説明

光源制御装置

【課題】より車両用灯具に取り付けやすい光源制御装置を提供する。
【解決手段】光源制御装置100は、車両用前照灯10に取り付けられ、車両用前照灯10のLEDを制御する。光源制御装置100は互いに重なるよう配置された第1回路基板102、第2回路基板104を備える。第1回路基板102、第2回路基板104のそれぞれは、LEDを制御する制御信号が伝達される共通の制御配線と接続されると共に、その制御信号に基づいてLEDに電力を供給する。第1回路基板102、第2回路基板104のそれぞれはLEDへの電力の供給を制御するマイクロコントローラを有する。そのマイクロコントローラは共通の制御配線から制御信号を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源制御装置に関し、特にLED(Light Emitting Diode)などの半導体光源を制御する光源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前照灯などの車両用灯具に、従来のフィラメントを有するハロゲンランプに代えてより長寿命で低消費電力のLEDが利用されている。LEDの発光の度合いすなわち明るさはLEDに流す電流の大きさに依存するので、LEDを光源として利用する場合にはLEDに流れる電流を調節するための点灯回路が必要となる。そのような点灯回路は通常エラーアンプを有し、LEDに流れる電流が一定となるようにフィードバック制御する。一般に、点灯回路の各回路要素はPCB(printed circuit board)などの回路基板に実装され、そのような回路基板は車両用灯具の筐体の比較的平坦な場所に取り付けられる。
【0003】
最近、流線型などの丸みを帯びた形状の車両が増えてきている。そのような車両形状の変化に合わせて、細長く曲線的で曲面部分の多い車両用灯具が増えてきている。例えば本出願人は特許文献1において横に細長い形状の車両用前照灯を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−211947号公報
【特許文献2】特開2011−192865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基本的に、車両用灯具がより細長く曲面的になるほど、筐体の平坦な部分は少なくなる。一方で、車両用灯具に搭載するLEDの数を増やし、各LEDを個別に制御することでよりきめ細やかな配光制御を行おうとするのが、現在の開発の1つの流れである(例えば、特許文献2参照)。この場合、LEDを増やすと増やしたLEDの数だけ新たに制御回路が必要となる。したがって、回路基板の面積は増大する。しかしながら、車両用灯具の形状によってはそのような大きな回路基板を取り付けることが困難となる状況が生じうる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、より車両用灯具に取り付けやすい光源制御装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、光源制御装置に関する。この光源制御装置は、車両用灯具に取り付けられ、車両用灯具の半導体光源を制御する光源制御装置であって、互いに重なるよう配置された複数の回路基板を備え、各回路基板は、半導体光源を制御する制御信号が伝達される共通の制御配線と接続されると共に、その制御信号に基づいて車両用灯具の半導体光源に電力を供給する。
【0008】
この態様によると、複数の回路基板を使用して半導体光源に電力を供給できる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より車両用灯具に取り付けやすい光源制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る光源制御装置が取り付けられた車両用前照灯の水平断面図である。
【図2】図1の光源制御装置の斜視図である。
【図3】比較例に係る光源制御装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0014】
図1は、実施の形態に係る光源制御装置100が取り付けられた車両用前照灯10の水平断面図である。車両用前照灯10の灯室は、ランプボディ12と、ランプボディ12の前端開口部に取り付けられた透光カバー14と、で形成される。実施の形態に係る光源制御装置100、ロービーム用灯具ユニット20Lおよびハイビーム用灯具ユニット20Hはその灯室内に収容される。ロービーム用灯具ユニット20Lおよびハイビーム用灯具ユニット20Hはそれぞれ、図示しない支持部材によってランプボディ12に取り付けられている。エクステンション部材16は各灯具ユニットの存在領域に開口部を有し、ランプボディ12または透光カバー14に固定される。
