説明

光源装置およびその製造方法

【課題】 簡単な構成でかつ全方位出射特性を有する光源装置およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】 全方位に対して出射する配光特性を有するLED素子3,4を透光性基板2の上に設ける。透光性樹脂10,11でLED素子3,4と透光性基板2とを一体的にモールドし、透光性モールド体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光ダイオード(以下LEDと呼ぶ)等の発光素子チップを用いる光源装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図10は、例えば特開平4−163973号公報に記載された砲弾型LEDランプのモールド樹脂内部の構成を示す図である。図10(a)はリードフレームとその上に配置されたLEDチップを示す平面図であり、図10(b)は、図10(a)の模式的なA−A線矢視断面図である。
【0003】図10に示すLEDチップ51は、リード52の先端部のカップ部53に搭載されている。LEDチップ51が発する光は、LEDチップ51の上方へ出射される。これらをモールドするモールド樹脂は、図10R>0(b)のLEDチップ51の上方に先端がある砲弾型に成形される。
【0004】また、砲弾型LEDランプにおいて、多色用に複数個のLEDチップをリード上に搭載できるように改良されたものが、例えば特開平7−235624号公報に記載されている。また、その他の形態としてセラミックパッケージの基板上にLEDチップを搭載し、パッケージ内部を透光性樹脂で埋めた表面実装用フラットパッケージLEDランプ等がある。
【0005】このような砲弾型LEDランプやフラットパッケージLEDランプの配光特性は、図10(b)の砲弾型LEDランプを例にして説明すると、搭載したLEDチップ51の法線軸54の上方とのなす角をθとすれば、LEDチップ51の上面側、すなわち角度θが90°以下の領域にのみ配光され、LEDチップ51の下面側、すなわち角度θが90°以上の領域には配光されないものとなっている。
【0006】そのため、周囲の人々に注意を喚起する信号灯等を砲弾型LEDランプやフラットパッケージLEDランプ等の光源装置で構成する場合、例えば複数のLEDチップ51の法線軸の方向を少しずつずらして光源装置の周囲のどこから見てもいずれかのLEDチップ51の上面と向き合うことができるように多数のLEDチップ51を複数の方位に向けて配置する必要がある。
【0007】そこで従来から、複数のLEDチップ51を板上の支持部材の両面に直接貼り付けることによって、全方位にわたって配光性があり、しかも構成が簡単化された光源装置が提案されている。例えば図11は実開平6−77107号公報に記載された光源装置の構成を示す斜視図であり、図12は図11のB−B線矢視断面図である。図11の信号灯65においてベース63の両側に配置された2つのLEDユニット基板61の表面に発光素子チップ60が多数配置されている。発光素子チップ60から出た光は、ベース63の表面および裏面の両方へ出射されるので、信号灯65の全方位に配光することが可能になっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の光源装置は例えば図12に示すようにベース63の表面および裏面に発光素子チップ60が配置されなければならないため、ベース63の表面および裏面に2つのLEDユニット基板61を配置しなければならず、構成が複雑になっている。
【0009】本発明の目的は、簡単な構成で全方位から視認できる光源装置およびその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】第1の発明に係る光源装置は、透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップが透光性支持部材上に配置され、発光素子チップおよび透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成されたものである。
【0011】本発明に係る光源装置においては、全方位に対して光を出射する発光素子チップが透光性モールド体によって透光性支持部材に一体的にモールドされているので、簡単な構成でかつ、発光素子チップの全方位にわたって光が透過できる全方位出射特性を持つ光源装置が得られる。
【0012】半導体発光層は、ホウ素、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムの少なくとも1つを含む窒化物系半導体からなっていてもよい。
【0013】この場合には、全方位に光を出射できる青色系統の発光が可能な光源装置を提供することができる。
