入射しない。したがって、光電変換層15に入射する光のほとんどが対象物9の表面で反射した光L2となり、対象物9に対応した光を精度よく検出することができる。
【0061】
また、発光素子がフォトダイオードと同一の基板10上に形成されているので、発光素子が形成された基板とフォトダイオードが形成された基板とを貼合せた装置に比べて、基板や貼合部を省くことができ、薄型化が可能なイメージセンサー1になっている。
【0062】
発光素子がフォトダイオードと同一の基板10上に形成されているので、発光素子とフォトダイオードとの相対位置が高精度になる。したがって、発光素子とフォトダイオードとの相対位置の誤差に対するマージンを小さくすることができ、対向面1Aに占める発光領域A1の割合や光検出領域A2の割合を高めることが可能になる。発光領域A1の割合を高めると、対象物9を高照度で照明することが可能になり、光電変換層15による光検出精度が高くなる。また、光検出領域A2の割合を高めると、光電変換層15の大面積化や高解像度化を図ることが可能になり、対象物9に対応した光を精度よく検出することが可能になる。
【0063】
光源用TFT素子12が、発光素子に対して光L1の射出方向と反対側に配置されており、発光素子がトップエミッション型になっているので、発光素子の開口率を高めることができ、対象物9を高照度で照明することが可能になっている。また、発光領域A1が、対向面1Aの周縁部と中央部とに配置されているので、対象物9を均一に照明することが可能になっている。
【0064】
フォトダイオードに光L2が入射する側と反対側にフォトダイオードの読出回路が配置されているので、フォトダイオードの開口率を高めることができ、フォトダイオードの感度を高めることが可能になっている。
【0065】
このように、第1実施形態のイメージセンサー1は、薄型化が可能でありながら、対象物9に対応した光を高精度で検出可能になっている。例えば、対象物9が印刷物である場合には、印刷物に記載された文字や画像をイメージセンサー1により正確に読取ることができる。また、例えば対象物9が指である場合には、イメージセンサー1により指紋を正確に読取ることができ、高精度に生体識別を行うこと等ができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態のイメージセンサー(光源一体型光電変換装置)を説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、発光素子がボトムエミッション型である点である。
【0067】
図4は、第2実施形態のイメージセンサー2の概略構成を示す要部断面図である。なお、図4において第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付している。また、第1実施形態と同様の構成要素については、詳細な説明を省略する場合がある。
【0068】
図4に示すようにイメージセンサー2は、ガラス等からなり透光性を有する基板10を基体にして製造されている。基板10上には、光検出用TFT素子11と光源用TFT素子12とが設けられている。光検出用TFT素子11と光源用TFT素子12とを覆って、層間絶縁膜13が設けられている。
【0069】
層間絶縁膜13には、光検出用TFT素子11のソース領域と電気的に接続された導電部132と、光検出用TFT素子11のドレイン領域と電気的に接続された導電部131と、光源用TFT素子12のソース領域と電気的に接続された導電部133と、光源用TFT素子12のドレイン領域と電気的に接続された導電部134とが設けられている。
【0070】
層間絶縁膜13上には、透光性を有する樹脂材料(例えばアクリル樹脂)等からなる平坦化層24が設けられている。平坦化層24には、平坦化層24を貫通して導電部132と導電接続された導電部241と、平坦化層24を貫通して導電部134と導電接続された導電部242とが設けられている。導電部241、242は、いずれもインジウム錫酸化物からなり、同一のプロセスにより形成されたものである。導電部242は、平坦化層24上において発光領域A1と重なる領域まで延設されており、発光素子の陽極になっている。
【0071】
平坦化層24上のほぼ全面に、透光性を有する樹脂材料等からなる隔壁27が設けられている。隔壁27には、導電部241を露出させる開口が設けられており、この開口の内側に有機機能層18が設けられている。隔壁27の開口の内側における有機機能層18上と、隔壁27上とに連続して導電部271が設けられている。導電部271は、アルミニウム等の光反射材料からなっており、発光素子の陰極になっている。隔壁27には、隔壁27を貫通して導電部241と導通接続された導電部272が設けられている。導電部272は、隔壁27上において光検出領域A2と重なる領域まで延設されており、フォトダイオードの一方の電極になっている。導電部272は、透光性を有する導電材料(例えば、インジウム錫酸化物)からなっている。
【0072】
導電部272上には、光電変換層15が設けられている。光電変換層15の周縁部と、導電部241と、導電部271と、隔壁27を覆ってパッシベーション膜26が設けられている。パッシベーション膜26には、光電変換層15を露出させる開口が設けられており、開口の内側とパッシベーション膜26上とに連続して導電部261が設けられている。導電部261は、アルミニウム等の光反射材料からなり、フォトダイオードの他方の電極になっている。
【0073】
以上のような構成のイメージセンサー2において、光源用TFT素子12や導電部134、242を介して有機機能層18に電力が伝達されると、発光層183に光が生じる。発光層183から導電部242に向けて発せられた光は、導電部242を通って射出される。発光層183から導電部271に向けて発せられた光は、導電部271で反射して折り返され、導電部242を通って射出される。
【0074】
このように第2実施形態の発光素子は、ボトムエミッション型になっており、発光素子からの光L1は基板10を通って射出される。第2実施形態において、光L1の射出方向は、基板10の法線方向に平行でありイメージセンサー2の内側から外側に向かう方向になっている。また、イメージセンサー2の外側から、光検出領域A2と重なる部分の基板10に入射した光L2が、光電変換層15に入射するようになっている。