【0015】
ロービーム用灯具ユニット20Lは、周知の反射型の灯具であり、光源バルブ21と、リフレクタ23と、を有する。ロービーム用灯具ユニット20Lは、光源バルブ21から出射した光をリフレクタ23に反射させる。リフレクタ23から前方に向かう光の一部は図示しない遮光板でカットされ、所定のカットオフラインを有するロービーム用の配光パターンを形成する。光源バルブ21の先端には、光源バルブ21から前方に出射される光をカットするシェード25が設けられている。なお、ロービーム用灯具ユニット20Lの形状はこれに限定されず、プロジェクタ型の灯具ユニットであってもよい。
【0016】
ハイビーム用灯具ユニット20Hはプロジェクタ型の灯具ユニットであり、投影レンズ22と、複数のLEDがアレイ状に配列されたLEDアレイ26を備える光源ユニット24と、投影レンズ22および光源ユニット24を保持するホルダ28と、を有する。
【0017】
投影レンズ22は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置されている。投影レンズ22は、その後側焦点Fを含む後側焦点面上の像を、灯具前方に配置された鉛直仮想スクリーン上に反転像として投影するように構成されている。投影レンズ22は、その周縁部がホルダ28の前端環状溝部に保持されている。
【0018】
光源ユニット24は、LEDアレイ26が投影レンズ22の後側焦点Fよりも後方側に配置された状態で、ホルダ28の後端側に固設されている。ホルダ28は図示しない支持部材を介して、ランプボディ12に取り付けられている。
【0019】
光源ユニット24は、LEDアレイ26を搭載するための搭載プレート30と、搭載プレート30に固定された上方反射鏡36および下方反射鏡38と、LEDアレイ26から発せられる熱を逃がすための放熱板32と、を備える。LEDアレイ26は、搭載プレート30の前方側表面に、その発光面が光軸Ax方向前方を向くようにして固定されている。LEDアレイ26の中心は、光軸Ax上に位置している。放熱板32は、搭載プレート30の後方側表面に固定されている。
【0020】
光源制御装置100は、LEDアレイ26の各LEDの状態を個別に制御する。光源制御装置100は、互いに重なるよう配置された第1回路基板102、第2回路基板104を備える。第1回路基板102は第1スペーサ106を介して第2回路基板104と対向する。第2回路基板104は第2スペーサ108を介して、灯室内に侵入したランプボディ12の一部に取り付けられている。
光源制御装置100は防水性を考慮して車両用前照灯10の灯室内に設けられる。また、LEDアレイ26や光源バルブ21などの光源の後方には、光源を交換する機能(バックカバー)や、リフレクタ23の後部を支持するためのピボットやエイミング用スクリューを固定する機能や、レベリングアクチュエータを固定する機能などを実現する部材を配置することが多い。したがって、光源制御装置100をロービーム用灯具ユニット20Lとハイビーム用灯具ユニット20Hとの間に、光軸Axと略平行となるように設けることにより、それらの部材と光源制御装置100との干渉を避けることができる。
なお、光源制御装置100は、灯室内におけるロービーム用灯具ユニット20Lの下方位置に、光軸Axと略平行となるように、すなわち水平面と略平行となるように配置してもよい。
【0021】
図2は、図1の光源制御装置100の斜視図である。図2では第1スペーサ106、第2スペーサ108の表示を省略する。第1回路基板102、第2回路基板104はいずれも共通の制御配線110と接続され、その制御配線110を介して、自動車の電気的な制御を総合的に行うためのマイクロコントローラであるエンジンコントロールユニット(不図示)と通信する。制御配線110を介した通信は、車載LAN(Local Area Network)の通信プロトコルの一種であるLIN(Local Interconnect Network)にしたがって行われる。制御配線110を通してエンジンコントロールユニットから各回路基板へ、LEDアレイ26の各LEDを制御する制御信号が伝達される。
【0022】
第1回路基板102は、制御配線110を通して伝達される制御信号に基づいて、LEDアレイ26に含まれる複数のLEDのうちの一部に電力を供給する。第1回路基板102が電力を供給するLEDを第1LEDと称す。第1回路基板102は第1LEDと第1供給配線112を介して接続される。
