光源装置および照明装置
【課題】 青色光を発光する固体光源とβサイアロン蛍光体を有する蛍光体層を用いた光源装置において、青色光を発光する固体光源の波長を460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な光源装置を提供する。
【解決手段】 青色光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの青色光により励起され該固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを有し、蛍光体層2には、少なくともYb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体が緑色に発光する蛍光体として含まれている。
【解決手段】 青色光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの青色光により励起され該固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを有し、蛍光体層2には、少なくともYb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体が緑色に発光する蛍光体として含まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード等の固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置(固体光源から出射された光(励起光)が蛍光体層に入射することにより励起されて固体光源からの光の波長よりも長波長の蛍光を蛍光体層から発光させる形式の光源装置)は広く普及しており、近年では高輝度化が進み、一般照明やディスプレイ用の光源装置、自動車のヘッドランプなどにその応用範囲が広がってきている。このような光源装置は、今後も多様な用途での普及が進むと考えられている。
【0003】
このような固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置を高輝度化するためには、大電流を投入し励起光強度を強めることが考えられるが、実際には蛍光体層で熱が発生し、蛍光体の温度消光による蛍光強度の低下が生じてしまうため、結果として発光強度は飽和、減少し、照明光の高輝度化が困難であった。
【0004】
ここで、蛍光体の温度消光とは、蛍光体を加熱すると蛍光強度が低下する現象のことである。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となるため蛍光体の発熱量が増加し、さらに蛍光体の温度が上昇して温度消光が進み、蛍光強度もさらに低下するという現象が起きる。このように熱により発生する蛍光体の温度消光も高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0005】
この問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に示されているように回転軸の周りに回転可能なカラーホイール(以下、蛍光回転体と称す)に蛍光体層を形成した光源装置が挙げられる。図1は蛍光回転体を用いた光源装置の概略図である。なお、図1において、符号95は固体光源、符号91は蛍光回転体であり、図1の光源装置では、蛍光回転体91が透過型のものとして構成され、固体光源95からの励起光によって励起された蛍光体層からの発光のうち固体光源95側とは反対側に出射する光(透過光)を用いるようになっている(なお、以下、この形式の蛍光回転体を、透過型蛍光回転体と称す)。
【0006】
蛍光回転体を用いる場合には、高出力の励起光を照射した場合でも蛍光体層は回転しており、同じ部分が励起されている時間が短いため、発熱が抑えられ、光が別の場所に当たっている間にその熱は放散される。したがって、蛍光体層内で励起光照射により局所的に多量の熱が発生することを抑えられるため、樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光を抑えることが可能となり、高輝度化を図ることが可能となる。
【0007】
ところで、固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置(例えば、液晶ディスプレイやプロジェクターなどのディスプレイ用の光源装置)としては、高輝度化のみならず、ディスプレイなどの色再現範囲を拡大することが望まれている。色再現範囲の拡大には光源の発光スペクトルのR(赤色)、G(緑色)、B(青色)成分の各々が半値幅の狭いスペクトルからなることが必要である。
【0008】
この問題の解決策を固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置について考えると、蛍光体層には、半値幅の狭い発光スペクトルを持つ蛍光体を使用することが必要となる。特に緑色蛍光体に注目すると、半値幅の狭い発光スペクトルを有する蛍光体として特許文献2で報告されているEu(ユーロピウム)イオンを付活したβサイアロン蛍光体が広く知られている。この蛍光体は、紫外線から青色光で励起可能であり、発光波長540nmの緑色発光を示し、発光スペクトルの半値幅が狭いため、固体光源と組み合わせることで高輝度かつ半値幅の狭い発光スペクトルを有する光源装置を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−539219号公報
【特許文献2】特開2008−120938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したような固体光源と蛍光体を組み合わせた光源装置で、さらに高輝度かつ半値幅の狭い発光スペクトルを有する光源装置を実現するためには、蛍光体(緑色蛍光体)としてEu付活βサイアロン蛍光体を使用し、さらにいままで以上に蛍光体の発熱を抑制する工夫をする必要がある。
【0011】
ここで、蛍光体からの発熱を詳細に検討すると、発熱は、ストークスシフトと呼ばれる励起光と蛍光のエネルギー差に起因する成分と、蛍光に変換されなかったエネルギーに起因する成分とに分けられる。前者は温度によらず一定の値をとり、後者は温度の上昇に従って増加するものである。したがって、蛍光体の温度上昇を抑制することで後者の成分を減らすことはできるが、前者の成分については別の工夫が必要となる。ストークスシフトに起因する成分は、励起光と蛍光のエネルギー差で決定されるため、このエネルギー差を小さくすれば発熱を減らすことができる。具体的には、蛍光体の発光波長を変えずに、より長波長の光(励起光)で蛍光体を励起することで、励起光と蛍光のエネルギー差を小さくし、蛍光体からの発熱を減らすことができる。もちろん蛍光体の蛍光波長を短くしても同様に達成できるが、蛍光波長を変えることは発光色を変えることになるため、色再現範囲に悪い影響が出る可能性があり望ましくない。従って、青色発光の固体光源としては通常440nm〜460nmの発光ピークを持つものが使用されているが、蛍光体のストークスシフトに起因する発熱を減少させるためには、440nm〜460nmよりも長波長である460nm以上の発光波長を持つ固体光源の使用が望ましい。
【0012】
以上のことから、従来使用されているものよりも発光波長の長い460nm以上の発光波長をもつ固体光源とEu付活βサイアロン蛍光体とを組み合わせた光源装置が高輝度かつ半値幅の狭い発光スペクトルを有する光源装置として望ましいと思われるが、本願の発明者は、この光源装置を実際に検討してみた結果、これまでに知られていなかった新たな課題(問題)を見出した。
【0013】
すなわち、従来使用されているものよりも発光波長の長い460nm以上の発光波長をもつ固体光源とEu付活βサイアロン蛍光体とを組み合わせた光源装置では、光源装置の初期の出力が大きくばらつく、もしくは、駆動中に固体光源の温度の変化とともに出力が変動するという問題が生ずる。このような出力のばらつき、駆動中の変動は、良品の選別工程や温度制御機構の追加などコストアップにつながる問題のため、製品の価値を大きく損なうものである。
【0014】
本願の発明者は、上記課題(問題)の原因を調べた結果、この原因が固体光源と蛍光体との両方に存在することを突き止めた。
【0015】
すなわち、まず、青色光を発光する固体光源は、発光ダイオード、半導体レーザーとも、ある発光波長を目指して製造しても、実際に固体光源から発せられる発光波長は目標値から5nm程度はばらつくものである。このばらつきは成膜の不均一性に起因する。さらにこの初期のばらつきの他に、駆動中に固体光源の温度が上昇していくと、一般的に発光波長が長波長へ移動する現象が起きる。その移動量は素子の構造などに依存するが、こちらも5nm程度移動することが知られている。このように、固体光源の発光波長には、初期のばらつきと駆動中の変動がつきものである。
【0016】
次に、蛍光体については、βサイアロン蛍光体は一般にEuイオンを付活したものが良く知られているが、図2に示すようにEu付活βサイアロン蛍光体の励起スペクトルは紫外領域から可視光領域にかけて、特に400nm以上の波長領域では右下がりの構造を取る。従って、通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲の光よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲では励起スペクトルがより一層傾斜しているため、460nm〜490nmの波長範囲で温度変化等により励起波長が変動すると、蛍光強度(緑色発光の強度)も大きく変動してしまう。
【0017】
このように、青色光を発光する固体光源の発光波長のばらつき、変動と、さらに青色光を発光する固体光源の通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲の光よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲においてEu付活βサイアロン蛍光体の蛍光強度が励起波長の少しの変化によって大きく変動してしまうことにより、結果として、光源装置としての出力(発光強度)も大きくばらつき、変動してしまうということを突き止めた。
【0018】
本発明は、青色光を発光する固体光源とβサイアロン蛍光体を有する蛍光体層を用いた光源装置および照明装置において、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な光源装置および照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、青色光を発光する固体光源と、該固体光源からの青色光により励起され該固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層とを有し、前記蛍光体層には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体が含まれていることを特徴とすることを特徴とする光源装置である。
【0020】
また、請求項2記載の発明は、青色光を発光する固体光源と、回転軸の周りに回転可能な蛍光回転体とを備え、該蛍光回転体は、前記固体光源からの青色光により励起され前記固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層を有していることを特徴とする光源装置である。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記固体光源は、発光ダイオードまたは半導体レーザーであることを特徴としている。
【0022】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、前記固体光源は、発光波長が460nm〜490nmの範囲のものであることを特徴としている。