【0075】
第2実施形態のイメージセンサー2にあっては、光電変換層15において光が入射する面が、発光層183よりも光L1の射出方向と反対側に配置されているので、第1実施形態と同様に、対象物9に対応した光を高精度で検出することが可能になる。また、発光素子とフォトダイオードが同一の基板10上に形成されているので、薄型化が可能でありながら、対象物9に対応した光を高精度で検出することが可能なものになっている。
【0076】
有機機能層18の電極である導電部271の材質として、光反射性あるいは光吸収性を有するものを採用することができる。一般に、アルミニウムや金、銀等の金属材料は、反射率と導電率とがともに高い材質であるので、発光素子の電気特性を第1実施形態に比べて良好にすることができる。
【0077】
なお、第1実施形態では、対向面1Aの周縁部と中央部とに互いに平行に延在する複数の発光領域A1を含んでいるが、発光領域の数や配置、形状については様々な変更が可能である。例えば、発光領域が1つであってもよいし、発光領域と重なる領域に複数の発光素子が配置されていてもよい。発光領域が、対向面の周縁部の一箇所のみに配置されていてもよいし、中央部の一箇所のみに配置されていてもよい。また、対向面の周縁部に、複数の光検出領域を環状に囲むように枠状の発光領域が配置されていてもよい。また、複数の光検出領域の各々に隣接して、複数の発光領域が配置されていてもよい。
【0078】
また、読出回路の構成については、光電変換層15で発生した電荷の読出し方法に応じて適宜変更可能である。例えば、読出回路として、光電変換層15で発生した電荷を増幅する回路部品を含んだものを採用することもできる。
【0079】
また、発光素子として発光ダイオード(LED)等を用いることもできる。発光素子から射出させる光は、光電変換層15により検出可能な波長域のものであればよい。例えば、光源一体型光電変換装置の用途に応じて、光電変換層の特性を設計するとともに、光電変換層の特性に応じて可視光の波長域、赤外光の波長域、紫外光の波長域のいずれかの光を射出するように発光素子を設計することができる。
【0080】
なお、第2実施形態では、透光性を有する形成材料からなる隔壁27を採用しているが、第1実施形態と同様の遮光性を有する形成材料からなる隔壁を形成してもよい。この場合には、発光素子の周囲に遮光性の隔壁を形成するとともに、この隔壁と同じ層において光電変換素子と重なる領域には透光性を有する層を設けるとよい。発光素子の厚み(例えば数百nm)が、発光素子の面方向の寸法(例えば数十μm)よりも格段に小さい(例えば数百分の1〜数十分の1)場合がある。このような場合には、発光層の側面から射出される光は僅かである。隔壁を遮光性のものにするか否かは、発光層の寸法等に応じて適宜選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1実施形態のイメージセンサーの概略構成を示す模式図である。
【図2】発光領域、光検出領域と重なる部分のイメージセンサーの断面図である。
【図3】イメージセンサーの読出回路の構成を示す模式図である。
【図4】第2実施形態のイメージセンサーの概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1、2・・・イメージセンサー(光源一体型光電変換装置)、10、20・・・基板、11・・・光検出用TFT素子(読出回路)、12・・・光源用TFT素子(駆動スイッチング素子)、15・・・光電変換層、161・・・遮光層、17・・・隔壁、183・・・発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を含んで構成され、前記発光層の一方の面を通して所定の射出方向に光を射出する発光素子と、
前記発光層と重ならない領域に形成された光電変換層を含んで構成され、前記光電変換層の一方の面を通った光を電気信号に変換する複数の光電変換素子と、を備え、
前記発光素子が前記複数の光電変換素子と同一の基板上に形成されているとともに、前記光電変換層の一方の面が前記発光層の他方の面よりも前記射出方向と反対側に配置されていることを特徴とする光源一体型光電変換装置。
【請求項2】
前記発光層の他方の面と前記光電変換層の一方の面との間に、前記発光層の他方の面の全体を覆って光吸収材料と光反射材料との少なくとも一方を含んだ形成材料からなる遮光層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光源一体型光電変換装置。
【請求項3】
前記発光層が、光吸収材料と光反射材料との少なくとも一方を含んだ形成材料からなる隔壁の内側に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源一体型光電変換装置。
【請求項4】
前記発光素子の駆動信号をスイッチングする駆動スイッチング素子が、前記発光層の一方の面よりも、前記射出方向と反対側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光源一体型光電変換装置。
【請求項5】
前記複数の光電変換素子の各々から出力される電気信号を読出す読出回路を備え、
前記読出回路が前記光電変換層の一方の面よりも、前記射出方向と反対側に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源一体型光電変換装置。
【請求項6】
前記発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光源一体型光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−153449(P2010−153449A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327472(P2008−327472)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】