第2回路基板104は、制御配線110を通して伝達される制御信号に基づいて、LEDアレイ26に含まれる複数のLEDのうちの第1LED以外のLED(第2LEDと称す)に電力を供給する。第2回路基板104は第2LEDと第2供給配線114を介して接続される。
【0023】
制御信号は、各回路基板がそれぞれ電力を供給するLEDがとるべき状態を指定するデータが時系列に並べられたシリアルデータを含む。シリアルデータは例えば、少なくともひとつの第1LEDの調光率を指定するデータと少なくともひとつの第2LEDの調光率を指定するデータとがこの順に時系列に並べられたデータである。
【0024】
第1回路基板102、第2回路基板104はそれぞれ、第1LED、第2LEDへの電力の供給を制御する第1マイクロコントローラ116、第2マイクロコントローラ118を有する。第1マイクロコントローラ116、第2マイクロコントローラ118はそれぞれ制御配線110から制御信号を受信し、制御信号に含まれるシリアルデータから第1LED、第2LEDの調光率を指定するデータを読み出す。
【0025】
第1回路基板102は、第1LEDの数と同じ数のスイッチングレギュレータ(不図示)を有する。各スイッチングレギュレータは車載バッテリ(不図示)から電力の供給を受け、対応する第1LEDに流すべき駆動電流を生成する。第1回路基板102は生成された駆動電流を第1供給配線112を介して第1LEDに供給する。各スイッチングレギュレータが駆動電流を生成する際、第1マイクロコントローラ116は読み出した第1LEDの調光率に応じてスイッチングレギュレータのスイッチング素子のデューティ比を調整する。第2回路基板104についても同様である。
【0026】
第1回路基板102、第2回路基板104はそれぞれ第1基板側コネクタ120、第2基板側コネクタ122を有する。第1基板側コネクタ120には、制御配線110の第1配線側コネクタおよび第1供給配線112の配線側コネクタが結合される。第2基板側コネクタ122には、制御配線110の第2配線側コネクタおよび第2供給配線114の配線側コネクタが接続される。
【0027】
本実施の形態に係る光源制御装置100では、LEDアレイ26に含まれる複数のLEDに電力を供給するために必要な回路要素が実装される回路基板を第1回路基板102と第2回路基板104とに分割する。これにより、光源制御装置100の嵩すなわち基板面に垂直な方向の大きさが増える代わりに、基板面積を低減できる。その結果、車両用前照灯10がより流線的となっても、その灯室内に光源制御装置100を容易に取り付けることができる。
【0028】
回路基板を分割する場合、回路基板間の電気的接続が必要となり、一般には数多くの基板間配線を設けることとなる。この場合、配線の絶対数が増加しうる。さらに、接続するためのコネクタやコネクタを搭載するための回路基板上の領域(回路基板内の面積)が増加しうる。また、基板間の配線数すなわち基板間コネクタの極数によって回路基板のサイズは異なってくる。
【0029】
図3は、比較例に係る光源制御装置200の斜視図である。光源制御装置200は第3回路基板202と第4回路基板204とを備える。第3回路基板202は基板側コネクタ206と第1基板間コネクタ(不図示)とを有する。基板側コネクタ206には、制御配線210の配線側コネクタおよび供給配線214の配線側コネクタが結合される。第4回路基板204は、基板間配線212を介して第1基板間コネクタと接続される第2基板間コネクタ208を有する。光源制御装置200は供給配線214を介して複数のLEDに電力を供給する。
【0030】
光源制御装置200では、マイクロコントローラおよびその周辺部は第3回路基板202に配置される。残りのコンバータ部は第3回路基板202の空き領域と第4回路基板204とに分けて配置される。基板間配線212は、第4回路基板204に配置されたコンバータ部に供給すべき電力を運ぶ配線と、接地電位を与えるための配線と、第4回路基板204に配置されたコンバータ部のそれぞれへの調光信号を伝達する配線と、コンバータ部のそれぞれが駆動するLEDにおける短絡や開放を検出するための信号を伝達する配線と、を含む。したがって、基板間配線212の数は第4回路基板204に配置されるコンバータ部の数が増えるほど増大する。基板間配線212の数が増えると第1基板間コネクタや第2基板間コネクタ208が大きくなり、それらが回路基板上で占める面積も増大する。これは基板面積の増大を招きうる。
【0031】