【0023】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体は、YbとYb以外のランタノイドを共に発光中心イオンとして付活したβサイアロン蛍光体であることを特徴としている。
【0024】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の光源装置において、前記Yb以外のランタノイドは、Euであることを特徴としている。
【0025】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置である。
【発明の効果】
【0026】
請求項1、請求項3乃至請求項7記載の発明によれば、青色光を発光する固体光源と、該固体光源からの青色光により励起され該固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層とを有し、前記蛍光体層には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体が含まれているので、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、緑色発光について出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)光源装置および照明装置を提供することができる。
【0027】
また、請求項2乃至請求項7記載の発明によれば、青色光を発光する固体光源と、回転軸の周りに回転可能な蛍光回転体とを備え、該蛍光回転体は、前記固体光源からの青色光により励起され前記固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層を有しているので、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱をより一層減少させるために(より一層の高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)光源装置および照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】蛍光回転体を用いた光源装置の概略図である。
【図2】Eu付活βサイアロン蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の光源装置の構成例を示す図(概略図)である。
【図4】本発明の第2の実施形態の光源装置の一構成例を示す図である。
【図5】反射型の蛍光回転体の蛍光体層が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。
【図6】反射型の蛍光回転体の蛍光体層が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。
【図7】反射型の蛍光回転体の蛍光体層が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。
【図8】2種類の蛍光体層を垂直方向に重ねて配置した例を示す図(断面図)である。
【図9】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれについて、各材料の分量を示す図である。
【図10】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれについて、各材料を図9の分量で配合したときの、βサイアロン蛍光体(Si6Al6−zOzN8−z:A(Aは発光中心イオン、0<z≦4.2))のz、A(Yb)、A(Eu)の組成を示す図である。
【図11】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれのβサイアロン蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれのβサイアロン蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図13】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれのβサイアロン蛍光体について、460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルの値(強度)を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図3は本発明の第1の実施形態の光源装置の構成例を示す図(概略図)である。図3を参照すると、この光源装置10は、青色光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの青色光により励起され該固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを有し、前記蛍光体層2には、少なくともYb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体が緑色に発光する蛍光体(以下、緑色蛍光体と称す)として含まれていることを特徴としている。
【0031】
ここで、青色光を発光する固体光源5としては、発光ダイオードまたは半導体レーザーが用いられ、固体光源5からは、通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm以上の光を出射するものが用いられる。これにより、蛍光体のストークスシフトに起因する発熱を減少させることができ、蛍光体の温度消光も小さくすることができるため、結果的に光源装置を高輝度化することができる。なお、ストークスシフトに起因する発熱の減少だけを考えると発光波長は長いほど良いが、βサイアロン蛍光体は励起波長が490nmよりも長波長になると蛍光強度は弱くなるため、固体光源5の発光波長は460nm〜490nmの波長範囲が望ましい。
【0032】
また、本願の発明者は、前述のように、青色光を発光する固体光源の発光波長のばらつき、変動と、さらに青色光を発光する固体光源の通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲の光よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲においてEu付活βサイアロン蛍光体の蛍光強度が励起波長の少しの変化によって大きく変動してしまうことにより、結果として、光源装置としての出力(発光強度)も大きくばらつき、変動してしまうということを突き止めた。この問題を解決するのに、本願の発明者は、460nm以上の範囲で値の変動の小さい励起スペクトルを持つβサイアロン蛍光体を使用することを考え付いたが、これまでそのような蛍光体は知られていなかった。
【0033】
本願の発明者は、今回、後述のように、Ybイオンを付活したβサイアロン蛍光体の焼成実験を行い、その実験結果からYbイオンを発光中心イオンとしてβサイアロン蛍光体に付活することで、Eu(ユーロピウム)のみを付活したβサイアロン蛍光体に比べ、その励起スペクトルの値の変動が460nm〜490nmの波長範囲で小さくなることを見出した。この効果は、Ybのみを付活した場合にも、YbをEuと同時に付活した場合にも得られることも、本願の発明者によって明らかにされた。このようにYbイオンをβサイアロン蛍光体に付活することで、励起スペクトルの値の変動が460nm〜490nmの波長範囲で小さい蛍光体層2を実現することができることが本願の発明者によって新たに見出された。なお、発光中心としてYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色発光の蛍光体)は、前述の特許文献2に記載されてはいるものの、その具体的な特性については、従来何ら知られていない(何ら報告されていない)。
【0034】
このように、本発明の第1の実施形態の光源装置10によれば、青色光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの青色光により励起され該固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを有し、前記蛍光体層2には、少なくともYb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体が緑色蛍光体として含まれているので、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源5の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、緑色発光について出力(蛍光(緑色光)の発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(蛍光の発光強度)の変動が小さい)光源装置を提供することができる。
【0035】
なお、図3の構成例では、固体光源5の発光(青色光)と蛍光体層2から発せられる蛍光(緑色光)の混合光を利用するものであるが、混合光をフィルターを通して単色光として用いても良いし(緑色光だけを取り出しても良いし)、そのまま混合光として用いても良い。特に、蛍光体層2として、橙から赤色に発光する蛍光体をYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)と一緒に用いた場合(混合して用いた場合)には(さらに、これに黄色に発光する蛍光体を混合して用いることもできる)、白色光を得ることも可能である。このようにYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)とそれよりも長波長の蛍光を発する蛍光体とを同じ蛍光体層2中に混ぜて使用することもできる。
【0036】
図4(a),(b)は本発明の第2の実施形態の光源装置の一構成例を示す図である。なお、図4(a)は全体の正面図、図4(b)は蛍光回転体の平面図である。また、図4(a),(b)において、図3と対応する箇所には同じ符号を付している。図4(a),(b)を参照すると、この光源装置20は、青色光を発光する固体光源5と、モーターなどの駆動部(図示せず)による駆動によって回転軸Xの周りに回転可能な蛍光回転体1とを備え、該蛍光回転体1は、前記固体光源5からの青色光(励起光)により励起され前記固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)を含む蛍光体層2を有している。
【0037】
このような構成の第2の実施形態の光源装置20では、蛍光体層2には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)が含まれているので、第1の実施形態で説明したと同様に、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、緑色発光について出力(蛍光(緑色光)の発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(蛍光(緑色光)の発光強度)の変動が小さい)光源装置を提供することができる。
【0038】
さらに、第2の実施形態の光源装置20では、蛍光回転体1を用いることにより、高出力の励起光を照射した場合でも蛍光体層2は回転しており、同じ部分が励起されている時間が短いため、発熱が抑えられ、光が別の場所に当たっている間にその熱は放散される。したがって、蛍光体層2内で励起光照射により局所的に多量の熱が発生することを抑えられるため、樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光を抑えることが可能となり、高輝度化を図ることが可能となる。