【0014】発光素子チップは半導体発光層上に電極を有し、透光性支持部材は、透光性絶縁基板と透光性絶縁基板上に形成された配線パターンとを備え、発光素子チップの電極が透光性絶縁基板上の配線パターンに電気的に接続されていてもよい。
【0015】この場合には、配線パターンが透光性絶縁基板に形成されているので、配線パターンが配光特性の妨げとならず簡便に発光素子チップへの配線を実現できる。
【0016】透光性モールド体から出射される光の配光特性が発光素子チップの表面側、裏面側および両側面側でほぼ均一になるように透光性モールド体の表面の形状が設定されていてもよい。
【0017】この場合には、透光性モールド体の表面の形状で配光特性が表面側、裏面側および両側面側でほぼ均一になっているので、いずれの方位からでも等しく視認することができ、注意を喚起する能力を全方位にわたって均一化することができる。
【0018】透光性材料中に拡散材が添加されていてもよい。この場合には、透光性材料中に添加された拡散材により指向性を緩和し、配光特性を均一化することができる。
【0019】第2の発明に係る光源装置は、透光性支持部材上に複数の発光素子チップが配置され、複数の発光素子チップおよび透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成されたものである。
【0020】本発明に係る光源装置においては、透光性モールド体によって透光性支持部材と複数の発光素子チップが一体的にモールドされているので、簡単な構成で、かつ複数の発光素子チップの全方位にわたって光が透過でき、複数の素子チップが同一色の場合には輝度の高い全方位出力特性を、複数の発光素子チップが異なる色で発光する場合にはそれぞれの発光色について全方位光出力特性を持つ光源装置が得られる。
【0021】複数の発光素子チップの少なくとも1つは、透光性基板上に半導体発光層を備えてもよい。
【0022】この場合には、その少なくとも1つの発光素子チップで全方位に光を出射することができ、構成が簡単化される。
【0023】第3の発明に係る光源装置の製造方法は、透光性支持部材上に、透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップを実装する工程と、前記発光素子チップの周囲を第1の透光性材料で被覆する工程と、前記第1の透光性材料の上から前記透光性支持部材および前記発光素子チップの第2の透光性材料で一体的にモールドして透光性モールド体を形成する工程とを備えるものである。
【0024】本発明に係る光源装置の製造方法によれば、透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップが透光性支持基板上に実装され、その発光素子チップの周囲が第1の透光性材料で被覆される。さらに、第1の透光性材料の上から透光性支持部材および発光素子チップの第2の透光性材料で一体的にモールドされ、透光性モールド体が形成される。
【0025】本発明の製造方法により製造された光源装置は、第1の透光性材料で被覆された発光素子チップが第1の透光性材料で保護されるので、第2の透光性材料でモールドされるまでの間の製造過程での発光素子チップの損傷が少なくなる。
【0026】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施例における光源装置の構成を示す正面図であり、図2はその平面図である。
【0027】図1および図2の光源装置1において、透光性のガラス基板2の表面上にGaN系青色LED素子3とGaN系緑色LED素子4とGaAs系赤色LED素子5aとが並べて配置されている。GaN系LED素子3,4はガラス基板2の表面だけに設けられているが、GaAs系赤色LED素子5a,5bはガラス基板2の表裏に設けられている。
【0028】ガラス基板2上には、電気回路を形成するための配線パターン6が設けられている。配線パターン6は、ガラス基板2の裏面に配置されたGaAs系赤色LED素子5bのためにガラス基板2の裏面にも設けられている。LED素子3,4の電極と配線パターン6とは金ワイヤー7で電気的に接続されている。
【0029】また、LED素子5a,5bはその裏面側の電極を導電性接着剤で配線パターン6に固定されており、その上面側の電極が金ワイヤー7で配線パターン6と電気的に接続されている。ガラス基板2の端部に引き回された配線パターン6には、半田材9によってリードフレーム8が取り付けられている。
【0030】LED素子3,4,5a,5bと金ワイヤー7の全体を覆うように透光性樹脂11がガラス基板2の表面の一部と裏面の一部に配置されている。LED発光素子3,4,5a,5bから出射した光の指向性を緩和するため、透光性樹脂11には拡散材が混入されている。拡散材の種類には、無機系のチタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等と有機系のグアナミン酸樹脂等がある。ガラス基板2と、透光性樹脂11で覆われたLED素子3,4,5a,5bとは、透光性樹脂10で一体的にモールドされ、透光性モールド体が形成されている。