これに対して本実施の形態に係る光源制御装置100では、各回路基板が制御配線110と接続される。各回路基板は制御配線110から受ける制御信号に基づいて対応するLEDに流すべき駆動電流を生成する。各回路基板は対応するLEDと供給配線で直接的に接続され、その供給配線を介して駆動電流を対応するLEDに供給する。これにより、比較例と比べた場合、制御配線110の第2配線側コネクタ分だけコネクタ面積を増やす必要がある代わりに、基板間配線および基板間コネクタが不要となる。制御配線110はシリアル通信用の配線なので配線数は比較的少ない一方、基板間配線の数は駆動対象のLEDの数が多くなるほど多くなる。したがって、制御配線110の第2配線側コネクタ追加によるコネクタ面積の増加分は、基板間コネクタ除去によるコネクタ面積の減少分より小さく、全体として基板面積を縮小できる。
【0032】
また、一般に回路基板の面積のうちマイクロコントローラの搭載面積が占める割合は比較的大きい。そこで本実施の形態に係る光源制御装置100ではマイクロコントローラを各回路基板に分散して配置している。したがって、多くのマイクロコントローラを1枚の回路基板にまとめて搭載する場合と比較して、基板面積を縮小できる。
【0033】
また、各回路基板に搭載されたマイクロコントローラはその回路基板のスイッチングレギュレータを制御するが、他の回路基板のスイッチングレギュレータの制御には関与しない。したがって、ひとつのマイクロコントローラが制御すべきスイッチングレギュレータの数を低減でき、より廉価なマイクロコントローラを採用できる。
【0034】
以上、実施の形態に係る光源制御装置100について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0035】
実施の形態では、光源制御装置100は第1回路基板102および第2回路基板104の2枚の回路基板を備える場合について説明したが、これに限られず、3枚以上の任意の数の回路基板を備えてもよい。この場合、各回路基板は共通の制御配線と接続され、対応するLEDに電力を供給してもよい。
【0036】
実施の形態に係る光源制御装置100の各回路基板が電力を供給するLEDの数は、以下のように設定されてもよい。
(1)各回路基板が同数のLEDに電力を供給してもよい。この場合、各回路基板のスイッチングレギュレータ/コンバータの数を同じにできるので、各回路基板を同様に構成できる。したがって、コスト的に有利となりうる。
(2)回路基板が車載バッテリからの電力供給配線のより上流に位置するほど多くのLEDに電力を供給してもよい。この場合、電力供給配線におけるロスを低減できる。
(3)LEDアレイのLEDを制御の態様により複数グループに分け、そのグループごとに回路基板を割り当ててもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用前照灯、 100 光源制御装置、 102 第1回路基板、 104 第2回路基板、 110 制御配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に取り付けられ、車両用灯具の半導体光源を制御する光源制御装置であって、互いに重なるよう配置された複数の回路基板を備え、各回路基板は、半導体光源を制御する制御信号が伝達される共通の制御配線と接続されると共に、その制御信号に基づいて車両用灯具の半導体光源に電力を供給することを特徴とする光源制御装置。
【請求項2】
各回路基板は車両用灯具の半導体光源への電力の供給を制御するマイクロコントローラを有し、そのマイクロコントローラは共通の制御配線から制御信号を受信することを特徴とする請求項1に記載の光源制御装置。
【請求項3】
本光源制御装置は車両用灯具の複数の半導体光源を制御し、各回路基板がそれぞれ複数の半導体光源の一部に電力を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の光源制御装置。
【請求項4】
制御信号は、各回路基板がそれぞれ電力を供給する半導体光源がとるべき状態を指定するデータが時系列に並べられたシリアルデータを含むことを特徴とする請求項3に記載の光源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−100056(P2013−100056A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245696(P2011−245696)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】