【0039】
また、図4(a),(b)の光源装置20において、蛍光回転体1には、例えば蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対側の面に光反射性を有する基板6が設けられている。この場合、基板6は、光反射性を有する材料(例えば金属など)で形成されている。また、基板6は、放熱基板としての機能も具備している。すなわち、この基板6は、蛍光、励起光の反射面の役割と、蛍光体層2からの熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2の支持基板の役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。このように、基板6を光反射性を有する材料(例えば金属など)で形成することによって、この蛍光回転体1を、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側の面から、蛍光、励起光を反射によって取り出す反射型の蛍光回転体として構成することができる。
【0040】
ここで、反射型の蛍光回転体について説明する。図1に示す光源装置では、固体光源95からの励起光によって励起された蛍光体層92からの出射光のうち、固体光源95側とは反対側に出射する蛍光と蛍光体層92で吸収されずに透過した固体光源95の励起光とを用いている。つまり蛍光回転体91を透過型の蛍光回転体として使用している。この透過型の蛍光回転体91では、蛍光体層92からの出射光には上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて固体光源95側へ戻って行く光、つまり反射光も存在しており、この反射光は照明光として利用できない光となってしまう。また、透過型の蛍光回転体91では、目的の色度の照明光を得るためには蛍光体層92の厚みを厚くする必要があり、熱を放散する上でも不利である。
【0041】
これに対し、図4(a),(b)の光源装置20では、固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの出射光のうち、固体光源5側に出射する蛍光と蛍光体層2で反射された固体光源5からの励起光を用いている。つまり、蛍光回転体1を反射型の蛍光回転体として使用している。このように反射型の蛍光回転体を使用することで、励起光の反射光も照明光として利用できるため、より一層の高輝度化が可能となる。また透過型に対し、反射型では蛍光体層の厚みが半分以下でも蛍光体層内の光路長が等しくなり同じ色度の光が得られるため、蛍光体層を薄くすることができ、蛍光体層2から基板6までの距離が短くなるので、熱放散の面でも有利である。
【0042】
このように、蛍光回転体1を反射型の蛍光回転体とすることで、より一層の高輝度化を図ることができる。なお、以下の各例では、蛍光回転体1は、反射型の蛍光回転体であるとして説明する。
【0043】
また、図4(a),(b)の光源装置20において、蛍光体層2には、樹脂中に蛍光体を分散させたものや、ガラス中に蛍光体を分散させたもの、もしくはバインダー成分を含まない蛍光体セラミックスを使用することができる。蛍光体セラミックスは蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスはその製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設け有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスにはバインダー成分は5wt%以下しか残留しない。無機物質のみからなるガラスやセラミックスは一般に樹脂よりも熱伝導率が高いため蛍光体層から基板への熱放散において有利である。特に蛍光体セラミックスは一般的にガラスよりもさらに熱伝導率が高いため好適である。
【0044】
また、蛍光体層2と基板6との接合は、樹脂やガラス中に蛍光体を分散させた蛍光体層の場合はその樹脂やガラスが接合材となるが、蛍光体セラミックスの場合には、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属のろう付けなどを接合剤として用いることができる。
【0045】
また、図4(a),(b)の構成例では、例えば、固体光源5の発光(青色光)と蛍光体層2から発せられる蛍光(緑色光)の混合光を利用するものであるが、この場合、混合光をフィルターを通して単色光として用いても良いし(緑色光だけを取り出しても良いし)、そのまま混合光として用いても良い。特に、蛍光体層2として、橙から赤色に発光する蛍光体をYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)と一緒に用いた場合(混合して用いた場合)には(さらに、これに黄色に発光する蛍光体を混合して用いることもできる)、白色光を得ることも可能である。このようにYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)とそれよりも長波長の蛍光を発する蛍光体とを同じ蛍光体層2中に混ぜて使用しても良いし、次のように別々の蛍光体層を形成して使用しても良い。
【0046】
すなわち、図4(a),(b)の例では、蛍光回転体1の蛍光体層2としては、1種類の蛍光体層だけが用いられている。具体的に、図4(a),(b)の例では、蛍光回転体1の蛍光体層2として、例えば緑色蛍光体からなる蛍光体層だけが用いられるか(この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射光として緑色光と青色光が混合された照明光を得ることができる)、緑、赤色、(さらには黄色も可能)の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっている蛍光体層が用いられている(この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射光として白色などの照明光を得ることができる)。ただし、本発明は、これに限定されず、種々の変形が可能である。すなわち、蛍光回転体1の蛍光体層2としては、緑、赤、黄色などの蛍光体層を少なくとも1つ配置した構成にすることができる。換言すれば、蛍光回転体1の蛍光体層2は、複数のセクションに分かれていても良い。複数のセクションに分かれる場合には、隣接するセクションと発光が混ざるのを防ぐため、隣接するセクション間を光反射性の分離壁で分離させることが望ましい。また各セクションに分散している蛍光体の種類、分散量(濃度)が異なっていても良い。また、各セクションの蛍光体層の厚みが異なっていても良い。
【0047】
図5、図6、図7は、反射型の蛍光回転体1の蛍光体層2が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。なお、図5、図6、図7は、説明の便宜上、図4(a),(b)の構成(反射型の蛍光回転体1の蛍光体層2)に対応させて図示されている。図5の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2b)が2等分に分割された蛍光体領域として設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型の蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、図6の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2b)が蛍光体領域として設けられ、蛍光体層が設けられていない領域が非蛍光体領域42cとして設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、図7の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、3種類の蛍光体層2a,2b,2c(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2bと黄色蛍光体からなる蛍光体層2c)が蛍光体領域として設けられ、蛍光体層が設けられていない領域が非蛍光体領域42cとして設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0048】
このように、蛍光回転体1の蛍光体層2が複数のセクションに分かれている場合、蛍光体層2の配置については、2種類以上の蛍光体層を使用する場合には、図5、図6、図7のようにそれらの蛍光体層を水平方向に並べて配置することができる。あるいは、2種類以上の蛍光体層を垂直方向に重ねて配置することもできる。図8には、例えば2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2b)を垂直方向に重ねて配置した蛍光回転体1の例が断面図で示されている。図8の構成の場合にも、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0049】
以下、本発明の第1、第2の実施形態の光源装置10、20をより詳細に説明する。
【0050】
まず、Yb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体(以下、Yb付活βサイアロン蛍光体と称す)について説明する。βサイアロン蛍光体は、組成式Si6Al6−zOzN8−z:A(Aは発光中心イオン、0<z≦4.2)で表され、β型窒化珪素と同じ結晶構造をもつものである。Ybイオンを発光中心イオンとしてこのβサイアロン蛍光体に付活することで、Euのみを付活したβサイアロン蛍光体に比べ、その励起スペクトルの値の変動が460nm〜490nmの波長範囲で小さいβサイアロン蛍光体を得ることができる。この効果は、Ybのみを付活した場合にも、EuやCeといったその他のランタノイドを発光中心イオンとして同時に付活した場合にも得られる。このときのYbイオンとその他の発光中心イオンを合わせた濃度は、母体のモル数に対して0.05mol%〜1.0mol%の範囲が望ましい。これは、発光中心イオン濃度が0.05mol%以下の場合は発光中心イオンが少なすぎるために蛍光強度が十分に得られず、1.0mol%以上の場合には濃度消光が生じるために蛍光強度が十分に得られないためである。また、Ybイオンが少なすぎる場合にはβサイアロン蛍光体の励起スペクトルの値が460nm〜490nmの波長範囲で右下がりに変動してしまい、望ましくない。蛍光体の粒径は、中位径が10μm〜30μmの範囲のものが望ましい。中位径が10μm未満のものは蛍光体の発光効率が低いためであり、30μmよりも大きなものは蛍光体層内で均一に分散しにくいためである。
【0051】
Yb付活βサイアロン蛍光体の製造方法は以下の通りである。出発材料としてSi(ケイ素)、Al(アルミニウム)、Yb(イッテルビウム)、および、発光中心イオンとしたいYb以外のランタノイド元素の窒化物、酸化物もしくはフッ化物の粉末を用意し、目的の組成比になるように秤量し、十分に混合する。混合は、アルミナや窒化ケイ素製のボールを利用したボールミルで実施可能であり、混合効率を高めるためにエタノールやイソプロパノール、ヘキサンなどを溶媒として用いた湿式混合を行っても良い。ただし、材料が溶媒中の水分と反応してしまう可能性があるため、溶媒は脱水したものが望ましい。混合後は真空乾燥炉や窒素雰囲気の乾燥炉内で十分に乾燥させる。その後必要であればメッシュを通して目的の大きさに分級し、窒化ホウ素製るつぼに投入する。材料は0.1〜1.0MPaの窒素加圧雰囲気下で1800〜2000℃、2〜10時間焼成する。焼成後は不純物除去のため、塩酸やフッ酸などの酸性溶液や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液、もしくは沸騰した水で洗浄しても良い。最後にもう一度メッシュを通して分級することで目的の蛍光体粉末を得ることが出来る。なお、焼成前にスリップキャスティング法や加圧成型法を用いて材料を成型し、焼成を実施すれば、板状の蛍光体セラミックスを得ることも可能である。