【0031】透光性のガラス基板2は透光性絶縁基板の一例であり、ガラス基板2の代わりに透光性樹脂からなる透光性絶縁基板等他の種類の透光性絶縁基板を用いてもよい。また、LED素子3,4は、例えばサファイア基板等の透光性基板の上に形成された活性層等の半導体発光層を有する発光素子チップの一例であり、透光性基板上に形成された半導体発光層を備える発光素子チップであれば、他の発光素子チップを用いてもよい。
【0032】次に、図3〜図6を用いて図1に示す光源装置1の製造方法について説明する。まず、ガラス基板2の表面および裏面上に配線パターン6を形成する。図3R>3に示すように、GaN系LED素子3,4をガラス基板2の表面のうち配線パターン6が形成されていない領域に透光性のエポキシ樹脂系接着剤15で固定する。一方、GaAs系LED素子5a,5bを配線パターン6上に、銀フィラー等を混ぜ合わせた導電性のエポキシ樹脂系接着剤16で固定する。
【0033】その後、図4に示すように、ワイヤーボンダ装置を用いて金ワイヤー7により配線パターン6およびLED素子3,4,5a,5bの電極にボンディングする。
【0034】そして、図5および図6に示すように、LED素子3,4,5a,5bと金ワイヤー7が配置されている領域全体に拡散材入りの透光性樹脂11を滴下して硬化する。その後、ハイブリッドIC用のリードフレーム8を、ガラス基板2に形成された引き出し配線パターン6に半田材9で取り付ける。このとき、LED素子3,4,5a,5bおよび金ワイヤー7は透光性樹脂11によって保護される。透光性樹脂11の上からLED素子3,4,5a,5bは、例えばキャスティングモールド法を用いて、リードフレーム8が取り付けられたガラス基板2とともに透光性樹脂10で一体的にモールドされる。
【0035】ここで用いたGaN系青色LED素子3は、図7に示すように全方位にわたって光を出射する。ただし、0°と180°の方向に出射される光量は他の方向に比べて少なくなっている。GaN系緑色LED素子4は、GaN系青色LED素子3と比べて、活性層のインジウムの組成比が異なるだけで同一の構成を有しており、例えば青色LED素子3と同じ配光特性を有している。
【0036】本実施例の光源装置1においては、上記のような配光特性を持つLED素子3,4を透光性のガラス基板2で支持し透光性モールド体で覆っているので、全方位に対して光を出射することができる。すなわち、LED素子3,4から出た光はガラス基板2の表面側および両側面側では、拡散材入りの透光性樹脂11を透過し、さらに透光性樹脂10を透過して光源装置1から出射される。
【0037】一方、ガラス基板2の裏面側では、LED素子3,4から出た光は、透光性のエポキシ樹脂系接着剤15を透過し、ガラス基板2を透過し、さらに透光性樹脂10,11を透過して光源装置1から出射される。その結果、例えばガラス基板2の表面に配置した1個のLED素子3によって全方位光出射特性を得ることができ、光源装置1の構成が簡素化されている。
【0038】ところで、GaAs系赤色LED素子5a,5bについては、図3に示すようにガラス基板2の両面に配置することによって全方位光出射特性を得ている。ただし、2枚のGaAs系赤色LED素子5a,5bは、ガラス基板2の両面に背中合わせに配置されているので、LED素子3,4と似た配光特性を有している。すなわち、赤色LED素子5a,5bにおいては、0°と180°の方位への出射光の光量が他の方位への光量に比べて少なくなっている。
【0039】このように、LED素子3,4,5a,5bから出射される青色、緑色、赤色の全ての配光特性は、光源装置1の側面部分の光量が少ないものとなっているので、それを補うために透光性樹脂10を両側面側で球面状に成形している。両側面側から出射される光は透光性樹脂10の球面状の表面で屈折されて光量が少ない方に集まるので、光量分布は全方位にわたってほぼ均一になる。また、上面側でも光量分布をなだらかにするために透光性樹脂10の上面を球面状に成形している。
【0040】なお、LED素子3,4,5a,5bの両側に配線パターン6が配置されているが配線パターン6は微細であり、透光性基板表面を占める比率が小さいため光源装置1の配光特性に影響を与えない。
【0041】図8および図9は図1の光源装置1を組み込んだ信号灯の斜視図である。図8および図9の信号灯はいずれも全方位にわたてダイヤカット付き透光性カバー20,22で覆われている。この光源装置1の発光は、電源および電気コントロール回路21,23で制御される。このように構成された信号灯は光源装置1に対して特定方位に位置する人々だけでなく全方位の人々の注意を同時に喚起することができる。図8および図9に示す信号灯は、例えば広告灯、工場等における工程異常を報知する信号とあるいは駐車場の出入口や工事現場等で注意を促す信号灯などに用いることができる。