【0052】
また、固体光源5としては、青色光領域に発光波長をもつ発光ダイオードやレーザーダイオードなどが使用可能であり、特に460nm以上の発光波長を持つものが望ましい。本発明は、励起光強度が高い光源を使用する場合にその効果が顕著に現れるため、もちろんこれらの光源に限定はされるものではないが、例えば、GaN系の材料を用いた約480nmの青色光を発光するレーザーダイオードを用いることができる。
【0053】
また、蛍光体層2に使用される蛍光体としては、Yb付活βサイアロン蛍光体のほかに、青色光領域の光を吸収し、Yb付活βサイアロン蛍光体よりも長波長の光を発するものを用いることができる。例えば、赤色用には、CaAlSiN3:Eu2+、(Ca,Sr)AlSiN3:Eu2+、Ca2Si5N8:Eu2+、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu2+、KSiF6:Mn4+、KTiF6:Mn4+等を用いることができる。また、黄色用には、Y3Al5O12:Ce3+、(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等を用いることができる。
【0054】
蛍光体層2としては、これらの蛍光体粉末を樹脂中やガラス中に分散させたものや、蛍光体セラミックスを用いることが出来る。樹脂としてはシリコーン樹脂、シリコンエポキシ樹脂、フッ素樹脂などの熱硬化性樹脂や液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂を使用することができる。ここで、ガラスとしては、組成にSiO2、B2O3、Al2O、P2O5などの成分を含む低融点ガラスが挙げられる。
【0055】
また、蛍光体は、焼成前に成型し、焼成することで、蛍光体セラミックスとすることができる。蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらにダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングやスクライブにより円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板にすることができる。蛍光体セラミックスの表面にエッチングや機会研磨により凹凸の光取出し構造を設けたり、レンズを実装したり、正面方向へ出射される発光成分を増加させることも可能である。
【0056】
また、基板6には、金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。金属としてはAl、Cu、Ti、Si、Ag、Au、Ni、Mo、W、Fe、Pdなどの単体やそれらを含む合金が使用可能である。これらの基板の表面に増反射や腐食防止を目的としたコーティングを施しても良い。
【0057】
また、基板6には放熱性を高めるためにフィンなどの構造を設けても良い。
【0058】
また、蛍光体層2と基板6の接合には、樹脂やガラスを使用した場合の蛍光体層2であれば、それら自身を接合材として使用することができるが、蛍光体層2が蛍光体セラミックスの場合には有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、ろう付けなどを用いることが出来る。なかでも高い反射率と伝熱特性を両立可能なろう付けが望ましい。すなわち、セラミックスと金属の接合は、まずセラミックス側に金属膜を形成し、その金属膜と金属基板をろう付けすることで可能である。セラミックスへの金属膜の形成は、真空中での蒸着法やスパッタ法、もしくは高融点金属法などが使用可能である。ここで、高融点金属法とは、セラミックスの表面に金属微粒子を含む有機バインダーを塗布し、水蒸気と水素を含む還元雰囲気下で1000〜1700℃に加熱する方法である。このとき形成される金属膜には、Si、Nb、Ti、Zr、Mo、Ni、Mn、W、Fe、Pt、Al、Au、Pd、Ta、Cuなどを含む単体や合金が用いられる。また、ろう材にはAg、Cu、Zn、Ni、Sn、Ti、Mn、In、Biなどを含むろう材が使用可能である。必要であれば金属膜と金属の接合面の酸化被膜をフラックスで除去し、接合面にろう材を配置し、200〜800℃に加熱し、冷却することで接合することが出来る。また接合後にセラミックスと金属の膨張係数の差による接合面の破壊を防ぐために、セラミックスと金属の中間の膨張係数を有する物質を介在させて接合を行っても良い。
【0059】
また、蛍光回転体1は、蛍光体層2と基板6を接合したものをモーター等と連結することで実現できる。このときの基板6の形状は円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。
【0060】
また、上述の各例では、基板6を金属などで構成し、蛍光回転体1を反射型の蛍光回転体として構成したが、基板6を光透過性の材料(透明材料)で構成すれば、蛍光回転体1を図1に示したような透過型の蛍光回転体として構成することもできる。この場合も、本発明が適用されることで(すなわち、蛍光回転体1が、固体光源5からの青色光により励起され固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層2を有していることで)、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱をより一層減少させるために(より一層の高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源5の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)光源装置を提供することができる。
【0061】
なお、上述の各例では示されていないが、必要であれば、固体光源5と蛍光体層2との間に、レンズなどの光学素子が設けられても良い。
【0062】
また、本発明の上述した種々の光源装置を所定のレンズ系などの光学部品と組み合わせることで、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱をより一層減少させるために(より一層の高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源5の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)照明装置を提供できる。
【0063】
最後に、本願の発明者によってなされたYb付活βサイアロン蛍光体の焼成実験について説明する。
【0064】
先ず、出発材料としてα型窒化珪素(Si3N4:宇部興産製SN−E10)、窒化アルミニウム(AlN:トクヤマ製Hグレード)、酸化アルミニウム(Al2O3:住友化学製APK−Y300)、酸化イッテルビウム(Yb2O3:信越化学製 純度99.99%)、酸化ユウロピウム(Eu2O3:信越化学製 純度99.99%)を用意し、実施例1、実施例2、比較例のそれぞれについて、これらの材料を図9の分量で配合し(図9において、%は材料全体に対する重量パーセント)、βサイアロン蛍光体(Si6Al6−zOzN8−z:A(Aは発光中心イオン、0<z≦4.2))のz、A(Yb)、A(Eu)が図10の組成となるようにした(すなわち、実施例1ではYbのみを付活し、実施例2ではYbとEuを等量付活し、比較例ではEuのみを付活した)。なお、図10において、%は母体のモル数に対するモルパーセントである。
【0065】
そして、これらの材料を窒化ケイ素製ボールを用いたボールミルにより十分に混合した。混合した材料は、100番のナイロンメッシュを通して分級した後、窒化ホウ素製るつぼに投入した。このるつぼを多目的焼成炉(富士電波製ハイマルチ5000)内に配置し、窒素1.0MPa雰囲気下で2000℃、4時間の焼成を行った。得られた焼成物は乳鉢で解した後、沸騰したお湯で洗浄し、乾燥後に380番のナイロンメッシュを通して分級した。こうして得られた蛍光体を粉末X線回折装置(BrukerAXS製D8Advance)で調べたところ、実施例1、実施例2、比較例のいずれも、βサイアロンの構造ができていることが確かめられた。
【0066】
さらに蛍光分光光度計(日立製作所製F4500)を用いて発光スペクトル、励起スペクトルを測定した結果を図11、図12に示す。なお、図11、図12は最大値で規格化した相対値で示されている。図11から、実施例1、実施例2、比較例のいずれも発光スペクトルは540nm付近にあり変化はないが、図12の励起スペクトルを比較すると、Ybを付活した実施例1、実施例2では460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルは比較的値(強度)の変化が小さいのに対し、Euのみを付活した比較例では同じ範囲で長波長になるにつれて励起スペクトルの強度が大きく低下している。よりわかりやすくするために図13に460nmの値で規格化しなおした励起スペクトルの値(強度)を示している。図13の下段にも示したとおり、460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルの値(強度)の変化量(460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルの(最大値)―(最小値))は、Euのみを付活した比較例の場合には23.2%と大きいものであるのに対し、Ybのみを付活した実施例1では16.5%、YbとEuを等量付活した実施例2では11.6%と大きな改善が確認できた。
【0067】
こうして得られたYb付活βサイアロン蛍光体を460nm以上の発光波長を持つ固体光源5と組み合わせ、反射型の蛍光回転体1を利用した光源装置とすることで、高輝度で半値幅が狭く(色純度が良く)、かつ、緑色光出力に関してバラツキや変動が小さい光源装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、一般照明、ディスプレイ、自動車のヘッドランプなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 蛍光回転体
2 蛍光体層
42c 非蛍光体領域
5 固体光源
6 基板
10、20 光源装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード等の固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置(固体光源から出射された光(励起光)が蛍光体層に入射することにより励起されて固体光源からの光の波長よりも長波長の蛍光を蛍光体層から発光させる形式の光源装置)は広く普及しており、近年では高輝度化が進み、一般照明やディスプレイ用の光源装置、自動車のヘッドランプなどにその応用範囲が広がってきている。このような光源装置は、今後も多様な用途での普及が進むと考えられている。
【0003】
このような固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置を高輝度化するためには、大電流を投入し励起光強度を強めることが考えられるが、実際には蛍光体層で熱が発生し、蛍光体の温度消光による蛍光強度の低下が生じてしまうため、結果として発光強度は飽和、減少し、照明光の高輝度化が困難であった。
【0004】
ここで、蛍光体の温度消光とは、蛍光体を加熱すると蛍光強度が低下する現象のことである。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となるため蛍光体の発熱量が増加し、さらに蛍光体の温度が上昇して温度消光が進み、蛍光強度もさらに低下するという現象が起きる。このように熱により発生する蛍光体の温度消光も高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0005】
この問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に示されているように回転軸の周りに回転可能なカラーホイール(以下、蛍光回転体と称す)に蛍光体層を形成した光源装置が挙げられる。図1は蛍光回転体を用いた光源装置の概略図である。なお、図1において、符号95は固体光源、符号91は蛍光回転体であり、図1の光源装置では、蛍光回転体91が透過型のものとして構成され、固体光源95からの励起光によって励起された蛍光体層からの発光のうち固体光源95側とは反対側に出射する光(透過光)を用いるようになっている(なお、以下、この形式の蛍光回転体を、透過型蛍光回転体と称す)。
【0006】
蛍光回転体を用いる場合には、高出力の励起光を照射した場合でも蛍光体層は回転しており、同じ部分が励起されている時間が短いため、発熱が抑えられ、光が別の場所に当たっている間にその熱は放散される。したがって、蛍光体層内で励起光照射により局所的に多量の熱が発生することを抑えられるため、樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光を抑えることが可能となり、高輝度化を図ることが可能となる。
【0007】
ところで、固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置(例えば、液晶ディスプレイやプロジェクターなどのディスプレイ用の光源装置)としては、高輝度化のみならず、ディスプレイなどの色再現範囲を拡大することが望まれている。色再現範囲の拡大には光源の発光スペクトルのR(赤色)、G(緑色)、B(青色)成分の各々が半値幅の狭いスペクトルからなることが必要である。
【0008】
この問題の解決策を固体光源と蛍光体層を組み合わせた光源装置について考えると、蛍光体層には、半値幅の狭い発光スペクトルを持つ蛍光体を使用することが必要となる。特に緑色蛍光体に注目すると、半値幅の狭い発光スペクトルを有する蛍光体として特許文献2で報告されているEu(ユーロピウム)イオンを付活したβサイアロン蛍光体が広く知られている。この蛍光体は、紫外線から青色光で励起可能であり、発光波長540nmの緑色発光を示し、発光スペクトルの半値幅が狭いため、固体光源と組み合わせることで高輝度かつ半値幅の狭い発光スペクトルを有する光源装置を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−539219号公報
【特許文献2】特開2008−120938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したような固体光源と蛍光体を組み合わせた光源装置で、さらに高輝度かつ半値幅の狭い発光スペクトルを有する光源装置を実現するためには、蛍光体(緑色蛍光体)としてEu付活βサイアロン蛍光体を使用し、さらにいままで以上に蛍光体の発熱を抑制する工夫をする必要がある。
【0011】
ここで、蛍光体からの発熱を詳細に検討すると、発熱は、ストークスシフトと呼ばれる励起光と蛍光のエネルギー差に起因する成分と、蛍光に変換されなかったエネルギーに起因する成分とに分けられる。前者は温度によらず一定の値をとり、後者は温度の上昇に従って増加するものである。したがって、蛍光体の温度上昇を抑制することで後者の成分を減らすことはできるが、前者の成分については別の工夫が必要となる。ストークスシフトに起因する成分は、励起光と蛍光のエネルギー差で決定されるため、このエネルギー差を小さくすれば発熱を減らすことができる。具体的には、蛍光体の発光波長を変えずに、より長波長の光(励起光)で蛍光体を励起することで、励起光と蛍光のエネルギー差を小さくし、蛍光体からの発熱を減らすことができる。もちろん蛍光体の蛍光波長を短くしても同様に達成できるが、蛍光波長を変えることは発光色を変えることになるため、色再現範囲に悪い影響が出る可能性があり望ましくない。従って、青色発光の固体光源としては通常440nm〜460nmの発光ピークを持つものが使用されているが、蛍光体のストークスシフトに起因する発熱を減少させるためには、440nm〜460nmよりも長波長である460nm以上の発光波長を持つ固体光源の使用が望ましい。
【0012】
以上のことから、従来使用されているものよりも発光波長の長い460nm以上の発光波長をもつ固体光源とEu付活βサイアロン蛍光体とを組み合わせた光源装置が高輝度かつ半値幅の狭い発光スペクトルを有する光源装置として望ましいと思われるが、本願の発明者は、この光源装置を実際に検討してみた結果、これまでに知られていなかった新たな課題(問題)を見出した。
【0013】
すなわち、従来使用されているものよりも発光波長の長い460nm以上の発光波長をもつ固体光源とEu付活βサイアロン蛍光体とを組み合わせた光源装置では、光源装置の初期の出力が大きくばらつく、もしくは、駆動中に固体光源の温度の変化とともに出力が変動するという問題が生ずる。このような出力のばらつき、駆動中の変動は、良品の選別工程や温度制御機構の追加などコストアップにつながる問題のため、製品の価値を大きく損なうものである。
【0014】
本願の発明者は、上記課題(問題)の原因を調べた結果、この原因が固体光源と蛍光体との両方に存在することを突き止めた。
【0015】
すなわち、まず、青色光を発光する固体光源は、発光ダイオード、半導体レーザーとも、ある発光波長を目指して製造しても、実際に固体光源から発せられる発光波長は目標値から5nm程度はばらつくものである。このばらつきは成膜の不均一性に起因する。さらにこの初期のばらつきの他に、駆動中に固体光源の温度が上昇していくと、一般的に発光波長が長波長へ移動する現象が起きる。その移動量は素子の構造などに依存するが、こちらも5nm程度移動することが知られている。このように、固体光源の発光波長には、初期のばらつきと駆動中の変動がつきものである。
【0016】
次に、蛍光体については、βサイアロン蛍光体は一般にEuイオンを付活したものが良く知られているが、図2に示すようにEu付活βサイアロン蛍光体の励起スペクトルは紫外領域から可視光領域にかけて、特に400nm以上の波長領域では右下がりの構造を取る。従って、通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲の光よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲では励起スペクトルがより一層傾斜しているため、460nm〜490nmの波長範囲で温度変化等により励起波長が変動すると、蛍光強度(緑色発光の強度)も大きく変動してしまう。
【0017】
このように、青色光を発光する固体光源の発光波長のばらつき、変動と、さらに青色光を発光する固体光源の通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲の光よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲においてEu付活βサイアロン蛍光体の蛍光強度が励起波長の少しの変化によって大きく変動してしまうことにより、結果として、光源装置としての出力(発光強度)も大きくばらつき、変動してしまうということを突き止めた。
【0018】
本発明は、青色光を発光する固体光源とβサイアロン蛍光体を有する蛍光体層を用いた光源装置および照明装置において、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な光源装置および照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、青色光を発光する固体光源と、該固体光源からの青色光により励起され該固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層とを有し、前記蛍光体層には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体が含まれていることを特徴とすることを特徴とする光源装置である。
【0020】
また、請求項2記載の発明は、青色光を発光する固体光源と、回転軸の周りに回転可能な蛍光回転体とを備え、該蛍光回転体は、前記固体光源からの青色光により励起され前記固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層を有していることを特徴とする光源装置である。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記固体光源は、発光ダイオードまたは半導体レーザーであることを特徴としている。
【0022】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、前記固体光源は、発光波長が460nm〜490nmの範囲のものであることを特徴としている。
【0023】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体は、YbとYb以外のランタノイドを共に発光中心イオンとして付活したβサイアロン蛍光体であることを特徴としている。
【0024】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の光源装置において、前記Yb以外のランタノイドは、Euであることを特徴としている。
【0025】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置である。
【発明の効果】
【0026】
請求項1、請求項3乃至請求項7記載の発明によれば、青色光を発光する固体光源と、該固体光源からの青色光により励起され該固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層とを有し、前記蛍光体層には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体が含まれているので、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、緑色発光について出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)光源装置および照明装置を提供することができる。
【0027】
また、請求項2乃至請求項7記載の発明によれば、青色光を発光する固体光源と、回転軸の周りに回転可能な蛍光回転体とを備え、該蛍光回転体は、前記固体光源からの青色光により励起され前記固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層を有しているので、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱をより一層減少させるために(より一層の高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)光源装置および照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】蛍光回転体を用いた光源装置の概略図である。
【図2】Eu付活βサイアロン蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の光源装置の構成例を示す図(概略図)である。
【図4】本発明の第2の実施形態の光源装置の一構成例を示す図である。
【図5】反射型の蛍光回転体の蛍光体層が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。