【0042】なお、本実施例の説明では、光の3原色である赤色、青色および緑色を同一のガラス基板2に搭載した多色表示可能なタイプについて説明したが、単色の場合、例えば青色一色の場合であっても光源装置の構成は簡素化される。
【0043】また、明るい光源が必要な場合には、複数のLED素子を並列または直列に接続して同時に発光するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における光源装置の正面図である。
【図2】図1の光源装置の平面図である。
【図3】図1の光源装置の製造方法を示す模式的工程側面図である。
【図4】図1の光源装置の製造方法を示す模式的工程平面図である。
【図5】図1の光源装置の製造方法を示す模式的工程平面図である。
【図6】図1の光源装置の製造方法を示す模式的工程側面図である。
【図7】LED素子の配光特性の一例を示すグラフである。
【図8】図1の光源装置を用いた信号灯の一例を示す斜視図である。
【図9】図1の光源装置を用いた信号灯の他の例を示す斜視図である。
【図10】従来の砲弾型ランプの構成を説明するための模式的平面図および模式的断面図である。
【図11】従来の信号灯の一例を示す斜視図である。
【図12】図11の信号灯の部分断面図である。
【符号の説明】
1 光源装置
2 ガラス基板
3 GaN系青色LED素子
4 GaN系緑色LED素子
5a,5b GaAs系赤色LED素子
6 配線パターン
7 金ワイヤー
8 リードフレーム
10,11 透光性樹脂
15 透光性のエポキシ樹脂系接着剤
16 導電性のエポキシ樹脂系接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップが透光性支持部材上に配置され、前記発光素子チップおよび前記透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成されたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】 前記半導体発光層は、ホウ素、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムの少なくとも1つを含む窒化物系半導体からなることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】 前記発光素子チップは、前記半導体発光層上に電極を有し、前記透光性支持部材は、透光性絶縁基板と前記透光性絶縁基板上に形成された配線パターンとを備え、前記発光素子チップの前記電極が前記透光性絶縁基板上の前記配線パターンに電気的に接続されたことを特徴とする請求項1または2記載の光源装置。
【請求項4】 前記透光性モールド体から出射される光の配光特性が前記発光素子チップの表面側、裏面側および両側面側でほぼ均一になるように前記透光性モールド体の表面の形状が設定されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】 前記透光性材料中に拡散材が添加されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項6】 透光性支持部材上に複数の発光素子チップが配置され、前記複数の発光素子チップおよび前記透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成されたことを特徴とする光源装置。
【請求項7】 前記複数の発光素子チップの少なくとも1つは、透光性基板上に半導体発光層を備えてなることを特徴とする請求項6記載の光源装置。
【請求項8】 透光性支持部材上に、透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップを実装する工程と、前記発光素子チップの周囲を第1の透光性材料で被覆する工程と、前記第1の透光性材料の上から前記透光性支持部材および前記発光素子チップの第2の透光性材料で一体的にモールドして透光性モールド体を形成する工程とを備える光源装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図12】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2000−277808(P2000−277808A)
【公開日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−78486
【出願日】平成11年3月23日(1999.3.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】