【図6】反射型の蛍光回転体の蛍光体層が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。
【図7】反射型の蛍光回転体の蛍光体層が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。
【図8】2種類の蛍光体層を垂直方向に重ねて配置した例を示す図(断面図)である。
【図9】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれについて、各材料の分量を示す図である。
【図10】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれについて、各材料を図9の分量で配合したときの、βサイアロン蛍光体(Si6Al6−zOzN8−z:A(Aは発光中心イオン、0<z≦4.2))のz、A(Yb)、A(Eu)の組成を示す図である。
【図11】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれのβサイアロン蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれのβサイアロン蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図13】実施例1、実施例2、比較例のそれぞれのβサイアロン蛍光体について、460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルの値(強度)を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図3は本発明の第1の実施形態の光源装置の構成例を示す図(概略図)である。図3を参照すると、この光源装置10は、青色光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの青色光により励起され該固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを有し、前記蛍光体層2には、少なくともYb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体が緑色に発光する蛍光体(以下、緑色蛍光体と称す)として含まれていることを特徴としている。
【0031】
ここで、青色光を発光する固体光源5としては、発光ダイオードまたは半導体レーザーが用いられ、固体光源5からは、通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm以上の光を出射するものが用いられる。これにより、蛍光体のストークスシフトに起因する発熱を減少させることができ、蛍光体の温度消光も小さくすることができるため、結果的に光源装置を高輝度化することができる。なお、ストークスシフトに起因する発熱の減少だけを考えると発光波長は長いほど良いが、βサイアロン蛍光体は励起波長が490nmよりも長波長になると蛍光強度は弱くなるため、固体光源5の発光波長は460nm〜490nmの波長範囲が望ましい。
【0032】
また、本願の発明者は、前述のように、青色光を発光する固体光源の発光波長のばらつき、変動と、さらに青色光を発光する固体光源の通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲の光よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲においてEu付活βサイアロン蛍光体の蛍光強度が励起波長の少しの変化によって大きく変動してしまうことにより、結果として、光源装置としての出力(発光強度)も大きくばらつき、変動してしまうということを突き止めた。この問題を解決するのに、本願の発明者は、460nm以上の範囲で値の変動の小さい励起スペクトルを持つβサイアロン蛍光体を使用することを考え付いたが、これまでそのような蛍光体は知られていなかった。
【0033】
本願の発明者は、今回、後述のように、Ybイオンを付活したβサイアロン蛍光体の焼成実験を行い、その実験結果からYbイオンを発光中心イオンとしてβサイアロン蛍光体に付活することで、Eu(ユーロピウム)のみを付活したβサイアロン蛍光体に比べ、その励起スペクトルの値の変動が460nm〜490nmの波長範囲で小さくなることを見出した。この効果は、Ybのみを付活した場合にも、YbをEuと同時に付活した場合にも得られることも、本願の発明者によって明らかにされた。このようにYbイオンをβサイアロン蛍光体に付活することで、励起スペクトルの値の変動が460nm〜490nmの波長範囲で小さい蛍光体層2を実現することができることが本願の発明者によって新たに見出された。なお、発光中心としてYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色発光の蛍光体)は、前述の特許文献2に記載されてはいるものの、その具体的な特性については、従来何ら知られていない(何ら報告されていない)。
【0034】
このように、本発明の第1の実施形態の光源装置10によれば、青色光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの青色光により励起され該固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを有し、前記蛍光体層2には、少なくともYb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体が緑色蛍光体として含まれているので、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源5の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、緑色発光について出力(蛍光(緑色光)の発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(蛍光の発光強度)の変動が小さい)光源装置を提供することができる。
【0035】
なお、図3の構成例では、固体光源5の発光(青色光)と蛍光体層2から発せられる蛍光(緑色光)の混合光を利用するものであるが、混合光をフィルターを通して単色光として用いても良いし(緑色光だけを取り出しても良いし)、そのまま混合光として用いても良い。特に、蛍光体層2として、橙から赤色に発光する蛍光体をYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)と一緒に用いた場合(混合して用いた場合)には(さらに、これに黄色に発光する蛍光体を混合して用いることもできる)、白色光を得ることも可能である。このようにYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)とそれよりも長波長の蛍光を発する蛍光体とを同じ蛍光体層2中に混ぜて使用することもできる。
【0036】
図4(a),(b)は本発明の第2の実施形態の光源装置の一構成例を示す図である。なお、図4(a)は全体の正面図、図4(b)は蛍光回転体の平面図である。また、図4(a),(b)において、図3と対応する箇所には同じ符号を付している。図4(a),(b)を参照すると、この光源装置20は、青色光を発光する固体光源5と、モーターなどの駆動部(図示せず)による駆動によって回転軸Xの周りに回転可能な蛍光回転体1とを備え、該蛍光回転体1は、前記固体光源5からの青色光(励起光)により励起され前記固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)を含む蛍光体層2を有している。
【0037】
このような構成の第2の実施形態の光源装置20では、蛍光体層2には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)が含まれているので、第1の実施形態で説明したと同様に、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱を減少させるために(高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、緑色発光について出力(蛍光(緑色光)の発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(蛍光(緑色光)の発光強度)の変動が小さい)光源装置を提供することができる。
【0038】
さらに、第2の実施形態の光源装置20では、蛍光回転体1を用いることにより、高出力の励起光を照射した場合でも蛍光体層2は回転しており、同じ部分が励起されている時間が短いため、発熱が抑えられ、光が別の場所に当たっている間にその熱は放散される。したがって、蛍光体層2内で励起光照射により局所的に多量の熱が発生することを抑えられるため、樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光を抑えることが可能となり、高輝度化を図ることが可能となる。
【0039】
また、図4(a),(b)の光源装置20において、蛍光回転体1には、例えば蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対側の面に光反射性を有する基板6が設けられている。この場合、基板6は、光反射性を有する材料(例えば金属など)で形成されている。また、基板6は、放熱基板としての機能も具備している。すなわち、この基板6は、蛍光、励起光の反射面の役割と、蛍光体層2からの熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2の支持基板の役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。このように、基板6を光反射性を有する材料(例えば金属など)で形成することによって、この蛍光回転体1を、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側の面から、蛍光、励起光を反射によって取り出す反射型の蛍光回転体として構成することができる。
【0040】
ここで、反射型の蛍光回転体について説明する。図1に示す光源装置では、固体光源95からの励起光によって励起された蛍光体層92からの出射光のうち、固体光源95側とは反対側に出射する蛍光と蛍光体層92で吸収されずに透過した固体光源95の励起光とを用いている。つまり蛍光回転体91を透過型の蛍光回転体として使用している。この透過型の蛍光回転体91では、蛍光体層92からの出射光には上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて固体光源95側へ戻って行く光、つまり反射光も存在しており、この反射光は照明光として利用できない光となってしまう。また、透過型の蛍光回転体91では、目的の色度の照明光を得るためには蛍光体層92の厚みを厚くする必要があり、熱を放散する上でも不利である。
【0041】
これに対し、図4(a),(b)の光源装置20では、固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの出射光のうち、固体光源5側に出射する蛍光と蛍光体層2で反射された固体光源5からの励起光を用いている。つまり、蛍光回転体1を反射型の蛍光回転体として使用している。このように反射型の蛍光回転体を使用することで、励起光の反射光も照明光として利用できるため、より一層の高輝度化が可能となる。また透過型に対し、反射型では蛍光体層の厚みが半分以下でも蛍光体層内の光路長が等しくなり同じ色度の光が得られるため、蛍光体層を薄くすることができ、蛍光体層2から基板6までの距離が短くなるので、熱放散の面でも有利である。
【0042】
このように、蛍光回転体1を反射型の蛍光回転体とすることで、より一層の高輝度化を図ることができる。なお、以下の各例では、蛍光回転体1は、反射型の蛍光回転体であるとして説明する。
【0043】
また、図4(a),(b)の光源装置20において、蛍光体層2には、樹脂中に蛍光体を分散させたものや、ガラス中に蛍光体を分散させたもの、もしくはバインダー成分を含まない蛍光体セラミックスを使用することができる。蛍光体セラミックスは蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスはその製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設け有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスにはバインダー成分は5wt%以下しか残留しない。無機物質のみからなるガラスやセラミックスは一般に樹脂よりも熱伝導率が高いため蛍光体層から基板への熱放散において有利である。特に蛍光体セラミックスは一般的にガラスよりもさらに熱伝導率が高いため好適である。
【0044】
また、蛍光体層2と基板6との接合は、樹脂やガラス中に蛍光体を分散させた蛍光体層の場合はその樹脂やガラスが接合材となるが、蛍光体セラミックスの場合には、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属のろう付けなどを接合剤として用いることができる。
【0045】
また、図4(a),(b)の構成例では、例えば、固体光源5の発光(青色光)と蛍光体層2から発せられる蛍光(緑色光)の混合光を利用するものであるが、この場合、混合光をフィルターを通して単色光として用いても良いし(緑色光だけを取り出しても良いし)、そのまま混合光として用いても良い。特に、蛍光体層2として、橙から赤色に発光する蛍光体をYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)と一緒に用いた場合(混合して用いた場合)には(さらに、これに黄色に発光する蛍光体を混合して用いることもできる)、白色光を得ることも可能である。このようにYbイオンを付活したβサイアロン蛍光体(緑色蛍光体)とそれよりも長波長の蛍光を発する蛍光体とを同じ蛍光体層2中に混ぜて使用しても良いし、次のように別々の蛍光体層を形成して使用しても良い。
【0046】
すなわち、図4(a),(b)の例では、蛍光回転体1の蛍光体層2としては、1種類の蛍光体層だけが用いられている。具体的に、図4(a),(b)の例では、蛍光回転体1の蛍光体層2として、例えば緑色蛍光体からなる蛍光体層だけが用いられるか(この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射光として緑色光と青色光が混合された照明光を得ることができる)、緑、赤色、(さらには黄色も可能)の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっている蛍光体層が用いられている(この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射光として白色などの照明光を得ることができる)。ただし、本発明は、これに限定されず、種々の変形が可能である。すなわち、蛍光回転体1の蛍光体層2としては、緑、赤、黄色などの蛍光体層を少なくとも1つ配置した構成にすることができる。換言すれば、蛍光回転体1の蛍光体層2は、複数のセクションに分かれていても良い。複数のセクションに分かれる場合には、隣接するセクションと発光が混ざるのを防ぐため、隣接するセクション間を光反射性の分離壁で分離させることが望ましい。また各セクションに分散している蛍光体の種類、分散量(濃度)が異なっていても良い。また、各セクションの蛍光体層の厚みが異なっていても良い。
【0047】
図5、図6、図7は、反射型の蛍光回転体1の蛍光体層2が複数のセクションに分かれている場合についての各種の構成例を示す図(平面図)である。なお、図5、図6、図7は、説明の便宜上、図4(a),(b)の構成(反射型の蛍光回転体1の蛍光体層2)に対応させて図示されている。図5の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2b)が2等分に分割された蛍光体領域として設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型の蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、図6の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2b)が蛍光体領域として設けられ、蛍光体層が設けられていない領域が非蛍光体領域42cとして設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、図7の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、3種類の蛍光体層2a,2b,2c(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2bと黄色蛍光体からなる蛍光体層2c)が蛍光体領域として設けられ、蛍光体層が設けられていない領域が非蛍光体領域42cとして設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0048】
このように、蛍光回転体1の蛍光体層2が複数のセクションに分かれている場合、蛍光体層2の配置については、2種類以上の蛍光体層を使用する場合には、図5、図6、図7のようにそれらの蛍光体層を水平方向に並べて配置することができる。あるいは、2種類以上の蛍光体層を垂直方向に重ねて配置することもできる。図8には、例えば2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる蛍光体層2b)を垂直方向に重ねて配置した蛍光回転体1の例が断面図で示されている。図8の構成の場合にも、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0049】
以下、本発明の第1、第2の実施形態の光源装置10、20をより詳細に説明する。
【0050】
まず、Yb(イッテルビウム)を付活したβサイアロン蛍光体(以下、Yb付活βサイアロン蛍光体と称す)について説明する。βサイアロン蛍光体は、組成式Si6Al6−zOzN8−z:A(Aは発光中心イオン、0<z≦4.2)で表され、β型窒化珪素と同じ結晶構造をもつものである。Ybイオンを発光中心イオンとしてこのβサイアロン蛍光体に付活することで、Euのみを付活したβサイアロン蛍光体に比べ、その励起スペクトルの値の変動が460nm〜490nmの波長範囲で小さいβサイアロン蛍光体を得ることができる。この効果は、Ybのみを付活した場合にも、EuやCeといったその他のランタノイドを発光中心イオンとして同時に付活した場合にも得られる。このときのYbイオンとその他の発光中心イオンを合わせた濃度は、母体のモル数に対して0.05mol%〜1.0mol%の範囲が望ましい。これは、発光中心イオン濃度が0.05mol%以下の場合は発光中心イオンが少なすぎるために蛍光強度が十分に得られず、1.0mol%以上の場合には濃度消光が生じるために蛍光強度が十分に得られないためである。また、Ybイオンが少なすぎる場合にはβサイアロン蛍光体の励起スペクトルの値が460nm〜490nmの波長範囲で右下がりに変動してしまい、望ましくない。蛍光体の粒径は、中位径が10μm〜30μmの範囲のものが望ましい。中位径が10μm未満のものは蛍光体の発光効率が低いためであり、30μmよりも大きなものは蛍光体層内で均一に分散しにくいためである。
【0051】
Yb付活βサイアロン蛍光体の製造方法は以下の通りである。出発材料としてSi(ケイ素)、Al(アルミニウム)、Yb(イッテルビウム)、および、発光中心イオンとしたいYb以外のランタノイド元素の窒化物、酸化物もしくはフッ化物の粉末を用意し、目的の組成比になるように秤量し、十分に混合する。混合は、アルミナや窒化ケイ素製のボールを利用したボールミルで実施可能であり、混合効率を高めるためにエタノールやイソプロパノール、ヘキサンなどを溶媒として用いた湿式混合を行っても良い。ただし、材料が溶媒中の水分と反応してしまう可能性があるため、溶媒は脱水したものが望ましい。混合後は真空乾燥炉や窒素雰囲気の乾燥炉内で十分に乾燥させる。その後必要であればメッシュを通して目的の大きさに分級し、窒化ホウ素製るつぼに投入する。材料は0.1〜1.0MPaの窒素加圧雰囲気下で1800〜2000℃、2〜10時間焼成する。焼成後は不純物除去のため、塩酸やフッ酸などの酸性溶液や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液、もしくは沸騰した水で洗浄しても良い。最後にもう一度メッシュを通して分級することで目的の蛍光体粉末を得ることが出来る。なお、焼成前にスリップキャスティング法や加圧成型法を用いて材料を成型し、焼成を実施すれば、板状の蛍光体セラミックスを得ることも可能である。
【0052】
また、固体光源5としては、青色光領域に発光波長をもつ発光ダイオードやレーザーダイオードなどが使用可能であり、特に460nm以上の発光波長を持つものが望ましい。本発明は、励起光強度が高い光源を使用する場合にその効果が顕著に現れるため、もちろんこれらの光源に限定はされるものではないが、例えば、GaN系の材料を用いた約480nmの青色光を発光するレーザーダイオードを用いることができる。
【0053】
また、蛍光体層2に使用される蛍光体としては、Yb付活βサイアロン蛍光体のほかに、青色光領域の光を吸収し、Yb付活βサイアロン蛍光体よりも長波長の光を発するものを用いることができる。例えば、赤色用には、CaAlSiN3:Eu2+、(Ca,Sr)AlSiN3:Eu2+、Ca2Si5N8:Eu2+、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu2+、KSiF6:Mn4+、KTiF6:Mn4+等を用いることができる。また、黄色用には、Y3Al5O12:Ce3+、(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等を用いることができる。
【0054】
蛍光体層2としては、これらの蛍光体粉末を樹脂中やガラス中に分散させたものや、蛍光体セラミックスを用いることが出来る。樹脂としてはシリコーン樹脂、シリコンエポキシ樹脂、フッ素樹脂などの熱硬化性樹脂や液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂を使用することができる。ここで、ガラスとしては、組成にSiO2、B2O3、Al2O、P2O5などの成分を含む低融点ガラスが挙げられる。
【0055】
また、蛍光体は、焼成前に成型し、焼成することで、蛍光体セラミックスとすることができる。蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらにダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングやスクライブにより円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板にすることができる。蛍光体セラミックスの表面にエッチングや機会研磨により凹凸の光取出し構造を設けたり、レンズを実装したり、正面方向へ出射される発光成分を増加させることも可能である。
【0056】
また、基板6には、金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。金属としてはAl、Cu、Ti、Si、Ag、Au、Ni、Mo、W、Fe、Pdなどの単体やそれらを含む合金が使用可能である。これらの基板の表面に増反射や腐食防止を目的としたコーティングを施しても良い。
【0057】
また、基板6には放熱性を高めるためにフィンなどの構造を設けても良い。
【0058】
また、蛍光体層2と基板6の接合には、樹脂やガラスを使用した場合の蛍光体層2であれば、それら自身を接合材として使用することができるが、蛍光体層2が蛍光体セラミックスの場合には有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、ろう付けなどを用いることが出来る。なかでも高い反射率と伝熱特性を両立可能なろう付けが望ましい。すなわち、セラミックスと金属の接合は、まずセラミックス側に金属膜を形成し、その金属膜と金属基板をろう付けすることで可能である。セラミックスへの金属膜の形成は、真空中での蒸着法やスパッタ法、もしくは高融点金属法などが使用可能である。ここで、高融点金属法とは、セラミックスの表面に金属微粒子を含む有機バインダーを塗布し、水蒸気と水素を含む還元雰囲気下で1000〜1700℃に加熱する方法である。このとき形成される金属膜には、Si、Nb、Ti、Zr、Mo、Ni、Mn、W、Fe、Pt、Al、Au、Pd、Ta、Cuなどを含む単体や合金が用いられる。また、ろう材にはAg、Cu、Zn、Ni、Sn、Ti、Mn、In、Biなどを含むろう材が使用可能である。必要であれば金属膜と金属の接合面の酸化被膜をフラックスで除去し、接合面にろう材を配置し、200〜800℃に加熱し、冷却することで接合することが出来る。また接合後にセラミックスと金属の膨張係数の差による接合面の破壊を防ぐために、セラミックスと金属の中間の膨張係数を有する物質を介在させて接合を行っても良い。
【0059】
また、蛍光回転体1は、蛍光体層2と基板6を接合したものをモーター等と連結することで実現できる。このときの基板6の形状は円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。
【0060】
また、上述の各例では、基板6を金属などで構成し、蛍光回転体1を反射型の蛍光回転体として構成したが、基板6を光透過性の材料(透明材料)で構成すれば、蛍光回転体1を図1に示したような透過型の蛍光回転体として構成することもできる。この場合も、本発明が適用されることで(すなわち、蛍光回転体1が、固体光源5からの青色光により励起され固体光源5からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層2を有していることで)、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱をより一層減少させるために(より一層の高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源5の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)光源装置を提供することができる。
【0061】
なお、上述の各例では示されていないが、必要であれば、固体光源5と蛍光体層2との間に、レンズなどの光学素子が設けられても良い。
【0062】
また、本発明の上述した種々の光源装置を所定のレンズ系などの光学部品と組み合わせることで、発光スペクトルの半値幅が狭く、かつ、発熱をより一層減少させるために(より一層の高輝度化を図るために)青色光を発光する固体光源5の波長を通常青色光として使用される440nm〜460nmの波長範囲よりも波長が長い460nm〜490nmの波長範囲にした場合にも、出力(発光強度)の変動を抑えることの可能な(温度変化等による固体光源の波長変動に対して、出力(発光強度)の変動が小さい)照明装置を提供できる。
【0063】
最後に、本願の発明者によってなされたYb付活βサイアロン蛍光体の焼成実験について説明する。
【0064】
先ず、出発材料としてα型窒化珪素(Si3N4:宇部興産製SN−E10)、窒化アルミニウム(AlN:トクヤマ製Hグレード)、酸化アルミニウム(Al2O3:住友化学製APK−Y300)、酸化イッテルビウム(Yb2O3:信越化学製 純度99.99%)、酸化ユウロピウム(Eu2O3:信越化学製 純度99.99%)を用意し、実施例1、実施例2、比較例のそれぞれについて、これらの材料を図9の分量で配合し(図9において、%は材料全体に対する重量パーセント)、βサイアロン蛍光体(Si6Al6−zOzN8−z:A(Aは発光中心イオン、0<z≦4.2))のz、A(Yb)、A(Eu)が図10の組成となるようにした(すなわち、実施例1ではYbのみを付活し、実施例2ではYbとEuを等量付活し、比較例ではEuのみを付活した)。なお、図10において、%は母体のモル数に対するモルパーセントである。
【0065】
そして、これらの材料を窒化ケイ素製ボールを用いたボールミルにより十分に混合した。混合した材料は、100番のナイロンメッシュを通して分級した後、窒化ホウ素製るつぼに投入した。このるつぼを多目的焼成炉(富士電波製ハイマルチ5000)内に配置し、窒素1.0MPa雰囲気下で2000℃、4時間の焼成を行った。得られた焼成物は乳鉢で解した後、沸騰したお湯で洗浄し、乾燥後に380番のナイロンメッシュを通して分級した。こうして得られた蛍光体を粉末X線回折装置(BrukerAXS製D8Advance)で調べたところ、実施例1、実施例2、比較例のいずれも、βサイアロンの構造ができていることが確かめられた。
【0066】
さらに蛍光分光光度計(日立製作所製F4500)を用いて発光スペクトル、励起スペクトルを測定した結果を図11、図12に示す。なお、図11、図12は最大値で規格化した相対値で示されている。図11から、実施例1、実施例2、比較例のいずれも発光スペクトルは540nm付近にあり変化はないが、図12の励起スペクトルを比較すると、Ybを付活した実施例1、実施例2では460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルは比較的値(強度)の変化が小さいのに対し、Euのみを付活した比較例では同じ範囲で長波長になるにつれて励起スペクトルの強度が大きく低下している。よりわかりやすくするために図13に460nmの値で規格化しなおした励起スペクトルの値(強度)を示している。図13の下段にも示したとおり、460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルの値(強度)の変化量(460nm〜490nmの波長範囲での励起スペクトルの(最大値)―(最小値))は、Euのみを付活した比較例の場合には23.2%と大きいものであるのに対し、Ybのみを付活した実施例1では16.5%、YbとEuを等量付活した実施例2では11.6%と大きな改善が確認できた。
【0067】
こうして得られたYb付活βサイアロン蛍光体を460nm以上の発光波長を持つ固体光源5と組み合わせ、反射型の蛍光回転体1を利用した光源装置とすることで、高輝度で半値幅が狭く(色純度が良く)、かつ、緑色光出力に関してバラツキや変動が小さい光源装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、一般照明、ディスプレイ、自動車のヘッドランプなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 蛍光回転体
2 蛍光体層
42c 非蛍光体領域
5 固体光源
6 基板
10、20 光源装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光を発光する固体光源と、該固体光源からの青色光により励起され該固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層とを有し、前記蛍光体層には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体が含まれていることを特徴とすることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
青色光を発光する固体光源と、回転軸の周りに回転可能な蛍光回転体とを備え、該蛍光回転体は、前記固体光源からの青色光により励起され前記固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層を有していることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記固体光源は、発光ダイオードまたは半導体レーザーであることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、前記固体光源は、発光波長が460nm〜490nmの範囲のものであることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体は、YbとYb以外のランタノイドを共に発光中心イオンとして付活したβサイアロン蛍光体であることを特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項5記載の光源装置において、前記Yb以外のランタノイドは、Euであることを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置。
【請求項1】
青色光を発光する固体光源と、該固体光源からの青色光により励起され該固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層とを有し、前記蛍光体層には、少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体が含まれていることを特徴とすることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
青色光を発光する固体光源と、回転軸の周りに回転可能な蛍光回転体とを備え、該蛍光回転体は、前記固体光源からの青色光により励起され前記固体光源からの青色光の波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体を含む蛍光体層を有していることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記固体光源は、発光ダイオードまたは半導体レーザーであることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、前記固体光源は、発光波長が460nm〜490nmの範囲のものであることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記少なくともYbを付活したβサイアロン蛍光体は、YbとYb以外のランタノイドを共に発光中心イオンとして付活したβサイアロン蛍光体であることを特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項5記載の光源装置において、前記Yb以外のランタノイドは、Euであることを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−243840(P2011−243840A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116183(P2010−116183)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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